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特許7277899液体組成物と、その液体組成物の発泡を抑制する方法及び発泡抑制剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】液体組成物と、その液体組成物の発泡を抑制する方法及び発泡抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4425 20060101AFI20230512BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 31/02 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230512BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A61K31/4425
A61K8/46
A61K8/49
A61K8/63
A61K9/08
A61K31/185
A61K31/704
A61K47/28
A61P1/02
A61P31/02
A61P31/04
A61Q11/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018242382
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020105082
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】593050091
【氏名又は名称】ジャパンメディック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110456
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 務
(74)【代理人】
【識別番号】100117813
【弁理士】
【氏名又は名称】深澤 憲広
(72)【発明者】
【氏名】前田 康博
(72)【発明者】
【氏名】上田 哲志
(72)【発明者】
【氏名】島倉 征一
(72)【発明者】
【氏名】田中 爾織
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-352620(JP,A)
【文献】特開2016-185915(JP,A)
【文献】特開平03-258716(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152155(WO,A1)
【文献】特開2011-246418(JP,A)
【文献】特開2019-199469(JP,A)
【文献】日本薬局方外医薬品規格2002第一部、第二部 [online],2002年,pp.89,90,<URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001008364.pdf>,retrieved on 03 February 2023
【文献】第十七改正 日本薬局方 [online],2016年,p.4,<URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/JP17.pdf>,retrieved on 03 February 2023
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61Q
A01N
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)4級アンモニウム塩又はその水和物及び(B)1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物を含有する液体組成物に、(C)グリチルリチン酸又はその塩を添加する、液体組成物の発泡抑制方法。
【請求項2】
液体組成物中のグリチルリチン酸又はその塩の含有量が0.1乃至10 mg/100 mlである、請求項1記載の液体組成物の発泡抑制方法。
【請求項3】
グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸ジカリウムである、請求項1又は2記載の液体組成物の発泡抑制方法。
【請求項4】
グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸モノアンモニウムである、請求項1又は2記載の液体組成物の発泡抑制方法。
【請求項5】
4級アンモニウム塩又はその水和物が、セチルピリジニウム塩である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体組成物の発泡抑制方法。
【請求項6】
1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物が、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸のナトリウム塩である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体組成物の発泡抑制方法。
【請求項7】
(A)4級アンモニウム塩又はその水和物及び(B)1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物を含有する液体組成物に対して添加するための、(C)グリチルリチン酸又はその塩を含有する発泡抑制剤。
【請求項8】
グリチルリチン酸又はその塩の含有量が、液体組成物の全容量に対して0.1乃至10 mg/100 mlで含有される、請求項7記載の発泡抑制剤。
【請求項9】
グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸ジカリウムである、請求項7又は8記載の発泡抑制剤。
【請求項10】
グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸モノアンモニウムである、請求項7又は8記載の発泡抑制剤。
【請求項11】
前記液体組成物中に含有される4級アンモニウム塩又はその水和物が、セチルピリジニウム塩である、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の発泡抑制剤。
【請求項12】
前記液体組成物中に含有される1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物が、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸のナトリウム塩である、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の発泡抑制剤。
【請求項13】
(A)3乃至7 mg/100 mlの4級アンモニウム塩又はその水和物及び(B)1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物と、(C)グリチルリチン酸又はその塩を含有する含嗽剤液体組成物。
【請求項14】
グリチルリチン酸又はその塩の含有量が0.1乃至10 mg/100 mlである、請求項13記載の含嗽剤液体組成物。
【請求項15】
グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸ジカリウムである、請求項13又は14記載の含嗽剤液体組成物。
【請求項16】
グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸モノアンモニウムである、請求項13又は14記載の含嗽剤液体組成物。
【請求項17】
4級アンモニウム塩又はその水和物が、セチルピリジニウム塩である、請求項13乃至16のいずれか1項に記載の含嗽剤液体組成物。
【請求項18】
1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物が、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸のナトリウム塩である、請求項13乃至16のいずれか1項に記載の含嗽剤液体組成物。
【請求項19】
(B)1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物の含有量が1乃至10 mg/100 mlである、請求項13記載の含嗽剤液体組成物。
【請求項20】
(C)グリチルリチン酸又はその塩の含有量が0.4乃至6 mg/100 mlである、請求項13または19記載の含嗽剤液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリチルリチン酸又はその塩を加えることによる液体組成物と、その液体組成物の発泡を抑制する方法及び発泡抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セチルピリジニウム塩は、殺菌作用を示し、従来から口腔内の殺菌のため含嗽剤に用いられている。また、アズレンスルホン酸及びその塩は、抗炎症作用を示し、従来から口腔粘膜の炎症を抑えるために含嗽剤に用いられている。一方、グリチルリチン酸は、抗炎症作用を示し、医薬品、医薬部外品や化粧品等に使用されており、更に甘味を示すことから矯味剤や甘味剤として医薬品等に添加されている。しかし、グリチルリチン酸が、液体組成物の泡立ちを抑制する効果を示すことは知られていなかった。
尚、本明細書では液体組成物の泡立ちを発泡と称し、発泡抑制とは、泡の形成抑制又は低減及び形成した泡の消泡時間の短縮を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
4級アンモニウム塩の一種であるセチルピリジニウム塩は、陽イオン性界面活性剤の一種であり、セチルピリジニウム塩を含有した液体組成物を含嗽に用いると、わずかに発泡するが問題なく使用できる。一方、水溶性アズレンの一種であるアズレンスルホン酸及びその塩は、セチルピリジニウム塩よりも更に発泡が弱く、アズレンスルホン酸を含有した液体組成物も含嗽剤として問題なく使用できる。しかし、セチルピリジニウム塩とアズレンスルホン酸及びその塩の両方を含有する液体組成物で含嗽すると、発泡が極めて強くなり、泡が使用者の口からあふれ出すこともあり、使用に際して大きな問題があった。使用時の過剰な発泡は、使用者に不快感と不安感を与えることとなり、含嗽剤の安心な使用を妨げるものであった。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、(A)4級アンモニウム塩又はその水和物及び(B)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物を含有する液体組成物の発泡を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、(A)4級アンモニウム塩又はその水和物及び(B)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物を含有する液体組成物に、(C)グリチルリチン酸又はその塩を加えることにより液体組成物の発泡を抑制できることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の発泡抑制方法を提供する。
(1)(A)4級アンモニウム塩又はその水和物及び(B)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物を含有する液体組成物に、(C)グリチルリチン酸又はその塩を添加することを特徴とする液体組成物の発泡抑制方法。
(2)液体組成物中のグリチルリチン酸又はその塩の含有量が0.1乃至10mg/100mlであることを特徴とする(1)記載の液体組成物の発泡抑制方法。
(3)グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸ジカリウムであることを特徴とする(1)又は(2)記載の液体組成物の発泡抑制方法。
(4)グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸モノアンモニウムであることを特徴とする(1)又は(2)記載の液体組成物の発泡抑制方法。
(5)4級アンモニウム塩又はその水和物が、セチルピリジニウム塩であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の液体組成物の発泡抑制方法。
(6)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくは水和物が、アズレンスルホン酸であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の液体組成物の発泡抑制方法。
【0007】
また、本発明は以下の発泡抑制剤を提供する。
(7)(A)4級アンモニウム塩又はその水和物及び(B)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物を含有する液体組成物に添加する、(C)グリチルリチン酸又はその塩を含有することを特徴とする発泡抑制剤。
(8)液体組成物中のグリチルリチン酸又はその塩の含有量が0.1乃至10mg/100mlであることを特徴とする(7)記載の発泡抑制剤。
(9)グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸ジカリウムであることを特徴とする(7)又は(8)記載の発泡抑制剤。
(10)グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸モノアンモニウムであることを特徴とする(7)又は(8)記載の発泡抑制剤。
(11)4級アンモニウム塩又はその水和物が、セチルピリジニウム塩であることを特徴とする(7)乃至(10)のいずれかに記載の発泡抑制剤。
(12)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくは水和物が、アズレンスルホン酸であることを特徴とする(7)乃至(10)のいずれかに記載の発泡抑制剤。
【0008】
更に本発明は以下の液体組成物を提供する。
(13)(A)4級アンモニウム塩又はその水和物及び(B)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物と、(C)グリチルリチン酸又はその塩を含有することを特徴とする液体組成物。
(14)グリチルリチン酸又はその塩の含有量が0.1乃至10mg/100mlであることを特徴とする(13)記載の液体組成物。
(15)グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸ジカリウムであることを特徴とする(13)又は(14)記載の液体組成物。
(16)グリチルリチン酸又はその塩が、グリチルリチン酸モノアンモニウムであることを特徴とする(13)又は(14)記載の液体組成物。
(17)4級アンモニウム塩又はその水和物が、セチルピリジニウム塩であることを特徴とする(13)乃至(16)のいずれかに記載の液体組成物。
(18)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくは水和物が、アズレンスルホン酸であることを特徴とする(13)乃至(16)のいずれかに記載の液体組成物。
(19)(A)4級アンモニウム塩又はその水和物の含有量が3乃至7mg/100ml、(B)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物の含有量が1乃至10mg/100ml、(C)グリチルリチン酸又はその塩の含有量が0.4乃至6mg/100mlであることを特徴とする(13)記載の液体組成物。
(20)液体組成物が含嗽剤であることを特徴とする(13)乃至(19)のいずれかに記載の液体組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(A)4級アンモニウム塩又はその水和物及び(B)水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物を含有する液体組成物であっても、(C)グリチルリチン酸又はその塩を加えることにより液体組成物の発泡を抑制することが可能となる。これにより、該液体組成物を用いて含嗽した際に、泡が使用者の口からあふれ出すような状況が回避され、使用者が安心して快適に使用できる製品の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験1で用いた試験容器の側面図である。
図2】比較例1~3の試験1の結果を示すグラフである。
図3】比較例3及び実施例1~5の試験1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
本発明の液体組成物は、使用時に適宜、水で希釈することによって所望の濃度に調整して用いることができる。本明細書における各成分の含有量は、使用時の値を記している。
【0012】
4級アンモニウム塩又はその水和物は、殺菌作用を示し、例えばセチルピリジニウム塩化物水和物を含有した水溶液で含嗽することにより、口腔内粘膜において細菌の増殖を抑え、のどの炎症を緩和し、歯周病や口臭を予防する効果が知られている。
本発明の4級アンモニウム塩としてはセチルピリジニウム塩が好ましく、セチルピリジニウム塩としてはセチルピリジニウム塩化物が好ましく、中でも1-ヘキサデシルピリジニウムクロライドが好ましい。本発明の4級アンモニウム塩又はその水和物としてはセチルピリジニウム塩化物水和物である1-ヘキサデシルピリジニウムクロライド水和物が好ましく用いられる。
本発明における4級アンモニウム塩又はその水和物の含有量は、例えば、セチルピリジニウム塩化物水和物として、液体組成物の全容量に対して0.1mg/100ml以上、好ましくは1乃至10mg/100ml、より好ましくは3乃至7mg/100mlである。
【0013】
水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物は、抗炎症作用を示し、例えばアズレンスルホン酸ナトリウムを含有した水溶液で含嗽することにより、扁桃炎、咽頭炎、口内炎、歯肉炎を鎮める効果が知られている。
本発明の水溶性アズレンとしてはアズレンスルホン酸が好ましく、水溶性アズレンの塩としては、水溶性アズレンと塩を形成するものであれば用いることができるが、ナトリウム塩が好ましく、アズレンスルホン酸ナトリウムが好ましく用いられる。
本発明の水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物としてはアズレンスルホン酸ナトリウムである1、4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸ナトリウム及びその水和物が好ましく用いられる。
本発明における水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物の含有量は、例えば、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物として、液体組成物の全容量に対して0.01mg/100ml以上、好ましくは0.5乃至20mg/100ml、より好ましくは1乃至10mg/100mlである。
【0014】
グリチルリチン酸は、抗炎症作用を示し、医薬品、医薬部外品や化粧品等に使用されており、更に甘味を示すことから矯味剤や甘味剤として医薬品等に添加されている。
本発明のグリチルリチン酸又はその塩としては、グリチルリチン酸ジカリウム又はグリチルリチン酸モノアンモニウムが好ましい。
本発明におけるグリチルリチン酸又はその塩の含有量は、例えば、グリチルリチン酸ジカリウムとして、液体組成物の全容量に対して0.01mg/100ml以上、好ましくは0.1乃至10mg/100ml、より好ましくは0.4乃至6mg/100ml、とりわけ好ましくは2乃至6mg/100ml、中でも好ましくは4乃至6mg/100mlである。
【0015】
本発明において、液体組成物は、水溶性アズレン又はその薬剤学的に許容される塩もしくはその水和物を溶解可能な溶媒を含有することが好ましい。例えば、エタノール、グリセリン、イソプロピルアルコール等の低級アルコールを溶媒として使用することができる。また、低級アルコールに精製水を組み合わせて使用することができる。尚、溶媒は8アセチルしょ糖等の添加剤を含むものであってもよい。
【0016】
液体組成物には、アズレンスルホン酸塩のプラスチック容器内壁への吸着を防止する目的で弱酸性物質の塩または塩の水和物を含有することが好ましい。弱酸性物質としては、例えば、クエン酸、乳酸、リン酸、炭酸及びそれらの塩、それらの塩の水和物等を使用することができる。
【0017】
液体組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の任意の成分を含有してもよい。以下に、任意の成分として挙げられる代表的なものを例示する。
殺菌剤として、例えば、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物等を使用することができる。
矯味剤として、例えば、サッカリンナトリウム水和物、メントール、カンフル、ハッカ油、レモン油、ウイキョウ油、ユーカリ油、ケイヒ油、チョウジ油、バニリン、香料等を使用することができる。
安定化剤として、例えば、トコフェロール、マクロゴール等を使用することができる。
糖アルコール類として、例えば、キシリトール、ソルビトール、グリセリン等を使用することができる。
キレート剤として、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム及びそれらの水和物を使用することができる。
界面活性剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等を使用することができる。
等張化剤として、例えば、塩化ナトリウム等の無機塩類、プロピレングリコール等の多価アルコール類等を使用することができる。
防腐剤として、例えば、パラベン、チモール等を使用することができる。
任意の成分は、これらに限定されることはなく、上記以外の各種添加物も適宜用いることができる。また、これらの成分を添加する目的も上記のものに限定されない。
【0018】
液体組成物の調製方法は、特に限定されることはなく、公知の方法を用いることができる。また、各成分の配合順序については、溶媒への溶解性に応じて適宜考慮してよい。
【0019】
本発明の液体組成物の使用形態は、特に限定されないが、例えば、うがい薬(含嗽剤)が挙げられる。本発明の液体組成物をうがい薬として使用する場合、あらかじめ本発明の液体組成物より高濃度の液体組成物を調製し、使用時に該高濃度液体組成物を水で希釈して、本発明の成分及び組成の液体組成物としたものを口に含んで喉や口腔内を洗浄することで、喉の粘膜や口腔内の炎症を緩和し、細菌の繁殖を抑制し、感染病の予防や、口臭の予防等の効果が期待できる。
【実施例
【0020】
以下、実施例及び比較例を示し本発明の詳細を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0021】
比較例
セチルピリジニウム塩化物水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物、グリチルリチン酸ジカリウム、エタノール、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムの各成分を表1記載の分量(mg)で秤量し、秤量された各成分を混合した後、精製水を加え、全量を100mlとすることで比較例1~3の液体組成物を調製した。
【0022】
【表1】
【0023】
実施例
セチルピリジニウム塩化物水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物、グリチルリチン酸ジカリウム、エタノール、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムの各成分を表2記載の分量(mg)で秤量し、秤量された各成分を混合した後、精製水を加え、全量を100mlとすることで実施例1~5の液体組成物を調製した。
【0024】
【表2】
【0025】
<試験1>
図1に示す丸底の試験容器1を用い、比較例1~3、実施例1~5の各々の液体組成物25mlをねじ口試験管11(外径35mm、口部内径20.3mm、高さ105mm、ガラス肉厚約1.3mm、容量50mL)の中に入れ、キャップ12を螺合し密封した。その後、液体組成物を入れた試験容器1の長軸方向が水平になるように振盪器に設置し、該長軸方向を振盪方向として下記条件で往復撹拌を実施した。
振幅=40mm
振盪速度=210回/分
振盪時間=2分
撹拌後、発泡度の指標として試験容器1をキャップ12が上となるように鉛直にした状態で、試験容器1内部の液体組成物の液面からの泡の高さを測定した。尚、撹拌直後の泡の高さと、前記鉛直状態で試験容器1を静置し、撹拌直後から30分経過後、1時間経過後、2時間経過後、3時間経過後の泡の高さを測定した。測定結果の多重比較検定はTukey-Kramer法で行い有意確率(p値)を算出した。
【0026】
比較例1~3の試験1の結果を図2に示す。
比較例1~3の撹拌直後の泡の高さを比較すると、セチルピリジニウム塩化物水和物のみを含有した比較例1及びアズレンスルホン酸ナトリウム水和物のみを含有した比較例2よりも、セチルピリジニウム塩化物水和物とアズレンスルホン酸ナトリウム水和物の両方を含有した比較例3の泡の高さが著しく高くなっていることが分かる。また、3時間後の泡の高さに着目すると、比較例1と比較例2では、ほとんど泡が認められなくなっていることに対し、比較例3では撹拌直後の約8割もの泡が残存していることが確認できる。
このように、セチルピリジニウム塩化物水和物とアズレンスルホン酸ナトリウム水和物の両方を含有した液体組成物は、各々を単独で含有した液体組成物よりも有意(p<0.01)に泡立ち易くなること及び発生した泡が消失し難くなることが確認できた。
【0027】
比較例3と実施例1~5の試験1の結果を図3に示す。
セチルピリジニウム塩化物水和物とアズレンスルホン酸ナトリウムを含有した比較例3に対し、実施例1~5は、比較例3の処方にグリチルリチン酸ジカリウムを添加した処方となっており、グリチルリチン酸ジカリウムの含有量は、実施例1<実施例2<実施例3<実施例4<実施例5となっている。
図3の撹拌直後の泡の高さに着目すると、比較例3が最も泡の高さが高いが、グリチルリチン酸ジカリウムを加えた各実施例の泡の高さは比較例3よりも低くなっており、また、グリチルリチン酸ジカリウムの含有量の増大に伴って泡の高さが低くなっていることが分かる。また、3時間後でもグリチルリチン酸ジカリウムの含有量の増大に従って、泡の高さが低くなっていることが確認できる。
このようにセチルピリジニウム塩化物水和物とアズレンスルホン酸ナトリウムを含有した液体組成物に、グリチルリチン酸ジカリウムを添加することで発泡が抑制され、その発泡抑制効果は、グリチルリチン酸ジカリウムの含有量増大に伴い向上することが有意(p<0.01)に確認できた。
【0028】
<試験2>
健常な成人男女5名からなる被験者1~5に比較例3及び実施例1~5の各々の液体組成物50mlを口に含んで含嗽を実施してもらい、その際の泡立ち状態を表3の基準で評価してもらった。その結果を表4に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
表4に示すように、セチルピリジニウム塩化物水和物とアズレンスルホン酸ナトリウムを含有した比較例3の含嗽では、「△泡立ちが気になる」あるいは「×泡立ちがとても気になる」との評価であったが、グリチルリチン酸ジカリウムを含有した実施例1では、「○泡立ちが気にならない」との評価が現れ、更に、グリチルリチン酸ジカリウム含有量の増大に伴い、実施例3では「◎泡立たない」との評価が現れ、更に、実施例4~5では被験者全員が「◎泡立たない」との評価となった。
このように試験2からもセチルピリジニウム塩化物水和物とアズレンスルホン酸ナトリウムを含有した液体組成物にグリチルリチン酸ジカリウムを添加することで発泡が抑制されること及び発泡抑制効果がグリチルリチン酸ジカリウムの含有量増大に伴い向上することが明らかとなった。さらに、発泡抑制効果は、実際に使用者が含嗽を行った際に、「泡立ちが気にならない」状況として体感できることも明らかとなった。
【0032】
本発明は、上記実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。特に液体組成物に含まれる成分及び各成分の含有量は、実際に使用する際に本発明の範囲に入れば良く、濃縮した商品を使用時に水で希釈するという方法の他にも、複数の容器に薬剤を分離、分割して供給し、使用時に各薬剤を混合するという方法や、混合後、更に水で希釈するなど任意の商品形態や液体組成物の調製方法をとることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 試験容器
11 ねじ口試験管
12 キャップ
図1
図2
図3