(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤
(51)【国際特許分類】
C09K 23/34 20220101AFI20230512BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20230512BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20230512BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
C09K23/34
B01J13/00 A
A23L9/20
A23D7/00 508
(21)【出願番号】P 2017150151
(22)【出願日】2017-08-02
【審査請求日】2020-07-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村井 卓也
(72)【発明者】
【氏名】福永 浩一
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-171764(JP,A)
【文献】特開平06-220484(JP,A)
【文献】特開2014-132848(JP,A)
【文献】特開2006-230224(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080924(WO,A1)
【文献】特開平10-155448(JP,A)
【文献】特開2010-273616(JP,A)
【文献】特開昭60-016547(JP,A)
【文献】特開平04-370072(JP,A)
【文献】特開2005-237354(JP,A)
【文献】特開2011-083229(JP,A)
【文献】特開2015-065833(JP,A)
【文献】特開2015-171324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00-23/56
B01J 13/00
A23L 7/117-29/225
A23D 7/00-9/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸が炭素数16および18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる一種または二種以上であり、
ポリグリセリンの平均重合度が4から10であり、かつ、エステル化率が45%以上55%以下であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステル、および
テトラグリセリンモノオレイン酸エステルからなる起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤。
【請求項2】
構成脂肪酸が炭素数16および18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる一種または二種以上であり、
ポリグリセリンの平均重合度が4から10であり、かつ、エステル化率が45%以上55%以下であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステル、および
テトラグリセリンモノオレイン酸エステルを含有することを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物。
【請求項3】
構成脂肪酸が炭素数16および18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる一種または二種以上であり、
ポリグリセリンの平均重合度が4から10であり、かつ、エステル化率が45%以上55%以下であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステル、および
テトラグリセリンモノオレイン酸エステルを水相に添加して製造することを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイップクリームに用いられる起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤、及びそれを含有する起泡性水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイップクリームは製菓等のフィリングやトッピングに用いられる起泡性水中油型乳化食品である。ホイップクリームで最も重視される品質の一つにホイップクリーム原液を流通する際に振動や温度変化に対して増粘や固化等の物性変化を生じない、乳化安定性が挙げられる。
【0003】
ホイップクリームに乳化安定性を付与するために種々の乳化剤が使用されており、これらは油滴粒子径や連続相の粘度等の乳化安定性に係る因子に直接的に、或いは乳タンパクと複合的に影響をおよぼすことが知られている。
【0004】
ホイップクリームに用いる乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルがあり、エステル化率が35%以下の親水性ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで、エージング後の粒子径がホイップクリームに適する2μm程度の起泡性水中油型乳化組成物が得られることが示されている(特許文献1)。また、原料油脂にSUS型トリグリセリドを含有する水中油型乳化物においてヘキサグリセリンジステアレート、ヘキサグリセリントリステアレート、デカグリセリントリステアレートを水相に添加することでSUS型トリグリセリドの結晶性に起因する乳化の不安定化が抑制されたホイップクリーム用水中油型乳化物が得られることが提案されている(特許文献2)。さらに、水溶性乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から1種類以上を選択して使用し、油溶性乳化剤として、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び燐脂質からなる群から1種類ないし2種類以上を使用することで、乳化脂の保存中、使用中や輸送中の室内外の温度変化や輸送による振動等による増粘や固化が抑制されることが示されており、親水性のポリグリセリン脂肪酸エステルとしてHLBが11または13のポリグリセリンモノオレートやHLBが10のモノステアレートを使用することが例示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-003907号公報
【文献】特許第5299999号公報
【文献】特許第2628902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の親水性ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用した乳化物はホイップクリームに適した粒子径を有するものの、乳化物にせん断が加えられると粘度が容易に増加してしまい、輸送時の振動に対して十分な安定性を有するとは言い難いものであった。また、特許文献2に記載のポリグリセリン脂肪酸エステルもSUS型トリグリセリドの結晶性に起因する乳化不安定化の改善に対して高い効果を発揮するものの、油種を限定しない乳化組成物を輸送する際に生じる汎用的な乳化不安定化に対する効果は不十分であった。特許文献3ではヒートショックや輸送テストにおいて良好な安定性を有する乳化物が得られるが、複数の乳化剤を多量に使用する必要があった。そのため、本発明はせん断に対して良好な乳化安定性を有する起泡性水中油型乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意研究を重ねた結果、構成脂肪酸が炭素数16および18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる一種または二種以上であり、エステル化率が45%以上55%以下であるポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することで、上記課題が解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤を配合することにより、せん断に対して良好な乳化安定性を有する起泡性水中油型乳化組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤は、構成脂肪酸が炭素数16および18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる一種または二種以上であり、エステル化率が45%以上55%以下であるポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0010】
炭素数が16および18の飽和脂肪酸はこの炭素数及び飽和の条件に当てはまるものであれば、特に限定されるものではないが、主として直鎖脂肪酸が選択される。炭素数が16および18の飽和脂肪酸には、パルミチン酸、ステアリン酸が例示される。
【0011】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、その平均重合度が限定されるものではないが、2から20が好ましく、4から10がより好ましい。ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、次式(式1)及び(式2)から平均重合度が算出される。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
上記(式2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2003年度版」に準じて算出される。
【0012】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、公知のエステル化反応により製造することができる。例えば、脂肪酸とポリグリセリンとを水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒の存在下におけるエステル化反応により製造することができる。エステル化は、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が好ましくは45%以上55%以下になるまで行なわれる。ここでエステル化率とは、水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加する脂肪酸のモル数(M)としたとき、(M/(n+2))×100=エステル化率(%)で算出される値である。ここで水酸基価とは、上述の水酸基価と同様に算出される値である。
【0013】
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、45%以上55%以下である。すなわち、エステル化率が45%未満のポリグリセリン脂肪酸エステルでは、乳化界面の水相側におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの吸着力が高く、ホイップクリームの乳化安定性に寄与する乳タンパクを乳化界面から脱離させやすくするため、振動等に対する乳化安定性が低下する。また、エステル化率が55%を超えるポリグリセリン脂肪酸エステルでは油相への溶解性が高まり、乳化界面で乳タンパクと複合的に作用しにくくなり乳化安定性が低下する。これに対して、エステル化率が45%以上55%以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる本発明では、ポリグリセリン脂肪酸エステルが乳化界面で適度に作用するため、上述した不具合が生じにくくなる。
【0014】
本発明の起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤は起泡性水中油型乳化組成物全量に対して0.02から1重量%使用するのが好ましい。さらに、上記起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤は水相に添加して使用することで優れた乳化安定性を発揮することができる。
【0015】
本発明の起泡性水中油型乳化組成物には、本発明の起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤の他に、不飽和脂肪酸あるいは飽和脂肪酸からなる他のポリグリセリン脂肪酸エステルを一種以上使用することができる。さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤、油脂、無脂乳固形分、糖類、安定剤及び水なども使用することができる。
【0016】
ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤としては、水中油型乳化物や起泡性水中油型乳化物を調製する際に通常使用する乳化剤を適宜選択使用することができる。例えば、レシチン、モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤が挙げられ、何れの乳化剤も一種または二種以上を選択使用することができる。
【0017】
上記油脂としては、大豆油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、パーム油、ナタネ油、カボック油、乳脂、ラード、魚油、鯨油などの各種の動植物油脂、及びこれらの硬化油、分別油、エステル交換油脂などが挙げられる。これらの中で好ましいものは、例えば、綿実硬化油、カボック硬化油、ナタネ硬化油、大豆硬化油、とうもろこし硬化油、ひまわり硬化油等の液状植物油の硬化油又はパーム油あるいはその分別油の硬化油又はヤシ油、パーム核油等のラウリン系油脂又はエステル交換油が挙げられ、何れの油脂も単独または2種以上を選択使用することができる。
【0018】
上記無脂乳固形分としては、牛乳の全固形分から乳脂肪分を差引いた成分をいい、これを含む原料としては、生乳、牛乳、脱脂乳、生クリーム、濃縮乳、無糖練乳、加糖練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエー蛋白、カゼイン、カゼインナトリウム等の乳由来の原料が挙げられ、何れの無脂乳固形分も一種または二種以上を選択使用することができる。
【0019】
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖(マルトース)等の二糖類、ソルビトール等の糖アルコール、オリゴ糖、澱粉加水分解物、異性化糖(ブドウ糖・果糖液糖、ハイフラクトースコーンシロップ)等が挙げられ、何れの糖類も一種または二種以上を併用することができる。
【0020】
安定剤としては、ガム類、例えばキサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、アラビアガム、ファーセラン、CMC、微結晶セルロース類のガム類、ペクチン、寒天、カラギーナン、ゼラチン、水溶性ヘミセルロース等が挙げられ、何れの安定剤も一種または二種以上を選択使用することができる。その他所望により各種塩類、香料、着色料、保存料等を使用することができる。
【0021】
本発明の起泡性水中油型乳化組成物の製造法としては、油脂、無脂乳固形分、糖類、乳化剤及び水を主要原料とするこれらの原料を混合後、予備乳化し均質化処理することにより得ることができる。この際、本発明の起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤を水相に添加することでより優れた乳化安定性を発揮することができる。
【0022】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、変更などが加えられた形態も本発明に属する。尚、合成例において平均重合度が4のポリグリセリンに阪本薬品工業株式会社製「ポリグリセリン#310」を、平均重合度が6のポリグリセリンに阪本薬品工業株式会社製「ポリグリセリン#500」を、平均重合度が10のポリグリセリンに阪本薬品工業株式会社製「ポリグリセリン#750」を用いた。
【0023】
<合成例1>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとパルミチン酸105.9gとステアリン酸143.6gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0024】
<合成例2>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとパルミチン酸74.6gとステアリン酸101.2gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0025】
<合成例3>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとパルミチン酸74.6gとステアリン酸101.2gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0026】
<合成例4>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとパルミチン酸235.4gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0027】
<合成例5>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとステアリン酸261.1gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0028】
<合成例6>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとパルミチン酸88.3gとステアリン酸119.7gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0029】
<合成例7>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとパルミチン酸51.9gとステアリン酸70.4gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0030】
<合成例8>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとステアリン酸102.2gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0031】
<合成例9>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとパルミチン酸27gとステアリン酸36.6gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0032】
<合成例10>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとステアリン酸102.2gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0033】
<合成例11>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとパルミチン酸103.7gとステアリン酸140.6gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0034】
<合成例12>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとミリスチン酸209.6gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0035】
<合成例13>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとベヘン酸312.6gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0036】
以上のようにして製造した各合成例のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて次の試験例に示す方法で水への溶解性を評価した。
【0037】
[溶解性試験]
合成例のポリグリセリン脂肪酸エステル1重量%を水に添加し、70℃まで加温した後60℃で静置した。溶解性を目視で確認し、以下の基準で評価した。各ポリグリセリン脂肪酸エステルの溶解性を表1に示す。
60℃における外観より、
○:溶解または分散
×:不溶物が分離
【0038】
【0039】
[起泡性水中油型乳化組成物の調製]
表2に示す水相と油相を調製し、それぞれ65℃に保持した後、水相に油相を添加してラボリューション(PRIMIX製)で予備乳化し、高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング製)を用いて圧力14MPaで均質化した後、85℃で5分間殺菌を行い、次いで14MPaで再均質化し、5℃に冷却し、3日間保存して水中油型乳化物を得た。得られた乳化物の乳化安定性を以下の基準で評価した。
[乳化安定性試験]
コーンプレート型粘度計を使用して乳化物にせん断を負荷し、徐々にせん断速度を速めた際のせん断応力の挙動は輸送時の安定性と高い相関を示すことが知られている。本発明では20℃に調温したE型粘度計(Brookfield製、スピンドル;CP-40)のカップにエージング後の水中油型乳化物を0.5ml入れ、回転数を50rpmから150rpmまで変化させた際の流動曲線を把握し、せん断速度が1200s-1以上でせん断応力が急激に上昇したものを「優良」、せん断速度が1000s-1以上1200s-1以下の範囲でせん断応力が急激に上昇したものを「良」、せん断速度が1000s-1以下でせん断応力が急激に上昇したものを「不良」と判断した。表2には急激にせん断応力が上昇した際のせん断速度を示した。
【0040】
【0041】
※1 MO-3S(阪本薬品工業株式会社製)
【0042】
エステル化率が45%または50%で構成脂肪酸がパルミチン酸およびステアリン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた実施例1から5では、せん断速度が1200s-1より小さい場合は急激なせん断応力の上昇は生じず乳化安定性に優れた乳化物が得られた。一方、比較例1から5に示したエステル化率が45%未満のポリグリセリン脂肪酸エステルや比較例6に示したエステル化率が55%を超えるポリグリセリン脂肪酸エステルでは、構成脂肪酸がパルミチン酸およびステアリン酸であっても乳化安定性は低いものとなった。さらにエステル化率が50%で構成脂肪酸がミリスチン酸またはベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを使用した比較例7および8でも乳化物の安定性は低かった。
【0043】
以上より、構成脂肪酸が炭素数16および18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる一種または二種以上であり、エステル化率が45%以上55%以下であるポリグリセリン脂肪酸エステルからなる起泡性水中油型乳化組成物用の乳化剤を添加することで、輸送時の振動に対して安定な起泡性水中油型乳化組成物が得られた。