(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】加工装置又は加工システム用の発電装置及び発電システム、並びに当該加工装置又は加工システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230512BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20230512BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230512BHJP
H01M 8/0662 20160101ALI20230512BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20230512BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230512BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20230512BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230512BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230512BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/04746
H01M8/0662
H01M8/04007
C25B9/00 A
C25B1/04
H01M8/10 101
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2021157763
(22)【出願日】2021-09-28
(62)【分割の表示】P 2017089739の分割
【原出願日】2017-04-28
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】508243145
【氏名又は名称】マイクロコントロールシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141313
【氏名又は名称】辰巳 富彦
(72)【発明者】
【氏名】田上 勝通
(72)【発明者】
【氏名】藤井 昇
(72)【発明者】
【氏名】羽柴 壮一
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-048847(JP,A)
【文献】特開2001-126742(JP,A)
【文献】特開平04-296459(JP,A)
【文献】特開2006-176834(JP,A)
【文献】特開2006-299322(JP,A)
【文献】特開2013-233549(JP,A)
【文献】特開2016-149283(JP,A)
【文献】特開2006-136823(JP,A)
【文献】特開平04-144973(JP,A)
【文献】特開平10-116680(JP,A)
【文献】特開2007-051328(JP,A)
【文献】特表2009-514631(JP,A)
【文献】特表2009-517547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00- 9/77
13/00-15/08
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を、又は被加工物の入れられた媒体の表面を非酸化雰囲気で覆い、当該被加工物に対し加工を行う加工装置若しくは加工システムに対し、当該加工に使用される電力を供給する発電装置であって、
大気圧を超える圧力の水蒸気を電気分解して
大気圧を超える圧力の水素ガスを生成する水素ガス生成部と、
大気圧を超える圧力の当該水素ガスを受け取って保存する高圧型水素タンクと、
前記高圧型水素タンクに保存された、大気圧を超える圧力の当該水素ガスを受け取り、受け取った大気圧を超える圧力の当該水素ガスを含む燃料と酸素を含む気体とを用いて当該電力を生成し、排ガスを排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部を、当該非酸化雰囲気として使用可能な、酸素分の低減した又は略ゼロとなったガスに変換し、前記加工装置若しくは加工システムに供給する不活性ガス供給部と
を備えており、
前記水素ガス生成部
が電気分解対象とする大気圧を超える圧力の当該水蒸気は、
前記発電部から受け取った、当該電力を生成する際に発生した水蒸気を含み、前記発電部から
受け取った、当該電力を生成する際に発生した熱
を用いて加熱された水蒸気
である
ことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記発電装置は、太陽電池と、発生した熱を外部に移送可能な熱交換手段とを有する太陽電池部を更に備えており、
前記水素ガス生成部は、
当該電力を生成する際に発生した熱を用いて加熱された水蒸気であって、前記熱交換手段からの熱も用い
て加熱された水蒸気を、少なくとも前記太陽電池で生成された電力を用いて電気分解することを特徴とする請求項
1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記水素ガス生成部は、前記発電部から、生成された当該電力の一部を受け取り、少なくとも受け取った当該電力を用いて電気分解を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
生成された当該水素ガスの一部を、当該非酸化雰囲気の一部として使用させるべく又は当該媒体に混入させて使用させるべく、前記加工装置若しくはシステムに供給する水素供給部を更に備えていることを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の発電装置。
【請求項5】
前記水素ガス生成部は、太陽光を集光して熱を発生させる反射鏡を備え、当該電力を生成する際に発生した熱を用いて加熱された水蒸気であって、前記反射鏡からの熱も用いて加熱された水蒸気を電気分解することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項6】
被加工物を、又は被加工物の入れられた媒体の表面を非酸化雰囲気で覆い、当該被加工物に対し加工を行う加工装置若しくは加工システムに対し、当該加工に使用される電力を供給する発電システムであって、
大気圧を超える圧力の水蒸気を電気分解して
大気圧を超える圧力の水素ガスを生成する水素ガス生成部と、
大気圧を超える圧力の当該水素ガスを受け取って保存する高圧型水素タンクと、
前記高圧型水素タンクに保存された、大気圧を超える圧力の当該水素ガスを受け取り、受け取った大気圧を超える圧力の当該水素ガスを含む燃料と酸素を含む気体とを用いて当該電力を生成し、排ガスを排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部を、当該非酸化雰囲気として使用可能な、酸素分の低減した又は略ゼロとなったガスに変換し、前記加工装置若しくは加工システムに供給する不活性ガス供給部と
を備えており、
前記水素ガス生成部
が電気分解対象とする大気圧を超える圧力の当該水蒸気は、
前記発電部から受け取った、当該電力を生成する際に発生した水蒸気を含み、前記発電部から
受け取った、当該電力を生成する際に発生した熱
を用いて加熱された水蒸気
である
ことを特徴とする発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置やシステムに電力を供給する発電装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池の利用が盛んに進んでいる。例えば、燃料電池自動車が実用化され、家庭用燃料電池設備も普及しつつある。燃料電池を用いれば高効率の発電が実現するのみならず、従来の内燃機関を用いた発電手段とは異なり、二酸化炭素の排出をゼロにする、若しくは大幅に低減することが可能となるのである。このことから、燃料電池は、将来の低炭素化社会の実現にも大きく資すると期待されている。
【0003】
本願発明者等は、このような燃料電池のポテンシャルに注目し、特許文献1及び2に記載されているように、燃料電池を利用した半田付け装置を発明してきた。この半田付け装置では、燃料電池で生成した電力だけでなく、発電によって発生する排ガスをも半田付け装置に供給して利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-233549号公報
【文献】特開2016-164987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、本願発明者等は、燃料電池を利用すれば、様々な装置やシステムに対し、当該装置やシステムで必要とされるエネルギーや物質をまとめて又は一括して供給することができることに思い至った。
【0006】
すなわち燃料電池を、発電手段としてだけでなく、必要とされるエネルギーや物質を電力と並行して準備し提供するための手段として捉え直すことによって、広大な用途が開かれることを発見したのである。
【0007】
また、燃料電池に種々の装置やデバイスを付加することによって、供給先の装置やシステムにおける従来の又は積年の課題を解決可能な装置やシステムを構築することができることにも思い至った。
【0008】
そこで、本発明は、供給先の装置やシステムに、必要とされるエネルギーや物質をまとめて又は一括して供給可能な発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、被加工物を又は被加工物の入れられた媒体の表面を非酸化雰囲気で覆い、当該被加工物に対し加工を行う加工装置若しくは加工システムに対し、当該加工に使用される電力を供給する発電装置であって、
大気圧を超える圧力の水蒸気を電気分解して大気圧を超える圧力の水素ガスを生成する水素ガス生成部と、
大気圧を超える圧力の当該水素ガスを受け取って保存する高圧型水素タンクと、
高圧型水素タンクに保存された、大気圧を超える圧力の当該水素ガスを受け取り、受け取った大気圧を超える圧力の当該水素ガスを含む燃料と酸素を含む気体とを用いて当該電力を生成し、排ガスを排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部を、当該非酸化雰囲気として使用可能な、酸素分の低減した又は略ゼロとなったガスに変換し、加工装置若しくは加工システムに供給する不活性ガス供給部と
を備えており、
水素ガス生成部が電気分解対象とする大気圧を超える圧力の当該水蒸気は、発電部から受け取った、当該電力を生成する際に発生した水蒸気を含み、発電部から受け取った、当該電力を生成する際に発生した熱を用いて加熱された水蒸気である
ことを特徴とする発電装置が提供される。
【0011】
また、本発明による発電装置における他の実施形態として、水素ガス生成部は、発電部から、生成された当該電力の一部を受け取り、少なくとも受け取った当該電力を用いて電気分解を行うことも好ましい。
【0012】
さらに、本発明による発電装置における更なる他の実施形態として、本発電装置は、太陽電池と、発生した熱を外部に移送可能な熱交換手段とを有する太陽電池部を更に備えており、
水素ガス生成部は、当該電力を生成する際に発生した熱を用いて加熱された水蒸気であって、熱交換手段からの熱も用いて加熱された水蒸気を、少なくとも太陽電池で生成された電力を用いて電気分解することも好ましい。
【0013】
また、本発明による発電装置における更なる他の実施形態として、生成された当該水素ガスの一部を、当該非酸化雰囲気の一部として使用させるべく又は当該媒体に混入させて使用させるべく、加工装置若しくはシステムに供給する水素供給部を更に備えていることも好ましい。
【0014】
さらに、本発明による発電装置における更なる他の実施形態として、水素ガス生成部は、太陽光を集光して熱を発生させる反射鏡を備え、当該電力を生成する際に発生した熱を用いて加熱された水蒸気であって、この反射鏡からの熱も用いて加熱された水蒸気を電気分解することも好ましい。
【0016】
本発明によれば、さらに、被加工物を又は被加工物の入れられた媒体の表面を非酸化雰囲気で覆い、当該被加工物に対し加工を行う加工装置若しくは加工システムに対し、当該加工に使用される電力を供給する発電システムであって、
大気圧を超える圧力の水蒸気を電気分解して大気圧を超える圧力の水素ガスを生成する水素ガス生成部と、
大気圧を超える圧力の当該水素ガスを受け取って保存する高圧型水素タンクと、
高圧型水素タンクに保存された、大気圧を超える圧力の当該水素ガスを受け取り、受け取った大気圧を超える圧力の当該水素ガスを含む燃料と酸素を含む気体とを用いて当該電力を生成し、排ガスを排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部を、当該非酸化雰囲気として使用可能な、酸素分の低減した又は略ゼロとなったガスに変換し、加工装置若しくは加工システムに供給する不活性ガス供給部と
を備えており、
水素ガス生成部が電気分解対象とする大気圧を超える圧力の当該水蒸気は、発電部から受け取った、当該電力を生成する際に発生した水蒸気を含み、発電部から受け取った、当該電力を生成する際に発生した熱を用いて加熱された水蒸気である
ことを特徴とする発電システムが提供される。
【0027】
本発明によれば、さらに、加熱された媒体へ被加工物を入れて加工する加工装置又はシステムに対し、当該加工に使用される電力を供給する発電装置であって、
供給された燃料と酸素を含む気体とを用いて当該電力を生成し、排ガスを排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部を、少なくとも当該被加工物の入った当該媒体の表面を覆うための不活性なガスに変換し、上記の加工装置又はシステムに供給する不活性ガス供給部と
を備えている発電装置が提供される。
【0028】
この本発明による発電装置の一実施形態として、本発電装置は、供給された材料を処理して水素ガスを生成する水素ガス生成部を更に備えており、
発電部は、生成された当該水素ガスの少なくとも一部を燃料として用いて当該電力を生成することも好ましい。
【0029】
また、本発明による発電装置は、上記の水素ガス生成部で生成された水素ガスの一部を取得して、当該水素ガスと発電部から排出された排ガス中の酸素ガス分とを反応させ、当該排ガスにおける酸素の含有量を低減させる又は略ゼロとする酸素除去部を更に備えていることも好ましい。
【0030】
さらに、上記の水素ガスに係る実施形態において、本発電装置は、発電部から排出される排ガスにおける酸素の含有量を低減させるべく又は略ゼロとすべく、発電部に供給される水素ガスの量と、発電部に供給される当該酸素を含む気体の量とを制御する制御部を更に備えていることも好ましい。また、酸素の含有量を低減させた又は略ゼロとした排ガスにおける水素の含有量を低減させる又は略ゼロとする水素除去部を更に備えていることも好ましい。
【0031】
さらに、上記の水素ガスに係る実施形態において、本発電装置は、生成された当該水素ガスの一部を、当該媒体に混入させて当該媒体の酸化を抑制するべく上記の加工装置又はシステムに供給する水素供給部を更に備えていることも好ましい。
【0032】
さらにまた、上記の水素ガスに係る実施形態において、水素ガス生成部は、外部若しくは内部に設置された太陽電池若しくは蓄電池からの電力又は商用電力を用い、供給された水又は水蒸気を電気分解して水素を生成する電気分解部を含むことも好ましい。また、本発電装置は、発電部による電力生成の際に発生する熱を、この電気分解部に伝達する電解熱伝達部を更に備えていることも好ましい。
【0033】
さらに、本発明の発電装置は、他の実施形態として、発電部による電力生成の際に発生する熱を、当該媒体を加熱するために使用させるべく上記の加工装置又はシステムに伝達する加工熱伝達部を更に備えていることも好ましい。
【0034】
本発明によれば、また、以上に述べた発電装置を備えた、当該加工装置又はシステムであるフライヤが提供される。
【0035】
本発明によれば、さらに、加熱された媒体へ被加工物を入れて加工する加工装置又はシステムに対し、当該加工に使用される電力を供給する発電システムであって、
供給された燃料と酸素を含む気体とを用いて当該電力を生成し、排ガスを排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部を、少なくとも当該被加工物の入った当該媒体の表面を覆うための不活性なガスに変換し、上記の加工装置又はシステムに供給する不活性ガス供給部と
を備えている発電システムが提供される。
【0036】
本発明によれば、また、被加熱対象物を非酸化雰囲気で電力によって加熱して加工を行う加工装置又はシステムに対し、当該電力を供給する発電装置であって、
供給された材料を処理して水素ガスを生成する水素ガス生成部と、
生成された当該水素ガスと酸素を含む気体とを用いて当該電力を生成し、排ガスを排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部を、当該非酸化雰囲気として使用可能な不活性なガスに変換し、加工装置又はシステムに供給する不活性ガス供給部と、
生成された当該水素ガスの一部を、当該非酸化雰囲気として使用させるべく上記の加工装置又はシステムに供給する水素供給部と
を備えている発電装置が提供される。
【0037】
この本発明による発電装置の一実施形態として、本発電装置は、水素ガス生成部で生成された水素ガスの一部を取得して、当該水素ガスと発電部から排出された排ガス中の酸素ガス分とを反応させ、当該排ガスにおける酸素の含有量を低減させる又は略ゼロとする酸素除去部を更に備えていることも好ましい。
【0038】
また、本発明による発電装置の他の実施形態として、本発電装置は、発電部から排出される排ガスにおける酸素の含有量を低減させるべく又は略ゼロとすべく、発電部に供給される水素ガスの量と、発電部に供給される当該酸素を含む気体の量とを制御する制御部を更に備えていることも好ましい。また、酸素の含有量を低減させた又は略ゼロとした排ガスにおける水素の含有量を低減させる又は略ゼロとする水素除去部を更に備えていることも好ましい。
【0039】
さらに、本発明による発電装置の更なる他の実施形態として、本発電装置は、生成された当該水素ガスの一部を、当該媒体に混入させて当該媒体の酸化を抑制するべく上記の加工装置又はシステムに供給する水素供給部を更に備えていることも好ましい。
【0040】
また、本発明による発電装置の更なる他の実施形態として、本発電装置は、発電部による電力生成の際に発生する熱を、当該被加熱対象物を加熱するために使用させるべく上記の加工装置又はシステムに伝達する加工熱伝達部を更に備えていることも好ましい。
【0041】
本発明によれば、また、上述した発電装置を備えた、当該加工装置又はシステムである雰囲気炉が提供される。
【0042】
本発明によれば、さらに、被加熱対象物を非酸化雰囲気で電力によって加熱して加工を行う加工装置又はシステムに対し、当該電力を供給する発電システムであって、
供給された材料を処理して水素ガスを生成する水素ガス生成部と、
生成された当該水素ガスと酸素を含む気体とを用いて当該電力を生成し、排ガスを排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部を、当該非酸化雰囲気として使用可能な不活性なガスに変換し、上記の加工装置又はシステムに供給する不活性ガス供給部と、
生成された当該水素ガスの一部を、当該非酸化雰囲気として使用させるべく上記の加工装置又はシステムに供給する水素供給部と
を備えている発電システムが提供される。
【発明の効果】
【0043】
本発明の発電装置、発電システム、並びに当該発電装置又はシステムを備えた加工装置又はシステムによれば、供給先の装置やシステムに、必要とされるエネルギーや物質をまとめて供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明による発電装置及び発電システムにおける種々の実施形態を説明するための模式図である。
【
図2】本発明に係る発電装置及び加工装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】本発明による発電装置でのオフガス処理における他の実施形態を示す構成図である。
【
図4】本発明に係る発電装置及び加工装置の他の実施形態を示す模式図である。
【
図5】本発明に係る発電装置及び加工装置の他の実施形態を示す模式図である。
【
図6】本発明に係る供給先装置における他の実施形態を示す模式図である。
【
図7】本発明による発電装置(システム)、及び供給先システムとしての店舗関連システムの一実施形態を説明するための模式図である。
【
図8】本発明に係る電気分解部の一実施形態を示す模式図である。
【
図9】本発明に係る発電装置及び加工装置の更なる他の実施形態を示す模式図である。
【
図10】本発明による発電装置(システム)、及び供給先システムとしての病院関連システムの一実施形態を説明するための模式図である。
【
図11】本発明による発電装置(システム)、及び供給先システムとしての水耕栽培システムの一実施形態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の構成要素は、同一の参照番号を用いて示される。また、同様の構造及び機能を有することが可能な構成要素も、同一の参照番号を用いて示される場合がある。さらに、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0046】
[発電システム・装置]
図1は、本発明による発電装置及び発電システムにおける種々の実施形態を説明するための模式図である。
【0047】
図1によれば、本発明に係る発電システム1又は発電装置2は、
(A)供給された燃料(例えば水素ガス)と酸素を含む気体(例えば空気)とを用い、電力を生成して排ガス(オフガス)を排出する燃料電池30を含む、発電部としての燃料電池ユニット3と、
(B)供給された材料(例えば都市ガス(商用ガス)等の炭化水素ガス)を処理して水素ガスを生成する水素ガス生成部としてのガス改質ユニット31と、
(C)オフガス(排ガス)における水素分を除去する又は低減させる水素除去ユニット32と、
(D)オフガス(排ガス)における酸素分を除去する又は低減させる酸素除去ユニット33と、
(E)燃料電池30による電力生成の際に発生する熱を、供給先装置又はシステムで使用させるべく当該装置又はシステムに伝達する加工熱伝達部としての熱交換ユニット34と、
(F)外部又は内部に設置された、太陽光によって発電を行う太陽電池を含む太陽電池ユニット41と、
(G)太陽電池ユニット41又は外部又は内部に設置された蓄電池からの電力を用い、供給された水又は水蒸気を電気分解して水素を生成する、電気分解部としての電気分解ユニット42と、
(H)太陽電池ユニット41や燃料電池ユニット3等からの電力を保存・蓄積する蓄電ユニット51と、
(I)太陽電池ユニット41や燃料電池ユニット3等からの熱を保存・蓄積する蓄熱ユニット52と、
(J)太陽電池ユニット41や燃料電池ユニット3等からの熱を用いて電力を生成する熱電発電ユニット53と
を備えている。
【0048】
ここで、本発電システム1又は本発電装置2は、上記(A)の燃料電池ユニット(U)3を必須のユニットとするものの、その他の(B)~(J)のユニットについては、供給先装置又はシステムに供給するエネルギーや物質の種別に応じて、又はシステム又は装置内での要請に応じて適宜選択して若しくは組み合わせて採用する。これにより、供給先装置又はシステムに、必要とされるエネルギーや物質をまとめて又は一括して供給することが可能となるのである。
【0049】
ちなみに、発電システム1は、燃料電池ユニット3を含め採用したユニットを少なくとも1つ含む装置が、複数集まって全体を構成する形態をとったものであり、一方、発電装置2は、燃料電池ユニットを含め採用したユニットが全て、1つの装置内に含まれる形態をとったものである。以後、取り得る実施形態を発明装置2として説明するが、当然に、発電システム1としても同様の内容が該当する。
【0050】
また、(C)水素除去ユニット32及び(D)酸素除去ユニット33は、オフガスの少なくとも一部を、供給先装置又はシステムで使用される不活性なガスに変換し、当該供給先装置又はシステムに供給する「不活性ガス供給部」としても機能する。ちなみに、これらのユニットを必要としない実施形態も可能ではあるが、その場合でもオフガスに対し何らかの(例えば除湿等の)処理を行うことになる。この際、この処理を行う処理部が「不活性ガス供給部」として機能することになる。
【0051】
さらに、(B)ガス改質ユニット31及び(C)水素除去ユニット32は、生成された水素ガスの一部を、供給先装置又はシステムで使用させるべく当該供給先装置又はシステムに供給する「水素供給部」としても機能してもよい。
【0052】
また、(E)熱交換ユニット34は、加工熱伝達部としての機能と合わせて又はその代わりに、燃料電池30による電力生成の際に発生する熱を、(G)電気分解ユニット42に伝達する電解熱伝達部として機能することも好ましい。以下、上記の構成要素(A)~(J)の詳細について順次説明する。
【0053】
最初に、(A)燃料電池ユニット3が備えている燃料電池30は、電解質を間に挟んだ水素極(アノード)及び空気極(カソード)を有し、水素含有ガス(改質水素)と、取り込んだ空気中の酸素(O2)とから電池反応を引き起こして直流電力を生成する。この燃料電池30における電池方式としては、固体高分子型燃料電池(PEFC)方式、リン酸型燃料電池(PAFC)方式、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)方式、又は固体酸化物型燃料電池(SOFC)方式等が採用可能である。
【0054】
ここで、PEFC方式は、比較的低温で稼働し、電池サイズもコンパクト化可能であることから燃料電池自動車に多く採用されている。また、SOFC方式は、発電効率が高く、通常約700~約1000℃で稼働し、排出されるオフガスも非常に高温となっている。さらに、PEFC方式及びPAFC方式では、反応触媒に白金(Pt)系材料が使用される。この白金系材料は一般に、一酸化炭素(CO)に暴露されると劣化する。そのため、通常はCO変性除去手段が更に設けられることになる。
【0055】
このCO変性除去手段は、CO変性触媒等を用いて、燃料電池30に燃料として供給される水素含有ガスに含まれる一酸化炭素ガス分を低減させる。また、CO選択酸化触媒を用いて、一酸化炭素濃度をさらに低減させるCO選択酸化手段が併設されてもよい。一方で、SOFC方式やMCFC方式を採用する場合、少なくとも白金系材料を触媒として使用しないので、このようなCO変性除去手段は必要とされない。
【0056】
また、この燃料電池30の変更態様として、互いに異なる又は同種の電池方式の燃料電池を組み合わせたり、これらを連結したりして多段(複数段)の燃料電池を構成することも可能である。例えば、発電効率、発生する熱の温度や、オフガス組成、さらには電池サイズ等を設計範囲に収めるべく、PEFC方式とSOFC方式とを組み合わせて燃料電池30を構成することも好ましい。
【0057】
さらに、この燃料電池ユニット3として、市販の燃料電池コージェネレーションシステムであるエネファーム(登録商標)の燃料電池ユニットを利用してもよい。また例えば、特開2001-180911号公報に開示されているような燃料電池発電システムを利用することも可能である。
【0058】
さらに、燃料電池ユニット3は、供給先装置又はシステムにおいて交流電力が必要とされる場合、生成した直流電力を交流電力に変換するインバータを備えていることも好ましい。また、直流電力が必要とされる場合でも、生成した直流電力を、要求される安定した電力に調整するための安定化回路を備えていることも好ましい。
【0059】
いずれにしても、燃料電池ユニット3は、供給先装置又はシステムに対し、電力、熱及びオフガスを供給可能となっている。このうちオフガスは、この後説明するように処理されて、窒素ガス(不活性なガス)、水素ガス及び/又は酸素ガスとして供給されてもよい。また、燃料電池ユニット3が生成した電力の一部を電気分解ユニット42に供給する形態をとることも可能である。
【0060】
さらに、燃料電池ユニット3は、燃料電池反応によって生成される純水(水蒸気)を供給先装置又はシステムに供給することも好ましい。また、この生成した純水(水蒸気)のの一部を電気分解ユニット42に供給してもよい。
【0061】
また、(B)ガス改質ユニット31は、都市ガス又はLPG等の炭化水素ガスを取り入れて、この炭化水素ガスと水蒸気とを混合し、この混合ガスから水蒸気改質反応によって水素(H2)を主成分とする水素含有ガスを生成する。ガス改質ユニット31は、生成した水素含有ガスを燃料電池ユニット3に供給してもよく、さらに、供給先装置又はシステムに供給してもよい。
【0062】
ここで、ガス改質ユニット31は、生成した水素含有ガスから、この後に述べる水素分離フィルタ等を用いて水素ガス分を取り出し、純度の高い水素を、燃料電池ユニット3や供給先装置又はシステムに供給することも好ましい。
【0063】
また、(C)水素除去ユニット32は、燃料電池ユニット3から排出されるオフガスのうち水素極から放出される水素オフガス中の水素ガス分を除去・低減する。水素ガス分を除去することによって、例えば、オフガス利用における水素爆発を防止する対策を緩和することが可能となる。
【0064】
具体的に、水素除去ユニット32は、例えば、水素やヘリウム等の小さな分子を通過させる一方、窒素等のより大きな分子を遮断するフィルタ(水素分離膜)を用いて水素ガス分を除去するものであってもよい。ちなみに、この水素分離膜として、例えば、芳香族ポリイミド等の高分子素材を用いた市販されている中空糸膜が利用可能である。
【0065】
ここで、水素除去ユニット32においてオフガス中から除去された水素ガス分を、供給先装置又はシステムに供給可能なように、又は燃料電池40の燃料として再利用可能なように構成しておくことも好ましい。さらに変更態様として、水素除去ユニット32において、水素オフガス中の水素ガスと、空気オフガス中の酸素ガスとを例えば電熱加熱部によって燃焼させ、オフガス中の水素ガス分を水蒸気分(水分)に変換して処理してもよい。
【0066】
また、(D)酸素除去ユニット33は、燃料電池ユニット3の排ガスのうち空気極から放出される空気オフガス中の(空気極で消費されなかった)酸素ガス分を、
(a)脱酸素剤、酸化吸収剤、若しくは酸素吸収カートリッジ等を用いて、又は
(b)鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、若しくはマンガン(Mn)等の酸化し易い金属の粉末若しくは微小片・糸片を用いて
除去・低減する。
【0067】
また、変更態様として、酸素除去ユニット33は、空気中の窒素よりも酸素をより通過させるポリイミド等の高分子素材を用いた市販の中空糸膜(いわゆる窒素富化膜)を用いて、酸素ガスを分離し除去するものであってもよい。さらに、ジルコニア固体電解質や、BaO-SrO-CoO-Fe2O3系の複合酸化物等を用いた酸素分離フィルタによって、酸素ガスを分離し除去することも可能である。
【0068】
以上説明したように、水素除去ユニット32及び酸素除去ユニット33によって水素ガス分及び酸素ガス分を除去されたオフガスは、例えば高純度の窒素ガスとして供給先装置又はシステムに供給可能となる。また、図示されていないが、オフガスから水蒸気分(水分)を除去・低減する除湿ユニットが設けられることも好ましい。
【0069】
また、(E)熱交換ユニット34は、燃料電池30で発生した熱(反応熱)を受け取って、熱交換管内に充填された熱交換流体に移送する。次いで、供給先装置又はシステムにまで及んだ熱交換管においてこの熱交換流体を循環させる形で、供給先装置又はシステムに熱を供給するのである。なお、この熱交換流体の循環は、例えば燃料電池ユニット3で生成された電力を用いて行われてもよい。
【0070】
さらに、(F)太陽電池ユニット41は、太陽光等の光エネルギーを電力に変換する太陽電池を備えており、生成した電力を電気分解ユニット42に供給したり、蓄電ユニット51に保存したりする。また、太陽電池ユニット41は、熱交換流体の充填された熱交換管と当該熱交換管に光エネルギーを集中させる集光器とを備え、生成した熱を、熱交換流体を介して蓄熱ユニット52に保存したり、熱電発電ユニット53に移送して発電させたりすることも好ましい。
【0071】
さらに、(G)電気分解ユニット42は、供給された水又は水蒸気(H2O)を、供給された電力による電気分解処理によって水素(H2)及び酸素(O2)に分解し、生成した水素を燃料電池ユニット3に供給したり、供給先装置又はシステムに供給したりすることができる。また、生成した酸素を供給先装置又はシステムに供給してもよい。さらに、酸素の発生する電気分解用電極を炭素電極とし、炭素を酸化させて二酸化炭素(CO2)を発生させ、この二酸化炭素を供給先装置又はシステムに供給することも可能である。
【0072】
ちなみに、電気分解ユニット42は、供給された熱を用いて電気分解対象の水蒸気を生成したり、電気分解対象の水の温度を上昇させたりして、電気分解における水素発生効率を向上させることも好ましい。また、この際、例えば電解質等の加熱による爆発等の発生を回避すべく、電気分解セルやユニット全体の温度をモニタし制御することも好ましい。さらに、電極間の印加電圧を高くして、電解質を使用せず電解質のモニタやメンテナンス等を不要とした電気分解処理を行うことも可能である。
【0073】
また、電気分解ユニット42は、生成した水素や酸素、さらには二酸化炭素をひとまずボンベに保存し、必要時にそれらを適宜放出してもよい。例えば、昼間は、太陽電池ユニット41からの電力によって生成した水素をボンベに保存し、夜間以降、燃料電池ユニット3等に水素を供給する形態も可能となる。
【0074】
また、(H)蓄電ユニット51は、鉛蓄電池やリチウムイオン電池等の二次電池を備えており、太陽電池ユニット41や燃料電池ユニット3で生成された電力を保存する。ここで保存された電力は適宜、供給先装置又はシステムや電気分解ユニット42に供給されることも好ましい。
【0075】
また、(I)蓄熱ユニット52は、例えばゼオライト系等の公知の潜熱蓄熱材を用いて作製された蓄熱部を備えており、この蓄熱部において太陽電池ユニット41や燃料電池ユニット3で発生した熱を保存する。ここで保存された熱は適宜、供給先装置又はシステムや電気分解ユニット42に供給されることも好ましい。さらに、この熱を蓄電ユニット51に供給して蓄電ユニットの二次電池セルを保温し、蓄電ユニット51の蓄電効率を維持・向上させることも可能である。
【0076】
また、(J)熱電発電ユニット53は、ゼーベック効果(ペルチェ効果の逆作用)を利用して熱量を電力に変換する熱電素子を含む熱電モジュールを備えており、太陽電池ユニット41(熱交換ユニット34)や燃料電池ユニット3から熱を受け取って電力を生成する。生成された電力は適宜、供給先装置又はシステムや電気分解ユニット42に供給されることも好ましい。ここで、熱電素子は、具体的に、ビスマス(Bi)・テルル(Te)系、鉛(Pb)・テルル系、又はシリコン(Si)・ゲルマニウム(Ge)系等の導体における2つの接合部の一方に熱を供給して接合部間に電位差を発生させて電力を取り出す素子である。通常、熱電モジュールでは、所定以上の電圧が得られるように、複数の熱電素子が電気的に直列に接続される。
【0077】
熱電発電ユニット53はこのように、可動部分や化学反応によらず、熱電モジュールによって発電しているので、メンテナンスフリーのユニットとして且つ安定した発電源として利用できる。特に、燃料電池ユニット3の不調時や、太陽電池ユニット41が使用不可となるような災害・非常時にも、補填電源として有用となる。
【0078】
ちなみに、以上に述べた供給先装置又はシステムには、この後順次、具体的に説明するフライヤ61、フライヤ65、ショーケース68、コンビニ6、雰囲気炉71、病院8、オートクレーブ81、水耕栽培システム9、及び水耕栽培ユニット91が該当するのである。なお、本発明の適用可能な供給先装置又はシステムが、これらに限定されるものではないことは当然である。
【0079】
以上、
図1を用いて発電装置2(発電システム1)の取り得る様々な実施形態を概観した。いずれにしてもその実施形態によっては、発電装置2(発電システム1)の全体、さらには発電装置2(発電システム1)と供給先装置又はシステムとの全体が1つの人工生態系の様相を呈していることが理解される。このように、本発明によれば、エネルギー・物質の生成・消費の面において自然のエコシステムの如く効率的な又は無駄のない装置・システムを構築することも可能となるのである。
【0080】
[フライヤ]
図2は、本発明に係る発電装置及び加工装置の一実施形態を示す模式図である。
【0081】
図2(A)に示した実施形態によれば、本発明による発電装置2と、フライヤ61とが組み合わされ、全体として加工システムが構成されている。このうち、フライヤ61は、加熱した媒体である揚げ油へ被加工物である揚げ対象物(例えば、イモ、野菜や果物等の食材)を投入して、加工処理としての揚げ(フライ)処理を実施し、揚げ物を製造する加工装置又は加工システムである。
【0082】
具体的に、フライヤ61は、
(61a)揚げ油の入った油槽611と、
(61b)油槽611中の揚げ油を加熱するためのヒータ612及び熱交換管613と、
(61c)揚げ油中に仕込まれた温度センサ614aからのセンサ出力に基づいて、揚げ油の温度を調節するための温度制御器614と、
(61d)発電装置2からの電力をヒータ612(温度制御器614)に供給するための電力線615と、
(61e)発電装置2から送られてきた窒素ガスを、少なくとも揚げ対象物の入った揚げ油の表面を覆うための不活性なガスとして、フライヤ61内に供給するための窒素供給管621と、
(61f)窒素供給管621内の窒素ガスをフライヤ61内へ移送するための送風機622と、
(61g)フライ処理後の揚げ物を急速に冷却すべく、吹き付ける窒素ガスを冷却する冷却器623と、
(61h)発電装置2から送られていた水素ガスを、揚げ油に混入させて揚げ油の酸化を抑制すべく、油槽611(揚げ油)内に供給する水素供給管631と、
(61i)揚げ対象物を油槽611内の揚げ油に入れるべく移動させ、さらに、揚げ処理の終了した揚げ対象物(揚げ物)を油槽611から取り出すためのコンベヤ641と
を備えている。
【0083】
また同じく
図2(A)に示すように、フライヤ61は、揚げ油に入った揚げ対象物を移送させるパドルや、供給された窒素ガスを不活性雰囲気として使用した後に装置外へ排気するためのダンパを更に備えていてもよい。
【0084】
一方、発電装置2は、
(2a)燃料電池30と、燃料電池30へフィルタリングした空気を供給する空気フィルタ36と、燃料電池30で生成された直流電力を交流電力に変換するインバータ37とを含む燃料電池ユニット(U)3と、
(2b)ガス改質ユニット31と、
(2c)燃料電池30からのオフガスを処理し、窒素ガスとしてフライヤ61(窒素供給管621)に供給する不活性ガス供給部としての水素除去ユニット32及び酸素除去ユニット33と、
(2d)燃料電池30から発生する熱を取り出し、フライヤ61(熱交換管613)に供給する加工熱伝達部としての熱交換ユニット34と、
(2e)ガス改質ユニット31で生成された(又は水素除去ユニット32で取り出された)水素ガスを、燃料電池30及び/又はフライヤ61(水素供給管631)へ供給する水素供給部としての分配器35と
を備えている。また、フライヤ61はさらに、これらの構成要素の駆動や機能の発動を統合して制御する制御部20を備えている。
【0085】
ちなみに、上記の構成要素(2a)~(2e)が、複数の装置にまたがって備えられている場合、これらの構成要素によって発電システム1が構成されることになる。また、上記の構成要素(2a)~(2e)がフライヤ61に含まれ、
図2(A)に示す全体として加工装置又は加工システムが構成されてもよい。
【0086】
以上に述べたような構成によって、発電装置2は
図2(B)に示すように、フライヤ61が必要とする形態のエネルギー(電力、熱)や物質(窒素、水素)を、まとめて又は一括してフライヤ61に適宜供給することができるのである。
【0087】
すなわち、従来多くの場合に、供給先となる所定の装置やシステムに対し、エネルギー供給と物質供給とは別々の装置系から行われてきたが、本実施形態では、必要とされるそれらをまとめて又は一括して供給することができる。その結果、より安定した且つ供給コストの上昇を抑えた供給体制を容易に構築することが可能となるのである。
【0088】
なお、発電装置2(発電システム1)の他の実施形態として、燃料電池30への水素ガスの供給元として、ガス改質ユニット31に代えて又は同ユニット31とともに、電気分解ユニット42(
図1,後述する
図8)が設けられることも好ましい。ここで、この電気分解ユニット42は、電気分解用の電力として、外部若しくは内部に設置された太陽電池ユニット41(
図1)若しくは蓄電池からの電力、又は商用電力を利用することも好ましい。また、燃料電池30による電力生成の際に発生する熱を、この太陽電池ユニット41に伝達する電解熱伝達部としての熱交換器が設けられてもよい。
【0089】
さらに、ガス改質ユニット31から燃料電池30に導入される水素(H2)と、同じく燃料電池30に導入される空気中の酸素(O2)とのモル比を2よりも大きな値に設定し(すなわち燃料電池30内で水素過多とし)、空気における残りの窒素と、反応過多分の水素との混合ガスがオフガスとして排出されるようにすることも好ましい。このオフガスにおいては、酸素ガス分が概ねゼロとなっている。なお、このようなモル比の調整は、制御部20による指示に従い分配器35’によって実施されてもよい。
【0090】
ちなみに、燃料電池自動車における燃料電池でもそうであるが、通常、燃料電池に供給される水素ガス分と、(空気中の)酸素ガス分との割合は、電池反応において酸素(空気)が過多状態であって水素が使い切られるように(燃焼され尽くすように)決定される。これに対し、本実施形態では、全くその逆であって、酸素(空気)が使い切られるように水素ガス(燃料)の供給を過多にするのである。これにより、供給先装置又はシステムにおいて不要な若しくは弊害となる酸素ガス分の量を十分に低減させた又は略ゼロにしたオフガスを、当該供給先装置又はシステムに提供することが可能となるのである。
【0091】
次いでさらに、水素除去ユニット32によって、上述した窒素及び水素の混合ガスから水素ガス分を除去することによって、純度の高い窒素ガスをフライヤ61へ送り込むことができる。ここで除去された水素ガス分は、配管を通し分配機35によって燃料電池ユニット3に送られ、燃料電池30の燃料として再利用されてもよい。
【0092】
また、変更態様として、この窒素と水素との混合ガスを、例えば窒素供給管621を介して揚げ油中に混入することによって、後に説明するように、揚げ油の酸化を抑制することも可能となるのである。なお、以上に述べたような場合、酸素は概ね全て消費されているので、例えば、酸素除去ユニット33を設けない構成も可能となる。
【0093】
ちなみに、燃料電池30としては、様々な電池方式のものが採用可能であるが、例えば、発電効率が高く非常に高温の熱を出力可能なSOFC方式の燃料電池や、比較的低温で稼働するがコンパクト化の容易なPEFC方式の燃料電池とすることも好ましい。SOFC方式の燃料電池30を採用した場合、その電池反応温度は約700~約1000℃と非常に高温であるので、例えば、揚げ油に対するベースとなる主加熱を、熱交換ユニット34及び熱交換管613を用いてこの電池反応熱によって行ってしまうことも可能となる。
【0094】
次に、本発明に係るフライヤ61特有の特徴を説明する。従来、食品を製造するフライヤでは、以下の3つが重要な課題となってきた。
(ア)フライヤでは、例えば200℃台の温度を継続して保持するため、安定した大電力が必要となる。例えば、停電等によって商用電力の供給が停止した場合でも、製造中の揚げ対象物を棄損せずに済むような対策が必要となる。
(イ)フライヤで加工された(揚げられた)食品の安全性を確保する必要がある。
(ウ)フライヤで使用される揚げ油の酸化をできるだけ抑え、揚げ油の寿命を確保する必要がある。
【0095】
最初に、上記課題(ア)についてであるが、フライヤ61は勿論、商用電力を引き込んでヒータ612等を稼働させることもできるが、燃料電池ユニット3から電力線615を介して大電力を受け取ることができる。また、揚げ油の温度維持については、燃料電池ユニット3から熱交換管613を介して大量の熱を受け取り、揚げ油の高温維持をサポートしている。このように、フライヤ61はこの課題(ア)を確実に解決している。
【0096】
次いで、上記課題(イ)についてさらに詳細に説明する。例えば、特開2008-302131号公報においては、「イモ類や、根菜類、野菜、果物等の素材をフライした後、フライ製品が高温のまま維持されると、フライ製品にアクリルアミドが生成されることがわかってきた。このアクリルアミドの生成を抑制する要望があり、アクリルアミドの生成を抑制するためには、フライ後のフライ製品をできるだけ早く冷却する必要がある」との指摘がなされている。
【0097】
このように、従来、炭水化物を多く含む食品を(120 ℃以上の)高温で加熱調理することによって、食品中のアミノ酸の一種であるアスパラギンがブドウ糖、果糖等の還元糖と反応してアクリルアミドに変化することが分かっている。
【0098】
このアクリルアミドは、神経毒性、肝毒性や、変異原性(発癌性)を有しており、その発生を十分に抑制しなければならない。これに対し、フライヤ61は、燃料電池ユニット3から窒素供給管621を介して多量の窒素ガスを受け取ることができ、さらに、冷却器623で冷却したこの多量の窒素ガスをフライ処理後の揚げ物に吹き付け、当該揚げ物を急速に冷却することができる。その結果、揚げ物中におけるアクリルアミドの発生が抑制されるのである。
【0099】
なお、燃料電池ユ30から発生する窒素ガスから、熱交換ユニット34によって相当の熱量を取り出すことによって、窒素供給管621で供給される窒素ガスを低温化させることも可能である。この場合、冷却器623を用いずに、低温の窒素ガスを揚げ物に吹き付けることができる。さらに、以上とは異なる実施形態ではあるが、ガス改質ユニット31によって生成された水素ガスに代えて、液化水素ボンベからの水素ガスを用いる場合、この極低温の液化水素を利用して、窒素供給管621で供給される窒素ガスを低温化させることも可能となる。
【0100】
また、フライヤ61では、窒素供給管621で供給される窒素ガスで、油槽611と周囲のコンベヤ641とを含む揚げ処理空間全体を満たすことによって、揚げ処理前及び揚げ処理中の揚げ対象物や揚げ処理後の揚げ物の酸化をも抑制することができるのである。
【0101】
次いで、上記課題(ウ)については、フライヤ61は、燃料電池ユニット3から窒素供給管621を介して受け取った不活性ガスとしての窒素ガスを、揚げ対象物の入った揚げ油の表面を覆うように油槽611内へ供給する。これにより、高温状態の揚げ油が例えば空気中の酸素分と接触する状態を回避し、揚げ油の酸化を抑制することが可能となる。
【0102】
さらに、例えば特開2003-24219号公報に開示されているように、「水素を油中に供給する」ことによって、「当該水素が油の酸化の際に生成されるペルオキシラジカルなどのフリーラジカルと反応することにより、油の酸化の連鎖反応を著しく抑制することができる」ことが分かっている。特に、植物性油脂に多い不飽和脂肪酸において、水素をもって炭素の2重結合の一端を封止することによって酸化が抑制されるのである。
【0103】
この点、フライヤ61は、発電装置2から水素供給管631を介して受け取った水素ガスを、揚げ油に混入させることができる。その結果、揚げ油の酸化を抑制することが可能となるのである。
【0104】
ここで、水素供給管631を介して揚げ油中に混入される水素は微量に設定され、さらに、水素供給管631の内部及び水素放出孔において水素ガスが空気(酸素)と一切接触しないように工夫されることが好ましい。これにより、水素爆発等の危険な状態の発生を抑止することができる。なお、変更態様として、窒素供給管621を介して供給された不活性ガスとしての窒素ガスを、揚げ油に混入させて揚げ油の酸化を抑制することも好ましい。
【0105】
さらに、変更態様として、フライヤ61は、揚げ油に高電圧(強電界)を印加可能な電極を油槽611内に備えていてもよい。この高電圧(強電界)は、例えば1~10kV台であり、燃料電池ユニット3から電力線615を介して受け取った直流の大電力を用いて発生させることができる。勿論、インバータ37で変換された交流電力を用いてもよい。このような高電圧印加による酸化抑制効果の1つの例として、特開2010-88769号公報には、直流のマイナス高電位を有する高電位発生プレートを食用油中に挿入することによって、この食用油の酸化を抑制可能であることが開示されている。
【0106】
このように、発電装置2(発電システム1)によれば、(通常は商用電力を変換しなければ得られない)直流電力を必要とする供給先装置又はシステムに対し、効率良く直流電力を供給することもできるのである。
【0107】
図3は、発電装置2でのオフガス処理における他の実施形態を示す構成図である。
【0108】
図3に示した実施形態においては、分配器35’が、酸素濃度計測センサ351によってオフガス中に残留した酸素濃度をモニタしている。分配器35’は、この計測された酸素残留濃度に基づいて、ガス改質ユニット31から供給された水素ガスのうち、単位時間当たりにしてオフガス中の酸素ガス分と過不足なく反応する分(単位時間における残留酸素ガスのモル数の2倍のモル数分)の水素ガスを酸素除去ユニット33’に供給する。
【0109】
この酸素除去ユニット33’は、オフガスと、分配器35’から供給された水素ガスとを混合した上で、加熱した白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)又は銅(Cu)等を含む触媒に接触させる環境で反応させることにより、オフガス中の酸素(O2)を水分(H2O)に変換する。次いで、この水分を除湿器によって除去することによって、純度の高い窒素ガスを生成し、フライヤ61へ送出することができるのである。
【0110】
ちなみに、本願発明者等の試算では、純度99.9%の窒素ガスが10m3/時のペースで酸素除去ユニット33’に流入する場合に、この窒素ガスの純度を99.999%にまで高めるには、水素ガスを、1.98×10-3 m3/時のペースで供給すればよい。
【0111】
なお、以上に説明した酸素除去ユニット33’を用いたオフガス処理は、フライヤ61(
図2)のみならず、この後説明するフライヤ65(
図4,
図5)や雰囲気炉71(
図9)でも適用可能である。いずれにしても、要求されるオフガス内の酸素分圧や水素分圧によっては、他に酸素除去ユニットや水素除去ユニットを設けることなく簡易な構成でオフガス処理が可能となるのである。勿論、水素及び/又は酸素を略ゼロに近づけるべく水素除去ユニット32及び/又は酸素除去ユニット33を併設する実施形態をとってもよい。
【0112】
図4及び
図5は、本発明に係る発電装置及び加工装置の他の実施形態を示す模式図である。ここで、
図4(A)、
図4(B)及び
図5はそれぞれ、本実施形態の装置(フライヤ65)に係る正面図、側面図及び上面図となっている。
【0113】
これらの図面に示した実施形態によれば、発電装置2と、コンビニエンスストア(コンビニ)や小規模店舗等で使用される簡易型のフライヤ65とが、加工システムを構成している。ちなみに、発電装置2がフライヤ65に含まれ、全体が一体化してフライヤとしての装置になっていてもよい。またこの場合、燃料電池40にはコンパクト化の容易なPEFC方式のものを採用することも好ましい。
【0114】
フライヤ65の油槽651には、揚げ物を作製するための揚げ油が入っており、また、この揚げ油に対して揚げ対象物を出し入れするための、取手の付いた網状のバスケットが具備されている。さらに、油槽651の底部にはヒータ652が設けられている。このヒータ652は、燃料電池ユニット3からインバータ37を介して供給される交流電力又は商用電力を、電力調節器656で調整した上で受け取り、この電力で揚げ油を加熱する。
【0115】
ここで、電力調節器656は、例えば揚げ油の温度や、操作パネルを介して指示される設定温度、さらには停電の有無等に応じて、供給される交流電力と商用電力との使用割合を制御する。基本的には、燃料電池ユニット3からの交流電力を主に使用し、不足等があれば商用電力を合わせて使用するようにプログラムされていることも好ましい。
【0116】
また、フライヤ65の油槽651の底部には、ヒータ652と合わせて熱交換管653が設けられている。熱交換管653は、燃料電池ユニット3から熱交換ユニット34を介して供給される熱を、管内を循環する熱交換媒体によって揚げ油に伝達し、この揚げ油を加熱する。これにより、例えば揚げ油を電力によって設定温度にまで加熱する際、ベースとなる揚げ油温度を高くしておくことができ、省電力化が可能となる。
【0117】
さらに、フライヤ65の窒素供給管654は、燃料電池ユニット3から水素除去ユニット32を介して供給される窒素ガスを、揚げ油の表面を覆うように油槽651内に供給する。ここで、窒素供給管654は、
図5に示すように、油槽651の周囲を廻るように配置されており、窒素ガスを、管に開けられた多数の孔から揚げ油に向けて放出することができる。これにより、揚げ物を作製している間、窒素ガスを揚げ油表面に充満させ、揚げ油及び揚げ対象物を外部の空気から遮断することができる。その結果、空気中の酸素による揚げ油及び揚げ対象物の酸化が抑制され、揚げ油の耐用日数が大幅に伸び、揚げ物の品質も向上するのである。
【0118】
ここで、この窒素供給管654を介して供給される窒素ガスは、水素除去ユニット32を介して生成される。この際、ガス改質ユニット31から燃料電池30に導入される水素(H2)と、同じく燃料電池30に導入される空気中の酸素(O2)とのモル比を2よりも大きな値に設定し(すなわち燃料電池30内で水素過多とし)、空気における残りの窒素と、反応過多分の水素との混合ガスがオフガスとして排出されるようにする。このオフガスにおいて酸素ガス分は概ねゼロとなっている。ちなみに、このようなモル比の調整は、制御部20による指示に従い分配器35によって実施されてもよい。
【0119】
次いでさらに、この窒素及び水素の混合ガスから水素除去ユニット32で水素ガス分を除去することによって、純度の高い窒素ガスを、窒素供給管654を介してフライヤ65に送り込むことができるのである。
【0120】
なお、水素除去ユニット32で除去された水素ガス分を、水素供給管655を介して揚げ油中に混入することによって、フライヤ61でも述べたように、揚げ油の酸化を抑制することが可能となる。また、この除去された水素ガス分を、分配器35を介し、燃料電池40での燃料として再利用してもよい。
【0121】
ちなみに、フライヤ65においては、油槽651の底部に廃油孔が設けられており、耐用期限を過ぎた揚げ油が、廃油弁を開けることによって廃油孔から取り出され、油カス分離網で濾されて廃油タンクに収納されてもよい。また、フライヤ65において、油槽651が複数設けられていてもよい。この場合、例えば、以上に述べたフライヤ構成を1ユニットとし、複数ユニットを連結してフライヤ65とすることもできる。
【0122】
[ショーケース]
図6は、本発明に係る供給先装置における他の実施形態を示す模式図である。
【0123】
図6には、コンビニ等の店舗内に設置されるショーケース68が示されている。ショーケース68は、フライヤ65で作製された揚げ物を、保温された状態で保管しつつ来店客に展示する透明ケースとなっている。ショーケース68の窒素供給管681は、発電装置2からの窒素ガスを揚げ物の置かれたブース内に供給し、当該ブースを窒素ガスで充満させる。これにより、空気中の酸素による揚げ物の酸化が大幅に抑制され、揚げ物の品質が維持される。
【0124】
また、熱交換管682は、発電装置2の熱交換ユニット34からの熱を揚げ物の置かれたブース内に移送してブース内の窒素ガスを温め、揚げ物を保温する。熱交換管682は、揚げ物ブースに並べて設置された高温水供給器69内の飲料を加熱し保温することも好ましい。さらに、加熱照明灯683が、発電装置2から電力を供給されて可視光及び赤外線を放射し、揚げ物を展示のために照明するとともに、加熱し保温することも好ましい。
【0125】
以上説明したように、発電装置2は、例えば、コンビニ等の店舗に設置された様々な装置や設備に対し、必要とされるエネルギーや物質をまとめて若しくは一括して供給することができる。次に、発電システム1又は発電装置2からエネルギーや物質を供給される店舗をシステムとして捉えた実施形態を説明する。
【0126】
[店舗関連システム]
図7は、本発明による発電装置(システム)、及び供給先システムとしての店舗関連システムの一実施形態を説明するための模式図である。
【0127】
図7によれば、フライヤ65やショーケース68等を含む供給先システムとしてのコンビニ(店舗)6が、本発明による発電システム1から、必要とされるエネルギー及び物質を供給されている。本実施形態において、発電システム1は、
(1a)太陽電池ユニット41と、
(1b)太陽電池ユニット41で生成される電力を用いて電気分解を行う電気分解ユニット42と、
(1c)電気分解ユニット42で生成される酸素ガスを保存する酸素タンクと、
(1d)電気分解ユニット42で生成される水素ガスを保存する高圧型水素タンク及び低圧型水素タンクと、
(1e)このような水素タンクから取得される水素を用いて発電を行う燃料電池ユニット3と、
(1f)燃料電池ユニット3のオフガスから水素ガス分を除去する水素除去ユニット32と、
(1g)水素除去ユニット32で生成される窒素ガスを保存する窒素タンクと、
(1h)燃料電池ユニット3で生成される純水を保存する純水タンクと、
(1i)燃料電池ユニット3で発生する熱を回収する熱交換ユニット34と
を備えている。
【0128】
ちなみに、これらの構成要素(1a)~(1i)が1つの装置内に備えられ、発電装置2として捉えられる形態であってもよい。また、コンビニ6が、これらの構成要素(1a)~(1i)をも含み、1つのシステムとして把握される形態も可能である。なお、上記(1d)の高圧型水素タンク及び低圧型水素タンクは、燃料電池30の電池方式や発電形態に応じて併用したり使い分けたりすることができ、又は予め一方のみ配備されてもよい。
【0129】
コンビニ6には、燃料電池ユニット3から電力線を介して電力が供給され、窒素タンクから窒素供給管を介して窒素ガスが供給され、水素除去ユニット32から水素供給管を介して水素ガスが供給され、酸素タンクから酸素供給管を介して酸素ガスが供給され、純水タンクから純水供給管を介して純水が供給され、熱交換ユニット34から熱交換管を介して熱が供給される。コンビニ6では、これらの供給されたエネルギーや物質が、フライヤ65やショーケース68といった店舗内装置・設備に分配されて利用されるのである。
【0130】
ここで、窒素ガス、水素ガスや、酸素ガスはタンクに保存されることも好ましい。例えば、太陽電池ユニット41が発電可能な昼間に水素ガスを水素タンクに貯蔵し、次いで夜間に、この貯蔵した水素ガスを利用して燃料電池ユニット3で発電を行って、同じく夜間に稼働させるコンビニ店舗内のフライヤ65に、電力、窒素ガスや熱等を供給してもよい。
【0131】
また、燃料電池ユニット3での発電も昼間に行っておき、生成した電力を蓄電ユニット51(
図1)に蓄電し、生成した窒素ガスを窒素タンクに貯蔵し、さらに、発生させた熱を蓄熱ユニット52(
図1)に蓄熱しておいて、次いで、夜間にこれらのエネルギー・物質をコンビニ6に供給することも可能である。
【0132】
[電気分解ユニット]
図8は、本発明に係る電気分解部の一実施形態を示す模式図である。
【0133】
図8(A)によれば、本実施形態の電気分解ユニット42は、電気分解セル421と、パラボラ反射鏡422と、熱吸収管423とを備えている。電気分解セル421は、本実施形態において、水蒸気を電気分解可能な構成となっている。具体的には、負極において高圧に保たれた水蒸気を水素(H
2)と酸素イオン(O
2-)とに分解し、電解質を介して正極に至った酸素イオンを酸素(O
2)として放出する。
【0134】
このように水蒸気を電気分解することにより、液体である水の分解と比較して水素生成効率が大幅に向上する。また、この水蒸気による熱をもって電解質の温度を上昇させることによっても、当該効率が改善するのである。なお、電気分解に必要な直流電力は、商用電力を変換して取得してもよいが、本実施形態では太陽電池ユニット41から取得可能となっている。
【0135】
ここで、電気分解セル421に供給される水蒸気は、熱吸収管423を通る水(純水)をパラボラ反射鏡422で集光された太陽光を用いて加熱することによって生成することができる。ちなみに、使用可能なパラボラ反射鏡は、
図8(A)のような点焦点型に限定されない。例えば、
図8(B)に示すような焦点がライン上に並ぶパラボラ反射鏡422’を使用し、このライン位置に熱吸収管423’を配置して水蒸気を生成することも可能である。
【0136】
以上に述べたようなユニットを利用することによって、例えば、太陽電池ユニット41及び電気分解ユニット42がそれぞれ、発電及び水蒸気生成の可能な昼間に水素ガスを生成して水素タンクに貯蔵し、次いで夜間に、この貯蔵した水素ガスを利用して燃料電池ユニット3で発電を行うことも可能となる。
【0137】
なお、水蒸気を生成するための熱の少なくとも一部、及び/又は電解質を温めるための熱の少なくとも一部を、燃料電池ユニット3(蓄熱ユニット52,熱交換ユニット34)から割り当てることも可能である。また、電力の使用状況や水素ガスの備蓄状況等に合わせ、電気分解ユニット42で使用される電力の少なくとも一部を、燃料電池ユニット3(蓄電ユニット51)から賄う形態とすることもできる。
【0138】
以上説明したような電気分解ユニット42に関係する技術事項をまとめると、以下の通りとなる。
[技術事項1]
被加熱対象物を非酸化雰囲気で加熱して加工を行う加工装置に対し、当該加工に使用される電力を供給する発電装置であって、
外部又は内部に設置された太陽電池からの電力を用いて水又は水蒸気を電気分解して水素を生成する水素ガス生成部と、
生成された当該水素ガスと酸素を含む気体とを用いて当該電力を生成し、排ガスを排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部を、当該非酸化雰囲気として使用可能な不活性なガスに変換し、前記加工装置に供給する不活性ガス供給部と
を備えていることを特徴とする発電装置。
[技術事項2]
生成された当該水素ガスの一部を、当該非酸化雰囲気として使用させるべく前記加工装置に供給する水素供給部を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
[技術事項3]
前記加工装置は、加熱した媒体に当該被加熱対象物を投入して加工する加工装置であって、
前記発電装置は、生成された当該水素ガスの一部を、当該媒体に混入させて当該媒体の酸化を抑制するべく前記加工装置に供給する水素供給部を更に備えている
ことを特徴とする技術事項1に記載の発電装置。
[技術事項4]
前記発電装置は、前記発電部による電力生成の際に発生する熱を、前記水素ガス生成部に伝達する熱伝達部を更に備えていることを特徴とする技術事項1から3のいずれか1項に記載の発電装置。
[技術事項5]
前記発電装置は、前記発電部による電力生成の際に発生する熱を、当該被加熱対象物を加熱するために使用させるべく前記加工装置に伝達する加工用熱伝達部を更に備えていることを特徴とする技術事項1から4のいずれか1項に記載の発電装置。
【0139】
[雰囲気炉]
図9は、本発明に係る発電装置及び加工装置の更なる他の実施形態を示す模式図である。
【0140】
図9(A)に示した実施形態によれば、本発明による発電装置2と、雰囲気熱処理炉(雰囲気炉)71とが組み合わされ、全体として加工システムが構成されている。このうち、雰囲気炉71は、本実施形態において、被加熱対象物(熱処理対象物)である鉄鋼材に対し、製品に合わせた変態制御を行うべく非酸化雰囲気で加熱加工(熱処理)を実施するための高温炉である。
【0141】
この雰囲気炉71内には、鋼鉄材が処理行程中に酸化することがないように不活性ガスとしての窒素ガスや還元ガスとしての水素ガスが導入され、その他、プロセスガスとして水素ガス等が導入される。なお、
図9の発電装置2の構成要素及び雰囲気炉71の構成要素の全体によって、1つの加工装置(雰囲気炉)が構成されてもよい。
【0142】
具体的に、雰囲気炉71は、
(71a)ゲート開閉板を含むゲートを介して鉄鋼材を導入するための、パージガスが導入可能な前室チャンバと、
(71b)それぞれ特有の工程環境(例えば温度等)を提供すべく互いに仕切りによって区分けされており、さらに、室内の雰囲気を均一にするための攪拌ファンを備えた複数の雰囲気室と、
(71c)ゲート開閉板を含むゲートを介して熱処理後の鉄鋼材を搬出するための、パージガスが導入可能な後室チャンバと、
(71d)発電装置2から供給される窒素ガス及び水素ガスを受け取り、それぞれを窒素・水素供給管712を介して必要とされる雰囲気室に分配したり、窒素及び水素の混合ガスを生成して必要とされる雰囲気室に供給したりする混合・分配器711と、
(71e)鉄鋼材を、前室チャンバから複数の雰囲気室を通って後室チャンバに至る熱処理工程経路に渡って搬送し、その間、鉄鋼材を、その位置に応じて設定された温度にまで加熱するローラハース(roller hearth)721と、
(71f)発電装置2(インバータ37)から電力線723を介して供給される電力を受け取り、ローラハース721に搬送動作及び加熱動作のための電力を供給して、これらの動作を制御するローラハース制御部722と、
(71g)発電装置2(熱交換ユニット34)から供給される熱を雰囲気室にまで伝達し、鉄鋼材を加熱する、又はローラハース721による加熱動作を補助する熱交換管731と
を備えている。
【0143】
一方、発電装置2は、構成や機能の点で
図2のものと同様であり、また、態様によっては、発電システム1として捉えられる場合のあることも同様である。ただし、
図9において、水素除去ユニット32は、燃料電池ユニット3から排出されるオフガスから水素ガス分を除去した残りの窒素ガスを、混合・分配器711に供給している。さらに、その一方で分離した水素ガスを、分配器35を介して発電用の燃料として再利用させている。
【0144】
また、水素除去ユニット32は、分離した水素ガスを、還元ガスとして利用させるべく混合・分配器711に供給してもよい。さらに、ガス改質ユニット31で生成された水素ガスの一部が、分配器35を介して混合・分配器711に供給されることも好ましい。
【0145】
以上に述べたような構成によって、発電装置2は
図9(B)に示すように、雰囲気炉71が必要とする形態のエネルギー(電力、熱)や物質(窒素、水素)を、まとめて若しくは一括して雰囲気炉71に適宜供給することができる。その結果、より安定した且つ供給コストの上昇を抑えた供給体制を容易に構築することが可能となるのである。
【0146】
また、特に、雰囲気炉71では通常、電力、不活性ガス(窒素ガス)や、水素ガス(還元ガス)を多量に消費するので、それらの調達には膨大なコストがかかる。これに対し、発電装置2によれば、この調達コストを大幅に削減することも可能となるのである。
【0147】
なお、発電装置2(発電システム1)の他の実施形態として、ここでも燃料電池30への水素ガスの供給元として、ガス改質ユニット31に代えて又は同ユニット31とともに、電気分解ユニット42(
図1,
図8)が設けられることも好ましい。さらに、この電気分解ユニット42は、電気分解用の電力として、外部若しくは内部に設置された太陽電池ユニット41(
図1)若しくは蓄電池からの電力、又は商用電力を利用することも好ましい。また、燃料電池30による電力生成の際に発生する熱を、この太陽電池ユニット41に伝達する電解熱伝達部としての熱交換器が設けられてもよい。
【0148】
さらに、ガス改質ユニット31から燃料電池30に導入される水素(H2)と、同じく燃料電池30に導入される空気中の酸素(O2)とのモル比を2よりも大きな値に設定し(すなわち燃料電池30内で水素過多とし)、空気における残りの窒素と、反応過多分の水素との混合ガスがオフガスとして排出されるようにすることも好ましい。この混合ガスにおいて酸素ガス分は概ねゼロとなっている。ちなみに、このようなモル比の調整は、制御部20による指示に従い分配器35によって実施されてもよい。
【0149】
次いでさらに、この窒素及び水素の混合ガスから水素除去ユニット32で水素ガス分を除去することによって、純度の高い窒素ガスを雰囲気炉71へ送り込むことができる。除去された水素ガス分は、配管を通し分配機35によって燃料電池ユニット3に送られ、燃料電池30の燃料として再利用されてもよい。
【0150】
ちなみに、燃料電池30としては、本実施形態の場合、発電効率が高く非常に高い電池反応温度(約700~約1000℃)を有するSOFC方式の燃料電池を採用することも好ましい。この場合、この高温の反応熱を、熱交換ユニット34を用いて回収し、熱交換管731を介して雰囲気炉内に伝達することによって、ローラハース721による熱処理の際にベースとなる温度を十分に上げておいてもよい。これにより、雰囲気炉71における省電力化を達成することが可能となるのである。
【0151】
次に、本発明に係る雰囲気炉71特有の特徴を説明する。従来、雰囲気熱処理炉では、以下の3つが重要な課題となってきた。
(ア)雰囲気熱処理炉でも安定した大電力が必要となる。例えば、停電や火力発電設備等の故障等によって電力の供給が停止した場合でも、製造中の鋼鉄材を棄損せずに済むような対策が必要となる。
(イ)熱処理中の鋼鉄材における鉄(Fe)の酸化や、炭素(C)の酸化・脱炭を極力回避しなければならない。
【0152】
最初に、上記課題(ア)についてであるが、雰囲気炉71は勿論、商用電力や併設された火力発電設備を必要とせずに、又はそれらとは別に、燃料電池ユニット3から電力線723を介して大電力を受け取ることができる。また、同じく燃料電池ユニット3から熱交換管731を介して大量の熱を受け取り、高温の熱処理に必要となる熱量のうちの相当な分を確保している。このように、雰囲気炉71はこの課題(ア)を確実に解決しているのである。
【0153】
次いで、上記課題(イ)についてであるが、例えば700℃を超える高温環境では、ステンレス材であっても酸化の無視できないことが公知である。実際、これ以上の高温になると、酸素分圧を完全にゼロにすることは現実的に不可能であることから、窒素ガス雰囲気を生成するだけでは、鉄鋼材の酸化・脱炭を抑制することは困難となっている。
【0154】
これに対し、雰囲気炉71は、混合・分配器711によって雰囲気室内に窒素及び水素の混合ガスを供給することができる。すなわち、雰囲気室内を、窒素ガスによる不活性雰囲気だけでなく、水素ガスによる還元雰囲気で満たすことが可能となっている。このように、雰囲気炉71はこの課題(イ)も確実に解決しているのである。ちなみに、鉄鋼材の酸化をより確実に阻止するため、混合・分配器711が、水蒸気や二酸化炭素等の酸素原子を含む分子気体成分を除去する機能を有していることも好ましい。
【0155】
勿論、雰囲気炉71は、混合・分配器711によって雰囲気室内に窒素ガスのみを供給することも可能である。この場合、上述したような鉄鋼材の酸化を抑制するため、窒素ガス中の酸素ガス分を概ね完全に除去し、窒素ガスの純度を極力高める必要がある。本実施形態では、上述したように発電装置2において、燃料電池30に導入される水素(H2)と酸素(O2)とのモル比を2よりも大きな値に設定し、さらに、このオフガスから水素除去ユニット32で水素ガス分を除去することによって純度の高い窒素ガスを雰囲気炉71へ送り込むことも可能である。
【0156】
また変更態様となるが、
図3を用いて説明したように、酸素除去ユニット33において、オフガス中の酸素を、ガス改質ユニット31で生成された水素ガスの一部と触媒反応又は燃焼反応させ、水として除去することも好ましい。
【0157】
さらに、発電装置2における他の実施形態として、外部若しくは内部に設置された太陽電池ユニット41(
図1)からの電力、蓄電ユニット51(
図1)からの電力、又は商用電力を用い、供給された水又は水蒸気を電気分解して水素を生成する電気分解ユニット42(
図1,
図8)が設けられていることも好ましい。また、燃料電池40による電力生成の際に発生する熱を、この電気分解ユニット42に伝達する電解熱伝達部としての熱交換ユニット34(
図1)が更に設けられていてもよい。
【0158】
以下、最後に、本発明に係る供給先装置又はシステムの例として、病院関係システム(
図10)及び水耕栽培システム(
図11)の説明を行う。
【0159】
[病院関係システム]
図10は、本発明による発電装置(システム)、及び供給先システムとしての病院関連システムの一実施形態を説明するための模式図である。
【0160】
図10によれば、後述するオートクレーブ81等を含む供給先システム(病院関連システム)としての病院(医療サービス提供機関)8が、本発明による発電システム1から、必要とされるエネルギー及び物質を供給されている。本実施形態では、発電システム1は、
(1a)太陽電池ユニット41と、
(1b)太陽電池ユニット41で生成される電力を用いて電気分解を行う電気分解ユニット42と、
(1c)電気分解ユニット42で生成される酸素ガスを保存する酸素タンクと、
(1d)電気分解ユニット42で生成される水素ガスを保存する高圧型水素タンク及び低圧型水素タンクと、
(1e)このような水素タンクから取得される水素を用いて発電を行う燃料電池ユニット3と、
(1f)燃料電池ユニット3のオフガスから水素ガス分を除去する水素除去ユニット32と、
(1g)水素除去ユニット32で生成される窒素ガスを保存する窒素タンクと、
(1h)燃料電池ユニット3で生成される純水を保存する純水タンクと、
(1i)燃料電池ユニット3で発生する熱を回収する熱交換ユニット34と
を備えている。
【0161】
ちなみに、これらの構成要素(1a)~(1i)が1つの装置内に備えられ、発電装置2として捉えられる形態であってもよい。また、病院8が、これらの構成要素(1a)~(1i)をも含み、1つのシステムとして把握される形態もとることができる。なお、高圧型水素タンク及び低圧型水素タンクは、燃料電池30の電池方式や発電形態に応じて併用したり使い分けたりすることができ、又は予め一方のみ配備されてもよい。
【0162】
病院8には、燃料電池ユニット3から電力線を介して電力が供給され、窒素タンクから窒素供給管を介して窒素ガスが供給され、酸素タンクから酸素供給管を介して酸素ガスが供給され、純水タンクから純水供給管を介して純水が供給され、熱交換ユニット34から熱交換管を介して熱が供給される。病院8では、これらの供給されたエネルギーや物質が、後述するオートクレーブ81といった院内装置・設備に分配されて利用されるのである。また、必要であれば、水素除去ユニット32から水素供給管を介して水素ガスが病院8へ供給されてもよい。
【0163】
ここで、窒素ガス、水素ガスや、酸素ガスはタンクに保存されることも好ましい。例えば、太陽電池ユニット41が発電可能な昼間に水素ガスを水素タンクに貯蔵し、次いで夜間に、この貯蔵した水素ガスを利用して燃料電池ユニット3で発電を行って、同じく夜間に稼働させる病院8内の装置・設備に、電力、窒素ガスや熱等を供給してもよい。
【0164】
また、燃料電池ユニット3での発電も昼間に行っておき、生成した電力を蓄電ユニット51(
図1)に蓄電し、生成した窒素ガスを窒素タンクに貯蔵し、さらに、発生させた熱を蓄熱ユニット52(
図1)に蓄熱して、次いで、夜間にこれらのエネルギー・物質を病院8に供給することも可能である。
【0165】
特に、病院8においては、停電等によって商用電力が停止した際にも、緊急の手術を行う等、継続して電力が供給されなければならない。本実施形態によれば、例えば日頃、病院8の広い屋上スペースに設置された太陽電池ユニット41と電気分解ユニット42とを利用して、水素タンクに水素ガスを備蓄しておき、例えば、緊急時に燃料電池ユニット3を稼働させて院内装置・設備に電力を供給することができる。もちろん、通常時においても商用電力を補完する形で電力提供が可能である。この場合、当然に院内装置・設備における省商用電力化も実現する。
【0166】
また、病院8では通常、室内の暖房や温水供給のために熱(熱源)も必要となる。本実施形態では、熱交換ユニット34から熱交換管を介してこのような熱(熱源)を提供することが可能となる。
【0167】
さらに、病院8においては、患者が吸うガスとして、症例に合わせた混合比を有する純酸素と純窒素との混合ガス(人工空気)が必要となる。本実施形態によれば、水素除去ユニット32より窒素ガスを受け取った窒素タンクから、純窒素に近いガスを提供することができる。また、電気分解ユニット42より酸素ガスを受け取った酸素タンクから純酸素(に近い)ガスを提供可能となっている。
【0168】
また、医療機関に特有の事情として、病院8では、各診療部門において様々な医療行為の場面で、逆浸透膜(RO膜,Reverse Osmotic membrane)を用いて製造した純水(RO水)が広く用いられる。本実施形態によれば、燃料電池ユニット3より純水(水蒸気)を受け取った純水タンクから、RO水の原料となる、又はRO水を補完する純水を提供することができる。
【0169】
さらに、燃料電池ユニット3から供給される純水(水蒸気)は、病院8の手術室、外来診療室や、病棟等から回収された各種器材を洗浄したりすすいだりするための洗浄水やすすぎ水として使用可能である。また、オートクレーブ81でのクリーン蒸気用原水として使用されてもよい。
【0170】
ここで、オートクレーブとは、加熱された水の中で、又は当該加熱された水から生成された水蒸気の雰囲気で、対象物を洗浄及び/又は滅菌する高圧蒸気滅菌器である。例えば、最初に予備真空工程として、対象物の入った洗浄・滅菌室の残留空気を真空ポンプによって排出し、その後、純水から生成した高温のクリーン水蒸気を導入して、洗浄・滅菌室内に水蒸気の高温・高圧状態を形成し、対象物の洗浄及び/又は滅菌を行う。
【0171】
このオートクレーブ81に対し、発電システム1は、クリーン水蒸気の原料となる純水と、この純水を加熱してクリーン水蒸気を生成するためのヒータを稼働させたり真空ポンプを駆動させたりする電力とを、まとめて又は一括して提供することができるのである。また当然に、オートクレーブ以外の純水を取り扱う装置に対しても、発電システム1は、少なくとも純水と装置稼働のための電力とを、まとめて又は一括して提供可能となっている。
【0172】
さらに、燃料電池ユニット3から供給される純水(水蒸気)は、病院8において、薬剤調整水、器具洗浄水や、透析用水等として、又はそれらの原料として使用することもできる。ちなみに、病院8で使用される以上に説明したような純水は、その用途に応じて所定の水質基準が定められており、燃料電池ユニット3から純水(水蒸気)を供給するにしても、その純水(水蒸気)に対し、さらに所定の処理を実施し当該基準を満たす水質にした上で提供することになる。例えば、透析用水は、所定のISO基準に準拠した純水でなければならず、特に、エンドトキシンやクロラミン等を除去して透析患者の合併症発症を阻止すべく、硬水軟化処理や限外ろ過処理等の処理を必要とする。
【0173】
以上説明したような発電装置2と病院8とに関係する技術事項をまとめると、以下の通りとなる。
[技術事項1]
電力、水及び窒素を使用してサービスを提供する、又は製品を生産する装置、設備又は建造物に対し、当該電力、当該水及び当該窒素を供給する発電装置であって、
供給された燃料と空気とを用いて当該電力を生成し、排ガス及び水を排出する燃料電池を含む発電部と、
当該排ガスの少なくとも一部から、窒素以外の成分を除去又は低減し、前記医療用装置、設備又は建造物に当該窒素を供給する窒素供給部と、
排出された当該水の少なくとも一部を、前記装置、設備又は建造物に供給する水供給部と
を備えていることを特徴とする発電装置。
[技術事項2]
当該電力、当該水及び当該窒素を提供する対象である前記装置、設備又は建造物は、医療用装置、医療用設備又は病院であることを特徴とする技術事項1に記載の発電装置。
[技術事項3]
加熱された水の中で、又は当該加熱された水から生成された水蒸気の雰囲気で、対象物を洗浄及び/又は滅菌する機器に対し、当該機器で使用される電力を供給する発電装置であって、
供給された燃料と酸素を含む気体とを用いて少なくとも当該電力を生成し、水を排出する燃料電池を含む発電部と、
排出された当該水の少なくとも一部を、当該加熱された水の原料として前記機器に供給する水供給部と
を備えていることを特徴とする発電装置。
[技術事項4]
技術事項3に記載された発電装置を備えた高圧蒸気滅菌器。
【0174】
[水耕栽培システム]
図11は、本発明による発電装置(システム)、及び供給先システムとしての水耕栽培システムの一実施形態を説明するための模式図である。
【0175】
図11に示した実施形態によれば、先に
図1を用いて説明した発電装置2(発電システム1)が、水耕栽培システム9に、電力、熱、窒素ガス、水素ガス、水(純水)、二酸化炭素ガスを供給している。ちなみに、本実施形態の発電装置2は、
図1に示した諸構成ユニットに加えて、後述する雨水回収ユニット43を備えている。
【0176】
この水耕栽培スステム9は、
(9a)薬草や野菜等の植物の水耕栽培を可能とする栽培台911と、光合成光源としてのLED照明装置912とを備えた水耕栽培ユニット91と、
(9b)浄化ユニット93及び窒素固定化ユニット92と、
(9c)肥料化ユニット94と
を備えている。
【0177】
このうち、水耕栽培ユニット91は、
(9a1)発電装置2から受け取った二酸化炭素ガスによって、植物の生育に適した二酸化炭素リッチな環境を生成し、
(9a2)その環境で、同じく発電装置2から供給された水を利用して、栽培台911で必要となる栽培水を確保し、
(9a3)発電装置2から受け取った熱によって、二酸化炭素リッチな環境及び栽培水における気温及び水温を、植物の生育に適したものに制御し、
(9a4)発電装置2から供給された電力によってLED照明装置912を駆動させ、栽培対象植物の生育に適した波長帯域及び強度変化を有する照明光を実現する。
【0178】
また、窒素固定化ユニット92は、発電装置2から窒素ガス(又はオフガス)を受け取り、さらに発電装置2から供給された水素ガス、電力及び熱を用いて、窒素ガス中の窒素分を固定する。具体的には、公知のハーバーボッシュ(Habor Bosch)法に従い、発電装置2から供給された電力及び熱を併用して窒素ガス及び水素ガスを高温(約400~約600℃)且つ高圧(約200~約400気圧)にし、鉄(Fe)系等の触媒の下で反応させて、アンモニア(NH3)を生成することができる。
【0179】
従来、この窒素固定化処理は、化石燃料から水素ガスを製造することも含めると、多量の窒素及び水素のみならず大量のエネルギーを必要とする故、実施の容易ではないプロセスであった。しかしながら、本実施形態によれば、窒素固定化のための原料のみならず、必要とされる大量のエネルギーを、電力及び熱量という形で一括して又はまとめて用意して窒素固定化ユニット92に提供可能であるので、この窒素固定化処理をより容易に実施することができるのである。
【0180】
ちなみに、窒素固定化ユニット92で使用される水素ガスは、電気分解ユニット42で生成されたものに限定されず、例えば燃料電池ユニット3のオフガスから水素除去ユニット32(
図1)によって分離された水素ガスや、ガス改質ユニット31(
図1)で生成された水素ガスであってもよい。勿論、これらの水素ガスがまとめて備蓄された水素タンクから取得された水素ガスとすることもできる。
【0181】
また、浄化ユニット93は、例えば、水耕栽培ユニット91で栽培された薬草や野菜等を含めた薬や食物等を摂取した人や動物の排泄物を回収し、肥料化ユニット94における肥料製造のための原料を生成する。さらに、肥料化ユニット94は、窒素固定化ユニット92及び浄化ユニット93から、それぞれアンモニア及び肥料原料を取得し、公知の肥料サイクルの下、窒素肥料、カリ肥料及びリン酸肥料を製造する。
【0182】
ちなみに、海水が取得可能な状況であれば、肥料化ユニット94は、海水からカリウム分を取得してカリ肥料を製造してもよい。また、火成岩が取得される場合、この火成岩に含まれるカリウム分やリン酸塩分を用いてカリ肥料やリン酸肥料を製造することも可能である。
【0183】
これらの製造された肥料は、製品として販売等してもよいが、例えば栽培台911へ自動的にそれらの量を調整しつつ供給することもできる。栽培台911では、供給された肥料と、発電装置2から供給された水とを原料として栽培水が生成される。ちなみに、この水の供給は、例えば水耕栽培ユニット91内での人工雨として、栽培台911の上方から滴下して行うこともできる。
【0184】
また、栽培台911は、発電装置2から供給された電力を用いて栽培床911aの移動装置を駆動させ、栽培水の水位と栽培対象植物の成長度合いとに合わせて、栽培床911aを上下方向に移動させてもよい。これにより、生育に適した栽培水環境が維持され、例えば根腐れ等も防止される。このような栽培床911aの上下方向位置の調整は、根菜類の薬草や野菜等を栽培する際にも有効となる。例えば、甘草(カンゾウ)は漢方薬の材料として付加価値の高い薬草であるが、通常、根が1m以上に伸長する。したがって、土の栽培では収穫に相当の労力を要し、水耕栽培でも栽培水の水位が問題となる。このような甘草でも、根の成長に合わせて栽培床911aの位置を調整することにより、十分に成長させた上で容易に収穫することが可能となるのである。
【0185】
さらに、別の実施形態とはなるが、栽培台911内の水槽において、又は別に設置され同様に環境を調整された水槽において、プランクトンや魚の養殖を行うことも可能である。例えば、植物プランクトンを大量に栽培して発生する酸素を回収し、例えば発電装置2内に設けられた酸素タンクに備蓄してもよい。
【0186】
ここで、(
図1を用いてすでに説明した事項ではあるが)
図11に示す電気分解ユニット42(電気分解セル421)においても、本来酸素ガスの発生する正電極を炭素電極とすることによって、生成された酸素と電極の炭素とが結び付き、二酸化炭素が生成される。本実施形態では、この二酸化炭素が水耕栽培ユニット91に供給されて、栽培対象植物の成長を促進するのであるが、この炭素電極における消耗した炭素分を、育成した植物によって固定化された(例えばでんぷん等の)炭素を含めた炭素分をもって補充するリサイクルシステムを構成することも可能である。
【0187】
さらに、
図11に示した発電装置2(発電システム1)の雨水回収ユニット43は、雨も水資源として利用すべく雨水を回収し、発電装置2内の純水タンク(又は水タンク)に備蓄する。この際、回収した雨水を、
(a)濾過装置やイオン交換装置を用いてより純度の高い水にしたり、
(b)蓄電ユニット51の熱を用いて蒸留したり、
(c)窒素固定化ユニット92で生成されたアンモニアを用いてペーハー(pH)を調整したり
することによって、所定範囲の水質に調整した上で備蓄することも好ましい。
【0188】
さらに、雨水回収ユニット43は、発電システム1の構成要素として例えば高層建築物の屋上に設置されてもよい。この場合、回収した雨水を、水管を介して地上に設置されたタンクに向けて落下させ、その途中にマイクロ水力発電装置を設けて雨水の位置エネルギーを利用した発電を行い、生成した電力を蓄電ユニット51に保存することも好ましい。
【0189】
以上、
図11を用いて発電装置2(発電システム1)と水耕栽培システム9とのなす系で実施し得る様々な態様を説明した。いずれにしてもその態様によっては、発電装置2(発電システム1)と水耕栽培システム9とが、1つの人工生態系の様相を呈していることが理解される。
【0190】
したがって例えば、本発明を利用して、外部環境から(ある程度若しくは長期にわたり)独立したエネルギー・物質サイクル体制を構築すれば、極地、孤島や、砂漠、さらには宇宙空間や衛星・惑星表面等の環境においても、所望の植物等の生産体制を敷くことが可能となるのである。いずれにしてもエネルギー・物質の生成・消費面で効率的な装置・システムが構築可能となる。
【0191】
以上説明したような水耕栽培システム9に関係する技術事項をまとめると、以下の通りとなる。
[技術事項1]
植物を栽培するための栽培装置に対し、栽培に必要とされる電力を供給する発電装置又はシステムであって、
供給された燃料と空気とを用いて当該電力を生成し、水を排出する燃料電池を含む発電部と、
排出された当該水の少なくとも一部を、前記栽培装置又はシステムに供給する水供給部と
を備えていることを特徴とする発電装置又はシステム。
[技術事項2]
技術事項1に記載された発電装置又はシステムと、当該栽培装置とを備えた栽培システムであって、
前記発電部から排出される排ガスに含まれる窒素ガス分を固定する窒素固定化部と、
前記窒素固定化部で固定化によって生成された窒化物を用いて、前記栽培装置で使用される肥料を生成する肥料化部と
を更に備えていることを特徴とする栽培システム。
[技術事項3]
燃料及び空気を用いて発電を行う燃料電池と、水又は水蒸気を電気分解可能な電気分解装置とを用いて、窒素の固定を行う方法であって、
前記燃料電池から排出される排ガスに含まれる窒素ガスと、前記電気分解装置で生成される水素ガスとを取得し、
前記燃料電池によって生成される電力を用いて、当該窒素ガスと当該水素ガスとを、所定温度以上の温度、及び所定圧力以上の圧力を有する状態にし、
当該状態となった当該窒素ガス及び当該水素ガスを所定の触媒下で反応させる
ことを特徴とする窒素固定方法。
[技術事項4]
前記電気分解装置は、予め設置された太陽電池によって生成される電力によって水又は水蒸気を電気分解し、当該水素ガスを生成することを特徴とする技術事項3に記載の窒素固定方法。
【0192】
以上、本発明によれば、供給先装置又はシステムに対し、燃料電池を備えた発電部(燃料電池ユニット)で生成される電力だけではなく、当該供給先装置又はシステムで必要とされるエネルギーや物質を、まとめて若しくは一括して供給することができる。
【0193】
なお当然に、この供給先装置又はシステムは、以上に説明したものに限定されるものではない。例えば、電力によって加工用レーザを発生させ、被加工物に対し加工中に窒素ガスを吹き付けるレーザ加工装置又はシステムも、この供給先装置又はシステムに該当する。本発明によれば、特に、少なくとも大量の電力と多量の窒素ガスを要求する供給先装置・システムに対し、その要求を容易に満たすことが可能となるのである。
【0194】
なお、以上に述べた実施形態は全て、本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は、他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0195】
1 発電システム
2 発電装置
20 制御部
3 燃料電池ユニット(発電部)
30燃料電池
31 ガス改質ユニット
32 水素除去ユニット
33、33’ 酸素除去ユニット
34 熱交換ユニット
35、35’ 分配器
351 酸素濃度計測センサ
36 空気フィルタ
37 インバータ
38 窒素タンク
41 太陽電池ユニット
421 電気分解セル
422、422’ パラボラ反射鏡
423、423’ 熱吸収管
42 電気分解ユニット
43 雨水回収ユニット
51 蓄電ユニット
52 蓄熱ユニット
53 熱電発電ユニット
6 コンビニ(コンビニエンスストア)
61、65 フライヤ
611、651 油槽
612、652 ヒータ
613、653、682、731 熱交換管
614 温度制御器
614a 温度センサ
615、723 電力線
621、654、681 窒素供給管
622 送風機
623 冷却器
631、655 水素供給管
641 コンベヤ
656 電力調整器
68 ショーケース
683 加熱照明灯
69 高温水供給器
71 雰囲気炉
711 混合・分配器
712 窒素・水素供給管
721 ローラハース
722 ローラハース制御部
8 病院
9 水耕栽培システム
91 水耕栽培ユニット
911 栽培台
911a 栽培床
912 LED照明装置
92 窒素固定化ユニット
93 浄化ユニット
94 肥料化ユニット