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特許7278029軸封部材、回転軸の軸封装置、横型ミキサ及びミキサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】軸封部材、回転軸の軸封装置、横型ミキサ及びミキサ
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3272 20160101AFI20230512BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20230512BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20230512BHJP
   B01F 35/10 20220101ALI20230512BHJP
【FI】
F16J15/3272
F16J15/16 B
F16J15/447
B01F35/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018026566
(22)【出願日】2018-02-19
(65)【公開番号】P2018136029
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】P 2017043271
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128728
【氏名又は名称】株式会社オシキリ
(74)【代理人】
【識別番号】100140693
【弁理士】
【氏名又は名称】木宮 直樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 茂久
(72)【発明者】
【氏名】梅津 昌巳
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-177991(JP,A)
【文献】特開2007-000093(JP,A)
【文献】特開2002-122244(JP,A)
【文献】特開平02-139025(JP,A)
【文献】特開2011-163448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0230905(US,A1)
【文献】実開昭62-095730(JP,U)
【文献】特開2010-014230(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180985(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0040781(US,A1)
【文献】実開昭54-131647(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 7/00-7/32
B01F 15/00-15/06
F16J 15/16-15/32
F16J 15/324-15/3296
F16J 15/40-15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容物を有するケーシングと、該ケーシングを貫通して設けられ回転駆動される回転軸と、前記ケーシングの外部に貫通して突出された回転軸の周りに配置され外周部が前記ケーシングに着脱自在に嵌入された2分割型シールリングと、このシールリングの内周部に形成され前記回転軸に対面するシール用の溝と、前記シールリングの外端部に着脱自在に支持された2分割型押え板とを具備する回転軸の軸封装置。
【請求項2】
前記2分割型シールリングと前記2分割型押え板の着脱手段は前記ケーシングに固定された複数の固定ピンを介して実施される請求項1記載の回転軸の軸封装置。
【請求項3】
前記シールリングと前記押え板のそれぞれの分割部の合わせ目は非同一線上に配置してなる請求項1又は2記載の回転軸の軸封装置。
【請求項4】
内部に収容物を有するケーシングと、該ケーシングを貫通して設けられ回転駆動される回転軸と、前記ケーシングの外部に貫通して突出された回転軸の周りに配置され外周部が前記ケーシングに着脱自在に嵌入された2分割型シールリングと、このシールリングの内周部に形成され前記回転軸に対面するシール用の溝と、前記シールリングの外端部に着脱自在に支持された2分割型押え板とを具備する回転軸の軸封装置と、前記ケーシング内の回転軸を回転自在に支持する軸受けユニットと、前記回転軸に設けられた攪拌手段とを具備する横型ミキサ。
【請求項5】
前記2分割型シールリングと前記2分割型押え板の着脱手段は前記ケーシングに固定された複数の固定ピンを介して実施される前記回転軸の軸封装置である請求項4記載の横型ミキサ。
【請求項6】
前記2分割型シールリングと前記2分割型押え板のそれぞれの分割部の合わせ目は非同一線上に配置してなる回転軸の軸封装置である請求項4又は5記載の横型ミキサ。
【請求項7】
収容物を収容できるケーシングと、前記ケーシング内で回転可能で、前記ケーシングを貫通できる回転軸との間における前記収容物の移動を規制する軸封部材であって、
前記ケーシングに配置されるシールリング部材を備え、
前記回転軸の外面に対向する、前記シールリング部材の内面には全域に渡り螺旋状の溝が設けられている軸封部材。
【請求項8】
前記溝の螺旋方向が、前記回転軸が回転する方向と一致している請求項7に記載の軸封部材。
【請求項9】
複数の前記シールリング部材を備え、前記複数のシールリング部材は前記回転軸の中心軸線に沿って取り外し可能に装着される請求項7又は8に記載の軸封部材。
【請求項10】
前記ケーシングと、
記回転軸と、
前記回転軸に連結され前記収容物を撹拌するための攪拌部材と、
請求項7~9のいずれか一に記載の軸封部材と、を備えるミキサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動される回転軸がケーシングを貫通した個所において、ケーシング内部の収容物が回転軸とケーシングの間の隙間から外部に漏れ出すのを防止するための軸封部材、回転軸の軸封装置及びこの軸封装置を有する横型ミキサ及びミキサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品用に好適な横型ミキサに用いられる軸封装置は、グランドパッキン方式が主流である。
しかし、このグランドパッキン方式の軸封装置は、部品点数が多く構造が複雑であり、掃除時の分解が容易でなかったり、装置のコストアップにつながる等の欠点を有する。
【0003】
例えば、特開2010-41970号公報に示される食品用ミキサの軸封装置は、図11に示すように、貫通孔8がタンク3の周壁4に形成され,この貫通孔8に環状ハウジング9が嵌めこまれ、さらに、この環状ハウジング9の内側にグランドパッキン110の外径部が嵌合され、このグランドパッキン110の内径部がシャフト1の小径部15のまわりに設けられた構造のものである。
【0004】
このような構造の軸封装置は、掃除の時、同公報の図5に示すように、ナット26を回転させ、ゆるめると、ボルト120をピン23のまわりに揺動させ、半径方向溝121から抜き取るものである。従って、環状キャップ19をタンク3の外部に移動させ、貫通孔8から抜き取ることができるというものであるが、上述のように、グランドパッキン110の着脱も扱いに難点があり、構造が複雑であるため、掃除時の解体が容易でなく、さらに、装置のコストアップになる等の欠点を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-41970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、例えば、横型ミキサに用いられる軸封装置は、グランドパッキン方式が主流である。このグランドパッキン方式の軸封装置は、掃除時の解体が容易でなかったり、部品点数が多かったり、構造が複雑であったり等の欠点を有する。このため、構造簡易で解体が極めて容易で、シール部材の洗浄または、交換作業が容易にできる回転軸の軸封装置が要望されていた。
【0007】
本発明の一の目的は、このような問題に鑑みてなされたものであり、回転駆動される回転軸がケーシングを貫通した個所において、構造簡易にして部品点数が少なくメンテナンスが容易な回転軸の軸封装置及び横型ミキサを提供するものである。
本発明の他の目的は、回転軸と前記回転軸が貫通するケーシングとの間における収容物の移動を規制できる軸封部材及びミキサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転軸の軸封装置の第1の態様は、内部に収容物を有するケーシングと、該ケーシングを貫通して設けられ回転駆動される回転軸と、前記ケーシングの外部に貫通して突出された回転軸の周りに配置され外周部が前記ケーシングに着脱自在に嵌入された2分割型シールリングと、このシールリングの内周部に形成され前記回転軸に対面するシール用の溝と、前記シールリングの外端部に着脱自在に支持された2分割型押え板とを具備する回転軸の軸封装置であり、部品点数も少なく、かつ、構造簡易なものである。
【0009】
本発明に係る回転軸の軸封装置の第2の態様は、前記2分割型シールリングと前記2分割型押え板の着脱手段が前記ケーシングに固定された複数の固定ピンを介して実施される前記第1の態様に係る回転軸の軸封装置であって、前記シールリングの洗浄作業または交換作業において、前記シールリングの着脱が極めて容易に行われる利点を有するものである。
【0010】
本発明に係る回転軸の軸封装置の第3の態様は、前記2分割型シールリングと前記2分割型押え板のそれぞれの分割部の合わせ目は非同一線上に配置してなる前記第1の態様又は前記第2の態様に係る回転軸の軸封装置であって、ケーシング内からの内容物の漏えいをより確実にシール可能な利点を有するものである。
【0011】
本発明に係る横型ミキサの第1の態様は、内部に収容物を有するケーシングと、該ケーシングを貫通して設けられ回転駆動される回転軸と、前記ケーシングの外部に貫通して突出された回転軸の周りに配置され外周部が前記ケーシングに着脱自在に嵌入された2分割型シールリングと、このシールリングの内周部に形成され前記回転軸に対面するシール用の溝と、前記シールリングの外端部に着脱自在に支持された2分割型押え板とを具備する回転軸の軸封装置と、前記ケーシング内の回転軸を回転自在に支持する軸受けユニットと、前記回転軸に設けられた攪拌手段とを具備する横型ミキサであって、前記シールリングの洗浄作業または交換作業において、前記シールリングの着脱が極めて容易に行われ、かつ、前記シールリング構造が2分割であるため清掃も確実、かつ、容易に行える利点を有するものである。
【0012】
本発明に係る横型ミキサの第2の態様は、前記2分割型シールリングと前記2分割型押え板の着脱手段は前記ケーシングに固定された複数の固定ピンを介して実施される前記回転軸の軸封装置を有する横型ミキサであって、前記シールリングの洗浄作業または交換作業において、前記シールリングの着脱が極めて容易に行われ、かつ、前記シールリング構造が2分割であるため清掃も確実、かつ、容易に行える利点を有するものである。
【0013】
本発明に係る横型ミキサの第3の態様は、前記2分割型シールリングと前記2分割型押え板のそれぞれの分割部の合わせ目は非同一線上に配置してなる回転軸の軸封装置を有する横型ミキサであって、ケーシング内からの内容物の漏えいをより確実にシール可能な利点を有するものである。
【0014】
本発明の軸封部材に係る第1の態様は、回転軸と前記回転軸が貫通するケーシングとの間における収容物の移動を規制する軸封部材であって、
前記回転軸及び前記ケーシングの一方に配置されるシールリング部材を備え、
前記回転軸及び前記ケーシングの他方の内面及び外面の一方に対向する、前記シールリング部材の内面及び外面の一方には螺旋状の溝が設けられている。
【0015】
本発明の軸封部材に係る第2の態様は、前記第1の態様の軸封部材であって、前記溝の螺旋方向が、前記回転軸が回転する方向と一致している。
【0016】
本発明の軸封部材に係る第3の態様は、前記第1又は第2の態様の軸封部材であって、 複数の前記シールリング部材を備え、前記複数のシールリング部材は前記回転軸の中心軸線に沿って取り外し可能に装着される。
利点を有するものである。
【0017】
本発明のミキサに係る第1の態様は、収容物を収容できるケーシングと、
前記ケーシング内で回転可能で、前記ケーシングを貫通する回転軸と、
前記回転軸に連結され前記収容物を撹拌するための攪拌部材と、
前記第1~3の態様の一に記載の軸封部材と、を備える。
【0018】
本明細書において、「軸封部材」は、回転軸と、当該回転軸が貫通するケーシングとの間の領域から、ケーシング内の収容物がケーシングの外方へ移動することを規制するための部材を意味する。また、本明細書において、「回転軸の軸封装置」は、ケーシングと、該ケーシングを貫通する回転軸と、前記ケーシングに着脱自在に嵌入される2分割型シールリングと、前記シールリングの内周部に形成されるシール用の溝と、前記2分割型シールリングに着脱自在に装着される2分割型押え板とを備える装置を意味する。さらに、本明細書において「半部材」は、一の部品が2つの部材から構成されている場合の各部材を意味するのみならず、一の部品が3つ以上の部材から構成されている場合の各部材を構意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る回転軸の軸封装置の一態様によれば、シールリング及び押え板が分割部構造であるので回転軸方向の空間が少なくても回転軸からシールリング及び押え板の着脱が極めて容易であり、シールリングの洗浄あるいは交換作業を行い易いという利点がある。また、本発明に係る回転軸の軸封装置の一態様によれば、部品点数を削減することができ、装置のコストダウン及びメンテナンス作業の容易化を図ることができるという利点がある。
【0020】
さらに、上述の回転軸の軸封装置の一態様を有するミキサの一態様は、軸封装置とこの回転軸を支持する構造物とのスペースが狭小であっても容易に前記シールリングを着脱でき、同様に前記シールリングの洗浄あるいは交換作業を行い易いという利点を有する。
【0021】
本発明の軸封部材又はミキサの一態様によれば、回転軸と前記回転軸が貫通するケーシングとの間における収容物の移動を規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施例に係る回転軸の軸封装置を用いた横型ミキサの要部構成を切欠して示す概略縦面図である。
図2図1の一部を示す回転軸の軸封装置を拡大して示す縦断面図である。
図3図2に示される固定ピン30を拡大して示す正面図である。
図4】は図2の回転軸の軸封装置に係る2分割型シールリングを取り出して示す平面図である。
図5】は図2の回転軸の軸封装置に係る2分割型押え板を取り出して示す平面図である。
図6】は図2の回転軸の軸封装置に係る2分割型シールリングと2分割型押え板の取り付け状態を取り出して示す平面図である。
図7】は図2の回転軸の軸封装置に係る2分割型押え板の組み立て状態を解除して前記2分割型シールリングを取り出すため、前記2分割型押え板を取り外す状態を示す平面図である。
図8】(a)は、本発明の第2の実施例に係る、回転軸12の右方に配置される2分割型シールリングの平面図であり、(b)は、2分割型シールリングの半部材の正面図であり、(c)は、図8(b)の矢印VIIIcが示す部位を模式的に表す拡大模式図である。
図9】(a)は、本発明の第2の実施例に係る、回転軸の左方に配置される2分割型シールリングの平面図であり、(b)は、2分割型シールリングの半部材の正面図であり、(c)は、図9(b)の矢印IXcが示す部位を模式的に表す拡大模式図である。
図10】(a)は、横型ミキサ1の概略平面図であり、(b)は、図10(a)に示される横型ミキサ1の概略部分破断正面図であり、(c)は、図10(a)に示される横型ミキサ1の概略側面図である。
図11】は従来例の回転軸の軸封装置を用いた食品ミキサの要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明において、同一の構成には、同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
〔第1の実施例〕
以下、本発明の第1の実施例に係る回転軸の軸封装置について、図1ないし図7を参照して説明する。
【0024】
図1は、本実施例に係る回転軸の軸封装置を備えた横型ミキサ1の要部構成を示す概略縦断面図である。
すなわち、横型ミキサ1を構成するタンク(以下、ケーシングと称す。)11の内部には収容物10が収納されている。このケーシング11には回転駆動される回転軸12が従動軸側軸受ユニット20と、図示しない従動軸側軸受ユニットで支持されている。前記従動軸側軸受ユニット20の先端部には、前記ケーシング11及び前記軸受けユニット20を支持するフレーム21が配設されている。このフレーム21は図示しない前記従動軸側軸受ユニット側にも配設されている。前記ケーシング11内には、食品を撹拌する撹拌部材である複数のアジテータ(以下、攪拌用ロッドと称す。)17,18が取り付けられている。
【0025】
前記ケーシング11の外部に貫通して突出する回転軸12の周りに、この回転軸12の外周面12aから所定距離離れた状態で配置され、外周部が前記ケーシング11に着脱自在に嵌入された2分割型シールリング13a,13b(すなわち、軸封部材)が、前記ケーシング11に固定された複数の固定ピン30に嵌入自在に取り付けられている。前記シールリング13a,13bの回転軸12の外周面12aに対面する部位には、シール用の溝として例えば複数の環状溝14が形成されている。この環状溝14はいわゆるラビリンス溝としてケーシング内の収容物10のシール作用をもたらすものである。
【0026】
前記シールリング13a,13bの外端部には前記固定ピン30に着脱自在に支持された2分割型押え板15a,15bが取り付けられている。
前記2分割型シールリング13a,13bは、図4に示されるように、樹脂製の2分割されたそれぞれ半円形状のシールリング13a,13bとで円形をなすように構成される。このシールリング13a,13bは前記固定ピン30に取り付けられる際、その合わせ目は、図示するように、中心線からマイナス60°ずれた位置に配置される。それぞれのシールリング13a,13bには対称位置に透孔13cが3ヶずつ設けられ、合わせて6ヶの透孔13cが設けられている。これらの透孔13cには前記固定ピン30が嵌入される。この固定ピン30の形状は図3に図示される。すなわち、ケーシング11にねじ込まれるねじ部30aと、図4に示すシールリング13a,13bの透孔13cに嵌入される軸部30bと、前記2分割型押え板15a,15bに形成された図5に示す透孔15cに嵌入される軸部30cと、頭部30dとよりなるものである。
【0027】
さらに、前記シールリング13a,13b上には、図5に示される2分割型押え板15a,15bが、合わされた状態で前記固定ピン30に嵌入される。前記押え板15a,15bは、図5,図7において離して図示されているが、固定ピン30に取り付けられる際は、図6に示されるように、半円形状の直線部が互いに合致して円形をなすように組み立てられる。
この時、前記シールリング13a,13bの合わせ目は図4に示すように、天と地になる位置関係において、天地となる中心線Y-Y軸から30°+30°=60°マイナスにずれた位置に配置される。なお、収容物の特性によっては、前記シールリング13a,13bの合わせ目を図4において、天地となる中心線Y-Y軸上に配置することも可能である。収容物の特性に対応するために流出防止性能を高める必要がある場合には、シールリング13a,13bの合わせ目と、中心線Y-Y軸とをずらすことが好ましい。なお、前記シールリング13a,13bの合わせ目は、前記中心線Y-Y軸に対し、プラスマイナス90°の位置(水平方向)に配置されると、収容物の流出防止性能を最も高めることができる。
【0028】
一方、前記押え板15a,15bには、図5に示されるように、それぞれ、固定ピン嵌入用の3ヶの透孔15cが設けられている。この透孔15cは径大孔を有する長孔を形成している。さらに、前記押え板15aには、図7に示すように、キャッチクリップ22の係合部部品22aの取り付け用小孔15eが設けられている。また、前記押え板15bには、前記キャッチクリップ22のクリップ部品22bを取り付ける小孔15fが設けられている。
【0029】
図1は横型ミキサの稼働状態における2分割型シールリング13a,13bと2分割型押え板15a,15bの取り付け状態を示している。この状態を取り出して示したのが図5である。すなわち、2分割型シールリング13a,13bは図4の配置関係でそれぞれの半円形状のシールリング13a,13bが組み立てられフランジ付き円筒状の形状を構成している。この時、内周面はシール用の溝として、複数の環状溝を形成して回転軸12に対面し、シール効果の作用を有しているものである。またこの2分割型シールリング13a,13bの外端面には、図7に示す2分割型押え板15a,15bが押し付けられている。また、前記押え板15a,15bには両者を弾発力によって一体化し、円形状をなすようにキャッチクリップ22が取り付けられている。
【0030】
従って、上述したように合体した2分割型シールリング13a,13bの中央部の合わせ目は、合体した2分割型押え板15a,15bの中央部の合わせ目は、同一線上にはなく、各合わせ目はずらしてあるため、ミキサ内容物のシール効果を増大せしめる効果を有するものである。
【0031】
次に、前記シールリング13a,13bを洗浄又は交換するために横型ミキサの静止時に回転軸の軸封装置から前記シールリング13a,13bを取り外す手順について説明する。
横型ミキサ1の回転軸の軸封装置を分解して前記シールリング13a,13bを取り出す状態は図2に図示されている。
【0032】
まず、図7に示すように、係合部部品22aとクリップ部品22bとの締め付け状態を解除するため両部品22a, 22bを分離する。その後、取っ手15d,15dを横に引き、次いで手前に引くことによって 前記押え板15a,15bは回転軸12から取り出される。次いで、2分割型シールリング13a,13bを回転軸12から取り除く。このようにして、それぞれのシールリング13a,13bを個々に洗浄したり、または新しいシールリング13a,13bを簡単に交換することができる。
【0033】
上述のように、本発明の第1の実施例における回転軸の軸封装置及びこの軸封装置を有する横型ミキサは、シールリングの着脱がきわめて容易にできるとともに、軸封装置とこの軸封装置を支持する構造物たとえば軸受けユニットとのスペースが狭小でも容易にシールリングを着脱できるものである。
【0034】
〔第2の実施例〕
以下、本発明の第2の実施例に係る回転軸の軸封装置について、図8図10を参照して説明する。なお、第1及び第2の実施例に係る回転軸の軸封部材は、軸封部材である2分割型シールリング114、113の構成が異なる点を除き、同じである。従って、以下に2分割型シールリング113の構成を主として以下に説明する。また、第2の実施例に係る回転軸の軸封装置の、特に明記しない構成要素及びその効果は、第1の実施例に係る回転軸の軸封装置と同じである。
【0035】
図8(a)は、本発明の第2の実施例に係る、回転軸12の右方に配置される2分割型シールリング114の平面図であり、図8(b)は、2分割型シールリング114の半部材114bの正面図であり、図8(c)は、図8(b)の矢印VIIIcが示す部位を模式的に表す拡大模式図であり、図9(a)は、本発明の第2の実施例に係る、回転軸12の左方に配置される2分割型シールリング113の平面図であり、図9(b)は、2分割型シールリング113の半部材113bの正面図であり、図9(c)は、図9(b)の矢印IXcが示す部位を模式的に表す拡大模式図である。また、図10(a)は、横型ミキサ1の概略平面図であり、図10(b)は、図10(a)に示される横型ミキサ1の概略部分破断正面図であり、(c)は、図10(a)に示される横型ミキサ1の概略側面図である。なお、図10(a)~(c)に示される横型ミキサ1の構成は、特に記載する事項を除き、図1に示される横型ミキサ1と同一の構成である。
【0036】
図8(a)、(b)に示される2分割型シールリング114は、図10に示される横型ミキサ1の回転軸12の右方に装着され、図9(a)、(b)に示される2分割型シールリング113は、図10に示される横型ミキサ1の回転軸12の右方に装着され、互いに左右対称の形状である。従って、図8(a)、(b)に示される2分割型シールリング114の構成を説明する。なお、図8(b)中に示される透孔114cと、図8(a)に示される透孔114cは、中心軸線X方向に関し位置が異なる態様で示されている。図8(b)は、外周円弧面116aから透孔114cまでの距離を明確に示すことを目的としている。
【0037】
2分割型シールリング114は、円筒状の部材であり、その中心を通る中心軸線Xを通る仮想面に対し左右対称(但し、後述の封鎖溝116cを除く。)の形状である左方の半部材114aと、右方の半部材114bとにより構成される。半部材114bは、シール用の溝である封鎖溝116cを有する基部116と、基部116の端部に延在するフランジ部117と、を有する。基部116は、所定寸法の外周円弧面116aと、図8(b)の右方端部は、外周円弧面116aより曲率半径の小さい端面116bと、を有する。また、外周円弧面116aの、図8(b)の左方には、フランジ部117が設けられている。フランジ部117には、回転軸O方向に平行に延び貫通する複数の透孔114cが設けられている。本実施例では、円形で3つの透孔114cが設けられているが、形状や寸法は適宜変更できる。
【0038】
さらに、基部116の内周円弧面には、らせん状の封鎖溝116cが刻設されている。図8(c)に示されるように、封鎖溝116cは、所定の曲率半径を有する凹部116dと、回転軸O方向に平行に延在し所定の曲率半径を有し、かつ、隣り合う凹部116dを連結する頂部116eとを有する。
【0039】
一方、図8(a)の左方に示される2分割型シールリング114の半部材114aは、中心軸線Xに沿って、封鎖溝116cを除き、半部材114bに対し線対称の形状である。すなわち、半部材114aと半部材114bとを図8(a)に示すように係合した状態では、半部材114aの封鎖溝116cと半部材114bの封鎖溝116cとが連続し、一連のらせん形状を構成する。半部材114a、114bの封鎖溝116cは、図8(b)において、フランジ部117側から回転軸O方向の右方に、基部116の内周面上を連続的に延材する。さらに、封鎖溝116cの凹部116dは、時計方向(右まわり)に延材する、右めねじを構成する螺旋形状である。
【0040】
他方、図9(a)~(c)に示される2分割型シールリング113の半部材113a、113bは、図8(a)~(c)に示される2分割型シールリング114の半部材114a、114bの封鎖溝116cの形状とは異なる封鎖溝115cを備えることを除き、同寸法、同形状である。半部材113a、113bが図9(a)に示されるように係合すると、半部材113aの封鎖溝115cと半部材113bの封鎖溝115cが連続し、一連のらせん形状を構成する。さらに、封鎖溝115cの凹部115dは、反時計方向(左まわり)に延材する、左めねじを構成する螺旋形状である。
【0041】
なお、2分割型シールリング113は、透孔113c、基部115、端面115b、封鎖溝115c、凹部115d、頂部115e、及びフランジ部117を有する。
【0042】
一方、図9(a)の左方に示される2分割型シールリング113の半部材113aは、中心軸線Xに沿って、封鎖溝115cを除き、半部材113bに対し線対称の形状である。すなわち、半部材113aと半部材113bとを図9(a)に示すように係合した状態では、半部材113aの封鎖溝115cと半部材113bの封鎖溝115cとが連続し、一連のらせん形状を構成する。半部材113a、113bの封鎖溝115cは、図9(b)において、フランジ部117側から回転軸O方向の右方に、基部115の内周面上を連続的に延材する。さらに、封鎖溝115cの凹部115dは、反時計方向(左まわり)に延材し、左めねじを構成する螺旋形状である。
【0043】
上記の通り、回転軸12(図1参照。)の周囲に配置される2分割型シールリング113の封鎖溝115cと、2分割型シールリング114の封鎖溝116cは、互いに異なる向きを有するらせん形状に形成されている。また、本実施形態では図10に示される回転軸12が矢印T方向(時計方向)に回転する状態において、2分割型シールリング114、113の封鎖溝115c、116cの形状を設定している。従って、回転軸12が矢印T方向に対向する方向に回転する場合には、封鎖溝115cは、右めねじの螺旋形状となり、封鎖溝116cは、左めねじの螺旋形状となる。このように封鎖溝115c、116cを螺旋形状とすることにより、回転軸12の外周面に付着するパン生地等の収容物の移動が、封鎖溝115c、116cを有する2分割型シールリング114、113により係止される。
【0044】
発明者等は、鋭意研究により、生地を捏ねるために横型ミキサ1の回転軸12が回転すると、収容物10の内部の内圧が、収容物10の外部に対して高くなり、この生地が回転軸12と横型ミキサ1のケーシング11との間の微小な隙間を介し、横型ミキサ1の外方へ流出する傾向が見られることを知得した。本実施例は、生地の流出を防止するために、アルキメディアン・スクリューの原理を利用している。
【0045】
具体的には、回転軸12(図1参照。)の回転方向(図10(c)の矢印T)と、螺旋状の封鎖溝116cの螺旋が巻かれる方向(すなわち、螺旋方向)とが一致している。従って、収容物10の内部から、回転軸12の外周面12a(図1参照。)、ケーシング11の内周面11a(図1参照。)又は外周面12aと内周面11aとの空間を通り外方へ流出する収容物10に対し、反対方向(ケーシング11の内部方向)への力を付与することにより、収容物10がケーシング11の内部へ移動する力が付与される。結果として、収容物10が、回転軸12とケーシング11との間の微小空間を介し、ケーシング11の外方へ移動しても、封鎖溝116c、115cが収容物に付与する力により横型ミキサ1の外部へ流出されることが抑えられる。
【0046】
さらに、回転軸12の左方に配置(図10(b)の左方)される2分割型シールリング113の封鎖溝115cは、回転軸12(図1参照。)の回転方向(図10(c)の矢印T)と、螺旋状の封鎖溝115cの螺旋方向とが一致する。すなわち、右方に配置される2分割型シールリング114の封鎖溝116cのらせん方向に対向するらせん方向(左方向)に延材する封鎖溝115cを、2分割型シールリング113が有する。
【0047】
上記構成の2分割型シールリング114、113は、第1の実施例と同様に、透孔113cを介し、ケーシング11に固定されている固定ピン30に取り外し可能に装着される。
【0048】
さらに、2分割型シールリング114、113上には、図5に示される2分割型押え板15a、15bの直径部が、互いに係合された状態で固定ピン30に挿入される。第1の実施例に関連し説明したように、押え板15a、15bは、図5図7において直径部が互いに離間された状態で示されているが、固定ピン30に取り付けられる際は、図6に示されるように、円形を構成するように、直線部が互いに係合され、組み立てられる。
【0049】
第1の実施例と同様に、上記組み立て工程において、2分割型シールリング114、113の合わせ目は、鉛直方向(中心軸線X方向)に対し傾斜する方向に延在する位置関係に配置される。なお、発明者等は、性能試験を行うことにより、第1の実施例の2分割型シールリング13a、13bに比べ、第2の実施例の2分割型シールリング114、113による収容物の漏れの防止精度が高まる、という知見を得ている。もちろん、収容物の特性に応じで、第1の実施例の2分割型シールリング13a、13bと同様に、合わせ目が鉛直方向に延在する構成を採用することも可能である。
【0050】
さらに、2分割型シールリング114、113と2分割型押え板15a、15bとの取り付け状態は、第1の実施例と同様に、互いに係合する2分割型シールリング114、113の中心軸線Xに沿った合わせ目と、互いに固定された2分割型押え板15a、15bの中央部の合わせ目とは、互いにずれる位置に延在する。もちろん、第1の実施例と同様に、収容物の特性に応じで、2分割型シールリング114、113の合わせ目と、2分割型押え板15a、15bの合わせ目とが、一致する構成を採用することも可能である。
【0051】
2分割型シールリング114、113を洗浄又は交換するために横型ミキサ1の停止時に回転軸12から2分割型シールリング114、113を取り外す手順は、第1の実施例と同様であるので説明は割愛する。
【0052】
第1の実施例では、2分割型シールリング13a、13bの、溝14が設けられている内周面13dと、回転軸12の外周面12aとの間、及び第2の実施例では、封鎖溝115c、116cの頂部115e、116eと、回転軸12の外周面12aとの間には、隙間が設けられる構成であり、隙間寸法は、回転軸12、シールリング、及び撹拌される収容物の特性に応じて適宜調整される。
【0053】
第1及び第2の実施例では、1条のめねじから構成される封鎖溝を採用しているが、本発明は、当該構成の封鎖溝に限定されない。封鎖溝は、1条又は多条のめねじから構成することや、種々の寸法のめねじから構成することも可能である。また、上記実施例では、めねじ形状の封鎖溝を有する2分割型シールリングを用いているが、ケーシング11の、回転軸12が貫通する穴部に一条又は多条のめねじ形状の封鎖溝を形成する構成することも可能である。さらに、回転軸12の外周面に、前述しためねじ形状に相補的な一条又は多条のおねじ形状のらせん状の凸部を設けることにより、上記実施例と同様に収容物の流出を防止することができる。さらに、本実施例では、2つの半部材から構成されるシールリング又は押え板を採用しているが、本発明は、単体のシールリング又は押え板や、3つ以上の半部材から構成されるシールリング又は押え板を採用することも可能である。
【0054】
なお、回転軸にシールリングが装着される上述の構成や、回転軸12の外周面に凸部を設ける上述の構成においても、シーリングとケーシングの内周面との間に隙間が設けられ、そして、上記凸部とケーシングの内周面との間に隙間が設けられ、当該隙間寸法は、段落〔0052〕記載と同様に適宜変更できる。
【0055】
第1及び第2の実施例では、パン生地を捏ねるための横型ミキサを用いているが、本発明はパン生地に用いる横型ミキサに限定されず、食物又は食物及び液体の混合物を捏ねるための縦型ミキサ、スパイラルミキサ、横型ミキサ等、物質を撹拌するために用いる種々のミキサに利用できることは言うまでもない。
【0056】
なお、本発明は、上述の実施の態様に限定されないことは、本発明の技術思想に基づく限り、本発明の範疇に入ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1横型ミキサ 10混合物(収容物)
11混合槽壁(ケーシング) 12回転軸
13a,13b 2分割型シールリング 13c透孔
13f透孔 14シール用の溝
15a,15b 2分割型押え板 15c透孔
15d取っ手 17,18攪拌用ロッド
19ベアリング 20従動軸側軸受ユニット
21フレーム 22キャッチクリップ
22a係合部部品 22bクリップ部品
30固定ピン 113、114 2分割型シールリング
113a、113b、114a、114b 半部材
113c、114c 透孔 115、116 基部
115c、116c 封鎖溝 115d、116d 凹部
115e、116e 頂部 117 フランジ部
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図11