(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】システム、及び上げ下げ装置
(51)【国際特許分類】
A47C 27/10 20060101AFI20230512BHJP
A61G 7/057 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A47C27/10 A
A61G7/057
(21)【出願番号】P 2019120886
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】599139442
【氏名又は名称】株式会社プラッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 愼弥
(72)【発明者】
【氏名】木下 慎也
(72)【発明者】
【氏名】指方 玲美
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-171504(JP,A)
【文献】特開2016-209531(JP,A)
【文献】特開2014-064618(JP,A)
【文献】特開2004-242930(JP,A)
【文献】特開平06-335496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/10
A61G 7/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝ている人の身体の少なくとも1つの部分を上げ下げするためのシステムにおいて、
複数の上げ下げ装置を備え、
各上げ下げ装置は、膨張収縮可能な膨張収縮セルと、前記膨張収縮セルに専用の駆動装置と、を備え、
前記膨張収縮セルと前記駆動装置とが、相互に固定されて一体物を構成し、
前記一体物のサイズは、人の身体の一部のみの下方に配置できるサイズであ
り、
前記各上げ下げ装置は、他の上げ下げ装置から機械的に分離されており、
前記複数の上げ下げ装置が、人の身体の相互に離れた複数の部分にそれぞれ配置可能であり、
前記複数の上げ下げ装置の各々が、他の前記上げ下げ装置と異なる時間スケジュールで駆動可能であり、
前記各上げ下げ装置は、前記膨張収縮セルの膨張及び収縮の度あいを、前記専用の駆動装置により調整可能であり、
前記複数の上げ下げ装置のうちの第1上げ下げ装置は、前記複数の上げ下げ装置の識別子を取得し、取得した複数の識別子にそれぞれ対応する上げ下げ装置の時間スケジュールを決定し、決定した時間スケジュールを、他の上げ下げ装置に通知し、
前記他の上げ下げ装置は、前記時間スケジュールに従い、自身を駆動する、
システム。
【請求項2】
前記第1上げ下げ装置は、取得した複数の識別子にそれぞれ対応する上げ下げ装置の膨張収縮セルの膨張及び収縮の度合いを決定し、決定した度合いを、他の上げ下げ装置に通知し、
前記他の上げ下げ装置は、前記度合いに基づき、自身の膨張収縮セルを調整する、
請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1上げ下げ装置は、前記複数の上げ下げ装置のうち、予め決定されている上げ下げ装置である、
請求項
1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1上げ下げ装置は、前記複数の上げ下げ装置から選択可能である、
請求項
1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の装置と相互に通信可能な端末をさらに備え、
前記端末は、前記複数の上げ下げ装置の識別子を取得し、取得した複数の識別子のそれぞれに対応する上げ下げ装置の時間スケジュールを決定し、決定した時間スケジュールを、前記複数の上げ下げ装置に通知し、
前記複数の上げ下げ装置は、前記時間スケジュールに従い、自身を駆動する、
請求項
1に記載のシステム。
【請求項6】
前記端末は、取得した複数の識別子にそれぞれ対応する上げ下げ装置の膨張セルの膨張及び収縮の度合いを決定し、決定した度合いを、他の上げ下げ装置に通知し、
前記他の上げ下げ装置は、前記度合いに基づき、自身の膨張収縮セルを調整する、
請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の上げ下げ装置は、ベッドのマットレスと床板の間に配置される、
請求項
1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の上げ下げ装置が、前記床板に固定される固定手段を有する、
請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記膨張収縮セルは、高さ方向に積層された複数のユニットで構成される、
請求項
1~8のいずれか1項に記載の上げ下げ装置。
【請求項10】
各上げ下げ装置は、自身の稼働状態を知らせるための通知手段をさらに備える、
請求項
1~9のいずれか1項に記載の上げ下げ装置。
【請求項11】
前記上げ下げ装置は、膨張収縮可能なエアセルと、前記エアセルに専用のポンプと、を備えるエアセル装置である、
請求項
1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
寝ている人の身体の部分の下方に配置され得る、上げ下げ装置であって、
前記上げ下げ装置は、膨張収縮可能な膨張収縮セルと、前記膨張収縮セルに専用の駆動装置と、を備え、
前記膨張収縮セルと前記駆動装置とが、相互に固定されて一体物を構成し、
前記一体物のサイズは、人の身体の一部のみの下方に配置できるサイズであり、
前記上げ下げ装置は、他の上げ下げ装置と通信可能であり、
前記上げ下げ装置は、前記他の上げ下げ装置と共有される時間スケジュールに従い、前記膨張収縮セルを膨張及び収縮可能である、
上げ下げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム、及び上げ下げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自分で体を動かすことができない患者(被介護者)は、睡眠時に寝返りを打つことができず、褥瘡になりやすい。褥瘡予防のためには、看護師(介護者)は、患者(被介護者)に対して、患者(被介護者)の体にかかっている圧を抜くため、体位変換を一定時間(例えば2時間おき)おきに行う必要がある。
【0003】
しかし、従来の体位変換は、1人又は2人以上且つ人力で患者(被介護者)の体を、マットレスから離すように傾けなければならず、看護師(介護者)の身体的負担が大きい。
【0004】
また、体をマットレスから離すように傾けることで、患者(被介護者)の睡眠を阻害し、患者(被介護者)にも負担が強いられる。加えて、人の手で体を持ち上げられる(触れられる)ために、患者(被介護者)の精神的不安・不快感により、患者(被介護者)は筋緊張してしまう恐れもあり、拘縮を助長する可能性もある。
【0005】
これに対し、小枕法という方法がある。小枕法は、患者(被介護者)の寝ているマットレス下にクッション等を入れ、患者(被介護者)の体の傾きも少しでいいため、看護師(介護者)の身体的負担や患者(被介護者)の精神的不安は、従来の体位変換に比べ緩和されることが期待されている。また、小さい傾きは、患者(被介護者)の筋肉に反射の反応を起こさせ、筋緊張緩和の効果があることが近年期待されている。
【0006】
しかし、この小枕法についても、クッション等をマットレス下に入れることは人力であり、患者(被介護者)の寝ているマットレスを持ち上げなければならず、身体的負担をなくすまでに至っていない。加えて、一定時間おきに行わなければならないという負担も存在したままである。また、患者(被介護者)もクッション等を入れるために必要より大きくマットレスを持ち上げることによって睡眠を阻害されるというリスクも残っており、患者の負担もなくすまでに至っていない。
【0007】
一方、褥瘡予防において、看護師(介護者)の労力や時間の負担を軽減する装置として、エアマットレスが知られている。例えば、特許文献1には、ベッドに適用されるマット装置が提案されている。このマット装置は、マット部と圧力調整部を備えており、このマット部が第一セル及び第二セルを含んでおり、この第一セル及び第二セルが、変形復元性を有する多孔質体と、多孔質体を機密に包み込む袋体を有するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このようなマット装置は、エアの供給元が複数のエアセルにエアを供給する複雑な構成である。またマット装置のため、装置自体が大きく、高価でもある。
【0010】
従って、本発明の目的は、簡易かつ安価で、コンパクトなサイズの装置及び、当該装置を備えるシステム提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るシステムは、寝ている人の身体の少なくとも1つの部分を上げ下げするためのシステムである。システムは、1以上の上げ下げ装置を備える。各上げ下げ装置は、膨張収縮可能な膨張収縮セルと、膨張収縮セルに専用の駆動装置と、を備える。膨張収縮セルと駆動装置とが、相互に固定されて一体物を構成する。一体物のサイズは、人の身体の一部のみの下方に配置できるサイズである。これにより、簡易かつ安価で、コンパクトなサイズの上げ下げ装置を備えるシステムが提供可能である。
【0012】
好ましくは、システムは、複数の上げ下げ装置を備える。各上げ下げ装置は、他の上げ下げ装置から機械的に分離されている。複数の上げ下げ装置が、人の身体の相互に離れた複数の部分にそれぞれ配置可能である。複数の上げ下げ装置の各々が、他の上げ下げ装置と異なる時間スケジュールで駆動可能である。これにより、人の部分の体位を多様に変換可能である。
【0013】
好ましくは、各上げ下げ装置は、膨張収縮セルの膨張及び収縮の度あいを、専用の駆動装置により調整可能である。これにより、人の部分の体位を変換する際の高さの調整が可能である。
【0014】
好ましくは、複数の上げ下げ装置のうちの第1上げ下げ装置は、複数の上げ下げ装置の識別子を取得し、取得した複数の識別子にそれぞれ対応する上げ下げ装置の時間スケジュールを決定し、決定した時間スケジュールを、他の上げ下げ装置に通知する。他の上げ下げ装置は、前記時間スケジュールに従い、自身を駆動する。これにより、第1上げ下げ装置が、システム全体のスケジュールを調整できる。
【0015】
好ましくは、第1上げ下げ装置は、取得した複数の識別子にそれぞれ対応する上げ下げ装置の膨張収縮セルの膨張及び収縮の度合いを算出し、算出した度合いを、他の上げ下げ装置に通知する。他の上げ下げ装置は、度合いに基づき、自身の膨張収縮セルを調整する。これにより、第1上げ下げ装置の指示により、システム内の上げ下げ装置の膨張及び収縮の度合いを制御できる。
【0016】
好ましくは、第1上げ下げ装置は、複数の上げ下げ装置のうち、予め決定されている上げ下げ装置である。これにより、第1上げ下げ装置を固定できる。
【0017】
好ましくは、第1上げ下げ装置は、前記複数の上げ下げ装置から選択可能である。これにより第1押し上げ装置を選択できる。
【0018】
システムは、複数の装置と相互に通信可能な端末をさらに備える。端末は、複数の上げ下げ装置の識別子を取得し、取得した複数の識別子のそれぞれに対応する上げ下げ装置の時間スケジュールを算出し、算出した時間スケジュールを、複数の上げ下げ装置に通知する。複数の上げ下げ装置は、時間スケジュールに従い、自身を駆動する。これにより、端末でシステムの操作ができる。
【0019】
好ましくは、端末は、取得した複数の識別子にそれぞれ対応する上げ下げ装置の膨張セルの膨張及び収縮の度合いを決定し、決定した度合いを、他の上げ下げ装置に通知する。他の上げ下げ装置は、度合いに基づき、自身の膨張収縮セルを調整する。これにより、端末が、システム内の上げ下げ装置の膨張及び収縮の度合いを制御できる。
【0020】
好ましくは、複数の上げ下げ装置は、ベッドのマットレスと床板の間に配置される。これにより、ユーザの浮遊感を抑制できる。
【0021】
好ましくは、複数の上げ下げ装置が、床板に固定される固定手段を有する。これにより、装置の位置ずれを防止できる。
【0022】
好ましくは、上げ下げ装置は、膨張収縮可能なエアセルと、前記エアセルに専用のポンプと、を備えるエアセル装置である、これにより、エアセル装置の膨張及収縮をエアにより制御できる。
【0023】
好ましくは、膨張収縮セルは、高さ方向に積層された複数のユニットで構成されてもよい。
【0024】
好ましくは、上げ下げ装置は、自身の稼働状態を他社に知らせる通知手段をさらに備えてもよい。また、システムは、システム内の全上げ下げ装置の稼働状態を他社に知らせる通知手段をさらに備えてもよい。
上げ下げ装置は、寝ている人の身体の部分の下方に配置され得る、上げ下げ装置である。上げ下げ装置は、膨張収縮可能な膨張収縮セルと、前記膨張収縮セルに専用の駆動装置と、を備え、膨張収縮セルと駆動装置とが、相互に固定されて一体物を構成し、一体物のサイズは、人の身体の一部のみの下方に配置できるサイズである。上げ下げ装置は、他の上げ下げ装置と通信可能である。上げ下げ装置は、他の上げ下げ装置と共有される時間スケジュールに従い、膨張収縮セルを膨張及び収縮可能である。これにより、簡易かつ安価で、コンパクトなサイズの上げ下げ装置が提供できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、簡易かつ安価で、コンパクトなサイズの装置、及び当該装置を備えるシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】エアセル装置の膨縮状態を説明する図である。
【
図4】マットレスの下に配置されたエアセル部の高さ調整を説明する図である。
【
図5】本実施形態に係るシステムの一例を説明する図である。
【
図6】エアセル装置の固定方法の一例を示す図である。
【
図7】エアセル装置の固定方法の第1変形例を示す図である。
【
図8】エアセル装置の固定方法の第2変形例を示す図である。
【
図10】システムのタイムスケジュールの一例を示す図である。
【
図11】本実施形態にかかるシステムの制御フローの一例である。
【
図12】親機及び各子機の表示情報の一例を示す図である。
【
図13】エアセル装置の第1変形例を説明する図である。
【
図14】エアセル装置の第2変形例を説明する図である。
【
図15】第2実施形態の制御フローを説明する図である。
【
図16】第3実施形態の制御フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<エアセル装置>
本実施形態に係るエアセル装置及びシステムについて、以下説明する。
図1は、エアセル装置1の平面概略図である。
図2は、制御部10の機能構成図である。
【0028】
上げ下げ装置としてのエアセル装置1は、寝ている人の身体の部位の下方に配置され得る装置である。エアセル装置1は、膨張収縮可能な膨張収縮セルとしてのエアセル部20と、エアセル部20専用のポンプ装置10と、を備える。これらは相互に固定されて一体物を構成する。つまり、1つのエアセル装置1に含まれるポンプ装置10とエアセル部20とは、他のエアセル装置1のポンプ装置10とエアセル部20とから機械的に分離されている。
【0029】
エアセル部20は、ポンプ装置10からのエアの供給により膨張可能な袋体である。また膨張したエアセル部20は、エアの排出により収縮可能である。例えば、エアセル部20は、ベッドのマットレス下であって、床板の上に配置可能である。
【0030】
ポンプ装置10は、電源装置13、駆動装置としてのエアポンプ15、制御回路17、吸排気パイプ19、流量調整バルブ12及び圧力センサ14と、これら各部を包含するケーシング11と、を有する。
【0031】
電源装置13が、エアセル部20にエアを供給するエアポンプ15、エアポンプ15を制御する制御回路17、流量調整バルブ12及び圧力センサ14にそれぞれ接続され、各部に電気が供給される。なお、電源装置13は、従来周知の電源装置であってよい。具体的には、例えば、電源装置13は、バッテリーを搭載した充電式のものであってもよいし、電動式ベッドから電力を供給するようにしてもよいし、電池により電力を供給するようにしてもよい。その他、電源装置13の電力供給方法はいかなるものであってもよい。
【0032】
エアポンプ15のエアの供給口(図示なし)には、流量調整バルブ12を介して、吸排気パイプ19の一端が接続され、吸排気パイプ19の他端には、エアセル部20の供給口(図示なし)に接続される。これにより、エアポンプ15とエアセル部20との間のエアの供給又は排気が可能となる。
【0033】
制御回路17は、制御コンピュータ173、通信装置171、制御コンピュータ173、入力部175及び出力部177を有する。制御コンピュータ173が、通信装置171、制御コンピュータ173、入力部175及び出力部177に接続される。制御コンピュータ173は、例えば、図示しない演算部、記憶部、時計等、タイムカウンター等を有する。
【0034】
入力部175は、例えば、ボタンやキーボード等、ユーザ操作による各種情報を制御コンピュータ173に入力する。出力部177は、例えば、ディスプレイ等で構成され、制御コンピュータ173からエアセル装置1の動作状況やユーザ操作による各種設定等が出力される。なお、入力部175及び出力部177の全部又は一部に、これら両機能を兼ね備えたタッチパネルを用いてもよい。通信装置171は、制御コンピュータ173と外部装置との間で、情報を送受信する。
【0035】
制御コンピュータ173は、エアポンプ15、流量調整バルブ12及び圧力センサ14に接続され、これらを制御する。
【0036】
駆動装置としてのエアポンプ15は、膨張収縮セルとしてのエアセル部20を駆動する。具体的には、例えば、エアポンプ15は、制御コンピュータ173からの指示に基づき、エアセル部20にエアを供給又は排気する。流量調整バルブ12は、制御コンピュータ173の指示に基づき、吸排気パイプ19を通過するエアの流量を調整する。圧力センサ14は、エアセル部20から供給又は排出されるエアの量に基づき、エアセル部20内の圧力(内圧)を測定する。
【0037】
これにより、簡易かつ安価で、コンパクトなサイズのエアセル装置が提供可能である。なお、エアセル部20には、その底面に底板24が配置されてもよい(
図3参照)。底板24は、必須の構成要素ではないが、底面に底板24を配置することにより、エアセル部20の取付け時のよれ等を防止することができる。これにより、エアセル装置1のマットレス下への配置が容易になる。
【0038】
なお、本実施形態では、ポンプ装置10が、流量調整バルブ12及び圧力センサ14を有していたが、これら12、14は必須の構成要素ではなく、いずれも有さなくてもよい。また、ポンプ装置10は、流量調整バルブ12及び圧力センサ14のいずれか一方を有することとしてもよい。
【0039】
図3、4を参照し、エアセル装置1の膨張収縮の状態を説明する。エアセル部20は、ポンプ装置10からのエアの供給により膨張する。エアセル部20は、膨張することにより高さが高くなる。また、エアセル部20は、収縮することにより高さが低くなる。エアセル部20の膨張時の高さは、ポンプ装置10の高さよりも高く設定されていれば、上限はない。
【0040】
具体的には、エアセル部20の膨張時の高さは、ユーザが調整可能であり、どのように設定されてもよい。エアセル部20の膨張時の高さは、例えば1cm~30cm程度に設定されるのが好ましく、さらには、5cm~20cm程度に設定されるのが好ましい。これは、患者が大きく傾くことなく、睡眠阻害や体のズレが少ないからである。
【0041】
なお、エアセル部20の内圧についてもユーザが調整可能であり、どのように設定されてもよい。
一方、エアセル部20の収縮時の高さについても、下限はないが、例えば、エアセル部の収縮時の高さは、数mm~5cm程度であるのが好ましい。
【0042】
図4は、マットレスMの下に配置されたエアセル部20の高さ調整を説明する図である。各図について床板は省略している。(1)は、エアセル部20の高さが低く設定された例であり、(2)は、エアセル部20の高さが中程度の高さに設定された例であり、(3)は、エアセル部20の高さが高く設定された例である。エアセル部20の高さを調整することにより、マットレスMの傾きが変わり、患者(ベッドに寝ている人)の身体の傾き角が変化する。
<ベッドへの取付>
エアセル装置1は、ベッドのマットレスのサイズよりも十分に小さいサイズに形成されている。例えば、エアセル装置1は、人の身体の一部のみの下方に配置できるサイズである。具体的には、例えば、エアセル装置1の大きさは、持ち運びしやすくA3~A6サイズ程度に形成され、好ましくは、A4サイズ程度の大きさに形成される。
【0043】
ベッド上の1又は複数の位置に、1又は複数のエアセル装置1を配置できる。エアセル装置1は、例えば、褥瘡が形成され得る部分に即して配置されるようにしてもよい。具体的には、患者の症状に応じて、複数のエアセル装置1を配置するのが好ましい。
【0044】
エアセル装置1をベッドの床板へ固定する方法を説明する。
図6は、エアセル装置1の固定方法の一例を示す図である。この例では、エアセル部20に袋状のカバー50が装着されている。カバー50は、例えば、例えば、外表面の摩擦の大きい素材(以下、簡単のため固定用素材という。)で形成される。カバー50を装着したエアセル装置1をベッドの床板に直接配置することで、エアセル装置1の位置ずれを防止することができる。なお、この例では、カバー50でエアセル部20のみを覆っているが、エアセル装置1全体を覆うようにしてもよい。また、カバー50全体を固定用素材で形成する必要はなく、少なくとも床板に接する面の一部が固定用素材で形成されていればよい。また、カバー20は、袋状には限られず、例えばベルト状等、エアセル装置1の一部に装着されるものであればどのような形状であってもよい。なお、固定用素材の一例として、シリコン、ゴム、ナイロン、ビニール等の素材が適用される。しかし、固定用素材は、ベッドの床板との関係で滑りにくい素材であれば上述の素材に限られず、どのような素材であってもよい。
【0045】
図7は、エアセル装置1の固定方法の第1変形例を示す図である。この例は、エアセル装置1を、面ファスナを用いて固定する方法を説明する。エアセル部20の底面(図示例では、底板24)には、面ファスナの第1面41が配置され、ベッドの床板Bの表面に、面ファスナの第2面42を有するシート44が、固定部46によって取り付けられている。これにより、面ファスナの第1面41と第2面42とを固定することにより、エアセル装置1がベッドの床板Bに固定される。なお、面ファスナの第1面41は、エアセル部20の底面に代えて前述のカバー50に、固定用素材の代用として用いられるようにしてもよい。
【0046】
図8は、エアセル装置1の固定方法の第2変形例を示す図である。
この例は、複数の幅方向の棒状部fと複数の長手方向の棒状部(図示なし)とがクロスする網状の床板にエアセル装置1を固定する場合の例である。図の例では、エアセル部20の底面(図示例では、底板24)に、ばね式のクリップ30が取り付けられており、幅方向の棒状部fをばね式クリップ30で挟み込むことで、エアセル装置1が床板に固定される。なお、エアセル装置1が有するばね式クリップ30の大きさ、数、位置は、図示例には限られない。また、図示例は、ばねクリップ30は、網状床板の幅方向の棒状部fに取付けるように、エアセル部20の底面に配置されていたが、長手方向の棒状部に取付けるように配置されてもよい。その場合、ばねクリップ30は、底面(図示例では、底板24)に90度回転した状態で配置される。なお、エアセル部20が底板24を有しない例の場合には、ばねクリップ30はエアセル部20の底面に取付けられる。
【0047】
なお、エアセル装置1を床板に固定する例をいくつか示したが、この他どのような手法を用いてもよい。例えば、紐などによりエアセル装置1をベッドの床板に固定してもよい。また、エアセル装置1を、ベッドの床板とマットレスとの間に挟み込むのみで、固定する手段を有しなくてもよい。
<システム>
エアセル装置1は、ベッドの床板の上(マットレスの下)に1又は複数の任意の位置に配置可能であり、各装置が独立した動作が可能であることは、上述の通りである。加えて、エアセル装置1は、床板の上に配置された複数のエアセル装置を連携させるエアセル装置システム(以下、システム。)として動作可能である。本システムは、寝ている人の身体の少なくとも1つの部分を上げ下げするためのシステムである。例えば、複数のエアセル装置の連携は、複数のエアセル装置を有線又は無線にて接続することにより行われる。
【0048】
図2で示した通り、エアセル装置1は、制御回路17内に、制御コンピュータ173に接続された通信装置175を有する。通信装置175は、従来周知の無線通信、又は有線通信のいずれも適用可能である。システム内の各エアセル装置1が、通信装置175を有することで、他のエアセル装置1と通信を行うことができる。
【0049】
図5は、本実施形態に係るシステムの一例を説明する図である。複数のエアセル装置の各エアセル部20が、人体(患者)の異なる複数の部位の下方に配置され得る。図示例では、システムを構成する複数のエアセル装置1は、患者の左右の肩部周りの位置(P4,P3)、左右の腰部周りの位置(P5,P2)、左右の脚部周りの位置(P6,P1)にそれぞれ配置されている。P1~P6の位置に配置された6つのエアセル装置1のエアセル部20が、それぞれ、患者の左右の肩部の下方、左右の腰部の下方、左右の足部の下方の位置に配置される。これら6つのエアセル装置1により、1つのシステムとして構成される。
【0050】
本実施形態に係るエアセル装置1は、各装置が独立した動作が可能である。このため、エアマットなどの大規模な装置を用いずとも、容易に患者の寝姿勢を変形させることができる。
<親機の機能・子機の機能>
本実施形態に係るシステムは、親機である1のエアセル装置1と、子機である他の1又は複数のエアセル装置1とで構成される。
【0051】
本実施形態のエアセル装置は、親機のエアセル装置のみが、親機の機能と子機の機能とを有する。
【0052】
親機の独自の機能は、ユーザの指示に応じて、システム全体、つまり親機及び各子機それぞれの設定を行い、システム内の各エアセル装置の動作スケジュールを決定することである。
このため、親機の出力部177には、システム全体の設定を行う設定画面が表示される。ユーザは、表示された設定画面に従い、入力部より指示を登録できる。なお、設定画面を表示する際には、例えば、ユーザは、親機の図示しない電源をONにし、入力部の選択ボタン等で設定画面を選択するようにしてもよい。
【0053】
図9は、親機の設定画面6の一例を示す図である。設定画面には、例えば、「本機No.」、「装置台数」、「子機No.」、「同時膨張台数」、「動作順序」、「開始時期」、「終了時期」、「膨張間隔」、「セルの高さ」、「体重」等の項目が設定可能である。
「本機No.」は、ユーザが、本装置(親機)のシステム内のシリアルナンバーを登録する項目である。図の例では、親機はNo.1である。
「装置台数」は、ユーザがシステムを構成するエアセル装置1の台数を登録する項目である。図の例では、システムは、6台のエアセル装置1で構成されている。
「子機No.」は、ユーザがシステム内での子機のシリアルナンバーを設定する項目である。図の例では、システムは、No.2~6の子機を有している。なお、本実施形態では、子機のシリアルナンバーは、ユーザが各子機で登録するようにしているが、子機固有のIDに基づき、親機で登録できるようにしてもよい。
「同時膨張台数」は、ユーザがシステム内で同時に膨張させる台数登録する項目である。図の例では、1台ずつ膨張させるように設定されているが、設定により複数台同時に膨張させることも可能である。また、ここでは、同時に膨張する台数のみを登録しているが、各装置のシリアルナンバーにて、同時に膨張するエアセル装置1を特定するようにしてもよい。
「動作順序」は、ユーザがシステム内でのエアセル装置1の動作の順番を登録できる項目である。図の例では、システムは、No.1から6まで、シリアルナンバーの小さいものから順に動作するように設定されている。
「開始時期」は、ユーザがシステムの開始時期を登録できる項目である。図の例では、システム開始から0時間後、つまり、入力部175のスタートボタン(図示なし)を押したときに、システムが開始されるように設定されている。なお、この例では、システム開始より〇〇時間後と登録するようにされているが、開始時刻を登録するにようにしてもよい。
「終了時期」は、ユーザがシステムの終了時期を登録できる項目である。図の例では、システム開始から8時間後に設定されている。なお、この例では、システム開始より〇〇時間後と登録するようにされているが、終了時刻を登録するにようにしてもよい。
「膨張間隔」は、ユーザが、システム内のエアセル装置の動作順序に応じて、逐次膨張される各エアセル装置の時間間隔を登録できる項目である。図の例では、シリアルナンバー1~6のエアセル装置が、1時間おきに膨張することを示している。
「セルの高さ」は、ユーザがシステム内のすべてのエアセル装置1の高さ(エアセル部20の膨張時の最大の高さ)を設定できる項目である。図の例では、システム内のすべてのエアセル装置1の高さを設定するようにしているが、各エアセル装置1について設定可能としてもよい。エアセル部20の高さやエアセル部20にかかる外圧に応じて、エアセル部20の内圧が算出されてもよい。エアセル部20の高さ又はエアセル部20の内圧によって、エアセル部20へ供給される空気量が算出されてもよい。
「体重」は、ユーザの体重を登録できる項目である。図の例では、ユーザが登録するようになっているが、通信装置171を介して、ベッド等で測定されたユーザの体重が送信されるようにしてもよい。体重に応じて、エアセル部20の内圧や高さを自動設定するようにしてもよく。患者(寝ている人)の体重に応じて、エアセル部20へ供給される空気量が調整されてもよい。
【0054】
なお、親機に設定できる項目は、上記の例に限定されない。また、項目の設定は、設定画面での設定でなくてもよい。
【0055】
図9の例のように、システムの設定を行うことで、
図10のようなシステムのタイムスケジュールが設定される。
【0056】
なお、本実施形態では、子機は、親機のようにシステム全体の設定を行う機能は有していない。このため、子機を設定する際には、自身のシリアルナンバーを登録すればよい。この際、例えば、子機の出力部177には、子機のシリアルナンバーを登録する設定画面が表示される(図示なし)。設定画面の表示については、親機と同様の操作でよい。
【0057】
図12は、親機及び各子機の表示情報の一例を示す。表示情報は、親機及び各子機の出力部177にそれぞれ表示される情報である。子機の表示情報7bには、例えば自身のシリアルナンバー(本機No.)と、自身の稼働状態が含まれる。親機の表示情報7aには、例えば、自身のシリアルナンバー(本機No.)、自身の稼働状態に加えて、システム内の子機のシリアルナンバー(子機No.)及び、稼働中の子機のシリアルナンバー(稼働中No.)が含まれる。自身の稼働状態は、稼働、待機及び停止のいずれかの状態が示される。
【0058】
なお、各エアセル装置1は、さらに、通知手段を備えるようにしてもよい。通知手段は、例えば、前述の稼働状態等を、介護者等の他者が検知できる手段である。具体的には、例えば、通知手段は、エアセル装置の外表面に、稼働状態が点灯により識別できるライト等を設けてもよい。これにより、就寝時間においても、介護者が各装置の稼働状態を容易に確認することができる。
【0059】
また、システムが、システム内の全エアセル装置の通知手段を備えるようにしてもよい。システムの通知手段としては、例えば、各装置と通信可能な検知パネルをさらに備えるようにしてもよい。これにより、ナースステーション等の離れた場所でも、システム内の各装置の稼働状態がわかるようにできる。
<制御>
図11は、本実施形態にかかるシステムの制御フローの一例である。親機は、自身の動作スケジュールに従い動作するとともに、各子機に対してそれぞれの動作スケジュールを通知する。各子機は、親機から通知された動作スケジュールに基づき、動作する。以下詳細に説明する。なお、以下の説明では、システム内のすべてのエアセル装置1(親機及び子機)を全装置といい、そのそれぞれを各装置という場合がある。
親機の制御を説明する。
【0060】
親機の制御を説明する。S11で、親機は、ユーザの指示に基づき、自身(親機)に設定画面6を表示する(
図9)。ユーザは、設定画面6の各項目に必要情報を登録する。そして、親機は、S12に移行する。
【0061】
S12で、親機は、必要情報を自身に記憶する。そして、親機は、S13に移行する。
【0062】
S13で、親機は、各子機に対し、順次シリアルナンバーを問い合わせる、そして、親機は、S14に移行する。
【0063】
S14で、親機は、各子機からシリアルナンバー及び固有IDをそれぞれ受信し(S23)、自身に記憶する。そして、親機は、S15に移行する。
【0064】
S15で、親機は、S12で記憶した必要情報に基づき、全装置の稼働スケジュールをそれぞれ決定する。そして、親機は、S16に移行する。稼働スケジュールは、例えば、各装置のタイムスケジュール(
図10)、エアセル部20の膨張時の高さ、患者の体重等である。親機は、全装置の稼働スケジュールを自身に記憶する。親機は、稼働スケジュールに基づき、自身の表示情報12aを表示部177に出力してもよい(
図12)。
【0065】
まず親機の制御を説明する。S16で、親機は、各子機に対し、その子機の稼働スケジュールをそれぞれ通知する。そして、親機は、S17に移行する。
【0066】
S17で、親機は、システムの設定を完了する。そして、親機は、停止状態から待機状態(動作開始可能な状態)に移行する。
【0067】
次いで、各子機の制御を説明する。S21で、各子機は、自身に子機用の設定画面を表示する(図示なし)。子機用の設定画面には、自身のシリアルナンバーを登録できる。ユーザは、各子機の設定画面に従い、シリアルナンバーを登録する。そして、各子機は、S22に移行する。
【0068】
S18で、親機は、ユーザの作動開始の指示に基づき、稼働状態に移行するとともに、各子機に作動開始の指示を送信する。
次に子機の制御を説明する。S22で、各子機は、登録されたシリアルナンバーを、自身に記憶する。そして、各子機は、親機の問い合わせを待ち、S23に移行する。
【0069】
S23で、各子機は、S13の親機の問い合わせに応じて、登録されたシリアルナンバー及び自身の固有IDを通知する。
【0070】
S24で、各子機は、S16で親機から通知された稼働スケジュールを受信し、自身に記憶する。
【0071】
S25で、各子機は、自身の設定を完了する。そして、各子機は、停止状態から待機状態(動作開始可能な状態)に移行する。
S26で、各子機は、親機の作動開始の指示に基づき、稼働状態に移行する。
【0072】
ここで、各装置の稼働状態を説明する。各装置(の制御回路17)は、稼働状態に移行したとき、自身の稼働スケジュールに基づき、適切な量のエアを自身のエアセル部20に供給するよう、自身のエアポンプ15及び流量調整バルブ16を制御する(膨張)。そして、各装置は、自身の圧力センサ14や流量調整バルブ16等からのセンシング情報に基づき、エアセル部20が予め設定された膨張時の高さに到達した場合には、予め設定された膨張の時間、その高さを保持するようエアポンプ15及び流量調整バルブ16を制御する(キープ)。さらに、各装置は、膨張の時間が経過した後、元の高さに戻すようエアポンプ15及流量調整バルブ16を制御し、エアセル部20内のエアを排出する(収縮)。各装置は、排出が完了したとき、稼働状態を終了し、次の状態に移行する。なお、ここではエアセル部20の膨張時の高さに応じて、エアの量を制御していたが、エアセル部20の内圧に応じてエアの量を制御する等、どのように設計されてもよい。
【0073】
本実施形態に係るシステムにおいては、エアセル装置1を制御することにより、小枕法を自動で行うことができ、看護師(介護者)の負担である、患者(被介護者)の寝ているマットレスを持ち上げなければならない負担と、一定時間おきにクッションを入れなければならないという負担の両方を解決できる。また、患者(被介護者)の睡眠阻害や、筋緊張のリスクの緩和を行うことができる。また、通常の(通気性のいい)マットレスを使用することができるため、従来のエアマットレスに比べ蒸れ難く、褥瘡リスクのある湿潤や温度上昇のリスクをエアマット使用時よりも低減することが期待できる。
【0074】
各エアセル装置1が、それぞれポンプ装置10とエアセル部20とを備えている。つまり、各エアセル装置1が、他のエアセル装置から機械的に独立している。これにより、例えば、介護者は、マットレス装置のような大きなものを購入する必要はなく、必要数のみ購入して、ベッドに設置することができる。これはマットレス装置を購入するよりも、非常に安価である。また、介護者は、被介護者の症状に合わせて、任意の位置、任意の数を設置可能である。
【0075】
また、各ポンプ装置10が、所定のスケジュールに従い、各ポンプ装置に接続されたエアセル部20にエアを供給する。これにより、介護者は、所定時間経過した後でも、エアセル装置1の配置を変更せずに済む。
【0076】
エアセル装置1は、ベッドのマットレスよりも十分に小さいサイズに形成されている。これにより、介護者は、各エアセル装置1の取り扱いが容易となる。
【0077】
システムを構成する1以上のエアセル装置1の各エアセル装置が、ベッドのマットレスの下に配置可能である。従って、患者の身体は、常にマットレスに接していることが可能となる。これにより、エアマットなどのマット装置に比べて、患者の浮遊感などによる寝心地の悪さが軽減される。しかしながら、エアセル装置の配置は、マットレスの下には限られるものではない。例えば、患者の身体の下に直接配置されてもよい。
【0078】
本実施形態は、簡易かつ安価で、コンパクトなサイズの上げ下げ装置としてのエアセル装置1、及び、当該エアセル装置1を備えるシステムが提供可能である。つまり、システム内の全エアセル装置1が子機の機能を有し、親機は、子機の機能に加えて親機の機能を有する。これにより、子機の機能を簡素化することができ、システム全体のコストを低減できる。また、人の身体部分の体位を多様に変換可能である。また、エアセル装置の高さの調整も可能である。親機が、システム全体のスケジュールやエアセル装置の高さ調整できる。
【0079】
なお、本実施形態では、
図5等を用いて6台のエアセル装置1で構成されるシステムを説明したが、このシステムは、何台のエアセル装置1で構成されていてもよい。
【0080】
また、上記では、
図9、10等で例示したように、一台ずつ順番に制御するようにシステムの設定をしたが、複数台を一度に膨張させるようにしてもよいなど、どのような制御されてもよい。また、この例では、膨張台数、動作順序、開始時期や終了時期、セルの高さ等の複数のパラメータを個別に設定するように説明していたが、1以上のパラメータの値を予め設定しておくモード設定機能を有していてもよい。
【0081】
モード設定機能においては、自動モードのパターンが考えられる。例えば、
図4で示すように、エアセル部20の膨張時の高さを自動で設定し、制御するようにしてもよい。また、エアセルの内圧を自動で設定し制御するようにしてもよい。
【0082】
さらに、上記実施形態では、一例として、膨張収縮セルをエアセル部とし、専用の駆動装置をポンプとし、エアを駆動源とする上げ下げ装置を説明していたが、駆動源はエアに限られない。例えば、ガスや水等の他の流体であってもよいし、機械的なものであってもよい。
【0083】
ここで、
図13を参照し、エアセル装置の第1変形例を説明する。
本変形例のエアセル装置110は、1つの袋体であるエアセル部20に代えて、エアセル部60を備える。本例のエアセル部60は、高さ方向に積層された複数のユニットで構成されている。複数のユニットが、それぞれポンプ部10のエアポンプ15に接続されている。図示例では、エアセル部60は、上段から第1ユニット61、中段の第2ユニット62及び下段の第3ユニット63からなる。
【0084】
このように、エアセル部60を高さ方向に積層された複数のユニットで構成することで、エアセル部が、患者(被介護者)の重み等の外圧で偏って潰れてしまうことを防止する。これは特に、エアセル部を膨張させてエアセル部の高さが高いときよりも、高さが低いときに特に効果を奏する。具体的には、例えば、エアを充満させたユニットは、外圧に依存せずに最大の高さを保持できる。このため、エアを充満させるユニット数(段数)を設定するによって、患者の体重や、寝返りなどで患者が動いた際の外圧の変化に関係なく、エアセル部60の高さを設定することができる。
【0085】
なお、エアセル部60のユニット数(段数)、各ユニットの膨張時の高さは、図示例には限定されない。また、各ユニットが異なる(膨張時の)高さに設定されていてもよい。
【0086】
また、本例では、重なりあうユニット同士の摩擦を抑える工夫があってもよい。例えば、ユニット間に布や粉や油など、滑りをよくするための緩衝材を挟み込むようにしてもよい。また、ユニットごとにカバーを装着するようにしてもよい。
【0087】
次に、
図14を参照し、エアセル装置の第2変形例を説明する。
【0088】
本変形例のエアセル装置120は、エアセル部20に代えて、エアセル部70を備える。エアセル部70は、膨張時において、ポンプ装置10に接続される後端側の高さが、先端側の高さよりも高く形成されている。
【0089】
例えば、先端側の膨張時の高さは、ほぼ0~数センチ程度に低く、後端側の膨張時の高さは、数センチ~数十センチに設定されている。言い換えると、膨張時のエアセル部70は、先端から後端に向けて高くなるように傾斜面を有する。
【0090】
エアセル部70を、このような形状に形成することで、ベッドのマットレスに挿入した時に、先端側が、患者(寝ている人)の中心側に挿入されるので、身体の中心から外側に向かい、マットレスが自然な状態で高くなるように形成されている。
【0091】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るシステムは、システムを構成するすべてのエアセル装置が、親機の機能及び子機の機能を有する。本実施形態のシステムを構成する各エアセル装置は、親機と子機の選択が可能である。
【0092】
つまり、すべてのエアセル装置が、ユーザの指示に応じて、システム内の自身以外のエアセル装置(子機)それぞれの設定を行い、システム内の各エアセル装置の動作スケジュールを決定する。
【0093】
図15は、第2実施形態の制御フローを説明する図である。以下、第1実施形態のシステムの制御フローと異なるところのみを説明する。
【0094】
S10で、ユーザは、システム内の任意の1のエアセル装置に対し、親機として選択する。これにより、親機が決定する。
【0095】
決定した親機には、
図9に例示される、設定画面が表示される(S11)。その後の親機の処理(S11~S18の処理)は、第1実施形態と同様である。
【0096】
S20で、子機は、ユーザにより子機として選択される。これにより、S10で親機とされた以外のシステム内のエアセル装置が、子機と決定する。
【0097】
決定した1以上の子機には、子機のシリアルナンバーを登録する設定画面がそれぞれ表示される(図示なし)(S21)。その後子機の処理(S21~S26の処理)は、第1実施形態と同様である。
【0098】
本実施形態では、システム内の全エアセル装置1が親機と子機の機能を有し、親機と子機はユーザが選択できるようになっていた。これにより、システム内のどの機器を親機として選択することができるため、使い勝手がよい。特に、親機として使用していた機器が故障した場合など、すぐに他の機器を親機に設定すればよい。
【0099】
<第3実施形態>
第3実施形態に係るシステムは、1以上のエアセル装置1を制御するリモコンを備える。リモコンが親機の機能のみを有し、各エアセル装置は、子機の機能のみを有するものである。
【0100】
つまり、リモコンは、システムの親機として、ユーザの指示に応じて、システム内の1以上のエアセル装置(子機)それぞれの設定を行い、システム内の各エアセル装置の動作スケジュールを決定する。
【0101】
図16は、第3実施形態の制御フローを説明する図である。以下、第1実施形態のシステムの制御フローと異なるところのみを説明する。
【0102】
リモコン(端末)の処理については、基本的には、「親機」を「リモコン」に読み替えるのみで、第1実施形態の親機の処理(S11~18)と同様である。ただし、S17に代えて、S17aで、リモコンは、システムの設定を完了し、S18に処理を移行する。
【0103】
子機の処理については、第1実施形態の子機の処理(S21~S26)と同様である。
【0104】
本実施形態では、システム内の全エアセル装置が子機のみの機能を有し、親機の機能は、リモコンが持つ。これにより、子機の機能を簡素化できコストが低減できる。また、持ち運びのできるリモコンを親機としているため、ユーザは使い勝手がよい。
【0105】
なお、上記はリモコンが親機の機能のみを有するものとして説明したが、スマートフォン、タブレット又はPC等の端末にインストール可能なアプリケーションが親機の機能を有するようにしてもよい。これにより、どのような端末でも、本システムの親機の機能を有することができる。
【0106】
以上説明した幾つかの実施の形態は、説明のための単なる例示であり、本発明の範囲をそれらの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、上記の実施の形態とは違うさまざまな形態で、実施することができる。
【0107】
上記実施形態では、エアセル部とポンプ装置と相互に固定されていった遺物を構成していたが、これに限られない。具体的には、本実施形態では、ポンプ装置が、駆動装置としてのエアポンプとともに、制御回路、電源装置、流量調整バルブ、圧力センサ、吸排気バルブ等他の構成要素を備えていたが、この態様には限られない。例えば、エアセル部とエアポンプとが相互に固定されて一体物を構成しているものであれば、制御回路、電源装置等の他の構成要素は、外付けであってもよい。
【0108】
上記実施形態では、エアセル部の膨張時の高さを手動で設定できることは、例示されていたが、エアセル部の内圧も手動で設定されてもよい。
【0109】
この他、上記実施形態には下記列挙する態様が含まれるようにしてもよい。
【0110】
例えば、ポンプ装置10は、その駆動音や吸排気音の消音(減音)機能を持つようにしてもよい。例えば、消音機能は、遮音材・吸音材や微速リーク弁を使用してもよい。
【0111】
例えば、制御部10には、入力部175からのユーザの操作をロックする機能があってもよい。
【0112】
例えば、収縮時であっても、エアセル部の内圧は0にならないように設定されていてもよい。これは、エアセル部の膨張時の電力、時間、エア量等の削減のためである。
【0113】
例えば、システムがエラーになった際には、表示や音などにより、エラーを通知する機能があってもよい。例えば、この機能は、親機の機能を有する装置(親機又はリモコン等)が有していてもよい。
【0114】
例えば、システムを構成するエアセル装置同士の通信が成功した場合には、表示音などにより、その旨を知らせる手段があってもよい。
【0115】
例えば、エアセル装置は、防水機能を有していてもよい。
【0116】
例えば、エアセル装置は、タイマー機能を有していてもよい。具体的には、設定時刻がきたら、停止状態から稼働状態に移行するようにしてもよい。
【0117】
例えば、エアセル装置は、停止状態から回復した場合に、停止前の状態に戻る機能を有してもよい。
【0118】
例えば、ユーザの設定は、リセットをすることができる。
【0119】
例えば、エアセル装置は、周りの明るさによって、本体操作部やリモコンの表示の明るさ等を自動調整するようにしてもよい。
【0120】
例えば、エアセル装置は、マットレスの角度が上がったときに、表示、音などにより、通知する手段を有してもよい。する手段がある。
【0121】
例えば、エアセル装置は、エアセル部の高さや内圧等を測定し、通知する手段を有するようにしてもよい。
【0122】
例えば、エアセル装置は、温度測定の機能を有するようにしてもよい。さらに、エアセル装置は、温度の検知・測定により、機器の異常を検知できるようにしてもよい。
【0123】
例えば、エアセル装置は、エアセル部が異常圧力であった場合に通知する手段や、自身を停止する手段を有していてもよい。
【0124】
例えば、各エアセル装置は、稼働状態を示す手段を有していてもよい。
【0125】
例えば、各エアセル装置は、装置のON/OFFが検出できる手段を有していてもよい。
【0126】
例えば、エアセル装置には、圧力測定機能を有するカバーを装着するようにしてもよい。上記幾つかの実施形態では、患者が寝るベッド(例えば介護用ベッド)に配置されるエアセル装置を記載していた。しかし、エアセル装置は、健常者向けのベッドに配置されるようにしてもよい。例えば健常者向けの場合には、エアセルの高さの上限はなく、どのように設定されてもよい。また、エアセル装置は、どこに配置されてもよい。(仰向け時に腕が水平になるようにエアセルが膨らように設定されてもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 エアセル装置
6 設定画面
7a 親機の表示情報
7b 子機の表示情報
10 制御部
11 ケーシング
12 流量調整バルブ
13 電源装置
14 圧力センサ
15 エアポンプ
17 制御回路
19 吸排気パイプ
20 エアセル部
24 底板
30 ばねクリップ
41 面ファスナの第1面
42 面ファスナの第2面
44 シート
46 固定部
50 カバー
60 エアセル部
61 第1ユニット
62 第2ユニット
63 第3ユニット
70 エアセル部
110 エアセル装置
120 エアセル装置