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特許7277896フィルタ付き容器、フィルタ部材、精製装置、および、精製物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】フィルタ付き容器、フィルタ部材、精製装置、および、精製物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 7/00 20060101AFI20230512BHJP
   B01D 7/02 20060101ALI20230512BHJP
   B01D 1/00 20060101ALI20230512BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20230512BHJP
【FI】
B01D7/00
B01D7/02
B01D1/00 Z
B01D46/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018208904
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020075205
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000134637
【氏名又は名称】株式会社ナード研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】郷田 慎
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-18787(JP,A)
【文献】特開昭54-101763(JP,A)
【文献】特開2003-53101(JP,A)
【文献】特表2012-500106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336384(US,A1)
【文献】特開2020-25918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00-8/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体または固体の精製対象物質を昇華させることによって精製する精製装置であって、
気体が流れる気体通路が構成されるように直列に接続される複数の精製容器と、
前記精製容器を収容する外管と、
前記外管内を減圧する減圧装置と
前記外管を加熱する加熱装置と、を備え、
前記加熱装置は、複数の前記精製容器のうちで上流に配置される第1精製容器を、前記第1精製容器よりも下流側の前記精製容器よりも高い温度に加熱し、
前記第1精製容器は、フィルタ付き容器を収容可能に構成され、または、フィルタ部材が前記第1精製容器の開口部に取付可能に構成され
前記フィルタ付き容器は、閉空間を有する容器であって、前記閉空間を構成する部材のうちの少なくとも1つとして精製対象物質の気体を通過させるフィルタを有し、
前記フィルタ部材は、精製対象物質の気体を通過させるものであり、かつ、前記第1精製容器内の少なくとも一部分の領域と前記領域外の領域とを仕切るように構成される、
精製装置。
【請求項2】
前記外管は、下流側に配置される第1開口端と、前記第1開口端とは反対側の第2開口端とを有し、
前記外管において前記下流側の第1開口端に対向するように配置されるキャップを更に備える
請求項1に記載の精製装置。
【請求項3】
液体または固体の精製対象物質を昇華させることによって精製する精製物質の製造方法であって、
気体が流れる気体通路が構成されるように直列に接続される複数の精製容器と、前記精製容器を収容する外管と、前記外管内を減圧する減圧装置と、前記外管を加熱する加熱装置と、を備える精製装置において、精製対象物質を析出させる前記精製容器よりも前記気体通路における上流に配置される第1精製容器に、精製対象物質の気体を通過させるフィルタ、フィルタ付き容器、または、フィルタ部材を配置する工程と、
記精製容器内を減圧する工程とを含み、
前記フィルタ付き容器は、閉空間を有する容器であって、前記閉空間を構成する部材のうちの少なくとも1つとして精製対象物質の気体を通過させるフィルタを有し、
前記フィルタ部材は、精製対象物質の気体を通過させるものであり、かつ、前記第1精製容器内の少なくとも一部分の領域と前記領域外の領域とを仕切るように構成される、
精製物質の製造方法。
【請求項4】
一方端に開口部を有し、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させるフィルタ材と、
前記フィルタ材の前記開口部を塞ぐ栓部材とを備え、
前記フィルタ材は、筒状の筒部と、前記筒部の一方端に設けられる前記開口部と、前記筒部において前記開口部と反対側の端を閉じる閉端部とを有し、
前記フィルタ材と前記栓部材とによって精製対象物質が収容される閉空間が構成される、
フィルタ付き容器。
【請求項5】
一方端に開口部を有し、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させる2個のフィルタ材と、
2個の前記フィルタ材内の内部空間が繋がるように、2個の前記フィルタ材の前記開口部の間に配置されて2個の前記フィルタ材を連結する連結部材とを備え、
前記フィルタ材は、前記内部空間を構成する筒状の筒部と、前記筒部の一方端に設けられる前記開口部と、前記筒部において前記開口部と反対側の端を閉じる閉端部とを有し、
2個の前記フィルタ材と前記連結部材とによって精製対象物質が収容される閉空間が構成される、
フィルタ付き容器。
【請求項6】
一方端に開口部を有し、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させるフィルタ材であって、内部空間を構成するフィルタ材と、
精製対象物質を収容する精製容器の開口部に、前記フィルタ材を取り付けるための取付部材とを備え、
前記フィルタ材は、前記内部空間を構成する筒状の筒部と、前記筒部の一方端に設けられる前記開口部と、前記筒部において前記開口部と反対側の端を閉じる閉端部とを有し、
前記取付部材は、前記フィルタ材の前記開口部が挿通する挿通孔を有しかつ前記精製容器の前記開口部に装着される筒状のアダプタと、前記フィルタ材の前記開口部の内側に装着されることによって前記フィルタ材を前記アダプタに固定する筒状の固定部材とを備える、
フィルタ部材。
【請求項7】
両端に開口部を有し、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させるフィルタ材であって、内部空間を構成するフィルタ材と、
精製対象物質を収容する精製容器の開口部に、前記フィルタ材を取り付けるための取付部材とを備え、
前記フィルタ材は、前記内部空間を構成する筒状の筒部と、前記筒部の両端に設けられる2個の前記開口部と、を有し、かつ、2個の開口部を有する前記精製容器において前記精製容器の2個の前記開口部に渡るように配置可能に構成され、
前記取付部材は、前記フィルタ材の前記開口部が挿通する挿通孔を有しかつ前記精製容器の前記開口部に装着される筒状のアダプタと、前記フィルタ材の前記開口部の内側に装着されることによって前記フィルタ材を前記アダプタに固定する筒状の固定部材とを備える、
フィルタ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の精製の際に用いられる、フィルタ付き容器、フィルタ部材、精製装置、および、精製物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇華精製に関して特許文献1の技術が知られている。特許文献1の技術では、昇華管の管径縮小部にフィルタが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-111303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フィルタが目詰まりすると、気体がフィルタを通過し憎くなり、精製にかかる時間が長くなる虞がある。そこで、精製効率の低下を抑制できるフィルタ付き容器、フィルタ部材、精製装置、および、精製物質の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するフィルタは、物質を気化する工程を含む精製方法に用いられるフィルタであって、シート状であり、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させる。気化は、蒸発および昇華を含む。
【0006】
この構成によれば、フィルタは、湾曲した部分または折れ曲がった部分を有するため、気体が通過する面の面積が大きくなり、フィルタにおいて目詰まりが生じ難くなる。これにより、精製効率の低下を抑制できる。
【0007】
(2)上記課題を解決するフィルタ付き容器は、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させるフィルタ材であって、精製対象物質を収容するフィルタ材と、前記フィルタ材の開口部を塞ぐ栓部材とを備える。
【0008】
この構成によれば、フィルタ材は、湾曲した部分または折れ曲がった部分を有するため、気体が通過する面の面積が大きくなり、フィルタ材において目詰まりが生じ難くなる。これにより、精製効率の低下を抑制できる。
【0009】
(3)上記課題を解決するフィルタ付き容器は、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させるフィルタ材であって、精製対象物質を収容する複数のフィルタ材と、前記フィルタ材内の内部空間が繋がるように前記複数のフィルタ材を連結する連結部材とを備える。
【0010】
この構成によれば、フィルタ材は、湾曲した部分または折れ曲がった部分を有するため、気体が通過する面の面積が大きくなり、フィルタ材において目詰まりが生じ難くなる。これにより、精製効率の低下を抑制できる。
【0011】
(4)上記課題を解決するフィルタ部材は、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させるフィルタ材であって、内部空間を構成するフィルタ材と、精製対象物質を収容する精製容器の開口部に、前記フィルタ材を取り付けるための取付部材とを備える。
【0012】
この構成によれば、フィルタ材は、湾曲した部分または折れ曲がった部分を有するため、気体が通過する面の面積が大きくなり、フィルタ材において目詰まりが生じ難くなる。これにより、精製効率の低下を抑制できる。
【0013】
(5)上記課題を解決する精製装置は、少なくとも1つの精製容器と、前記精製容器を収容する外管と、前記外管内を減圧する減圧装置とを備え、前記精製容器のうち少なくとも1つは、上述のフィルタ、フィルタ付き容器、または、フィルタ部材が配置可能に構成される。
【0014】
この構成によれば、精製装置は、目詰まりが生じ難いフィルタ、フィルタ付き容器、およびフィルタ部材の少なくとも1つを有するため、気体の流通の低下が抑制される。このようにして、精製効率の低下が抑制される。
【0015】
(6)上記精製装置において、前記外管は、下流側に配置される第1開口端と、前記第1開口端とは反対側の第2開口端とを有し、前記外管において前記下流側の第1開口端に対向するように配置されるキャップを更に備える。
【0016】
この構成によれば、キャップによって気体の流れが妨げられるため、外管における下流側の第1開口端付近で、気体に含まれる物質が凝縮し易くなる。これによって、キャップを備えない場合に比べて、外管よりも下流側に流れる気体内の不純物質の量を少なくできる。これによって、外管の第1開口端から減圧装置までの間の区間において物質による汚染を抑制できる。
【0017】
(7)上記課題を解決する精製物質の製造方法は、精製対象物質の気体の拡散において気体が通過するところに、上記フィルタ、上記フィルタ付き容器、または、上記フィルタ部材を精製容器内に配置する工程と、前記精製容器内を減圧する工程とを含む。
【0018】
この構成によれば、目詰まりが生じ難いフィルタ、フィルタ付き容器、およびフィルタ部材のうちの1つが気体の流通経路の途中に配置されるため、気体の流通の低下が抑制される。これによって、精製効率の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
上記フィルタ、フィルタ付き容器、フィルタ部材、精製装置、および、精製物質の製造方法によれば、精製効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るフィルタの斜視図。
図2】第1実施形態に係るフィルタの使用例を示す図。
図3】第2実施形態に係るフィルタの斜視図。
図4】第3実施形態に係るフィルタの斜視図。
図5】第3実施形態に係るフィルタの使用例を示す図。
図6】第4実施形態に係るフィルタ付き容器の分解図。
図7】第4実施形態に係るフィルタ付き容器の断面図。
図8】第4実施形態に係るフィルタ付き容器の使用例を示す図。
図9】第5実施形態に係るフィルタ付き容器の分解図。
図10】第5実施形態に係るフィルタ付き容器の断面図。
図11】第6実施形態に係るフィルタ付き容器について、フィルタ母材の斜視図。
図12】第6実施形態に係るフィルタ付き容器の分解図。
図13】第6実施形態に係るフィルタ付き容器の斜視図。
図14】第7実施形態に係るフィルタ付き容器の使用例を示す図。
図15】第8実施形態に係るフィルタ部材について、その使用例を示す図。
図16】第9実施形態に係るフィルタ部材について、その使用例を示す図。
図17】第10実施形態に係るフィルタ部材について、その使用例を示す図。
図18】第11実施形態に係る精製装置の側面図。
図19】第11実施形態に係る精製装置の平面図。
図20】第11実施形態に係る精製装置の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1および図2を参照して、第1実施形態に係るフィルタ10について説明する。
本実施形態に係るフィルタ10は、物質を気化する工程を含む精製において用いられる。以下に、物質を気化する工程を含む精製方法の一例を説明する。
【0022】
精製対象物質MAは、一方向に延びる管状の精製容器に収容される。精製容器内は、減圧装置によって、10-4Pa以上100Pa以下の所定の圧力まで減圧される。このような減圧下で、精製容器は、外部ヒータによってまたは外管の内部に配置される内部ヒータによって加熱される。精製容器において、長手方向に温度勾配が付けられる。精製容器において精製対象物質MAが配置された部分(以下、「物質配置部分」)は、精製対象物質MAが昇華可能な温度まで加熱される。精製容器は、物質配置部分から下流に向かって温度が下がるように温度勾配が付けられる。精製容器において、物質配置部分よりも下流の所定の部分は、目的の精製物質MBが析出する適度な温度に維持される。このように減圧下で、精製容器に温度勾配を付けることによって、精製物質MBを得ることができる。精製対象物質MAは、固体であっても液体であってもよい。
【0023】
ところで、減圧下で精製容器を加熱すると、精製対象物質MAが、突沸または突沸に似た状態(以下、総称して突沸状態という。)になることがある。突沸状態とは、精製対象物質MAが粉体の状態で飛び散るような状態を含む。突沸状態になると、気化前の精製対象物質MAが、精製容器において精製物質MBを析出させる部分にまで飛び、精製物質MBの純度が低下する虞がある。このため、精製対象物質MAが気化した気体の流れにおいて、精製対象物質MAよりも下流側にフィルタ10が配置される。
【0024】
本実施形態に係るフィルタ10は、精製において、精製対象物質MAが突沸状態となったときに精製対象物質MAから発生する粉体や液滴をフィルタ10よりも下流に飛び散ることを阻止する。フィルタ10は、シート状であり、気体を通過させる。フィルタ10は、液体を通過させるものであってもよいが、少なくとも飛翔する液滴を通過させないように構成される。精製対象物質MAが液体である場合、フィルタ10は、液滴の飛び散りを阻止するように構成される。
【0025】
フィルタ10は、熱によってガスを発生させないものであることが好ましい。例えば、フィルタ10は、シリカ繊維、ガラス繊維、フッ素樹脂繊維、カーボンファイバーの少なくとも1種から形成される。具体的には、フィルタ10は、不織布または織物シートから形成される。フィルタ10の保持粒子径は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。フィルタ10の保持粒子径が30μmよりも大きい場合、精製対象物質MAがフィルタ10を通り抜ける虞があるからである。保持粒子径は、JIS-Z-8901で規定された7種粉体分散水を自然ろ過したときにおいて、90%質量以上を保持できる粒子径を示す。フィルタ10は、多孔質シートにから形成されてもよい。例えば、フィルタ10は、多孔質のフッ素樹脂シートから形成され得る。
【0026】
フィルタ10の厚さは、所定値に設定される。フィルタ10の厚さが薄すぎると、形態が保持され難くなる。また、フィルタ10の厚さが大きすぎると、気体の流通が阻害される。このようなことから、フィルタ10の厚さは、100μm以上5mm以下であることが好ましい。
【0027】
フィルタ10の少なくとも一部分は、湾曲し、または折れ曲がる。フィルタ10が湾曲する部分または折れ曲がる部分を有することによって、フィルタ10の表面積が拡大される。フィルタ10の表面積が拡大されることによって、フィルタ10において気体が通過できる部分の面積が広がる。
【0028】
図1に示されるように、本実施形態では、フィルタ10は、矩形を湾曲させた形状を有する。フィルタ10は、対向する直線状の2つの辺11,11と、対向する湾曲した2つの辺12,12とを有する。2つの辺11,11は、平行に延びる。フィルタ10の表面積は、2つの辺11,11を含むように構成される仮想の平面フィルタ10xの表面積よりも大きい(図1参照)。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態で示されるフィルタ10は、筒部15aを有する精製容器15に対して好適に用いられ得る。2つの辺11,11の長さは、精製容器15の筒部15aの長さLAに等しい。フィルタ10において湾曲した2つの辺12,12の一方は、精製容器15の底面15bに接触し、他方は、精製容器15の開口部15cの周囲部15dに接触する。フィルタ10は、可撓性を有する。フィルタ10が精製容器15内に入れられるとき、筒状に丸められる。フィルタ10は、精製容器15の内部空間を第1空間SAと第2空間SBとに仕切る。第1空間SAは、開口部15cに繋がる。第2空間SBは、精製対象物質MAが入れられる収容空間を構成する。
【0030】
本実施形態の作用を説明する。
フィルタ10は、物質を気化する工程を含む精製方法に用いられる。フィルタ10は、シート状であり、少なくとも一部分が湾曲し、気体を通過させる。フィルタ10は、湾曲した部分を有するため、気体が通過する面の面積が大きくなり、フィルタ10において目詰まりが生じ難くなる。
【0031】
本実施形態の効果を説明する。
精製の加熱中に突沸が生じる場合であっても、フィルタ10によって、気化前の状態の精製対象物質MAの拡散が抑制される。また、突沸によって生じる飛散物は、フィルタ10によって仕切られた空間内に留まる。突沸が生じたとしても、収率の低下を抑制できる。さらに、上述のように、フィルタ10の目詰まりが生じ難いため、精製効率の低下を抑制できる。
【0032】
<第2実施形態>
図3を参照して、第2実施形態に係るフィルタ20について説明する。
本実施形態に係るフィルタ20において第1実施形態と共通する構成は、第1実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。フィルタ20の用途、およびフィルタ20の素材は、第1実施形態に準ずる。
【0033】
図3に示されるように、本実施形態に係るフィルタ20は、折れ曲がる。具体的には、フィルタ20は、複数の山折り部21と、複数の谷折り部22とを有する。フィルタ20において、山折り部21と谷折り部22とは、交互に配置されている。山折り部21と谷折り部22とは、フィルタ20において一方の端から他方の端まで延びる。フィルタ20は、山折り部21および谷折り部22の並びの方向に伸縮する。
【0034】
本実施形態のフィルタ20は、物質を気化する工程を含む精製方法に用いられる。フィルタ20は、シート状であり、少なくとも一部分が折れ曲がり、気体を通過させる。フィルタ20は、折れ曲がった部分を有するため、気体が通過する面の面積が大きくなり、フィルタ20において目詰まりが生じ難くなる。これにより、精製効率の低下を抑制できる。
【0035】
<第3実施形態>
図4および図5を参照して、第3実施形態に係るフィルタ30について説明する。
本実施形態に係るフィルタ30において第1実施形態と共通する構成は、第1実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。フィルタ30の用途、およびフィルタ30の素材は、第1実施形態に準ずる。
【0036】
図4に示されるように、本実施形態では、フィルタ30は、準楕円を湾曲させた形状を有する。
図5に示されるように、本実施形態で示されるフィルタ30は、筒部15aを有する精製容器15に対して好適に用いられ得る。フィルタ30の外形線は、筒部15aの内周面に接触するように構成される。フィルタ30は、可撓性を有する。フィルタ30が精製容器15内に入れられるとき、筒状に丸められる。フィルタ30は、精製容器15の内部空間を第3空間SCと第4空間SDとに仕切る。第3空間SCは、開口部15cに繋がる。第4空間SDは、精製対象物質MAが入れられる収容空間を構成する。
【0037】
本実施形態に係るフィルタ30は、湾曲した部分を有する。このため、第1実施形態に係るフィルタ10に準じた効果を奏する。また、このようなフィルタ30の形状によれば、図5に示されるように、開口部15cが上に向くように精製容器15が立てられた状態で精製対象物質MAを精製する場合において、精製容器15内の内部空間を上下に隔てられた2つの空間に仕切ることができる。
【0038】
<第4実施形態>
図6図8を参照して、第4実施形態に係るフィルタ付き容器40について説明する。
本実施形態に係るフィルタ付き容器40は、物質を気化させる工程を含む精製工程に用いられる。フィルタ付き容器40は、精製工程において精製対象物質MAが突沸状態となったときに精製対象物質MAから発生する粉体や液滴をフィルタ付き容器40内に閉じ込める。
【0039】
フィルタ付き容器40は、フィルタ材41と、フィルタ材41の開口部44を塞ぐ栓部材46を備える。フィルタ材41は、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させる。フィルタ材41は、精製対象物質MAを収容する内部空間SXを有する。
【0040】
フィルタ材41は、筒状の筒部43と、筒部43の一方端に設けられる開口部44と、筒部43において開口部44と反対側の端を閉じる閉端部45とを有する。
フィルタ材41は、気体を通過させる。精製対象物質MAが液体である場合、フィルタ材41は、液滴の飛び散りを阻止するように構成される。フィルタ材41を形成する素材は、第1実施形態のフィルタ10に準ずる。
【0041】
栓部材46は、フィルタ材41の開口部44を閉塞する閉塞部材47と、閉塞部材47をフィルタ材41に固定する固定部材48とを備える。閉塞部材47および固定部材48は、ガラスまたは石英によって形成される。
【0042】
閉塞部材47は、フィルタ材41に挿入される挿入部47aと、手で把持される把持部47bとを備える。
挿入部47aは、円形の端面部47cと、円形の端面部47cの周縁に沿うように設けられる第1周壁47dとを有する。第1周壁47dは、フィルタ材41の開口部44の内周面に接触するように構成される。
【0043】
把持部47bは、挿入部47aの第1周壁47dよりも大径の第2周壁47eを有する。第2周壁47eは、段差部47fを介して第1周壁47dに接続される。把持部47bは、挿入部47aがフィルタ材41に挿入された状態において、フィルタ材41の外に出るように構成される。把持部47bは、栓部材46からフィルタ材41を取り外すことを目的として閉塞部材47と固定部材48との分離するときに、その分離を行い易くするための把持部分である。
【0044】
固定部材48は、リング状に形成される。具体的には、固定部材48は、第1周壁47dよりも大径の第3周壁48aを含む。第3周壁48aの内周面は、フィルタ材41の開口部44の外周面に接触するように構成される。固定部材48は、フィルタ材41の外側から開口部44に嵌められる。フィルタ材41に栓部材46が取り付けられた状態において、フィルタ材41の開口部44は、閉塞部材47の第1周壁47dと固定部材48の第3周壁48aとによって挟まれる。このようにして、フィルタ材41に栓部材46が取り付けられる。フィルタ材41の開口部44が栓部材46によって閉塞されると、フィルタ材41内に閉空間が構成される。精製対象物質MAは、フィルタ付き容器40内に収容される。
【0045】
図8に示されるように、フィルタ付き容器40は、精製容器15内に配置される。フィルタ付き容器40の向きは限定されない。好ましくは、フィルタ付き容器40のフィルタ材41は、栓部材46よりも下流側に配置される。
【0046】
本実施形態のフィルタ付き容器40の作用を説明する。精製工程において、加熱によって気化した物質は、フィルタ材41と通過してフィルタ付き容器40の外に出る。精製対象物質MAが突沸状態となったとき、精製対象物質MAから発生する粉体や液滴は、フィルタ付き容器40内に閉じ込められる。
【0047】
本実施形態のフィルタ付き容器40の効果を説明する。
フィルタ付き容器40は、フィルタ材41と、フィルタ材41の開口部44を塞ぐ栓部材46とを備える。フィルタ材41は、少なくとも一部分が湾曲するように構成される。フィルタ材41は、少なくとも一部分が折れ曲がるように構成されてもよい。この構成によれば、フィルタ材41は、湾曲した部分または折れ曲がった部分を有するため、気体が通過する面の面積が大きくなり、フィルタ材41において目詰まりが生じ難くなる。これにより、精製効率の低下を抑制できる。
【0048】
<第5実施形態>
図9および図10を参照して、第5実施形態に係るフィルタ付き容器50について説明する。本実施形態に係るフィルタ付き容器50は、第4実施形態と同様に、精製対象物質MAの精製工程において用いられる。第5実施形態に係るフィルタ付き容器50において、第4実施形態に係るフィルタ付き容器40と同じ構成については、説明を省略する。
【0049】
フィルタ付き容器50は、複数のフィルタ材51と、フィルタ材51内の内部空間SXが繋がるように複数のフィルタ材51を連結する連結部材56とを備える。フィルタ材51は、第4実施形態に係るフィルタ材41に準じた構造を有する。
【0050】
本実施形態の連結部材56は、2つのフィルタ材51を連結する。
連結部材56は、2つのフィルタ材51内の内部空間SXを繋ぐ管部材57と、フィルタ材51に連結部材56を固定する2つの固定部材58とを備える。管部材57および固定部材58は、ガラスまたは石英によって形成される。
【0051】
管部材57は、フィルタ材51に挿入される2つの挿入部57aと、手で把持される把持部57bとを備える。挿入部57aは、把持部57bの両端それぞれから突出するように設けられる。管部材57の貫通孔57hは、一方の挿入部57aから他方の挿入部57aに亘るように設けられる。
【0052】
挿入部57aは、円形の開口端57cを有する第4周壁57dを含む。第4周壁57dは、フィルタ材51の開口部54の内周面に接触するように構成される。
把持部57bは、挿入部57aの第4周壁57dよりも大径の環状の第5周壁57eを有する。第5周壁57eは、第1段差部57fを介して一方の第4周壁57dに接続されるとともに、第2段差部57gを介して他方の第4周壁57dに接続される。
【0053】
把持部57bは、挿入部57aがフィルタ材51に挿入された状態において、フィルタ材51の外に出るように構成される。
固定部材58は、リング状に形成される。具体的には、固定部材58は、第4周壁57dよりも大径の第6周壁58aを含む。第6周壁58aの内周面は、フィルタ材51の開口部54の外周面に接触するように構成される。固定部材58は、フィルタ材51の外側から開口部54に嵌められる。フィルタ材51に連結部材56が取り付けられた状態において、フィルタ材51の開口部54は、管部材57の第4周壁57dと固定部材58の第6周壁58aとによって挟まれる。このようにして、フィルタ材51に管部材57が取り付けられる。2つのフィルタ材51が管部材57に取り付けられると、2つのフィルタ材51内の内部空間SXが繋がった閉空間が構成される。精製対象物質MAは、フィルタ付き容器50内に収容される。
【0054】
本実施形態の作用を説明する。フィルタ付き容器50によれば、複数のフィルタ材51が連結されることによってフィルタ材51によって囲まれる閉空間が形成される。このため、フィルタ付き容器50に収容できる精製対象物質MAの量を増大できる。
【0055】
本実施形態のフィルタ付き容器50の効果を説明する。
フィルタ付き容器50は、複数のフィルタ材51と、連結部材56とを備える。フィルタ材51は、少なくとも一部分が湾曲するように構成される。フィルタ材51は、気体を通過させるように構成され、かつ、精製対象物質MAを収容する。連結部材56は、フィルタ材51内の内部空間SXが繋がるように複数のフィルタ材51を連結する。フィルタ材51は、少なくとも一部分が折れ曲がるように構成されてもよい。
【0056】
この構成によれば、フィルタ材51は、湾曲した部分または折れ曲がった部分を有するため、気体が通過する面の面積が大きくなり、フィルタ材51において目詰まりが生じ難くなる。これにより、精製効率の低下を抑制できる。
【0057】
<第6実施形態>
図11図13を参照して、第6実施形態に係るフィルタ付き容器60について説明する。
【0058】
本実施形態に係るフィルタ付き容器60は、第4実施形態と同様に、精製対象物質MAの精製工程において用いられる。第6実施形態に係るフィルタ付き容器60において、第4実施形態に係るフィルタ付き容器40と同じ構成については、説明を省略する。
【0059】
フィルタ付き容器60は、フィルタ材61と、栓部材66とを備える。栓部材66は、第4実施形態に示された栓部材46に準じた構造を有する。ここでは、栓部材66の説明を省略する。
【0060】
フィルタ材61は、少なくとも一部分が湾曲するように構成される。フィルタ材61は、気体を通過させるように構成され、かつ、精製対象物質MAを収容する。フィルタ材61は、少なくとも一部分が折れ曲がるように構成されてもよい。
【0061】
フィルタ材61は、フィルタ材61は、可撓性または折れ曲がり可能なシート状のフィルタ母材61xによって形成される。フィルタ母材61xを構成する素材は、第1実施形態に準ずる。フィルタ母材61xの折り曲げによって、精製対象物質MAが収容されるような内部空間SXを有するフィルタ材61が形成される。
【0062】
フィルタ母材61xは、一方端が閉じて他方端が開口する袋状に形成される。例えば、コップの内面に沿わせるようにフィルタ母材61xを折り曲げることによって、袋状のフィルタ材61が形成される。フィルタ材61の開口部64は、栓部材66によって閉塞される。このようなフィルタ付き容器60の使用方法は、第4実施形態に係るフィルタ付き容器40の使用方法に準ずる。
【0063】
本実施形態の作用を説明する。シート状のフィルタ母材61xを用いてフィルタ付き容器60のフィルタ材61を形成できる。シート状のフィルタ母材61xは入手され易いことから、フィルタ付き容器60を簡単に用意できる。
【0064】
本実施形態に係るフィルタ付き容器60は、第4実施形態に係るフィルタ付き容器40と同じ構造を有することから、第4実施形態に係るフィルタ付き容器40に準じた効果を奏する。
【0065】
<第7実施形態>
図14を参照して、第7実施形態に係るフィルタ付き容器70およびフィルタ付き容器70を収容可能な精製容器16について説明する。
【0066】
本実施形態に係るフィルタ付き容器70は、第4実施形態と同様に、精製対象物質MAの精製工程において用いられる。第7実施形態に係るフィルタ付き容器70において、第4実施形態に係るフィルタ付き容器40と同じ構成については、説明を省略する。
【0067】
フィルタ付き容器70は、第4実施形態のフィルタ付き容器40と同じ構成を有する。フィルタ付き容器70の形状は、フィルタ付き容器70が入れられる精製容器15との関係において、第4実施形態のフィルタ付き容器40と相違する。第4実施形態のフィルタ付き容器40は、筒部15aの筒径よりも小さい1つの開口部15cを有する精製容器15に収容可能な大きさに構成されている。これに対して、本実施形態に係るフィルタ付き容器70は、次のような特殊な精製容器16に収容される。
【0068】
精製容器16は、筒状の筒部16aと、筒部16aの一方端に設けられて筒部16aの筒径よりも小さい1つの第1開口部16bと、筒部16aの他方端に設けられて筒部16aの筒径と同じ径の第2開口部16cとを有する。第2開口部16cは、底部材16dによって閉塞される。なお、精製容器16は、第2開口部16cが底部材16dによって閉塞された状態で用いられることもあり、また、第2開口部16cが底部材16dによって閉塞されない状態で用いられることもある。
【0069】
好ましくは、フィルタ付き容器70の栓部材76の直径は、精製容器16の筒部16aの内径に等しい。この構成によって、フィルタ付き容器70を精製容器16に収容したときのフィルタ付き容器70の姿勢を安定できる。このようなフィルタ付き容器70および精製容器16のセットは、大量の精製対象物質MAを精製する場合に用いられる。
【0070】
<第8実施形態>
図15を参照して、第8実施形態に係るフィルタ部材80について説明する。
本実施形態に係るフィルタ部材80は、物質を気化させる工程を含む精製工程に用いられる。フィルタ部材80は、精製工程において精製対象物質MAが突沸状態となったときに精製対象物質MAから発生する粉体や液滴を、精製対象物質MAが収容されている精製容器15内に閉じ込める。
【0071】
フィルタ部材80は、フィルタ材81と、フィルタ材81を精製容器15に取り付けるための取付部材86とを備える。
フィルタ材81は、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がるように構成され、かつ、気体を通過させる。フィルタ材81は、内部空間SXを構成する。
【0072】
フィルタ材81は、筒状の筒部83と、筒部83の一方端に設けられる開口部84と、筒部83において開口部84と反対側の端を閉じる閉端部85とを有する。
フィルタ材81は、気体を通過させる。精製対象物質MAが液体である場合、フィルタ材81は、液滴の飛び散りを阻止するように構成される。フィルタ材81を形成する素材は、第1実施形態のフィルタ10に準ずる。
【0073】
取付部材86は、精製容器15の開口部15cにフィルタ材81を取り付けるための部材である。
取付部材86は、精製容器15の開口部15cに装着される筒状のアダプタ87と、フィルタ材81をアダプタ87に固定する固定部材88とを備える。
【0074】
アダプタ87は、フィルタ材81を挿通する挿通孔87aを有する。挿通孔87aの直径は、フィルタ材81の開口部84の外径と等しい。
固定部材88は、筒状に構成される。固定部材88は、一方端に第1開口部88aを有し、他方端に第2開口部88bを有する。第1開口部88aの直径は、第2開口部88bの直径よりも大きい。第2開口部88bは、フィルタ材81内に挿通可能な大きさに構成される。第2開口部88bの周辺の外径は、フィルタ材81の開口部84の内径と等しい。
【0075】
フィルタ部材80は、次のようにして精製容器15に取り付けられる。まず、アダプタ87の挿通孔87aにフィルタ材81を挿通する。次いで、固定部材88をフィルタ材81内に挿入する。このようにして組付けられたフィルタ部材80は、アダプタ87の外周面が精製容器15の開口部15cの内周面に接触するように、精製容器15の開口部15cに装着する。精製容器15にフィルタ部材80が装着されると、精製容器15の開口部15cは、フィルタ材81によって通気可能に覆われる。
【0076】
本実施形態の作用を説明する。
このようなフィルタ部材80によれば、精製容器15の開口部15cにフィルタが詰められる場合に比べて、フィルタ材81における気体の通過面積を大きくできる。通過面積とは、フィルタ材81において、精製容器15内の気体に直接的に接触可能な部分の面積を示す。本実施形態に係るフィルタ部材80の通過面積は、フィルタ材81の外表面において、取付部材86のアダプタ87と接触する部分PA以外の部分PBの面積を示す。
【0077】
本実施形態の効果を説明する。フィルタ材81は、少なくとも一部分が湾曲するように構成される。フィルタ材81は、気体を通過させ、かつ、内部空間SXを構成する。フィルタ材81は、折れ曲がる構成を有してもよい。この構成によれば、フィルタ材81は、湾曲した部分または折れ曲がった部分を有するため、気体が通過する面の通過面積が大きくなり、フィルタ材81において目詰まりが生じ難くなる。特に、精製容器15の開口部15cにフィルタを詰める場合に比べて、通過面積が大きくなる。これにより、精製効率の低下を抑制できる。
【0078】
<第9実施形態>
図16を参照して、第9実施形態に係るフィルタ部材90について説明する。
本実施形態に係るフィルタ部材90は、第8実施形態に係るフィルタ部材80の変形例である。第9実施形態に係るフィルタ部材90において、第8実施形態に係るフィルタ部材80と同じ構成については、説明を省略する。第8実施形態のフィルタ部材80は、片持ち状態で支持される(図15参照)。これに対して、本実施形態のフィルタ部材90は、両持ちで支持される。
【0079】
具体的には、フィルタ部材90は、フィルタ材91と、フィルタ材91を精製容器15に取り付けるための2つの取付部材96とを備える。フィルタ材91は、少なくとも一部分が湾曲または折れ曲がり、気体を通過させるように構成される。フィルタ材91は、内部空間SXを構成する。
【0080】
フィルタ材91は、筒状の筒部93と、筒部93の一方端に設けられる第1開口部94と、筒部93の他方端に設けられる第2開口部95とを有する。フィルタ材91は、気体を通過させる。精製対象物質MAが液体である場合、フィルタ材91は、液滴の飛び散りを阻止するように構成される。フィルタ材91を形成する素材は、第1実施形態のフィルタ10に準ずる。2つの取付部材96,96は、第8実施形態に示した取付部材86に準じた構造を有する。
【0081】
このようなフィルタ部材90は、2つの開口部17cを有する精製容器17に好適に用いられ得る。また、このようなフィルタ部材90によれば、第8実施形態に係るフィルタ部材80に準じた効果を得ることができる。
【0082】
<第10実施形態>
図17を参照して、第10実施形態に係るフィルタ部材100について説明する。
本実施形態に係るフィルタ部材100は、第9実施形態に係るフィルタ部材90の変形例である。第10実施形態に係るフィルタ部材100において、第9実施形態に係るフィルタ部材90と同じ構成については、同一符号を付して、説明を省略する。第9実施形態のフィルタ部材90を構成するフィルタ材91は、中心軸を中心とする円周方向に接続部分がない。これに対して、本実施形態のフィルタ部材100のフィルタ材101は、中心軸を中心とする円周方向に接続部分101aが存在する。本実施形態のフィルタ部材100は、矩形のフィルタ母材を丸めることによって形成される。
【0083】
本実施形態によれば、シート状のフィルタ母材を用いてフィルタ部材100を形成できる。シート状のフィルタ母材は入手され易いことから、フィルタ部材100を簡単に形成できる。また、本実施形態に係るフィルタ部材100は、第9実施形態に係るフィルタ部材90に準じた効果を奏する。
【0084】
<第11実施形態>
図18図20を参照して、第11実施形態に係る精製装置110について説明する。
精製装置110は、少なくとも1つの精製容器111と、精製容器111を収容する外管120と、外管120内を減圧する減圧装置140とを備える。好ましくは、精製容器111は、内管130に収容される。さらに、精製容器111が収容された内管130が、外管120に収容される。
【0085】
精製容器111のうち少なくとも1つは、上述のフィルタ10,20,30、フィルタ付き容器40,50,60,70、および、フィルタ部材80,90,100(以下、「フィルタ等」という。)の1つが配置可能に構成される。精製容器111は、少なくとも1つの開口部112を有する。フィルタ等が配置される精製容器111の開口部112は、フィルタ10,20,30、またはフィルタ付き容器40,50,60,70が挿通可能であるように構成される。または、フィルタ等が配置される精製容器111の開口部112は、フィルタ部材80,90,100が装着可能であるように構成される。
【0086】
本実施形態では、精製装置110は、5つの精製容器(以下、「第1精製容器111A」~「第5精製容器111E」という。)を備える。
第1精製容器111Aは、1つの開口部114を有する。第2精製容器111B~第5精製容器111Eは、2つの開口部115,116を有する。第2精製容器111B~第5精製容器111Eは、第1精製容器111Aの下流側に連結される。下流とは、精製装置110内の気体通路において減圧装置140に近い側を示す。第1精製容器111A~第5精製容器111Eは、直列に接続され、1つの内部通路を形成する。第1精製容器111Aは、精製対象物質MAを収容する。
【0087】
第1精製容器111A~第5精製容器111Eは、内管130に収容される。内管130には、内管130の長手方向DAに対して垂直に延びる壁131が設けられている。壁131は、内管130において長手方向DAの中間位置よりも上流側に設けられる。第1精製容器111A~第5精製容器111Eは、内管130において壁131の下流側に配列される。第1精製容器111A~第5精製容器111Eは、上流側から、第1精製容器111A~第5精製容器111Eの順に並べられる。
【0088】
外管120は、内管130を収容する。外管120は、減圧装置140側に配置される第1開口端121と、減圧装置140側の第1開口端121とは反対側の第2開口端122とを有する。
【0089】
第1開口端121は、継手123を介して減圧装置140に接続される。第2開口端122は、蓋部材124で閉塞される。減圧装置140は、真空ポンプ141を備える。好ましくは、減圧装置140は、真空ポンプ141の上流側に、気体を液化するためのトラップ142を有する。トラップ142において不純物質MCが捕捉される。例えば、トラップ142を構成する通路は、液体窒素で冷却される。
【0090】
好ましくは、精製装置110は、さらに、キャップ160を備える。キャップ160は、外管120において下流側の第1開口端121に対向する。具体的には、キャップ160は、内管130において下流側の第1開口端132を覆うように配置される。キャップ160の周縁部と第1開口端132の周辺部との間には、気体が流通するための隙間SLが設けられる。好ましくは、キャップ160には、把手161が設けられる。内管130が用いられていない場合、キャップ160は、外管120の第1開口端121を覆うように配置される。
【0091】
外管120は、加熱装置150によって加熱される。加熱装置150は、第1精製容器111A~第5精製容器111Eそれぞれを異なる温度に加熱する。加熱装置150の加熱部151は、外管120において第1精製容器111A~第5精製容器111Eが配置されるところに配置される。上流側の精製容器111は、下流側の精製容器111よりも高い温度に加熱される。すなわち、精製容器111のセットは、温度勾配が付けられる。例えば、加熱装置150の加熱によって、第1精製容器111Aは、精製対象物質MAの昇華温度よりも高い第1温度に維持される。第5精製容器111Eは、精製対象物質MAから精製される精製物質MBが析出可能な第2温度に維持される。
【0092】
本実施形態の作用を説明する。
第1精製容器111Aで気化した精製目的の物質は、第5精製容器111Eで析出する。第1精製容器111Aの管理温度である第1温度よりも沸点また昇華点が高い不純物質MCは、第1精製容器111Aに残る。第5精製容器111Eの管理温度である第2温度よりも凝固点が低い不純物質MCは、第5精製容器111Eよりも下流に流され、キャップ160またはトラップ142で捕捉される。
【0093】
本実施形態の効果を説明する。
(1)精製装置110は、少なくとも1つの精製容器111と、精製容器111を収容する外管120と、外管120内を減圧する減圧装置140とを備える。精製容器111のうち少なくとも1つは、上述のフィルタ10,20,30、フィルタ付き容器40,50,60,70、および、フィルタ部材80,90,100の1つが配置可能に構成される。
【0094】
この構成によれば、精製装置110は、目詰まりが生じ難いフィルタ10,20,30、フィルタ付き容器40,50,60,70、および、フィルタ部材80,90,100の1つを有するため、気体の流通の低下が抑制される。このようにして、精製効率の低下が抑制される。
【0095】
(2)上記精製装置110において、外管120において減圧装置140側の第1開口端121に対向するように配置されるキャップ160を更に備える。この構成によれば、キャップ160によって気体の流れが妨げられるため、外管120における下流側の第1開口端121付近で、気体に含まれる一部の不純物質MCが凝縮し、キャップ160内に不純物質MCが付着する。これによって、キャップ160を備えない場合に比べて、外管120よりも下流側に流れる気体内の不純物質MCの量を少なくできる。これによって、外管120の第1開口端121から減圧装置140までの間の区間において物質による汚染を抑制できる。
【0096】
<第12実施形態>
精製物質MBの製造方法を説明する。
第1の工程では、精製対象物質MAの気体の拡散において気体が通過するところに、上述のフィルタ等のうちの1つを精製容器111内に配置する。例えば、フィルタ10,20,30を用いる場合には、精製対象物質MAを第1精製容器111Aに収容し、第1精製容器111A内にフィルタ10,20,30を配置する(図20参照)。フィルタ10,20,30によって、第1精製容器111A内の内部空間SXが、精製対象物質MAが入れられる収容空間と、収容空間よりも下流側の空間とに仕切られる。
【0097】
フィルタ付き容器40,50,60,70を用いる場合には、フィルタ付き容器40,50,60,70内に精製対象物質MAを入れ、精製対象物質MAが入ったフィルタ付き容器40,50,60,70を第1精製容器111A内に収容する。
【0098】
フィルタ部材80,90,100を用いる場合には、精製対象物質MAを第1精製容器111Aに収容し、第1精製容器111Aの開口部にフィルタ部材80,90,100を装着する。
【0099】
第2の工程では、精製容器111内を減圧する。好ましくは、所定圧力まで減圧した後、精製容器111を加熱し、精製対象物質MAを昇華させる。例えば、第1精製容器111Aは、精製対象物質MAの昇華温度よりも高い第1温度に維持される。第5精製容器111Eは、精製対象物質MAが析出可能な第2温度に維持される。好ましくは、第2精製容器111B、第3精製容器111C、および第4精製容器111Dは、第1温度よりも低く第2温度よりも高い温度に維持される。第2精製容器111Bの温度は、第3精製容器111Cの温度よりも高くなるように維持され、第3精製容器111Cの温度は、第4精製容器111Dの温度よりも高くなるように維持される。
【0100】
精製物質MBの製造方法の作用を説明する。
精製容器111内は減圧されている。このため、精製容器111の加熱により、精製対象物質MAが突沸し易くなっている。精製対象物質MAが突沸すると、精製対象物質MAは、気化する前の状態で拡散するが、フィルタ等によって拡散が抑制される。本実施形態によれば、液体または固体の精製対象物質MAが突沸したとき、の精製対象物質MAの拡散は第1精製容器111A内に収まる。
【0101】
精製対象物質MAの温度が第1温度に達すると、精製対象物質MAは気化する。気化した精製対象物質MAは、フィルタ等を通過して、温度の低いところに移動する。一方、第1温度よりも昇華点または沸点が高い不純物質MCは、気化せず、残渣として精製容器111内に残る。気化した精製対象物質MAは、精製対象物質MAの析出可能な第2温度に維持されているところで析出する。凝固点が第2温度よりも低い不純物質MCが精製対象物質MAに含まれている場合、不純物質MCは、第2温度に維持されているところでは析出しない。析出した物質は、回収される。以上のようにして、精製対象物質MAから精製物質MBが得られる。
【0102】
本実施形態の効果を説明する。
精製物質MBの製造方法は、第1工程と、第2工程とを含む。第1工程では、精製対象物質MAの気体の拡散において気体が通過するところに、フィルタ等の1つを精製容器111内に配置する。第2工程では、精製容器111内を減圧する。この構成によれば、目詰まりが生じ難いフィルタ等の1つが気体の流通経路の途中に配置されるため、気体の流通の低下が抑制される。これによって、精製効率の低下を抑制できる。
【0103】
このような製造方法は、例えば、第11実施形態に示された精製装置110による精製において用いられる。精製装置110を用いて精製物質MBの製造方法が実行されたときの効果を説明する。精製装置110によれば、第5精製容器111Eに精製物質MBが析出する。不純物質MCを含む気体は、下流に流れる。不純物質MCを含む気体が外管120よりも下流に流れるとき、キャップ160の内面に沿って流れて、キャップ160の周縁部と内管130の第1開口端132の周辺部との間の隙間SLを通る。キャップ160は外管120とは別部材であるため、外管120から熱が伝わり難い。このため、キャップ160の温度と外管120の温度との間には温度差がある。キャップ160の温度は、室温に近い。このようなことから、キャップ160において不純物質MCが析出する。このようにして気体から不純物質MCが除去される。キャップ160において析出しない物質は、トラップ142で捕捉される。
【0104】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、上記構成の例に限定されない。上記実施形態は、以下のように変更され得る。なお、以下の変形例では、上記実施形態の構成と実質的に構成の変更ない構成については、上記実施形態の構成と同一の符号をつけて説明する。
【0105】
・フィルタ10,20,30の形状は、実施形態に示された例に限定されない。例えば、フィルタ10は、波状に湾曲してもよい。
・フィルタ付き容器40,50,60,70の構造は、実施形態に示された例に限定されない。例えば、フィルタ付き容器40,50,60,70の栓部材46、66、76は、フィルタ10を構成するフィルタ母材から形成されてもよい。
【0106】
・フィルタ部材80,90,100の構造は、実施形態に示された例に限定されない。フィルタ部材80,90,100のフィルタ材81、91、101は、複数の平坦面から構成されてもよい。
【符号の説明】
【0107】
DA…長手方向、LA…長さ、MA…精製対象物質、MB…精製物質、MC…不純物質、PB…部分、SA…第1空間、SB…第2空間、SC…第3空間、SD…第4空間、SL…隙間、SX…内部空間、10…フィルタ、10x…平面フィルタ、11…辺、12…辺、15…精製容器、15a…筒部、15b…底面、15c…開口部、15d…周囲部、16…精製容器、16a…筒部、16b…第1開口部、16c…第2開口部、16d…底部材、17…精製容器、17c…開口部、20…フィルタ、21…山折り部、22…谷折り部、30…フィルタ、40…フィルタ付き容器、41…フィルタ材、43…筒部、44…開口部、45…閉端部、46…栓部材、47…閉塞部材、47a…挿入部、47b…把持部、47c…端面部、47d…第1周壁、47e…第2周壁、47f…段差部、48…固定部材、48a…第3周壁、50…フィルタ付き容器、51…フィルタ材、54…開口部、56…連結部材、57…管部材、57a…挿入部、57b…把持部、57c…開口端、57d…第4周壁、57e…第5周壁、57f…第1段差部、57g…第2段差部、57h…貫通孔、58…固定部材、58a…第6周壁、60…フィルタ付き容器、61…フィルタ材、61x…フィルタ母材、64…開口部、66…栓部材、70…フィルタ付き容器、76…栓部材、80…フィルタ部材、81…フィルタ材、83…筒部、84…開口部、85…閉端部、86…取付部材、87…アダプタ、87a…挿通孔、88…固定部材、88a…第1開口部、88b…第2開口部、90…フィルタ部材、91…フィルタ材、93…筒部、94…第1開口部、95…第2開口部、96…取付部材、100…フィルタ部材、101…フィルタ材、101a…接続部分、110…精製装置、111…精製容器、111A…第1精製容器、111B…第2精製容器、111C…第3精製容器、111D…第4精製容器、111E…第5精製容器、112…開口部、114…開口部、115…開口部、116…開口部、120…外管、121…第1開口端、122…第2開口端、123…継手、124…蓋部材、130…内管、131…壁、132…第1開口端、140…減圧装置、141…真空ポンプ、142…トラップ、150…加熱装置、151…加熱部、160…キャップ、161…把手。
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