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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】構造用単板積層材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27D 1/04 20060101AFI20230512BHJP
   B32B 21/13 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
B27D1/04 E
B27D1/04 G
B32B21/13
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020026509
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130242
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501417550
【氏名又は名称】株式会社ユニウッドコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】横尾 國治
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225845(WO,A1)
【文献】特許第4012881(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 1/04
B32B 21/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板材である単板が接着剤を介して複数枚上下に積層された構造用単板積層材において、
表面側に配置された上下の表面層と上下の前記表面層の間に配置された中間層とを含む積層材が、厚み方向に圧縮された圧密の積層材であり、
前記積層材はホットプレスによる圧密のLVLであり、
前記複数の単板は、気乾比重0.5以上の高比重樹種の単板と、気乾比重0.5未満の低比重樹種の単板とを含み、
前記表面層には前記低比重樹種の単板のみが複数枚配置され、
前記中間層には前記高比重樹種の単板と前記低比重樹種の単板とが混在して配置され、且つ、前記中間層における前記表面層の単板に接する単板は前記高比重樹種の単板によって構成され、
前記表面層には2枚又は3枚の前記低比重樹種の単板のみが配置され、
圧密済みのこれらの単板は、前記低比重樹種の単板の圧密量が前記高比重樹種の単板の圧密量よりも大きく、
その曲げ強度が下記の条件1を満たすことを特徴とする構造用単板積層材。
(条件1)
前記積層材をホットプレスにより温度120℃度、圧力12気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度(A)に対して、
前記高比重樹種の単板だけによる単板積層材であってホットプレスにより温度120℃度、圧力14気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度(B)と、
前記低比重樹種の単板だけによる単板積層材であってホットプレスにより温度110℃度、圧力8気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度(C)とを比較した場合に、
曲げ強度(A)が曲げ強度(B)と曲げ強度(C)との両方の前記曲げ強度よりも高いとの条件。
【請求項2】
前記曲げ強度の標準偏差は、下記の条件2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の構造用単板積層材。
(条件2)
前記積層材をホットプレスにより温度120℃度、圧力12気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度の標準偏差(a)に対して、
前記高比重樹種の単板だけによる単板積層材であってホットプレスにより温度120℃度、圧力14気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度の標準偏差(b)と、
前記低比重樹種の単板だけによる単板積層材であってホットプレスにより温度110℃度、圧力8気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度の標準偏差(c)とを比較した場合に、
曲げ強度の標準偏差(a)が曲げ強度の標準偏差(b)と曲げ強度の標準偏差(c)との両方の前記標準偏差よりも低いとの条件。
【請求項3】
前記接着剤は熱硬化性の水溶性接着剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造用単板積層材。
【請求項4】
前記中間層には前記高比重樹種の単板と前記低比重樹種の単板とが交互に配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の構造用単板積層材。
【請求項5】
前記高比重樹種の単板はユーカリの単板であり、前記低比重樹種の単板はスギ又はポプラの単板であり、
前記接着剤は熱硬化性フェノール系接着剤であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の構造用単板積層材。
【請求項6】
薄板材である単板同士を接着して複数枚上下に積層する請求項1~5の何れかに記載の構造用単板積層材の製造方法において、
複数の前記単板を上下に接着剤を介して積層して単板積層材を得る積層工程と、前記単板積層材に対して上下方向の圧力を加えて圧密積層材を得る圧密工程とを備え、
前記単板積層材に用いる前記複数の単板として、気乾比重0.5以上の高比重樹種の単板と、気乾比重0.5未満の低比重樹種の単板とを用い、
前記積層工程は、表面層として前記低比重樹種の単板のみを複数枚積層し、上下の前記表面層の間の中間層として前記高比重樹種の単板と前記低比重樹種の単板とを混在して積層して前記単板積層材を作成するものであり、
前記単板同士の接着には熱硬化性フェノール系接着剤水溶液を用い、前記圧密工程は加圧と加熱を行うホットプレスによって圧密を行うことを特徴とする構造用単板積層材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造用単板積層材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積層複合木質材として本願出願人によって特許文献1や2の発明が提案されている。これらの発明は、複数種類の樹種の木質材を使用することにより、所望の曲げ強度などの諸特性を備えた積層複合木質材およびその製造方法を提供することを目的とするものであったが、圧密による加工を施すことを前提とする提案ではなかった。
【0003】
他方、戦後大量に植林された国産針葉樹は地域環境の観点からも間伐・主伐を必要としているが、スギは気乾比重0.36~0.45と軽いために強度やヤング係数が低いという物性と節が多いなどの表面性の問題で充分な需要開発が進んでいない。しかも、材質のバラツキが大きく、均一な乾燥が困難、水分通導性が悪いという問題点もあるため、建築物構造用材としての利用が少なく、技術的な用途開発が待たれている。
【0004】
ポプラは中国の華東地区などで大量に植林されて植樹後約10年で収穫伐採が可能な早生樹であるが、気乾比重が約0.4前後と軽くて弱いうえに、材質のバラツキが大きいために建築構造用の木材としては使われていない。
ユーカリは気乾比重約0.55で、中国の華南地区などに大量に植林されて資源量が豊富であるが、その辺材は、強度は高いが裂けやすいという問題があり、その未成熟心材の比重は辺材と変わらないが脆くて弱いという問題があるため有効な利用法が少ないという課題がある。
【0005】
木材の強度を高くする方法として、圧縮して比重を高くする圧密という方法がある。一例として圧密した単板を接着して高い強度を出すことが行われているが、単板1枚毎の圧密には手間がかかり大量生産できないという問題点がある。従来の圧密木材は化粧材としての表面性(平滑性・摩耗性等)を向上させる目的で様々な試みが行われてきたが、建築用構造用木材の強度向上用で大量生産のための圧密方法はほとんど実施されておらず、特許文献3に示す提案がなされているに止まる。
特に低比重樹種を製材品の様な角材で圧密した場合には、表層部分が多く圧密され、中芯部分が不十分で、圧密状況が不十分なままに仕上がってしまうという問題点があり、結果として性能のバラツキが大きなものになるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許4012881号公報
【文献】特許第6407134号公報
【文献】特開2011-143698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明は、構造材として用いることができる新たな構成による構造用単板積層材と、大量生産が可能な構造用単板積層材の製造方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、薄板材である単板が接着剤を介して複数枚上下に積層された構造用単板積層材を提供するものである。前記複数の単板には、気乾比重0.5以上の高比重樹種の単板と、気乾比重0.5未満の低比重樹種の単板とを用いる。この構造用単板積層材は、その表面側に配置された上下の表面層と、上下の前記表面層の間に配置された中間層とを備えるものであり、これらの上下の前記表面層と前記中間層とを含む積層材は厚み方向に圧縮された圧密の積層材(LVL)から構成される。
本発明においては、前記表面層には前記低比重樹種の単板のみが複数枚配置される。前記中間層には前記高比重樹種の単板と前記低比重樹種の単板とが混在して配置され、且つ、前記中間層における前記表面層の単板に接する単板は前記高比重樹種の単板によって構成されるものである。
本発明においては、前記表面層には2枚又は3の前記低比重樹種の単板のみを配置して実施することが適当である。
また本発明の実施においては、前記表面層には前記低比重樹種の単板のみが配置され、前記中間層には前記高比重樹種の単板と前記低比重樹種の単板とが混在して配置され、圧密済みのこれらの単板は、前記低比重樹種の単板の平均厚みが前記高比重樹種の単板の平均厚みと等しいかそれ以上であるものとすることができる。
本発明においては、前記中間層は、前記高比重樹種の単板と前記低比重樹種の単板とが交互に配置されているものとすることができる。
前記接着は、水溶性接着剤、特に熱硬化性フェノール系接着剤水溶液を用いて、ホットプレスによって圧密を行うことが好ましい。
本発明の構造用単板積層材は、その曲げ強度が下記の条件1を満たすものである。
(条件1)
前記積層材をホットプレスにより温度120℃度、圧力12気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度(A)に対して、
前記高比重樹種の単板だけによる単板積層材であってホットプレスにより温度120℃度、圧力14気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度(B)と、
前記低比重樹種の単板だけによる単板積層材であってホットプレスにより温度110℃度、圧力8気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度(C)とを比較した場合に、
曲げ強度(A)が曲げ強度(B)と曲げ強度(C)との両方の前記曲げ強度よりも高いとの条件。
また本発明の構造用単板積層材の曲げ強度の標準偏差は、下記の条件2を満たすことが望ましい。
(条件2)
前記積層材をホットプレスにより温度120℃度、圧力12気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度の標準偏差(a)に対して、
前記高比重樹種の単板だけによる単板積層材であってホットプレスにより温度120℃度、圧力14気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度の標準偏差(b)と、
前記低比重樹種の単板だけによる単板積層材であってホットプレスにより温度110℃度、圧力8気圧の条件で加熱と加圧を加えたものの曲げ強度の標準偏差(c)とを比較した場合に、
曲げ強度の標準偏差(a)が曲げ強度の標準偏差(b)と曲げ強度の標準偏差(c)との両方の前記標準偏差よりも低いとの条件。
【0009】
前記高比重樹種の単板には、気乾比重0.5以上の比較的高密な種々の樹木を用いることができるが、例えば早成樹の木材としてユーカリの単板を採用することができる。前記低比重樹種の単板には、気乾比重0.5未満の比較的低密な種々の樹木を用いることができるが、例えば日本の樹木としてスギの単板を採用することができ、又は中国産の樹木としてポプラの単板を採用することができるものでこれらを混在させても構わない。
また本発明は、薄板材である単板同士を接着して複数枚上下に積層する構造用単板積層材の製造方法を提供するものである。本発明の製造方法は、複数の前記単板を上下に接着剤を介して積層して単板積層材を得る積層工程と、前記単板積層材に対して上下方向の圧力を加えて圧密積層材を得る圧密工程とを備える。前記単板積層材に用いる前記複数の単板としては、気乾比重0.5以上の高比重樹種の単板と、気乾比重0.5未満の低比重樹種の単板とを用いる。前記積層工程は、表面層として前記低比重樹種の単板のみを積層し、上下の前記表面層の間の中間層として前記高比重樹種の単板と前記低比重樹種の単板とを混在して積層して前記単板積層材を作成するものである。前記単板同士の接着には熱硬化性フェノール系接着剤水溶液を用いて、前記圧密工程は加圧と加熱を行うホットプレスによって圧密を行うことが効果的である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、構造材として用いることができる新たな構成による構造用単板積層材と、大量生産が可能な構造用単板積層材の製造方法を提供することができたものである。
本発明の実施に際しては、高比重樹種の単板にはユーカリの単板を採用し、低比重樹種の単板にはスギの単板やポプラの単板を採用することができる。したがって、ヒノキ・カラマツ・レッドウッド・ダグラスファー等の構造用木質材料の原料が不足する我が国の木材資源の現状下、資源が豊富にあるスギやポプラやユーカリで構造用木質材料を生産することができる。
また、高比重樹種のユーカリ単板と低比重樹種のスギ単板又はポプラ単板とを交互に積層することで、部分的な圧密の偏りの可能性が減少して、比較的均一な圧密効果を得ることが可能である。これによって得られた構造用単板積層材の品質のばらつきを抑制して標準偏差を小さくすることができる。
【0011】
圧密に際しては、高比重樹種の単板が低比重樹種の単板に対して、圧力を比較的均一に受けるとともに伝達するため低比重樹種の単板の圧密化を均一になすことができる。特に表面層においては複数枚の低比重樹種の単板を配置することによって、これに接する中間層の高比重樹種の単板が圧密加工時の圧力を比較的均一に受けることができる。なお、表面層においては複数枚の低比重樹種の単板の枚数をあまりにも多くすると均一な圧密が困難となるため2枚または3枚で実施することが好ましい。
また、水溶性接着剤中の水分、特に熱硬化性フェノール系接着剤水溶液中の水分が圧密の効果を誘発するために、低比重樹種のスギ・ポプラ単板の圧密効果が接着剤に近い部分に集中して繊維方向には線状に、且つ積層方向には間欠的に現れることで、比較的安定した圧密効果を得ることができる。
本発明の製造方法においては、レイアップに際して異樹種単板を複合するだけで、通常の単板積層材の生産工程内で熱圧条件を変更するだけで生産が可能である。
この生産方法では、接着工程と圧密工程を加圧圧力と過熱温度調整することで一度で実施できて生産性が高いという特徴がある。
また圧密効果の安定を図るために、加圧と加熱を行うホットプレス時に130℃~150℃に加熱することで、寸法安定効果を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る構造用単板積層材の層構造を示すもので、(A)は圧密前の単板積層材の層構造の説明図、(B)は圧密後の構造用単板積層材の層構造の説明図である。
図2】同構造用単板積層材の圧密の概念説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお以下の説明では、圧密前の積層材を単板積層材1と言い、圧密後の積層材を構造用単板積層材2と言う。
【0014】
(概要)
単板積層材1は薄板材である単板が接着剤を介して複数枚上下に積層された単板積層材であり、構造用単板積層材2は単板積層材1に対して圧密加工を施したものである。
これらの単板には、気乾比重0.5未満の低比重樹種の単板11と、気乾比重0.5以上の高比重樹種の単板12とが用いられている。また層構造としては、表面側に配置された上下の表面層21と、上下の表面層21の間に配置された中間層22とを備えるものである。
【0015】
(低比重樹種の単板11について)
低比重樹種の単板11は、気乾比重0.5未満の樹種から得られた単板であり、例えば、トドマツ(気乾比重0.36~0.40)、エゾマツ(気乾比重0.40~0.43)などのマツ目マツ科及びマツ目ヒノキ科の樹種の単板を示すことができるが、特に、国産のスギ(気乾比重0.36~0.45)の単板又は中国華東地区産のポプラ(気乾比重約0.4前後)を用いることが好ましい。
【0016】
スギ(ヒノキ科スギ亜科)は、戦後大量に植林された国産針葉樹は地域環境の観点からも間伐・主伐を必要としておりその有効利用の促進が求められているが、比較的軽いために強度やヤング係数が低いという物性と節が多いなどの表面性の問題で充分な需要開発が進んでいない。しかも、材質のバラツキが大きく、均一な乾燥が困難、水分通導性が悪いという問題点もあるため、建築物構造用材としての利用が少ないという課題があるが、本発明の単板として用いることにより、上記の問題点を克服できる可能性が高く、その利用促進を図ることができる。
【0017】
ポプラ(キントラノオ目ヤナギ科)は、中国の華東地区などで大量に植林されて植樹後約10年で収穫伐採が可能な早生樹であるが、気乾比重が約0.4前後と軽くて弱いうえに、材質のバラツキが大きいために建築構造用の木材としては使われていないが、本発明の単板として用いることにより、その利用促進を図ることができる。
これらの低比重樹種の単板11は、圧密前の状態でスギの低比重樹種の単板11では約2mm厚、ポプラの低比重樹種の単板11では約3mm厚など、2~3mmの厚みに整えられる。
【0018】
(高比重樹種の単板12について)
高比重樹種の単板12は、気乾比重0.5以上の樹種から得られた単板であり、例えば、ニレ(気乾比重0.59)センダン(気乾比重0.55~0.65)シラカバ(気乾比重0.57~0.63)などのブナ目カバノキ科、バラ目ニレ科及びムクロジ目センダン科の樹種を示すこともできるが、ユーカリ(気乾比重約0.55)を用いることが好ましい。
ユーカリ(フトモモ科)は、中国の華南地区などに大量に植林されて資源量が豊富であるという利点がある。ところが、その辺材は、強度は高いが裂けやすいという問題があり、その未成熟心材の比重は辺材と変わらないが脆くて弱いという問題があるため有効な利用法が少ないという課題があるが、本発明の単板として用いることにより、その利用促進を図ることができる。
高比重樹種の単板12は、圧密前の状態でユーカリの単板では約1.7mm厚など、低比重樹種の単板11の厚みよりも薄い厚みに整えられる。
【0019】
(表面層21の層構造)
層構造としては、表面側に配置された上下の表面層21と、上下の表面層21の間に配置された中間層22とを備えるものである。
表面層21は、低比重樹種の単板11のみを用いたもので、圧密の効果が大きくなるように複数枚を積層する。
表面層21には低比重樹種の単板11を複数枚積層することができるが、低比重樹種の単板11の枚数をあまりにも多くすると均一な圧密が困難となるため多くとも3枚、より好ましくは2枚で実施することが適当である。
木材の物理的性質の特徴として粘弾性(弾性と塑性が複合したもの)があるが、木材に外側から圧力を加えた場合には外側から内側へ向かうに従いその応力は小さくなるため、外側のほうが強い圧縮力を受けることで圧密が大きくなる。従って、圧密効果を大きくするためには圧密され易い低比重樹種の単板11を外側に配置したほうが効果的である。他方、高比重で比較的剛性が高いが粘弾性も少しあるユーカリなどの高比重樹種の単板12を表層部に配置すると、圧力の効果が小さくなり、剛性が高いため圧縮に対する抵抗も大きくなる結果、圧密量が小さくなってしまう。
【0020】
(中間層22の層構造)
中間層22は、低比重樹種の単板11と表面層21とが混在する層であり、これらが1枚ずつ交互に配置されている。なお1枚ずつではなく、2枚ずつ交互に配置したり、低比重樹種の単板11と表面層21との枚数の比率を変化させたりして実施することもできるが、圧密の圧縮効果を均一かつ有効に作用させるためには、1枚ずつ交互に配置することが好ましい。中間層22における最も上下に配置された単板(言い換えれば表面層21の単板に接着剤を介して接する単板)は高比重樹種の単板21によって構成され、これによって圧密時の表面層21の単板の圧縮をより均等になすことができる。
【0021】
(積層用の接着剤13)
積層用の接着剤13には、単板積層材製造用の種々の接着剤を用いて実施することはできるが、耐水性の熱硬化性フェノール系接着剤水溶液を用いて接着することが好ましい。水溶性の接着剤を用いることによって、その中の水分と圧密時のホットプレスの高圧と高熱で単板が圧密される。
熱圧によって接着剤層から単板表層部の細胞内腔に浸入した熱硬化性フェノール系接着剤水溶液などの接着成分は、加熱によって樹脂が固まり固形化することで、接着剤層と単板表層部が固形化して固まる。これによって、接着層毎に固い層ができ、硬い層と柔らかい層が交互にできることで木質材料の性質が安定する。
【0022】
(積層工程)
積層工程は上記の低比重樹種の単板11、高比重樹種の単板12、接着剤13を用いてレイアップし、LVLの製造の定法に従って単板積層材1を製造する工程である。そのため通常のLVLの生産工程を大きく変更する必要はなく、次に示す圧密工程として、LVLの製造工程においてもなされる熱圧の条件を変更するだけで、構造用単板積層材2の生産が可能である。
【0023】
(圧密工程)
圧密工程は、積層工程で得られた単板積層材1に対して、所定の条件で単板積層材1の厚み方向に圧力を加える工程であり、必要に応じて加熱をなすこともできる。
熱圧圧力は10気圧~15気圧(1.01325~1.519875mPa)が適当であり、加熱温度は120℃~150℃が好ましい。熱圧時間は加熱方法と製品厚さによって異なるので、目的に合わせて設定する。熱処理による寸法安定化が必要な場合は、130℃~150℃に設定することも可能である。
この圧密によって、図2に示すように、それぞれの単板は厚み方向に圧縮されるが、低比重樹種の単板11は高比重樹種の単板12に比べて密度が小さいため、圧縮率が大きくなる傾向を示す。また熱硬化性フェノール系接着剤水溶液を用いることによって、その水分が上下の単板の木質層に浸透した状態で高圧高温が加えられるため、その部分がより大きく圧縮される。圧密済みの積層複合木質材2にあっては、低比重樹種の単板11の平均厚みが高比重樹種の単板12の平均厚みと略等しいかそれ以上であることが適当であるが、高比重樹種の単板12の平均厚みの方が大きくても構わない。
また、密度が高く硬質の高比重樹種の単板12が存在する結果、低比重樹種の単板11はより均等に圧力を受けることができ、全体として均等な圧密がなされることになる。
なお、上記単板積層厚さ及び熱圧条件は仕上り寸法・予定曲げ強度・予定曲げヤング係数を鑑みて設定することができるものであり、種々変更して実施することができる。
【0024】
(製造例)
以下、より具体的な生産方法の一例を示す。
(1)低比重樹種の単板11として、原料のスギ原木から3mm×1300mm×1300mmの単板を採取して、未成熟心材単板以外を採用する。又は原料のポプラ原木から2.0mm×1300mm×840mmの単板を採取し、未成熟心材以外を採用する。
高比重樹種の単板12として、ユーカリ単板を中国華南地区から1.7mm×1300mm×630mmの単板を調達採用する。
(2)接着剤13として、熱硬化性フェノール系接着剤水溶液を所定の量をスプレッダーで塗布する。圧密の効果が大きくなるように、表面層21には2又は3層の低比重樹種の単板11を、中間層22には低比重樹種の単板11と高比重樹種の単板12を交互に積層するようにレイアップする。
(3)通常のポプラLVLの生産に当たっては乾燥目減り・圧密縮小・仕上げ研磨の分を見て、仕上り厚さ寸法の10%多くの単板厚さを積層するが、本発明の実施に際しては15%~20%多くの厚さ単板を積層する。単板長さより長い単板積層材の生産に際しては、単板木口面をスカーフジョイントして繋ぐが、レイアップに際してはジョイント部分は構造用単板積層材の日本農林規格に従い、隣接ジョイント部分から厚いほうの単板厚さの30倍以上離すようにする。
(4)圧密工程
ホットプレスによって圧密を行う。
熱圧圧力:10気圧~15気圧(1.01325~1.519875mPa)
加熱温度:120℃~150℃(130℃~150℃に設定することもできる)
熱圧時間:加熱方法と製品厚さによって異なるので、目的に合わせて設定する。
(5)仕上り寸法に合わせて切断・サンダー加工をしてから、検品・梱包を行う。製品の品質検査は生産ロットから20本を抜き取り、曲げ強度、曲げヤング係数、圧縮強度を測定して、平均値(AVE)と標準偏差(c)を算出して、AVE-3σ(シグマ=標準偏差)が規格値以上のロットを合格とする。
【実施例
【0025】
以下本発明の実施例を示すが本発明はこの実施例に限定して理解されるべきではない。
(実施例および比較例)
積層複合木質材2の試料寸法を39mm×20mm×550mmとして実施例1と比較例1、2について製造例に従ってそれぞれ8個を作成し、その結果を評価した。
実施例1の構造用単板積層材2には、単板積層材1の低比重樹種の単板11として2.0mm厚のポプラ単板を用い、高比重樹種の単板12として1.7mm厚のユーカリ単板を用いた。表面層21には3枚の低比重樹種の単板11を配置し、中間層22には高比重樹種の単板12と低比重樹種の単板11を交互に積層した。接着剤13には、耐水性の熱硬化性フェノール系接着剤水溶液を用いた。
比較例1の構造用単板積層材2には、単板積層材1の低比重樹種の単板11として2.0mm厚のポプラ単板のみを用いた。
比較例2の構造用単板積層材2には、単板積層材1の高比重樹種の単板12として1.7mm厚のユーカリ単板のみを用いた。
【0026】
(圧密条件)
圧密はホットプレスで実施した。
比較例1の圧密条件は、温度110℃度、圧力8気圧とした。
比較例2の圧密条件は、温度120℃度、圧力14気圧とした。
実施例1の圧密条件は、温度120℃度、圧力12気圧とした。
【0027】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。
【表1】
・試料数は実施例、比較例各8個
・曲げ強度の単位:N/mm2
・曲げヤングの単位:1000N/mm2
・試験は兵庫県立森林林業技術センターで実施
【0028】
(評価)
(1)実施例及び比較例の全てにおいて、ホットプレスでの圧密による接着剤重量分増加の影響で、圧密前の単板より比重が高くなっている。
(2)比較例1は部分的な材質のバラツキが大きいが、曲げ強度は大きく、曲げヤングが低いという性質で、スギと同じような性質を持っていることが確認された。
(3)比較例1は圧密効果もあって比較例2に近い強度が出ているが、曲げ強度の標準偏差が8.3と大きかった。これは、素材の材質のバラツキが大きいために構造用単板積層材2においてもバラツキが大きくなったと考えられる。
(4)比較例2では、素材の比重と比較して大きな圧密効果は表れていないが、素材の剛性が高い性質なので、曲げヤング係数は比較例1よりも高かった。
(5)実施例1は、ポプラより熱圧条件が高温・高圧になっている影響で主にポプラの圧密効果が大きく、曲げ強度、曲げヤング係数の数値が高いうえに、標準偏差が小さくなり、材料としての性能改善効果が大きいことが確認された。
(6)以上、異樹種複合単板積層材の圧密効果に関する総合的な評価としては、低比重木材の圧密効果が大きく、高比重木材の処理後と同等以上の比重に圧密されて、曲げ強度と曲げヤング係数が高くなっているうえに、標準偏差が小さくなっている(バラツキが小さくなっている、即ち、性能の最低数値が高くなっている)ことが示唆されていると言える。
【符号の説明】
【0029】
1…単板積層材
2…構造用単板積層材
11…低比重樹種の単板
12…高比重樹種の単板
13…接着剤
21…表面層
22…中間層
図1
図2