(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】建設物の施工管理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20230512BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20230512BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2019136276
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(73)【特許権者】
【識別番号】397045758
【氏名又は名称】株式会社ビーイング
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 岩往
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真吾
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 善一
(72)【発明者】
【氏名】宮辻 和宏
(72)【発明者】
【氏名】矢尾板 啓
(72)【発明者】
【氏名】穴久保 剛
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-050098(JP,A)
【文献】特開平06-332989(JP,A)
【文献】特開2011-095917(JP,A)
【文献】特開2010-108321(JP,A)
【文献】特開2001-167137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理装置であって、
3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データを記憶する3次元設計データ記憶部と、CCPM機能を備える工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データを記憶する工程データ記憶部と、前記3次元設計データ記憶部及び前記工程データ記憶部に記憶されているデータから、建設物の施工状況を4次元シミュレートする4次元シミュレート部とを含んでおり、
該4次元シミュレート部は、前記3次元設計データ記憶部に記憶された建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データ及び
足場、型枠等の仮設材のモデルのデータと、前記工程データ記憶部に記憶された建設物の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付け部と、建設物の所定の部位を建設する際に用いられる前記
足場、型枠等の仮設材のモデルを作成可能な仮設材モデル作成部と、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させる4次元シミュレーション表示部とを備えており、
前記仮設材モデル作成部では、前記足場、型枠等の仮設材のモデルは、前記4次元シミュレート部に取り込まれた建設物の3次元設計モデルを、画面上で2次元表示させることによって得られた2次元平面図面上において、仮設材の設置エリアを指定し、その高さを与えることで、ボリュームと設置位置が指定されただけの簡易部材として3次元モデル化されるようになっており、
前記4次元シミュレーション表示部は、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を、作成した前記仮設材のモデルと共に画面上にシミュレート表示できるようになっており、シミュレート表示された前記仮設材のモデルを含む建設物の所定の部位の施工状況を見て、前記工程データ記憶部から取り込んだ工程データの見直しを行えるようにする建設物の施工管理装置。
【請求項2】
前記4次元シミュレート部は、前記工程データ記憶部から取り込んだ工程データを修正可能な、CCPM機能を備えていないプログラムによる簡易工程調整部を備えており、該簡易工程調整部において、前記工程データ記憶部から取り込んだ工程データの見直しを行えるようなっており、前記施工紐付け部は、建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データ及び作成した前記仮設材のモデルのデータと、前記簡易工程調整部で見直された工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの見直された施工状況が画面上に明示されるように紐付けする
請求項1記載の建設物の施工管理装置。
【請求項3】
前記施工紐付け部は、工程・ステータス紐付け部を備えており、該工程・ステータス紐付け部は、建設物の所定の部位を建設する際の工程データを構成する工程項目毎に、工程期間中の部材ステータスと工程期間経過後の部材ステータスとを設定して、紐付けするようになっている
請求項1又は2記載の建設物の施工管理装置。
【請求項4】
前記施工紐付け部は、工程・モデル紐付け部を備えており、該工程・モデル紐付け部は、建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データ及び作成した前記仮設材のモデル毎に、一又は複数の工程項目の割り当てを実施する
請求項3記載の建設物の施工管理装置。
【請求項5】
3次元CADプログラムを用いて建設物の前記3次元設計モデルの設計データを作成する、3次元設計モデル作成部を備えており、該3次元設計モデル作成部は、作成した建設物の前記3次元設計モデルの設計データを前記3次元設計データ記憶部に記憶させるようになっていると共に、作成した建設物の前記3次元設計モデルを修正した、建設物の3次元修正設計モデルを作成できるようになっている
請求項1~4のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項6】
CCPM機能を備える工程管理プログラムを用いて建設物を建設する際の工程データを作成する、工程データ作成部を備えており、該工程データ作成部は、作成した工程データを前記工程データ記憶部に記憶させるようになっていると共に、前記4次元シミュレート部の前記簡易工程調整部によって見直された工程データから、CCPM機能を備える工程管理プログラムによって、建設物を建設する際の修正工程データを作成できるようになっている
請求項2記載の建設物の施工管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設物の施工管理装置に関し、特に、三次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば橋梁、トンネル、ダム、土工、河川等の土木公共工事の分野では、各種の建設物を建設する際に、2次元図面から3次元モデルへの移行による業務変革や、或いは初期の工程(フロント)において負荷をかけて事前に集中的に検討し、後工程で生じそうな手戻りを未然に防いで、品質の向上や工期の短縮化を図ることを可能にするフロントローディングにより、合意形成の迅速化、業務の効率化、品質の向上、ひいては生産性の向上等を図ることを目的として、国土交通省では、CIM(Construction Information Modeling/Management)を円滑に導入できるように、ガイドラインを整備して、体系的な推進を試みている。このため、3次元のCIMモデルを作成するための種々の三次元モデル解析プログラムやソフトウェアが開発されている。
【0003】
また、2次元の図面を作成してから3次元の形状を組み立て、CGでシミュレーションするといった従来の3DCADとは異なり、当初から3次元で設計して3次元モデルを作成することが可能な、BIM(Building Information Modeling)によって作成されるBIMモデルが開発されている。BIMモデルでは、3次元オブジェクトの集合体であることから、これらのオブジェクトにコストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加することが可能であり、建築物の設計、施工から維持管理に至るまでの、建築物のライフサイクルの全体で、モデルに蓄積された情報を活用することが可能になる。BIMモデルを作成可能なBIMツールとして、「ArchiCAD」や「Revit」等の、種々の3次元CADソフトが知られている。
【0004】
さらに、定められた工期内に工事が完了するように、例えば公共工事における工程の計画と実施を管理するための種々の工程管理ソフトが知られており、特に制約条件の理論であるTOC(Theory of Constraints)の考えに基づいて、全体最適の視点で開発されたクリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)を採用した工程管理ソフトも開発されている。ここで、クリティカルチェーンは、プロジェクトにおいて各タスクの実行順序を考えた時に、作業工程上の従属関係を考慮するクリティカルパス法による従来の手法に加えて、必要リソースが限られているために発生する従属関係をも考慮する手法であり、プロジェクトマネジメントは、要員の人間心理や行動特性、及び社会的・組織的問題も考慮して、工期の短縮、納期の順守を目的としてプロジエクト管理を行う実践的手法であり、各々のタスクから除去した安全余裕を、「バッファ」に集約して管理するようになっている。
【0005】
一方、例えばプラント建設物等の建設工事において、工事の進捗を確認できるようにするために、建設物の各部位に対する検査の進捗状況を物量に換算した工事進捗データを、CADデータベースに伝送して、工事進捗データと、CAD設計データとに基づいて、3D-CADシステム上で工事の進捗状況が3Dグラフィック表示されるようにした工事の進捗管理システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の工事の進捗状況を3Dグラフィック表示できるようにした特許文献1の進捗管理システムでは、工事の主な作業は最後に必ず検査を伴う点に着目して、検査状況と関連させて工事の進捗状況を3Dグラフィック表示させると共に、稲妻表示された工程表と連動させて、工事の遅延が生じた工程項目に関して、完了目標日を実現するために必要な工程管理情報を表示させるようになっているが、例えば施工現場において、3Dグラフィック表示された建設物の3次元モデルに、時間軸の要素を加味して4次元シミュレートすることに加えて、現場に応じた施工条件等の変更を反映させながら工程項目を組み替えたり修正したりして、工程データを調整することは困難である。
【0008】
特に、CAD設計データでは、足場材等の仮設材については、設計データに反映されておらず、また仮設材を含めたCAD設計データを作成するには、多くの手間を要することになる一方で、施工現場では、仮設材の設置によって材料の搬送路や、重機の設置位置等に制約を受けて、施工条件や工程を見直す必要を生じることから、例えば施工現場において、3Dグラフィック表示された仮設材を加えた建設物の3次元モデルに、時間軸の要素を加味して容易に4次元シミュレートできるようにすると共に、現場に応じた施工条件等の変更を反映させながら工程項目を組み替えたり修正したりして、工程データを容易に調整できるようにする技術の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、例えば施工現場において、3Dグラフィック表示された仮設材を加えた建設物の3次元モデルに、時間軸の要素を加味して容易に4次元シミュレートすることができると共に、現場に応じた施工条件等の変更を反映させながら工程項目を組み替えたり修正したりして、工程データを容易に調整することのできる建設物の施工管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、三次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理装置であって、3次元CADプログラムを用いて作成された建設物の3次元設計モデルの設計データを記憶する3次元設計データ記憶部と、CCPM機能を備える工程管理プログラムを用いて作成された建設物を建設する際の工程データを記憶する工程データ記憶部と、前記3次元設計データ記憶部及び前記工程データ記憶部に記憶されているデータから、建設物の施工状況を4次元シミュレートする4次元シミュレート部とを含んでおり、該4次元シミュレート部は、前記3次元設計データ記憶部に記憶された建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データ及び足場、型枠等の仮設材のモデルのデータと、前記工程データ記憶部に記憶された建設物の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付け部と、建設物の所定の部位を建設する際に用いられる前記足場、型枠等の仮設材のモデルを作成可能な仮設材モデル作成部と、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させる4次元シミュレーション表示部とを備えており、前記仮設材モデル作成部では、前記足場、型枠等の仮設材のモデルは、前記4次元シミュレート部に取り込まれた建設物の3次元設計モデルを、画面上で2次元表示させることによって得られた2次元平面図面上において、仮設材の設置エリアを指定し、その高さを与えることで、ボリュームと設置位置が指定されただけの簡易部材として3次元モデル化されるようになっており、前記4次元シミュレーション表示部は、時間軸の進行に伴って、建設物の所定の部位の施工状況を、作成した前記仮設材のモデルと共に画面上にシミュレート表示できるようになっており、シミュレート表示された前記仮設材のモデルを含む建設物の所定の部位の施工状況を見て、前記工程データ記憶部から取り込んだ工程データの見直しを行えるようにする建設物の施工管理装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
また、本発明の建設物の施工管理装置は、前記4次元シミュレート部は、前記工程データ記憶部から取り込んだ工程データを修正可能な、CCPM機能を備えていないプログラムによる簡易工程調整部を備えており、該簡易工程調整部において、前記工程データ記憶部から取り込んだ工程データの見直しを行えるようなっており、前記施工紐付け部は、建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データ及び作成した前記仮設材のモデルのデータと、前記簡易工程調整部で見直された工程データとを関連付けして、建設物の所定の部位の施工の開始から終了までの見直された施工状況が画面上に明示されるように紐付けするようになっていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の建設物の施工管理装置は、前記施工紐付け部が、工程・ステータス紐付け部を備えており、該工程・ステータス紐付け部は、建設物の所定の部位を建設する際の工程データを構成する工程項目毎に、工程期間中の部材ステータスと工程期間経過後の部材ステータスとを設定して、紐付けするようになっていることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の建設物の施工管理装置は、前記施工紐付け部が、工程・モデル紐付け部を備えており、該工程・モデル紐付け部は、建設物の前記3次元設計モデルの所定の部位の設計データ及び作成した前記仮設材のモデル毎に、一又は複数の工程項目の割り当てを実施するようになっていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の建設物の施工管理装置は、3次元CADプログラムを用いて建設物の前記3次元設計モデルの設計データを作成する、3次元設計モデル作成部を備えており、該3次元設計モデル作成部は、作成した建設物の前記3次元設計モデルの設計データを前記3次元設計データ記憶部に記憶させるようになっていると共に、作成した建設物の前記3次元設計モデルを修正した、建設物の3次元修正設計モデルを作成できるようになっていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の建設物の施工管理装置は、CCPM機能を備える工程管理プログラムを用いて建設物を建設する際の工程データを作成する、工程データ作成部を備えており、該工程データ作成部は、作成した工程データを前記工程データ記憶部に記憶させるようになっていると共に、前記4次元シミュレート部の前記簡易工程調整部によって見直された工程データから、CCPM機能を備える工程管理プログラムによって、建設物を建設する際の修正工程データを作成できるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の建設物の施工管理装置によれば、例えば施工現場において、3Dグラフィック表示された仮設材を加えた建設物の3次元モデルに、時間軸の要素を加えて容易に4次元シミュレートすることができると共に、現場に応じた施工条件等の変更を反映させながら工程項目を組み替えたり修正したりして、工程データを容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置の構成を説明するブロック図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置の4次元シミュレート部による処理手順を説明するフローチャートである。
【
図3】仮設材モデル作成部による処理手順を説明するフローチャートである。
【
図4】施工紐付け部の工程・ステータス紐付け部による処理手順を説明するフローチャートである。
【
図5】施工紐付け部の工程・モデル紐付け部による処理手順を説明するフローチャートである。
【
図6】4次元シミュレーション表示部によって表示された建設物の3次元設計モデルを例示する説明図である。
【
図7】4次元シミュレーション表示部によって表示された仮設材のモデルを例示する説明図である。
【
図8】施工紐付け部において、建設物30の所定の部位を建設する際の工程項目毎に、工程期間中および工程期間経過後の部材ステータスを設定する画面を例示する説明図である。
【
図9】(a)、(b)は、施工紐付け部において、建設物の3次元設計モデルの所定の部位の設計データ及び作成した仮設材のモデルと、工程データとを関連付けする画面を例示する説明図である。
【
図10】簡易工程調整部において工程データを見直す画面を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置10は、建設物30として、例えば営業中の鉄道路線に隣接して、地上よりも高い位置に新しい鉄道路線を敷設するための高架橋を、プラットフォーム構造物と共に建設する工事(
図6参照)において、例えば施工現場の管理事務所で、3Dグラフィック表示された仮設材のモデル31(
図7参照)を含む建設物30の3次元設計モデルに、時間軸の要素を加味して容易に4次元シミュレートできるようにすると共に、現場に応じた施工条件等の変更を反映させながら工程項目を組み替えたり修正したりして、工程データを容易に調整できるようにすることで、建設物30を建設する工事が所定の工期内に終了するように、建設物30の施工状況を効率良く適切に管理できるようにするための、例えばコンピュータからなる装置として用いられる。
【0020】
すなわち、建設物30として、例えば高架橋やプラットフォーム構造物を、営業中の鉄道路線に隣接して建設する工事では、営業中の鉄道路線や周囲の環境に影響を与えないように、細心の注意を払って施工する必要があり、特に足場材等の仮設材については、現場の状況に応じて設置場所や設置期間等を適宜変更する必要があり、これに伴って工程データもまた、必要に応じて適宜見直す必要があることから、本実施形態では、建設物の施工管理装置10を用いることにより、時間軸の要素を加味して4次元シミュレートされた3次元のCIMモデルを見ることで、工程項目を組み替えたり修正したりしながら簡易に工程データを調整することを可能にして、建設物の施工を効率良く適切に管理できるようにしている。
【0021】
そして、本実施形態の建設物の施工管理装置10は、コンピュータに組み込まれた三次元モデル解析プログラムを用いて建設物30の施工を管理する管理装置であって、
図1に示すように、3次元CADプログラムを用いて作成された建設物30の3次元設計モデルの設計データを記憶する3次元設計データ記憶部11と、CCPM(Critical Chain Project Management)機能を備える工程管理プログラムを用いて作成された建設物30を建設する際の工程データを記憶する工程データ記憶部12と、3次元設計データ記憶部11及び工程データ記憶部12に記憶されているデータから、建設物30である高架橋及びプラットフォーム構造物の施工状況を4次元シミュレートする4次元シミュレート部13とを含んで構成されている。
【0022】
4次元シミュレート部13は、3次元設計データ記憶部11に記憶された建設物30の3次元設計モデルの、例えば工区分けされた施工領域の所定の部位の設計データ及び仮設材のモデル31のデータ(
図7参照)と、工程データ記憶部12に記憶された建設物30の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物30の例えば工区分けされた施工領域の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が、画面上に明示されるように紐付けする施工紐付け部14と、建設物30の所定の部位を建設する際に用いられる仮設材のモデル31を作成可能な仮設材モデル作成部15と、建設物30の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させる4次元シミュレーション表示部16とを備えている。4次元シミュレーション表示部16は、時間軸の進行に伴って、建設物30の所定の部位の施工状況を、作成した仮設材のモデル31と共に画面上にシミュレート表示できるようになっており(
図7、
図9参照)、シミュレート表示された仮設材のモデル31を含む建設物30の所定の部位の施工状況を見て、工程データ記憶部12から取り込んだ工程データの見直しを行えるようにする。
【0023】
また、本実施形態では、仮設材モデル作成部15において、仮設材のモデル31は、4次元シミュレート部13に取り込まれた2次元平面図面上でエリア及び高さ情報を受け付けることで、簡易部材として3次元モデル化されるようになっている。
【0024】
さらに、本実施形態では、4次元シミュレート部13は、工程データ記憶部12から取り込んだ工程データを修正可能な、CCPM機能を備えていないプログラムによる簡易工程調整部17を備えている。簡易工程調整部17においては、工程データ記憶部12から取り込んだ工程データの見直しを行えるようなっている。施工紐付け部14は、建設物30の3次元設計モデルの所定の部位の設計データ及び作成した仮設材のモデル31のデータと、簡易工程調整部17で見直された工程データとを関連付けして、建設物30の所定の部位の施工の開始から終了までの、見直された施工状況が画面上に明示されるように紐付けするようになっている。
【0025】
さらにまた、本実施形態では、施工管理装置10は、3次元CADプログラムを用いて建設物30の3次元設計モデルの設計データを作成する、3次元設計モデル作成部18を備えることができる。3次元設計モデル作成部18は、施工管理装置10とは別の、3次元CADプログラムが組み込まれた他のコンピュータ等に設けることもできる(
図1参照)。この3次元設計モデル作成部18は、作成した建設物30の3次元設計モデルの設計データを、3次元設計データ記憶部11に記憶させるようになっていると共に、作成した建設物30の3次元設計モデルを修正した、建設物30の3次元修正設計モデルを作成できるようになっている。
【0026】
また、本実施形態では、施工管理装置10は、CCPM機能を備える工程管理プログラムを用いて建設物30を建設する際の工程データを作成する、工程データ作成部19を備えることができる。工程データ作成部19は、施工管理装置10とは別の、CCPM機能を備える工程管理ソフトが組み込まれた他のコンピュータ等に設けることもできる(
図1参照)。この工程データ作成部19は、作成した工程データを工程データ記憶部12に記憶させるようになっていると共に、4次元シミュレート部13の簡易工程調整部17によって見直された工程データから、CCPM機能を備える工程管理プログラムによって、建設物30を建設する際の修正工程データを作成できるようになっている。
【0027】
本実施形態では、施工管理装置10は、情報処理装置として、例えばパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータを含んで構成されている。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)、HDD(Hard Disk Drive)、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を備えている。CPUは、ROMに組み込まれた各種の制御プログラムに従って、RAMをワークエリアとして使用しながら、施工管理装置10の全体の動作を制御する。また、CPUは、各種のコンピュータプログラムがROMに組み込まれていることにより、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を機能させると共に、建設物30の3次元設計モデルの設計データや、工程データや、仮設材のモデル31のデータ等を含む各種のデータを、例えばデータベース部に記憶させたり、所定の情報としてディスプレイ等の画面上に表示させたり、プリンタから出力させたりできるようになっている。
【0028】
また、本実施形態では、施工管理装置10の3次元設計データ記憶部11は、3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物30である高架橋及びプラットフォーム構造物の3次元設計モデルの設計データを記憶する。本実施形態では、施工管理装置10は、好ましくは3次元CADプログラムを用いて建設物30の3次元設計モデルの設計データを作成する、3次元設計モデル作成部18を備えており、この3次元設計モデル作成部18に組み込まれた公知の各種の3次元CADプログラムによって作成された3次元設計モデルの設計データを、3次元設計データ記憶部11に記憶させることができるようになっている。3次元設計モデル作成部18に組み込まれる3次元CADプログラム(3次元CADソフト)としては、例えばBIMモデルを作成可能なBIMツールである、Autodesk社製の「Revit」を好ましく用いることができる。建設物30の3次元設計モデルの設計データは、施工管理装置10とは別の装置において3次元CADプログラムを用いて作成されたものを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して施工管理装置10に取り込んで、3次元設計データ記憶部11に記憶させることもできる。
【0029】
本実施形態の施工管理装置10の工程データ記憶部12は、CCPM機能を備える工程管理プログラムを用いて作成された、建設物30である高架橋及びプラットフォーム構造物を構築する際の工程データを記憶する。本実施形態では、施工管理装置10は、好ましくはCCPM機能を備える工程管理プログラムを用いて建設物30を建設する際の工程データを作成する、工程データ作成部19を備えており、この工程データ作成部19に組み込まれた公知のCCPM機能を備える工程管理プログラムによって作成された工程データを、工程データ記憶部12に記憶させることができるようになっている。建設物30を建設する際の工程データは、施工管理装置10とは別の装置においてCCPM機能を備える工程管理プログラムを用いて作成されたものを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して施工管理装置10に取り込んで、工程データ記憶部12に記憶させることもできる。
【0030】
ここで、CCPM機能を備える工程管理プログラムは、制約条件の理論であるTOC(Theory of Constraints)の考えに基づいて、全体最適の視点で開発されたクリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)を採用した工程管理ソフト(工程管理プログラム)である。クリティカルチェーンは、プロジェクトにおいて各タスクの実行順序を考えた時に、作業工程上の従属関係を考慮するクリティカルパス法による従来の手法に加えて、必要リソースが限られているために発生する従属関係をも考慮する手法である。プロジェクトマネジメントは、要員の人間心理や行動特性、及び社会的・組織的問題も考慮して、工期の短縮、納期の順守を目的としてプロジエクト管理を行う実践的手法であり、各々のタスクから除去した安全余裕を、「バッファ」に集約して管理するようになっている。CCPM機能を備える工程管理プログラムは、好ましくは積算情報を反映させたり、一日当たりの施工量や休工日を設定したり、CP(クリティカル・パス)を設定したりする機能も備えている。このようなCCPM機能を備える工程管理ソフト(工程管理プログラム)としては、「Being Project-CCPM」(株式会社ビーイング製)を用いることができる。
【0031】
本実施形態では、施工管理装置10の4次元シミュレート部13は、3次元設計データ記憶部11に記憶されている、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位の3次元設計モデルの設計データや、工程データ記憶部12に記憶されている、建設物30の工区分けされた所定の部位を建設する際の工程データを取り込んで、これらを関連付けすることにより、建設物30である高架橋及びプラットフォーム構造物の施工状況を4次元シミュレートして、例えばディスプレイの画面上に表示させる。また4次元シミュレート部13には、背景データとして、施工現場の2次元平面図等のデータが取り込まれるようになっている。
【0032】
4次元シミュレート部13は、公知の三次元モデル解析プログラムを、コンピュータである施工管理装置10に組み込むことによって形成されている。三次元モデル解析プログラムは、三次元モデルの作成や点群表示、情報の取得や解析等を行なう機能を備えている。三次元モデル解析プログラムは、後述する施工紐付け部14や、仮設材モデル作成部15や、4次元シミュレーション表示部16や、簡易工程調整部17を実装するための開発環境を、ソフトウェア側に提供できるものとなっている。このような開発環境をソフトウェア側に提供できる三次元モデル解析プログラムとして、例えばパスコ社製ソフト「PADMS」を用いることができる。
【0033】
4次元シミュレート部13の施工紐付け部14は、工程・ステータス紐付け部14bと、工程・モデル紐付け部14aとを備えている。工程・ステータス紐付け部14bでは、
図8に示すように、部材ステータス32として、例えば「鉄筋」、「型枠」、「コンクリ打設」、「養生」、「施工中」、「完成」、「仮設」、「撤去中」、「撤去済み」、「未着手」、「待ち」、「完成後非表示」、「ケレン処理」、「施工中―透かし」等の項目に、例えば作業員が異なる色32aを与えて編集する。編集結果は、施工管理装置10の部材ステータス記憶部20に記憶されるようになっている。工程・ステータス紐付け部14bでは、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位を建設する際の工程データを構成する工程項目33毎に、例えば工程期間中の部材ステータス33aと工程期間経過後の部材ステータス33bとを、異なる色32aを与えて編集された部材ステータス32により色分けした状態で設定して、これらの工程項目33と工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33a,33bとを紐付けする。工程・ステータス紐付け部14bでは、後述する部材ステータス編集ステップS3及び工程・ステータス紐付けステップS5が行われるようになっている。
【0034】
工程・モデル紐付け部14aでは、作業員が、
図9(a)、(b)に示すように、画面上に階層構造をとった状態で表示されている、建設物30の3次元設計モデルの所定の部位30aや仮設材のモデル31のデータ毎に、工程表として表示されている、建設物30の工程データを構成する工程項目33のうちの一または複数を選択し、これらの建設物30の3次元設計モデルの所定の部位30aの設計データや仮設材のモデル31のデータと、これらの工程項目33とを紐付けする。さらに、工程項目33は、工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33aおよび33bと紐付けられているため(
図8参照)、所定の部位30aの設計データや仮設材のモデル31のデータ毎に、各工程項目における工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータスが紐付けられる。また、ここで所定の部位30aの工程着手前における初期ステータスも併せて設定する。その結果、各工程の経過に伴い、建設物30の3次元設計モデルの所定の各部位30aや仮設材のモデル31における施工状況の進捗がそれぞれ設定される。工程・モデル紐付け部14aでは、後述する工程・モデル紐付けステップS6が行われるようになっている。
【0035】
4次元シミュレート部13の仮設材モデル作成部15は、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位を構築する際に用いられる、例えば足場、型枠等の仮設材のモデル31を、例えばボリュームと設置位置を指定するだけの、簡易なモデルとして作成する機能を備えている。仮設材モデル作成部15は、例えば4次元シミュレート部13に取り込まれた建設物30の3次元設計モデルを、画面上で2次元表示させ、好ましくはこのような3次元設計モデルを2次元表示させることによって4次元シミュレート部13に取り込まれた2次元平面図面上において、仮設材の設置エリアを指定し、その高さを与えることで、
図7に示すように、六面体形状の簡易部材として、仮設材のモデル31を、3次元モデル化できるようになっている。作成された仮設材のモデル31は、施工管理装置10の仮設材モデル記憶部21に記憶されるようになっている。また作成された仮設材のモデル31は、施工紐付け部14によって、建設物の工区分けされた所定の部位を建設する際の工程データにおける、仮設材に関する工程項目33と、例えば工程期間中の部材ステータス33aと工程期間経過後の部材ステータス33bとで色分けした状態で、紐付けされるようになっている。仮設材モデル作成部15では、後述する仮設材モデル作成ステップS4が行われるようになっている。仮設材のモデル31は、別に作成した2次元平面図面を、4次元シミュレート部13に直接取り込んで、仮設材の設置エリアを指定し、その高さを与えることで、3次元モデル化することもできる。
【0036】
4次元シミュレート部13の4次元シミュレーション表示部16は、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位における、施工の開始から終了までの施工状況を、建設物30の3次元設計モデルを作成した仮設材のモデル31と共に画面上に表示させてシミュレートする機能を備えている(
図7参照)。すなわち、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位、および、作成した仮設材のモデル31毎に設定されている、各工程項目における工程着手前、工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33aおよび33bに基づき、4次元シミュレーション表示部16は、工程項目の進捗による時間軸の進行に伴って、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位における建設物30の3次元設計モデルの施工状況を、作成した仮設材のモデル31の施工状況と共に画面上にシミュレート表示できるようになっている。作業員は、4次元シミュレーション表示部16によって画面上にシミュレート表示された、仮設材31のモデルを含む建設物30の所定の部位の、時間軸の進行に伴なう経時的な施工状況を見て、工程データ記憶部12から取り込んだ工程データの細かな見直しを、例えば簡易工程調整部17において適切に行うことが可能になる。
【0037】
また、4次元シミュレーション表示部16は、例えば簡易工程調整部17において見直された見直し工程データと関連付けされた、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位の時間軸の進行に伴なう見直し後の経時的な施工状況を、仮設材のモデル31と共に建設物30の3次元設計モデルを再生して、シミュレート表示できるようになっている。さらに、4次元シミュレーション表示部16は、例えば簡易工程調整部17において見直された最終の工程データを例えば工程データ作成部19に送ってCCPM機能を備える工程管理プログラムにより作成し直された、修正工程データと関連付けされた、建設物30の所定の部位の、時間軸の進行に伴なう修正後の経時的な施工状況を、仮設材のモデル31と共に建設物30の3次元設計モデルを再生して、シミュレート表示できるようになっている。4次元シミュレーション表示部16では、後述する4次元シミュレーション実施ステップS7が行われるようになっている。
【0038】
4次元シミュレート部13の簡易工程調整部17は、4次元シミュレーション表示部16によって画面上にシミュレート表示された、仮設材31のモデルを含む建設物30の3次元設計モデルの所定の部位の経時的な施工状況を見た作業員が、工程データ記憶部12から取り込んだ工程データの見直しを、当該4次元シミュレート部13において行えるようにする機能を備えている。簡易工程調整部17は、工程データ記憶部12から取り込んだ工程データを修正可能な、CCPM機能を備えていない簡易なプログラムによるものとなっている。簡易工程調整部17は、CCPM機能を備えていない公知の簡易な工程管理プログラムを施工管理装置10に組み込んだり、施工管理装置10において新たに工程管理プログラムを作成したりすることになどよって、4次元シミュレート部13に設けることができる。
【0039】
簡易工程調整部17では、4次元シミュレーション表示部16により画面上にシミュレート表示された、建設物30の所定の部位の3次元設計モデル30や仮設材のモデル31の経時的な施工状況を見た作業員が、例えば
図10に示す画面において、現場の状況に応じた施工条件等の変更や、仮設材の設置位置や設置期間の変更に伴う工程項目33の修正、工程項目33の順序の組み替えや削除等による工程データの調整を、例えば工程データ作成部19のCCPM機能を備える工程管理プログラムに工程データを送り返すことなく、当該簡易工程調整部16において簡易に且つ容易に行なうことができるようになっている。簡易工程調整部16で調整された見直し工程データは、施工紐付け部14に送られて、建設物30の3次元設計モデルの工区分けされた施工領域の所定の部位の設計データと関連付けされることで、建設物30の所定の部位の施工の開始から終了までの見直された施工状況が、画面上にシミュレート表示できるように紐付けされるようになっている。
【0040】
上述の構成を備える本実施形態の建設物の施工管理装置10では、4次元シミュレート部13において、
図2のフローチャートに示す処理手順に従って、時間軸の進行に伴なう建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位の施工状況を、作成した簡易な仮設材のモデル31と共に建設物30の3次元設計モデルを画面上にシミュレート表示することで、これを見た作業員に評価させることができるようになっている。すなわち、作業員は、シミュレート表示された仮設材のモデル31を含む建設物30の所定の部位の3次元設計モデルの、時間軸の進行に伴なう施工状況を見ることで、当該工区分けされた施工領域の所定の部位における施工方法や施工期間等について評価を実施し、評価の結果に応じて、工程データ記憶部12から取り込んだ工程データの見直しや、仮設材モデル作成部15で作成した仮設材のモデル31の修正や、3次元設計データ記憶部11から取り込んだ建設物30の3次元設計モデルの修正等を、適宜行うことができるようになっている。4次元シミュレート部13では、好ましくは3次元設計モデル取込みステップS1と、工程データ取込みステップS2と、部材ステータス編集ステップS3と、仮設材モデル作成ステップS4と、工程・ステータス紐付けステップS5と、工程・モデル紐付けステップS6と、4次元シミュレーション実施ステップS7とによる処理手順を経て、時間軸の進行に伴なう建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位の施工状況を、仮設材のモデル31及び建設物30の3次元設計モデルを画面上に表示することによって、シミュレート表示できるようになっている。
【0041】
3次元設計モデル取込みステップS1では、3次元設計データ記憶部11に記憶されている、3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物30である高架橋及びプラットフォーム構造物の、例えば工区分けされた施工領域の所定の部位毎の3次元設計モデルの設計データを、4次元シミュレート部13に取り込む。
【0042】
工程データ取込みステップS2では、工程データ記憶部12に記憶されている、CCPM機能を備える工程管理プログラムを用いて作成された、建設物30である高架橋及びプラットフォーム構造物を構築する際の、例えば工区分けされた施工領域の所定の部位毎の工程データを、4次元シミュレート部13に取り込む。
【0043】
部材ステータス編集ステップS3では、上述の施工紐付け部14の工程・ステータス紐付け部14bにおいて、
図8に示すように、部材ステータス32として、例えば「鉄筋」、「型枠」、「コンクリ打設」、「養生」、「施工中」、「完成」、「仮設」、「撤去中」、「撤去済み」、「未着手」、「待ち」、「完成後非表示」、「ケレン処理」、「施工中―透かし」等の項目に、作業員が画面を見ながら操作することで、異なる色を与えることによって、これらの部材ステータス32を編集することができる。
【0044】
仮設材作成ステップS4では、上述の仮設材モデル作成部15において、
図3に示す処理手順に従って、例えば足場、型枠等の仮設材のモデル31を、簡易なモデルとして作成する。すなわち、仮設材モデル作成ステップS4では、好ましくは3次元設計モデルを画面上で2次元表示させることで4次元シミュレート部13に取り込まれた2次元平面図面上において、例えば作業員が、マウス、キーボード等の入力デバイスを用いて仮設材が設けられるエリアを指定した後に、仮設材の高さを設定し、さらに仮設材が設置される高さ方向の設置位置を設定することで、例えばボリュームと設置位置を指定しただけの、六面体形状の簡易なモデルとして、仮設材のモデル31を完成させることができる。
【0045】
工程・ステータス紐付けステップS5では、上述の施工紐付け部14の工程・ステータス紐付け部14bにおいて、
図4に示す処理手順に従って、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位を建設する際の工程データを構成する工程項目33毎に、部材ステータス32を設定する。すなわち、工程・ステータス紐付けステップS5では、作業員は、各々の工程項目33を指定して、これらの指定された工程項目33毎に、工程期間中の部材ステータス33aを、色分けした状態で編集された部材ステータス32により設定し(
図8参照)、さらに工程期間経過後の部材ステータス33bを、色分けした状態で編集された部材ステータス32により設定することによって、これらの工程項目33と工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33a,33bとを紐付けすることができる。
【0046】
工程・モデル紐付けステップS6では、上述の施工紐付け部14の工程・モデル紐付け部14aにおいて、
図5に示す処理手順に従って、選択した建設物30の3次元設計モデルの所定の部位の設計データや、作成した仮設材のモデル31毎に、一又は複数の工程項目の割り当てを実施する。すなわち、工程・モデル紐付けステップS6では、4次元シミュレート部13に取り込んだ、複数の工程項目33からなる工程データを読み込むと共に、建設物30の3次元設計モデルの所定の部位の設計データを仮設材のモデル31のデータとともに読み込む。これらのデータを読み込んだら、読み込んだ3次元設計モデル30の所定の部位の設計データや仮設材のモデル31のデータから、作業員は、工程項目33を紐付けしたい建設物30の部位や仮設材を選択し、一又は複数の工程項目33の割り当てを実施すると共に、該当する工程項目33の施工前における、割当工程になる前の初期状態である初期の部材ステータスを設定する。建設物30の全ての3次元設計モデルの所定の部位及び仮設材のモデル31に対して、工程項目33の割り当てが、繰り返し実施されることになる。
【0047】
4次元シミュレーション実施ステップS7は、4次元シミュレーション表示部16によって実施されるようになっており、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位における、工程データと関連付けされた施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう施工状況を、建設物30の3次元設計モデルを仮設材のモデル31と共に再生して、画面上にシミュレート表示できるようになっている。また、4次元シミュレーション実施ステップS7では、例えば簡易工程調整部17において見直された見直し工程データと関連付けされた、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位の時間軸の進行に伴なう見直し後の経時的な施工状況を、仮設材のモデル31と共に建設物30の3次元設計モデルを再生して、シミュレート表示できるようになっている。さらに、4次元シミュレーション表示部16は、例えば簡易工程調整部17において見直された最終の工程データを例えば工程データ作成部19に送って、CCPM機能を備える工程管理プログラムにより作成し直された修正工程データと関連付けされた、建設物30の工区分けされた施工領域の所定の部位の時間軸の進行に伴なう修正後の経時的な施工状況を、仮設材のモデル31と共に建設物30の3次元設計モデルを再生して、シミュレート表示できるようになっている。
【0048】
そして、作業員は、4次元シミュレーション実施ステップS7で建設物30の3次元設計モデルを仮設材のモデル31と共に再生することにより画面にシミュレート表示された、工程データと関連付けされた施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況や、見直し工程データと関連付けされた施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況や、修正工程データと関連付けされた施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況を見ながら、工程データや仮設材のモデル31等に関する評価を実施することが可能になる。
【0049】
すなわち、作業員は、画面にシミュレート表示された、施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況を見ながら、例えば目標の工期内に建設物30の施工を完了することができるか否か、設定され順序通りに各々の工程項目33を施工できるか否か、機械や資材の搬入が可能か否か、施工の順序が間違っていないか否か、投入リリース(人、資材、建機)の平準化が可能か否か等の評価項目について評価を実施する。これによって、例えば工程データの改善点や、足場材などの仮設材のモデル31の改善点や、3次元設計モデル30の改善点等を洗い出すことが可能になる。
【0050】
作業員による評価によって、工程データ記憶部12から4次元シミュレート部13に取り込まれた工程データに、改善点があるとされた場合には、工程データは、例えば4次元シミュレート部13の簡易工程調整部17にフィードバックされて、好ましくは工程データ作成部19のCCPM機能を備える工程管理プログラムに工程データをフィードバックすることなく、当該簡易工程調整部16において、簡易に工程データの見直しを行なうことが可能になる。
【0051】
当該簡易工程調整部16において見直された、見直し工程データは、施工紐付け部14に取り込まれて、仮設材のモデル31を含む建設物30の3次元設計モデルの設計データと関連付けされる。見直し工程データと関連付けされた、施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況は、建設物30の3次元設計モデルを仮設材のモデル31と共に再生することにより画面にシミュレート表示されて、作業員による評価を再度実施することが可能になる。
【0052】
このような作業員による再評価は、改善点が無いと評価されるまで繰り返し行われる。改善点が無いと評価された見直し工程データは、最終の見直し工程データとして、好ましくは施工管理装置10の工程データ作成部19に送ることができる。工程データ作成部19では、4次元シミュレート部13の簡易工程調整部17で見直された最終の見直し工程データに基づいて、CCPM機能を備える工程管理プログラムによって、好ましくは積算情報を反映させたり、一日当たりの施工量や休工日を反映させたりした、建設物30を建設する際の実用的でより詳細な修正工程データを作成することができる。
【0053】
工程データ作成部19において修正された修正工程データは、施工紐付け部14に取り込むことができる。施工紐付け部14に取り込まれた修正工程データは、仮設材のモデル31を含む建設物30の3次元設計モデルの設計データと関連付けすることができる。修正工程データと関連付けされた、施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況は、建設物30の3次元設計モデルを仮設材のモデル31と共に再生することにより画面にシミュレート表示されて、修正工程データに改善点があるか否かについて、作業員による評価を実施することが可能になる。修正工程データに改善点が無い場合には、修正なしとして、当該修正工程データを、建設物30である高架橋及びプラットフォーム構造物を実際に施工する際の工程データとして採用することができる。
【0054】
また、作業員による評価によって、仮設材のモデル31に改善点があると評価された場合には、仮設材のモデル31のデータを4次元シミュレート部13の仮設材モデル作成部15にフィードバックさせて、作業員により、例えば2次元平面図面上で、仮設材の設置エリアを指定し直すと共に、高さの情報を与え直すことにより、仮設材の修正モデルを作成することができる。作成された仮設材の修正モデルのデータは、施工紐付け部14に取り込むことができる。施工紐付け部14に取り込まれた仮設材の修正モデルのデータは、建設物30の3次元設計モデルの設計データと共に、工程データと関連付けすることができる。工程データと関連付けされた、施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況は、建設物30の3次元設計モデルを仮設材の修正モデルと共に再生することにより画面にシミュレート表示されて、仮設材の修正モデルに改善点があるか否かについて、作業員による評価を実施することが可能になる。仮設材の修正モデルに改善点が無い場合には、修正なしとして、当該仮設材の修正モデルを、建設物30である高架橋及びプラットフォーム構造物を実際に施工する際の仮設材のデータとして採用することができる。
【0055】
さらに、作業員による評価によって、建設物30の3次元設計モデルに改善点があると評価された場合には、3次元設計モデル30のデータは、好ましくは施工管理装置10の3次元設計モデル作成部19にフィードバックされて、3次元CADプログラムを用いて建設物30の3次元修正設計モデルの設計データが作成される。作成された3次元修正設計モデルの設計データは、施工紐付け部14に取り込むことができる。施工紐付け部14に取り込まれた3次元修正設計モデルの設計データは、仮設材の修正モデルのデータと共に、工程データと関連付けすることができる。工程データと関連付けされた、施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴なう建設物30の施工状況は、建設物30の3次元修正設計モデルを仮設材の修正モデルと共に再生することにより画面にシミュレート表示されて、建設物30の3次元修正設計モデルに改善点があるが否かについて、作業員による評価を実施することが可能になる。建設物30の3次元修正設計モデルに改善点が無い場合には、修正なしとして、当該建設物30の3次元修正設計モデルを、建設物30である高架橋及びプラットフォーム構造物を実際に建設物を施工する際のデータとして採用することができる。
【0056】
そして、上述の構成を備える本実施形態の建設物の施工管理装置10によれば、例えば施工現場において、3Dグラフィック表示された仮設材31を加えた建設物30の3次元モデルに、時間軸の要素を加えて容易に4次元シミュレートすることができると共に、現場に応じた施工条件等の変更を反映させながら工程項目33を組み替えたり修正したりして、工程データを容易に調整することが可能になる。
【0057】
すなわち、本実施形態によれば、建設物の施工管理装置10は、3次元設計データ記憶部11と、工程データ記憶部12と、4次元シミュレート部13とを含んで構成されており、4次元シミュレート部13は、3次元設計データ記憶部11に記憶された建設物30の3次元設計モデルの所定の部位の設計データ及び仮設材のモデル31のデータと、工程データ記憶部12に記憶された建設物30の所定の部位を建設する際の工程データとを関連付けして、建設物30の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況が画面上に明示されるように紐付けする施工紐付け部14と、建設物30の所定の部位を建設する際に用いられる仮設材のモデル31を作成可能な仮設材モデル作成部15と、建設物30の所定の部位の施工の開始から終了までの施工状況を画面上に表示させる4次元シミュレーション表示部16とを備えており、4次元シミュレーション表示部16は、時間軸の進行に伴って、建設物30の所定の部位の施工状況を、作成した仮設材のモデル31と共に画面上にシミュレート表示できるようになっており、シミュレート表示された仮設材のモデル31を含む建設物30の所定の部位の施工状況を見て、例えば作業員が工程データ記憶部12から取り込んだ工程データの見直しを行えるようになっている。
【0058】
これによって、本実施形態によれば、仮設材モデル作成部15において建設物30の所定の部位を建設する際に用いられる仮設材のモデル31を、例えば設置するエリアと仮設材の高さを指定するだけで簡易に作成したり修正したりすることで、仮設材のモデル31を加えた建設物30の3次元設計モデルを容易に形成することが可能になると共に、これらのモデルを工程データの各々の工程項目33と紐付けることで、時間軸の要素を加えて建設物30のモデル及び仮設材のモデル31の施工状況を容易に4次元シミュレートすることが可能になり、またシミュレート表示された仮設材のモデル31を含む建設物30の所定の部位の施工状況を見た作業員が、例えば簡易な工程管理プログラムによる簡易工程調整部16において、現場に応じた施工条件等の変更を反映させながら工程項目33を組み替えたり修正したりして、工程データを容易に調整することが可能になる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば建設物の3次元修正設計モデルや建設物を建設する際の修正工程データは、施工管理装置10に、3次元CADプログラムによる3次元設計モデル作成部やCCPM機能を備える工程管理プログラムによる工程データ作成部を設けて、これらの3次元設計モデル作成部や工程データ作成部において作成する必要は必ずしも無く、4次元シミュレート部で見直された建設物の3次元設計モデルの修正データや、簡易工程調整部によって見直された工程の修正データを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して送り込んで、施工管理装置10とは別の装置で作成することもできる。
【符号の説明】
【0060】
10 建設物の施工管理装置
11 3次元設計データ記憶部
12 工程データ記憶部
13 4次元シミュレート部
14 施工紐付け部
15 仮設材モデル作成部
16 4次元シミュレーション表示部
17 簡易工程調整部
18 3次元設計モデル作成部
19 工程データ作成部
30 建設物(建設物の3次元設計モデル)
31 仮設材のモデル
32 部材ステータス
33 工程項目