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  • 特許-接合用の導電性ペースト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】接合用の導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/32 20060101AFI20230512BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20230512BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230512BHJP
   C09J 193/00 20060101ALI20230512BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230512BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H05K3/32 B
C09J9/02
C09J11/04
C09J193/00
H01B1/22 A
H01L21/52 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2016184511
(22)【出願日】2016-09-21
(65)【公開番号】P2018049940
(43)【公開日】2018-03-29
【審査請求日】2019-09-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発/高熱伝導性高耐熱接合材の開発(インキュベーション研究開発+実用化開発)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 有美
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】山田 正文
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-29832(JP,A)
【文献】特表2013-510220(JP,A)
【文献】特開平10-128577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/32
C09J9/02
C09J11/04
C09J193/00
H01B1/22
H01L21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を含む基板を準備する工程と、
導電層の上に導電性ペーストを塗布する工程であって、導電性ペーストが、
100重量部の金属粉であって、銀、銅、ニッケル、これらの合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属粉、
5~20重量部の溶媒
0.01~3重量部の接着剤、および
任意選択的に、ポリマー
からなる、接合用の導電性ペーストであり、接着剤は、天然樹脂、天然樹脂誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、工程と、
塗布された導電性ペーストの上に電子部品を搭載する工程と、
導電性ペーストを、80~400℃の温度範囲で加熱して、導電層と電子部品とを接合する工程とを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
接着剤は天然樹脂であり、天然樹脂が、ロジン、ダンマルガム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
接着剤は天然樹脂誘導体であり、天然樹脂誘導体が、水素化ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル、ロジン含有ジオール、およびこれらの混合物からなる群から選択されたロジン誘導体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
溶媒は、テキサノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、ターピネオール、カルビトールアセテート、エチレングリコール、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、ジブチルアセテートプロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ソルベントナフサ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
金属粉の粒径(D50)は、0.01~5μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
導電性ペーストは、0.01~3重量部の前記ポリマーを含み、前記ポリマーはエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
電子部品が、半導体チップである、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
電子部品が、ニッケル、金、およびこれらの合金からなる群から選択されるメッキ層を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
導電層の上に導電性ペーストを塗布した後、塗布された導電性ペーストの上に電子部品を搭載する前に、40~150℃で乾燥する工程を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合用の導電性ペーストおよびこれを用いた電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは半導体チップのような電子部品を有し、その電子部品は基板の導電層に導電性ペーストで接合されている。電子部品は、導電層の上に塗布された導電性ペーストの上にマウントされた後、導電性ペーストを加熱することで、基板の導電層と物理的にも電気的にも接合する。加熱後の電子部品および基板の接合が良好な電子デバイスが求められている。特許文献1は、電子デバイスの製造のための接合材を開示している。接合材は、粒径が1~200nmである銀ナノ粒子とオクタンジオールからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-069710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、電子部品を基板に十分に接合させるための導電性ペースト、およびこれを用いた電子デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための手段の一例は、導電層を含む基板を準備する工程と、
導電層の上に導電性ペーストを塗布する工程であって、導電性ペーストが、100重量部の金属粉、5~20重量部の溶媒、および、0.01~3重量部の接着剤を含む、接合用の導電性ペーストであり、接着剤は、天然樹脂、天然樹脂誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、工程と、
塗布された導電性ペーストの上に電子部品を搭載する工程と、
導電性ペーストを加熱して、導電層と電子部品とを接合する工程とを含む、電子デバイスの製造方法である。
【0006】
ここで、ある実施態様では、接着剤は天然樹脂であり、天然樹脂が、ロジン、ダンマルガム、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0007】
また、ある実施態様では、接着剤は天然樹脂誘導体であり、天然樹脂誘導体が、水素化ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル、ロジン含有ジオール、およびこれらの混合物からなる群から選択されたロジン誘導体である。
【0008】
また、ある実施態様では、溶媒は、テキサノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、ターピネオール、カルビトールアセテート、エチレングリコール、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、ジブチルアセテートプロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ソルベントナフサ、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0009】
また、ある実施態様では、金属粉の粒径(D50)は、0.01~5μmである。
【0010】
また、ある実施態様では、導電性ペーストは、さらに0.01~3重量部のポリマーを含み、ポリマーはエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0011】
また、ある実施態様では、電子部品が、半導体チップである。また、ある実施態様では、電子部品が、ニッケル、金、およびこれらの合金からなる群から選択されるメッキ層を含む。
【0012】
ここで、ある実施態様では、導電層の上に導電性ペーストを塗布した後、塗布された導電性ペーストの上に電子部品を搭載する前に、40~150℃で乾燥する工程を更に含む。
【0013】
本発明の課題を解決するための手段の別の例は、100重量部の金属粉、5~20重量部の溶媒、および、0.01~3重量部の接着剤を含む、接合用の導電性ペーストであって、接着剤は、天然樹脂、天然樹脂誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、導電性ペーストである。
【0014】
ここで、ある実施態様では、接着剤は天然樹脂であり、天然樹脂が、ロジン、ダンマルガム、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0015】
また、ある実施態様では、接着剤は天然樹脂誘導体であり、天然樹脂誘導体が、水素化ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル、ロジン含有ジオール、およびこれらの混合物からなる群から選択されたロジン誘導体である。
【0016】
また、ある実施態様では、溶媒は、テキサノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、ターピネオール、カルビトールアセテート、エチレングリコール、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、ジブチルアセテートプロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ソルベントナフサ、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0017】
また、ある実施態様では、金属粉の粒径(D50)は、0.01~5μmである。
【0018】
また、ある実施態様では、導電性ペーストは、さらに0.01~3重量部のポリマーを含み、ポリマーはエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の接合用の導電性ペーストおよびこれを用いた電子デバイスの製造方法によれば、電子部品を基板に十分に接合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電子デバイスの断面の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
電子デバイスは、少なくとも導電層を有する基板と電子部品を含んでいる。基板の導電層と電子部品は、導電性ペーストによって接合される。以下、図1を参照して、電子デバイス100の製造方法の一例を説明する。なお、ある実施態様における数値範囲の下限値および上限値は、それぞれ別の実施態様における数値範囲の上限値および下限値と組み合わせることができる。
【0022】
まず、導電層103を有する基板101を準備する。導電層103は、良導体および半導体を含む概念である。ある実施態様において、導電層103は、電子回路、電極、または電子パットである。ある実施態様において、導電層103は、金属層である。別の実施態様では、金属層は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金を含む。別の実施態様では、導電層103は、銅層または銀層である。なお、図1において導電層103と基板101とが分離して描かれているが、本発明は、基板の上面が導電層として構成される場合を含み、基板と導電層とが一体的に構成される場合を含む。
【0023】
導電性ペースト105は、接合用の導電性ペーストである。導電性ペースト105は、良導体と良導体、良導体と半導体、または半導体と半導体を接合することができる。導電性ペースト105は、導電層103の上に塗布される。塗布された導電性ペースト105は、ある実施態様において50~500μmの厚さ、別の実施態様において80~300μmの厚さ、別の実施態様において100~200μmの厚さ、を有する。ある実施態様において、導電性ペースト105は、スクリーン印刷で塗布される。別の実施態様において、スクリーン印刷のためにメタルマスクが用いられる。
【0024】
塗布された導電性ペースト105の層は、任意で、乾燥される。乾燥温度は、ある実施態様において40~150℃、別の実施態様において50~120℃、別の実施態様において60~100℃である。乾燥時間は、ある実施態様において10~150分、別の実施態様において15~80分、別の実施態様において20~30分である。
【0025】
導電性ペースト105の層の上に電子部品107を搭載する。電子部品107は、電気的に機能するものであれば、特に限定されない。ある実施態様において、電子部品107は、半導体チップ、ICチップ、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップインダクタ、センサーチップ、およびこれらの組合せからなる群より選択される。別の実施態様では、電子部品107は、半導体チップである。別の実施態様では、半導体チップは、SiチップまたはSiCチップである。
【0026】
ある実施態様において、電子部品107は、メタライゼーション層を含んでいる。別の実施態様において、メタライゼーション層は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群より選択される。別の実施態様において、メタライゼーション層は、金および/またはニッケルを含んでいる。別の実施態様において、メタライゼーション層は、金層およびニッケル層の積層構造を含んでいる。ある実施態様において、電子部品107がメタライゼーション層を有する場合、メタライゼーション層は、導電性ペースト105の層と接する。別の実施態様において、メタライゼーション層は、メッキである。
【0027】
導電性ペースト105の層は加熱される。加熱の温度は、ある実施態様において80~400℃、別の実施態様において100~310℃、別の実施態様において120~290℃である。加熱時間は、ある実施態様において1秒~30分、別の実施態様において3秒~20分、別の実施態様において3~15分、別の実施態様において5~10分、ある実施態様において0.1~5分、ある実施態様において0.5~3分、ある実施態様において5~20分、ある実施態様において10~20分である。導電性ペースト105は、比較的低温で接合させることができるため、電子部品107の熱によるダメージを抑えられる。
【0028】
ある実施態様では、加熱する工程は、第1加熱工程および第2加熱工程を含む。本発明による導電性ペーストは、電子部品を低温(例えば100~200℃)で基板に接合させることができるので、第1加熱工程において低温にてある程度電子部品を基板に接合させて、第2加熱工程において電子部品を基板に強く接合させることができる。加熱する工程を2つに分けることで、電子部品が、より確実に、あるいは、より強く基板に接合しうる。第1加熱工程の加熱温度は、ある実施態様では80~195℃、別の実施態様では90~180℃、別の実施態様では100~165℃、である。第1加熱工程の加熱時間は、ある実施態様では1~100秒、別の実施態様では3~60秒、である。第2加熱工程の加熱温度は、ある実施態様では200~400℃、別の実施態様では210~350℃、別の実施態様では230~300℃、である。第2加熱工程の加熱時間は、ある実施態様において0.1~30分、別の実施態様において1~20分、である。
【0029】
ある実施態様において、加熱雰囲気は、還元雰囲気またはエアー雰囲気である。別の実施態様では、還元雰囲気は、N2雰囲気である。別の実施態様では、加熱雰囲気は、エアー雰囲気である。
【0030】
ある実施態様において、任意で、加熱中に電子部品107を加圧する。加圧により電子部品107は、導電性ペースト105の層により強く接合しうる。加圧は、ある実施態様において少なくとも0.1MPa、別の実施態様において少なくとも1MPa、別の実施態様において少なくとも3MPa、別の実施態様において少なくとも7MPa、別の実施態様において少なくとも15MPa、別の実施態様において少なくとも25MPa、である。加圧は、ある実施態様において45MPa以下、別の実施態様において40MPa、別の実施態様において36MPa以下、別の実施態様において25MPa以下、別の実施態様において15MPa以下、である。別の実施態様において、電子部品107は、加圧することなく接合される。加熱には、オーブンまたはダイボンダーを用いることが出来る。
【0031】
以下、導電性ペースト105の組成について説明する。導電性ペースト105は、金属粉、溶媒、および接着剤を含む。
【0032】
金属粉
ある実施態様において、金属粉は、銀、銅、金、パラジウム、プラチナ、ロジウム、ニッケル、アルミニウム、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群から選択される。別の実施態様において、金属粉は、銀、銅、ニッケル、これらの合金、およびこれらの組合せからなる群から選択される。別の実施態様において、金属粉は、銀である。
【0033】
ある実施態様において、金属粉の形状は、フレーク状、球形、不定形、あるいはこれらの混合粉である。別の実施態様において、金属粉の形状は、フレーク状および球形の混合粉である。
【0034】
ある実施態様において、金属粉の粒径(D50)は少なくとも0.01μm、別の実施態様において、少なくとも0.05μm、別の実施態様において、少なくとも0.07μm、別の実施態様において、少なくとも0.1μm、別の実施態様において、少なくとも0.2μm、別の実施態様において、少なくとも0.3μmである。ある実施態様において、金属粉の粒径(D50)は5μm以下、別の実施態様において3μm以下、別の実施態様において2μm以下である。このような粒径であると溶媒に良好に分散する。なお、本願における粒径(D50)は、マイクロトラックX-100型を用いてレーザー回折法で測定する体積平均粒子径(D50)である。
【0035】
ある実施態様において、金属粉は、導電性ペースト105の総重量に対して、少なくとも60重量%、別の実施態様では少なくとも72重量%、別の実施態様では少なくとも80重量%、別の実施態様では少なくとも85重量%である。ある実施態様において、金属粉は、導電性ペースト105の総重量に対して、97重量%以下、別の実施態様では95重量%以下、別の実施態様では93重量%以下である。
【0036】
溶媒
金属粉は、溶媒に分散して導電性ペースト105を構成する。溶媒は、導電性ペースト105を基板101あるいは導電層103の上に塗布しやすいように粘度を調節するためにも使える。溶媒の全てもしくは多くは、乾燥工程もしくは加熱工程において、導電性ペースト105から蒸発する。
【0037】
溶媒の分子量は、ある実施態様において600以下、別の実施態様において520以下、別の実施態様において480以下、別の実施態様において400以下である。ある実施態様において、溶媒の分子量は少なくとも10、別の実施態様において少なくとも100、別の実施態様において少なくとも150、別の実施態様において少なくとも180である。
【0038】
溶媒の沸点は、ある実施態様において100~450℃、別の実施態様において150~320℃、別の実施態様において200~290℃である。溶媒は、ある実施態様において有機溶媒である。
【0039】
溶媒は、ある実施態様において、テキサノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、ターピネオール、カルビトールアセテート、エチレングリコール、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、ジブチルアセテートプロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、ソルベントナフサ、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0040】
ある実施態様における導電性ペースト105の粘度は、チタン製コーンプレートC20/1°を用いたレオメータ(HAAKETM MARSTMIII、Thermo Fisher Scientific Inc.)で測定したとき、シアレート10s-1において10~300Pa・sである。導電性ペースト105の粘度は、別の実施態様において11~100Pa・s、別の実施態様において12~50Pa・s、である。
【0041】
溶媒は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において少なくとも5重量部、別の実施態様では少なくとも6.5重量部、別の実施態様では少なくとも7.8重量部、別の実施態様では少なくとも8.8重量部である。溶媒は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において20重量部以下、別の実施態様では15重量部以下、別の実施態様では13重量部以下である。溶媒は、導電性ペースト105の総重量に対して、少なくとも2重量%、別の実施態様では少なくとも4重量%、別の実施態様では少なくとも6重量%、別の実施態様では少なくとも7.5重量%である。ある実施態様において、溶媒は、導電性ペースト105の総重量に対して、25重量%以下、別の実施態様では20重量%以下、別の実施態様では15重量%以下である。
【0042】
接着剤
接着剤は、天然樹脂、天然樹脂誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
ある実施態様では、接着剤は天然樹脂であり、天然樹脂が、ロジン、ダンマルガム、およびこれらの混合物からなる群から選択される。ある実施態様では、天然樹脂はロジンである。ロジンは、アビエチン酸、レボピマール酸、パルストリン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、或いはジヒドロアビエチン酸などの樹脂酸を主成分とする天然樹脂の1種である。ロジンは、ある実施態様では、トール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。別の実施態様では、天然樹脂はダンマルガムである。ダンマルガム(CAS.No.9000-16-2)は、天然樹脂の1種である。
【0044】
別の実施態様では、接着剤は天然樹脂誘導体であり、天然樹脂誘導体が、水素化ロジン、酸変性ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル、ロジン含有ジオール、およびこれらの混合物からなる群から選択されたロジン誘導体である。ロジン誘導体は、ロジンを変性、重合、精製等の処理をした化合物である。ロジン誘導体は、別の実施態様では、水素化ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル、およびこれらの混合物からなる群から選択される。酸変性ロジンは、マレイン酸、フマル酸やアクリル酸などの不飽和酸を付加した不飽和酸変性ロジンである。
【0045】
別の実施態様では、ロジン誘導体は、水素化ロジンである。水素化ロジンは、ロジンを水素化したものをいう。水素化ロジンは、ある実施態様では、テトラヒドロアビエチン酸を含む。テトラヒドロアビエチン酸は、ある実施態様では、水素化ロジンの重量に対して、少なくとも50質量%である。
【0046】
別の実施態様では、ロジン誘導体は、ロジンエステルである。ロジンエステルは、ロジンをエステル化反応させて得られる化合物である。ロジンエステルは、ある実施態様では、アルキルエステル、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
接着剤の軟化点は、ある実施態様では50~150℃、別の実施態様では60~140℃、別の実施態様では65~128℃、別の実施態様では70~120℃、別の実施態様では95~115℃、である。
【0048】
接着剤の酸価は、ある実施態様では1~250mgKOH/g、別の実施態様では5~220mgKOH/g、別の実施態様では6~210mgKOH/g、別の実施態様では10~195mgKOH/g、別の実施態様では11~25mgKOH/g、である。酸価は化学構造式から算出することができる。また、適当な溶剤、例えばMEKに溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
【0049】
接着剤は、市販のものを使用することができる。市販品としては、たとえば、荒川化学工業(株)製のロンヂス(登録商標)シリーズ、パインクリスタル(登録商標)シリーズ、タマノル(登録商標)シリーズ、サイズパイン(登録商標)シリーズ、マルキード(登録商標)シリーズ、トラフィックス(登録商標)シリーズ、エステルガム(登録商標)シリーズ、ペンセル(登録商標)シリーズ、アラダイム(登録商標)シリーズ、ハイペール(登録商標)シリーズ、ビームセット101;Eastman Chemical Company製のForalyn(登録商標)シリーズ、STAYBELITE-E(登録商標)、Foral(登録商標)が挙げられる。
【0050】
接着剤は、金属粉を100重量部としたとき、少なくとも0.01重量部、別の実施態様では少なくとも0.05重量部、別の実施態様では少なくとも0.1重量部、別の実施態様では少なくとも0.3重量部、である。接着剤は、金属粉を100重量部としたとき、3重量部以下、別の実施態様では2.8重量部以下、別の実施態様では2.2重量部以下、別の実施態様では1.5重量部以下、別の実施態様では1.0重量部以下、別の実施態様では0.7重量部以下、別の実施態様では0.5重量部以下、である。
【0051】
接着剤は、導電性ペースト105の総重量に対して、ある実施態様において少なくとも0.01重量%、別の実施態様では少なくとも0.05重量%、別の実施態様では少なくとも0.1重量%、別の実施態様では少なくとも0.3重量%、である。接着剤は、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において3重量%以下、別の実施態様では2.8重量%以下、別の実施態様では2.2重量%以下、別の実施態様では1.5重量%以下、別の実施態様では1.0重量%以下、別の実施態様では0.7重量%以下、別の実施態様では0.5重量%以下、である。
【0052】
ポリマー
任意で、導電性ペースト105は、ポリマーを含む。ポリマーは、溶媒に可溶性である。ポリマーは、1,000以上の分子量(Mw)をもつ。ポリマーの分子量は、ある実施態様においては5,000~900,000、別の実施態様においては8,000~780,000、別の実施態様では10,000~610,000、別の実施態様では18,000~480,000、別の実施態様では25,000~350,000、別の実施態様では32,000~200,000、である。なお、本願における分子量(Mw)は、重量平均分子量を意味する。分子量は、高速液体クロマトグラフィー(Alliance 2695、日本ウォーターズ株式会社)等で測定されうる。
【0053】
ポリマーは、ある実施態様において、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、およびこれらの混合物からなる群から選択される。ポリマーは、別の実施態様において、エチルセルロースである。
【0054】
ポリマーのガラス転移点は、ある実施態様において-30~250℃、別の実施態様において10~180℃、別の実施態様において80~150℃、である。
【0055】
ポリマーは、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において少なくとも0.01重量部、別の実施態様では少なくとも0.1重量部、別の実施態様では少なくとも0.2重量部、である。ポリマーは、金属粉を100重量部としたとき、ある実施態様において3重量部以下、別の実施態様では2.8重量部以下、別の実施態様では1.8重量部以下、別の実施態様では1.0重量部以下、別の実施態様では0.7重量部以下、である。
【0056】
ポリマーは、導電性ペースト105の総重量に対して、少なくとも0.01重量%、別の実施態様では少なくとも0.05重量%、別の実施態様では少なくとも0.1重量%、別の実施態様では少なくとも0.15重量%である。ある実施態様において、ポリマーは、導電性ペースト105の総重量に対して、2重量%以下、別の実施態様では1重量%以下、別の実施態様では0.5重量%以下、である。
【0057】
導電性ペースト105の所望する特性に合わせて、界面活性剤、分散剤、乳化剤、安定剤、可塑剤などの添加剤をさらに含めることができる。ある実施態様において、導電性ペースト105は、ガラスフリットを含まない。ある実施態様において、導電性ペースト105は、硬化剤または架橋材を含まない。
【実施例
【0058】
本発明は以下の実施例によって説明されるが、それらに限定されない。
導電性ペーストを以下の手順によって調製した。
【0059】
[実施例1]
100重量部の銀粉を、10重量部のテキサノール溶液に分散させて導電性ペーストとした。銀粉は、粒径(D50)が0.4μmである球形銀粉および粒径(D50)が1.6μmであるフレーク状銀粉の混合粉であった。テキサノール溶液は、0.4重量部の水素化ロジン(パインクリスタル(登録商標)PR580、酸価165mgKOH/g、軟化点75℃、荒川化学工業株式会社)および0.01重量部の界面活性剤を含んでいた。分散は、ミキサーで各材料を混ぜた後、三本ロールミルにかけて行った。
【0060】
導電性ペーストの粘度は、15~30Pa・sであった。粘度の測定には、レオメータ(HAAKETM MARSTM III、チタン製コーンプレート:C20/1°、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いた。
【0061】
次に、導電性ペーストを銅基板に塗布して、導電性ペースト層を得た。銅プレート(25mm幅、34mm長さ、1mm厚)に、10mm幅の間隔を空けてスコッチテープを貼った。スコッチテープの間にスクレーパーを用いて導電性ペーストを塗布した後、スコッチテープを剥がして、角型パターン(10mm幅、10mm長さ、150μm厚)の導電性ペースト層を形成した。導電性ペーストの層をオーブンにて80℃30分乾燥させた。
【0062】
乾燥後、導電性ペーストの層の上面に、銅チップ(3mm幅、3mm長さ、1mm厚)を載せた。ダイボンダー(T-3002M、Tresky社製)を用いて、5MPa加圧/150℃5秒間加熱の条件の下、銅チップを銅プレート上に接合した。接合後、銅チップの接合をデジタルフォースゲージ(RZ-10、アイコーエンジニアリング株式会社)で測定した。接合強度は、2.2Nだった。加圧/加熱条件を高加圧または高温とすることで、または、より高加圧もしくはより高温で再度加熱処理することで、接合強度はより向上すると考えられる。
【0063】
[実施例2]
100重量部の銀粉を、9重量部のテキサノール溶液に分散させてベースとなるペーストAを準備した。銀粉は、実施例1と同じであった。テキサノール溶液は、0.2重量部のエチルセルロース(Ethocel(登録商標)N4、分子量44,265、Dow Chemical Company)、0.01重量部の界面活性剤および残部のテキサノールを含んでいた。分散は、ミキサーで各材料を混ぜた、三本ロールミルにかけて行った。
【0064】
0.2重量部の水素化ロジン(パインクリスタル(登録商標)PR580、酸価165mgKOH/g、軟化点75℃、荒川化学工業株式会社)を、0.8重量部のテキサノールに添加したテキサノール溶液Bを作った。1重量部のテキサノール溶液Bを、上記準備したベースとなるペーストAに添加し、ミキサーにてよく混合し導電性ペーストを得た。実施例1と同様に、この導電性ペーストを用いて、銅プレートおよび銅チップの接合強度を測定した。接合強度は、1.5Nだった。
【0065】
[実施例3]
0.3重量部の水素化ロジン(パインクリスタル(登録商標)KR85、酸価165~175mgKOH/g、軟化点80~87℃、荒川化学工業株式会社)を0.7重量部のテキサノールに添加したテキサノール溶液を実施例2のテキサノール溶液Bとして用いたこと以外は実施例2と同様に、導電性ペーストを得た。実施例1と同様に、この導電性ペーストを用いて、銅プレートおよび銅チップの接合強度を測定した。接合強度は、2.3Nだった。
【0066】
[実施例4]
0.1重量部のロジンエステル(Foralyn(登録商標)110、酸価14mgKOH/g、軟化点109℃、Eastman Chemical Company)を0.9重量部のテキサノールに添加したテキサノール溶液を実施例2のテキサノール溶液Bとして用いたこと以外は実施例2と同様に、導電性ペーストを得た。実施例1と同様に、この導電性ペーストを用いて、銅プレートおよび銅チップの接合強度を測定した。接合強度は、0.5Nだった。
【0067】
[実施例5]
0.5重量部のロジンエステル(Foralyn(登録商標)110、酸価14mgKOH/g、軟化点109℃、Eastman Chemical Company)を0.5重量部のテキサノールに添加したテキサノール溶液を実施例2のテキサノール溶液Bとして用いたこと以外は実施例2と同様に、導電性ペーストを得た。実施例1と同様に、この導電性ペーストを用いて、銅プレートおよび銅チップの接合強度を測定した。接合強度は、3.6Nだった。
【0068】
[実施例6]
0.8重量部のダンマルガム(CAS.No.9000-16-2)を0.2重量部のソルベントナフサCAS.No.64742-94-5)に添加したソルベントナフサ溶液を実施例2のテキサノール溶液Bとして用いたこと以外は実施例2と同様に、導電性ペーストを得た。ダンマルガムは、テキサノールよりも、ソルベントナフサに溶けやすい。実施例1と同様に、この導電性ペーストを用いて、銅プレートおよび銅チップの接合強度を測定した。接合強度は、1.1Nだった。
【0069】
[比較例1]
0.1重量部のエチレンー酢酸ビニル共重合樹脂(エバフレックス(登録商標)EV40W、三井・デュポン ポリケミカル株式会社)を0.9重量部のテキサノールに添加したテキサノール溶液を実施例2のテキサノール溶液Bとして用いたこと以外は実施例2と同様に、導電性ペーストを得た。実施例1と同様に、この導電性ペーストを用いて、銅プレートおよび銅チップの接合強度を測定した。接合強度は、0Nだった。
【0070】
[比較例2]
0.1重量部のn‐ブチルメタクリレート(Elvacite(登録商標)2044、酸価0mgKOH/g、Lucite International Inc.)を0.9重量部のテキサノールに添加したテキサノール溶液を実施例2のテキサノール溶液Bとして用いたこと以外は実施例2と同様に、導電性ペーストを得た。実施例1と同様に、この導電性ペーストを用いて、銅プレートおよび銅チップの接合強度を測定した。接合強度は、0Nだった。
【0071】
[比較例3]
0.1重量部のエチレンアクリルエラストマー(Vamac(登録商標)G、E. I. du Pont de Nemours and Company)を0.9重量部のブチルカルビトールアセテート(BCA)に添加したBCA溶液をテキサノール溶液の代わりに用いたこと以外は実施例2と同様に、導電性ペーストを得た。エチレンアクリルエラストマーは、テキサノールよりも、BCAに溶けやすい。実施例1と同様に、この導電性ペーストを用いて、銅プレートおよび銅チップの接合強度を測定した。接合強度は、0Nだった。
【0072】
[比較例4]
1重量部のアルキルアミン(Duomeen(登録商標)TDO、CAS.No.61791-53-5)をテキサノール溶液の代わりに用いたこと以外は実施例2と同様に、導電性ペーストを得た。実施例1と同様に、この導電性ペーストを用いて、銅プレートおよび銅チップの接合強度を測定した。接合強度は、0Nだった。
【符号の説明】
【0073】
100 電子デバイス
101 基板
103 導電層
105 導電性ペースト
107 電子部品
図1