(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】樹脂モールド装置
(51)【国際特許分類】
B29C 43/58 20060101AFI20230512BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/18
(21)【出願番号】P 2020079456
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 裕史
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320222(JP,A)
【文献】特開2002-100645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/58
B29C 43/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアの内側に電子部品が搭載されたワークの樹脂モールドを行うモールド金型と、
前記ワークの搬送を行うローダと、を備え、
前記ローダは、前記ワークの上面における外縁部に接離する枠体と、前記枠体を上下移動させる移動装置と、前記ワークの下面における外縁部に接する
複数のチャック爪と、を有し、
前記枠体は、前記ワークの上面における前記外縁部の全周に亘って設けられる当接部を有
し、
前記当接部は、平面視において連続する環状形状に形成されており、
前記チャック爪は、一辺に複数の前記チャック爪が後端側において一体に構成され、前記ワークの平面視投影面内に入る位置で且つ前記ワークの側方外周部に当接しないように所定隙間で近接する位置と、前記ワークの平面視投影面内から外れる位置と、に移動すること
を特徴とする樹脂モールド装置。
【請求項2】
前記移動装置の移動の制御を行う制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記枠体が前記ワークに当接する際の押圧力および押圧速度の少なくとも一方の制御を行うこと
を特徴とする請求項1記載の樹脂モールド装置。
【請求項3】
前記ワークのプリヒートを行うプリヒートステージをさらに備え、
前記制御部は、前記ワークを前記ローダが所定位置から前記プリヒートステージ上へ移動させる間、前記枠体を前記ワークに当接させる制御を行うこと
を特徴とする請求項2記載の樹脂モールド装置。
【請求項4】
前記ワーク上にモールド樹脂を供給するディスペンサをさらに備え、
前記制御部は、前記ディスペンサによって前記モールド樹脂が供給された状態の前記ワークを前記ローダが所定位置か
らプリヒートステージ上へ移動させる間、前記枠体と前記チャック爪とで前記ワークを挟持させる制御を行うこと
を特徴とする請求項2記載の樹脂モールド装置。
【請求項5】
前記チャック爪は、前記ワークが前記モールド金型に載置された状態および前記プリヒートステージに載置された状態の両方の場合において前記枠体が前記ワークを押圧する際に、前記ワークの平面視投影面内に入る位置から、前記ワークの平面視投影面内から外れる位置へ移動して退避可能に構成されていること
を特徴とする請求項
3記載の樹脂モールド装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ワークが前記モールド金型に載置された状態で、前記枠体が前記ワークを押圧する際の押圧力および押圧速度の少なくとも一方の制御を行うこと
を特徴とする請求項
5記載の樹脂モールド装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ワークが前記プリヒートステージに載置された状態で、前記枠体が前記ワークを押圧する際の押圧力および押圧速度の少なくとも一方の制御を行うこと
を特徴とする請求項
5記載の樹脂モールド装置。
【請求項8】
前記枠体は、少なくとも前記当接部がESD材料を用いて形成されていること
を特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載の樹脂モールド装置。
【請求項9】
前記移動装置は、前記枠体の上下移動のガイドを行うガイドポストおよび上下移動の駆動を行うシリンダを有すること
を特徴とする請求項1~
8のいずれか一項に記載の樹脂モールド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを樹脂でモールドする樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製造に関し、キャリアに電子部品が搭載されたワークをモールド樹脂によりモールドして成形品に加工する樹脂モールド装置が広く用いられている。そのような樹脂モールド装置の例として、圧縮成形装置やトランスファモールド装置が知られている。
【0003】
先行技術の一例として、ワーク(リードフレーム)を樹脂モールドするトランスファモールド装置が特許文献1(特開平10-235674号公報)に開示されている。樹脂モールド装置においては、所定の温度まで昇温されたモールド金型にワークを投入すると、昇温されたモールド金型から当該ワークに熱が奪われて、ワークの載置部やその周囲の温度が低下する現象が生じる。その結果、熱量不足に起因するモールド樹脂の成形不良(未充填、ボイド等)が発生し易くなる問題が生じる。このような問題の解消を図るため、特許文献1記載の樹脂モールド装置では、モールド金型に投入される前のワークに対してプリヒート(予熱)を行うプリヒート部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ワークを構成するキャリアとして、生産性や成形品質の向上を目的として従来よりも薄型で大型のものが用いられるケースが増えている。そのため、外周を保持して搬送するとき等においてワークに撓み(「スマイルカーブ」と称される場合がある)が生じ易く、この撓みに起因して問題が生じる場合があった。
【0006】
例えば、撓みが生じた状態のワークをプリヒート部(プリヒートステージ)上に載置しプリヒートを行う場合、ステージに接する領域と接しない領域とが生じて不均一な加熱状態となるため、モールド樹脂の成形不良が発生する原因となる。また、プリヒートステージに接しない領域が生じることによって加熱効率が悪くなるため、加熱時間が長くなってしまう原因となる。また、薄く脆性なキャリアを急激にプリヒートステージに押し付けた場合には破損するおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、プリヒート時等においてワークの撓みを矯正することができ、生産効率の向上と成形不良の発生防止を図ることが可能な樹脂モールド装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本発明に係る樹脂モールド装置は、キャリアの内側に電子部品が搭載されたワークの樹脂モールドを行うモールド金型と、前記ワークの搬送を行うローダと、を備え、前記ローダは、前記ワークの上面における外縁部に接離する枠体と、前記枠体を上下移動させる移動装置と、前記ワークの下面における外縁部に接する複数のチャック爪と、を有し、前記枠体は、前記ワークの上面における前記外縁部の全周に亘って設けられる当接部を有し、前記当接部は、平面視において連続する環状形状に形成されており、前記チャック爪は、一辺に複数の前記チャック爪が後端側において一体に構成され、前記ワークの平面視投影面内に入る位置で且つ前記ワークの側方外周部に当接しないように所定隙間で近接する位置と、前記ワークの平面視投影面内から外れる位置と、に移動することを要件とする。
【0010】
これによれば、ワークの撓みを矯正することができる。従って、プリヒートする際にワークの加熱状態を均一化することができ、成形不良の発生を防止することができる。また、ワークの加熱効率を向上させることができ、加熱時間の短縮化すなわち生産効率の向上を図ることができる。
【0011】
また、前記移動装置の移動の制御を行う制御部をさらに備え、前記制御部は、前記枠体が前記ワークに当接する際の押圧力および押圧速度の少なくとも一方の制御を行うことが好ましい。押圧力の最適制御を行うことにより、ワークの破損(割損)を防止しつつ、撓みの矯正を行うことができる。一方、押圧速度の最適制御を行うことにより、工程時間の短縮化による製造の効率化を図ることができる。
【0012】
また、前記ワークのプリヒートを行うプリヒートステージをさらに備え、前記制御部は、前記ワークを前記ローダが所定位置から前記プリヒートステージ上へ移動させる間、前記枠体を前記ワークに当接させる制御を行うことが好ましい。これによれば、ローダを用いてワークを搬送する際に、搬送風をワーク上に進入させない作用が得られ、モールド樹脂の舞い上がりの防止を図ることができる。
【0013】
また、前記ワーク上にモールド樹脂を供給するディスペンサをさらに備え、前記制御部は、前記ディスペンサによって前記モールド樹脂が供給された状態の前記ワークを前記ローダが所定位置からプリヒートステージ上へ移動させる間、前記枠体と前記チャック爪とで前記ワークを挟持させる制御を行うことが好ましい。これによれば、従来よりも薄型で大型のワークが用いられる場合であっても、外縁部が挟持されて搬送されるため、当該ワークに撓みが生じることを防止できる。
【0014】
また、前記チャック爪は、前記ワークが前記モールド金型に載置された状態および前記プリヒートステージに載置された状態の両方の場合において前記枠体が前記ワークを押圧する際に、前記ワークの平面視投影面内に入る位置から、前記ワークの平面視投影面内から外れる位置へ移動して退避可能に構成されていることが好ましい。これによれば、ワークをプリヒートステージ及びモールド金型に当接させて載置することが可能となる。
【0015】
また、前記制御部は、前記ワークが前記モールド金型に載置された状態で、前記枠体が前記ワークを押圧する際の押圧力および押圧速度の少なくとも一方の制御を行うことが好ましい。また、前記制御部は、前記ワークが前記プリヒートステージに載置された状態で、前記枠体が前記ワークを押圧する際の押圧力および押圧速度の少なくとも一方の制御を行うことが好ましい。押圧力の最適制御を行うことにより、ワークの破損(割損)を防止しつつ、撓みの矯正を行うことができる。一方、押圧速度の最適制御を行うことにより、工程時間の短縮化による製造の効率化を図ることができる。
【0016】
また、前記枠体は、少なくとも前記当接部がESD材料を用いて形成されていることが好ましい。これによれば、枠体における静電気の発生を防止して、ワーク上に載置されたモールド樹脂が枠体に吸着してしまうことの防止を図ることができる。
【0017】
また、前記移動装置は、前記枠体の上下移動のガイドを行うガイドポスト及び上下移動の駆動を行うシリンダを有することが好ましい。これによれば、枠体の上下移動を可能としつつ、シリンダの制御によって枠体の押圧力や押圧速度等を調整することができる。
【0018】
一例として、前記キャリアは、厚さ0.2[mm]~3[mm]で、最大幅400[mm]~700[mm]の形状に形成されている。このように従来よりも薄型で大型のキャリアを備えるワークに対して、本発明は特に顕著な効果を奏するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プリヒート時等においてワークの撓みを矯正することができる。従って、生産効率の向上と成形不良の発生防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る樹脂モールド装置の例を示す装置構成図である。
【
図2】
図1の樹脂モールド装置のローダ及びプリヒータの例を示す概略図(正面断面図)である。
【
図4】
図1の樹脂モールド装置の枠体の例を示す概略図(底面図)である。
【
図5】
図1の樹脂モールド装置の枠体作動制御における制御方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂モールド装置1の構成例を示す概略図である。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0022】
本実施形態に係る樹脂モールド装置1は、上型及び下型を備えるモールド金型12を用いて、ワークWの樹脂モールド成形を行う装置である。以下、樹脂モールド装置1として、上型にキャビティを有する圧縮成形装置の場合を例に挙げて説明する。
【0023】
先ず、成形対象であるワークWの一例として、半導体チップ等の電子部品Wbがキャリアプレート等のキャリアWa上に保持されたものが用いられる。主要な実施例として、キャリアWaには、縦横の各辺が500[mm]~600[mm]程度の矩形状のものが用いられる。キャリアWaには金属製(銅合金、ステンレス合金等)およびガラス製等の適宜の材質が用いられるが、自重で撓んでしまう程度に薄いものが用いられる。このようなキャリアWa上に、接着剤を用いて複数の電子部品Wbが行列(マトリックス)状(ここでは、規則的に整列した状態に限定されるものではなく、行方向にも列方向にも複数並んだ状態を広く含む構成をいう)に貼り付けられてワークWが構成される。なお、ワークWは上記の材質や構成に限定されるものではない。例えば、キャリアWaは円形状であってもよい。また、キャリアWaのサイズは最大幅(一辺もしくは直径)が400[mm]~700[mm]程度で、厚さが0.2[mm]~3[mm]程度の構成であってもよい。本実施形態においては、キャリアWa及び電子部品Wbとして、キャリアプレート及び半導体チップを例に挙げているが、その他にも様々な構成を採用し得る。
【0024】
一方、モールド樹脂Rは、例えば、熱硬化性樹脂(例えば、フィラー含有のエポキシ系樹脂)であり、その状態としては顆粒状、粉状、液状、ゲル状、シート状、場合によってはミニタブレットに代表される固形状であってもよい。
【0025】
続いて、本実施形態に係る樹脂モールド装置1の概要について説明する。
図1に示すように、樹脂モールド装置1は、ワーク供給ユニットA、樹脂供給ユニットB、ワーク受渡しユニットC、プレスユニットD、冷却ユニットEが各々直列に連結されてなる。ワークWの搬送は、ワーク搬送部2及びローダ4等によって行われる(詳細は後述)。なお、各ユニットは搬送ロボットを中央に取り囲むように配置した構成としてもよい。以下、矩形状のワークWの場合を例に挙げて説明する。
【0026】
ワーク供給ユニットAには、前工程からワークWを受取る位置となる受取り位置P(第1位置)が設けられている。また、ワーク受渡しユニットCには、ワークWをローダ4に受渡す位置となる受渡し位置Q(第2位置)が設けられている。ここで、ワーク搬送部2は、ワーク供給ユニットA、樹脂供給ユニットB、ワーク受渡しユニットC間に設けられたレール部3に沿って、搬送部本体2aが受取り位置Pと受渡し位置Qとの間を往復動するように構成されている(
図1実線矢印H参照)。一例として、搬送部本体2aは、例えば駆動ベルト(不図示)に連結されて往復動するようになっている。また、搬送部本体2a上には、ワークWよりも外形が大きく厚さが厚い(例えば10[mm]程度)矩形状の板面(格子状等でもよい)を有するホルダープレート5が設けられている。このようなワーク搬送部2の構成によって、ワークWはホルダープレート5に対して位置決めされて載置された状態で搬送されるようになっている。従って、従来よりも薄型で大型のワークWが用いられる場合であっても、ホルダープレート5に載置された状態で搬送されるため、当該ワークWに撓みが生じることを防止できる。
【0027】
次に、樹脂供給ユニットBには、モールド樹脂R(一例として、顆粒状樹脂)を供給するディスペンサ6及び樹脂供給ステージ7が設けられている。ワークWは、ホルダープレート5に載置された状態のまま、Y-Z方向に移動可能なピックアンドプレイス機構(不図示)を用いて、搬送部本体2aから樹脂供給ステージ7へ載せ替えられる。この樹脂供給ステージ7に載置された状態で、ディスペンサ6よりモールド樹脂RがワークW上に供給される。ここで、ディスペンサ6は、ワークW上でX-Y方向に走査可能に設けられている。また、樹脂供給ステージ7には電子天秤(不図示)が設けられており、ワークW上に供給されるモールド樹脂Rが適量となるように計量される。
【0028】
次に、ワーク受渡しユニットCには、モールド樹脂Rが供給された状態のワークWを、ホルダープレート5からローダ4に受渡す位置となる受渡し位置Qが設けられている。ローダ4には、ワークWを保持する機構(詳細は後述する)が設けられている。このようなローダ4の構成によって、ワークWが受渡し位置Qで保持されて、ワークWの下面の内側を支持しない状態でプレスユニットDのプリヒート部9へ搬送される。なお、ローダ4のX-Y方向の移動範囲を
図1中の破線矢印G1、G2で示す。
【0029】
また、ワーク受渡しユニットCには、ワークWの所定面に付着した樹脂粉や異物等の塵埃を除去するクリーニング装置8が設けられている。本実施形態に係るクリーニング装置8は、ローダ4によって保持されたワークWが受渡し位置QからプレスユニットD(プリヒート部9)へ搬送される際に、その下面(ここでは、電子部品Wbの非搭載面)をクリーニングするように構成されている。なお、変形例として
図1中における破線で示すように、クリーニング装置8は複数位置に設ける構成としてもよい。
【0030】
次に、プレスユニットDには、プリヒート部9及びプレス部11が設けられている。プリヒート部9には、プリヒータ10が設けられている。プリヒータ10は、モールド樹脂Rが供給されたワークWをプリヒートステージ10a上に載置した状態で、所定温度(一例として、100[℃]程度)までプリヒート(予熱)するものである。このプリヒート部9(プリヒータ10)によって所定温度までプリヒートされたワークWは、ローダ4によって保持されてプレス部11(モールド金型12)に搬入される。
【0031】
プリヒート部9には、ワークWの回転方向の位置ずれの補正を行うための一対のX方向基準ブロック10b及びY方向基準ブロック10cが設けられている。これによれば、プリヒートステージ10a上で図示しないプッシャー等によりワークWを一対のX方向基準ブロック10b及びY方向基準ブロック10cに対して各々押し当てることで、ワークWの回転方向の位置ずれの補正を行うことができる。
【0032】
ここで、ローダ4には、ワークWのコーナー部の座標を読み取る撮像カメラ4aが設けられている。これによれば、ローダ4によってワークWを保持する位置の補正を行うことができる。この補正を行う理由として、いずれのワークWにも±1[mm]程度の寸法公差が存在するうえに、プリヒートステージ10a上でワークWが所定温度までプリヒートされるとワークWに伸びが生じるため、モールド金型12に搬入する前に、ローダ4によるワークWの保持位置を補正する必要があるからである。
【0033】
具体的な補正方法として、ワークWの外形位置とアライメントマークとの位置ずれ量からワークセンター位置とステージセンター位置のずれ量を検出する。例えば、ワークWのコーナー部の座標をローダ4に設けられた撮像カメラ4aにより読み取ってアライメントマークとのX-Y方向のずれ量を算出し、ローダ4の中心位置とワークWの中心位置との位置合せを行ってからワークWを保持する。本実施形態においては、ローダ4に1台の撮像カメラ4aを設ける構成としているが、これに限定されるものではなく、複数台の撮像カメラ4aを設けてワークWの座標を読み取る構成としてもよい。
【0034】
一方、プレス部11には、上型及び下型を有するモールド金型12が設けられている。本実施形態においては、下型にワークWの載置部が設けられ、上型にキャビティが設けられる構成としている。このように構成されたモールド金型12内に、モールド樹脂Rが搭載された状態のワークWを搬入した後、型閉じを行って例えば130[℃]~150[℃]程度まで加熱して樹脂モールド(圧縮成形)を行う構成となっている。なお、一例として、下型を可動型とし、上型を固定型としているが、これに限定されるものではなく、下型を固定型とし、上型を可動型としてもよく、あるいは双方を可動型としてもよい。また、モールド金型12は、公知の型開閉機構(不図示)によって型開閉が行われる。型開閉機構の例として、一対のプラテンと、一対のプラテンが架設される複数の連結機構(タイバーや柱部)と、プラテンを可動(昇降)させる駆動源(例えば、電動モータ)及び駆動伝達機構(例えば、トグルリンク)とを備える構成が知られている(いずれも不図示)。
【0035】
また、プレス部11には、モールド金型12(ここでは、上型)にリリースフィルムFを供給(搬送)するフィルム搬送機構13が設けられている。このフィルム搬送機構13を備えて、キャビティを含む上型クランプ面にリリースフィルムFが吸着保持されるように構成されている。ここで、リリースフィルムFは、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れた長尺状に連なるフィルム材が用いられ、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等が好適に用いられる。リリースフィルムFは、繰出しロールF1から繰出されて、上型クランプ面を経て巻取りロールF2に巻取られるように供給(搬送)される。なお、長尺状のフィルムに替えてワークWに対応した必要なサイズに切断された短冊状のフィルムを用いる構成としてもよい。
【0036】
次に、冷却ユニットEには、モールド金型12から取出されたワークWの冷却を行う冷却ステージ14が設けられている。動作例として、樹脂モールド動作が完了し、モールド金型12が型開きした状態において、ローダ4がモールド金型12内に進入してワークWを保持して取出す。ワークWは、ローダ4に保持されたままプレスユニットDから冷却ユニットEへ搬送され、冷却ステージ14に受渡されて冷却が行われる。なお、冷却後のワークWは、後工程(ダイシング工程等)に搬送される。
【0037】
続いて、本実施形態において特徴的なローダ4の構成について詳しく説明する。
【0038】
ローダ4は、
図2に示すように、ワークWの上面(ここでは、電子部品Wbの搭載面)における外縁部に接離する枠体22と、枠体22を上下移動させる第1移動装置24とを備えている。また、ワークWの下面(ここでは、電子部品Wbの非搭載面)における外縁部に接離するチャック32と、チャック32を移動させる第2移動装置34とを備えている。この枠体22とチャック32とにより、ワークWを上下方向(Z軸方向)から挟持可能に構成されている。すなわち、平面視において枠体22とチャック32とが重なる配置をとれるように構成されている。なお、ローダ4、並びに第1移動装置24及び第2移動装置34の移動の制御を行う制御部(不図示)は、樹脂モールド装置1の所定位置に設けられている。
【0039】
本実施形態に係る第1移動装置24は、枠体22の上下移動(Z軸方向の移動)のガイドを行うガイドポスト24A及び上下移動(Z軸方向の移動)の駆動を行う駆動機構であるシリンダ24Bを備えている。ここで、シリンダ24Bは、制御部により制御される電空レギュレータ(不図示)に接続されて作動が行われる。また、サーボモータとリニアガイド等の組み合わせで枠体22を上下移動させてもよい。これによれば、シリンダ24Bの作動(押圧力や押圧速度等)を可変制御することができる。
【0040】
次に、本実施形態に係る枠体22は、ワークWの外縁部の全周に亘って設けられる当接部22aを備えている。当接部22aの例として、
図2~
図4に示すように、平面視(底面視)において連続する環状(矩形状のワークWに対応する角環状)形状に形成されている。ただし、当接部22aは、この構成に限定されるものではなく、不連続状(断続状)に形成される構成としてもよい(不図示)。なお、
図2においては、構成を分かり易くするため、奥側のチャックの図示を省略している。
【0041】
また、枠体22は、少なくとも当接部22aが耐熱温度250[℃]程度のESD(Electro Static Discharge:静電気放電)材料を用いて形成されていることが好ましい。このESD材料は、枠体22が接触する他の部材(例えばキャリアWa)との剥離帯電や摩擦帯電により生じる帯電状態を解除し、防止し、又は緩和する。これによれば、枠体22における静電気の発生を防止して、ワークW上に載置されたモールド樹脂Rが枠体22に付着してしまうことを防止することができる。このために、枠体22は、内周面及び下面においてESD材料を用いて形成することもできる。
【0042】
上記の構成によれば、ワークWを受渡し位置Qからプリヒータ10上へ搬送する際、及び、プリヒータ10上からモールド金型12内へ搬送する際において、枠体22とチャック32とでワークWの外縁部を挟持して搬送することができる。従って、従来よりも薄型で大型のワークWが用いられる場合であっても、外縁部が挟持されて搬送されるため、自重やモールド樹脂Rの重量によって当該ワークWに撓みが生じることを抑制することができる。その結果、撓みによって生じるモールド樹脂Rの偏りを原因とする成形不良の発生も防止できる。
【0043】
ここで、制御部は以下の制御を行う。具体的には、モールド樹脂Rが供給された状態のワークWを、ローダ4が受渡し位置Qからプリヒートステージ10a上へ移動させる間、枠体22をワークWの上面に当接させた状態とする制御を行う。
【0044】
上記の構成によれば、枠体22の当接部22aが平面視(底面視)において連続する環状形状に形成されているため、ディスペンサ6によって上面(ここでは、電子部品Wbの搭載面)にモールド樹脂Rが供給された状態のワークWをローダ4を用いて搬送する場合には、移動するワークW上を雰囲気が通過するのを防止する作用が得られる。これによれば、モールド樹脂Rが舞い上がり飛散することを防止できるため、樹脂モールド装置1内に浮遊するパーティクル(塵埃)の発生を防止できる。従って、パーティクルに起因する成形不良の発生を防止できる。
【0045】
また、制御部は以下の制御を行う。具体的には、プリヒートステージ10a上において、枠体22がワークWに当接する際の押圧力及び押圧速度の制御を行う(なお、いずれか一方の制御を行う構成とすることもできる)。
【0046】
前述の通り、薄型で大型のワークWには撓みが生じ易く、ワークW(キャリアWa)の下面は
図2中の一点鎖線で示すように内側が下側に凸となるように撓みが生じることがある。撓みが生じた状態のワークWをプリヒートステージ10a上に載置してプリヒートを行う場合、撓みの矯正を図るために急激な押圧を行うと、ワークWの破損(割損)が生じ得る。その一方で、プリヒートステージ10a(加熱面となる上面)に接しない領域が生じることによって加熱効率が悪くなるため、加熱時間が長くなってしまう。また、プリヒートステージ10a(加熱面となる上面)に接する領域と接しない領域とが生じて不均一な加熱状態となるため、成形不良が発生する原因となる。
【0047】
このような問題に対して、上記の構成によれば、プリヒータ10(プリヒートステージ10a)上へ搬送して載置したワークWのプリヒートを行う際に、枠体22をワークW(外縁部)に当接させて、経過時間S[sec]に応じて所定の押圧力T[Pa]を印加する制御を行うことができる。制御の一例を
図5に示す。これによれば、ワークWの破損(割損)を防止しつつ、外縁部が上方に反った撓みの矯正を図ることができる。従って、不均一な加熱状態を解消して、加熱効率を向上させることができ、且つ、成形不良の発生も防止できる。さらに、押圧速度も適切に設定することにより、プリヒート時間を短縮して製造工程の効率化を図ることができる。なお、ワークWをモールド金型12内(下型上)へ搬送して載置した際にも、同様に枠体22でワークW(外縁部)を押圧する制御を行う構成としてもよい。
【0048】
次に、本実施形態に係るチャック32は、平面視において環状となる配置で、且つ、ワークWの外縁部に対して当該ワークWの辺に沿う方向に一定の間隔を空けた多点位置で当接して支持する構成を備えている。具体的には、矩形状のワークWに対応して、一辺当たり8点支持(8個)のチャック爪32aが等間隔で設けられている。例えば2辺で安定的に保持するときの最低限の数である一辺当たり2点を支持する場合には、支持点間でワークWの撓みが生じて隙間ができ、ワークW上のモールド樹脂Rが落出してしまうといった問題があった。これに対して、上記の構成によれば、支持点間でワークWの撓みが生じることを防止できる。一例として、チャック爪32aの平面視の幅寸法は20[mm]程度に設定されている。
【0049】
また、本実施形態に係るチャック32は、一辺(一例として、
図3中の辺U)に設けられた複数のチャック爪32aが後端側(ワークWと対向する側と逆側)において一体に構成されている。これにより、チャック爪32aがワークWの平面視投影面に対して一体的に進入及び退避させることができる。したがって、チャック爪32aを移動させる機構(後述の第2移動装置34)を簡素に構成することができる。
【0050】
ここで、本実施形態に係る第2移動装置34は、チャック32(ここでは、チャック爪32a)が、ワークWの平面視投影面内に入る位置で且つワークWの側方外周部に当接しないように所定隙間(
図2中におけるL=1.7[mm]程度)で近接する位置と、ワークWの平面視投影面内から外れる位置と、をとれるように構成されている。具体的には、チャック爪32aを水平移動(X-Y方向の移動)させる駆動を行う駆動機構(例えば、シリンダ等)を備える構成としている(不図示)。ただし、この構成に限定されるものではなく、チャック爪32aを回転移動させる回動軸(不図示)を備える構成、あるいは水平移動と回転移動とを組合せて移動させる構成等が考えられる。
【0051】
このように、チャック32(チャック爪32a)が移動可能な構成によって、受渡し位置Q上、及びプリヒータ10上に載置されたワークWを、ローダ4によって保持することが可能となる。さらに、チャック32(チャック爪32a)がワークWの側方外周部に当接しないように近接させる構成によって、ローダ4によってワークWを保持する位置の補正を行うことができる。
【0052】
このようなチャック爪32aを有する構成を用いて、
図2中の一点鎖線で示すように内側が下側に凸となるように撓みが生じたワークW(キャリアWa)をプリヒートステージ10aに載置する場合に、撓みの矯正を図りながら急激な押圧を防止しつつ効率的に載置する工程として、以下のような動作をすることが考えられる。ローダ4をプリヒータ10(プリヒートステージ10a)上へ搬送した後に、ローダ4全体を下降させる。載置したワークWのプリヒートを行う際に、枠体22をワークW(外縁部)に当接させて、キャリアWa下面の内側をプリヒートステージ10aに接触させる。
【0053】
ここで、そのままローダ4でキャリアWaを押し下げていくと、細かな制御動作をすることができないため、キャリアWaを破損しかねない。そこで、まずはチャック爪32aを第2移動装置34により移動させ、キャリアWaの下面から退避させる。次いで、枠体22を下降させる。具体的には、
図5に示すように、経過時間S[sec]に応じて所定の押圧力T[Pa]を印加する制御を行うことができる。これにより、当初は低圧で加圧することでワークWの加熱を優先し、ある程度加熱されたところで、圧力を高めてワークWの矯正(平らにする動作)を優先するように制御することができる。これによれば、上述したような本発明の効果を得ることができる。
【0054】
なお、ワークWを載置する動作制御としては、押圧力に替えて押圧速度を制御してもよく、両方を制御してもよい。さらに、これらの制御において、
図5に示すように所定時間ずつ状態を保持しながら段階的に増加させてもよく、直線的に増加させてもよく、2次関数的に増加させてもよい。さらに、押圧力や押圧速度を増加させる速度を経過時間に応じて増加させてもよいし、減少させてもよい。
【0055】
なお、前述の通り、ワークWを受渡し位置Qからプリヒータ10上へ搬送する際、及びワークWをプリヒータ10上からモールド金型12内(ここでは、下型上)へ搬送する際には、枠体22とチャック32とでワークWの外縁部を挟持して搬送される。そのため、プリヒートステージ10a、及びモールド金型12(下型)には、ワークWの下面(ここでは、電子部品Wbの非搭載面)を所定の載置面に当接させた状態で、チャック32(チャック爪32a)を進入させて退避させる退避溝10dが対応位置(平面視でチャック爪32aの直下となる位置)に設けられている。これによれば、ワークWをプリヒートステージ10a、及びモールド金型12(下型)に当接させ、載置することが可能となる。
【0056】
また、前述の通り、樹脂モールドの対象となるワークWの外径寸法は一種類ではない。そのため、枠体22及びチャック32は、外径寸法が異なる複数種類のワークWに対応する複数種類のアッセンブリとして用意されている。さらに、ローダ4は、各アッセンブリの着脱及び動作を行うことが可能に構成されている。これによれば、本実施形態に係る樹脂モールド装置一台で、外径寸法が異なる複数種類のワークWに対して樹脂モールドを行うことが可能となる。
【0057】
以上、説明した通り、本発明に係る樹脂モールド装置によれば、プリヒート時等においてワークの撓みを矯正することができる。従って、生産効率の向上と成形不良の発生防止を図ることができる。
【0058】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、ワークとして矩形状のキャリアに複数の半導体チップが行列状に搭載された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、被搭載部材としてキャリアに代えてその他部材等を用いたワーク、あるいは、搭載部材として半導体チップに代えてその他素子等を用いたワーク等であっても同様に樹脂モールドを行うことができる。また、ワークは大きい程、撓みが生じ易いが、必ずしも一辺500[mm]のような大きなワークでなくても、極めて薄い基板ではそれよりも小さなワークに対しても本発明の構成を適用できる。
【0059】
また、上型にキャビティを備える圧縮成形方式の樹脂モールド装置を例に挙げて説明したが、下型のみにキャビティを備える構成への適用や、トランスファ成形方式への適用等も可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 樹脂モールド装置
2 ワーク搬送部
4 ローダ
5 ホルダープレート
6 ディスペンサ
8 クリーニング装置
9 プリヒート部
10 プリヒータ
11 プレス部
12 モールド金型
13 フィルム搬送機構
22 枠体
32 チャック
A ワーク供給ユニット
B 樹脂供給ユニット
C ワーク受渡しユニット
D プレスユニット
E 冷却ユニット
F リリースフィルム
R モールド樹脂
W ワーク