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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】開窓用部分を有するステントグラフト
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20230512BHJP
   A61F 2/915 20130101ALI20230512BHJP
   A61F 2/856 20130101ALI20230512BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/915
A61F2/856
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021189539
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2018213502の分割
【原出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2022024124
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】513249851
【氏名又は名称】サナメディ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】大木 隆生
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0259290(US,A1)
【文献】国際公開第2014/096811(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/218474(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0264988(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0102021(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0106175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
A61F 2/915
A61F 2/856
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステント列を含むステントと,前記ステントと接触するグラフトを含み,分枝血管を有する大動脈における大動脈瘤を治療するために用いられるステントグラフトであって,
前記ステントグラフトは,前記グラフトのうち前記複数のステント列と干渉しない部位に,前記分枝血管を温存するための枝ステントグラフトを挿入するための開窓用部分を有し,
前記開窓用部分は,枝ステントグラフトを挿入するための窓を,前記ステントグラフトを埋め込む患者の前記分枝血管に対応した位置に作製するための部分である,ステントグラフトであって,
前記開窓用部分に位置するグラフトである開窓用部分グラフトの周囲に位置するステント列である開窓用部分周囲ステント列は,前記開窓用部分付近の領域にあるグラフトに固定されず,前記開窓用部分グラフトは,前記グラフトのうち開窓用部分グラフト以外の領域にあるグラフト部位よりも伸縮性に優れる,
ステントグラフト。
【請求項2】
請求項1に記載のステントグラフトであって,
前記ステントのうちグラフトに固定されていない部分は,前記開窓用部分周囲ステント列のうち前記開窓用部分が存在する側にのみ存在し,前記開窓用部分の裏側の前記開窓用部分周囲ステント列の部分は,前記グラフトと固定されており,
当該開窓用部分の周辺において湾曲可能なステントグラフト。
【請求項3】
請求項2に記載のステントグラフトであって,
前記開窓用部分周囲ステント列は,複数の山谷構造をとらないループ状である,ステントグラフト
【請求項4】
請求項2に記載のステントグラフトであって,
前記開窓用部分周囲ステント列は,前記複数のステント列のうち前記開窓用部分周囲ステント列以外のステント列に比べて,ステント列の間隔が広い,ステントグラフト
【請求項5】
請求項1に記載のステントグラフトであって,
前記開窓用部分に位置するグラフトである開窓用部分グラフトは,前記グラフトのうち前記開窓用部分グラフト以外の領域にあるグラフト部位と一体的に形成されている,ステントグラフト。
【請求項6】
請求項1に記載のステントグラフトであって,
前記開窓用部分は,レントゲン不透過マーカー固定部を有する,ステントグラフト。
【請求項7】
請求項1に記載のステントグラフトであって,
前記開窓用部分は,前記ステントグラフトを大動脈の所定の位置に留置し,前記分枝血管の位置に合わせて穿刺・貫通器具を用いるか,レーザーを照射することによって作製するための部分である,ステントグラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,開窓用部分を有するステントグラフトに関する。
【背景技術】
【0002】
分枝を含む大動脈瘤を治療するために,人工血管置換術やステントグラフト内挿術が知られている。ステントグラフト内挿術には,例えば開窓型や枝付きのステントグラフトが用いられる。しかし,分枝の位置は患者により異なるので,必要なサイズや形が多くなるので製造や普及の点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5788542号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施術中に例えば大動脈瘤近傍の分枝血管を温存するために任意の場所に枝ステントグラフトを挿入できる開窓用部分のあるステントグラフトが望まれた。従来のステントグラフトではステント列と枝ステントグラフトが干渉するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この明細書に開示される態様の一つは,ステントグラフトに関する。
このステントグラフト1は,
複数のステント列3を含むステント5と,
ステントと接触するグラフト7を含む。
そして,ステントグラフト1は,グラフト7の一部に他のステントグラフトである枝ステントグラフトを挿入しやすくした開窓用部分9を有する。開窓用部分9は,枝ステントグラフトがステントグラフトのステント列と干渉しないための部位である。
【0006】
グラフト7の一部に枝ステントグラフトを挿入しやすくした開窓用部分を有するので,このステントグラフトのステント列と枝ステントグラフトが干渉することなく,開窓用部分を用いて枝ステントグラフトを挿入できる。
【0007】
このステントグラフトの好ましい態様は,複数のステント列3のうち,開窓用部分の周囲に位置するステント列である開窓用部分周囲ステント列11は,少なくとも一部が,グラフト7に固定されていない。このようにすることで,ステント列と枝ステントグラフトが干渉する事態をより効果的に防止できる。
【0008】
このステントグラフトの好ましい態様は,開窓用部分周囲ステント列11が,複数の山谷構造をとらないループ状である。このような構造を有するので,このステントグラフトは,ループ状ステント列と枝ステントグラフトが干渉する事態をより効果的に防止できる。
【0009】
このステントグラフトの好ましい態様は,開窓用部分周囲ステント列11は,他のステント列に比べて,ステント列の間隔が広い。このような構造を有するので,このステントグラフトは,ステント列と枝ステントグラフトが干渉する事態をより効果的に防止できる。
【0010】
このステントグラフトの好ましい態様は,
開窓用部分に位置するグラフトである開窓用部分グラフトは,グラフトのうち開窓用部分グラフト以外の領域にあるグラフト部位より穿刺しやすく,耐久性及び伸縮性に優れるものである。このような構造を有するので,このステントグラフトは,耐久性に優れ、枝ステントグラフト挿入後に漏れが生じる事態を防止できる。
【0011】
このステントグラフトの好ましい態様は,
開窓用部分は,レントゲン不透過マーカー固定部19を有する。。このような構造を有するので,このステントグラフトは,レントゲン透視下で,開窓用部分を同定することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば,枝ステントグラフトを挿入できる開窓用部分のあるステントグラフトを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は,この明細書に開示される態様の一つであるステントグラフトの概念図である。
図2図2は,開窓用部分周囲ステント列が現存するステント列と構造が異なるものの例を示す概念図である。
図3図3は,開窓用部分周囲ステント列の間隔が他のステント列の間隔に比べて間隔が広いものの例を示す概念図である。
図4図4は,開窓用部分周囲ステント列の少なくとも一部が,グラフトに固定されていないものの例を示す概念図である。
図5図5は,開窓用部分に相当する部分のグラフトを厚くしたものの例を示す概念図である。
図6図6は,開窓用部分に相当する部分のグラフトを厚くしたものの例を示す概念図である。
図7図7は,通常のステントに枝ステントを挿入するための窓用部分を設けたものの例を示す概念図である。
図8図8は,ステントグラフトに穴をあけている様子を示す図面に代わる写真である。
図9図9は,ステントグラフトに穴をあけている様子を示す図面に代わる写真である。
図10図10は,枝ステントグラフトを有するステントグラフトの例を示す図面に代わる写真である。
図11図11は,枝ステントグラフトを有するステントグラフトの例を示す図面に代わる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0015】
図1は,この明細書に開示される態様の一つであるステントグラフトの概念図である。図1に示されるように,このステントグラフト1は,複数のステント列3を含むステント5と,ステントと接触するグラフト7を含む。ステント列3の数は,ステントグラフトによって変動するものの,ステント列3の数の例は,2以上50以下であり,4以上20以下でもよいし,5以上15以下でもよい。
【0016】
この一例であるステントグラフト1は,その軸方向(Z軸方向)に沿って延在する筒状(円筒状)構造を有する。なお,ステントグラフト1の軸方向に沿った長さの例は,10~30cmである。この長さは,用途や対象によって変動する。ステントグラフト1の拡張時の外径の例は,20~50mmである。
【0017】
ステント5は,例えば,1または複数の線材(素線)を用いて構成されている。そして,ステントは,例えば,筒状(円筒状)構造を有している。ステントは,複数のステント列3を有するものであってもよい。それぞれのステント列は,山及び谷を有する波型を有していてもよく,それぞれのステント列が環状になっていてもよい。ステントは,筒状構造が網目状構造により構成されていると共に,このような筒状の網目状構造が,線材を所定のパターンで編み組むことにより形成されていてもよい。線材をジグザグ状に折り曲げて円筒状に加工したものを1つ以上配置することで,筒状の網目状構造を形成するようにしてもよい。
【0018】
ステント5を構成する線材の材料は,金属線材が好ましく,特に熱処理による形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金が好ましい。線材の材料の例は,ステンレス,タンタル(Ta),チタン(Ti),白金(Pt),金(Au),タングステン(W)等を用いてもよい。形状記憶合金の例は,ニッケル(Ni)-Ti合金,銅(Cu)-亜鉛(Zn)-X(X=アルミニウム(Al),鉄(Fe)等)合金,Ni-Ti-X(X=Fe,Cu,バナジウム(V),コバルト(Co)等)合金である。線材合成樹脂を用いてもよい。線材は,金属線材の表面に例えばAu,Ptを被覆したものであってもよい。
【0019】
グラフト7は,例えば,図1に示したように筒状(円筒状)の形状を有しており,ステント5の少なくとも一部分を覆う(被覆する)か,又はステント5の内部に位置するように配置される。例えば,グラフト7がステント5(線材)の外周側を覆うように配置されることが好ましい。各ステント列3はグラフトと固定されていてもよい。
【0020】
このグラフト7は,例えば,縫着,接着,溶着によって,ステント5と連結(固定)されていてもよい。この場合,グラフト7は,ステント5の伸縮に影響を及ぼさないように,ステント5を被覆および連結することが好ましい。なお,このようなグラフト7とステント5との連結部は,例えば,ステント5の両端部や中間部などに適宜設けられればよい。
【0021】
このようなグラフト7の例は,熱可塑性樹脂を押出し成形やブロー成形などの成形方法で筒状に形成したもの,筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維や極細な金属線からなる編織物,筒状に形成した熱可塑性樹脂や極細な金属からなる不織布,筒状に形成した可撓性樹脂のシートや多孔質シート,溶剤に溶解された樹脂をエレクトロスピニング法によって肉薄の筒状に形成した構造体である。
【0022】
編織物の例は,平織,綾織などの公知の編物や織物である。また,グラフトとして,クリンプ加工などのヒダの付いたものを使用できる。グラフトとして,円筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の編織物,更には筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の平織りの織物が,強度や有孔度,生産性が優れるため,好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂の例は,ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン-α-オレフィン共重合体などのポリオレフィン,ポリアミド,ポリウレタン,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリシクロヘキサンテレフタレート,ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどのポリエステル,ポリフッ化エチレンやポリフッ化プロピレンなどのフッ素樹脂等,耐久性および組織反応の少ない樹脂である。なお,これらのうち,特に,化学的に安定で耐久性が大きく,かつ組織反応の少ない,ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル,ポリフッ化エチレンやポリフッ化プロピレンなどのフッ素樹脂を具フラフとの素材として好ましく用いることができる。
【0024】
グラフトは,弾性の強い素材を用いることが好ましい。弾性の強い素材を用いれば,枝ステントグラフトを差し込んだ際に,血液が漏れる事態を防止できる。もっとも,ステントグラフトが血圧で拡張しない素材であることが好ましい。ステントグラフトは,,穿刺部をバルーンで10気圧程度に拡張する際には広がるものの,血圧では拡張しないものが好ましい。このようなステントグラフトは,公知である。
【0025】
そして,ステントグラフト1は,グラフト7の一部に他のステントグラフトである枝ステントグラフトを挿入しやすくした開窓用部分9を有する。開窓用部分は,枝ステントグラフトを挿入することが意図された部位である。ステントグラフト1は,開窓用部分9を適切な箇所に設置すればよい。開窓用部分9の数は,対象となる部位に応じて適宜調整すればよく,1か所でもよいし,2か所又は3か所以上であってもよい。また,開窓用部分は,患者ごとに設計されてもよい。開窓用部分を有するので,このステントグラフト1は,例えば,大動脈などの所定の位置に留置したステントグラフトに,分岐血管の位置に合わせて穿刺・貫通器具を用いるかや,レーザーを照射することによって枝ステントグラフトを挿入するための窓を作製できる。開窓用部分9の形状は,対象となる枝ステントグラフトに合わせて適宜調整すればよい。開窓用部分9の形状の例は,円形,楕円形,角が丸い長方形,及びラグビーボール状である。開窓用部分9の大きさは,対象となる枝ステントグラフトの形状等を考慮して設計すればよい。開窓用部分9の大きさの例は,横0.2cm以上4cm以下かつ縦0.5cm以上10cm以下の領域内に収まる形状,横0.5cm以上2cm以下かつ縦1.5cm以上6cm以下の領域内に収まる形状,横0.8cm以上1.2cm以下かつ縦2cm以上4cm以下の領域内に収まる形状である。
【0026】
グラフト7の一部に枝ステントグラフトを挿入しやすくした開窓用部分を有するので,このステントグラフトは,開窓用部分を用いて分岐血管の位置に合わせて穿刺・貫通器具やレーザーによって枝ステントグラフトを挿入するための窓を作製できる。そして,この窓を用いて,容易に、ステント列と干渉することなく枝ステントグラフトを挿入できる。
【0027】
図2は,開窓用部分周囲ステント列が他のステント列と構造が異なるものの例を示す概念図である。図2に示されるように,このステントグラフトの好ましいある態様は,開窓用部分周囲ステント列11が,複数の山谷構造をとらないループ状である。この態様では,開窓用部分周囲ステント列11の構造が,他のステント列3の構造と異なるものであることが好ましい。つまり,この態様の開窓用部分周囲ステント列11は,開窓用部分9を作成しやすくすることが意図され,他のステント列3は通常のステントと同様に,弾性や強度を維持することが意図されている。開窓用部分周囲ステント列11の形状の例は,数学記号の無限大の構造(8を横にした構造)をとるループ状であるか,ステントの軸(z軸)と直交する平面上に設けられるリング状,又はステントの軸と斜めに交差する平面上に設けられるリング状のものである。
【0028】
図3は,開窓用部分周囲ステント列の間隔が他のステント列の間隔に比べて間隔が広いものの例を示す概念図である。図3に示されるように,ステントグラフトの好ましい態様は,開窓用部分周囲ステント列11は,他のステント列に比べて,ステント列の間隔が広いものである。ステント列の幅を広くすることにより,窓を作製するスペースを予め十分に確保できる。2つの開窓用部分周囲ステント列11の間隔の例は,0.5cm以上4cm以下であり,1cm以上2cm以下でもよい。2つの開窓用部分周囲ステント列11の間隔は,他のステント列の間隔の1.1倍以上3倍以下でもよいし,1.2倍以上2.5倍以下でもよいし,1.4倍以上2.4倍以下でもよい。この例では,図4と同様にこのステントのうちグラフトに固定されていない部分15が存在してもよい。
【0029】
図4は,開窓用部分周囲ステント列の少なくとも一部が,グラフトに固定されていないものの例を示す概念図である。図4に示されるように,このステントグラフトの好ましい態様は,複数のステント列3のうち,開窓用部分9の周囲に位置するステント列である開窓用部分周囲ステント列11は,少なくとも一部が,グラフト7に固定されていない。このステントのうちグラフトに固定されていない部分15により,枝ステントグラフト用の穴を開けることが容易になり、またステント列と枝ステントグラフトが干渉しない。この部分15は,開窓用部分周囲ステント列11のうち開窓用部分9が存在する側にのみ存在し,開窓用部分9の裏側の開窓用部分周囲ステント列11の部分は,グラフトと固定されていてもよい。また,他のステント列がグラフトと固定されているのに対し,開窓用部分周囲ステント列11の全体が,グラフトと固定されていない状態であってもよい。通常,開窓用部分9は,2つの開窓用部分周囲ステント列11の間に存在する。開窓用部分周囲ステント列11は,開窓用部分9の付近の領域が,グラフト7に固定されず,開窓用部分9から離れた部位はグラフト7に固定されていてもよい。開窓用部分周囲ステント列11の全長(線材を伸ばした長さ)のうち,グラフト7に固定されない部分は,5%以上70%以下でもよいし,10%以上50%以下でもよいし,10%以上40%以下でもよいし,10%以上30%以下でもよいし,15%以上30%以下でもよい。グラフト7に固定されない部分は,連続していることが好ましい。グラフト7に固定されない部分は,開窓用部分9が存在する部分を中心として存在してもよいし,窓を開けやすさを考慮して,開窓用部分9が存在する部分からずれた位置を中心として存在してもよい。開窓用部分9の付近の領域が,グラフト7に固定されないので,この部分に開窓用部分9を形成しやすくなる。
【0030】
図5は,開窓用部分に相当する部分のグラフトを厚くしたものの例を示す概念図である。図6は,開窓用部分に相当する部分のグラフトを厚くしたものの例を示す概念図である。このステントグラフトの好ましい態様は,開窓用部分9に位置するグラフト7である開窓用部分グラフトは,グラフトのうち開窓用部分グラフト以外の領域にあるグラフト部位よりも厚いか,伸縮性に優れるものである。グラフトの厚みを増したり,伸縮性をもたせることにより,窓を作製することによりグラフトの強度が低下し破断,接合部からの血液の漏れに至るリスクを低減できる。図5及び図6に示されるように,開窓用部分に相当する部分のグラフトに別のグラフト17を重ねて固定してもよい。開窓用部分グラフトは,他の部位に比べて穿刺しやすいものであることが好ましい。例えば,グラフトのうち開窓用部分グラフト以外の領域にあるグラフト部位よりも厚いことで,グラフト部分のぐらつきが抑えられ,枝ステントや枝ステント用の穴を設けるための器具を穿刺しやすくなる。
【0031】
このステントグラフトの好ましい態様は,開窓用部分は,レントゲン不透過マーカーが固定されたレントゲン不透過マーカー固定部19を有するものである。レントゲン不透過マーカー固定部を有するので,枝ステントグラフトを挿入する際に,X線などで位置を確認しつつ施術できる。レントゲン不透過マーカーは,乾燥後も人工血管の剛性に影響を与えないものが好ましい。レントゲン不透過マーカーの例は,ヨード化ケシ油エチルエステル(特許第5959118号),硫酸バリウム(特許4798662号)である。レントゲン不透過マーカーを含んだ糸をグラフトに縫い付けることでレントゲン不透過マーカー固定部を形成してもよい。
【0032】
このステントグラフトは,対象となる患者に埋め込む。その後,開窓用部分に穴をあける。図7に参考例として示すように,ステント列が同形でステント列の間隔が一定の場合の例を示す概念図である。図7に示されるように従来のステントグラフトをそのまま用いると,開窓用部分の穴の位置によっては,ステントグラフトの金属ステントの存在のため枝ステントを設けるためのスペースが十分に確保できない。図8及び図9は,従来のステントグラフトに穴をあけている様子を示す図面に代わる写真である。そして,その穴部に枝ステントグラフト21を挿入する。枝ステントグラフトは,枝ステントグラフトの拡張力でステントグラフトと固定する。このようにして,枝ステントグラフトを有するステントグラフトを患者の体内に設置できることとなる。図10及び図11は,枝ステントグラフトを有するステントグラフトの例を示す図面に代わる写真である。図10及び図11の例では,開窓用部分の穴が偶然にも適切な位置にあけられ,枝ステントを設けるスペースが確保できているが実臨床ではこのように指摘位置を選択できない。一方,本申請のステントグラフトでは開窓用部分を穿刺すれば枝ステントグラフトを挿入し,拡張・固定する上で障害がない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は,医療機器の分野で利用され得る。
【符号の説明】
【0034】
1 ステントグラフト
3 ステント列
5 ステント
7 グラフト
9 開窓用部分
11 開窓用部分周囲ステント列
15 ステントのうちグラフトに固定されていない部分
17 グラフト
19 レントゲン不透過マーカー固定部
21 枝ステントグラフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11