(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230512BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20230512BHJP
H05B 3/03 20060101ALI20230512BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
H05B3/02 B
H05B3/03
H05B3/74
(21)【出願番号】P 2018183839
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207777(JP,A)
【文献】特開2017-157617(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179605(JP,U)
【文献】特開2016-139503(JP,A)
【文献】特開2016-129183(JP,A)
【文献】特開2018-120910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05B 3/02
H05B 3/03
H05B 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する略円形の第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状部材と、
前記板状部材の少なくとも一部を、前記第1の方向視で、前記第1の表面の中心点を中心とする周方向に延びる同心円状の複数の分割線によって複数の環状部分に仮想的に分割し、さらに、各前記環状部分を前記周方向に並ぶ複数の部分に仮想的に分割することにより設定される複数のセグメントのそれぞれに配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータライン部および前記ヒータライン部の端部に接続されたヒータパッド部を有するヒータ電極と、
第3の表面と、前記第3の表面とは反対側の第4の表面と、を有するベース部材であって、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、内部に冷媒流路が形成され、前記第3の表面から前記第4の表面まで貫通する複数の第1の貫通孔が形成されたベース部材と、
前記板状部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合部であって、前記複数の第1の貫通孔のそれぞれと連通して端子用孔を構成する複数の第2の貫通孔が形成された接合部と、
各前記端子用孔内に配置され、前記ヒータ電極と電気的に接続された給電端子と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記第1の表面の前記中心点を通る径方向に延び、かつ、前記一のセグメントを前記周方向に2等分する仮想直線である仮想中心線と重なっており、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記一のセグメントに配された前記ヒータパッド部と重なら
ず、
前記第1の方向視で、前記ヒータ電極の前記ヒータライン部における前記端子用孔と重なる部分は、前記ヒータライン部における前記端子用孔と重ならない部分と比較して、幅が広い、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
第1の方向に略直交する略円形の第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状部材と、
前記板状部材の少なくとも一部を、前記第1の方向視で、前記第1の表面の中心点を中心とする周方向に延びる同心円状の複数の分割線によって複数の環状部分に仮想的に分割し、さらに、各前記環状部分を前記周方向に並ぶ複数の部分に仮想的に分割することにより設定される複数のセグメントのそれぞれに配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータライン部を有するヒータ電極と、
第3の表面と、前記第3の表面とは反対側の第4の表面と、を有するベース部材であって、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、内部に冷媒流路が形成され、前記第3の表面から前記第4の表面まで貫通する複数の第1の貫通孔が形成されたベース部材と、
前記板状部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合部であって、前記複数の第1の貫通孔のそれぞれと連通して端子用孔を構成する複数の第2の貫通孔が形成された接合部と、
各前記端子用孔内に配置され、前記ヒータ電極と電気的に接続された給電端子と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記第1の表面の前記中心点を通る径方向に延び、かつ、前記一のセグメントを前記周方向に2等分する仮想直線である仮想中心線と重なっており、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記一のセグメントの中央位置と重ならない、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
第1の方向に略直交する略円形の第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状部材と、
前記板状部材の少なくとも一部を、前記第1の方向視で、前記第1の表面の中心点を中心とする周方向に延びる同心円状の複数の分割線によって複数の環状部分に仮想的に分割し、さらに、各前記環状部分を前記周方向に並ぶ複数の部分に仮想的に分割することにより設定される複数のセグメントのそれぞれに配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータライン部および前記ヒータライン部の端部に接続されたヒータパッド部を有するヒータ電極と、
第3の表面と、前記第3の表面とは反対側の第4の表面と、を有するベース部材であって、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、内部に冷媒流路が形成され、前記第3の表面から前記第4の表面まで貫通する複数の第1の貫通孔が形成されたベース部材と、
前記板状部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合部であって、前記複数の第1の貫通孔のそれぞれと連通して端子用孔を構成する複数の第2の貫通孔が形成された接合部と、
各前記端子用孔内に配置され、前記ヒータ電極と電気的に接続された給電端子と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記第1の表面の前記中心点を通る径方向に延び、かつ、前記一のセグメントを前記周方向に2等分する仮想直線である仮想中心線と重なっており、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記一のセグメン
トに配された前記ヒータパッド部と重ならず、さらに、
前記板状部材の前記第2の表面に形成された複数の凹部のそれぞれに配置された温度検知素子を備え、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記温度検知素子は、前記一のセグメントの前記仮想中心線と重なっている、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、前記複数のセグメントのうち、前記周方向に並ぶ2つの前記セグメントのそれぞれに重なる2つの前記温度検知素子は、前記第1の表面の前記中心点を中心とする一の仮想円周と重なっている、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項3または
請求項4に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントを前記径方向に沿って順に並ぶ第1の部分と第2の部分と第3の部分とに仮想的に3等分したときに、前記一のセグメントと重なる前記端子用孔の中心点は前記第1の部分に位置し、前記一のセグメントと重なる前記温度検知素子の中心点は前記第3の部分に位置する、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項6】
第1の方向に略直交する略円形の第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状部材と、
前記板状部材の少なくとも一部を、前記第1の方向視で、前記第1の表面の中心点を中心とする周方向に延びる同心円状の複数の分割線によって複数の環状部分に仮想的に分割し、さらに、各前記環状部分を前記周方向に並ぶ複数の部分に仮想的に分割することにより設定される複数のセグメントのそれぞれに配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータライン部を有するヒータ電極と、
第3の表面と、前記第3の表面とは反対側の第4の表面と、を有するベース部材であって、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、内部に冷媒流路が形成され、前記第3の表面から前記第4の表面まで貫通する複数の第1の貫通孔が形成されたベース部材と、
前記板状部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合部であって、前記複数の第1の貫通孔のそれぞれと連通して端子用孔を構成する複数の第2の貫通孔が形成された接合部と、
各前記端子用孔内に配置され、前記ヒータ電極と電気的に接続された給電端子と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記第1の表面の前記中心点を通る径方向に延び、かつ、前記一のセグメントを前記周方向に2等分する仮想直線である仮想中心線と重なっており、
さらに、
前記板状部材の前記第2の表面に形成された複数の凹部のそれぞれに配置された温度検知素子を備え、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記温度検知素子は、前記一のセグメントの前記仮想中心線と重なっており、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントを前記径方向に沿って順に並ぶ第1の部分と
第2の部分と第3の部分とに仮想的に3等分したときに、前記一のセグメントと重なる前記端子用孔の中心点は前記第1の部分に位置し、前記一のセグメントと重なる前記温度検知素子の中心点は前記第3の部分に位置する、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項7】
請求項1
から請求項6までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記径方向において、前記一のセグメントに配置された前記ヒータ電極の前記ヒータライン部の一部分と比較して、前記一のセグメントの境界から離間している、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項8】
請求項1から
請求項7までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、前記複数のセグメントのうち、前記周方向に並ぶ2つの前記セグメントのそれぞれに重なる2つの前記端子用孔は、前記第1の表面の前記中心点を中心とする一の仮想円周と重なっている、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項9】
請求項2から
請求項8までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、前記ヒータ電極は、前記端子用孔と重なっていない、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の保持装置において、
前記第1の方向視で、一の前記セグメントに重なる前記端子用孔と、前記一のセグメントと前記径方向に並ぶ他の前記セグメントに重なる前記端子用孔との間には、前記冷媒流路が位置している、
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持する保持装置として、静電チャックが用いられる。静電チャックは、例えばセラミックスにより形成され、所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に略直交する表面(以下、「吸着面」という。)を有する板状部材と、例えば金属により形成されたベース部材と、板状部材とベース部材とを接合する接合部と、板状部材の内部に配置されたチャック電極とを備えている。静電チャックは、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部材の吸着面にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックの吸着面に保持されたウェハの温度が所望の温度にならないと、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布を制御する性能が求められる。そのため、静電チャックの使用時には、板状部材に配置された複数のヒータ電極による加熱や、ベース部材に形成された冷媒流路に冷媒を供給することによる冷却によって、板状部材の吸着面の温度分布の制御(ひいては、吸着面に保持されたウェハの温度分布の制御)が行われる。なお、静電チャックには、板状部材に配置された各ヒータ電極への給電のための給電端子が設けられる。給電端子は、ベース部材および接合部に形成された貫通孔により構成された端子用孔に収容される。
【0004】
静電チャックにおいて、吸着面の温度分布の制御性を向上させるため、板状部材の少なくとも一部が複数の仮想的な部分(以下、「セグメント」という。)に分割され、各セグメントにヒータ電極が配置された構成が採用されることがある。このような構成によれば、板状部材の各セグメントに配置されたヒータ電極への印加電圧を個別に制御することによって各セグメントの温度を個別に制御することができ、その結果、吸着面の温度分布の制御性を向上させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベース部材において、端子用孔を構成する貫通孔が形成された部分には、冷媒流路を配置することができない。そのため、板状部材のうち、上記第1の方向視で端子用孔と重なる部分は、他の部分と比較して、ベース部材に形成された冷媒流路への冷媒供給による冷却作用が及びにくく、高温の温度特異点となりやすい。従来の静電チャックの構成では、端子用孔の存在に起因する高温の温度特異点の発生を抑制することができず、その結果、吸着面の温度分布の制御性(ひいては、吸着面に保持された対象物の温度分布の制御性)が低下するおそれがある。
【0007】
なお、このような課題は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャックに限らず、板状部材と、ベース部材と、板状部材とベース部材とを接合する接合部とを備え、板状部材の表面上に対象物を保持する保持装置一般に共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される保持装置は、第1の方向に略直交する略円形の第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状部材と、前記板状部材の少なくとも一部を、前記第1の方向視で、前記第1の表面の中心点を中心とする周方向に延びる同心円状の複数の分割線によって複数の環状部分に仮想的に分割し、さらに、各前記環状部分を前記周方向に並ぶ複数の部分に仮想的に分割することにより設定される複数のセグメントのそれぞれに配置され、抵抗発熱体により構成されたヒータライン部を有するヒータ電極と、第3の表面と、前記第3の表面とは反対側の第4の表面と、を有するベース部材であって、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、内部に冷媒流路が形成され、前記第3の表面から前記第4の表面まで貫通する複数の第1の貫通孔が形成されたベース部材と、前記板状部材の前記第2の表面と前記ベース部材の前記第3の表面との間に配置されて前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合部であって、前記複数の第1の貫通孔のそれぞれと連通して端子用孔を構成する複数の第2の貫通孔が形成された接合部と、各前記端子用孔内に配置され、前記ヒータ電極と電気的に接続された給電端子と、を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記第1の表面の前記中心点を通る径方向に延び、かつ、前記一のセグメントを前記周方向に2等分する仮想直線である仮想中心線と重なっている。本保持装置では、第1の方向視で、端子用孔が、一のセグメントにおける、周方向に並ぶ他のセグメントとの境界から比較的離れた位置、すなわち、隣接する他のセグメントの温度の影響を受けにくい位置に配置されている。そのため、本保持装置では、一のセグメントに配置されたヒータ電極の発熱量を制御することによって、第1の方向視で該一のセグメントに重なる端子用孔の存在に起因する高温の温度特異点の発生を抑制することができる。従って、本保持装置によれば、端子用孔の存在に起因する第1の表面の温度分布の制御性(ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性)の低下を抑制することができる。
【0011】
(2)上記保持装置において、前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記端子用孔は、前記径方向において、前記一のセグメントに配置された前記ヒータ電極の前記ヒータライン部の一部分と比較して、前記一のセグメントの境界から離間している構成としてもよい。本保持装置では、第1の方向視で、一のセグメントにおける境界と端子用孔との間の部分を、該部分に位置するヒータライン部による発熱によって加熱することができる。これにより、本保持装置では、一のセグメントに配置されたヒータ電極の発熱量を制御することによって、第1の方向視で該一のセグメントに重なる端子用孔の存在に起因する高温の温度特異点の発生を効果的に抑制することができる。従って、本保持装置によれば、第1の表面の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0012】
(3)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記複数のセグメントのうち、前記周方向に並ぶ2つの前記セグメントのそれぞれに重なる2つの前記端子用孔は、前記第1の表面の前記中心点を中心とする一の仮想円周と重なっている構成としてもよい。本保持装置では、周方向に並ぶ2つのセグメントのそれぞれに重なる2つの端子用孔の径方向における位置が、互いに近接している。そのため、本保持装置では、周方向に並ぶ2つのセグメントにおいて、端子用孔の存在に起因する高温の温度特異点の発生を抑制するためのヒータライン部の形状設計を共通化することができ、その結果、高温の温度特異点の発生を効果的に抑制するヒータライン部の良好な形状を実現することができる。従って、本保持装置によれば、第1の表面の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0013】
(4)上記保持装置において、さらに、前記板状部材の前記第2の表面に形成された複数の凹部のそれぞれに配置された温度検知素子を備え、前記第1の方向視で、一の前記セグメントと重なる前記温度検知素子は、前記一のセグメントの前記仮想中心線と重なっている構成としてもよい。本保持装置では、第1の方向視で、温度検知素子が、一のセグメントにおける、周方向に並ぶ他のセグメントとの境界から比較的離れた位置、すなわち、隣接する他のセグメントの温度の影響を受けにくい位置に配置されている。そのため、本保持装置では、第1の方向視で一のセグメントと重なる温度検知素子による温度検知結果が、一のセグメントと周方向に並ぶ他のセグメントの温度の影響を受けることを抑制することができる。これにより、本保持装置では、温度検知素子による温度検知結果に基づき該一のセグメントに配置されたヒータ電極の発熱量を制御することにより、該セグメントの温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。従って、本保持装置によれば、第1の表面の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0014】
(5)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記複数のセグメントのうち、前記周方向に並ぶ2つの前記セグメントのそれぞれに重なる2つの前記温度検知素子は、前記第1の表面の前記中心点を中心とする一の仮想円周と重なっている構成としてもよい。本保持装置では、周方向に並ぶ2つのセグメントのそれぞれに重なる2つの温度検知素子の径方向における位置が、互いに近接している。そのため、本保持装置では、周方向に並ぶ2つのセグメントにおいて、温度検知素子の位置を考慮したヒータライン部の形状設計を共通化することができ、その結果、温度検知素子による温度検知結果に基づくヒータ電極の制御性を向上させることができる。従って、本保持装置によれば、第1の表面の温度分布の制御性の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0015】
(6)上記保持装置において、前記第1の方向視で、一の前記セグメントを前記径方向に沿って順に並ぶ第1の部分と第2の部分と第3の部分とに仮想的に3等分したときに、前記一のセグメントと重なる前記端子用孔の中心点は前記第1の部分に位置し、前記一のセグメントと重なる前記温度検知素子の中心点は前記第3の部分に位置する構成としてもよい。本保持装置では、端子用孔と温度検知素子とが、径方向に比較的離れて配置されている。そのため、本保持装置では、温度検知素子による温度検知の精度が端子用孔の存在に起因して低下したり、端子用孔の近くに位置する温度検知素子を収容する凹部の存在に起因してヒータ電極の発熱量の制御を行っても高温の温度特異点が発生したりすることを抑制することができる。従って、本保持装置によれば、第1の表面の温度分布の制御性をさらに効果的に向上させることができる。
【0016】
(7)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記ヒータ電極は、前記端子用孔と重なっていない構成としてもよい。本保持装置では、該ヒータ電極が配置されたセグメントにおける、第1の方向視で端子用孔と重なる部分の発熱量を抑えることができ、端子用孔の存在に起因する高温の温度特異点の発生を抑制することができる。従って、本保持装置によれば、第1の表面の温度分布の制御性をさらに効果的に向上させることができる。
【0017】
(8)上記保持装置において、前記第1の方向視で、前記ヒータ電極の前記ヒータライン部における前記端子用孔と重なる部分は、前記ヒータライン部における前記端子用孔と重ならない部分と比較して、幅が広い構成としてもよい。本保持装置では、該セグメントにおける、第1の方向視で端子用孔と重なる部分に配置されたヒータ電極による発熱量を抑えることができ、端子用孔の存在に起因する高温の温度特異点の発生を抑制することができる。従って、本保持装置によれば、第1の表面の温度分布の制御性をさらに効果的に向上させることができる。
【0018】
(9)上記保持装置において、前記第1の方向視で、一の前記セグメントに重なる前記端子用孔と、前記一のセグメントと前記径方向に並ぶ他の前記セグメントに重なる前記端子用孔との間には、前記冷媒流路が位置している、ことを特徴とする構成としてもよい。本保持装置では、ベース部材における2つの端子用孔に挟まれた部分を効果的に冷却することができ、端子用孔の存在に起因する高温の温度特異点の発生を効果的に抑制することができる。従って、本保持装置によれば、第1の表面の温度分布の制御性をさらに効果的に向上させることができる。
【0019】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、真空チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
【
図3】本実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。
【
図4】ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成を模式的に示す説明図である。
【
図5】板状部材10の一部分のXY断面構成を拡大して示す説明図である。
【
図6】サーミスタ600およびサーミスタ600への給電のための構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.本実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、
図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、
図3は、本実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0022】
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された板状部材10およびベース部材20を備える。板状部材10とベース部材20とは、板状部材10の下面S2(
図2参照)とベース部材20の上面S3とが、後述する接合部30を挟んで上記配列方向に対向するように配置される。すなわち、ベース部材20は、ベース部材20の上面S3が板状部材10の下面S2側に位置するように配置される。板状部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第3の表面に相当する。
【0023】
板状部材10は、Z軸方向視で略円形の板状の部材であり、例えばセラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。より詳細には、板状部材10は、外周に沿って上側に切り欠きが形成された部分である外周部OPと、外周部OPの内側に位置する内側部IPとから構成されている。板状部材10における内側部IPの厚さ(Z軸方向における厚さであり、以下同様。)は、外周部OPに形成された切り欠きの分だけ、外周部OPの厚さより厚くなっている。すなわち、板状部材10の外周部OPと内側部IPとの境界の位置で、板状部材10の厚さが変化している。
【0024】
板状部材10の内側部IPの直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、板状部材10の外周部OPの直径は例えば60mm~510mm程度(通常は210mm~360mm程度)である(ただし、外周部OPの直径は内側部IPの直径より大きい)。また、板状部材10の内側部IPの厚さは例えば1mm~10mm程度であり、板状部材10の外周部OPの厚さは例えば0.5mm~9.5mm程度である(ただし、外周部OPの厚さは内側部IPの厚さより薄い)。
【0025】
板状部材10の上面S1のうち、内側部IPにおける上面(以下、「吸着面」ともいう。)S11は、Z軸方向に略直交する略円形の表面である。板状部材10の吸着面S11における外縁付近には、連続的な壁状の凸部(不図示)が形成されており、板状部材10の吸着面S11における壁状の凸部より内側の領域には、複数の独立した柱状の凸部(不図示)が形成されている。ウェハWは、板状部材10の吸着面S11における上記壁状の凸部と複数の柱状の凸部とに支持される。吸着面S11は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」といい、
図3に示すように、面方向のうち、吸着面S11の中心点CPを中心とする周方向を「周方向CD」といい、面方向のうち、周方向CDに直交する方向(すなわち、吸着面S11の中心点CPを通る方向)を「径方向RD」という。
【0026】
板状部材10の上面S1のうち、外周部OPにおける上面(以下、「外周上面」ともいう。)S12は、Z軸方向に略直交する略円環状の表面である。板状部材10の外周上面S12には、例えば、静電チャック100を固定するための治具(不図示)が係合する。
【0027】
図2に示すように、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40にチャック用電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部材10の吸着面S11に吸着固定される。
【0028】
また、板状部材10の内部には、それぞれ導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された、ヒータ電極層50と、ヒータ電極層50への給電のためのヒータ用ドライバ51および各種ビア53,54とが配置されている。本実施形態では、ヒータ電極層50はチャック電極40より下側に配置され、ヒータ用ドライバ51はヒータ電極層50より下側に配置されている。これらの構成については、後に詳述する。
【0029】
ベース部材20は、例えば板状部材10の外周部OPと同径の、または、板状部材10の外周部OPより径が大きい略円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。ベース部材20の下面S4は、特許請求の範囲における第4の表面に相当する。
【0030】
ベース部材20は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接合部30によって、板状部材10に接合されている。接合部30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接合部30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0031】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により板状部材10が冷却され、板状部材10の吸着面S11に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0032】
A-2.ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成:
次に、ヒータ電極層50の構成およびヒータ電極層50への給電のための構成について詳述する。上述したように、板状部材10には、ヒータ電極層50と、ヒータ電極層50への給電のためのヒータ用ドライバ51および各種ビア53,54とが配置されている。また、静電チャック100には、ヒータ電極層50への給電のための他の構成(後述するヒータ端子用孔Ht1に収容されたヒータ用給電端子72等)が設けられている。
図4は、ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成を模式的に示す説明図である。
図4の上段には、板状部材10に配置されたヒータ電極層50の一部のYZ断面構成が模式的に示されており、
図4の中段には、板状部材10に配置されたヒータ用ドライバ51の一部のXY平面構成が模式的に示されており、
図4の下段には、ヒータ電極層50への給電のための他の構成のYZ断面構成が模式的に示されている。また、
図5は、板状部材10の一部分のXY断面構成を拡大して示す説明図である。
図5には、
図2のV-Vの位置における板状部材10の一部分(
図3のX1部)のXY断面構成が示されている。
【0033】
ここで、
図3に示すように、本実施形態の静電チャック100では、板状部材10に、面方向(Z軸方向に直交する方向)に並ぶ複数の仮想的な部分であるセグメントSE(
図3において一点鎖線で示す)が設定されている。より詳細には、Z軸方向視で、板状部材10の内側部IPが、吸着面S11の中心点CPを中心とする周方向CDに延びる同心円状の複数の第1の分割線DL1によって複数の仮想的な環状部分(ただし、中心点CPを含む部分のみは円状部分)に分割され、さらに各環状部分が、径方向RDに延びる複数の第2の分割線DL2によって周方向CDに並ぶ複数の仮想的な部分であるセグメントSEに分割されている。
図4の上段には、一例として、板状部材10に設定された3つのセグメントSEが示されている。
【0034】
図4の上段に示すように、ヒータ電極層50は、複数のヒータ電極500を含んでいる。ヒータ電極層50に含まれる複数のヒータ電極500のそれぞれは、板状部材10に設定された複数のセグメントSEの1つに配置されている。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに、1つのヒータ電極500が配置されている。換言すれば、板状部材10において、1つのヒータ電極500が配置された部分(主として該ヒータ電極500により加熱される部分)が、1つのセグメントSEとなる。
【0035】
図5に示すように、各ヒータ電極500は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部502と、ヒータライン部502の両端部に接続されたヒータパッド部504とを有する。本実施形態では、ヒータライン部502は、Z軸方向視で、セグメントSE内の各位置をできるだけ偏り無く通るような形状とされている。
【0036】
なお、上述したように、本実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに1つのヒータ電極500が配置されているが、ここで言う1つのヒータ電極500とは、独立して制御可能なヒータ電極500の単位を意味しており、必ずしも単一のヒータ電極500に限定されるものではない。例えば、1つのセグメントSEに、互いに共通に制御される複数のヒータ電極500が配置されているとしてもよい。また、1つのセグメントSEに配置されたヒータ電極500のヒータライン部502の構成が、Z軸方向における位置が互いに異なる複数層のヒータライン部502の部分が互いに直列に接続された構成であるとしてもよい。
【0037】
また、
図4の中段に示すように、板状部材10に配置されたヒータ用ドライバ51は、複数の導電ライン部510を有している。複数のヒータ電極500のそれぞれについて、ヒータ電極500の一端は、ビア53を介して、ヒータ用ドライバ51の1つの導電ライン部510に電気的に接続されており、該ヒータ電極500の他端は、ビア53を介して、ヒータ用ドライバ51の他の1つの導電ライン部510に電気的に接続されている。なお、
図4に示す例のように、各ヒータ電極500の一端については、互いに同一の導電ライン部510に電気的に接続されていてもよい。
【0038】
また、
図2および
図4に示すように、静電チャック100には、複数のヒータ端子用孔Ht1が形成されている。
図4に示すように、各ヒータ端子用孔Ht1は、ベース部材20を上面S3から下面S4まで貫通する貫通孔22と、接合部30を上下方向に貫通する貫通孔32と、板状部材10の下面S2側に形成されたヒータ端子用凹部12とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。ヒータ端子用孔Ht1の延伸方向に直交する断面形状は任意に設定できるが、例えば、円形や四角形、扇形等である。また、板状部材10の下面S2における各ヒータ端子用孔Ht1に対応する位置(Z軸方向においてヒータ端子用孔Ht1と重なる位置)には、導電性材料により構成された1つまたは複数のヒータ用給電パッド70が形成されている。各ヒータ用給電パッド70は、ビア54を介して、ヒータ用ドライバ51の導電ライン部510に電気的に接続されている。ベース部材20に形成された貫通孔22は、特許請求の範囲における第1の貫通孔に相当し、接合部30に形成された貫通孔32は、特許請求の範囲における第2の貫通孔に相当し、ヒータ端子用孔Ht1は、特許請求の範囲における端子用孔に相当する。
【0039】
各ヒータ端子用孔Ht1には、導電性材料により構成された1つまたは複数のヒータ用給電端子72が収容されている。各ヒータ用給電端子72は、例えばろう付けによりヒータ用給電パッド70に接合されている。また、各ヒータ端子用孔Ht1内において、各ヒータ用給電端子72は、ヒータ用コネクタ90を介して、ヒータ用電源(図示しない)に接続されたヒータ用配線80に電気的に接続されている。ヒータ用給電端子72は、特許請求の範囲における給電端子に相当する。
【0040】
このような構成において、各ヒータ電極500は、ヒータ用電源に対して互いに並列に接続されている。ヒータ用電源からヒータ用配線80、ヒータ用コネクタ90、ヒータ用給電端子72、ヒータ用給電パッド70、ビア54、ヒータ用ドライバ51の導電ライン部510およびビア53を介して、ヒータ電極500に電圧が印加されると、ヒータ電極500が発熱する。これにより、ヒータ電極500が配置されたセグメントSEが加熱され、板状部材10の吸着面S11の温度分布の制御(ひいては、板状部材10の吸着面S11に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。本実施形態では、各ヒータ電極500がヒータ用電源に対して互いに並列に接続されているため、各ヒータ電極500単位で(すなわち、各セグメントSE単位で)ヒータ電極500の発熱量を制御することができ、セグメントSE単位での板状部材10の吸着面S11の温度分布の制御(すなわち、よりきめ細かい単位での温度分布制御)を実現することができる。
【0041】
A-3.サーミスタ600およびサーミスタ600への給電のための構成:
図2に示すように、本実施形態の静電チャック100は、サーミスタ600と、サーミスタ600への給電のための構成(例えば、サーミスタ用ドライバ61)とを備える。
図6は、サーミスタ600およびサーミスタ600への給電のための構成を模式的に示す説明図である。
図6の上段には、
図4の上段と同様に、板状部材10に配置されたヒータ電極層50の一部のYZ断面構成が模式的に示されており、
図6の中段には、板状部材10に配置されたサーミスタ用ドライバ61の一部のXY平面構成が模式的に示されており、
図6の下段には、サーミスタ600の構成およびサーミスタ600への給電のための他の構成のYZ断面構成が模式的に示されている。
【0042】
図2および
図6に示すように、本実施形態の静電チャック100では、板状部材10の下面S2に複数のサーミスタ用凹部14が形成されており、各サーミスタ用凹部14内に1つのサーミスタ600が配置されている。なお、
図2および
図6には、複数のサーミスタ用凹部14およびサーミスタ600のうちの1つのみが示されている。サーミスタ600は、温度が変化すると抵抗値が変化する導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されており、抵抗値に基づき温度を測定することができる。サーミスタ600は、サーミスタ用凹部14の底面に配置された一対のサーミスタ用電極604に、例えば半田付けにより接合されている。なお、各サーミスタ用凹部14の内部に、樹脂接着剤(例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂)やセラミックス(例えば、アルミナ)等により構成された充填剤が充填されていてもよい。サーミスタ600は、特許請求の範囲における温度検知素子に相当する。
【0043】
また、
図6の中段に示すように、板状部材10に配置されたサーミスタ用ドライバ61は、複数の導電ライン部610を有している。複数のサーミスタ600のそれぞれについて、サーミスタ600に接続された一方のサーミスタ用電極604は、ビア63を介して、サーミスタ用ドライバ61の1つの導電ライン部610に電気的に接続されており、該サーミスタ600に接続された他方のサーミスタ用電極604は、ビア63を介して、サーミスタ用ドライバ61の他の1つの導電ライン部610に電気的に接続されている。なお、各サーミスタ600に接続された一方のサーミスタ用電極604については、互いに同一の導電ライン部610に電気的に接続されていてもよい。
【0044】
また、
図2および
図6に示すように、静電チャック100には、複数のサーミスタ端子用孔Ht2が形成されている。なお、
図2および
図6には、複数のサーミスタ端子用孔Ht2のうちの1つのみが示されている。
図6に示すように、各サーミスタ端子用孔Ht2は、ベース部材20を上面S3から下面S4まで貫通する貫通孔23と、接合部30を上下方向に貫通する貫通孔33と、板状部材10の下面S2側に形成されたサーミスタ端子用凹部13とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。サーミスタ端子用孔Ht2の延伸方向に直交する断面形状は任意に設定できるが、例えば、円形や四角形等である。本実施形態では、各サーミスタ端子用孔Ht2は、Z軸方向視で板状部材10の外周部OPと重なる位置に形成されている。また、板状部材10の下面S2における各サーミスタ端子用孔Ht2に対応する位置(Z軸方向においてサーミスタ端子用孔Ht2と重なる位置)には、導電性材料により構成された1つまたは複数のサーミスタ用給電パッド170が形成されている。各サーミスタ用給電パッド170は、ビア64を介して、サーミスタ用ドライバ61の導電ライン部610に電気的に接続されている。
【0045】
各サーミスタ端子用孔Ht2には、導電性材料により構成された1つまたは複数のサーミスタ用給電端子172が収容されている。各サーミスタ用給電端子172は、例えばろう付けによりサーミスタ用給電パッド170に接合されている。また、各サーミスタ端子用孔Ht2内において、各サーミスタ用給電端子172は、サーミスタ用コネクタ190を介して、サーミスタ用電源(図示しない)に接続されたサーミスタ用配線180に電気的に接続されている。
【0046】
このような構成において、各サーミスタ600は、サーミスタ用電源に対して互いに並列に接続されている。サーミスタ用電源からサーミスタ用配線180、サーミスタ用コネクタ190、サーミスタ用給電端子172、サーミスタ用給電パッド170、ビア64、サーミスタ用ドライバ61の導電ライン部610、ビア63およびサーミスタ用電極604を介して、サーミスタ600に電圧が印加されると、サーミスタ600に電流が流れる。静電チャック100は、各サーミスタ600に印加された電圧と各サーミスタ600に流れる電流とを測定するための構成(例えば、電圧計や電流計(いずれも不図示))を有しており、各サーミスタ600の電圧および電流の測定値に基づき、各サーミスタ600の抵抗値から、各サーミスタ600の温度、すなわち、各サーミスタ600が配置された板状部材10の部分の温度をリアルタイムで個別に測定することができる。従って、本実施形態の静電チャック100では、該温度測定結果に基づき各ヒータ電極500への印加電圧を個別に制御することにより、板状部材10の各部分の温度を精度良く制御することができ、板状部材10の吸着面S11の温度分布の制御性(ひいては、板状部材10の吸着面S11に保持されたウェハWの温度分布の制御性)を向上させることができる。
【0047】
A-4.ヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600の配置:
次に、本実施形態の静電チャック100におけるヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600の配置について、さらに詳細に説明する。
図5には、板状部材10の各セグメントSEに配置されたヒータ電極500に加えて、Z軸方向視での、ヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600(サーミスタ用凹部14)の位置が破線で示されている。なお、
図5では、便宜上、ヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600を円形で示すが、ヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600の実際の形状は円形に限られない。
図5に示すように、本実施形態の静電チャック100では、必ずしもすべてのセグメントSEがZ軸方向視でヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600と重なっている訳ではなく、Z軸方向視でヒータ端子用孔Ht1および/またはサーミスタ600と重ならないセグメントSEも存在している。また、
図5には、Z軸方向視での冷媒流路21の位置が太い破線で示されている。さらに、
図5には、各セグメントSEについて、吸着面S11の中心点CP(
図3参照)を通る径方向RDに延び、かつ、該セグメントSEを周方向CDに2等分する仮想直線である仮想中心線CLと、吸着面S11の中心点CPを中心とする仮想円周である第1の仮想円周VC1および第2の仮想円周VC2とが示されている。
【0048】
図5に示すように、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるヒータ端子用孔Ht1は、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっている。上述したように、一のセグメントSEの仮想中心線CLは、該一のセグメントSEを周方向CDに2等分する仮想直線である。そのため、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、ヒータ端子用孔Ht1が、一のセグメントSEにおける周方向CDに並ぶ他のセグメントSEとの境界から比較的離れた位置に配置されていると言える。なお、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるヒータ端子用孔Ht1の中心点P1が、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっている。
【0049】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるヒータ端子用孔Ht1は、径方向RDにおいて、該一のセグメントSEに配置されたヒータ電極500のヒータライン部502の一部分と比較して、該一のセグメントSEの境界から離間している。例えば、
図5に示された9個のセグメントSEのうち、上段中央のセグメントSE(第1のセグメントSE1)に注目すると、径方向RDにおいて、第1のセグメントSE1と重なるヒータ端子用孔Ht1と第1のセグメントSE1の上側の境界との間の位置に、2本のヒータライン部502が配置されている。他のセグメントSEについても同様である。
【0050】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、複数のセグメントSEのうち、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のヒータ端子用孔Ht1は、第1の仮想円周VC1と重なっている。上述したように、第1の仮想円周VC1は、吸着面S11の中心点CPを中心とする仮想円周である。そのため、本実施形態の静電チャック100では、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のヒータ端子用孔Ht1の径方向RDにおける位置が、互いに近接していると言える。なお、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のヒータ端子用孔Ht1の中心点P1が、第1の仮想円周VC1と重なっている。
【0051】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるサーミスタ600は、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっている。上述したように、一のセグメントSEの仮想中心線CLは、該一のセグメントSEを周方向CDに2等分する仮想直線である。そのため、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、サーミスタ600が、一のセグメントSEにおける周方向CDに並ぶ他のセグメントSEとの境界から比較的離れた位置に配置されていると言える。なお、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるサーミスタ600の中心点P2が、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっている。
【0052】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、複数のセグメントSEのうち、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のサーミスタ600は、第2の仮想円周VC2と重なっている。上述したように、第2の仮想円周VC2は、吸着面S11の中心点CPを中心とする仮想円周である。そのため、本実施形態の静電チャック100では、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のサーミスタ600の径方向RDにおける位置が、互いに近接していると言える。なお、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のサーミスタ600の中心点P2が、第2の仮想円周VC2と重なっている。
【0053】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSE(Z軸方向視でヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600の両方と重なっているセグメントSE)を径方向RDに沿って順に並ぶ第1の部分R1と第2の部分R2と第3の部分R3とに仮想的に3等分したときに、該一のセグメントSEと重なるヒータ端子用孔Ht1の中心点P1は第1の部分R1に位置し、該一のセグメントSEと重なるサーミスタ600の中心点P2は第3の部分R3に位置する。例えば、
図5に示された9個のセグメントSEのうち、下段中央のセグメントSE(第2のセグメントSE2)に注目すると、第2のセグメントSE2と重なるヒータ端子用孔Ht1の中心点P1は第1の部分R1に位置し、第2のセグメントSE2と重なるサーミスタ600の中心点P2は第3の部分R3に位置している。Z軸方向視でヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600の両方と重なっている他のセグメントSEについても同様である。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、ヒータ端子用孔Ht1とサーミスタ600とが、径方向RDに比較的離れて配置されている。
【0054】
また、本実施形態の静電チャック100では、あるセグメントSE(例えば、第1のセグメントSE1)において、Z軸方向視で、ヒータ電極500は、ヒータ端子用孔Ht1と重なっていない。
【0055】
また、本実施形態の静電チャック100では、あるセグメントSE(例えば、第2のセグメントSE2)において、Z軸方向視で、ヒータ電極500のヒータライン部502におけるヒータ端子用孔Ht1と重なる部分の幅W1は、該ヒータライン部502におけるヒータ端子用孔Ht1と重ならない部分の幅W0より広い。
【0056】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSE(例えば、第1のセグメントSE1)に重なるヒータ端子用孔Ht1と、該一のセグメントと径方向RDに並ぶ他のセグメントSE(例えば、第2のセグメントSE2)に重なるヒータ端子用孔Ht1との間には、冷媒流路21が位置している。なお、一のセグメントと他のセグメントSEとが径方向RDに並ぶとは、該一のセグメントと該他のセグメントSEとが径方向RDに隣り合う状態であってもよいし、該一のセグメントと該他のセグメントSEとの間に1つまたは複数のセグメントSEが介在する状態であってもよい。
【0057】
A-5.静電チャック100の製造方法:
本実施形態の静電チャック100の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、ヒータ電極層50やヒータ用ドライバ51、ヒータ用給電パッド70、サーミスタ用ドライバ61、サーミスタ用給電パッド170、サーミスタ用電極604等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビア53,54,63,64の形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成し、精密な形状を研磨加工で仕上げることにより、板状部材10を作製する。
【0058】
次に、板状部材10に形成されたヒータ用給電パッド70およびサーミスタ用給電パッド170に、それぞれ、ヒータ用給電端子72およびサーミスタ用給電端子172を、例えばろう付けにより接合する。次に、板状部材10のサーミスタ用凹部14内に形成されたサーミスタ用電極604に、サーミスタ600を、例えば半田付けにより接合する。次に、例えばシート状の接合部30を用いて、板状部材10とベース部材20とを接合し、充填剤を充填する。主として以上の工程により、本実施形態の静電チャック100が製造される。
【0059】
A-6.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、板状部材10と、ベース部材20と、接合部30とを備える。板状部材10は、Z軸方向に略直交する略円形の吸着面S11と、吸着面S11とは反対側の下面S2とを有する部材である。板状部材10には、複数のセグメントSEが設定されている。複数のセグメントSEは、板状部材10の少なくとも一部(例えば、内側部IP)を、Z軸方向視で、吸着面S11の中心点CPを中心とする周方向CDに延びる同心円状の複数の分割線DL1によって複数の環状部分に仮想的に分割し、さらに、各環状部分を周方向CDに並ぶ複数の部分に仮想的に分割することにより設定される。複数のセグメントSEのそれぞれには、抵抗発熱体により構成されたヒータライン部502を有するヒータ電極500が配置されている。ベース部材20は、上面S3と、上面S3とは反対側の下面S4とを有する部材であり、上面S3が板状部材10の下面S2側に位置するように配置されている。ベース部材20の内部には、冷媒流路21が形成されている。また、ベース部材20には、上面S3から下面S4まで貫通する複数の貫通孔22が形成されている。接合部30は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置されて板状部材10とベース部材20とを接合する。接合部30には、ベース部材20に形成された複数の貫通孔22のそれぞれと連通してヒータ端子用孔Ht1を構成する複数の貫通孔32が形成されている。各ヒータ端子用孔Ht1内には、ヒータ電極500と電気的に接続されたヒータ用給電端子72が配置されている。
【0060】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるヒータ端子用孔Ht1は、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっている。なお、一のセグメントSEの仮想中心線CLは、吸着面S11の中心点CPを通る径方向RDに延び、かつ、該一のセグメントSEを周方向CDに2等分する仮想直線である。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、ヒータ端子用孔Ht1が、一のセグメントSEにおける、周方向CDに並ぶ他のセグメントSEとの境界から比較的離れた位置に配置されていると言える。
【0061】
ここで、ベース部材20において、ヒータ端子用孔Ht1を構成する貫通孔22が形成された部分には、冷媒流路21を配置することができない。そのため、板状部材10のうち、Z軸方向視でヒータ端子用孔Ht1と重なる部分は、他の部分と比較して、ベース部材20に形成された冷媒流路21への冷媒供給による冷却作用が及びにくく、高温の温度特異点となりやすい。また、板状部材10における一のセグメントSEの境界付近(境界上を含む)の温度は、隣接する他のセグメントSEの温度の影響を受けやすい。
【0062】
しかしながら、上述したように、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、ヒータ端子用孔Ht1が、一のセグメントSEにおける、周方向CDに並ぶ他のセグメントSEとの境界から比較的離れた位置、すなわち、隣接する他のセグメントSEの温度の影響を受けにくい位置に配置されている。そのため、本実施形態の静電チャック100では、一のセグメントSEに配置されたヒータ電極500の発熱量を制御することによって、Z軸方向視で該一のセグメントSEに重なるヒータ端子用孔Ht1の存在に起因する高温の温度特異点の発生を抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、ヒータ端子用孔Ht1の存在に起因する吸着面S11の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S11に保持された対象物の温度分布の制御性)の低下を抑制することができる。なお、板状部材10の吸着面S11の温度分布の制御性が高いとは、吸着面S11全体の温度分布が均一に近いことと、セグメントSE毎に吸着面S11の温度分布が均一に近いこととの少なくとも一方の意味を含む。
【0063】
なお、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるヒータ端子用孔Ht1の中心点P1が、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっているため、該ヒータ端子用孔Ht1を、隣接する他のセグメントSEの温度の影響を非常に受けにくい位置に配置することができ、上記効果をさらに高めることができる。
【0064】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるヒータ端子用孔Ht1は、径方向RDにおいて、該一のセグメントSEに配置されたヒータ電極500のヒータライン部502の一部分と比較して、該一のセグメントSEの境界から離間している。そのため、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEにおける境界とヒータ端子用孔Ht1との間の部分を、該部分に位置するヒータライン部502による発熱によって加熱することができる。これにより、本実施形態の静電チャック100では、一のセグメントSEに配置されたヒータ電極500の発熱量を制御することによって、Z軸方向視で該一のセグメントSEに重なるヒータ端子用孔Ht1の存在に起因する高温の温度特異点の発生を効果的に抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、吸着面S11の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、複数のセグメントSEのうち、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のヒータ端子用孔Ht1は、第1の仮想円周VC1と重なっている。なお、第1の仮想円周VC1は、吸着面S11の中心点CPを中心とする仮想円周である。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のヒータ端子用孔Ht1の径方向RDにおける位置が、互いに近接していると言える。そのため、本実施形態の静電チャック100では、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEにおいて、ヒータ端子用孔Ht1の存在に起因する高温の温度特異点の発生を抑制するためのヒータライン部502の形状設計を共通化することができ、その結果、高温の温度特異点の発生を効果的に抑制するヒータライン部502の良好な形状を実現することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、吸着面S11の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0066】
なお、本実施形態の静電チャック100では、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のヒータ端子用孔Ht1の中心点P1が、第1の仮想円周VC1と重なっているため、各ヒータ端子用孔Ht1の径方向RDにおける位置を互いに極めて近接させることができ、上記効果をさらに高めることができる。
【0067】
また、本実施形態の静電チャック100は、さらに、板状部材10の下面S2に形成された複数のサーミスタ用凹部14のそれぞれに配置されたサーミスタ600を備える。また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるサーミスタ600は、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっている。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、サーミスタ600が、一のセグメントSEにおける、周方向CDに並ぶ他のセグメントSEとの境界から比較的離れた位置、すなわち、隣接する他のセグメントSEの温度の影響を受けにくい位置に配置されていると言える。そのため、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で一のセグメントSEと重なるサーミスタ600による温度検知結果が、一のセグメントSEと周方向CDに並ぶ他のセグメントSEの温度の影響を受けることを抑制することができる。これにより、本実施形態の静電チャック100では、サーミスタ600による温度検知結果に基づき該一のセグメントSEに配置されたヒータ電極500の発熱量を制御することにより、該セグメントSEの温度分布の制御性を効果的に向上させることができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、吸着面S11の温度分布の制御性の低下を効果的に抑制することができる。
【0068】
なお、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるサーミスタ600の中心点P2が、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっているため、該サーミスタ600を、隣接する他のセグメントSEの温度の影響を非常に受けにくい位置に配置することができ、上記効果をさらに高めることができる。
【0069】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、複数のセグメントSEのうち、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のサーミスタ600は、第2の仮想円周VC2と重なっている。なお、第2の仮想円周VC2は、吸着面S11の中心点CPを中心とする仮想円周である。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のサーミスタ600の径方向RDにおける位置が、互いに近接していると言える。そのため、本実施形態の静電チャック100では、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEにおいて、サーミスタ600の位置を考慮したヒータライン部502の形状設計を共通化することができ、その結果、サーミスタ600による温度検知結果に基づくヒータ電極500の制御性を向上させることができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、吸着面S11の温度分布の制御性の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0070】
なお、本実施形態の静電チャック100では、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のサーミスタ600の中心点P2が、第2の仮想円周VC2と重なっているため、各サーミスタ600の径方向RDにおける位置を互いに極めて近接させることができ、上記効果をさらに高めることができる。
【0071】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSE(Z軸方向視でヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600の両方と重なっているセグメントSE)を径方向RDに沿って順に並ぶ第1の部分R1と第2の部分R2と第3の部分R3とに仮想的に3等分したときに、該一のセグメントSEと重なるヒータ端子用孔Ht1の中心点P1は第1の部分R1に位置し、該一のセグメントSEと重なるサーミスタ600の中心点P2は第3の部分R3に位置する。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、ヒータ端子用孔Ht1とサーミスタ600とが、径方向RDに比較的離れて配置されている。そのため、本実施形態の静電チャック100では、サーミスタ600による温度検知の精度がヒータ端子用孔Ht1の存在に起因して低下したり、ヒータ端子用孔Ht1の近くに位置するサーミスタ600を収容するサーミスタ用凹部14の存在に起因してヒータ電極500の発熱量の制御を行っても高温の温度特異点が発生したりすることを抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、吸着面S11の温度分布の制御性をさらに効果的に向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態の静電チャック100では、あるセグメントSEにおいて、Z軸方向視で、ヒータ電極500は、ヒータ端子用孔Ht1と重なっていない。そのため、本実施形態の静電チャック100では、該セグメントSEにおける、Z軸方向視でヒータ端子用孔Ht1と重なる部分の発熱量を抑えることができ、ヒータ端子用孔Ht1の存在に起因する高温の温度特異点の発生を抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、吸着面S11の温度分布の制御性をさらに効果的に向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の静電チャック100では、あるセグメントSEにおいて、Z軸方向視で、ヒータ電極500のヒータライン部502におけるヒータ端子用孔Ht1と重なる部分の幅W1は、該ヒータライン部502におけるヒータ端子用孔Ht1と重ならない部分の幅W0より広い。そのため、本実施形態の静電チャック100では、該セグメントSEにおける、Z軸方向視でヒータ端子用孔Ht1と重なる部分に配置されたヒータ電極500による発熱量を抑えることができ、ヒータ端子用孔Ht1の存在に起因する高温の温度特異点の発生を抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、吸着面S11の温度分布の制御性をさらに効果的に向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で、一のセグメントSEに重なるヒータ端子用孔Ht1と、該一のセグメントと径方向RDに並ぶ他のセグメントSEに重なるヒータ端子用孔Ht1との間には、冷媒流路21が位置している。そのため、本実施形態の静電チャック100では、ベース部材20における2つのヒータ端子用孔Ht1に挟まれた部分を効果的に冷却することができ、ヒータ端子用孔Ht1の存在に起因する高温の温度特異点の発生を効果的に抑制することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、吸着面S11の温度分布の制御性をさらに効果的に向上させることができる。
【0075】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0076】
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、板状部材10が、外周に沿って上側に切り欠きが形成された部分である外周部OPと、外周部OPの内側に位置する内側部IPとから構成されているが、板状部材10に切り欠きが形成されておらず、板状部材10のZ軸方向の厚さが全体にわたって一様であるとしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態におけるヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600の配置は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるヒータ端子用孔Ht1の中心点P1が、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっているが、これに代えて、Z軸方向視で、該ヒータ端子用孔Ht1における中心点P1以外の位置が、該仮想中心線CLと重なっているとしてもよい。また、上記実施形態では、Z軸方向視で、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のヒータ端子用孔Ht1の中心点P1が、第1の仮想円周VC1と重なっているが、これに代えて、該ヒータ端子用孔Ht1の中心点P1以外の位置が、第1の仮想円周VC1と重なっているとしてもよい。また、上記実施形態では、Z軸方向視で、一のセグメントSEと重なるサーミスタ600の中心点P2が、該一のセグメントSEの仮想中心線CLと重なっているが、これに代えて、Z軸方向視で、該サーミスタ600における中心点P2以外の位置が、該仮想中心線CLと重なっているとしてもよい。また、上記実施形態では、Z軸方向視で、周方向CDに並ぶ2つ(またはそれ以上)のセグメントSEのそれぞれに重なる2つ(またはそれ以上)のサーミスタ600の中心点P2が、第2の仮想円周VC2と重なっているが、これに代えて、該サーミスタ600の中心点P2以外の位置が、第2の仮想円周VC2と重なっているとしてもよい。また、上記実施形態におけるヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600の配置は、必ずしも静電チャック100が備えるヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600のすべてについて該当する必要はなく、静電チャック100が備えるヒータ端子用孔Ht1およびサーミスタ600の少なくとも一部について該当すればよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ヒータ用ドライバ51のZ軸方向における位置に関し、ヒータ用ドライバ51の全体が同一位置にある(すなわち、ヒータ用ドライバ51が単層構成である)としているが、ヒータ用ドライバ51の一部が異なる位置にある(すなわち、ヒータ用ドライバ51が複数層構成である)としてもよい。また、上記実施形態では、各ヒータ電極500はヒータ用ドライバ51を介してヒータ用給電端子72に電気的に接続されているが、各ヒータ電極500がヒータ用ドライバ51を介さずにヒータ用給電端子72に電気的に接続されるとしてもよい。これらの点は、サーミスタ用ドライバ61についても同様である。
【0079】
また、上記実施形態では、温度検知素子としてサーミスタ600が用いられているが、サーミスタ600の代わりに他の温度検知素子が用いられてもよい。ただし、温度検知素子としてサーミスタ600のように、ベース部材20における温度検知素子の直下の位置に貫通孔を形成する必要がないものを用いれば、該位置に冷媒流路21を配置することができるため、好ましい。
【0080】
また、上記実施形態におけるヒータ用給電端子72やヒータ用コネクタ90、ヒータ用配線80の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。同様に、上記実施形態におけるサーミスタ用給電端子172やサーミスタ用コネクタ190、サーミスタ用配線180の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、必ずしも静電チャック100が、サーミスタ600およびサーミスタ600への給電のための構成を備える必要はない。
【0081】
また、上記実施形態におけるセグメントSEの設定態様(セグメントSEの個数や、個々のセグメントSEの形状等)は、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、静電チャック100の内側部IPの全体が複数のセグメントSEに仮想的に分割されているが、静電チャック100の内側部IPの一部分のみが複数のセグメントSEに仮想的に分割されていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態において、各ビアは、単数のビアにより構成されてもよいし、複数のビアのグループにより構成されてもよい。また、上記実施形態において、各ビアは、ビア部分のみからなる単層構成であってもよいし、複数層構成(例えば、ビア部分とパッド部分とビア部分とが積層された構成)であってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、板状部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、板状部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。
【0084】
また、上記実施形態の静電チャック100の各部材(板状部材10、ベース部材20、接合部30、ヒータ電極500、サーミスタ600等)の形成材料は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、静電チャック100が、セラミックスにより形成された板状部材10を備えているが、静電チャック100が、セラミックス以外の材料(例えば、樹脂材料)により形成された同様の板状部材を備えるとしてもよい。
【0085】
また、本発明は、板状部材10とベース部材20とを備え、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、板状部材と、ベース部材と、板状部材とベース部材とを接合する接合部とを備え、板状部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、CVDヒータ等のヒータ装置や真空チャック等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
10:板状部材 12:ヒータ端子用凹部 13:サーミスタ端子用凹部 14:サーミスタ用凹部 20:ベース部材 21:冷媒流路 22:貫通孔 23:貫通孔 30:接合部 32:貫通孔 33:貫通孔 40:チャック電極 50:ヒータ電極層 51:ヒータ用ドライバ 53,54,63,64:ビア 61:サーミスタ用ドライバ 70:ヒータ用給電パッド 72:ヒータ用給電端子 80:ヒータ用配線 90:ヒータ用コネクタ 100:静電チャック 170:サーミスタ用給電パッド 172:サーミスタ用給電端子 180:サーミスタ用配線 190:サーミスタ用コネクタ 500:ヒータ電極 502:ヒータライン部 504:ヒータパッド部 510:導電ライン部 600:サーミスタ 604:サーミスタ用電極 610:導電ライン部 CD:周方向 CL:仮想中心線 CP:中心点 DL1:第1の分割線 DL2:第2の分割線 Ht1:ヒータ端子用孔 Ht2:サーミスタ端子用孔 IP:内側部 OP:外周部 P1:中心点 P2:中心点 R1:第1の部分 R2:第2の部分 R3:第3の部分 RD:径方向 S11:吸着面 S12:外周上面 S1:上面 S2:下面 S3:上面 S4:下面 SE:セグメント VC1:第1の仮想円周 VC2:第2の仮想円周 W:ウェハ