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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20230512BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20230512BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/898
A61Q5/12
A61K8/891
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019018190
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020125257
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西垣 祥子
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-224199(JP,A)
【文献】特開2004-10581(JP,A)
【文献】特開2014-169417(JP,A)
【文献】特開2004-67652(JP,A)
【文献】特開2016-166165(JP,A)
【文献】特開平4-305516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、
炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)と、
炭素数14~22の高級アルコール(C)を3~20質量%と、
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)を0.01~3質量%と、
アミノ変性シリコーン(E)を0.01~5質量%とを含み、
前記ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量比(A/B)が、15であり、
前記ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量の合計(A+B)が、0.1~7質量%である、毛髪化粧料。
【請求項2】
ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)が、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)が、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび臭化ステアリルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記炭素数14~22の高級アルコール(C)が、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、およびベヘニルアルコールから選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
前記アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)が、ラウリルベタイン、ミリスチルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタインおよびココベタインから選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
前記アミノ変性シリコーン(E)が、アモジメチコン、アミノプロピルジメチコン、アミノエチルアミノプロピルジメチコン、ビスセテアリルアモジメチコンおよび(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマーから選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(F)を0.1~3質量%含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
高重合メチルポリシロキサン(G)を0.5~5質量%含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項9】
トリートメントである、請求項1~8のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ヘアカラーやパーマなどに加え、ヘアアイロンでストレートやカールのスタイル形成を日常的に行うことが多くなり、毛髪へのダメージが問題となっている。特に、ヘアアイロンでのスタイル形成は、毛髪を高温で熱処理するため、毛髪が大きなダメージを受ける。ダメージを受けた毛髪は、パサつきや硬さがあり、感触が良くないという問題があった。
【0003】
これまで、シャンプー後の毛髪の感触を向上させるために、リンス、コンディショナー、トリートメント等の毛髪化粧料が使用されてきた。上述のように毛髪のダメージが以前にも増していることから、これらの毛髪化粧料は、より高度に毛髪の感触を向上することが求められており、更なる毛髪のしっとり感と柔らかさの向上が望まれている。
【0004】
例えば、特許文献1では、アミノ変性シリコーンを低粘度のシリコーンと一定の比率で組み合わせ、カチオン界面活性剤-ベタイン型両性界面活性剤-高級アルコール系の毛髪化粧料に配合することが開示されている。そして、すすぎ時におけるべたつき・キシミを抑えつつ、乾燥後の毛髪に柔らかさとしっとり感を付与すると記載されている。
【0005】
特許文献2では、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸アルキルトリメチルアンモニウム、炭素数12以上24以下の脂肪族アルコール及び水を用い、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとメチル硫酸アルキルトリメチルアンモニウムとの配合比を特定範囲とする毛髪化粧料が開示されている。そして、毛髪に対して良好なしっとり感及びやわらかさを付与できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-10581号公報
【文献】特開2011-173871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、すすぎ時の滑らかさ、毛髪の柔らかさはあるものの、しっとり感が十分ではなかった。また、特許文献2の技術では、毛髪のしっとり感はあるものの、柔らかさが十分ではなく、すすぎ時にべたつきやきしみがあった。さらに、毛髪化粧料が毛髪に均一に付着しないという問題もあった。
【0008】
本発明者は、すすぎ時の滑らかさ、毛髪の柔らかさ、しっとり感の向上を検討したが、すすぎ時の滑らかさと毛髪の柔らかさを維持したまま、しっとり感を改善することはできなかった。すなわち、すすぎ時の滑らかさ、毛髪の柔らかさと、しっとり感とを両立させることができなかった。
【0009】
このようなことから、本発明は、毛髪のすすぎ時の滑らかさと柔らかさに優れ、かつ、仕上がりの柔らかさとしっとり感にも優れる毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪化粧料は前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[9]である。
[1]ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)と、炭素数14~22の高級アルコール(C)を3~20質量%と、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)を0.01~3質量%と、アミノ変性シリコーン(E)を0.01~5質量%とを含み、前記ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量比(A/B)が、3~20であり、前記ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量の合計(A+B)が、0.1~7質量%である、毛髪化粧料。
[2]ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)が、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種である、[1]に記載の毛髪化粧料。
[3]炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)が、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび臭化ステアリルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の毛髪化粧料。
[4]前記炭素数14~22の高級アルコール(C)が、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、およびベヘニルアルコールから選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[5]前記アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)が、ラウリルベタイン、ミリスチルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタインおよびココベタインから選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[6]前記アミノ変性シリコーン(E)が、アモジメチコン、アミノプロピルジメチコン、アミノエチルアミノプロピルジメチコン、ビスセテアリルアモジメチコンおよび(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマーから選択される少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[7]塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(F)を0.1~3質量%含む、[1]~[6]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[8]高重合メチルポリシロキサン(G)を0.5~5質量%含む、[1]~[7]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[9]トリートメントである、[1]~[8]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、毛髪のすすぎ時の滑らかさと柔らかさに優れ、かつ、仕上がりの柔らかさとしっとり感にも優れる毛髪化粧料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の毛髪化粧料について具体的に説明する。
【0013】
<毛髪化粧料>
本発明の毛髪化粧料は、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)と、炭素数14~22の高級アルコール(C)を3~20質量%と、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)を0.01~3質量%と、アミノ変性シリコーン(E)を0.01~5質量%とを含み、前記ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量比(A/B)が、3~20であり、前記ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量の合計(A+B)が、0.1~7質量%である。
なお、本発明における各成分の含有量は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の含有量を示している。
【0014】
<ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)>
本発明の毛髪化粧料は、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)を含み、前記ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、後述する炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量比(A/B)が、3~20であり、前記ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量の合計(A+B)が、0.1~7質量%である。
【0015】
本発明の毛髪化粧料は、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量比(A/B)は、5~15であることが好ましく、7~10であることがより好ましい。
【0016】
本発明の毛髪化粧料は、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量比(A/B)が前記の範囲内にあると、毛髪の柔らかさとしっとり感とが両立できる。
【0017】
ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量比(A/B)が、3より小さいと、しっとり感がなくなり、20より大きいと柔らかさが減少する。
【0018】
本発明の毛髪化粧料は、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量の合計(A+B)は、0.5~5質量%であることが好ましく、1~4質量%であることがより好ましい。ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量の合計(A+B)が、前記範囲内にあると、仕上がりの柔らかさとしっとり感とが両立できる。
【0019】
ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量の合計(A+B)が前記下限量より少ないと、仕上がりのしっとり感とやわらかさが感じられず、前記上限量より多いと、仕上がりのしっとり感と柔らかさの効果は低下し、十分な効果が得られない。
【0020】
ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)として、具体的には、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムおよび臭化ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられる。これらの中でも、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましく、しっとり感を付与する効果に優れることから塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムがより好ましい。
ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
<炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)>
本発明の毛髪化粧料は、炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)を含む。
【0022】
炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)が有するアルキル基としては、直鎖アルキル基でも、分岐を有するアルキル基でもよいが、直鎖アルキル基が好ましい。なお、前記炭素数は、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)が有するアルキル基およびメチル基の炭素数の合計を意味する。
【0023】
炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)として、具体的には、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウムおよび塩化セチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。これらの中でも、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび臭化ステアリルトリメチルアンモニウムが好ましく、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および臭化ステアリルトリメチルアンモニウムがより好ましく、柔らかさを付与する効果に優れることから塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが最も好ましい。
炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
<炭素数14~22の高級アルコール(C)>
本発明の毛髪化粧料は、炭素数14~22の高級アルコール(C)を3~20質量%、好ましくは4~15質量%、より好ましくは5~10質量%含む。
【0025】
炭素数14~22の高級アルコール(C)が前記範囲内にあると、毛髪塗付時のしっとり感を付与することができる。炭素数14~22の高級アルコール(C)が前記下限量より少ないと毛髪塗付時のしっとり感が弱く、剤型の安定性が悪くなり、前記上限量より多いと、粘度が高い組成物となり、毛髪に均一に塗布しにくくなる。
【0026】
炭素数14~22の高級アルコール(C)としては、例えば、炭素数14~22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有する1価の高級アルコールが挙げられる。炭素数14~22の高級アルコール(C)において炭素数は、16~20であることが好ましく、18であることがより好ましい。
【0027】
また、炭素数14~22の高級アルコール(C)は、飽和アルコールであっても、不飽和アルコールであってもよいが剤の安定性を付与する効果に優れることから飽和アルコールが好ましい。
【0028】
炭素数14~22の高級アルコール(C)として、具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、およびオレイルアルコールが挙げられる。これらの中でも、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、およびベヘニルアルコールが好ましく、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびアラキルアルコールがより好ましく、剤の安定性と滑らかさを付与する効果に優れることからステアリルアルコールが最も好ましい。
炭素数14~22の高級アルコール(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
<アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)>
本発明の毛髪化粧料は、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)を0.01~3質量%、好ましくは0.05~2質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%含む。アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)が前記範囲内にあると、塗付時やすすぎ時のべたつきを抑えて、滑らかさを付与することができる。アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)が前記下限量より少ないと、毛髪の柔らかさがなく、硬さを感じてしまう。アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)が前記上限量より多いと、粘度が低すぎる組成物となるため使用しにくく、毛髪のしっとり感も弱くなる。また、剤の安定性が悪くなる。
【0030】
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)として、具体的には、ラウリルベタイン、ミリスチルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタインおよびココベタインが挙げられる。これらの中でも、ラウリルベタイン、ミリスチルベタイン、およびセチルベタインが好ましく、すすぎ時の毛髪の滑らかさと柔らかさを付与する効果に優れることからラウリルベタインがより好ましい。
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
<アミノ変性シリコーン(E)>
本発明におけるアミノ変性シリコーンとは、アミノ基を含有するシリコーンを指す。
本発明の毛髪化粧料は、アミノ変性シリコーン(E)を0.01~5質量%、好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%含む。アミノ変性シリコーン(E)が前記範囲内にあると、毛髪にしっとり感と柔らかさを付与することができる。アミノ変性シリコーン(E)が前記下限量より少ないと、毛髪のしっとり感と柔らかさが弱く、前記上限量より多いと、すすぎ時のべたつきや、軋みが生じ、毛髪に指が絡みやすくなってしまう。
【0032】
アミノ変性シリコーン(E)としては、例えば、アモジメチコン、アミノプロピルジメチコン、アミノエチルアミノプロピルジメチコン、ビスセテアリルアモジメチコン、および(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマーが挙げられる。これらの中でも、アモジメチコン、およびアミノプロピルジメチコンが好ましく、しっとり感と柔らかさを両立できることからアモジメチコンがより好ましい。
【0033】
なお、アモジメチコンは、一般に、乳化液状やオイル状のものが知られている。本発明の毛髪化粧料にアモジメチコンを用いる場合は、乳化液状およびオイル状のどちらを用いてもよい。
【0034】
本発明の毛髪化粧料に用いるアモジメチコンとしては、例えば、KF-8004(信越化学工業株式会社製)を使用することができる。
アミノ変性シリコーン(E)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
<塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(F)>
本発明の毛髪化粧料は、任意で、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(F)を好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~1.5質量%含む。
【0036】
塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(F)を任意で加えることによって、毛髪表面の感触が、より滑らかになることから好ましい。また、仕上がりの毛髪の根元と毛先の感触が均一になることからも好ましい。
【0037】
塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(F)が有するアルキル基としては、炭素数8~18が好ましく、炭素数10~18がより好ましく、14~18が最も好ましい。また、前記アルキル基としては直鎖アルキル基が好ましい。
【0038】
塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(F)としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジラウリルジメチルアンモニウムが挙げられる。塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(F)は、混合物であってもよい。混合物としては、塩化ジアルキル(C12~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C14~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジヤシアルキルジメチルアンモニウム等が挙げられる。なお、(C12~18)および(C14~18)は、それぞれアルキル基の炭素数が12~18、または14~18の塩化ジアルキルジメチルアンモニウムの混合物であることを意味する。
【0039】
これらの中でも、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウムがより好ましく、柔らかさと滑らかさを付与する効果に優れることから塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが最も好ましい。
塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(F)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0040】
<高重合メチルポリシロキサン(G)>
本発明の毛髪化粧料は、任意で、高重合メチルポリシロキサン(G)を含んでいてもよい。高重合メチルポリシロキサン(G)としては、通常は25℃における粘度が6000mm2/s~400万mm2/sであるメチルポリシロキサンが用いられる。
【0041】
本発明の毛髪化粧料は、任意で、高重合メチルポリシロキサン(G)を好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1~3質量%含む。
高重合メチルポリシロキサン(G)を任意で加えることによって、仕上がりの指通りがより滑らかになることから、好ましい。
【0042】
本発明における高重合メチルポリシロキサンは、25℃における粘度が6000~100万mm2/sであることが好ましく、6000~50万mm2/sであることがより好ましく、指通りとコーティング感を付与する効果に優れることから、1万~30万mm2/sであることが最も好ましい。
高重合メチルポリシロキサン(G)としては、例えば、KF-96H 10万cs(信越化学工業株式会社製)を使用することができる。
【0043】
<任意成分>
本発明の毛髪化粧料は、通常は水を含む。水の含有量は特に限定されず、使用する目的に応じて、適宜調整して用いることができる。水として、具体的には、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水および天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
【0044】
本発明の毛髪化粧料は、任意で、水を好ましくは54~96質量%含む。
本発明の毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分以外に任意の成分を含有することができる。任意の成分としては、例えば、保湿剤、生薬類、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、増粘剤および色素が挙げられる。
【0045】
<製法>
本発明の毛髪化粧料は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、加熱条件下で行ってもよい。加熱条件下で製造する場合の温度としては、例えば75~85℃が挙げられる。
【0046】
<剤型>
本発明の毛髪化粧料の状態としては、例えば、クリーム状、ミルク状などが挙げられ、毛髪に均一に塗布しやすい観点から、クリーム状が好ましい。
【0047】
本発明の毛髪化粧料の外観は、例えば、透明または不透明な外観が挙げられる。本発明の毛髪化粧料の各種配合成分を均一に混合する観点から、乳化状態であり、不透明な外観であり、油層と水層が分離していないことが好ましい。
【0048】
<使用方法>
本発明における毛髪化粧料は、毛髪に塗布して使用することができ、シャンプー後の毛髪に塗布して使用することが好ましい。
【0049】
本発明の毛髪化粧料は、用途について特に制限はなく、毛髪化粧料全般に適用することができる。
本発明の毛髪化粧料は、例えば、トリートメント、コンディショナー、リンス、多剤式トリートメントの一部を構成するトリートメントとしても使用することができる。これらの中でも、トリートメントとして使用することが好ましい。
【実施例
【0050】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0051】
<実施例1~47、比較例1~10>
表3~表6に示す処方で各成分を混合することにより毛髪化粧料を製造し、物性評価(1)、および官能評価(2)~(16)の試料とした。なお、表中の処方の数値は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表している。
毛髪化粧料についての物性評価および官能評価の結果は、表3~表6に示す。
なお、実施例および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
【0052】
【表1】
【0053】
<物性評価>
後述する(1)に記載の評価項目および評価基準に従って、毛髪化粧料の物性評価を行った。
【0054】
<官能評価>
専門パネラー(美容師)10人が1人ずつ、シェルパデザインサプリD-1シャンプー(株式会社アリミノ製)1gを用いて、ダメージ処理した毛束を洗浄後、水洗し、軽く水気を切った。その後、実施例および比較例の各毛髪化粧料を1g塗布し、水洗した。十分に水洗した後、タオルドライし、ドライヤーで乾燥させた。
【0055】
上述の各施術工程について、下記(2)~(16)に記載の評価項目と評価基準に従って官能評価を行った。各項目につき10人の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
【0056】
〔ダメージ処理〕
官能評価では、一般の人の毛髪の傷みを再現した、ダメージ処理した毛束を用いた。ダメージ処理は以下の方法で行った。
表2に記載の配合でダメージ処理用水溶液を調製し、60℃に加熱した。そこに毛束(約30cm、10gの人毛)(製品名BS-B3A、ビューラックス社製)を10分間浸漬して、ダメージを与えた。その後、ダメージ処理用水溶液から毛束を取り出し、水洗し、乾燥させた。
【0057】
【表2】
【0058】
〔評価〕
(1)剤の安定性
試料を100mLのPET製容器に90g充填後、45℃の恒温槽で90日保管し、その際の分離を確認した。
◎:全く分離しない
〇:60日経過後、わずかに分離する
△:30日経過後~60日までに分離する
×:30日以内に分離する
【0059】
(2)塗布時のしっとり感
毛束に各毛髪化粧料を塗布したときのしっとり感を触感で評価した。
4点:化粧料が毛髪にしっかりと絡んで、非常にしっとりする
3点:化粧料が毛髪に絡んでしっとりする
2点:化粧料が毛髪にほとんど絡まずしっとりしない
1点:化粧料が毛髪に絡まず、全くしっとりしない
【0060】
(3)塗布のしやすさ
毛束に各毛髪化粧料を均一に塗布しやすいかどうかを触感で評価した。
4点:毛先から根元まで均一に塗布することが非常に容易
3点:毛先から根元まで均一に塗布することが容易
2点:毛先から根元まで均一に塗布することが困難
1点:毛先から根元まで均一に塗布することが非常に困難
【0061】
(4)塗布時の柔らかさ
毛束に各毛髪化粧料を塗布したときの毛髪の柔らかさを触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:硬さを感じる
1点:非常に硬さを感じる
【0062】
(5)すすぎ時の滑らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすぐ時の滑らかさを触感で評価した。
4点:非常に滑らかにすすぐことができる
3点:べたつき感を感じない
2点:べたつき感を感じる
1点:非常にべたつき感を感じる
【0063】
(6)すすぎ時の柔らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすぐ時の柔らかさを触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:硬さを感じる
1点:非常に硬さを感じる
【0064】
(7)すすぎ時の軋みの無さ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすぐ時の軋みを触感で評価した。
4点:まったく軋まず、指が絡まらない
3点:ほとんど軋まない
2点:やや軋む
1点:非常に軋んで指が絡む
【0065】
(8)タオルドライ時の柔らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、毛束を軽くタオルドライした際の柔らかさを触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:硬さを感じる
1点:非常に硬さを感じる
【0066】
(9)タオルドライ時の指通り
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、毛束を軽くタオルドライした際の指通りを触感で評価した。
4点:非常に指通りが良い
3点:指通りが良い
2点:指通りがやや悪い
1点:指通りが悪い
【0067】
(10)仕上がりのしっとり感
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させた後のしっとり感を触感で評価した。
4点:非常にしっとりする
3点:しっとりする
2点:あまりしっとりしない
1点:全くしっとりしない
【0068】
(11)仕上がりの毛先のまとまり
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させた後の毛先のまとまりを触感で評価した。
4点:非常にまとまりが良い
3点:まとまりが良い
2点:あまりまとまらない
1点:全くまとまらない
【0069】
(12)仕上がりの滑らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させた後の滑らかさを触感で評価した。
4点:非常に滑らかである
3点:滑らかである
2点:あまり滑らかではない
1点:全く滑らかではない
【0070】
(13)仕上がりの柔らかさ
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させた後の柔らかさを触感で評価した。
4点:非常に柔らかく感じる
3点:柔らかく感じる
2点:やや硬く感じる
1点:非常に硬く感じる
【0071】
(14)仕上がりの均一感
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させた。毛先と根元の触感の違いを評価した。
4点:全く違いを感じない
3点:ほぼ同等の感触
2点:やや異なる感触
1点:明らかに異なる感触
【0072】
(15)仕上がりの指通り
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させた後の毛髪の指通りを触感で評価した。
4点:非常に指通りが良い
3点:指通りが良い
2点:やや指通りが悪い
1点:指通りが悪い
【0073】
(16)仕上がりのコーティング感
毛束に塗布した各毛髪化粧料をすすいだ後、タオルドライし、ドライヤーを用いて乾燥させた後、毛髪一本一本について、薄い膜に覆われて表面が整っているようなコーティング感を感じられるかどうかを触感で評価した。
4点:非常にコーティング感がある
3点:コーティング感がある
2点:コーティング感があまりない
1点:コーティング感が全くない
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
実施例1~47で製造した毛髪化粧料は、(1)~(16)の評価項目において良好な結果となった。実施例47は、特に良好な結果となった。
本発明の毛髪化粧料は、毛髪のすすぎ時の滑らかさと柔らかさに優れ、かつ、仕上がりの柔らかさとしっとり感にも優れる毛髪化粧料であることがわかる。
【0079】
比較例1で製造した毛髪化粧料は、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量の合計(A+B)が規定量より少ないため、仕上がりのしっとり感および柔らかさが悪かった。また、剤の安定性が悪く、塗付時の均一感も悪かった。
【0080】
比較例2で製造した毛髪化粧料は、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量の合計(A+B)が規定量より多いため、仕上がりのしっとり感、毛先のまとまり、滑らかさおよび柔らかさが悪く、仕上がりの毛先までの均一感も悪かった。
【0081】
比較例3で製造した毛髪化粧料は、ベベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量比(A/B)が規定より小さいため、仕上がりのしっとり感および毛先のまとまりが悪かった。また、すすぎ時の滑らかさも悪かった。
【0082】
比較例4で製造した毛髪化粧料は、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩(A)と、前記炭素数15~21のハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム(B)との質量比(A/B)が規定より大きいため、仕上がりの柔らかさが悪かった。また、塗付時、すすぎ時、およびタオルドライ時の柔らかさも悪かった。
【0083】
比較例5で製造した毛髪化粧料は、炭素数14~22の高級アルコール(C)が規定量より少ないため、剤の安定性が悪かった。また、塗付時のしっとり感が悪く、均一に塗付しにくかった。
【0084】
比較例6で製造した毛髪化粧料は、炭素数14~22の高級アルコール(C)が規定量より多いため、塗付時に非常に硬さを感じ、均一に塗付しにくかった。また、仕上がりの柔らかさも悪かった。
【0085】
比較例7で製造した毛髪化粧料は、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)が規定量より少ないため、塗付時に硬さを感じ、均一に塗付しにくかった。また、すすぎ時、タオルドライ時、および仕上がりの柔らかさも悪かった。
【0086】
比較例8で製造した毛髪化粧料は、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(D)が規定量より多いため、剤の安定性が非常に悪かった。また、塗付時および仕上がりのしっとり感が悪く、仕上がりのコーティング感も悪かった。
【0087】
比較例9で製造した毛髪化粧料は、アミノ変性シリコーン(E)が規定量より少ないため、タオルドライ時の指通りが悪く、仕上がりのしっとり感も悪かった。
比較例10で製造した毛髪化粧料は、アミノ変性シリコーン(E)が規定量より多いため、すすぎ時に非常に軋んで指が絡んだ。また、タオルドライ時および仕上がりの柔らかさも悪かった。