(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】フェナレン-1-オン含有光増感剤組成物、フェナレン-1-オン化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20230512BHJP
C07C 225/18 20060101ALI20230512BHJP
C07C 233/38 20060101ALI20230512BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20230512BHJP
C07C 69/767 20060101ALI20230512BHJP
C07C 49/755 20060101ALI20230512BHJP
C07C 233/31 20060101ALI20230512BHJP
C07C 217/62 20060101ALI20230512BHJP
C07F 7/04 20060101ALI20230512BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20230512BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230512BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20230512BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230512BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230512BHJP
C07D 303/22 20060101ALI20230512BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230512BHJP
C08K 5/08 20060101ALI20230512BHJP
C07C 271/34 20060101ALN20230512BHJP
C07C 317/22 20060101ALN20230512BHJP
【FI】
C09K3/00 T
C07C225/18 CSP
C07C233/38
C07C69/54 Z
C07C69/767
C07C49/755
C07C233/31
C07C217/62
C07F7/04 K
A01N43/40 101K
A01P3/00
A01N25/00 102
C09D201/00
C09D7/63
C07D303/22
C08L101/00
C08K5/08
C07C271/34
C07C317/22
(21)【出願番号】P 2019571787
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2018056653
(87)【国際公開番号】W WO2018167264
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-15
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519335772
【氏名又は名称】トリオプトテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TriOptoTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュペート
(72)【発明者】
【氏名】アンヤ アイヒナー
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0039184(US,A1)
【文献】特開昭55-090506(JP,A)
【文献】特開昭58-065706(JP,A)
【文献】特開昭59-059709(JP,A)
【文献】特表2003-503527(JP,A)
【文献】特開昭60-006757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C07C 1/00- 409/44
A01N 25/00
A01N 43/40
A01P 3/00
A61K 41/00
C07D 303/22
C07F 7/04
C08K 5/08
C08L 101/00
C09D 7/63
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物と、
(b)少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体と
を含む光増感剤組成物(ただし、一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物と、少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体が、共有結合している態様を除く):
【化1】
式中、残基R1~R8はそれぞれ互いに独立して、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、1~12のC原子を含有するアルキル、5~20のC原子を含有するアルキルアリール、5~20のC原子を含有するアリール、1~12のC原子を含有する
*-O-アルキル、5~20のC原子を含有する
*-O-アルキルアリール、5~20のC原子を含有する
*-O-アリール、2~12のC原子を含有するエーテル、式
*-O-C(=O)-R
(Ia)を有する残基、式
*-C(=O)-R
(Ib)を有する残基、または、少なくとも1つの反応性官能基を含有する有機残基W1を表し、ただし、残基R1~R7の少なくとも1つは有機残基W1であり、当該有機残基W1は、それぞれ互いに独立して、一般式(2)~(6)を有する残基を表し;
【化2】
式中、Aは、それぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10a)~(11a)を有する残基を表し;
【化3】
式中、
*phは、一般式(10a)~(11a)の残基からフェナレン環のC原子への結合をそれぞれ表し、
*cは、一般式(10a)~(11a)の残基から残基(C(D)(E))のC原子への結合をそれぞれ表し、
式中、残基Bはそれぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10)~(14)の残基を表し;
【化4】
式中、残基R
(Ia)、R
(Ib)、R
(11a)、R
(12a)、R
(13a)、R
(14a)、およびR
(14b)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、1~3個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖の
*-O-アルキル、1~3個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~3個の炭素原子および1~3個のOH基を含有する直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル、1~3個の炭素原子および1~3個のハロゲン基を含有する直鎖もしくは分岐鎖のハロゲノアルキル、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の残基で非置換もしくは置換されていてもよく、式中、Y
-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオン、またはこれらの組合せを表すアニオンであり、
式中、残基DおよびEは、それぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子および1~5個のOH基を含有する直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキル、フェニル、ベンジル、式
*-L-R
(II)を有する残基、式
*-L-C(=L)-R
(III)を有する残基、式
*-(CH
2)
q-Xを有する残基、式
*-L-(CH
2)
q-Xを有する残基、もしくは式
*-(CH
2)
s-L-(CH
2)
t-Xの残基を表し、式中、残基Lはそれぞれ互いに独立して酸素または硫黄を表し、式中、残基R
(II)およびR
(III)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニルもしくはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、非置換または置換されていてもよく、指数q、sおよびtはそれぞれ互いに独立して1~5の整数を表し、
式中、指数a、c、f、gおよびnは、それぞれ互いに独立して、0~5の整数を表し、
式中、指数b、dおよびmは、それぞれ互いに独立して、1~5の整数を表し、
式中、残基Arは、それぞれ互いに独立して、置換もしくは非置換の芳香族化合物または置換もしくは非置換のヘテロ芳香族化合物を表し、
式中、残基Xは、それぞれ互いに独立して、
*-N(R
(VI))(R
(VII))、
*-OH、
*-SH、
*-NCO、
*-NCS、
*-Si(R
(VIII))(R
(IX))-[O-Si(R
(X))(R
(XI))]
p-Z、または一般式(20)~(24)の残基に示される反応性官能基であり;
【化5】
式中、残基R
(20a)、R
(20b)、R
(20c)、R
(21a)、R
(22a)、R
(22b)、R
(22c)、R
(23a)、R
(24a)、R
(24b)、およびR
(24c)は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、またはn-ペンチルを表し、式中、指数lおよびkはそれぞれ互いに独立して0から4までの整数を表し、
式中、残基R
(VI)およびR
(VII)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、
式中、残基R
(VIII)、R
(IX)、R
(X)およびR
(XI)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシル基、または1~4個の炭素原子を含有するアルキルカルボキシル基を表し、式中、指数pはそれぞれ互いに独立して、0~4の整数を表す。
【請求項2】
前記残基Arは、それぞれ互いに独立して、一般式(25a)~(31)の残基を表す、請求項1に記載の光増感剤組成物:
【化6】
式中、残基R25、R26、R27、R28、R29、R26
a、R26
b、R27
a、R27
b、R28
a、R28
b、R29
a、R29
b、R30
aおよびR30
bは、それぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニルまたはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、式中、残基R30は、それぞれ互いに独立して、水素、または、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルを表し、ならびに、式中、残基R33
aおよびR33
bは、それぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖のパーフルオロアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、ベンジル、または、総合すれば、4~9個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖のシクロアルキル、もしくは、9H-フルオレン-9-イリデン残基を表し、
式中、Y
-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオン、またはそれらの組み合わせを表すアニオンである。
【請求項3】
前記少なくとも1つの有機残基W1は、それぞれ互いに独立して、一般式(40)から(67)まで、または、(72)から(98e)までの残基を表す、請求項1または2のいずれか1項に記載の光増感剤組成物:
【化7】
式中、Y
-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオン、またはそれらの組合せを表すアニオンである。
【請求項4】
(a)式(100)から(127)、(132)から(166)までの化合物およびその組み合わせからなる群から選択される一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物と、(b)少なくとも1つのポリマー化合物および/またはその前駆体とを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光増感剤組成物:
【化8】
。
【請求項5】
一般式(1a)を有するフェナレン-1-オン化合物:
【化9】
式中、残基R1
a~R8
aはそれぞれ互いに独立して、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、1~12のC原子を含有するアルキル、5~20のC原子を含有するアルキルアリール、5~20のC原子を含有するアリール、1~12のC原子を含有する
*-O-アルキル、5~20のC原子を含有する
*-O-アルキルアリール、5~20のC原子を含有する
*-O-アリール、2~12のC原子を含有するエーテル、式
*-O-C(=O)-R
(Ia)を有する残基、式
*-C(=O)-R
(Ib)を有する残基、または、少なくとも1つの反応性官能基を含有する有機残基W1aを表し、ただし、残基R1
aまたはR2
aの少なくとも1つは有機残基W1aであり、当該有機残基W1aは、それぞれ互いに独立して、一般式(2a)~(6a)を有する残基を表し;
【化10】
式中、残基Aは、それぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10a)~(11a)の残基を表し
(ただし、一般式(11a)の残基は、一般式(11a)に含まれる窒素原子が中性のプロトン化され得る窒素原子である残基を除く);
【化11】
式中、
*phは、一般式(10a)~(11a)の残基からフェナレン環のC原子への結合をそれぞれ表し、
*cは、一般式(10a)~(11a)の残基から残基(C(D)(E))のC原子への結合をそれぞれ表し、
式中、残基Bはそれぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10)~(12)の残基を表し
(ただし、一般式(11)の残基は、一般式(11)に含まれる窒素原子が中性のプロトン化され得る窒素原子である残基を除き、一般式(12)の残基は、一般式(12)に含まれる窒素原子が中性のプロトン化され得る窒素原子である残基を除く);
【化12】
式中、残基R
(Ia)、R
(Ib)、R
(11a)、およびR
(12a)はそれぞれ互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびその組み合わせからなる群より選択される1以上の残基により非置換または置換されていてもよく、
式中、残基DおよびEは、それぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子および1~5個のOH基を含有する直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキル、フェニル、ベンジル、式
*-L-R
(II)を有する残基、式
*-L-C(=L)-R
(III)を有する残基、式
*-(CH
2)
q-X
aを有する残基、式
*-L-(CH
2)
q-X
aを有する残基、もしくは式
*-(CH
2)
s-L-(CH
2)
t-X
aを有する残基を表し、式中、残基Lはそれぞれ互いに独立して酸素または硫黄を表し、式中、残基R
(II)およびR
(III)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニルまたはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の残基により非置換または置換されていてもよく、指数q、sおよびtはそれぞれ互いに独立して1~5の整数を表し、
式中、指数c、g、fおよびnは、それぞれ互いに独立して、0~5の整数を表し、
式中、指数b、d、eおよびmはそれぞれ独立して、1~5の整数を表し、
式中、残基Arは、それぞれ互いに独立して、置換もしくは非置換の芳香族化合物、または、N原子を含有しない置換もしくは非置換のヘテロ芳香族化合物を表し、
式中、残基X
aはそれぞれ互いに独立して、反応性官能基
*-OH、
*-SH、
*-NCO、
*-NCS、
*-Si(R
(VIII))(R
(IX))-[O-Si(R
(X))(R
(XI))]
p-Z、または一般式(20)~(24)の残基を表す:
【化13】
式中、残基R
(20a)、R
(20b)、R
(20c)、R
(21a)、R
(22a)、R
(22b)、R
(22c)、R
(23a)、R
(24a)、R
(24b)、およびR
(24c)は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、またはn-ペンチルを表し、指数lおよびkは、それぞれ互いに独立して、0~4の整数を表し、ここで、残基R
(vIII)、R
(IX)、R
(X)、およびR
(XI)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、ここで、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基により非置換または置換されていてもよく、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシル基、または1~4個の炭素原子を含有するアルキルカルボキシル基を表し、指数pは、それぞれ互いに独立して、0~4の整数を表す。
【請求項6】
前記残基Arは、それぞれ互いに独立して、一般式(25a)~(25c)、(29a)~(29c)、(30)または(31)の残基である、請求項5に記載のフェナレン-1-オン化合物:
【化14】
式中、残基R25、R26、R27、R28、R29、R26
a、R26
b、R27
a、R27
b、R28
a、R28
b、R29
a、R29
b、R30
aおよびR30
bは、それぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のペルフルオロアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、式中、R33
a及びR33
bは、それぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のペルフルオロアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、または、R33
a及びR33
bをまとめて表す場合、4~9個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のシクロアルキル、または、9H-フルオレン-9-イリデン残基を表し、
式中、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の残基により非置換または置換されていてもよい。
【請求項7】
前記少なくとも1つの有機残基W1aは、それぞれ互いに独立して、一般式(41)~
(64)、(67)または(98a)~(98e)の残基を表す、請求項5または6に記載のフェナレン-1-オン化合物。
【化15】
【請求項8】
前記一般式(1a)を有する少なくとも1つの前記フェナレン-1-オン化合物は、式(101)~
(124)、(127)、(162)~(166)、およびそれらの組み合わせを有する化合物からなる群より選択される、請求項5~7のいずれか1項に記載のフェナレン-1-オン化合物。
【化16】
【請求項9】
(c)請求項5~8のいずれか1項に記載のフェナレン-1-オン化合物と、
(d)少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体と
を含む光増感剤組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体は、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステル、シアノアクリル酸およびそのエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、シロキサンおよびそのエステル、メラミン、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、エピクロロヒドリン、ポリオール、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、およびそれらの組み合わせの、ポリマーおよび/またはコポリマーからなる群より選択される、請求項1~4または9のいずれか1項に記載の光増感剤組成物。
【請求項11】
前記組成物は、少なくとも1つのポリイソシアネート、ブロックイソシアネート、少なくとも1つのアルキルジイソシアネートもしくはシクロアルキルジイソシアネートもしくはアリールジイソシアネート、一般式SiZ
4、(R
XII)SiZ
3、(R
XII)
2SiZ
2の化合物、少なくとも2つのエポキシ残基を含む化合物、少なくとも2つのアクリルアミド残基を含む化合物、少なくとも2つのアクリレート残基を含む化合物、少なくとも2つのアルデヒド残基を含む化合物、少なくとも2つのアルコール残基を含む化合物、少なくとも2つのアミン残基を含む化合物、ジビニルスルホン、またはそれらの組合せを含む少なくとも1つの架橋剤をさらに含み、式中、残基R
XIIは、それぞれ互いに独立して、1~5個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖のアルキル、フェニル、またはベンジルであり、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシルまたは1~4個の炭素原子を含むアルキルカルボキシルを表し、請求項1~4または9~10のいずれか1項に記載の光増感剤組成物。
【請求項12】
前記一般式(1)を有する前記少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物は、前記少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体に静電結合している、請求項1~4または10~11のいずれか1項に記載の光増感剤組成物。
【請求項13】
前記請求項5~8のいずれか1項に記載のフェナレン-1-オン化合物は、前記少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体に共有結合および/または静電結合している、請求項9~11のいずれか1項に記載の光増感剤組成物。
【請求項14】
前記光増感剤組成物は、塗料、ワニス、エマルジョン塗料、ラテックス塗料、ケイ酸塩塗料、またはチョーク塗料である、請求項1~4または9~13のいずれか1項に記載の光増感剤組成物。
【請求項15】
前記光増感剤組成物は顆粒である、請求項1~4または9~14のいずれか1項に記載の光増感剤組成物。
【請求項16】
(a)一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物と、
(b)少なくとも1つの硬化ポリマー成分と
を含む硬化ポリマー組成物であって、
上記一般式(1)を有する上記少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物は、上記少なくとも1つの硬化ポリマー成分に静電結合している、少なくとも1つの硬化ポリマー組成物を含む、物品:
【化17】
式中、残基R1~R8はそれぞれ互いに独立して、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、1~12のC原子を含有するアルキル、1~18のC原子を含有するアルキルアリール、5~20のC原子を含有するアリール、1~12のC原子を含有する
*-O-アルキル、1~18のC原子を含有する
*-O-アルキルアリール、5~20のC原子を含有する
*-O-アリール、2~12のC原子を含有するエーテル、式
*-O-C(=O)-R
(Ia)を有する残基、式
*-C(=O)-R
(Ib)を有する残基、または、少なくとも1つの反応性官能基を含有する有機残基W1を表し、ただし、残基R1~R7の少なくとも1つは有機残基W1であり、当該有機残基W1は、それぞれ互いに独立して、一般式(2)~(6)を有する残基を表し;
【化18】
式中、残基Aは、それぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10a)~(11a)を有する残基を表し;
【化19】
式中、
*phは、一般式(10a)~(11a)の残基からフェナレン環のC原子への結合をそれぞれ表し、
*cは、一般式(10a)~(11a)の残基から残基(C(D)(E))のC原子への結合をそれぞれ表し、
式中、残基Bはそれぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10)~(14)の残基を表し;
【化20】
式中、残基R
(Ia)、R
(Ib)、R
(11a)、R
(12a)、R
(13a)、R
(14a)、およびR
(14b)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、1~3個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖の
*-O-アルキル、1~3個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~3個の炭素原子および1~3個のOH基を含有する直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル、1~3個の炭素原子および1~3個のハロゲン基を含有する直鎖もしくは分岐鎖のハロゲノアルキル、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の残基で非置換もしくは置換されていてもよく、式中、Y
-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオン、またはこれらの組合せを表すアニオンであり、
式中、残基DおよびEは、それぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子および1~5個のOH基を含有する直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキル、フェニル、ベンジル、式
*-L-R
(II)を有する残基、式
*-L-C(=L)-R
(III)を有する残基、式
*-(CH
2)
q-Xを有する残基、式
*-L-(CH
2)
q-Xを有する残基、もしくは式
*-(CH
2)
s-L-(CH
2)
t-Xの残基を表し、式中、残基Lはそれぞれ互いに独立して酸素または硫黄を表し、式中、残基R
(II)およびR
(III)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニルもしくはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、非置換または置換されていてもよく、指数q、sおよびtはそれぞれ互いに独立して1~5の整数を表し、
式中、指数a、c、f、gおよびnは、それぞれ互いに独立して、0~5の整数を表し、
式中、指数b、dおよびmは、それぞれ互いに独立して、1~5の整数を表し、
式中、残基Arは、それぞれ互いに独立して、置換もしくは非置換の芳香族化合物または置換もしくは非置換のヘテロ芳香族化合物を表し、
式中、残基Xは、それぞれ互いに独立して、
*-N(R
(VI))(R
(VII))、
*-OH、
*-SH、
*-NCO、
*-NCS、
*-Si(R
(VIII))(R
(IX))-[O-Si(R
(X))(R
(XI))]
p-Z、または一般式(20)~(24)の残基に示される反応性官能基であり;
【化21】
式中、残基R
(20a)、R
(20b)、R
(20c)、R
(21a)、R
(22a)、R
(22b)、R
(22c)、R
(23a)、R
(24a)、R
(24b)、およびR
(24c)は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、またはn-ペンチルを表し、式中、指数lおよびkはそれぞれ互いに独立して0から4までの整数を表し、
式中、残基R
(VI)およびR
(VII)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、
式中、残基R
(VIII)、R
(IX)、R
(X)およびR
(XI)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシル基、または1~4個の炭素原子を含有するアルキルカルボキシル基を表し、式中、指数pはそれぞれ互いに独立して、0~4の整数を表す。
【請求項17】
(c)請求項5~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物と、
(d)少なくとも1つの硬化ポリマー成分と
を含む硬化ポリマー組成物であって、
前記請求項5~8のいずれか1項に記載の前記少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物は、前記少なくとも1つの硬化ポリマー成分に共有結合および/または静電結合している、少なくとも1つの硬化ポリマー組成物を含む、物品。
【請求項18】
前記硬化ポリマー組成物は、コーティング、自立フィルム、繊維、または成形品の形態である、請求項16または17に記載の物品。
【請求項19】
微生物の不活性化のための、ここで微生物は、ウイルス、古細菌、細菌、細菌胞子、細菌のバイオフィルム、真菌、真菌胞子、原生動物、藻類、および血液感染性の寄生虫、ならびに/または、それらのバイオフィルムからなる群より選択される、請求項1~4もしくは9~15のいずれか1項に記載の光増感剤組成物、および/または、請求項5~8のいずれか1項に記載のフェナレン-1-オン化合物、および/または、請求項16~18のいずれか1項に記載の物品の使用。
【請求項20】
物品または領域の光力学的表面洗浄および/もしくは表面被覆のための、請求項1~4もしくは9~15のいずれか1項に記載の光増感剤組成物の使用、ならびに/または、請求項5~8のいずれか1項に記載のフェナレン-1-オン化合物の使用。
【請求項21】
物品の表面被覆のための請求項20に記載の使用。
【請求項22】
(A)請求項1~4もしくは9~15のいずれか1項に記載の光増感剤組成物、および/もしくは、請求項5~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物を含む光増感剤組成物を硬化させることによって生成された少なくとも1つの被覆物、ならびに/または、請求項16~18のいずれか1項に記載の少なくとも1つの物品に、微生物および/またはそのバイオフィルムを接触させる工程と、
(B)前記被覆物および/または前記物品に含まれる、微生物および/またはそのバイオフィルム、ならびに少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物に、適切な波長およびエネルギー密度の電磁放射を照射する工程と
を含む、ウイルス、古細菌、細菌、細菌胞子、細菌のバイオフィルム、真菌、真菌胞子、原生動物、藻類、血液感染性の寄生虫、若しくはそれらの組み合わせ、および/またはそのバイオフィルムを含む微生物の不活性化方法。
【請求項23】
物品が、医療製品、食品包装、包装フィルム、織物、建材、玩具、電子デバイス、家具、または衛生物品である、請求項21に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、光増感剤組成物、フェナレン-1-オン化合物、物品、およびその使用に関する。
【0002】
宿主における病原体の、能動的または受動的な浸透、接着および増殖は、感染と称される。感染性粒子の供給源はどこにでも存在する。したがって、例えば、ヒトの身体は多数の微生物によって細菌感染するが、通常、正常な代謝および無傷の免疫系によって正常な制御下に保たれる。しかしながら、例えば、免疫系が弱まると、病原体は急激に増殖することができ、病原体のタイプに応じて、疾患の様々な症状を引き起こし得る。薬は、例えば、細菌に対する抗生物質、真菌に対する抗真菌薬、またはウイルスに対する抗ウイルス薬のように、多くの病原体関連疾患に対して有効な特定の対抗手段を有する。しかしながら、これらの対抗手段を採用する場合、耐性病原体の発生がますます頻繁に観察されており、そのいくつかはまた、複数の対抗手段に対して耐性を有することが示されている。これらの耐性または多剤耐性病原体の発生のために、感染性疾患の治療はますます困難になってきている。耐性の臨床的結果は、特に免疫抑制患者における治療の失敗によって証明される。
【0003】
したがって、耐性または多剤耐性病原体を制御するための新しいアプローチは、一方では、例えば抗生物質または抗真菌薬のような新規の対抗手段の研究であり、他方では、代替的な不活性化戦略の研究である。
【0004】
代替方法として、微生物の光力学的不活性化であることが示されている。2つの異なる光酸化プロセスが、微生物の光力学的不活性化において決定的な役割を果たす。光酸化不活性化が起こる状態は、一方では十分な量の酸素の存在であり、他方では、適切な波長の光によって励起される、光増感剤として知られるものの局在化である。励起された光増感剤は、一方では、例えばスーパーオキシドアニオン、過酸化水素またはヒドロキシルラジカルラジカルのようなラジカルであり、および/または、他方では、例えば一重項酸素である励起された分子酸素を形成し得る、活性酸素種(ROS)の形成をもたらすことができる。
【0005】
両方の反応において、活性酸素種(ROS)の直接の近傍にある特定の生体分子の光酸化が最重要である。これに関して、特に、例えば微生物の細胞膜の成分として存在する脂質およびタンパク質の酸化が起こる。次に、細胞膜の破壊が、関連する微生物の不活性化をもたらす。ウイルスおよび真菌についても同様の排除プロセスが起こる。
【0006】
一例として、全ての分子は一重項酸素によって攻撃される。しかしながら、細菌の膜中の不飽和脂肪酸は、特に損傷を受けやすい。健康な内性細胞は、カタラーゼまたはスーパーオキシドジスムターゼとして知られるものを介して、フリーラジカルからの攻撃に対する細胞防御を有する。したがって、健康な内性細胞は、例えばラジカルまたは一重項酸素のような活性酸素種(ROS)による損傷を打ち消すことができる。
【0007】
例えば、ポルフィリンおよびその誘導体またはフタロシアニン、ならびにそれらの誘導体またはフラーレン、ならびにそれらの誘導体またはメチレンブルーまたはトルイジンブルーのようなフェノチアジニウム構造を有する誘導体、または例えばナイルブルーのようなフェノキサジニウム系の代表によって形成される群に例えば由来するような、多くの光増感剤が先行技術として知られている。
【0008】
WO 00/78854 A1は抗菌性表面を調製するための方法に関し、この方法は1つ以上のポリマーを1つ以上の光増感剤と組み合わせることを含み、これにより、1つ以上のポリマーと1つ以上の非共有結合および非イオン結合光増感剤とを含む硬化ポリマー組成物を有する表面を形成し、光増感剤の少なくとも1つは、キサンテン光増感剤である。
【0009】
この場合の欠点は、光増感剤がポリマーマトリックスから漏れ出し、従って、長期間保管した場合に抗菌活性が低下することである。
【0010】
US 5 830 526 Aは、光活性化可能な染料が単独で、または、追加の従来の抗菌剤および/もしくは抗ウイルス剤と組み合わせて結合した基板を開示する。この基板は、抗菌性および/または抗ウイルス特性を有する光活性化可能な染料で含浸され、カチオン性またはアニオン性の水溶性ポリマーが染料を基板に結合させる。
【0011】
この場合の欠点は、光増感剤が、例えば機械的応力によって基板から離れる場合があり、これにより抗菌活性が低下することである。
【0012】
本発明の目的は、好ましくは異なるタイプの表面に対する適用の容易さが保証された光増感剤を含有するコーティングを提供し、特に、適切な波長および強度の電磁放射線を照射した後に、良好な抗菌活性を同時に示す、光増感剤を含有するコーティングを提供することである。
【0013】
さらに、表面への適用後、光増感剤含有コーティングは、好ましくは光増感剤の改善された接着を確実にするべきであり、その結果、光増感剤の漏れが、好ましくは回避される。
【0014】
さらに好ましくは、特に適切な波長および強度の電磁放射線を長時間照射した場合に、光増感剤の活性が改善されるべきである。
【0015】
この点に関して、光増感剤含有コーティングは、コーティング中に含まれる光増感剤分子の、特定の波長の光による励起を本質的に阻害すべきではない。
【0016】
本発明の目的は、請求項1に記載の光増感剤組成物を提供することによって達成される。請求項1に記載の光増感剤組成物は、(a)一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物と、(b)少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体とを含む:
【化1】
式中、残基R1~R8はそれぞれ互いに独立して、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、1~12のC原子を含有するアルキル、5~20のC原子を含有するアルキルアリール、5~20のC原子を含有するアリール、1~12のC原子を含有する
*-O-アルキル、5~20のC原子を含有する
*-O-アルキルアリール、5~20のC原子を含有する
*-O-アリール、2~12のC原子を含有するエーテル、式
*-O-C(=O)-R
(Ia)を有する残基、式
*-C(=O)-R
(Ib)を有する残基、または、少なくとも1つの反応性官能基を含有する有機残基W1を表し、ただし、残基R1~R7の少なくとも1つ、好ましくは残基R1、R2、R5もしくはR6の少なくとも1つ、より好ましくはR1もしくはR2の少なくとも1つは、有機残基W1であり、当該有機残基W1は、それぞれ互いに独立して、一般式(2)~(6)を有する残基を表し;
【化2】
式中、残基Aは、それぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10a)~(11a)を有する残基を表し、好ましくは酸素または一般式(10a)を有する残基を表し、より好ましくは酸素を表し;
【化3】
式中、
*phは、一般式(10a)~(11a)の残基からフェナレン環のC原子への結合をそれぞれ表し、
*cは、一般式(10a)~(11a)の残基から残基(C(D)(E))のC原子への結合をそれぞれ表し、
式中、残基Bはそれぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10)~(14)の残基を表し、好ましくは酸素または一般式(10)~(14)の残基を表し;
【化4】
式中、残基R
(Ia)、R
(Ib)、R
(11a)、R
(12a)、R
(13a)、R
(14a)、およびR
(14b)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、1~3個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖の
*-O-アルキル、1~3個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~3個の炭素原子および1~3個のOH基を含有する直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル、1~3この炭素原子および1~3個のハロゲン基を含有する直鎖もしくは分岐鎖のハロゲノアルキル、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の残基であって、好ましくは塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、及びこれらの組み合わせである残基で非置換もしくは置換されていてもよく、式中、Y
-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオン、またはこれらの組合せを表すアニオンであり、
式中、残基DおよびEは、それぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子および1~5個のOH基を含有する直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキル、1~5個の炭素原子及び1~5個のハロゲンを含有する直鎖または分岐鎖のハロゲンアルキル、フェニル、ベンジル、式
*-L-R
(II)を有する残基、式
*-L-C(=L)-R
(III)を有する残基、式
*-(CH
2)
q-Xを有する残基、式
*-L-(CH
2)
q-Xを有する残基、もしくは式
*-(CH
2)
s-L-(CH
2)
t-Xの残基を表し、式中、残基Lはそれぞれ互いに独立して酸素または硫黄を表し、好ましくは酸素であり、式中、残基R
(II)およびR
(III)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニルもしくはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の残基により非置換または置換されていてもよく、指数q、sおよびtはそれぞれ互いに独立して1~5の整数を表し、
式中、指数a、c、g、fおよびnは、それぞれ互いに独立して、0~5の整数を表し、好ましくは1~4の整数を表し、
式中、指数b、dおよびmは、それぞれ互いに独立して、1~5の整数を表し、好ましくは2~4の整数を表し、
式中、残基Arは、それぞれ互いに独立して、置換もしくは非置換の芳香族化合物または置換もしくは非置換のヘテロ芳香族化合物を表し、
式中、残基Xは、それぞれ互いに独立して、
*-N(R
(VI))(R
(VII))、
*-OH、
*-SH、
*-NCO、
*-NCS、
*-Si(R
(VIII))(R
(IX))-[O-Si(R
(X))(R
(XI))]
p-Z、または一般式(20)~(24)の残基に示される反応性官能基であり;
【化5】
式中、残基R
(20a)、R
(20b)、R
(20c)、R
(21a)、R
(22a)、R
(22b)、R
(22c)、R
(23a)、R
(24a)、R
(24b)、およびR
(24c)は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、またはn-ペンチルを表し、好ましくは水素、メチル、またはエチルを表し、式中、指数lおよびkはそれぞれ互いに独立して0から4までの整数を表し、
式中、残基R
(VI)およびR
(VII)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、
式中、残基R
(VIII)、R
(IX)、R
(X)およびR
XI)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシル基、または1~4個の炭素原子を含有するアルキルカルボキシル基を表し、好ましくは、ハロゲンまたはヒドロキシル基であり、式中、指数pはそれぞれ互いに独立して、0~4の整数を表す。
【0017】
本発明の光増感剤組成物の好ましい態様は、請求項2~4、及び9~14により提供される。
【0018】
本発明の目的は、また、請求項5に記載されたフェナレン-1-オン化合物を提供することによって達成される。請求項5に記載のフェナレン-1-オン化合物は、一般式(1a)を有するフェナレン-1-オン化合物である:
【化6】
式中、残基R1
a~R8
aはそれぞれ互いに独立して、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、1~12のC原子を含有するアルキル、5~20のC原子を含有するアルキルアリール、5~20のC原子を含有するアリール、1~12のC原子を含有する
*-O-アルキル、5~20のC原子を含有する
*-O-アルキルアリール、5~20のC原子を含有する
*-O-アリール、2~12のC原子を含有するエーテル、式
*-O-C(=O)-R
(Ia)を有する残基、式
*-C(=O)-R
(Ib)を有する残基、または、少なくとも1つの反応性官能基を含有する有機残基W1aを表し、ただし、残基R1
aまたはR2
aの少なくとも1つ、好ましくは残基R1
aまたはR2
aの一方は有機残基W1aであり、当該有機残基W1aは、それぞれ互いに独立して、一般式(2a)~(6a)を有する残基を表し;
【化7】
式中、残基Aは、それぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10a)~(11a)の残基、好ましくは酸素または一般式(10a)の残基、より好ましくは酸素を表し、;
【化8】
式中、
*phは、一般式(10a)~(11a)の残基からフェナレン環のC原子への結合をそれぞれ表し、
*cは、一般式(10a)~(11a)の残基から残基(C(D)(E))のC原子への結合をそれぞれ表し、
式中、残基Bはそれぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10)~(12)の残基、好ましくは酸素または一般式(10)~(12)の残基、好ましくは酸素または一般式(10)の残基を表し;
【化9】
式中、残基R
(Ia)、R
(Ib)、R
(11a)、およびR
(12a)はそれぞれ互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびその組み合わせからなる群より選択される1以上の残基により非置換または置換されていてもよく、
式中、残基DおよびEは、それぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子および1~5個のOH基を含有する直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキル、フェニル、ベンジル、式
*-L-R
(II)を有する残基、式
*-L-C(=L)-R
(III)を有する残基、式
*-(CH
2)
q-Xを有する残基、式
*-L-(CH
2)
q-Xを有する残基、もしくは式
*-(CH
2)
s-L-(CH
2)
t-X
aを有する残基を表し、式中、残基Lはそれぞれ互いに独立して酸素または硫黄を表し、好ましくは酸素であり、式中、残基R
(II)およびR
(III)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニルまたはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の残基により非置換または置換されていてもよく、指数q、sおよびtはそれぞれ互いに独立して1~5の整数を表し、
式中、指数c、g、fおよびnは、それぞれ互いに独立して、0~5の整数を表し、好ましくは1~4の整数を表し、
式中、指数b、d、eおよびmはそれぞれ独立して、1~5の整数を表し、好ましくは2~4の整数を表し、
式中、残基Arは、それぞれ互いに独立して、置換もしくは非置換の芳香族化合物、または、N原子を含有しない置換もしくは非置換のヘテロ芳香族化合物を表し、
式中、残基X
aはそれぞれ互いに独立して、
*-OH、
*-SH、
*-NCO、
*-NCS、
*-Si(R
(VIII))(R
(IX))-[O-Si(R
(X))(R
(XI))]
p-Z、または一般式(20)~(24)の残基を示す反応性官能基であり:
【化10】
式中、残基R
(20a)、R
(20b)、R
(20c)、R
(21a)、R
(22a)、R
(22b)、R
(22c)、R
(23a)、R
(24a)、R
(24b)、およびR
(24c)は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、またはn-ペンチルを表し、指数lおよびkは、それぞれ互いに独立して、0~4の整数を表し、ここで、残基R
(vIII)、R、
(IX)、R
(X)、およびR
(XI)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、ここで、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組あわせからなる群から選択される1つ以上の残基により非置換または置換されていてもよく、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシル基、または1~4個の炭素原子を含有するアルキルカルボキシル基を表し、好ましくはハロゲンまたはヒドロキシル基を表し、指数pは、それぞれ互いに独立して、0~4の整数を表す。
【0019】
本発明のフェナレン-1-オン化合物の好ましい態様は、請求項6~8により提供される。
【0020】
本発明の目的は、さらに、請求項15に記載された物品の供給によって達成される。請求項15に記載された物品は、(a)一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物と、(b)少なくとも1つの硬化した高分子成分とを含む硬化ポリマー組成物であって、上記一般式(1)を有する上記少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物は、上記少なくとも1つの硬化し高分子成分に共有結合および/または静電結合しており、好ましくは、共有結合している、少なくとも1つの硬化ポリマー組成物を含む、物品である:
【化11】
式中、残基R1~R8はそれぞれ互いに独立して、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、1~12のC原子を含有するアルキル、5~20のC原子を含有するアルキルアリール、5~20のC原子を含有するアリール、1~12のC原子を含有する
*-O-アルキル、5~20のC原子を含有する
*-O-アルキルアリール、5~20のC原子を含有する
*-O-アリール、2~12のC原子を含有するエーテル、式
*-O-C(=O)-R
(Ia)を有する残基、式
*-C(=O)-R
(Ib)を有する残基、または、少なくとも1つの反応性官能基を含有する有機残基W1を表し、ただし、残基R1~R7の少なくとも1つ、好ましくは残基R1、R2、R5またはR6、より好ましくは残基R1またはR2は有機残基W1であり、当該有機残基W1は、それぞれ互いに独立して、一般式(2)~(6)を有する残基を表し;
【化12】
式中、残基Aは、それぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10a)~(11a)を有する残基、好ましくは酸素または一般式(10a)の残基、好ましくは酸素を表し;
【化13】
式中、
*phは、一般式(10a)~(11a)の残基からフェナレン環のC原子への結合をそれぞれ表し、
*cは、一般式(10a)~(11a)の残基から残基(C(D)(E))のC原子への結合をそれぞれ表し、
式中、残基Bはそれぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10)~(14)の残基、好ましくは酸素または一般式(10)の残基、より好ましくは酸素を表し;
【化14】
式中、残基R
(Ia)、R
(Ib)、R
(11a)、R
(12a)、R
(13a)、R
(14a)、およびR
(14b)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、1~3個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~3個の炭素原子および1~3個のOH基を含有する直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル、1~3この炭素原子および1~3個のハロゲン基を含有する直鎖もしくは分岐鎖のハロゲノアルキル、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の残基であって、好ましくは塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、及びこれらの組み合わせである残基で非置換もしくは置換されていてもよく、式中、Y
-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオンであり、
式中、残基DおよびEは、それぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子および1~5個のOH基を含有する直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキル、フェニル、ベンジル、式
*-L-R
(II)を有する残基、式
*-L-C(=L)-R
(III)を有する残基、式
*-(CH
2)
q-Xを有する残基、式
*-L-(CH
2)
q-Xを有する残基、もしくは式
*-(CH
2)
s-L-(CH
2)
t-Xの残基を表し、式中、残基Lはそれぞれ互いに独立して酸素または硫黄を表し、好ましくは酸素であり、式中、残基R
(II)およびR
(III)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニルもしくはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、指数q、sおよびtはそれぞれ互いに独立して1~5の整数を表し、
式中、指数a、c、f、gおよびnは、それぞれ互いに独立して、0~5の整数を表し、好ましくは1~4の整数を表し、
式中、指数b、dおよびmは、それぞれ互いに独立して、1~5の整数を表し、好ましくは2~4の整数を表し、
式中、残基Arは、それぞれ互いに独立して、置換もしくは非置換の芳香族化合物または置換もしくは非置換のヘテロ芳香族化合物を表し、
式中、残基Xは、それぞれ互いに独立して、
*-N(R
(VI))(R
(VII))、
*-OH、
*-SH、
*-NCO、
*-NCS、
*-Si(R
(VIII))(R
(IX))-[O-Si(R
(X))(R
(XI))]
p-Z、または一般式(20)~(24)の残基に示される反応性官能基であり;
【化15】
式中、残基R
(20a)、R
(20b)、R
(20c)、R
(21a)、R
(22a)、R
(22b)、R
(22c)、R
(23a)、R
(24a)、R
(24b)、およびR
(24c)は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、またはn-ペンチル、好ましくは水素、メチルまたはエチルを表し、式中、指数lおよびkはそれぞれ互いに独立して0から4までの整数を表し、
式中、残基R
(VI)、R
(VII)、R
(VIII)、R
(IX)、R
(X)およびR
XI)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシル基、または1~4個の炭素原子を含有するアルキルカルボキシル基を表し、好ましくは、ハロゲンまたはヒドロキシル基であり、式中、指数pはそれぞれ互いに独立して、0~4の整数を表す。
【0021】
本発明の物品の好ましい態様は、請求項16~17に定義されている。
【0022】
本発明の目的はまた、請求項1~4または9~14のいずれかに記載の光増感剤組成物および/または請求項5~8のいずれかに記載のフェナレン-1-化合物および/または請求項15~17のいずれかに記載の物品が、好ましくはウイルス、古細菌、細菌、細菌胞子、真菌、真菌胞子、原生動物、藻類および血液感染性の寄生虫および/またはそれらのバイオフィルムからなる群から選択される微生物の不活性化、好ましくは光力学的不活性化のために使用される、請求項18に記載の使用を提供することによって達成される。
【0023】
本発明の使用の好ましい実施形態は、請求項19~20に定義されている。
【0024】
用語「バイオフィルム」は、好ましくは細胞外高分子基質(EPS)から形成されたマトリックスを意味すると理解されるべきであり、細胞外高分子基質(EPS)は、好ましくは微生物によって形成され、細胞に隣接するそれらに近接した環境中に放出され、好ましくは細菌、藻類、真菌、原生動物、またはそれらの組み合わせである微生物が、少なくとも部分的に配置されるか、または包埋される。
【0025】
本発明の目的はまた、請求項21に記載の、好ましくはウイルス、古細菌、細菌、細菌胞子、真菌、真菌胞子、原生動物、藻類、血液感染性の寄生虫またはそれらの組み合わせおよび/またはバイオフィルムを含む微生物の、不活性化方法、好ましくは光力学的不活性化方法を提供することによって達成される。該方法は以下の工程を含む:
(A)請求項1~4または9~14のいずれかに記載の光増感剤組成物を硬化させることによって製造された少なくとも1つのコーティング、および/または、請求項5~8のいずれかに記載の少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物を含有する少なくとも1つのコーティング、および/または、請求項15~17のいずれかに記載の少なくとも1つの物品と、微生物および/またはそのバイオフィルムを接触させる工程、ならびに、
(B)微生物および/またはそのバイオフィルム、ならびに、コーティングおよび/または物品に含まれる少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物に、適切な波長およびエネルギー密度の電磁放射を照射する工程。
【0026】
用語「硬化」または「凝固」は、好ましくは、物質または物質の混合物についての標準条件(温度:25℃、圧力:1013 mbar)下において、液体または塑性変形可能な状態から固体状態への遷移を意味すると理解されるべきである。
【0027】
硬化または凝固プロセスは、好ましくは、冷却によって、すなわち、物質または物質の混合物の凝固点および/またはガラス転移温度未満に温度を低減させることによって実施してもよいし、物理的乾燥によって、すなわち、少なくとも1つの液体成分、例えば、溶媒を除去することによって実施してもよいし、および/または、化学反応によって、例えば、連鎖重合、重付加および/または重縮合によって実施されてもよい。
【0028】
用語「ポリマー成分および/またはその前駆体」は、好ましくは少なくとも1つの、好ましくは有機ポリマーであるポリマー、および/または、少なくとも1つのその前駆体を含む物質または物質の混合物を意味すると理解されるべきである。
【0029】
用語「ポリマー」は、少なくとも10個の構成反復単位として知られる構造単位から好ましくは構成される物質を意味すると理解されるべきであり、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよく、好ましくは連鎖重合、重付加および/または重縮合である化学反応によって少なくとも1つの有機ポリマーを形成する。好ましくは、構成反復単位(CRU)がポリマー内の原子の最小反復群である。
【0030】
本発明の文脈における「ポリマー」は、分岐していなくてもよいし、分岐していてもよい。
【0031】
用語「ポリマー成分の前駆体」は、好ましくは、オリゴマーと同様に単量体または単量体の混合物、ならびにそれらの混合物を意味すると理解されるべきであり、これらは、それぞれ、好ましくは化学反応によって、より好ましくは連鎖重合、重付加および/または重縮合によって、対応する非分岐のポリマーまたは分岐したポリマーを形成するために組み合わせることができる。
【0032】
用語「反応性官能基」は、好ましくは化学反応によって、より好ましくは連鎖重合、重付加および/または重縮合によって、対応する非分岐または分岐ポリマーの形成に寄与し得る官能基を意味すると理解されるべきである。
【0033】
本発明の文脈において、単量体または単量体の混合物は、好ましくは化学反応によって、より好ましくは連鎖重合、重付加および/または重縮合によって、それぞれ結合して対応する非分岐または分岐ポリマーを形成し、それによってポリマーの構成的反復単位を形成することができる、低分子量の反応性分子または反応性分子の混合物である。好ましくは、例えば、単量体、オリゴマーおよび任意にポリマーである反応性分子は、少なくとも1つの反応性官能基を含む。
【0034】
用語「オリゴマー」は、好ましくは2~9個の構成反復単位から構築される物質であって、当該構成反復単位は、好ましくは互いに同一であっても異なっていてもよく、好ましくは化学反応によって、より好ましくは連鎖重合、重付加および/または重縮合によって結合して非分岐または分岐ポリマーを形成することができる物質を意味すると理解されるべきである。
【0035】
用語「硬化ポリマー成分」は、好ましくは標準条件(温度:25℃、圧力:1013 mbar)下で固体状態であり、好ましくは塑性変形可能でない高分子物質または高分子物質の混合物を意味すると理解されるべきである。
【0036】
上記で引用した用語の定義に関しては、Jenkins、AD.ら:「ポリマー科学における基本用語の用語集(IUPAC Recommendations 1996)」(Pure ApplChem.68(12)、1996、2287~2311頁、doi:10.1351/pac199668122287)を参照されたい。
【0037】
好ましくは、本発明の光増感剤組成物が、本発明において使用される式(1)を有する少なくとも1つの化合物を含有し、および/または、本発明の式(1a)を有する少なくとも1つの化合物を含有する、硬化ポリマー組成物を硬化させた後に形成される。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明の光増感剤組成物の硬化時に、本発明において使用される式(1)を有する少なくとも1つの組成物、および/または、式(1a)を有する本発明の少なくとも1つの組成物は、硬化ポリマー組成物中で共有結合および/または静電結合しており、好ましくは共有結合している。より好ましくは、本発明の光増感剤組成物の硬化時に、本発明において使用される式(1)を有する少なくとも1つの組成物、および/または、本発明の式(1a)を有する少なくとも1つの組成物は、少なくとも1つの硬化ポリマー成分に共有結合および/または静電結合され、好ましくは共有結合される。
【0039】
このようにして、硬化した光増感剤組成物から形成される、本発明において使用される式(1)を有する少なくとも1つの化合物、および/または、本発明の式(1a)を有する少なくとも1つの化合物の漏出は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に防止される。
【0040】
本発明に係る式(1)の化合物および本発明に係る式(1a)の化合物は、それぞれ、1H-フェナレン-1-オン誘導体であり、以下にそのように記載する。
【0041】
好ましくは、本発明おいて使用される式(1)を有する組成物、および、本発明の式(1a)を有する組成物は、それぞれ、例えば、アミノ残基、メチルアミノ残基またはジメチルアミノ残基である、プロトン化され得る中性窒素原子を含まず、さらに、例えば、ピリジン-1-イム-1-イル残基またはトリメチルアンモニオ残基である、フェナレンリングに直接結合している正に荷電した好ましくは4級窒素原子である窒素原子を含まず、同様に、フェナレンリングに直接結合している正に荷電した好ましくは4級リン原子であるリン原子を含まない。
【0042】
ここで使用される用語「直接」は、窒素原子および/またはリン原子がフェナレンリングに直接結合していることを意味すると理解されるべきである。
【0043】
本発明者らは、窒素原子および/またはリン原子がフェナレンリングに直接結合している場合に、一重項酸素量子収率が実質的に低下することを観察した。
【0044】
光力学的治療または光力学的洗浄または表面の光力学的汚染除去における抗菌活性には、可能な限り高い一重項酸素量子収率が必要である。窒素原子および/またはリン原子がフェナレンリング上に直接配置される場合、吸収されたエネルギーは主に蛍光効果によって放出され、一重項酸素量子収率の重大な低下を引き起こす。
【0045】
好ましくは、本発明において使用される式(1)の化合物および本発明の式(1a)の化合物は、それぞれフェナレンリングに直接結合しているOH基および/または脱プロトン化OH基を有していない。
【0046】
ここで使用される用語「直接」は、OH基および/または脱プロトン化OH基がフェナレンリングに直接結合していることを意味すると理解されるべきである。
【0047】
本発明者らは、フェナレンリング上にOH基および/または脱プロトン化OH基を直接配置すると、光増感剤の光安定性が著しく低下することを観察した。光安定性の劣化はより速い変色をもたらし、それゆえに、適切な波長の電磁放射線を照射した場合に、光増感剤のより急速な不活性化をもたらす。
【0048】
好ましくは、用語「光増感剤」は、好ましくは可視光、UV光および/または赤外線である電磁放射線を吸収し、これにより、好ましくはフリーラジカルおよび/または一重項酸素である活性酸素種(ROS)を、三重項酸素から生成する化合物を意味すると理解されるべきである。
【0049】
本発明の文脈において、光増感剤は、好ましくは一般式(1)および/または一般式(1a)を有する。
【0050】
用語「光力学的汚染除去」は、好ましくは、物品の表面上の細胞または微生物および/またはそのバイオフィルムの光誘導不活性化を意味すると理解されるべきである。
【0051】
用語「光力学的洗浄」は、好ましくは、物品の表面上の細胞または微生物および/またはそのバイオフィルムの数の光誘導減少を意味すると理解されるべきである。
【0052】
本発明の文脈における用語「不活性化」は、微生物の生存能力の低下または破壊、好ましくはその破壊を意味すると理解されるべきである。光誘導不活性化は、例えば、式(1a)を有する本発明の少なくとも1つの化合物および/または本発明において使用される式(1)の少なくとも1つの化合物の存在下で、これらの微生物の規定された出発量における照射後の微生物の数の減少によって決定され得る。
【0053】
好ましくは、バイオフィルムの微生物の生存率の減少または破壊、好ましくはその破壊は、バイオフィルムのマトリックスを形成する細胞外高分子基質の放出を減少または防止することができる。このようにして、好ましくは、バイオフィルムの形成が減速または抑制される。
【0054】
本発明によれば、用語「生存率の減少」は、例えばバイオフィルム中の微生物の数が少なくとも90.0%、好ましくは少なくとも95.0%、好ましくは少なくとも99.9%、より好ましくは少なくとも99.99%、より好ましくは少なくとも99.999%、さらにより好ましくは少なくとも99.9999%減少することを意味すると理解されるべきである。最も好ましくは、微生物の数が99.9%を超えて100%、好ましくは99.99%を超えて100%まで減少する。
【0055】
好ましくは、微生物数の減少は、Boyce、JM.およびPittet、D(”Guidelines for hand sygiene in healthcare setting.Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee and HIPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force”、Am.J.Infect.Control 30(8)、2002年、1-46頁)に従ったlog 10減少率として得られる。
【0056】
本発明において、「log10減少率」とは、式(1a)を有する本発明の少なくとも1つの化合物および/または本発明において使用される式(1)を有する少なくとも1つの化合物が存在する状態で微生物に電磁放射線を照射した後の、これらの微生物の数の10を底とした対数と、照射する前のこれらの微生物の数の10を底とした対数との間の差をいう。一例として、微生物は、バイオフィルムに含まれてもよい。
【0057】
log10減少率を決定するための好適な方法の例は、規格DIN EN 14885:2007-01 “Chemische Desinfektionsmittel and Antiseptika - Anwendung Europaischer Normen fur chemische Desinfektionsmittel and Antiseptika” [Chemical disinfectants and antiseptics - the application of European standards for chemical disinfectants and antiseptics] or in Rabenau, H. F. and Schwebke, I.(“Leitlinie der Deutschen Vereinigung zur Bekampfung der Viruskrankheiten(DVV) e. V. and der Robert Koch-Instituts(RKI) zur Prufung von chemischen Desinfektionsmitteln auf Wirksamkeit gegen Viren in der Humanmedizin” [Guidelines from the German association for the control of viral diseases(DVV) and the Robert-Koch Institute(RKI) for testing chemical disinfectants for the antiviral activity in human medicine] Bundesgesundheitsblatt, Gesundheitsforschung, Gesundheitsschutz 51(8),(2008),937~945頁)に記載されている。
【0058】
好ましくは、本発明の式(1a)を有する少なくとも1つの化合物および/または本発明において使用される式(1)の少なくとも1つの化合物の存在下で、微生物および/またはそのバイオフィルムに電磁放射線を照射した後のlog10減少率は、少なくとも1 log10、好ましくは少なくとも2 log10、好ましくは少なくとも3 log10、より好ましくは少なくとも4 log10、より好ましくは少なくとも4.5 log10、より好ましくは少なくとも5 log10、より好ましくは少なくとも6 log10、さらにより好ましくは少なくとも7 log10である。
【0059】
例えば、本発明の式(1a)を有する少なくとも1つの化合物および/または本発明において使用される式(1)を有する少なくとも1つの化合物の存在下で、これらの微生物および/またはそのバイオフィルムに電磁放射線を照射した後の微生物の数の減少は、これらの微生物の最初の量に対して、約10の2乗、すなわち、2 log10のlog10減少率である。
【0060】
より好ましくは、本発明の式(1a)を有する少なくとも1つの化合物および/または本発明において使用される式(1)を有する少なくとも1つの化合物の存在下で、これらの微生物および/またはそのバイオフィルムに電磁放射線を照射した後の微生物の数は、これらの微生物の最初の量に対して、それぞれ、少なくとも10の1乗、より好ましくは少なくとも10の2乗、好ましくは少なくとも10の4乗、より好ましくは少なくとも10の5乗、より好ましくは少なくとも10の6乗、さらにより好ましくは少なくとも10の7乗減少する。
【0061】
本発明の文脈において使用される用語「微生物」は、特に、ウイルス、古細菌、または真菌、原生動物、真菌胞子、単細胞藻類などの原核微生物を意味すると理解されるべきである。この点において、微生物は、例えば、真菌の菌糸のように、単一または多細胞であり得る。
【0062】
本発明によれば、用語「ハロゲン」は、それぞれ互いに独立して、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味すると理解されるべきである。本発明によれば、用語「ハロゲン化物」は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物を意味すると理解されるべきである。
【0063】
特に明示しない限り、キラル中心は、R-配置またはS-配置にあってもよい。本発明は、光学的に純粋な化合物、ならびに、エナンチオマー混合物とジアステレオマー混合物とのような任意の割合の立体異性体混合物の両方に関する。
【0064】
好ましくは、本発明はまた、式(1)および/または式(1a)を有する化合物のメソマーおよび/または互変異性体に関し、純粋な化合物および任意の割合の異性体混合物の両方に関する。
【0065】
特に明示しない限り、式中の「*」は、2つの残基間の連結を示す。
【0066】
本発明の、好ましくは硬化性の光増感剤組成物は以下を含む:
本発明において用いられる、一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物:
【化16】
および
少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体。
【0067】
本発明において用いられるフェナレン-1-オン化合物は、一般式(1)を有しており、式中、残基R1~R8はそれぞれ互いに独立して、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、1~12個のC原子を含有し、好ましくは2~9個のC原子を含有するアルキル、5~20個のC原子を含有し、好ましくは6~9個のC原子を含有するアルキルアリール、5~20個のC原子を含有し、好ましくは6~9個のC原子を含有するアリール、1~12個のC原子を含有し、好ましくは2~9個のC原子を含有する
*-O-アルキル、5~20個のC原子を含有し、好ましくは6~9個のC原子を含有する
*-O-アルキルアリール、5~20個のC原子を含有し、好ましくは6~9個のC原子を含有する
*-O-アリール、2~12個のC原子を含有するエーテル、式
*-O-C(=O)-R
(Ia)を有する残基、式
*-C(=O)-R
(Ib)を有する残基、または、少なくとも1つの反応性官能基を含有する有機残基W1を表し、ただし、残基R1~R7の少なくとも1つ、好ましくは残基R1、R2、R5またはR6の少なくとも1つ、より好ましくは残基R1またはR2の少なくとも1つ、好ましくは残基R1またはR2の1つは有機残基W1であり、当該有機残基W1は、それぞれ互いに独立して、一般式(2)~(6)を有する残基を表し:
【化17】
式中、残基Aは、それぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10a)~(11a)の残基、好ましくは酸素または一般式(10a)~(11a)の残基、より好ましくは酸素または一般式(10a)の残基、より好ましくは酸素を表し;
【化18】
式中、
*phは、一般式(10a)~(11a)の残基からフェナレン環のC原子への結合をそれぞれ表し、
*cは、一般式(10a)~(11a)の残基から残基(C(D)(E))のC原子への結合をそれぞれ表し、
式中、残基Bはそれぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10)~(14)の残基、好ましくは酸素または一般式(10)~(14)の残基、より好ましくは酸素または一般式(10)の残基を表し;
【化19】
式中、残基R
(Ia)、R
(Ib)、R
(11a)、R
(12a)、R
(13a)、R
(14a)、およびR
(14b)は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル基、1~3個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~3個の炭素原子および1~3個のOH基を含有する直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキル、1~3個の炭素原子および1~3個のハロゲン基を含有する直鎖または分岐鎖のハロゲノアルキル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の残基、好ましくは、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびそれらの組み合わせである1以上の残基により、非置換または置換されていてもよく、式中、Y
-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオン、またはこれらの組合せを表すアニオンであり、
式中、残基DおよびEは、それぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子および1~5個のOH基を含有する直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキル、フェニル、ベンジル、式
*-L-R
(II)を有する残基、式
*-L-C(=L)-R
(III)を有する残基、式
*-(CH
2)
q-Xを有する残基、式
*-L-(CH
2)
q-Xを有する残基、もしくは式
*-(CH
2)
s-L-(CH
2)
t-Xを有する残基を表し、式中、残基Lはそれぞれ互いに独立して酸素または硫黄を表し、好ましくは酸素であり、式中、残基R
(II)およびR
(III)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニルまたはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の残基により非置換または置換されていてもよく、指数q、sおよびtはそれぞれ互いに独立して1~5の整数を表し、
式中、指数a、c、f、gおよびnは、それぞれ互いに独立して、0~5の整数を表し、好ましくは1~4であり、
式中、指数b、d、eおよびmはそれぞれ独立して、1~5の整数を表し、好ましくは2~4であり、
式中、残基Arは、それぞれ互いに独立して、置換もしくは非置換の芳香族化合物、または、置換もしくは非置換のヘテロ芳香族化合物を表し、
式中、残基Xはそれぞれ互いに独立して、反応性官能基
*-N(R
(VI))(R
(VII))、
*-OH、
*-SH、
*-NCO、
*-NCS、
*-Si(R
(VIII))(R
(IX))-[O-Si(R
(X))(R
(XI))]
p-Z、または一般式(20)~(24)の残基を表し:
【化20】
式中、残基R
(20a)、R
(20b)、R
(20c)、R
(21a)、R
(22a)、R
(22b)、R
(22c)、R
(23a)、R
(24a)、R
(24b)、およびR
(24c)は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、またはn-ペンチルを表し、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、式中、指数lおよびkは、それぞれ互いに独立して、0~4の整数を表し、ここで、残基R
(VI)、R、
(VII)、R
(VIII)、R
(IX)、R
(X)およびR
(XI)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、ここで、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基により非置換または置換されていてもよく、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシル基、または1~4個の炭素原子を含有するアルキルカルボキシル基を表し、指数pは、それぞれ互いに独立して、0~4の整数を表す。
【0068】
本発明において用いられる一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物において、好ましくは、残基R1~R7の少なくとも1つ、より好ましくは残基R1、R2、R5、またはR6の少なくとも1つ、より好ましくは残基R1またはR2の少なくとも1つは、それぞれ互いに独立して、有機残基W1を表し、少なくとも1つの有機残基W1は、それぞれ互いに独立して、一般式(2)~(6)の残基を表し、残基Arは、それぞれ互いに独立して、非置換もしくは置換フェニル残基、非置換もしくは置換ピリジン残基、非置換もしくは置換ビフェニル残基、非置換もしくは置換ジフェニルプロピル残基、または非置換もしくは置換ビスフェニルスルホニル残基を表し、好ましくは、一般式(25a)~(31)の残基、より好ましくは(25a)~(28b)の残基を表し、
【化21】
式中、残基R25、R26、R27、R28、R29、R26
a、R26
b、R27
a、R27
b、R28
a、R28
b、R29
a、R29
b、R30
aおよびR30
bは、それぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシル基、アミノ、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基により非置換または置換されていてもよく、式中残基R30は、それぞれ互いに独立して、水素または1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキルを表し、式中、R33
a及びR33
bは、それぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシル基、アミノ、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のペルフルオロアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、または、R33
a及びR33
bをまとめて表す場合、4~9個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のシクロアルキル、または、9H-フルオレン-9-イリデン残基を表し、
式中、Y
-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオン、またはこれらの組合せを表すアニオンである。
【0069】
本発明において用いられる一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物において、好ましくは、残基R1~R7の少なくとも1つ、より好ましくは残基R1、R2、R5、またはR6の少なくとも1つ、より好ましくは残基R1またはR2の少なくとも1つ、より好ましくはR1またはR2の1つは、それぞれ互いに独立して、有機残基W1を表し、少なくとも1つの有機残基W1は、それぞれ互いに独立して、一般式(40)~(67)、または(72)~(98e)の残基を表し、好ましくは、一般式(40)~(67)、または(72)~((97))の残基を表す:
【化22】
式中、Y
-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫化水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオン、またはそれらの組合せを表すアニオンである。
【0070】
より好ましくは、本発明において用いられる一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物は、式(100)~(127)、(132)~(166)の化合物およびこれらの組み合わせ、好ましくは、式(100)~(127)、(132)から(161)の化合物およびこれらの組み合わせからなる群からそれぞれ独立して選択される:
【化23】
【0071】
より好ましくは、本発明の光増感剤組成物は、
(a) 一般式(1a)を有する本発明の少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物、および
(b) 少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体
を含む。
【0072】
本発明のフェナレン-1-オン化合物は、一般式(1a)を有する:
【化24】
式中、残基R1
a~R8
aはそれぞれ互いに独立して、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、水素、ハロゲン、1~12のC原子、好ましくは2~9のC原子を含有するアルキル、5~20のC原子、好ましくは6~9のC原子を含有するアルキルアリール、5~20のC原子、好ましくは6~9のC原子を含有するアリール、1~12個のC原子、好ましくは2~9のC原子を含有する
*-O-アルキル、5~20のC原子、好ましくは6~9のC原子を含有する
*-O-アルキルアリール、5~20のC原子、好ましくは6~9のC原子を含有する
*-O-アリール、2~12のC原子を含有するエーテル、式
*-O-C(=O)-R
(Ia)を有する残基、式
*-C(=O)-R
(Ib)を有する残基、または、少なくとも1つの反応性官能基を含有する有機残基W1aを表し、ただし、残基R1
aまたはR2
aの少なくとも1つ、好ましくは残基R1
aまたはR2
aの1つは、有機残基W1aであり、当該有機残基W1aは、それぞれ互いに独立して、一般式(2a)~(6a)を有する残基を表し、
【化25】
式中、残基Aは、それぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10a)~(11a)の残基、好ましくは酸素または一般式(10a)の残基、より好ましくは酸素を表し:
【化26】
式中、
*phは、一般式(10a)~(11a)の残基からフェナレン環のC原子への結合をそれぞれ表し、
*cは、一般式(10a)~(11a)の残基から残基(C(D)(E))のC原子への結合をそれぞれ表し、
式中、残基Bはそれぞれ互いに独立して、酸素、硫黄、または一般式(10)~(12)の残基、好ましくは酸素または式(10)もしくは(11)の残基、より好ましくは酸素または式(10)の残基を表し:
【化27】
式中、残基R
(Ia)、R
(Ib)、R
(11a)、およびR
(12a)はそれぞれ互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびその組み合わせからなる群より選択される1以上の残基により非置換または置換されていてもよく、
式中、残基DおよびEは、それぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子および1~5個のOH基を含有する直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキル、フェニル、ベンジル、式
*-L-R
(II)を有する残基、式
*-L-C(=L)-R
(III)を有する残基、式
*-(CH
2)
q-Xを有する残基、式
*-L-(CH
2)
q-Xを有する残基、もしくは式
*-(CH
2)
s-L-(CH
2)
t-Xを有する残基を表し、式中、残基Lはそれぞれ互いに独立して酸素または硫黄を表し、好ましくは酸素であり、式中、残基R
(II)およびR
(III)はそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、n-ペンチル、フェニルまたはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルはそれぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の残基により非置換または置換されていてもよく、指数q、sおよびtはそれぞれ互いに独立して1~5の整数を表し、
式中、指数c、g、fおよびnは、それぞれ互いに独立して、0~5、好ましくは2~4の整数を表し、
式中、指数b、d、eおよびmは、それぞれ互いに独立して、1~5、好ましくは2~4の整数を表し、
式中、残基Arは、それぞれ互いに独立して、置換もしくは非置換の芳香族化合物、または、N原子を含有しない置換もしくは非置換のヘテロ芳香族化合物を表し、
式中、残基X
aはそれぞれ互いに独立して、
*-OH、
*-SH、
*-NCO、
*-NCS、
*-Si(R
(VIII))(R
(IX))-[O-Si(R
(X))(R
(XI))]p-Z、または一般式(20)~(24)の残基に示される反応性官能基であり:
【化28】
式中、残基R
(20a)、R
(20b)、R
(20c)、R
(21a)、R
(22a)、R
(22b)、R
(22c)、R
(23a)、R
(24a)、R
(24b)、およびR
(24c)は、それぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、またはn-ペンチルを表し、好ましくは水素、メチル、またはエチルを表し、式中、指数lおよびkは、それぞれ互いに独立して、0~4の整数を表し、ここで、残基R
(VIII)、R
(IX)、R
(X)、およびR
(XI)は、それぞれ互いに独立して、水素、1~5個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、ここで、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基により非置換または置換されてもいてもよく、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲンまたはヒドロキシル基を表し、指数pはそれぞれ互いに独立して、0~4の整数を表す。
【0073】
好ましくは、一般式(1a)の本発明のフェナレン-1-オン化合物の残基R1
aまたはR2
aの少なくとも一方は、それぞれ互いに独立して、少なくとも1つの有機残基W1aであり、少なくとも1つの有機残基W1aは、それぞれ互いに独立して、一般式(2a)~(6a)の残基を表し、式中、残基Arは、それぞれ互いに独立して、非置換もしくは置換フェニル残基、非置換もしくは置換ビフェニル残基、非置換もしくは置換ジフェニルプロピル残基、または非置換もしくは置換ビスフェニルスルホニル残基を表し、好ましくは、一般式(25a)~(25c)、(29a)~(29c)、(30)または(31)の残基、好ましくは一般式(25a)~(25c)の残基であり:
【化29】
式中、残基R25、R26、R27、R28、R29、R26
a、R26
b、R27
a、R27
b、R28
a、R28
b、R29
a、R29
b、R30
aおよびR30
bは、それぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のペルフルオロアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、またはベンジルを表し、フェニルおよびベンジルは、それぞれ互いに独立して、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、メトキシ、エトキシ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の残基で非置換または置換されていてもよく、式中、残基R33
aおよびR33
bは、それぞれ互いに独立して、水素、ヒドロキシル基、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖のペルフルオロアルキル、1~5個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖の
*-O-アルキル、フェニル、ベンジル、または、総合すれば、4~9個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のシクロアルキル、もしくは、9H-フルオレン-9-イリデン残基を表す。
【0074】
より好ましくは、一般式(1a)を有する本発明のフェナレン-1-オン化合物の少なくとも1つの有機残基W1aは、それぞれ互いに独立して、一般式(41)~(67)、(98a)~(98e)の残基、およびそれらの組み合わせ、好ましくは一般式(41)~(67)の残基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される:
【化30】
【0075】
より好ましくは、一般式(1a)を有する本発明に係るフェナレン-1-オン化合物が式(101)~(127)、(162)~(166)の化合物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくは式(101)~(127)の化合物およびそれらの組み合わせから選択される:
【化31】
【0076】
好ましい実施形態において、一般式(1)を有するフェナレン-1-オン化合物は塩として存在し、Y-は、それぞれ互いに独立して、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の少なくとも1つのカルボン酸アニオン、1~12個のC原子を含有するスルホン酸の少なくとも1つのスルホン酸アニオン、またはそれらの混合物を表すアニオンである。
【0077】
1~15個の炭素原子を含有するカルボン酸の適切なカルボン酸アニオンの例は、酢酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、またはそれらの混合物である。
【0078】
1~12個の炭素原子を含有するスルホン酸の適切なスルホン酸アニオンの例は、トシレート、メシレート、またはそれらの混合物である。
【0079】
好ましい実施形態において、請求項1~4のいずれか1項に記載の光増感剤組成物は、
(a)請求項5~8のいずれか1項に記載のフェナレン-1-オン化合物である一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物と、
(b)少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体とを含む。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明に係る光増感剤組成物は、好ましくは硬化可能であり、組成物の硬化後、280~1000nm、より好ましくは320~900nm、さらにより好ましくは360~800nm、さらにより好ましくは380~700nmの範囲の波長を有する電磁放射線が少なくとも部分的に、好ましくは完全に透過する。
【0081】
好ましくは、280~1000nm、より好ましくは320~900nm、さらにより好ましくは360~800nm、さらにより好ましくは380~700nmの範囲の波長を有する電磁放射線によって、組成物中に含まれる、一般式(1)を有する本発明に係る使用のための少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物および/または一般式(1a)の本発明に係るフェナレン-1-オン化合物が励起される。
【0082】
一般式(1)、好ましくは式(1a)を有する本発明に係る使用のための励起された少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物は、活性酸素種(ROS)の形成を引き起こすことができ、一方、ラジカル、例えばスーパーオキシドアニオン、過酸化水素またはヒドロキシルラジカル、および/または他方では励起された分子状酸素、例えば一重項酸素を形成することができる。
【0083】
硬化後、本発明に係る光増感剤組成物は、本発明に係る使用のための一般式(1)を有するフェナレン-1-オン化合物、および/または一般式(1a)を有する本発明に係るフェナレン-1-オン化合物を励起するために必要な波長を有する電磁放射線が少なくとも部分的に、好ましくは完全に透過するので、入射電磁放射線は一重項酸素量子収率の有意な低下をもたらすので、部分的にしか減衰されず、好ましくは減衰されない。
【0084】
可能な限り高い一重項酸素量子収率は、表面上の微生物の光力学的不活性化の間の抗菌活性に必要である。
【0085】
より好ましくは、本発明に係る光増感剤組成物は、硬化後に酸素に対して少なくとも部分的に透過性がある。
【0086】
好ましくは、硬化後、本発明に係る光増感剤組成物は、硬化した光増感剤組成物に拡散する分子状酸素(O2)と、好ましくは一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物、より好ましくは一般式(1a)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物に照射した後に形成される一重項酸素との両方に対して少なくとも部分的に透過性があり、好適な波長およびエネルギー密度の電磁放射線を有する。
【0087】
本発明者らは一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物、より好ましくは一般式(1a)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物を、本発明に係る光増感剤組成物において使用することにより、光増感剤組成物を硬化させた後に、表面に付着する微生物を確実に不活性化するために、好ましくは酸素および/または酸素放出化合物の存在下で、適切な波長およびエネルギー密度の電磁放射線を照射した後に、表面を提供することが可能であることに気付いた。
【0088】
さらに、本発明者らは一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物、好ましくは一般式(1a)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物を、本発明に係る光増感剤組成物において使用するとき、光増感剤組成物を硬化させた後に、適切な波長およびエネルギー密度の電磁放射線をより長く照射すると、表面および表面に付着する微生物の光力学的活性において確実に不活性化することが本質的に減少しない、好ましくは減少しない表面を提供することが可能であることに気付いた。
【0089】
本発明に係る光増感剤溶液は、少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体を含み、少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体は、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステル、シアノアクリル酸およびそのエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、シロキサンおよびそのエステル、メラミン、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、エピクロロヒドリン、ポリオール、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、およびそれらの組み合わせの、ポリマーおよび/またはコポリマーからなる群より選択される。
【0090】
好ましくは、前記少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体は、プレポリマーおよび/または単量体であり、より好ましくは樹脂である。好ましくは、前記少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体がポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーンまたはシリコーン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ABS(アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、スチレン)樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素ゴム樹脂、ビニルエステル樹脂、またはそれらの組み合わせである。好ましくは、前記少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体が1成分(1C)樹脂として、または2成分(2C)樹脂として存在してもよい。
【0091】
より好ましくは、本発明に係る光増感剤組成物は、少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体、ならびに一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物、好ましくは一般式(1a)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物を含み、好ましくは一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物、好ましくは一般式(1a)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物の残基Xは、少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体と配位することができる。
【0092】
少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体、ならびに少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物の少なくとも1つの残基Xと一般式(1)との好ましい組み合わせの例は、以下の通りである:
少なくとも1つのポリマー成分
および/またはその前駆体: 残基X:
ポリウレタン樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、
エポキシ樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、一般式(20)、(22)または(24)を有する残基、
シリコーン樹脂 -Si(R(VIII))(R(IX))-[O-Si(R(X))(R(XI))]p-Z、一般式(20)または(22)を有する残基、
ポリアクリル樹脂 一般式(20)~(23)を有する残基、
ポリメタクリル樹脂 一般式(20)~(23)を有する残基、
ポリアクリルアミド樹脂 一般式(20)~(23)を有する残基、
メラミン-ホルムアルデヒド樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、一般式(20)または(22)を有する残基、
フェノール-ホルムアルデヒド樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、一般式(20)または(22)を有する残基、
ABS(アクリロニトリル、
1,3-ブタジエン、スチレン)樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、一般式(20)~(23)を有する残基、
アルキド樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、一般式(20)~(23)を有する残基、
ポリエステル樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、一般式(20)~(23)を有する残基、
ポリアミド樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、一般式(20)~(23)を有する残基、
フッ素ゴム樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、一般式(20)または(22)を有する残基、
ビニルエステル樹脂 一般式(20)~(23)を有する残基。
【0093】
少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体、ならびに少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物の少なくとも1つの残基Xaと一般式(1a)との好ましい組み合わせの例は、以下の通りである:
少なくとも1つのポリマー成分
および/またはその前駆体: 残基Xa:
ポリウレタン樹脂 -OH、
エポキシ樹脂 -OH、一般式(20)、(22)または(24)を有する残基
シリコーン樹脂 -Si(R(VIII))(R(IX))-[O-Si(R(X))(R(XI))]p-Z、一般式(20)または(22)を有する残基
ポリアクリル樹脂 一般式(20)~(23)を有する残基
ポリメタクリル樹脂 一般式(20)~(23)を有する残基
ポリアクリルアミド樹脂 一般式(20)~(23)を有する残基
メラミン-ホルムアルデヒド樹脂 -OH、一般式(20)または(22)を有する残基
フェノール-ホルムアルデヒド樹脂 -OH、一般式(20)または(22)を有する残基
ABS(アクリロニトリル、
1,3-ブタジエン、スチレン)樹脂 -OH、一般式(20)~(23)を有する残基
ポリエステル樹脂 -OH、一般式(20)~(23)を有する残基
アルキド樹脂 -OH、-N(R(VI))(R(VII))、一般式(20)~(23)を有する残基
ポリアミド樹脂 -OH、一般式(20)~(23)を有する残基
フッ素ゴム樹脂 -OH、一般式(20)または(22)を有する残基
ビニルエステル樹脂 一般式(20)~(23)を有する残基。
【0094】
光増感剤組成物の硬化後、適切な波長およびエネルギー密度の電磁放射線を長く照射した後でさえ、表面の光力学的活性において本質的に減少を示さず、好ましくは減少を示さず、表面に付着する微生物が確実に不活性化される表面を有する本発明の光増感剤組成物を提供することが可能である。
【0095】
本発明の組成物は、少なくとも1つの架橋剤、例えば、少なくとも1つのポリイソシアネート、ブロックイソシアネート、少なくとも1つのアルキルジイソシアネートもしくはシクロアルキルジイソシアネートもしくはアリールジイソシアネート、一般式SiZ4、(RXII)SiZ3、(RXII)2SiZ2を有する少なくとも1つの化合物、少なくとも2つのエポキシ残基を含む化合物、少なくとも2つのアクリルアミド残基を含む化合物、少なくとも2つのアクリレート残基を含む化合物、少なくとも2つのアルデヒド残基を含む化合物、少なくとも2つのアルコール残基を含む化合物、少なくとも2つのアミン残基を含む化合物、ジビニルスルホン、およびそれらの組み合わせを含み、式中、残基RXIIはそれぞれ互いに独立して、1~5個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、フェニル、またはベンジルを表し、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、フェニルまたはベンジルを表し、式中、残基Zは、それぞれ互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル基、1~4個の炭素原子を含むアルコキシルまたは1~4個の炭素原子を含むアルキルカルボキシル基を表し、好ましくはハロゲンまたはヒドロキシル基である。
【0096】
少なくとも2つのアルコール基を含有する適切な化合物の例は、ビスフェノール、例えば、市販のビスフェノールビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールFL、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールS、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ、およびそれらの混合物、好ましくはビスフェノールA(CAS80-05-7)、ビスフェノールC(CAS79-97-0)、ビスフェノールF(CAS620-92-8)、ビスフェノールS(CAS80-09-1)、ビスフェノールZ(CAS843-55-0)、およびそれらの混合物である。
【0097】
より好ましくは、本発明に係る光増感剤組成物は、一般式(1)を有する、好ましくは式1a)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物を含み、少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物は、少なくとも1つのポリマー成分および/またはその前駆体に共有結合および/または静電結合しており、好ましくは共有結合している。
【0098】
好ましくは、本発明に係る光増感剤組成は、塗料、ワニス、エマルジョン塗料、ラテックス塗料、ケイ酸塩塗料、またはチョーク塗料である。
【0099】
より好ましくは、本発明に係る光増感剤組成物は顆粒である。
【0100】
より好ましくは、本発明に係る光増感剤組成物は、コーティング、自立フィルム、不織布、または成形品の形態である。
【0101】
本発明に係る物品は、少なくとも1つの硬化ポリマー組成物を含み、硬化ポリマー組成物は、
(a)一般式(1)を有する少なくとも1つの前記フェナレン-1-オン化合物、請求項5~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのフェナレン-1-1化合物、またはそれらの組み合わせ、より好ましくは、一般式(1a)を有する少なくとも1つの前記フェナレン-1-オン化合物と、
(b)前記一般式(1)を有する少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物、請求項5~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物、またはそれらの組み合わせ、より好ましくは、一般式(1a)を有する少なくとも1つの前記フェナレン-1-オン化合物は、少なくとも1つの硬化ポリマー成分に共有結合および/または静電結合、好ましくは共有結合している、少なくとも1つの前記硬化ポリマー成分とを含む。
【0102】
好ましくは、本発明に係る物品は、好ましくは塗布温度で、好ましくは液体で、好ましくは塗布可能であり、噴霧可能であり、または流動可能である本発明に係る光増感剤組成物で物品をコーティングすること、例えば噴霧すること、ワニス塗りすること、塗装すること、および/または浸漬すること、ならびにその後の乾燥および/または硬化によって得られる。
【0103】
一例として、本発明に係る物品は、不織布または自立フィルムの形態である本発明に係る光増感剤組成物を積層し、被覆し、接着することによって得てもよい。
【0104】
一例として、本発明に係る物品は、本発明に係る光増感剤組成物を成形するための噴霧、メルトブロー、押出、または他の公知のプロセスによって得てもよく、好ましくは製造温度で、好ましくは液体で、好ましくは塗布可能、噴霧可能、または流動可能であり、その後、乾燥および/または硬化する。
【0105】
より好ましくは、本発明に係る物品は、(a)および(b)を含む硬化ポリマー組成物を含むか、または(a)および(b)を含む硬化ポリマー組成物からなる。
(a)請求項5~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物、
(b)請求項5~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物が、少なくとも1つの硬化ポリマー成分に共有結合および/または静電結合、好ましくは共有結合している、より好ましくはコーティング、自立フィルム、不織布または成形品の形態である、少なくとも1つの硬化ポリマー成分。
【0106】
本発明の目的はさらに、好ましくは、ウイルス、古細菌、細菌、細菌胞子、真菌、真菌胞子、原生動物、藻類、および血液感染性の寄生虫、ならびに/または、それらのバイオフィルムからなる群より好ましくは選択される微生物の光力学的不活性化のための、請求項1~4もしくは9~14のいずれか1項に記載の光増感剤組成物、および/または、請求項5~8のいずれか1項に記載のフェナレン-1-オン化合物、および/または、請求項15~17のいずれか1項に記載の物品の使用によって達成される。
【0107】
好ましくは、本発明に係る光増感剤組成物または本発明に係るフェナレン-1-オン化合物は、物品または領域の光力学的表面洗浄および/または表面被覆のために使用される。
【0108】
好ましくは、本発明に係る光増感剤組成物または本発明に係るフェナレン-1-オン化合物が物品、好ましくは医療製品、食品包装、織物、建材、電子デバイス、家具、または衛生物品の表面被覆に使用される。
【0109】
他のアプリケーションの例は、おしゃぶり、乳頭、チューブおよび導管、窓ガラス、湿った部屋および/または洗面所のガラス表面および/またはタイル、タッチスクリーン要素、パーソナルコンピュータ(PC)および周辺装置、布、ワイプ、作業表面、クリニックおよび老人の家庭における処理および調製表面、衛生機器、衛生器具、ソーセージの皮、飲料容器、陶器または廃棄物容器である。
【0110】
好ましくはウイルス、古細菌、細菌、細菌胞子、真菌、真菌胞子、原生動物、藻類、血液感染性の寄生虫、もしくはそれらの組み合わせ、および/またはそのバイオフィルムを含む微生物の、好ましくは光力学的不活性化である、本発明に係る不活性化方法は、以下の工程を含む:
(A)請求項1~4もしくは9~14のいずれか1項に記載の光増感剤組成物、および/もしくは、請求項5~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物を含む光増感剤組成物を硬化させることによって生成された少なくとも1つの被覆物、ならびに/または、請求項15~17のいずれか1項に記載の少なくとも1つの物品に、微生物および/またはそのバイオフィルムを接触させる工程、ならびに、
(B)被覆物および/または物品に含まれる、微生物および/またはそのバイオフィルム、ならびに少なくとも1つのフェナレン-1-オン化合物に、適切な波長およびエネルギー密度の電磁放射を照射する工程。
【0111】
一例として、例えば、乳頭、おしゃぶり、チューブなどような、透明な、透き通った、または半透明な物品を、本発明に係る光増感剤組成物を使用して製造し、本発明に係る方法によって洗浄および/または汚染除去してもよい。
【0112】
より好ましくは、熱的に限定された耐久性を有する物品、例えば、熱可塑性合成材料から形成された物品、または消毒剤によっていためられる物品が処理される。
【0113】
熱的に限定された耐久性を有する物品は、例えば、より高い温度ではそれらの形状を失うか、または脆くなるので、不十分に滅菌され得る。
【0114】
さらに、消毒剤の不正確なおよび/または過剰な使用の場合、例えば、物質の濃度および露光時間、その結果病原体減少作用が低すぎる場合、より強固な微生物を選択することによって、耐性の蓄積が起こり得る。
【0115】
好ましい実施形態において、1~12個の炭素原子、より好ましくは2~9個のC原子を含有する前述のアルキル残基は、それぞれ互いに独立して、メチル、エチル、プロパ-1-イル、プロパ-2-イル、ブタ-1-イル、ブタ-2-イル、2-メチルプロパ-1-イル、2-メチルプロパ-2-イル、ペンタ-1-イル、ペンタ-2-イル、ペンタ-3-イル、2-メチルブタ-1-イル、2-メチルブタ-2-イル、2-メチルブタ-3-イル、2-メチル-4-イル、2,2-ジメチルプロパ-1-イル、ヘキサ-1-イル、ヘキサ-2-イル、ヘキサ-3-イル、へプタ-1-イル、オクタ-1-イル、2-メチルペンタ-1-イル、2-メチルペンタ-2-イル、2-メチルペンタ-3-イル、2-メチルペンタ-4-イル、2-メチルペンタ-5-イル、3-メチルペンタ-1-イル、3-メチルペンタ-2-イル、3-メチルペンタ-3-イル、2,2-ジメチルブタ-1-イル、2,2-ジメチルブタ-3-イル、2,2-ジメチルブタ-4-イル、2,3-ジメチルブタ-1-イル、および2,3-ジメチルブタ-2-イル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチル、およびそれらの組み合わせ、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-へプチル、およびn-オクチル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0116】
好ましい実施形態において、1~12個のC原子、好ましくは2~9個のC原子を含有する前述の*-O-アルキル残基は、それぞれ互いに独立して、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0117】
好ましい実施形態において、5~20個のC原子、より好ましくは6~9個のC原子を含有する前述のアリール残基は、それぞれ互いに独立して、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、およびピレニルからなる群から選択される。
【0118】
好ましい実施形態において、5~20個のC原子、より好ましくは6~9個のC原子を含有する前述の*-O-アリール残基は、それぞれ互いに独立して、*-O-フェニル、*-O-ナフチル、*-O-アントラセニル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0119】
好ましい実施形態において、5~20個のC原子、より好ましくは6~9個のC原子を含有する前述のアルキルアリール残基は、それぞれ互いに独立して、ベンジル、2-フェニル-エタ-1-イル、3-フェニル-エタ-1-イル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0120】
好ましい実施形態において、5~20個のC原子、より好ましくは6~9個のC原子を含有する前述の*-O-アルキルアリール残基は、それぞれ互いに独立して、1-メトキシフェニル、1-エトキシ-2-フェニル、1-プロポキシ-3-フェニル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0121】
さらに好ましい実施形態において、前記エーテル残基は、それぞれ互いに独立して、2~12個のC原子、より好ましくは3~9個のC原子、より好ましくは4~7個のC原子を含有する。さらに好ましい実施形態において、前述のエーテル残基は、それぞれ互いに独立して、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシ-n-プロピル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、2-エトキシエトキシメチル、2-(2-エトキシエトキシ)エチル、i-プロポキシメチル、tert-ブチルオキシメチル、ジオキサ-3,6-ヘプチル、およびベンジルオキシメチルからなる群から選択される。さらに好ましい実施形態において、前述のエーテル残基が単純なエーテル残基、オリゴエーテル残基、ポリエーテル残基、またはそれらの混合物であってもよい。
【0122】
本発明は、これに限定されることなく、図面および実施例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1Aは、実施例3.1における黄色ブドウ球菌(S. aureus)数の対数減少の結果を示す。
図1Bは、実施例3.2における黄色ブドウ球菌数の対数減少の結果を示す。
図2は、実施例3.3における黄色ブドウ球菌数の対数減少の結果を示す。
図3はシリコーン表面上の黄色ブドウ球菌の対数減少を示す(A-は着色剤を含まない10ショアを意味し、A+は着色剤を含む10ショアを意味し、B-は着色剤を含まない45ショアを意味し、B+は着色剤を含む45ショアを意味する)。
【0124】
使用した化学物質は全て、確立された供給業者(Thermo Fisher Scientific、Polysciences Europe GmbH、Sigma Aldrich、TCI、ABCR、Acros、Merck and Fluka)から購入し、さらに精製することなく使用した。使用前に溶媒を蒸留し、必要であれば、通常の方法で乾燥した。乾燥DMFは、Fluka(Taufkirchen、DE)から購入した。
【0125】
薄層クロマトグラフィーを、Merck(Darmstadt、DE)からの60 F254シリカゲルでコーティングされた薄層アルミニウム箔上で行った。調製用薄層クロマトグラフィーを、シリカゲル60(20cm×20cm、Carl Roth GmbH & Co.KG、Karlsruhe、DE))でコーティングされた市販のガラスプレート上で行った。化合物は、UV光(λ=254nm、333nm)を用いて検出し、時には肉眼でまたはニンヒドリンで染色して検出した。クロマトグラフィーは、Acros(Waltham、US)のシリカゲル(0.060~0.200)を用いて行った。
【0126】
NMRスペクトルは、Bruker Avance 300分光計(300MHz[1H-NMR])(Bruker Corporation、Billerica、US)で測定した。
【0127】
全ての化学的置換は、外部標準(テトラメチルシラン、TMS)に対するδ[ppm]で与えられる。結合定数は、それぞれHzで与えられ;信号の特徴付け:s=一重項、d=二重項、t=三重項、m=多重項、dd=二重項の二重項、br=広い。積分は原子の相対数を決定した。炭素スペクトルにおける信号の明確な決定は、DEPT法(パルス角:135°)を用いて行った。誤差限界:1H-NMRでは0.01ppm、結合定数では0.1Hz。使用した溶媒を各スペクトルについて記録する。
【0128】
IRスペクトルは、Biorad Excalibur FTS 3000分光計(Bio-Rad Laboratories GmbH、Munich、DE)で記録した。
【0129】
ES-MSスペクトルはThermoQuest Finnigan TSQ 7000分光計を使用して測定し、全てのHR-MSスペクトルをThermoQuest Finnigan MAT 95分光計(それぞれ、Thermo Fisher Scientific Inc、Waltham、USから)で測定し、FABのイオン化ガスとしてアルゴンを使用した。
【0130】
融点は、ガラスキャピラリーを用いて、Buchi SMP-20融点測定装置(Buchi Labortechnik GmbH、Essen、DE)を用いて測定した。
【0131】
全てのUV/visスペクトルはVarian Cary 50 bio UV/VIS分光計を用いて記録し、蛍光スペクトルは、Varian Cary Eclipse分光計(両方ともAgilent Technologies、Santa Clara、USから)で記録した。
【0132】
吸収および発光測定のための溶媒は、AcrosまたはBakerまたはUvasol(Merck)から特殊分光グレードで購入した。ミリポア水(18MΩ、Milli QPlus)を全ての測定に使用した。
【0133】
実施例1:フェナレン-1-オン誘導体の製造
概要1:使用したフェナレン-1-オン誘導体の合成
【化32】
条件:a)置換ピリジン、MeCN、50℃、6時間;b)置換ジメチルアミン、MeCN、RT、24時間;c)4N NaOH、水、トルエン、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、RT、6時間;d)変形例1:ナトリウム塩としてのカルボン酸、Adogen(登録商標)464、トルエン、還流、4時間;変形例2:カルボン酸、DMAP、DCC、THF、0℃→RT、4時間;e)置換アルコール、トルエン、4N NaOH、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、RT、6時間、または置換フェノール、THF、PPh
3、DEAD、0℃→RT、6時間;f)置換塩化シリル、DCMまたはTHF、トリエチルアミンまたはイミダゾール、0℃→RT;
【化33】
条件:g)カルボン酸、THF、PPh3、DCC、0℃→RT、4時間、またはカルボン酸塩化物、DCM、トリエチルアミン、0℃→RT、3時間;h)置換アルコール、DCM、PPh
3、DEAD、0℃→RT、6時間;
【化34】
条件:k)メタノール中の二級アミン、0℃→RT、6時間;
l)カルボン酸塩化物、DCMまたはTHF、トリエチルアミン、0℃→RT;
【0134】
1. 2-クロロメチル-1H-フェナレン-1-オンの生成
2-クロロメチル-1H-フェナレン-1-オンは、米国特許出願公開第2014/039184 A1号明細書の実施例1に記載の方法を用いて得られた。NMRスペクトルは、米国特許出願公開第2014/039184 A1号明細書に開示されている値に相当した。
【0135】
【0136】
2-クロロメチル-1H-フェナレン-1-オン(115mg、0.5mmol)をアセトニトリル(6mL)中に入れた。上記の置換ピリジン(2.5mmol)をそれぞれ少量ずつゆっくり加えた。懸濁液を暗所にて室温で3日間撹拌した。
【0137】
精製のために、懸濁液を、円錐基材を有する2つのポリプロピレンチューブ(公称容量15mL、Greiner Bio-One GmbH、Frickenhausen、DE)に分け、チューブ当たり15mLまでのジエチルエーテルを添加することによって沈殿させた。生成物を遠心分離し(60分、4400rpm、0℃)、上清を廃棄した。沈殿物をジエチルエーテルに懸濁した。生成物が沈降した後、それぞれの場合において、上清を廃棄した。精製工程をもう一度繰り返し、次いで生成物を乾燥させた。
【0138】
【0139】
2-クロロメチル-1H-フェナレン-1-オン(115mg、0.5mmol)をアセトニトリル(6mL)中に入れた。上記の置換ジメチルアミン(2mmol)を、それぞれ少量ずつゆっくりと添加した。懸濁液を暗所にて室温で48時間撹拌した。
【0140】
精製のために、懸濁液を、円錐ベース(公称容量15mL、Greiner Bio-One GmbH)を有する2つのポリプロピレンチューブに分け、チューブ当たり15mLまでのジエチルエーテルを添加することによって沈殿させた。生成物を遠心分離し(60分、4400rpm、0℃)、上清を廃棄した。沈殿物をジエチルエーテルに懸濁した。生成物が沈降した後、それぞれの場合において、上清を廃棄した。精製工程をもう一度繰り返し、次いで生成物を乾燥させた。
【0141】
4. 仕様c):2-ヒドロキシメチル-1H-フェナレン-1-オンの生成
〔記号:PNOH、化合物(100)〕
【化35】
【0142】
2-クロロメチル-1H-フェナレン-1-オン(230mg、1mmol)を20mLのトルエンに溶解した。水酸化ナトリウム水溶液(4N、5mL)および相間移動触媒である硫酸水素テトラブチルアンモニウム(100mg)を加えた。反応混合物を室温で6時間激しく撹拌した。黄褐色の沈殿が形成された。沈殿物を濾過し、水(4回、20mL)、トルエンおよび石油エーテル(それぞれ1回、20mL)で洗浄した。生成物を風乾して一定重量にした。
【0143】
【0144】
変形例1:
上記のカルボン酸(1mmol)をそれぞれ等モル量の水酸化ナトリウムで中和し、得られたカルボン酸のナトリウム塩を凍結乾燥によって単離した。
【0145】
2-クロロメチル-1H-フェナレン-1-オン(115mg、0.5mmol)をトルエン(3mL)に溶解した。上記のカルボン酸のナトリウム塩、ヒドロキノン(11mg、0.1mmol)およびAdogen(登録商標)464(200mg)を添加し、反応混合物を激しく撹拌しながら4時間還流した。室温に冷却した後、トルエン(20mL)で希釈し、水(30mL)と共に振盪した。水相を酢酸エチルエステル(20mL)で2回抽出した。有機層を合わせ、水(50mL)で洗浄し、分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。
【0146】
濾過し、減圧下で濃縮した後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/PE2:1)によって精製した。
【0147】
変形例2:
化合物(100)(65mg、0.3mmol)を乾燥THF(1mL)に溶解した。前述のカルボン酸、ヒドロキノン(11mg、0.1mmol)、DMAP(61mg、0.5mmol)およびDCC(103mg、0.5mmol)を2~5℃で添加した。反応混合物を室温で4時間激しく撹拌した。それを酢酸エチルエステル(20mL)で希釈し、水(30mL)と共に振盪した。水相を酢酸エチルエステル(20mL)で2回抽出した。有機層を合わせ、水(50mL)で洗浄し、分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。
【0148】
濾過し、減圧下で濃縮した後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/PE2:1)によって精製した。
【0149】
【0150】
2-クロロメチル-1H-フェナレン-1-オン(115mg、0.5mmol)をトルエン(4mL)中に入れた。前述の置換アルコール(1mmol)、ヒドロキノン(11mg、0.1mmol)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム(100mg)を添加した。2mLの4N水酸化ナトリウム水溶液を、2~5℃で激しく撹拌した溶液に添加した。氷浴を除去し、反応混合物をさらに6時間激しく撹拌した。それを30mLのDCMで希釈し、水で数回振盪した(4回、各回20mL)。
【0151】
有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過し、減圧下で濃縮した後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/PE2:1)によって精製した。
【0152】
【0153】
2-ヒドロキシメチル-1H-フェナレン-1-オン(70mg、0.3mmol)を、乾燥DCM(3mL)中のイミダゾール(30mg、0.4mmol)と一緒に、窒素下、隔壁を有する10mL丸底フラスコに入れた。2mLの乾燥DCM中の前述の置換塩化シリル(0.4mmol)を、約0℃で、シリンジを使用して、隔壁を通してゆっくりと滴下した。氷浴を除去し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。一晩撹拌した混合物を30mLのDCMで希釈し、水で数回振盪した(4回、各回20mL)。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過し、減圧下で濃縮した後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/PE2:1)を用いて精製した。
【0154】
【0155】
3-ヒドロキシ-フェナレン-1-オン(シグマ-アルドリッチ)(100mg、0.5mmol)を、乾燥THF(5mL)中のトリフェニルホスフィン(50mg、1mmol)および前述のカルボン酸(0.6mmol)と一緒に、窒素下、隔壁を有する10mL丸底フラスコに入れた。乾燥THF(1mL)中のDCC(103mg、0.5mmol)を、約0℃で、シリンジを使用して、隔壁を通してゆっくりと滴下した。氷浴中で2時間撹拌した後、乾燥THF(1mL)中に、DCC(103mg、0.5mmol)の更なる一部を滴下した。反応混合物を解凍氷浴中で撹拌し、次いで室温で6時間撹拌した。THFを除去し、残渣を30mLのDCMに溶解し、水で数回振盪した(4回、20mL)。
【0156】
有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過し、減圧下で濃縮した後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/PE2:1)を用いて精製した。
【0157】
【0158】
3-ヒドロキシ-フェナレン-1-オン(60mg、0.3mmol)を、DCM(3mL)中のトリフェニルホスフィン(30mg、0.6mmol)および前述の置換アルコール(0.4mmol)と一緒に、窒素下、隔壁を有する10mL丸底フラスコに入れた。トルエン中のDEAD(40%、0.2mL、0.4mmol)を、約0℃で、隔壁を介してシリンジを用いて、ゆっくりと滴下した。反応混合物を解凍氷浴中で撹拌し、次いで室温で6時間撹拌した。それを30mLのDCMで希釈し、水で数回振盪した(4回、20mL)。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過し、減圧下で濃縮した後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/PE2:1)を用いて精製した。
【0159】
10. 仕様k):2-(N-メチルアミノ)メチル-1H-フェナレン-1-オン塩酸塩の製造
〔記号:SAPN-02c、化合物(158)〕
【化36】
【0160】
メタノール(10mL)中の2-クロロメチル-1H-フェナレン-1-オン(113mg、0.5mmol)を、メタノール(10mL、5M)中のアミンの氷冷した溶液に2時間かけて滴下した。室温で1時間激しく撹拌した後、溶媒を過剰のアミンと一緒に窒素流中で追い出した。残渣を可能な限り少量のDCM/エタノール4:1に溶解し、ジエチルエーテルを添加することによって沈殿させた。生成物を遠心分離し(60分、4400rpm、0℃)、上清を廃棄した。沈殿物をジエチルエーテルに懸濁し、再び遠心分離した。精製工程をもう一度繰り返し、次いで生成物を乾燥させた。
【0161】
【0162】
2-(N-メチルアミノ)メチル-1H-フェナレン-1-オン塩酸塩(80mg、0.3mmol)をDCM(3mL)中のトリエチルアミン(100mg、1mmol)に溶解し、水分を除去しながら氷浴中で撹拌した。DCM(0.5mL)中の対応するカルボン酸塩化物(0.4mmol)を滴下した。反応混合物を解凍氷浴中で撹拌し、次いで室温で4時間撹拌した。それを30mLのDCMで希釈し、水で数回撹拌した(4回、20mL)。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過し、減圧下で濃縮した後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0163】
12. 化合物(127)の合成
〔記号: PN-AMO-01〕
【化37】
【0164】
アセトニトリル(20mL)中の2-クロルメチル-1H-フェナレン-1-オン(230mg、1.0mmol)をアセトニトリル(50mL)中の3-アミノプロパノール(1.5mL、20mmol)の水溶液に30分かけて滴下した。室温で一晩撹拌した後、トリエチルアミン(2.02g、2.66mL、20mmol)を加え、水溶液を氷浴中で撹拌した。無水酢酸(3.06g、2.83mL、30mmol)を約0℃で滴下した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで50℃に1時間加熱した。全ての揮発性成分を減圧下で除去した。
【0165】
生成物を、ジクロロメタン/エタノール20:1を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。261mgの黄色シロップを得た。この材料をメタノール(2mL)に溶解した。水酸化ナトリウム水溶液(1M、0.5mL)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。アルコールを除去し、残りの溶液を水(10mL)で希釈した。生成物をジクロロメタン(2×10mL)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。生成物は黄色がかった脂っぽい固体(215mg、69%、0.69mmol)であった。
【0166】
【0167】
対応するtert-ブチルオキシカルボニル(Boc保護されたフェナレノン誘導体)をジクロロメタン(100mg当たり3mL)中に入れた。ジエチルエーテルの塩酸飽和溶液(0.5mL/mmol Boc群)を滴下した。バッチを水分を除去しながら3時間撹拌した。生成物は、30mLのジエチルエーテルを添加することによって沈殿させた。沈殿物を遠心分離し、ジエチルエーテルで十分に洗浄した。生成物を減圧下で乾燥させた。
【0168】
それぞれの計算分子量(MW)および分子式(MF)ならびに測定したマススペクトル(MS)および1H NMRスペクトルのデータを、生成した化合物について以下に示す。
【0169】
【0170】
実施例2:抗菌性表面コーティングの生成
実施例1で生成した光増感剤を、以下のように、種々の塗料系で試験した。
【0171】
1)溶剤を含む、2成分(2-C)ポリウレタン塗料
各光増感剤(0.06mmol)を、透明な塩基性塗料(架橋性ポリイソシアネート、アクリル樹脂を含有したヒドロキシル基、キシレン/酢酸n-ブチル中20%)100mLに溶解した。架橋剤(ポリマーを含有した、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシレン/酢酸n-ブチル中20%、Covestro AG、Leverkusen、DEより”Desmodur(登録商標)N75”)を、5:1(v/v)の比で基本塗料と混合した。粘性のある淡黄色溶液を、スプレーガンを用いて種々の脱脂表面に塗布した。試験した物質は、PMMA、PVC、ガラス、アルミニウム、ステンレス鋼および木材であった。室温で4時間乾燥した後、60℃に30分間加熱することによって完全な硬化物が得られた。
【0172】
以下の光増感剤をこの方法を用いて処理した:
【化38】
【0173】
結果:透明な淡黄色の均質なコーティング;層の厚さ20~40μm。
【0174】
2)水性の1成分(1-C)ポリウレタン塗料
各光増感剤(0.05mmol)を水性塗料(100mL、アクリル-ポリウレタンエマルジョン、脂肪酸変性、水中20%)に溶解した。混合物を室温で30分間激しく撹拌した。塗料を、i)未処理の木製ボード、ii)PMMA板、またはiii)ブラシを用いてPVCプレートに均一に塗布した。あるいは、塗料がスプレーガンを用いて、約30cmの距離から均等に塗布された。コーティングを空気中で乾燥させ、室温で一晩硬化させた。
【0175】
以下の光増感剤をこの方法を用いて処理した:
【化39】
【0176】
結果:透明、艶消し、淡黄色、均質なコーティング;層厚約50μm。
【0177】
3)2-Cエポキシ樹脂
塩基性樹脂(代表的な工業製品)の組成:
式I(反応性希釈剤を含む樹脂) :平均分子量が700g/mol未満のビスフ
ェノール-A-エピクロロヒドリン樹脂(25
~50%)
C12-C14脂肪族グリシジルエーテル(2
5~50%)
アルキルグリシジルエーテル(5~25%)
式II(反応性希釈剤を含む樹脂): 平均分子量が700g/mol未満のビスフェ
ノール-A-エピクロロヒドリン樹脂(60~
80%)
1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)
ブタン(20~40%)
式III(反応性希釈剤を含む樹脂):平均分子量が700g/mol未満のビスフェ
ノール-A-エピクロロヒドリン樹脂(75~
90%)
ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(10
~25%)
式IV(反応性希釈剤を含む樹脂): 平均分子量が700g/mol未満のビスフェ
ノール-A-エピクロロヒドリン樹脂(50~
90%)
ビスフェノールFエポキシ樹脂(25~50%
)
C12-C14脂肪族グリシジルエーテル(1
0~20%)
1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)
ブタン(10~20%)
【0178】
硬化剤(典型的な工業製品)の組成:
式I(通常の硬化剤) :イソホロンジアミン(アミノメチル-3,5,5-トリメ
チル-シクロヘキシルアミン)(10~25%)
ベンジルアルコール(25~50%)
2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジアミン(3
~10%)
式II(通常の硬化剤) :イソホロンジアミン(アミノメチル-3,5,5-トリメ
チル-シクロヘキシルアミン)(44%)
キシリデンジアミン(10%)
トリメチルヘキサメチレンジアミン(5%)
サリチル酸(1%)
ポリエチレンアミン(10%)
ベンジルアルコール(30%)
式III(急速硬化剤) :ジアミノシクロヘキサン(18%)
ペンタメチレンジアミン(25%)
サリチル酸(2%)
ポリエチレンアミン(20%)
ベンジルアルコール(35%)
促進剤/触媒を用いる場合:N-ベンジルジメチルアミン(BDMA)および/または
、N,N,N,N-テトラメチル-1,3-ブタンジアミ
ン(TMBDA)および/または、
2-メチルイミダゾール(2MI)
【0179】
変形例a)
各光増感剤(0.05mmol)を透明硬化剤(式IまたはII)25mLに溶解した。塩基性樹脂(式II、IIIまたはIV)から、75mLを硬化剤と混合した。粘性のある淡黄色溶液を、スプレーガンを用いて、i)PMMAまたはii)PVCから形成された脱脂表面に塗布した。
【0180】
あるいは、抗菌シールを得るために、未処理の木材に均一なコーティングでブラシを用いて混合物を数回、塗布した。室温で12時間硬化させた後、40℃で6時間加熱することにより、後の硬化を行った。
【0181】
以下の光増感剤をこの方法を用いて処理した:
【化40】
【0182】
結果:透明な淡黄色の均質なコーティング;層の厚さ20~40μm。
【0183】
変形例b)
各光増感剤(0.05mmol)を透明硬化剤(式IIまたはIII)30mLに溶解した。塩基性樹脂(式I)から、70mLを硬化剤と混合した。平坦なステンレス鋼パンを剥離ワックスで均一にコーティングした。その中で、i)ガラス繊維マット、ii)CFRP布地片、またはiii)アラミド布地片(各20×20cm2)を、布地が混合物を完全に取り込むことができるように、ブラシで樹脂混合物に均一に含浸させた。室温で24時間硬化させた後、60℃にゆっくりと加熱し、30分間保持することにより、後の硬化を行った。
【0184】
以下の光増感剤をこの方法を用いて処理した:
【化41】
【0185】
結果:硬く、限られた柔軟性の繊維マット;着色剤の固有の色は識別できなかった。
【0186】
変形例c)
各光増感剤(0.05mmol)を70mLの塩基性樹脂(式II、IIIまたはIV)に溶解した。硬化剤(式III)のうち、30mLを混合した。粘性のある、淡黄色溶液をスプレーガンでi)PMMAまたはii)粗面化ガラスから形成された脱脂表面に塗布した。
【0187】
あるいは、抗菌シールを得るために、ブラシを用いた均一なコーティングで、混合物を未処理の木材に数回塗布した。室温で6時間硬化させた後、40℃で3時間加熱することにより、後の硬化を行った。以下の実施例をこの方法を用いて処理した:
【化42】
【0188】
結果:透明、淡黄色、均一なコーティング;層厚20~40μm、ブラシを使用した場合:>50μm。
【0189】
4)室温加硫1成分(RTV-1)シリコーン、
シリコーンの典型的な組成(Wackerからの工業製品):二酸化ケイ素(充填材)とトリアセトキシメチルシラン(架橋剤、<5%)との混合物として、ポリジメチルシロキサンジオールおよびポリジメチルシロキサン
【0190】
変形例a)
透明で衛生的なシリコーン(1-C、室温架橋、酸架橋、5.0g)をヘキサン(10mL)に溶解した。乾燥ジクロロメタン(20mL)中の各光増感剤(0.012mmol)の水溶液を混合した。わずかに不透明な淡黄色の粘性溶液を、i)脱脂ガラスプレート、ii)脱脂PMMAプレート、iii)セラミックプレート、またはiv)ポリエステルフィルムに均一に塗布した。室温で約15分後、コーティングは乾燥し、約10分後、表皮形成が始まった。室温で6時間後、厚さ約0.1mmの層は完全に硬化した。
【0191】
結果:透明、艶消し、淡黄色、均質、ゴム状コーティング。
【0192】
変形例b)
各光増感剤(0.02mmol)を乾燥酢酸エチル(100mL)に溶解した。透明で衛生的なシリコーン(1-C、室温架橋、酸架橋、8.0g)を添加し、溶液が均一になるまで撹拌した。わずかに不透明な淡黄色溶液を、スプレーガンを用いて、i)粘土プレート、ii)セラミックタイル、iii)脱脂PEプレート、またはiii)アルミニウムプレートに均一に塗布した。室温で約20分後、コーティングは乾燥し、約10分後、表皮形成が始まった。室温で6時間後、厚さ約0.1mmの層は完全に硬化した。
【0193】
結果:透明、艶消し、淡黄色、均質、ゴム状コーティング。
【0194】
変形例c)
微粉末の光増感剤(0.012mmol)を、SpeedMixer(商標)DAC 600(Hauschild Engineering、ドイツ)ミキサー中で、透明で衛生的なシリコーン(1-C、室温架橋、酸架橋、5.0g)中に室温で撹拌し、肉眼で見て、均一なペーストを得た。i)タイルグラウトまたはii)に使い捨てシリンジを用いて淡黄色の粘性の塊を均等に塗布し、2枚のガラスプレートを他方の上に垂直に積み重ねた。室温で約30分後、シリコーンは乾燥し、約20分後、表皮形成が始まった。室温で6時間後、層は完全に硬化した。
【0195】
3つの変形例における以下の光増感剤を、淡黄色のゴム状シリコーングラウトに加工した:
【化43】
【0196】
結果:透明、艶消し、淡黄色、均質、ゴム状グラウト。
【0197】
5)室温加硫2成分(RTV-2)シリコーン
シリコーン(Wackerからの工業製品)の典型的な組成:構成要素A)ビニル基/ビニルシランを含有するオリゴマーシラン、および構成要素B)二酸化ケイ素(充填材)および補助剤および白金触媒との混合物として、ポリジメチルシロキサン。
【0198】
ベースポリマー(A)を架橋剤(B)と9:1の比率で混合した。
【0199】
微粉末の光増感剤(0.05mmol)を、肉眼で見て均一なペーストが得られるまで、室温で90gのベースポリマー(A)中に撹拌した。淡黄色の粘性の塊を、平らなスパチュラを用いて9:1の比率で架橋剤(B)と混合し、i)ポリエステルフィルム、ii)セラミックタイル、脱脂ガラスプレート、iv)脱脂PEプレート、またはv)アルミニウムプレート(50mL/mτ)に均一に塗布した。
【0200】
室温で約30分後、最初の表面形成が起こった。室温で8時間後、層は完全に硬化した。
【0201】
以下の光増感剤をシリコーンコーティングに加工した:
【化44】
【0202】
結果:透明、艶消し、淡黄色、均質、ゴム状コーティング。
【0203】
6)ポリアクリレート、1-C
細かく粉末化した光増感剤(0.05mmol)を100mLのメタクリル酸エチルエステル(乾燥状態)に溶解した。カンフルキノン(1.7mg、0.01mmol)および4-ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル(0.9mg、0.005mmol、アミン促進剤)を添加し、混合物を暗所で15分間撹拌した。水溶液を暗所に数週間保った。
【0204】
この水溶液を、i)ブラシを用いて木材に塗布するか、またはii)濾紙に吸収させるか、またはiii)脱脂したPMMAプレート上に均一に噴霧した。
【0205】
第2工程では、重合灯(LEDブルーフェーズ;IvoclarVivadent AG、650mW/cm
2)を用いて30秒間、照射を行った。製造後、重合を完了させるために、試験片を乾燥キャビネット中に37℃で24時間保管した。以下の光増感剤を実験に使用した。
【化45】
【0206】
結果:i)透明なポリマーシール、ii)部分的に柔軟性のある、淡黄色の小板、またはiii)透明な淡黄色の塗料のようなコーティングが得られた。
【0207】
7)ポリアクリレート、2-C
変形例a)
それぞれの光増感剤(0.05mmol)をメタクリル酸メチルエステル(メチルメタクリレート、MMA、シグマアルドリッチ)(溶液A)100mLに溶解した。tert-ブチルペルオキシ安息香酸塩(ペロキサンPB、0.5g)をTHF(2mL)(溶液B)に溶解した。溶液Bを溶液Aに加え、水槽中で90℃で15分間加熱した。わずかに粘性のある溶液を、i)脱脂したPMMAプレートに塗布するか、またはii)脱脂したガラスプレート上に噴霧するか、またはiii)松材に塗布し、ブラシ(50mL/m2)で均一に塗った。アクリルガラスコーティングを完全に硬化させるために、支持体を乾燥キャビネット中60℃で24時間保管した。木材用の淡黄色の透明な合成材料コーティングまたはポリマーシールが得られた。
【0208】
結果:透明で均一な塗料の様なコーティング;i)およびii)において、層の黄色の固有の色はほとんど検出できず、iii)において、固有の色は背景と区別できなかった。
【0209】
変形例b)
それぞれの光増感剤(0.05mmol)をメタクリル酸メチルエステル(メタクリル酸メチル、MMA、シグマアルドリッチ)(水溶液A)100mLに溶解した。過酸化ベンゾイル(0.5g)をTHF(2mL)(水溶液B)に溶解した。水溶液Bを水溶液Aに加え、水槽中で80℃で20分間加熱した。この混合物を用いて、i)厚さ約6mmの綿フリース、またはii)厚さ約6mmのフェルトマット、またはiii)アラミド布地片(各20×20cm2)にブラシを均一に含浸させ、布地が混合物全体を取り込むことができるようにした。
【0210】
アクリルガラスを完全に硬化させるために、繊維マットを60℃で12時間乾燥させた。固体であり、黄色がかったプレートが得られた。以下の光増感剤を処理した:
【化46】
【0211】
結果:硬く、限られた柔軟性を有する繊維マット;着色剤の固有の色は、i)においてのみ識別することができた。
【0212】
8)ポリアクリルアミド
水(2.5mL)中のアクリルアミド/ビス-アクリルアミド(37.5:1)の40%溶液を、トリス緩衝液(3.75mL、1M、pH8.8)およびプロピレングリコール(0.6mL)と混合した。蒸留水(3.0mL)中の各光増感剤(0.005mmol)を添加した。溶液を真空ポンプ(5~10mbar)で5分間脱気し、次いでTEMEDを添加した(10μL)。最後に、0.05mLの過硫酸アンモニウム(水中10%)を撹拌しながら添加した。
【0213】
次に、i)厚さ3mmのカセット(あらかじめ70%アルコールで洗浄したプレート)に混合物を充填し、イソプロパノールを注意深く重ねた。室温で30分間重合させた後、ゲルは固体になり、上清を流し去ることができた。チャンバープレートを除去した後、柔軟で厚い淡黄色のフィルムが得られた。あるいは、ii)混合物をフリースに均一に塗布した。
【0214】
重合中、材料を密着フィルムで覆った。室温で30分間重合した後、ゲルは固体になり、フィルムを注意深く除去した。ゲル状の黄色がかったコーティングが得られた。
【0215】
以下の光増感剤をこのようにして重合させた:
【化47】
【0216】
結果:i)ゴム状、わずかに不透明、淡黄色マット;ii)透明、艶消し、淡黄色、均質、ゴム状コーティング。
【0217】
9)シアノアクリレート
変形例a)
各光増感剤(0.01mmol)を100mLのジクロロメタン(塩化カルシウムで乾燥)に溶解した。0.2gの市販のシアノアクリレート(Loctite、Henkel AG&Co.KGaA、Dusseldorf、DE)を1gの溶液に添加した(乾燥条件)。混合物をa)脱脂ガラスプレートまたはb)乾燥トウヒ木材上に均一に噴霧した。室温で、20%~70%の湿度で、層は20分以内に完全に硬化した。
【0218】
変形例b)
各光増感剤(0.01mmol)を100mLの乾燥メチルエチルケトンに溶解した。市販のシアノアクリレート(Loctite.)を10gの溶液と1:5(w/w)の比で混合した。この水溶液を、イソプロパノールで洗浄した基板、例えば、i)ガラスまたはii)PEまたはiii)メラミンプレートに均一に塗布した。溶媒を蒸発させた後、コーティングを空気の水蒸気中で硬化させた(約15分、湿度20%~70%)。
【0219】
以下の光増感剤を、それぞれの変形例に従って処理した:
【化48】
【0220】
結果:透明で、わずかに不透明で、淡黄色で、均一なコーティング;層厚20~40μm。
【0221】
10)ポリスチレン
それぞれの光増感剤(0.01mmol)を新たに蒸留したポリスチレン(シグマアルドリッチ)(水溶液A)20mLに溶解し、過酸化ベンゾイル(0.5g)をTHF(2mL)(水溶液B)に溶解した。水溶液Bを水溶液Aに添加し、混合物を水浴中で80℃で20分間加熱した。5~6mLの混合物を、i)清浄な未処理のチップボード、またはii)脱脂PMMAプレート、またはiii)ブラシを用いて脱脂ガラスプレート(各20×20cm
2)上に均一に塗った。完全に乾燥させるために、支持体を60℃で12時間放置した。固体の黄色のプレートを得た。以下の光増感剤を処理した:
【化49】
【0222】
11)カルボキシメチルセルロースコーティング
各光増感剤(0.05mmol)を、細かく粉砕したカルボキシメチルセルロース(4.0g、Akzo Nobel)を加えた水100mLに溶解した。5~6mLの透明で粘性のある溶液を、i)清浄で未処理のチップボードまたはii)ブラシを用いて脱脂したPMMAプレート(各20×20cm2)に均一に塗布した。
【0223】
あるいは、iii)綿フリース(20×20cm
2)にブラシを均一に含浸させて、不織布が混合物全体を取り込むことができるようにした。硬化させるために、支持体を室温で3時間放置して乾燥させた。以下の光増感剤を処理した:
【化50】
【0224】
結果:i)検出可能な固有の色を全く含まない透明なポリマーシール;ii)透明で、わずかに不透明な淡黄色で、均一なコーティング;iii)硬く、限定された柔軟性を有する繊維マット;光増感剤の固有の色はほとんど検出できなかった。
【0225】
12)アルギン酸塩コーティング
水酸化ナトリウム(850mg、21.25mmol)を95mLの蒸留水に溶解した。5gのアルギン酸(シグマアルドリッチ)を温かい溶液(約35℃)に添加し、3時間撹拌した。粘性のある透明な溶液が形成された。各光増感剤の原液(5mL、12mmol/L)を撹拌しながら滴下した。黄色でわずかに粘性のある溶液を用いて、i)紙片またはii)綿片またはiii)紙タオル/パッド(各20×20cm2)を含浸させた。余分な溶液を滴らせた。湿潤支持体を1%塩化カルシウム溶液に迅速に浸漬した。材料を十分に排出させ、次いで注意深く拭き取り、室温で空気中で3時間乾燥させた。
【0226】
【0227】
結果:硬く、限られた柔軟性を有する繊維マットまたは紙片;光増感剤の固有の色はほとんど検出できなかった。
【0228】
実施例3:抗菌性表面コーティングの活性の試験
1.)試料支持体の生成
以下の光増感剤を以下の試験に使用した:
【化52】
【0229】
光増感剤をそれぞれの塗料系に溶解し、PVCまたはPMMAから形成された様々な正方形試料支持体(幅4cm、長さ4cm、厚さ3mm)に塗布し、次いで乾燥させた。コーティングを乾燥させた後、Staphylococcus aureus ATCC 25923種由来の特定量の細菌を表面に塗布した。
【0230】
この点に関して、最初に、5mLのMueller Hinton培養液(Carl Roth GmbH+Co.KG、Karlsruhe、DE)中の黄色ブドウ球菌の一晩(ON)培養物に、寒天プレートからの単一コロニーを接種し、37℃および180rpmで、振盪機上で18~20時間インキュベートした。
【0231】
試験の日に、それぞれの場合において、1mLのON培養物を遠心分離した(Hettich Universal 320R遠心分離機(Andreas Hettich GmbH&Co.KG、Tuttlingen、DE);スイングアウトローター1494;10分、3000rpm、RT)。上清を廃棄し、ペレットを、Merck(KGaA、Darmstadt、DE)から市販されている1mLのMilli-Q水(名称「Milli-Q Integral Ultra-pure Water(Type1)」)に再懸濁した。
【0232】
600nm(「Specord50プラス」分光計、Analytik Jena)で光学濃度を測定した後、再懸濁した細菌をMilli-Q-水で希釈し、細胞数105細菌/mLとした。希釈から、それぞれの場合において、100μLをピペット(液滴の大きさ約1cm2)を用いて試料支持体上に滴下した。
【0233】
これにより、それぞれの試料支持体の表面上に約10.000細菌/cm2の細菌が得られた。次いで、試料支持体を、水が表面上に見えなくなるまで、暗所で約2時間、クリーンベンチ下で空気中で乾燥させた。
【0234】
2.)コロニー形成単位(CFU)/mLの照射および定量測定
それぞれの試料支持体に、LEDモジュール(試験領域5×5cm均質照明;高出力LED)を用いて、または室内照明(Osram Lumilux Cool White、色温度4000K)を用いて、以下に示す強度および照射期間で、波長405nmの単色光を照射した。照射直後、細菌を滅菌布でそれぞれの試料支持体の表面から拭き取り、1mLのMueller-Hinton培養液に再懸濁した。
【0235】
次に、試料を連続希釈した(1:10希釈段階:180+20μL;希釈段階10-5)。
【0236】
それぞれの希釈段階(100~10-5)について、3×各20μLの培養液を、ピペットを用いてMueller-Hinton寒天プレート(Carl Roth GmbH+Co.KG)上に滴下し、広げた。次いで、寒天プレートを37℃ONでインキュベートした。
【0237】
翌日、実験で計数できる全ての希釈段階からのコロニーを計数し、CFU/mLを計算した。
【0238】
細菌叢を示すか、または全くコロニーを示さない希釈段階は、「∞」または「0」で示され、CFU/mLの計算には含めなかった。
【0239】
次に、CFU/mLからlog10根絶率を算出した。各実験における基準点は、基準対照(=使用した細菌の100%カウント)であった。
【0240】
試験は、以下のものから構成された:
-コーティングされた試料支持体:光増感剤を含まず、照射しなかった(「参照用対照」)
-コーティングされた試料支持体:光増感剤を含み、照射しなかった(「ダークコントロール」)
-コーティングされた試料支持体:光増感剤を含まず、照射された(「ライトコントロール」)
-コーティングされた試料支持体:光増感剤を含み、照射された(「試料」)
【0241】
3.)使用した塗料系および照射パラメータ
3.1.) 実施例2.1の2-Cポリウレタン塗料、溶媒酢酸ブチル/キシレン
コーティング材料:PMMA、厚さ3mm、4×4cm
乾燥時間約1時間
乾燥温度15~30℃
スプレーガンによる塗布
使用した光増感剤の濃度:200μm(61.55mg/L)
【0242】
【0243】
3.2.)実施例2.2からの水性1-Cポリウレタン塗料
コーティング材料:PVC、厚さ3mm、4×4cm
乾燥時間約2時間
乾燥温度15~30℃
乾燥時間の相対湿度30~70%
スプレーガンによる塗布
使用した光増感剤の濃度:200μm(61.55mg/L)
【0244】
【0245】
3.3)実施例2.5の室温加硫2成分(RTV-2)シリコーン
コーティング材料:PVC、厚さ3mm、4×4cm
乾燥時間約2時間
乾燥温度15~30℃
乾燥時間の相対湿度30~70%
スプレーガンによる塗布
使用した光増感剤の濃度:200μm(61.55mg/L)
2つの等級のシリコーン硬度(「ショア」として知られる):A=10ショア;B=45ショア
【0246】
【0247】
4.)試験結果および評価
4.1.)実施例2.1の2-Cポリウレタン塗料(溶媒:酢酸ブチル/キシレン)
2-C塗料系を用いた第1の研究では、まず、黄色ブドウ球菌に対して使用される光増感剤SAPN-19cの活性を試験するために、10および20mW/cm
2の高強度を使用した。結果を
図1Aに示す。
【0248】
図1Aは、それぞれ、3つの独立した試験からの2-C塗装面上の黄色ブドウ球菌の還元についての平均値を示す。10または20mW/cm
2、2分間(エネルギー密度1.2または2.4J/cm
2に相当)の照射を行った。
【0249】
図2Aは、2-C塗料系では、光強度10mW/cm
2で照射時間2分後でも、1.8log
10減少(3回の独立実験の平均値)を示す。光量を20mW/cm
2に増やすことで、2.7log
10単位の効果的な根絶をもたらした。
【0250】
続いて、0.7mW/cm2の低強度での有効性を測定した。結果を
図1Bに示す。
【0251】
図1Bは、それぞれ、2つの独立した試験からの、2-C塗装面(透明PMMA試料支持体上の無色の溶媒ベースの2-C塗料)上の黄色ブドウ球菌の還元についての平均値を示す。
【0252】
照射は0.7mW/cm2を最大150分間(6.3J/cm2までのエネルギー密度に相当)使用して行った。対照コントロール(光なし、触媒なし)の平均値は、1mlあたり3.2×104細菌であった。ライトおよびダークコントロールは、150分でのみ測定した。
【0253】
非照射試料(0分)に対するコロニー形成単位の減少を間隔をおいて測定し、
図1bに示す時間(5分、10分、20分、30分、40分、60分、90分、120分および150分)の後、それぞれ2つの被覆試料支持体を照射から取り出した。2つの独立した試験の結果を
図1Bに示す。
【0254】
対照コントロール(光なし、触媒なし)の平均値は、1mlあたり3.2×104細菌であった。ライトおよびダークコントロールは、150分でのみ測定した。
【0255】
図1Bは20分後に、2-C塗料系が1.9log
10単位の黄色ブドウ球菌の根絶に達したことを示す。
【0256】
人工光源で照射した場合、2-C塗料系は、高強度および低照射時間(
図1A)、ならびに低強度および長時間照射時間(
図1B)の両方で、黄色ブドウ球菌に対して生物学的活性を示した。
【0257】
4.2.)実施例2.2からの水性1-Cポリウレタン塗料
高強度(10mW/cm2)および長時間照射(10分)での第1の試験は、1-C塗料系の活性を実証した。
【0258】
【0259】
図2は、3つの独立した試験からの1-C塗装面上の黄色ブドウ球菌の還元についての平均値を示す。照射は10mW/cm
2、10分(エネルギー密度6J/cm
2に相当する)で行った。
【0260】
1-C塗料系を用いた実験は光と光力学的触媒との相互作用のみが、コーティングされた表面上の黄色ブドウ球菌の有効な根絶をもたらすことを明確に示す。3つの独立した試験では、エネルギー密度が6J/cm2の場合、平均3.0log10単位の根絶が示された。
【0261】
実験におけるライトコントロールは、おそらくダーク試料支持体に起因する1.2log10単位の平均減少を示した。
【0262】
3.3)実施例2.5の室温加硫2成分(RTV-2)シリコーン
高強度(10mW/cm2)および5分間または10分間の照射期間を用いた第1の試験は、RTV-2シリコーン系の活性を実証した。
【0263】
結果は
図3に示し、各場合において、3つの試験の平均値を示す。
【0264】
図3はシリコーン表面上の黄色ブドウ球菌の対数減少を示す(A-は着色剤を含まない10ショアを意味し、A+は着色剤を含む10ショアを意味し、B-は着色剤を含まない45ショアを意味し、B+は着色剤を含む45ショアを意味する)。
【0265】
4.3)概要
試験された塗料系(2-C PUR塗料系;1-C PUR塗料系、RTV-2シリコーン)において、使用された光増感剤SAPN-19cは、塗装された表面被覆上の黄色ブドウ球菌に対して生物学的活性を示した。
【0266】
より高い光強度および/またはより長い照射期間はより多くの一重項酸素を生成し、その結果、表面上の微生物のより速く、より効果的な根絶もたらした。
【0267】
両方の塗料系で使用した200μM(61.55mg/L)の濃度は、着色表面上では見えなかった。さらに、6J/cm2の光強度で、被覆は関与するバクテリアの3log10単位(=99.9%)の減少を達成した。
【0268】
実施例4.オフィス照明(ネオン管)における被覆表面の光毒性効果の試験
次の試験では、2-C塗料系に室内照明を照射した。この点に関して、光増感剤SAPN-19cおよびSAPN-19を用いて実施例2.1で生成された光活性表面を、通常のオフィス照明(標準蛍光灯、Osram Cool White、840)を用いて領域にさらしてさらに保管し、実施例3と同じ病原体数を有する黄色ブドウ球菌に対する光毒性作用を、特定の期間後に分析した。この点に関して、光活性層は、光源から約40cm離れていた。
【0269】
光増感剤SAPN-19cについては、12時間の照射時間を有する標準的なオフィス照明条件下で24時間保管した後、表層上の全ての病原体が完全に根絶されたことが示された(約5.5log10単位、>99.999%の減少に相当)。
【0270】
実施例5:光活性安定性の長期試験
生成された欠乏の安定性を試験するために、長期試験を行った。
試験表面は、PUR中の各光増感剤が表面の光毒性活性が低下するような様式で影響を受けたかどうかを確立するために、5mW cm
-2の出力で、種々の期間(5、25、50、75時間)予備照射された:
【表14】
【0271】
予備照射に続いて、上記のような表面を黄色ブドウ球菌で汚染し、次いで2時間照射し(5mW cm
-2に相当する)、光毒性を測定した。
【化53】
【0272】
TPP増感剤WBII/2は、Felgentrager A., Maisch T., Spath A., Schroder J.A., Baumler W., “Singlet oxygen generation in porphyrin-doped polymeric surface coating enables antimicrobial effects on Staphylococcus aureus.”, (Phys Chem Chem Phys. 2014 Oct 14;16(38):20598-607. doi: 10.1039/c4cp02439g.)に記載の方法を用いて生成した。
【0273】
試験したポルフィリン-ドープした表面(TPP増感剤WBII/2)については、光毒性効率の顕著な低下があった。この点に関して、1ヶ月後、試験表面は有意に変色し、光毒性活性を失った。
【0274】
これは、活性酸素の影響下で着色剤の環が破壊され、その結果、ビリルビン類似体が形成されるためであろう:
【化54】
【0275】
SAPN-19cについては、5mW cm-2で75時間の予備照射まで、光毒性効率に関して差異はなかった。
【0276】
これは、(オフィス作業スペースにおいて)100μW cm-2の電力を有するオフィス照明管が1日当たり12時間連続的に照射されると仮定すると、外挿された312日間の照射(d)に相当する。