(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】熱電発電装置
(51)【国際特許分類】
H10N 10/17 20230101AFI20230512BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20230512BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H10N10/17
H10N10/13
H02N11/00 A
(21)【出願番号】P 2018049649
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 直樹
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-009361(JP,A)
【文献】特開2007-088039(JP,A)
【文献】特開2009-117645(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0119465(KR,A)
【文献】国際公開第2009/020100(WO,A1)
【文献】特開平02-049480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/17
H10N 10/13
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が流れる第1流路と、
前記第1流体に対して温度差を有する第2流体が流れる第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを隔てる絶縁性の隔離板と、
前記第1流路及び前記第2流路からなる積層流路の最外部に設けられる絶縁性の外層隔離板と、
前記温度差により発電する複数の熱電変換部と、
前記外層隔離板に設けられ、互いに異なる半導体極性を有する前記熱電変換部を直列に接続する電極と、を備え、
前記熱電変換部は、前記第1流路と前記第2流路とに跨るように配置され、前記隔離板に形成された貫通孔を塞ぐ導通部材と、前記第1流路に配置され前記導通部材に接続される第1熱電変換素子と、前記第2流路に配置され前記導通部材に接続される第2熱電変換素子と、を含み、
前記第1熱電変換素子と前記第2熱電変換素子とが同一の断面形状及び寸法で前記導通部材に接続され、
前記第1熱電変換素子と前記第2熱電変換素子とが互いに同じ半導体極性を有する、熱電発電装置。
【請求項2】
前記第1流路は、複数の前記第2流路に挟まれるように配置され、
前記複数の熱電変換部は、互いに異なる半導体極性を有する前記熱電変換部が前記第1流路において接合される、請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記電極は、かしめ構造により前記外層隔離板に固定される、請求項1又は2に記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記電極は、前記外層隔離板の外側面よりも外側に突出しないように配置される、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱電発電装置。
【請求項5】
前記電極は、前記第1流体及び前記第2流体に接しない、請求項1乃至4のいずれかに記載の熱電発電装置。
【請求項6】
前記外層隔離板及び前記隔離板の少なくとも一方は、金属板を備え、
前記金属板は、前記熱電変換部と電気的に導通しない、請求項1乃至5のいずれかに記載の熱電発電装置。
【請求項7】
前記金属板は、前記第1流体及び前記第2流体に接しないように配置される、請求項6に記載の熱電発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換素子を利用した熱電発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換モジュールは、ゼーベック効果によって熱エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能な熱電変換素子から構成されるモジュールである。このようなエネルギーの変換性質を利用することで、産業・民生用プロセスや移動体から排出される排熱を有効な電力に変換することができるため、環境問題に配慮した省エネルギー技術として当該熱電変換モジュール及びこれを構成する熱電変換素子が注目されている。
【0003】
上記のような熱電変換モジュールは、一般的に、複数の熱電変換素子(P型半導体及びN型半導体)を電極で接合して構成され、熱電変換素子の両端に接合されたそれぞれの電極に温度差を設けることにより発電する。このような熱電発電モジュールは、自動車のエンジンや、その他の産業機器から排出される排ガスの廃熱を利用して発電することができ、例えば特許文献1には自動車のEGRガスを高温熱源として利用するEGRガス発電装置が開示されている。
【0004】
より具体的には、特許文献1に記載された従来技術は、自動車のエンジンから排出される排ガスのEGR流路と冷却水流路とを交互に積層し、排ガスを冷却することにより排ガス再循環(EGR)を行うと共に、EGR流路と冷却水流路との間に熱電変換モジュールを配置することにより発電を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術は、積層したEGR流路と冷却水流路との間に熱電変換モジュールを配置するため、各流路の厚みの合計に熱電変換モジュールの厚みが加わることになり、積層方向の全体的な厚みが増大して省スペース化が妨げられる虞が生じる。また、上記のような従来技術は、各流路を形成する上板・下板、及び電極を介して熱電変換モジュールの端部を加熱・冷却するため、高温媒体・低温媒体と熱電変換モジュールとの熱伝導における損失により、発電効率が低下する虞が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発電効率の低下を抑制する省スペースな熱電発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、第1流体が流れる第1流路と、前記第1流体に対して温度差を有する第2流体が流れる第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とを隔てる絶縁性の隔離板と、前記第1流路及び前記第2流路からなる積層流路の最外部に設けられる絶縁性の外層隔離板と、前記温度差により発電する複数の熱電変換部と、前記外層隔離板に設けられ、互いに異なる半導体極性を有する前記熱電変換部を直列に接続する電極と、を備え、前記熱電変換部は、前記第1流路と前記第2流路とに跨るように配置される熱電発電装置である。
【0009】
熱電発電装置は、第1流体が流れる第1流路と第2流体が流れる第2流路とからなる積層流路において、電極により直列に接続された複数の熱電変換部を備えており、個々の熱電変換部が第1流路と第2流路とに跨るように配置されている。このため、熱電変換部は、第1流体及び第2流体に直接接することにより熱伝導の損失が低減されることから、両者の温度差を効率的に電力に変換することができ発電効率の低下を抑制することができる。また、熱電変換部は、隔離板によって隔てられた第1流路と第2流路とからなる積層流路の内部に配置されることにより、熱電変換モジュールを各流路で挟む従来技術と比較して、積層方向の全体的な厚みを薄くすることができる。従って、本発明の第1の態様によれば、発電効率の低下を抑制する省スペースな熱電発電装置を提供することができる。
【0010】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記第1流路は、複数の前記第2流路に挟まれるように配置され、前記複数の熱電変換部は、互いに異なる半導体極性を有する前記熱電変換部が前記第1流路において接合される、熱電発電装置である。
【0011】
本発明の第2の態様は、1つの第1流路が2つの第2流路に挟まれる積層流路が形成されることにより、2つの隔離板が第1流路を介して対向することになる。また、熱電変換部は、それぞれの隔離板を貫通するように配置されているため、熱電変換部が積層流路の積層方向に並ぶことになる。ここで、これらの熱電変換部は、互いに異なる半導体極性を有すると共に、互いに接合されている。これにより、本発明の第2の態様によれば、積層方向に直列に接続される複数の熱電変換部を直接接続することができ、積層方向に対して省スペースな熱電発電装置を提供することができる。
【0012】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第1又は第2の態様において、前記電極は、かしめ構造により前記外層隔離板に固定される、熱電発電装置である。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、電極が外層隔離板にかしめ固定されていることから、電極が外層隔離板から離脱する虞を低減することができる。また、本発明の第3の態様によれば、電極が外層隔離板に形成された貫通孔に対して設けられる場合であっても、電極が貫通孔を塞ぐようにかしめ固定されることにより、貫通孔における第1流体又は第2流体の漏洩を防止することができる。
【0014】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第1乃至第3のいずれかの態様において、前記電極は、前記外層隔離板の外側面よりも外側に突出しないように配置される、熱電発電装置である。
【0015】
外層隔離板に設けられる電極は、外層隔離板の内部、又は外層隔離板よりも流路側に配置されている。これにより、本発明の第4の態様によれば、熱電発電装置は、積層流路の積層方向に対する厚みが、2つ外層隔離板により規定される幅に抑えられ、より省スペース化を図ることができる。
【0016】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、上記した本発明の第1乃至第4のいずれかの態様において、前記電極は、前記第1流体及び前記第2流体に接しない、熱電発電装置である。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、第1流体又は第2流体が金属に対して腐食性がある場合や高温である場合であっても、第1流体及び第2流体が電極に接しない位置に形成されていることにより、電極が損傷する虞を低減することができる。
【0018】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、上記した本発明の第1乃至第5のいずれかの態様において、前記外層隔離板及び前記隔離板の少なくとも一方は、金属板を備え、前記金属板は、前記熱電変換部と電気的に導通しない、熱電発電装置である。
【0019】
熱電発電装置は、外層隔離板及び隔離板の少なくとも一方が、熱電変換部に対して電気的に絶縁された金属板を備えることにより、当該金属板を介して設置個所に容易に固定することができる。ここで、外層隔離板及び隔離板は、第1流体及び第2流体に接しても損傷しにくい材料から形成されていることが好ましく、条件によっては熱電発電装置を設置個所に直接固定するための部材としては強度が不十分となる虞も生じ得る。このため、本発明の第6の態様によれば、外層隔離板及び隔離板の少なくとも一方は、例えば当該金属板を介して熱電発電装置を固定することにより、直接接続するよりも強固に接続することができる。
【0020】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、上記した本発明の第6の態様において、前記金属板は、前記第1流体及び前記第2流体に接しないように配置される、熱電発電装置である。
【0021】
本発明の第7の態様によれば、例えば第1流体又は第2流体が金属板に対して腐食性がある場合や高温である場合であっても、第1流体及び第2流体が金属板に接しない位置に形成されていることにより、金属板が損傷する虞を低減することができる。
【0022】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、上記した本発明の第1乃至第7のいずれかの態様において、前記熱電変換部は、前記隔離板に形成された貫通孔を塞ぐ導通部材と、前記第1流路に配置され前記導通部材に接続される第1熱電変換素子と、前記第2流路に配置され前記導通部材に接続される第2熱電変換素子と、を含み、前記第1熱電変換素子と前記第2熱電変換素子とが互いに同じ半導体極性を有する、熱電発電装置である。
【0023】
熱電変換部は、互いに同じ半導体極性を有する第1熱電変換素子と第2熱電変換素子とが導通部材を挟むように形成され、第1流路と第2流路とに跨るように配置されている。ここで、導通部材は隔離板に形成された貫通孔を塞ぐように隔離板にかしめ固定され、また、電極は上記のように外層隔離板に設けられている。これにより、熱電発電装置は、導通部材を備える隔離板と電極を備える複数の外層隔離板とのそれぞれの間に、第1熱電変換素子及び第2熱電変換素子をそれぞれ配置して溶接することにより一回の接合で形成することができる。このため、本発明の第8の態様によれば、積層流路と熱電変換部とを一体化した構成であるにも拘らず、製造効率の向上が可能な構造を有する熱電発電装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発電効率の低下を抑制する省スペースな熱電発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る熱電発電装置の主要部を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る熱電発電装置の断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る熱電発電装置の断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る電極の断面図である。
【
図5】本発明の第4実施形態に係る電極の断面図である。
【
図6】本発明の第5実施形態に係る外層隔離板の一部を示す分解斜視図である。
【
図7】本発明の第5実施形態に係る熱電発電装置の断面図である。
【
図8】本発明の第6実施形態に係る電極の断面図である。
【
図9】本発明の第7実施形態に係る熱電発電装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。以下では、説明の便宜上、各図における三次元空間の各方向を符号X、Y、Zで示す。
【0027】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る熱電発電装置1について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱電発電装置1の主要部を示す斜視図である。熱電発電装置1は、隔離板10、2つの外層隔離板20、複数の熱電変換部30、40、及び複数の電極50を備える。熱電発電装置1は、詳細を後述するように、隔離板10及び2つの外層隔離板20により形成される2つの流路に高温媒体H及び低温媒体Cがそれぞれ流れることにより、末端の電極50A及び50Bに電力を発生させる。尚、本実施形態においては、X方向の2つの流路を形成すべく、当該流路のY方向の両側に側壁(
図1では図示を省略)が設けられているものとする。
【0028】
隔離板10は、絶縁性を有し、高温媒体H及び低温媒体Cを隔てる板状部材であり、本実施形態においてはXY平面に配置されている。隔離板10は、例えばセラミックからなり、各媒体に対する耐熱性と耐腐食性とを有すると共に、各媒体を透過しない遮蔽性を有する。
【0029】
2つの外層隔離板20は、隔離板10と同様の材質からなり、隔離板10に対して平行且つZ方向両側の離間した位置にそれぞれ配置されている。
【0030】
複数の熱電変換部30及び40は、隔離板10を貫通して両端が2つの外層隔離板20にそれぞれ当接するように配置されている。熱電変換部30は、詳細を後述するように、P型半導体素子を含み、高温媒体H及び低温媒体Cの温度差により内部の正孔(ホール)が移動することで電力を発生させる。また、熱電変換部40は、詳細を後述するように、N型半導体素子を含み、高温媒体H及び低温媒体Cの温度差により内部の電子が移動することで電力を発生させる。複数の熱電変換部30及び40は、X方向及びY方向に対してマトリクス状に交互に配置されている。
【0031】
複数の電極50は、例えば銅などの金属部材からなり、2つの外層隔離板20にそれぞれ設けられると共に、交互に隣接する熱電変換部30及び40の端部同士を電気的に接続する。これにより、それぞれの電極50は、全ての熱電変換部30及び40を直列に接続する。尚、直列接続の末端の電極50A及び50Bは、電力を取り出すための引き出し電極として、外層隔離板20よりも外側へ延在している。
【0032】
図2は、本発明の第1実施形態に係る熱電発電装置1の断面図である。より具体的には、
図2は、
図1の熱電発電装置1において、末端の電極50Aを通るXZ平面における断面を表す。
【0033】
図2に示されるように、隔離板10と一方の外層隔離板20との間には、第1流路F1が形成され、第1流路F1の内部を「第1流体」としての高温媒体Hが流れる。また、隔離板10と他方の外層隔離板20との間には、第2流路F2が形成され、第2流路F2の内部を「第2流体」としての低温媒体Cが流れる。すなわち、本実施形態においては、1つの第1流路F1と1つの第2流路F2とが積層流路を構成し、隔離板10が両者を隔離すると共に、当該積層流路の積層方向(Z方向)における最外部に外層隔離板20が設けられている。
【0034】
本実施形態においては、
図2に示すように、高温媒体H及び低温媒体Cは、X方向の同一の向きに流れていることとしているが、互いに逆向きであってもよく、また、XY平面において互いに垂直な向きであってもよい。高温媒体H及び低温媒体Cは、例えば熱電発電装置1が車両の排ガス再循環(EGR)に適用される場合には、それぞれ排ガス及び冷却水を使用することになるが、必ずしもこれらに限られるものではなく、温度差を有する2つの流体であればよい。
【0035】
熱電変換部30は、導通部材31、及び2つの熱電変換素子32を含む。導通部材31は、例えば銅などの電気伝導性を有する金属からなり、隔離板10に形成された貫通孔11を塞ぐように設けられている。「第1熱電変換素子」及び「第2熱電変換素子」としての2つの熱電変換素子32は、共に公知のP型半導体材料から形成されていることにより互いに同じ半導体極性を有し、第1流路F1及び第2流路F2のそれぞれにおいて、一端が溶接により導通部材31と接合され、他端が外層隔離板20に当接するように配置されている。そして、導通部材31及び熱電変換素子32は、XY平面における断面形状がいずれも同一である。当該断面形状は、本実施形態においては、円形であるが、その他の形状であってもよい。
【0036】
熱電変換部40は、導通部材41、及び2つの熱電変換素子42を含む。導通部材41は、例えば銅などの電気伝導性を有する金属からなり、隔離板10に形成された貫通孔11を塞ぐように設けられている。「第1熱電変換素子」及び「第2熱電変換素子」としての2つの熱電変換素子42は、共に公知のN型半導体材料から形成されていることにより互いに同じ半導体極性を有し、第1流路F1及び第2流路F2のそれぞれにおいて、一端が溶接等により導通部材41と接合され、他端が外層隔離板20に当接するように配置されている。そして、導通部材41及び熱電変換素子42は、XY平面における断面形状がいずれも同一である。当該断面形状は、本実施形態においては円形であるが、その他の形状であってもよい。
【0037】
複数の電極50は、例えば銅などの電気伝導性を有する金属からなり、外層隔離板20に形成された貫通孔21を塞ぎつつ、互いに異なる半導体極性を有する隣接する熱電変換部30と熱電変換部40とを電気的に接続する。それぞれの電極50は、貫通孔21に対するかしめ構造により外層隔離板20に固定されている。ここで、貫通孔21は、外層隔離板20の厚み方向、すなわちZ方向に対して側面が非直線的に形成されている。このため、かしめ構造により外層隔離板20に固定された電極50は、貫通孔21から離脱しにくい構造を有することになる。また、それぞれの電極50は、熱電変換部30及び熱電変換部40に対して溶接により直接接合されている。
【0038】
そして、熱電発電装置1は、第1流路F1に配置された熱電変換素子32、42を高温媒体Hが加熱し、第2流路F2に配置された熱電変換素子32、42を低温媒体Cが冷却することにより、熱電変換部30、40がZ方向に対して互いに逆向きの電力を発生される。これにより、熱電発電装置1は、直列に接続された全ての熱電変換部30、40により発電することができる。
【0039】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る熱電発電装置1は、個々の熱電変換部30及び熱電変換部40が第1流路F1及び第2流路F2に跨るように配置されていることから、高温媒体Hに接する部分が直接加熱され、低温媒体Cに接する部分が直接冷却されることになる。このため、熱電発電装置1は、熱電変換部30及び熱電変換部40と高温媒体H及び低温媒体Cとの熱伝導の損失が低減されることにより、発電効率(各媒体の温度差に対する発電量)の低下を抑制することができる。また、熱電発電装置1は、熱電変換部30及び熱電変換部40が第1流路F1及び第2流路F2の内部に配置されていることから、熱電変換モジュールを各流路で挟む従来技術と比較して、積層方向の全体的な厚みを薄くすることができる。従って、本発明の第1実施形態によれば、発電効率の低下を抑制する省スペースな熱電発電装置を提供することができる。
【0040】
また、本発明の第1実施形態に係る熱電発電装置1は、熱電変換部30及び熱電変換部40を接続する電極50が、かしめ構造により外層隔離板20に固定されている。このため、電極50は、外層隔離板20から離脱する虞を低減することができると共に、外層隔離板20に形成された貫通孔21を塞ぐことにより、貫通孔21から高温媒体H及び低温媒体Cが流出する虞を低減することができる。
【0041】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る熱電発電装置2について説明する。本発明の第2実施形態は、積層流路が1つの第1流路F1と2つの第2流路F2とで構成され、熱電変換部30及び熱電変換部40がZ方向に対しても接続されている点が上記した第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同一の点については、詳細な説明を省略する。
【0042】
図3は、本発明の第2実施形態に係る熱電発電装置2の断面図である。より具体的には、
図3は、
図2と同様に、熱電発電装置2のXZ平面における断面を表す。
【0043】
熱電発電装置2は、2つの隔離板10と2つの外層隔離板20とがそれぞれZ方向に離間して平行に配置されている。
図3に示されるように、2つの隔離板10の間には、第1流路F1が形成され、第1流路F1の内部を「第1流体」としての高温媒体Hが流れる。また、2つの隔離板10と2つの外層隔離板20との間には、それぞれ第2流路F2が形成され、第2流路F2の内部を「第2流体」としての低温媒体Cが流れる。すなわち、本実施形態においては、1つの第1流路F1が2つの第2流路F2に挟まれるように積層流路が構成され、2つの隔離板10が両者を隔離すると共に、当該積層流路の積層方向(Z方向)における最外部に外層隔離板20が設けられている。
【0044】
複数の熱電変換部30及び熱電変換部40は、X方向及びY方向に交互に配置されていることに加え、Z方向に対してもそれぞれ1つずつ配置されている。このとき、Z方向に並ぶ熱電変換部30及び熱電変換部40は、第1流路F1において、溶接により互いに直接接合されている。そして、Z方向に接合した熱電変換部30及び熱電変換部40は、互いに半導体極性が異なるため、発生させる電力の向きが図面上等しく、電気的に直列に接続されることになる。
【0045】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る熱電発電装置2は、第1流路F1及び第2流路F2が交互に配置され、積層方向に対して熱電変換部30及び熱電変換部40が互いに接合されている。これにより、本発明の第2実施形態に係る熱電発電装置2によれば、上記した熱電発電装置1を積層方向に2つ配置する場合に比して、電極50がかしめ固定された外層隔離板20の数量を削減することができ、積層方向に対して省スペース化を図ることができる。尚、同様の構成により、より多くの第1流路F1及び第2流路F2を交互に配置した場合であっても、積層方向に対して熱電変換部30及び熱電変換部40を交互に接合することで、積層方向の直列接続を拡張することもできる。
【0046】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態は、外層隔離板20に設けられた電極51の構成が上記した第1実施形態の電極50と異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同一の点については、詳細な説明を省略する。
【0047】
図4は、本発明の第3実施形態に係る電極51の断面図である。より具体的には、
図4は、外層隔離板20にかしめ固定された1つの電極51のXZ平面における断面を表す。ここでは、第1流路F1に接する外層隔離板20に設けられた電極51について説明するが、第2流路F2に接する外層隔離板20に設けられた電極51も同様の構成とすることができるため説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、外層隔離板20には、熱電変換部30と熱電変換部40とを接続する電極51を収容するための凹部22が形成されている。凹部22は、外層隔離板20の内側面23に面して形成され、内部に電極51がかしめ固定されている。このため、電極51は、外層隔離板20の外側面24よりも積層流路の外側に突出しないように配置することができる。
【0049】
これにより、本発明の第3実施形態によれば、外層隔離板20から電極51が積層方向に突出しない構成とすることができ、上記した第1実施形態に比して、積層方向の全体的な厚みを薄くすることができる。
【0050】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態について説明する。本発明の第4実施形態は、外層隔離板20に設けられた電極52の構成が上記した第1実施形態の電極50と異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同一の点については、詳細な説明を省略する。
【0051】
図5は、本発明の第4実施形態に係る電極52の断面図である。より具体的には、
図5は、外層隔離板20にかしめ固定された1つの電極52のXZ平面における断面を表す。ここでは、第1流路F1に接する外層隔離板20に設けられた電極52について説明するが、第2流路F2に接する外層隔離板20に設けられた電極52も同様の構成とすることができるため説明を省略する。
【0052】
図5に示すように、外層隔離板20には、熱電変換部30と熱電変換部40とを接続する電極52を収容するための部分貫通孔25が形成されている。部分貫通孔25は、外層隔離板20の貫通部分と、外層隔離板20の外側面24に面して形成された凹部とが連結するように形成され、内部に電極52がかしめ固定されている。このため、電極52は、外層隔離板20の外側面24よりも積層流路の外側に突出しないように配置することができる。
【0053】
これにより、本発明の第4実施形態によれば、外層隔離板20から電極52が積層方向に突出しない構成とすることができ、上記した第1実施形態に比して、積層方向の全体的な厚みを薄くすることができる。また、本発明の第4実施形態によれば、電極52が外層隔離板20の内側面23及び外側面24の両方向に離脱しにくい構成とすることができる。
【0054】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態について説明する。本発明の第5実施形態は、外層隔離板26の構成、及び外層隔離板26に設けられた電極53の構成が上記した第1実施形態の外層隔離板20、及び外層隔離板20に設けられた電極50と異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同一の点については、詳細な説明を省略する。
【0055】
図6は、本発明の第5実施形態に係る外層隔離板26の一部を示す分解斜視図である。外層隔離板26は、上記した外層隔離板20と同様の素材からなる第1外層隔離板27及び第2外層隔離板29と、金属板28とを含み、金属板28の両面に第1外層隔離板27及び第2外層隔離板29が貼り付けられている。ここで、第1外層隔離板27及び第2外層隔離板29は、貼り付けられた金属板28により補強されるため、上記した外層隔離板20よりも薄く形成することができる。
【0056】
外層隔離板26にかしめ固定される電極53は、外層隔離板26の積層構造に伴って、第1部分電極54、第2部分電極55、第3部分電極56、及び第4部分電極57からなる形状として構成される。第1部分電極54は、第1外層隔離板27に形成された貫通孔を塞ぐように、第1外層隔離板27と同じ層に配置される。第2部分電極55は、金属板28に形成された孔部28aに対してクリアランスを設けて第1外層隔離板27と同じ層に配置される。第3部分電極56は、第2外層隔離板29に形成された貫通孔を塞ぐように、第2外層隔離板29と同じ層に配置される。そして、第4部分電極57は、第2外層隔離板29の外側面において、隣接する2つの第3部分電極56を電気的に接続する。
【0057】
ここでは、第1部分電極54乃至第4部分電極57を分離して説明しているが、これらは全て同一材料からなり、電極53として一体に形成されている。また、第1外層隔離板27及び第2外層隔離板29が絶縁性を有する素材で形成されているのに対し、金属板28は、導電性を有するため、複数の孔部28aを設けることにより、電極53を介して熱電変換部30及び熱電変換部40と電気的に導通しない構成としている。
【0058】
図7は、本発明の第5実施形態に係る熱電発電装置3の断面図である。より具体的には、
図7は、第1外層隔離板27及び第2外層隔離板29が金属板28を含む場合の熱電発電装置3における、末端の電極53Aを通るYZ平面における断面を表す。すなわち、
図7は、高温媒体H及び低温媒体Cの上流側から見た断面を表している。
【0059】
熱電発電装置3は、X方向に流れる高温媒体H及び低温媒体CのY方向への流出を防止する側壁70が設けられている。側壁70は、隔離板10及び外層隔離板26と同様の材質からなり、隔離板10及び外層隔離板26と一体に形成してもよい。
【0060】
外層隔離板26は、上記した金属板28を含むように形成されている。金属板28は、本実施形態においては、外層隔離板26よりもY方向に長く形成されている。そして、金属板28は、熱電発電装置3の設置個所に対して容易に固定するための固定部材として利用することができる。例えば、
図7に示すように、熱電発電装置3が金属の筐体60を備える場合には、金属板28と筐体60の内壁面とを溶接により接続することができる。ここで、外層隔離板26は、例えばセラミックにより形成されていることから、金属板28を介して接続することで、筐体60へ直接接続するよりも強固に固定することができる。また、金属板28は、高温媒体H及び低温媒体Cのいずれにも接しないため、高温媒体H又は低温媒体Cによる腐食を防止することができる。
【0061】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態について説明する。本発明の第6実施形態は、電極58の構成が上記した第5実施形態の電極53と異なる。以下、第5実施形態と異なる点について説明し、第5実施形態と同一の点については、詳細な説明を省略する。
【0062】
図8は、本発明の第6実施形態に係る電極58の断面図である。より具体的には、
図8は、外層隔離板26にかしめ固定された1つの電極58のXZ平面における断面を表す。ここでは、第1流路F1に接する外層隔離板26に設けられた電極58について説明するが、第2流路F2に接する外層隔離板26に設けられた電極58も同様の構成とすることができるため説明を省略する。
【0063】
本実施形態における電極58は、第1外層隔離板27を貫通して熱電変換部30及び熱電変換部40のそれぞれに接続される2つの貫通部分と、第1外層隔離板27と同じ層において2つの貫通部分を接続する接続部分とから構成されている。すなわち、電極58は、高温媒体Hに接しない他、仮に外層隔離板26の外側面24側を別の媒体に晒される場合であっても、各媒体から腐食等の影響を受ける虞を低減することができる。
【0064】
<第7実施形態>
本発明の第7実施形態について説明する。本発明の第7実施形態は、熱電変換部30及び熱電変換部40の構成が上記した第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同一の点については、詳細な説明を省略する。
【0065】
図9は、本発明の第7実施形態に係る熱電発電装置4の断面図である。より具体的には、
図9は、末端の電極50Aを通るXZ平面における断面を表す。
【0066】
本実施形態における熱電変換部30は、2つの外層隔離板20の間において、隔離板10を貫通するP型半導体素子33からなる。また、本実施形態における熱電変換部40は、2つの外層隔離板20の間において、隔離板10を貫通するN型半導体素子43からなる。ここで、それぞれの熱電変換部30及び熱電変換部40と隔離板10に形成された貫通孔との間に隙間が生じる虞がある場合には、当該隙間を例えばめっき部材12で塞ぐことでシール性を担保することができる。これにより、本実施形態における熱電変換部30及び熱電変換部40によれば、個々の半導体素子が隔離板10を貫通する構成であっても、上記した第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0067】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の各実施形態において、第1流路F1と第2流路F2の配置を逆にして積層流路を構成してもよい。また、上記の各実施形態においては、第1流路F1及び第2流路F2をZ方向に積層して積層流路を構成する態様を例示したが、第1流路F1及び第2流路F2を同心円の径方向に積層して積層流路を構成してもよい。
【0068】
また、上記の第1実施形態及び第2実施形態において、
図2及び
図3に示される導通部材31、41は、電極50と同様に、隔離板10の貫通孔11にかしめ構造により固定されてもよい。さらに、隔離板10は、
図6及び
図7に示される外層隔離板26と同様に、金属板28を備えてもよい。
【0069】
また、上記の各実施形態においては、
図2及び
図3に示される第1流路F1と第2流路F2とが一枚の隔離板10によって隔てられているが、隔離板10を2重構造としてもよい。このとき、2重構造の隔離板10の全体の厚みは、上記の各実施形態における隔離板10の厚みと略同じ厚さとするのが好適である。これにより、2重構造の隔離板10は、積層方向の全体的な厚みを増加させることなく、高温媒体Hと低温媒体Cとの漏れによる混合をより確実に防止することができる。尚、この場合には2重構造の隔離板10のそれぞれに貫通孔11が形成されることになるが、貫通孔11に設けられる導通部材31、41については、上記の各実施形態と略同じ寸法のものを適用することができる。
【0070】
また、上記の各実施形態において、熱電変換部30の断面積と熱電変換部40の断面積との間に差を設けて両者の太さを変えてもよい。例えば、P型半導体材料からなる熱電変換素子32とN型半導体材料からなる熱電変換素子42とについて、一方の素子が他方の素子よりも抵抗値が高い場合には、その差に応じて、一方の素子の断面積を他方の素子の断面積よりも大きく設定するのが好適である。これにより、直列に接続される熱電変換部30と熱電変換部40との間で電気伝導性のバランスをとることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 熱電発電装置
10 隔離板
11、21 貫通孔
20 外層隔離板
23 内側面
24 外側面
28 金属板
28a 孔部
30、40 熱電変換部
31、41 導通部材
32、42 熱電変換素子
50 電極
H 高温媒体
C 低温媒体
F1 第1流路
F2 第2流路