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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】個室使用状況表示具の取付構造
(51)【国際特許分類】
   G09F 7/00 20060101AFI20230512BHJP
   G09F 7/18 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
G09F7/00 Z
G09F7/00 M
G09F7/18 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019166671
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021043379
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100160299
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】小鷹 由香
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳一郎
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148670(JP,A)
【文献】特開2001-132342(JP,A)
【文献】特開2002-099230(JP,A)
【文献】特開2014-178430(JP,A)
【文献】特開2019-108782(JP,A)
【文献】特開平07-287529(JP,A)
【文献】実開平03-022294(JP,U)
【文献】実開昭53-020600(JP,U)
【文献】登録実用新案第3020353(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/00
G09F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個室を画設する区画体と、その一端が前記区画体に対して、内側及び外側の両方向に回転自在に支持されることにより、開閉自在に取付けられている扉と、を備える個室における、前記扉への個室使用状況表示具の取付構造であって、
前記個室使用状況表示具は、
板状であり、透光部を有する表示体と、
前記表示体の一端に設けられている鉛直方向の回動支持部を有する表示板と、
前記扉の取付部と、
前記表示体の少なくとも一面に貼設されており、前記個室の使用状況を識別可能な表示が形成されている貼付体と、を備え、
前記貼付体は、少なくとも一部に透光領域を有し、
前記表示体における前記透光部を通過した少なくとも一部の透過光が、前記貼付体の前記透光領域を透過可能となるように構成されており、
前記個室使用状況表示具は、前記扉の前記個室に対する外側面において、前記表示体が回動支持部を中心として回動自在に取付けられているとともに、
前記扉の取付部は鉛直方向に開放部が形成されている取付体と、薄板バネと、前記扉に対する前記表示の角度を暫定的に位置決めするための角度固定板と、を備え、
前記角度固定板は、前記取付体の前記開放部を塞ぐことができる形状に形成されており、係止片を前記取付体の収容端部に形成されている係止受具に係合させることにより、前記開放部に嵌脱自在に設けることができるようになっていることを特徴とする個室使用状況表示具の取付構造。
【請求項2】
前記貼付体は、貼付及び剥離自在に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の個室使用状況表示具の取付構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ等の個室における使用状況を外部から確認可能となる表示具及びその扉への取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
各種施設に設置されているトイレ等の個室は、多数の利用者が共用するため、外部から容易に使用状況を確認できることが利便性に資する。このような要請に基づき、従来、以下のような個室使用状況表示器50が提案されている。
【0003】
すなわち、個室の壁面55に設置され、第1のマークが付された表示面を有する第1のプレート51と、閉めると壁面55と略同一平面を形成する個室の扉56に設置された、第2のマークが付された表示面を有する第2のプレート52とを備えている。そして、第1のプレート51は、壁面55のなす水平方向と同方向である第1の方向からみた場合に、第1のマークが付された表示面が見えるように、所定角度で壁面55に設置され、第2のプレート52は、扉56を閉めた状態で第1の方向からみた場合に、第2のマークが付された表示面が見えるように、所定角度で扉56に設置されると共に、扉56を閉めた状態で第1の方向からみた場合に、第1のプレート51上の第1のマークを覆い隠して、第2のマークが見えるように、扉56に設置されていることを特徴とする個室使用状況表示器50である(特許文献1)(図11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-243692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の個室使用状況表示器50は、周囲が暗い場合では、その使用が認識しにくいという問題点が存在していた。
【0006】
また、通常、上記個室は内側から施錠されることになるが、体調の急変等に起因して個室内に使用者が倒れる等の場合があり、内側に扉を開けることが難しいことが多い。その際には、室外からの操作により解錠し、扉を当該室外側に開放する必要がある。一方、扉の吊元側に、一般的な個室使用状態を示す表示具を設けた場合には、扉を室外側に開放する際に破損してしまうことになるため、取付箇所に制約を受けるという問題点が存在していた。
【0007】
本発明は、上記各問題点を解決するためになされたものであり、視認し易く、取付箇所に制約がない個室使用状況表示具及びその取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、板状であり、透光部を有する表示体と、上記表示体の一端に設けられている鉛直方向の回動支持部を有する表示板と、上記扉の取付部と、上記表示体の少なくとも一面に貼設されており、個室の使用状況を識別可能な表示が形成されている貼付体と、を備え、上記貼付体は、少なくとも一部に透光領域を有し、上記表示体における上記透光部を通過した少なくとも一部の透過光が、上記貼付体の上記透光領域を透過(透光)可能となることで、上記個室の使用状況を識別できるように構成されていることを特徴とする個室使用状況表示具(以下、「本表示具」という場合がある。)を提供するものである。
【0009】
また、本表示具において、上記貼付体を貼付及び剥離自在に構成することにより、適時かつ容易に、所望の個室の使用状況を識別する表示を変更することができるため好適である。
【0010】
ここで、表示体は、少なくとも一部に透光部を有する必要があり、透光部はその目的を奏させるように、その形状、寸法及び数等を適宜に定めることができる。例えば、透光部として、複数の貫通孔を設けること、又は、連続的若しくは非連続的である任意の形状の透光性能を有する領域を設けることができる。また、表示体の形状及び材質等に制限はない。
【0011】
また、貼付体は、個室の使用状況を識別する表示が形成されており、背景、形状及び色彩等の組み合わせにより、その表示が認識可能であれば種々の構成を用いることができる。
例えば、文字、色彩、図形若しくはピクトグラム、又はその組み合わせ等を付すことにより、個室の使用状態を識別することができるように形成することができる。後述するように、本表示具の使用態様により、不使用であることの表示(「空室」あるいは「青色」の表示等)又は使用中であることの表示(「使用中」あるいは「赤色」の表示等)、トイレの存在を示すマーク(「男性」、「女性」、「便座と使用者を組み合わせたマーク」の表示等)等を行うことができる。
【0012】
また、貼付体は、少なくとも一部に、連続的若しくは非連続的である任意の形状の透光性能を有する領域を設けるものであればよく、色彩を異なるようにして、全体を透光領域とすること、又は遮光性能を有する領域が一部に設けられているもの等であってもよい。
なお、表示体の透光部及び貼付体の透光領域は、物体の反対面に存在する対象物が透過して認識できるものであればよく、必ずしも純粋に透明性を有している必要はない。
【0013】
また、貼付体は、板状体の少なくとも一面に貼付すればよいが、両面に貼付することとすれば、使用状況を複数の方向から視認できることになり、複数の入口を有する場所に設けられた個室に対しても適用することが可能となるため好適である。
【0014】
さらに、表示体における透光部を通過した少なくとも一部の透過光が、貼付体の透光領域を透過可能となるように構成されており、個室の使用状況を識別可能な表示を認識できるようになっている必要がある、特に、表示体の透光部の外縁が、貼付体に表示されている個室の使用状況を識別する表示の輪郭部と一致する形状であることが、視認性を高める上で好適であり、表示体の透光部を多数の小孔の集合体として形成することとすれば簡易に実現可能となる。
【0015】
本表示具によれば、表示体は透光部を有し、当該表示体において個室の使用状況を識別する表示を表す貼付体が貼設されており、当該貼付体は透光領域を有している。そして、表示体の透光部を透過した透過光が、貼付体の透光領域を透過することになるため、透過光により、貼付体が照射される効果が生じる。このように、表示体の透光部の存在により、明確にトイレ個室の使用状況を識別することが可能となり、簡易な構造により、低コストで視認し易い表示具とすることができる。
【0016】
また、本発明は、個室を画設する区画体と、その一端が上記区画体に対して、内側及び外側の両方向に回転自在に支持されることにより、開閉自在に取付けられている扉と、を備える上記個室における、上記扉への本表示具取付構造であって、上記表示具は、上記扉の上記個室に対する外側面において、上記表示体が上記支持体を中心として回動自在に取付けられていることを特徴とする個室使用状況表示具の取付構造(以下、「本取付構造」という場合がある。)を提供するものである。
【0017】
ここで、個室を画設する区画体は、開放空間から個室を形成するために設ける構造体であり、パネル板、壁材等の公知の部材を用いることができる。加えて、形状、配置態様及び数等に制限はない。
【0018】
また、本表示具の扉への取付箇所は、個室に対する外側面に突出する位置であれば制限はなく、個室を構成する区画体及び扉の設置態様において、適宜定めることができる。また、その取付方法についても制限はない。但し、本表示具の扉への取付箇所に応じて、扉の開放時(空室時)と、扉の閉止時(個室使用時)を示す表示部の表示を適切に行う必要がある。例えば、本表示具の表示体が扉の表面に対して平行に取り付けられる場合には、表示体に「空室」の表示を行い、扉の表面に対して垂直に取り付けられている場合には、表示体に「使用中」の表示を行う必要がある。
【0019】
また、表示体を回動自在に構成するために、取付けられている扉の移動に追従して、回動軸(支持軸)を中心とした回動動作を実現させる任意の手段(回動手段)を用いることができる。
【0020】
本取付構造によれば、扉の個室に対する外側において、表示体が回動自在に取付けられていることから、緊急時等において、扉を室外側に開放する必要が生じた場合において、扉の吊元側に本表示具が取り付けられていた場合であっても、支持体を中心として表示体を回動させることにより扉の回動動作に追従して、当該表示体を回動させることができる。そのため、任意の箇所に取り付けた場合でも破損することがなく、取付箇所に制約を受けることがない。したがって、個室の使用状態と、扉の位置に対応した使用状態又は不使用状態を示す表示を施すことにより、簡易かつ安価な構造で、容易に個室の使用状態を識別することが可能となる。
【0021】
なお、本取付構造において、表示体回動手段及び回動状態復帰手段を備えることとすれば、扉の室外側への解放時及び現状復帰時おいて、手動で表示体の位置を変更させる等の煩雑な作業を省くことができるため好適である。
【0022】
ここで、取付体の回動状態復帰手段とは、回動を開始した当初位置に表示体を戻す(復帰させる)ための回動動作を実現させる手段であればよく、例えば、板バネ、コイルスプリング若しくはその他の弾性体の付勢力、又は磁石による磁力の反発力等を利用する機構により構成することができる。
【0023】
また、本取付構造において、本表示具における上記扉の取付部は鉛直方向に開放部が形成されている取付体と、薄板バネと、上記扉に対する上記表示の角度を暫定的に位置決めするための角度固定板と、を備え、上記角度固定板は、上記取付体の上記開放部を塞ぐことができる形状に形成されており、係止片を、上記取付体の収容端部に形成されている係止受具に係合させることにより、上記開放部に嵌脱自在に設けることができるようになっていることとすれば、扉を室外側に開放する必要性が高くない個室に本表示具を取り付ける場合において、個室使用状況表示具の固定度を向上させることができるため好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、視認し易く、取付箇所に制約がない個室使用状況表示具及びその取付構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の個室使用状況表示具の取付構造(第1実施形態)を適用したトイレ個室を示す上面図である。
図2】本発明の個室使用状況表示具(第1実施形態)の分解斜視図である。
図3】(a)は、本発明の個室使用状況表示具(第1実施形態)の表示部の斜視図であり、(b)は、同図のA-A断面図(一部)である。
図4】本発明の個室使用状況表示具(第1実施形態)に関し、(a)は、上面図、(b)は、側面図、(c)は、(b)におけるB-B断面図である。
図5】本発明の個室使用状況表示具の取付構造(第1実施形態)(空室時)を示す斜視図である。
図6】本発明の個室使用状況表示具の取付構造(第1実施形態)(空室時)を模式的に示す上面図である。
図7】本発明の個室使用状況表示具の取付構造(第1実施形態)(トイレ個室使用時)を模式的に示す上面図である。
図8】本発明の個室使用状況表示具の取付構造(第1実施形態)(扉の通路側への解放時)を模式的に示す上面図である。
図9】(a)~(c)は、トイレ個室使用時から扉の通路側への解放時に至る場合における、図3のA-A断面に相当する部分の断面図である。
図10】本発明の個室使用状況表示具の取付構造(第2実施形態)(トイレ個室使用時)を示す斜視図である。
図11】従来の個室使用状況表示器を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本取付構造の一実施形態について、トイレの個室を例として、詳細に説明する。図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
なお、下記の説明中、扉Dの吊元側とは、開閉可能に取付パネルF2に取り付けられている扉Dの取付部側(図5等参照)をいう。
【0027】
[全体構成]
図1に示されるように、本取付構造K(個室使用状況表示具)の適用対象は、一定の広さを有する間仕切りのない開放空間が、複数の個室として区画されているトイレ個室Sである。
すなわち、壁体W1,W2(区画体)により区画されている全体空間内において、対向する上下の中央部に出入口Eが形成されており、各出入口Eの間に通路Rが形成されている。この通路Rに対向して、複数のトイレ個室Sが配置されている(なお、以下の説明において、特許請求の範囲の個室に対応する説明をする場合には、「トイレ個室」という語を使用し、便器Zを備える場所を示す一般的な説明を行う場合には、単に「トイレ」と称する。)。
【0028】
各トイレ個室Sは、通路Rと平行である壁体W1と、通路Rと垂直である1枚若しくは2枚の側面パネルY(区画体)、又は通路Rと垂直である壁体W2と、当該通路Rと平行である前面パネルF1及び取付パネルF2(区画体)と、扉Dとにより直方体形状に構成されており、その内部に便器Zが配置されている。
側面パネルY、前面パネルF1及び取付パネルF2は、所定寸法に形成されている矩形形状である公知のパネル材であり、前面パネルF1及び取付パネルF2は、壁体W又は側面パネルYと接合されている。
【0029】
扉Dは、前面パネルF1とともに、トイレ個室Sを形成する役割と当該個トイレ個室Sへの出入口を形成する役割を果たしており、所定形状に形成されている公知の部材である。この扉Dは、取付パネルF2に、一端部が回動自在に取付けられており、内側方向及び外側方向に開閉自在となっている。
【0030】
なお、通常使用時において、扉Dは閉止状態以上に通路R側に開放されないようになっているが、非常時には、通路R側にも開放される位置にまで回動可能となっている。
また、扉Dは、トイレ個室Sの空室時(不使用時)には、トイレ個室Sの内側に収容されるようになっていることが望ましく、本実施形態でも、そのような構成を前提としている。
【0031】
また、扉Dは、トイレ個室Sの側から施解錠できるようになっているとともに、非常時には、通路R(トイレ個室Sの外側)から解錠できるようになっている。
【0032】
[個室使用状況表示具及びその取付構造の第1実施形態]
第1実施形態の本表示具1は、透明樹脂製である表示部11及び当該表示部11の一端に設けられている回動支持部15を有する表示板10と、扉Dへの取付部20を備えている(図2図4)。
【0033】
表示部11は、矩形形状の白色薄板材であり、両面における全面に複数の丸型形状である貫通小孔11aを有している。上記貫通小孔11aが透光部を構成し、当該貫通小孔11a以外の部分が遮光部を構成することになる。上記表示部11の両面には、同一の図案が記載された、フィルムシート状の表示シールH(貼付体)が、貼付及び剥離自在であり、容易に張り替え可能となるように貼設されている。
【0034】
図案は、空室(不使用)であることを示すように青色の彩色が施された略正方形状の青彩色部H1(透光領域)と、不使用の状態であることを示すように、蓋が空いた状態の図柄が透明で記載されている透明部H2(透光領域)とから構成されている。この図案の表示により、トイレ個室Sが空室(不使用)であることが認識可能であり、青彩色部H1と透明部H2との組み合わせにより、視覚イメージとしてトイレ個室Sが空室(不使用)であることを一見して識別可能な表示となっている。なお、本実施形態では、青彩色部H1と透明部H2の各部は、ともに透光性能を有している。
【0035】
表示板10の表示部11における両面には、表示シールHが、図案が重なり合う同位置となるように貼付されており、表示部11の貫通小孔11aを透過した透過光が、表示シールHを透過可能となっている。
なお、表示部11には、孔径の小さい多数の貫通小孔11aが形成されているため、表示シールHの透明部H2の輪郭と、当該輪郭近傍の対応する貫通小孔11aとがほぼ一致する位置となり、表示シールHの透明部H2の視認性を高めることができるようになっている。
【0036】
このように構成されているため、扉Dがトイレ個室Sの内側に収納されている場合において、左右の両方向の出入口Eから通路Rに入ってきた利用者が、いずれの方向からもトイレ個室Sが不使用であることを視認できるようになっている(詳細は後記する)。
【0037】
回動支持部15は、回動を容易に行うことができるように略半円柱状に形成されており、半円部の弦と直行する向きに表示部11が設けられている。この回動支持部15は、鉛直方向における上下両端の突出端部16と、中央部17とから形成されている。上下の突出端部16には、支持突起31の第1挿通孔16aが形成されている。
【0038】
中央部17は、細長の略十字形状(図2における表示部11と直行する方向からの側面視)に形成されており、上下及び両側に4箇所の凹部が形成されている。上下方向の一対の凹部は同一形状に形成されているが、左右方向の凹部の形状は異なっている。説明上、回動支持部15の曲面部の先端側の凹部を第1凹部18と称する。
【0039】
中央部17の鉛直方向に対する横断面は、ピストル形状(J字形状)に類似する形状に形成されている(図3(b))。略ピストル形状である横断面は、先端方向に突出する突出部17bと、当該突出部17bに続く、グリップ部分に相当する基端部17cとから形成されている。そして、基端部17cは、外周の90度の円弧部17dと、内側の階段状部17eを備えており、突出部17bの長さは、円弧部17dを形成する部分の半径の約2倍に形成されている(略ピストル形状に形成されている部分において、階段状部17eと、当該階段状部17eに接する突出部17bの内側周縁部分を、「内側面部17a」という。)。そして、突出部17bは、取付部20の収納空間の奥行長と、略同一長さに形成されており、当該突出部17bの中点が回動支持部15の回動中心(後記支持突起31の位置)と一致することになる。
【0040】
(取付部)
取付部20は、取付体21と、薄板バネ25と、角度固定板27(位置決め手段)とを備えている。
【0041】
直方体形状である取付体21は一面が開放されており、内部には、表示部11の回動支持部15の受け入れ空間が形成されている。すなわち、取付体21の上下の端部には、回動支持部15の突出端部16を収容するための収容端部22が形成されているとともに、当該各収容端部22の間にはバネ嵌装部23が設けられている。
【0042】
収容端部22を構成する空間は、突出端部16の形状である半円柱に対応する形状に形成されている。
また、取付体21の上下の端部には、支持突起31の第2挿通孔21aが設けられており、当該取付体21の開放面に対向する側面には、扉Dへの取付孔(図示せず)が形成されている(本実施形態では3箇所)。
【0043】
薄板バネ25は略V字状であり、中央部がバネ嵌装部23の中間位置に取り付けられている。そして、各端部が、回動支持部15の内側面部17aと接するように配置され、回動支持部15の扉D方向への近接と離反の移動に追従して、動作可能となっている。
【0044】
上記薄板バネ25は、表示板10の回動支持部15を押圧する向きに付勢力(復元力)が作用するように、当該バネ嵌装部23に取り付けられている。
また、表示板10の回動支持部15が、取付部20の受け入れ空間に嵌入され、上下における回動支持部15の第1挿通孔16aと取付体21の第2挿通孔21aの位置が整合した状態で、支軸である支持突起31が軸挿されることにより、回動支持部15が回動自在に軸支されている。
【0045】
上記回動支持部15と取付体21の態様により、鉛直方向の支持突起31を中心として、表示部11を回動させる回動手段を構成している(本実施形態では、90度の範囲で回動可能となっている)。また、表示部11が回転した場合において、薄板バネ25が当該回動支持部15の内側面部17aに付勢力を付与することで、回転した向きと反対回りに回転するように、当該薄板バネ25が回転前の位置に現状復帰することになり、そのための回動復帰手段として動作することになっている。
【0046】
角度固定板27は、必要に応じて設ける部材であり、扉Dに対する表示板10の角度を、暫定的に位置決めするための薄板状部材である。この角度固定板27は、取付体21の鉛直方向の開放部を塞ぐことができる形状に形成されており、係止片27aを、取付体21の収容端部22に形成されている係止受具(図示せず)に係合させることにより、当該開放部に嵌脱自在(取り付け及び取り外しを簡易に行いうるよう)に設けることができるようになっている。
【0047】
本実施形態では、通常状態において、角度固定板27が取り付けられており、扉Dを外側方向に回転させる場合に、当該角固定板27を取り外すことにより、表示板10の表示部11が回動可能となっている。
【0048】
(個室使用状況表示具の取付構造)
本取付構造K(第1実施形態)は、本表示具1の取付部20の取付孔にネジ止めされることにより(符号32はネジを示す)、扉Dの吊元の上縁端部に取り付けられている。その際、表示板10の表示部11は、扉Dの表面と水平になる向きであって、当該扉Dの端部から隣接するトイレ個室S側の取付パネルF2の向きに突出するように配置されている。
【0049】
[個室使用状況表示具の動作]
続いて、本表示具1の動作について説明する。以下の説明において、既に、本表示具1は、扉Dに取り付けられていることを前提とする(なお、図5図8は、図1の紙面上方側から扉D等を見た図である)。
【0050】
(空室時)
トイレ個室Sの空室時(不使用時)には、通常、扉Dは、トイレ個室Sの内部に収容されており、表示板10の表示部11は、扉Dの端部から突出して設けられている。そのため、表示部11は、扉Dの外側面から略垂直となる向きに突出することになり、両側から使用中表示が視認されることになる。これにより、利用者は、そのトイレ個室Sが空室であることを外部から即座に認識することができる(図5図6)。
【0051】
(使用時)
トイレ個室Sの使用時には、扉Dが閉まっており、表示板10の表示部11は、扉Dと平行になっている。このとき、表示部11の表示は外部から目立たなくなっており、扉Dが開放されていないため、利用者は、そのトイレ個室Sが使用中であることを認識することができる(図7)。
【0052】
(緊急対応時)
非常時等の緊急対応時において、扉Dを通路R側(トイレ個室Sの室外側)に開放することが必要となる場合には、まず、所定の方法で、通路R側から開錠する。続いて、扉Dを通路R側に開放する。
【0053】
このとき、表示板10の表示部11は、扉Dの端部から突出して設けられているため、当該表示部11の先端が取付パネルF2に当接する。そして、この状態で、扉Dの先端部を回動させ、当該扉Dを開放すると、表示部11の先端が取付パネルF2に当接したまま、取付部20の支持突起31を回動軸として、扉Dの回動に追従する動作を行うことになる(図8)。
【0054】
図9(a)~図9(c)は、トイレ個室Sの使用時から扉Dを通路R側へ開放する場合における図3のA-A断面に相当する部分の断面図であり、各図を参照して、上記回動状態について補足説明する。
【0055】
まず、トイレ個室Sの使用時には、本表示具1における中央部17の内側面部17aが、取付部20の薄板バネ25と当接した状態となっている(図9(a))。
【0056】
徐々に、扉Dを通路R側に開放すると、本表示具1の表示部11の先端が、隣接する取付パネルF2に接触した状態となり(図9(b))、中央部17における階段状部17eの先端部が薄板バネ25を押圧しながら、回動支持部15が0度~90度の範囲で回転する(図9(c)は、約70度回転した場合を示す)。
このとき、本表示具1の表示部11の先端が、隣接する取付パネルF2に接触した状態であり、薄板バネ25が扉D側に押圧された状態であるため、当該薄板バネ25には、扉Dと離反する向きに復元力が蓄えられた状態である。
【0057】
その後、扉Dを元の使用時の状態に戻す際には、当該扉Dを開放した場合と、反対向きに回転させる。上記のとおり、薄板バネ25には、扉Dと離反する向きに復元力が作用しており、回転に伴い、本表示具1の表示部11の先端における取付パネルF2の当接力が小さくなる。そのため、復元力が当接力に優ることになり、薄板バネ25が、中央部17における階段状部17eの先端部を押圧し、それに伴い、当該中央部17がこれまでと反対回転をし、特段の操作をすることなく、表示板10の表示部11が、使用時の位置に復元されることになる(回動復元手段が動作する)(図9(c)→図9(b)→図9(a))。
【0058】
[本表示具及び本取付構造の作用効果]
本表示具1によれば、表示部11は複数の貫通小孔11aを有し、当該表示部11においてトイレ個室Sの使用状況を識別する表示を示す表示シールHが貼設されている。表示シールHは、透光性能を有する透明部H2及び青彩色部H1の組み合わせにより、トイレ個室Sの使用状況を識別する表示が形成されている。そのため、一方の透明部H2及び青彩色部H1を透光した透過光が、貫通小孔11aを透光し、他方の透明部H2及び青彩色部H1を透光することにより、表示シールHの表示が照射される効果が生じる。したがって、貫通小孔11aの部分の存在により、明確にトイレ個室Sの使用状況を識別することが可能となり、簡易な構造により、低コストで視認し易い表示具とすることが可能となる。
【0059】
また、表示板10の表示部11は、両面に表示シールHが貼付されており、扉Dがトイレ個室Sの内側に収納されている場合において、左右の両方向の出入口Eから通路Rに入ってきた利用者が、いずれの方向からもトイレ個室Sが不使用であることを視認することができる。
さらに、表示シールHは、貼付及び剥離が自在であり、適時かつ容易に、所望の図案に張り替え可能となる。
【0060】
また、本取付構造Kによれば、本表示具1の表示部11が扉Dの通路R側の面に、回動自在に取付けられている。そのため、非常時等の際に扉Dを通路R側に開放する必要が生じた場合において、表示板10の回動支持部15を中心として表示部11を回動させることにより、扉Dの回動動作に追従するように、当該表示部11を回動させることにより対応可能となる。
【0061】
また、本取付構造Kによれば、本表示具1における取付部20が、薄板バネ25を備えており、表示板10の回動支持部15とともに、回動手段及び回動状態復帰手段を構成しているため、扉Dの通路R側への解放時及び現状復帰時において、手動で表示部11の位置を変更させる等の煩雑な作業を省くことができる。
【0062】
また、本取付構造Kによれば、嵌脱自在に角度固定板27が設けられているため、扉Dを通路R側に開放する必要性が高くない場合において、当該角度固定板27を装着することにより、扉Dに対する表示板10の角度を暫定的に位置決めすることにより、本表示具1の固定度を向上させることができる。
【0063】
上記のように、本取付構造Kによれば、本表示具1を任意の取付箇所に設けることができる。加えて、本表示具1を簡易に構成することができるため部品点数を削減し、製造コストを削減することができる。
【0064】
[本個室使用状況表示具及びその取付構造の第2実施形態]
さらに、本取付構造の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の本取付構造K’は、本表示具1’の扉Dへの取付位置と表示板10’の表示部11’の記載が異なっている(図10)。
すなわち、本表示具1’は、扉Dの上縁部の略中央部に取り付けられている。
表示板10’の表示部11’の両面における全面には、複数の丸型形状である貫通小孔(図示せず)を有している(なお、図10は、図1の紙面上方側から扉D等を見た図である)。
【0065】
上記表示部11’の両面には、同一の図案が記載されたフィルムシート状の表示シールH’が、貼付及び剥離自在であり、容易に張り替え可能となるように貼設されている。
表示シールH’の図案は、使用中であることを喚起するように赤色で彩色が施された略正方形状の赤彩色部H1’(透光領域)と、便座及び当該便座に着座している使用者の図柄が記載されている透明部H2’(透光領域)となっている(以下、「使用中表示」という。)。なお、本実施形態でも、赤彩色部H1’と透明部H2’の各部は、ともに透光性能を有している。
【0066】
また、本実施形態では、本表示具1’において、常時、取付部20に角度固定板27が取り付けられており、表示部11’の扉Dに対する角度が変化しないようになっている。
【0067】
上記構成により、扉Dが閉止されている場合において、表示部11’が扉Dに突設されているため、上下の2方向の出入口Eから通路Rに入ってきた利用者がいずれの方向からもトイレ個室Sが使用中であることを視認できる。その一方で、本表示具1’が扉Dの上縁部の略中央部に取り付けられていることから、扉Dがトイレ個室Sの内側に収納されている場合には、当該トイレ個室Sの内部に隠れた状態となる。そのため、表示部11’における使用中表示が視認されることがなく、加えて、扉Dが解放されているため、トイレ個室Sが空室であると認識される。
【0068】
本実施形態の本表示具1’によれば、第1実施形態の本表示具1と同様に、視認しやすい構造とすることができる。また、本取付構造K’によれば、第1実施形態の本取付構造Kと同様に、任意の箇所に本表示具1’を取り付けることができ、簡易な構造でトイレ個室Sの使用状況の有無の判別を行わせることができる。
【0069】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能である。
【0070】
例えば、本取付構造の適用対象である個室の形態、区画体等の各種態様(材質、形状、その設置態様を含む等)については、適宜定めることができる。
【0071】
また、本表示具に関し、単独でも使用可能であり、回動支持部ではなく、単なる支持部を有する構造とするものであってもよい。さらに、本表示具の構成要素についての仕様、材質、寸法、形状、取付位置等に関しては、基本的な構成を備え、その作用効果を奏するものであれば、種々の構成要素を用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
K 個室使用状況表示具の取付構造
S トイレ個室
W1、W2 壁体(区画体)
Y 側面パネル(区画体)
F1 前面パネル(区画体)
F2 取付パネル(区画体)
D 扉
H,H’ 表示シール
H1 青彩色部(透光領域)
H1’ 赤彩色部(透光領域)
H2,H2’ 透明部(透光領域)
1,1’ 個室使用状況表示具
10 表示板
11,11’ 表示部(表示体)
11a 貫通小孔(透光部)
15 回動支持部(支持体)
16 突出端部
17 中央部
17a 内側面部
18 第1凹部
20 取付部
21 取付体
22 収容端部
23 バネ嵌装部
25 薄板バネ
27 角度固定板(位置決め手段)
31 支持突起(回動軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11