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特許7278072静電チャックおよび静電チャックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】静電チャックおよび静電チャックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230512BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230512BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230512BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/31 F
H02N13/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018243970
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020107689
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 翔太
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-185552(JP,A)
【文献】特開2013-247342(JP,A)
【文献】特開2017-143182(JP,A)
【文献】特開2009-267256(JP,A)
【文献】特開平7-161803(JP,A)
【文献】特開平10-50813(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0109263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/31
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状部材と、
第3の表面を有し、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置されたベース部材であって、前記第1の方向に貫通し、かつ、前記第1の方向視において、前記板状部材の前記第1の表面に重なる位置に配置された第1の貫通孔と、第2の貫通孔と、冷却機構とが形成されたベース部材と、
前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合部と、
を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する静電チャックにおいて、
前記接合部は、
前記板状部材の前記第2の表面と、前記ベース部材の前記第3の表面と、に接合された第1の部分と、
前記板状部材の前記第2の表面と、前記第1の貫通孔を画定する前記ベース部材の内面と、に接合された第2の部分と、
を備え、
前記板状部材の前記第2の表面と、前記第2の貫通孔を画定する前記ベース部材の内面と、は接合されておらず
前記第1の表面における最高温度部分と最低温度部分との温度差が2℃以下である、
ことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
請求項1に記載の静電チャックにおいて、
前記第1の部分を形成する材料と、前記第2の部分を形成する材料とは、同じである、
ことを特徴とする静電チャック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の静電チャックにおいて、
前記板状部材の前記第1の表面は、略円形であり、
前記第1の方向視において、前記板状部材の前記第1の表面の中心と前記ベース部材に形成された前記第1の貫通孔の中心との距離と、前記板状部材の前記第1の表面の中心と前記第2の貫通孔の中心との距離とは、前記第1の表面における半径の2分の1以上の長さである、
ことを特徴とする静電チャック。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電チャックにおいて、
前記接合部には、接合部貫通孔が形成されており、
前記接合部貫通孔の直径は、前記接合部貫通孔に連通する前記第2の貫通孔の直径と比較して大きい、
ことを特徴とする静電チャック。
【請求項5】
第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状部材と、第3の表面を有し、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、かつ、冷却機構を有するベース部材と、前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合部と、を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する静電チャックの製造方法において、
前記ベース部材に対して、前記第1の方向に貫通し、かつ、前記第1の方向視において、前記板状部材の前記第1の表面に重なる位置に第1の貫通孔と第2の貫通孔とが形成された前記ベース部材を準備する、第1の工程と、
前記接合部における、前記板状部材と前記ベース部材とを接合する前の状態である第1の接合部に対して、前記第1の方向に貫通し、かつ、前記ベース部材に形成された前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との内の少なくとも前記第2の貫通孔に連通する接合部貫通孔が形成された前記第1の接合部を準備する、第2の工程と、
前記板状部材と前記ベース部材との間に前記第1の接合部を配置し、前記板状部材と前記ベース部材とが前記接合部によって接合された積層体を作製する、第3の工程と、
前記積層体を構成する前記板状部材における前記第1の表面の温度分布を測定する、第4の工程と、
前記第4の工程において、前記板状部材における前記第1の表面の温度分布の測定の結果、前記第1の表面の温度分布に高温領域の存在が示されたとき、前記第1の方向視において、前記高温領域に重なる領域に位置する前記第1の貫通孔に対して、充填部材を充填することにより、前記板状部材の前記第2の表面と、前記第1の貫通孔を画定する前記ベース部材の内面とを、連結する、第5の工程と、前記第4の工程において、前記板状部材における前記第1の表面の温度分布の測定の結果、前記第1の表面の温度分布に低温領域の存在が示されたとき、前記第1の方向視において、前記低温領域に重なる領域に位置する前記第2の貫通孔に連通する前記接合部貫通孔に対して、前記接合部貫通孔の直径が、前記接合部貫通孔に連通する前記第2の貫通孔の直径と比較して大きくなるよう、前記接合部の一部を除去する、第6の工程と、の少なくとも一方、
を備える、
ことを特徴とする静電チャックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体を製造する際にウェハを保持するために、静電チャックが用いられる。静電チャックは、例えばセラミックス製の板状部材と、例えば金属製のベース部材と、板状部材とベース部材とを接合する接合部と、板状部材の内部に設けられたチャック電極とを備えており、チャック電極に電圧が印加されることにより発生する静電引力を利用して、板状部材の第1の表面(吸着面)にウェハを吸着して保持する。
【0003】
静電チャックに保持されたウェハの温度分布が不均一になると、ウェハに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため、静電チャックにはウェハの温度分布をできるだけ均一にする性能が求められる。そのため、ウェハにおける温度バラツキを低減するため、板状部材と、ベース部材と、接合部と、温度調整のための複数の調整ロッドとを備える保持装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該板状部材には、厚さ方向に貫通する複数の第1の貫通孔が形成されている。また、上記接合部には、上記複数の第1の貫通孔のそれぞれと連通する複数の第2の貫通孔が形成されている。このような構成において、上記複数の調整ロッドは、接合部の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料により形成されていると共に、上記第1の貫通孔に挿入され、その先端を上記第2の貫通孔内に配置可能に支持されている。この保持装置において、板状部材の吸着面の温度を測定しながら、ベース部材の下面から調整ロッドの先端の位置を調整することにより、当該調整ロッド付近の温度を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-185552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成では、静電チャックが備える調整ロッドが接合部と異なる材料で形成されているため、当該調整ロッドの先端が接合部と接する場合において、接合部の面内における均一な熱伝導性を低下させるおそれがある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される静電チャックは、第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状部材と、第3の表面を有し、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置されたベース部材であって、前記第1の方向に貫通し、かつ、前記第1の方向視において、前記板状部材の前記第1の表面に重なる位置に配置された第1の貫通孔と、第2の貫通孔と、冷却機構とが形成されたベース部材と、前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合部と、を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する静電チャックにおいて、前記接合部は、前記板状部材の前記第2の表面と、前記ベース部材の前記第3の表面と、に接合された第1の部分と、前記板状部材の前記第2の表面と、前記第1の貫通孔を画定する前記ベース部材の内面と、に接合された第2の部分と、を備え、前記板状部材の前記第2の表面と、前記第2の貫通孔を画定する前記ベース部材の内面と、は接合されていない。
【0009】
このように、本静電チャックでは、第1の方向視において、板状部材の第1の表面に重なる位置に第1の貫通孔と、第2の貫通孔とが形成されている。また、第1の貫通孔については、その内面が第2の部分を介して板状部材の第2の表面と接合されている。一方、第2の貫通孔については、その内面は板状部材の第2の表面と接合されていない。すなわち、本静電チャックでは、第2の部分を備えていない第2の貫通孔の周辺と比較して、第2の部分を備えた第1の貫通孔の周辺において、板状部材とベース部材との間の伝熱が良好である。
【0010】
静電チャックの板状部材における吸着面には、静電チャック製造時のバラツキ等に起因して、高温の温度特異点が発生することがある。本静電チャックでは、第1の貫通孔の周辺において、板状部材とベース部材との間の伝熱(熱引き)が良好となることにより、ベース部材に形成された冷却機構による冷却効率を向上させることができる。すなわち、本静電チャックでは、上記構成が採用されているため、第1の表面において、第1の方向視における第1の貫通孔に重なる領域とその付近の温度を降温調整することができる。従って、本静電チャックによれば、板状部材における第1の表面の温度分布が制御された(例えば、温度分布の均一性を向上させた)静電チャックを提供することができ、ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性を向上させることができる。
【0011】
(2)上記静電チャックにおいて、前記第1の部分を形成する材料と、前記第2の部分を形成する材料とは、同じである構成としてもよい。このため、本静電チャックが歪みや圧縮等の応力を受けたときに、第1の部分と第2の部分とが同様に変形することにより、当該変形に伴う応力を効果的に緩和することができる。また、本静電チャックによれば、第1の部分と第2の部分とが同じ材料により形成されていることにより、両者の親和性が良好であり、第2の部分が第1の部分から剥離することを抑制することができる。
【0012】
(3)上記静電チャックにおいて、前記板状部材の前記第1の表面は、略円形であり、前記第1の方向視において、前記板状部材の前記第1の表面の中心と前記ベース部材に形成された前記第1の貫通孔の中心との距離と、前記板状部材の前記第1の表面の中心と前記第2の貫通孔の中心との距離とは、前記第1の表面における半径の2分の1以上の長さである構成としてもよい。換言すれば、本静電チャックでは、第1の方向視において、上記第1の貫通孔および第2の貫通孔は、板状部材の第1の表面の内の外周付近に位置している。板状部材の吸着面の内の外周付近は、静電チャック製造時のバラツキ等に起因した、温度特異点が発生しやすい部分である。本静電チャックでは、上記構成が採用されているため、第1の方向視において、上記温度特異点が発生しやすい部分である第1の表面の外周付近における、第1の貫通孔および第2の貫通孔に重なる領域とその付近の温度を調整することができる。従って、本静電チャックによれば、板状部材における第1の表面の外周付近の温度分布が制御された(例えば、温度分布の均一性を向上させた)静電チャックを提供することができ、ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性を向上させることができる。
【0013】
(4)上記静電チャックにおいて、前記接合部には、接合部貫通孔が形成されており、前記接合部貫通孔の直径は、前記接合部貫通孔に連通する前記第2の貫通孔の直径と比較して大きい構成としてもよい。換言すれば、本静電チャックにおいて、板状部材の第2の表面における接合部貫通孔への露出面の面積は、当該接合部貫通孔の直径が当該接合部貫通孔に連通する第2の貫通孔と同径である構成における接合部貫通孔への露出面の面積と比較して大きい。このため、上記接合部貫通孔の周辺では、上記第2の貫通孔と同径である接合部貫通孔の周辺と比較して、板状部材とベース部材との間の伝熱が抑制される。
【0014】
静電チャックの板状部材における吸着面には、静電チャック製造時のバラツキ等に起因して、低温の温度特異点が発生することがある。本静電チャックでは、第2の貫通孔の周辺において、板状部材とベース部材との間の伝熱(熱引き)が抑制されることにより、ベース部材に形成された冷却機構による冷却効率を抑制することができる。すなわち、本静電チャックでは、上記構成が採用されているため、第1の表面において、第1の方向視における第2の貫通孔に重なる領域とその付近の温度を昇温調整することができる。従って、本静電チャックによれば、板状部材における第1の表面の温度分布がより効果的に制御された(例えば、温度分布の均一性を向上させた)静電チャックを提供することができ、ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性をより効果的に向上させることができる。
【0015】
(5)本明細書に開示される静電チャックの製造方法は、第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有する板状部材と、第3の表面を有し、前記第3の表面が前記板状部材の前記第2の表面側に位置するように配置され、かつ、冷却機構を有するベース部材と、前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合部と、を備え、前記板状部材の前記第1の表面上に対象物を保持する静電チャックの製造方法において、前記ベース部材に対して、前記第1の方向に貫通し、かつ、前記第1の方向視において、前記板状部材の前記第1の表面に重なる位置に第1の貫通孔と第2の貫通孔とが形成された前記ベース部材を準備する、第1の工程と、前記接合部における、前記板状部材と前記ベース部材とを接合する前の状態である第1の接合部に対して、前記第1の方向に貫通し、かつ、前記ベース部材に形成された前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との内の少なくとも前記第2の貫通孔に連通する接合部貫通孔が形成された前記第1の接合部を準備する、第2の工程と、前記板状部材と前記ベース部材との間に前記第1の接合部を配置し、前記板状部材と前記ベース部材とが前記接合部によって接合された積層体を作製する、第3の工程と、前記積層体を構成する前記板状部材における前記第1の表面の温度分布を測定する、第4の工程と、前記第4の工程において、前記板状部材における前記第1の表面の温度分布の測定の結果、前記第1の表面の温度分布に高温領域の存在が示されたとき、前記第1の方向視において、前記高温領域に重なる領域に位置する前記第1の貫通孔に対して、充填部材を充填することにより、前記板状部材の前記第2の表面と、前記第1の貫通孔を画定する前記ベース部材の内面とを、連結する、第5の工程と、前記第4の工程において、前記板状部材における前記第1の表面の温度分布の測定の結果、前記第1の表面の温度分布に低温領域の存在が示されたとき、前記第1の方向視において、前記低温領域に重なる領域に位置する前記第2の貫通孔に連通する前記接合部貫通孔に対して、前記接合部貫通孔の直径が、前記接合部貫通孔に連通する前記第2の貫通孔の直径と比較して大きくなるよう、前記接合部の一部を除去する、第6の工程と、の少なくとも一方、を備える。
【0016】
このように、本静電チャックの製造方法では、予めベース部材に対して第1の貫通孔および第2の貫通孔を形成する。次いで、第1の貫通孔および第2の貫通孔が形成されたベース部材と、板状部材と、接合部とから構成される積層体を作製し、作製された積層体における板状部材の第1の表面の温度分布を測定する。当該測定の結果、第1の表面に温度分布の高温領域の存在が示されたとき、第1の方向視において、高温領域に重なる領域に位置する第1の貫通孔に対して、上記第5の工程を実行する。また、上記測定の結果、第1の表面に温度分布の低温領域の存在が示されたとき、第1の方向視において、低温領域に重なる領域に位置する第2の貫通孔に連通する接合部貫通孔に対して、上記第6の工程を実行する。
【0017】
第5の工程では、第1の貫通孔に第2の部分を充填することにより、板状部材の第2の表面と、第1の貫通孔を画定するベース部材の内面とを連結する。これにより、板状部材からベース部材への熱引きを向上させることができ、ベース部材に形成された冷却機構による冷却効率を向上させることができる。すなわち、第1の表面の内の高温領域の温度を降温させることができる。また、第6の工程では、第2の貫通孔に連通する接合部貫通孔に対して、板状部材の第2の表面の当該接合部貫通孔への露出面がより大きくなるよう、接合部(第1の部分)の一部を除去して接合部貫通孔を形成する。これにより、板状部材からベース部材への熱引きを抑制させることができ、ベース部材に形成された冷却機構による冷却効率を抑制させることができる。すなわち、第1の表面の内の低温領域の温度を昇温させることができる。従って、本静電チャックの製造方法によれば、積層体の板状部材における第1の表面の温度分布の測定結果に基づいて、板状部材における第1の表面の温度分布を制御する(例えば、温度分布の均一性を向上させる)ことができ、ひいては、第1の表面に保持された対象物の温度分布の制御性を向上させることができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、真空チャック、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3図2のIII-IIIの位置における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図4図2のIV-IVの位置における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図5】本実施形態における静電チャック100の一部分(図2および図3のX1部)のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図6】本実施形態における静電チャック100の一部分(図2および図3のX2部)のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図7】本実施形態における静電チャック100の製造方法を示すフローチャートである。
図8】本実施形態における静電チャック100の製造方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.本実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。図3は、本実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図であり、図4は、本実施形態における静電チャック100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。図3には、図2のIII-IIIの位置における静電チャック100のXY断面構成が示されており、図4には、図2のIV-IVの位置における静電チャック100のXY断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0021】
静電チャック100は、対象物(例えば半導体ウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハW(以下、「ウェハW」という)を固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された板状部材10およびベース部材20を備える。板状部材10とベース部材20とは、板状部材10の下面S2(図2参照)とベース部材20の上面S3とが、後述する接合部30を挟んで上記配列方向に対向するように配置される。すなわち、ベース部材20は、ベース部材20の上面S3が板状部材10の下面S2側に位置するように配置される。
【0022】
板状部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する部材であり、例えばセラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。板状部材10の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、板状部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。板状部材10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、板状部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」ともいう。
【0023】
図2に示すように、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示せず)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部材10の吸着面S1に吸着固定される。
【0024】
板状部材10の内部には、また、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が配置されている。ヒータ電極50に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱することによって板状部材10が温められ、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
【0025】
ベース部材20は、例えば板状部材10と同径の、または、板状部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は、例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第3の表面に相当する。
【0026】
ベース部材20は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接合部30によって、板状部材10に接合されている。接合部30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接合部30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。図3に示すように、接合部30は、後述する面間接合部分31と温度調整部分33とを備えている。また、接合部30には、後述する接合部貫通孔130が形成されている。接合部30の構成については、後に詳述する。なお、面間接合部分31は、特許請求の範囲における第1の部分に相当し、温度調整部分33は、特許請求の範囲における第2の部分に相当する。
【0027】
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により板状部材10が冷却され、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。冷媒流路21は、特許請求の範囲における冷却機構に相当する。
【0028】
また、図2に示すように、静電チャック100は、板状部材10とウェハWとの間の伝熱性を高めてウェハWの温度分布の制御性をさらに高めるため、板状部材10の吸着面S1とウェハWの表面との間に存在する空間に不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)を供給する構成を備えている。すなわち、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4から接合部30の上面にわたって上下方向に延びる第1のガス流路孔131と、第1のガス流路孔131に連通すると共に板状部材10の吸着面S1に開口する第2のガス流路孔132とが形成されている。第1のガス流路孔131は、ベース部材20をZ軸方向に貫通する孔25と、接合部30をZ軸方向に貫通する孔35とが互いに連通した一体の孔である。また、第2のガス流路孔132の下端部は、径が拡大された拡径部134となっており、拡径部134内には、通気性を有する充填部材(通気性プラグ)160が充填されている。また、板状部材10の内部には、第2のガス流路孔132と連通すると共に面方向に環状に延びる横流路133が形成されている。ヘリウムガス源(図示しない)から供給されたヘリウムガスが、第1のガス流路孔131内に流入すると、流入したヘリウムガスは、第1のガス流路孔131から拡径部134内に充填された通気性を有する充填部材160の内部を通過して板状部材10の内部の第2のガス流路孔132内に流入し、横流路133を介して面方向に流れつつ、吸着面S1に形成されたガス噴出孔から噴出する。このようにして、吸着面S1とウェハWの表面との間に存在する空間に、ヘリウムガスが供給される。
【0029】
また、図2および図4に示すように、ベース部材20には、板状部材10における吸着面S1の温度調整のために用いられるベース部材貫通孔120が形成されている。ベース部材貫通孔120は、ベース部材20の下面S4から上面S3にわたって上下方向に延びる貫通孔である。Z軸方向視において、ベース部材貫通孔120の直径Wba(図6参照)は、例えば、1mm以上、5mm以下である。また、図4に示すように、ベース部材貫通孔120は、Z軸方向視において、板状部材10の吸着面S1に重なる位置に形成されている。より詳細には、ベース部材貫通孔120は、吸着面S1の外周付近において、周方向に略等間隔に配置されている。本実施形態において、ベース部材貫通孔120は、Z軸方向視において、吸着面S1の中心POと、ベース部材貫通孔120の中心との距離Lrが、吸着面S1における半径Rの2分の1以上の長さとなる位置に配置されている。また、吸着面S1の半径Rと距離Lrとの差(すなわち、「吸着面S1の半径R-距離Lr」)は、例えば、75mm以下であることが好ましい。
【0030】
本実施形態において、ベース部材20には、8つのベース部材貫通孔120が形成されている。図2および図4に示すように、ベース部材貫通孔120の内の3つの高温時調整用ベース部材貫通孔127における孔内の一部には接合部30(後述の温度調整部分33)が充填されている。一方、高温時調整用ベース部材貫通孔127以外のベース部材貫通孔120(通常ベース部材貫通孔125および低温時調整用ベース部材貫通孔129)における孔内には接合部30(温度調整部分33)は充填されていない。また、図2図3および図4に示すように、通常ベース部材貫通孔125および低温時調整用ベース部材貫通孔129は、それぞれ接合部30における接合部貫通孔130(後述の通常接合部貫通孔135および拡径接合部貫通孔139)に連通している。高温時調整用ベース部材貫通孔127は、特許請求の範囲における第1の貫通孔に相当し、低温時調整用ベース部材貫通孔129は、特許請求の範囲における第2の貫通孔に相当する。
【0031】
ベース部材貫通孔120は、ベース部材20に形成される上記ヘリウムガスを供給するための第1のガス流路孔131を構成する孔25の他、リフトピン挿通孔(図示せず)、端子用貫通孔(図示せず)、温度センサ用孔(図示せず)とは別に形成された孔である。なお、リフトピン挿通孔は、板状部材10の吸着面S1上に保持されたウェハWを押し上げて吸着面S1から離間させるためのリフトピン(図示せず)を挿通するための孔である。また、端子用孔は、板状部材10に配置されたチャック電極40やヒータ電極50に給電するための給電端子を収容するための孔である。また、温度センサ用孔は、板状部材10の内部温度を検知するため温度センサ(例えば、熱電対等)を収容するための孔である。
【0032】
A-2.接合部30の詳細構成:
A-2-1.接合部30全体の詳細構成:
次に、接合部30の詳細構成について説明する。図5は、本実施形態の静電チャック100の接合部30における温度調整部分33の周辺部(図2および図3におけるX1部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図であり、図6は、本実施形態の静電チャック100の接合部30における拡径接合部貫通孔139の周辺部(図2および図3におけるX2部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。
【0033】
上述の通り、接合部30は、面間接合部分31と温度調整部分33とを備えている。図3および図5に示すように、面間接合部分31は、板状部材10の下面S2と、ベース部材20の上面S3とに接合された部分であり、接合部30の大部分を占める部分である。温度調整部分33は、板状部材10の下面S2と、ベース部材貫通孔120の内の高温時調整用ベース部材貫通孔127を画定するベース部材20の内面S7とに接合された部分である。本実施形態において、温度調整部分33は、接合部30の内の、Z軸方向視において、ベース部材20に形成された高温時調整用ベース部材貫通孔127に重なる部分であり、面間接合部分31は、接合部30の内のZ軸方向視において、ベース部材20に重なる部分である。換言すれば、面間接合部分31は、接合部30の内の温度調整部分33以外の部分である。温度調整部分33の周辺部分(図2および図3に示すX1部分)の詳細構成については、後に詳述する。
【0034】
上述の通り、接合部30には、複数の接合部貫通孔130が形成されている。図3に示すように、本実施形態において、接合部30の内の面間接合部分31には、5つの接合部貫通孔130が形成されている。また、5つの接合部貫通孔130は、2つの通常接合部貫通孔135と、3つの拡径接合部貫通孔139とから構成されている。通常接合部貫通孔135は、その直径が、当該通常接合部貫通孔135に連通するベース部材20に形成されたベース部材貫通孔120(通常ベース部材貫通孔125)のZ軸方向視における直径と同等である貫通孔である。拡径接合部貫通孔139は、その直径が、当該拡径接合部貫通孔139に連通するベース部材貫通孔120(低温時調整用ベース部材貫通孔129)のZ軸方向視における直径より大きい貫通孔である。拡径接合部貫通孔139は、特許請求の範囲における接合部貫通孔に相当する。
【0035】
図2図3および図6に示すように、通常接合部貫通孔135および拡径接合部貫通孔139は、接合部30を厚さ方向(上下方向)に貫通すると共に、Z軸方向視において、それぞれ、板状部材10に形成された通常ベース部材貫通孔125および低温時調整用ベース部材貫通孔129に重なるように形成されている。すなわち、通常接合部貫通孔135および拡径接合部貫通孔139は、それぞれ、通常ベース部材貫通孔125および低温時調整用ベース部材貫通孔129に連通している。
【0036】
A-2-2.接合部30における温度調整部分33の周辺部の詳細構成:
次に、図5を用いて、接合部30における温度調整部分33の周辺部(図2および図3におけるX1部)の詳細構成について説明する。上述の通り、高温時調整用ベース部材貫通孔127には、温度調整部分33が充填されている。温度調整部分33は、上述の通り、板状部材10の下面S2と、高温時調整用ベース部材貫通孔127を画定するベース部材20の内面S7とに接合された部分である。このように、温度調整部分33が、板状部材10の下面S2とベース部材20に形成された高温時調整用ベース部材貫通孔127の内面S7との両方に接触していることにより、温度調整部分33を介した板状部材10からベース部材20への熱引きが可能となる。
【0037】
図5に示すように、温度調整部分33のZ軸方向における長さLfは、面間接合部分31の厚さより長い。また、図2に示すように、本実施形態において、ベース部材20内の冷媒流路21を流れる冷媒による、温度調整部分33への温度の影響を低減する観点から、温度調整部分33の下端面は、冷媒流路21の上端面より上側に位置している。Z軸方向における温度調整部分33の長さLfは、例えば、0.5mm以上、25mm以下であることが好ましい。このように、温度調整部分33の周辺部では、温度調整部分33と板状部材10における下面S2との接触面積と、温度調整部分33とベース部材20における内面S7との接触面積との両方を十分に確保していることにより、板状部材10からベース部材20への熱引きを確保することができる。また、本実施形態において、温度調整部分33を形成する材料は、面間接合部分31を形成する材料と同じであり、シリコーン系樹脂で形成されている。
【0038】
A-2-3.接合部30における拡径接合部貫通孔139の周辺部の詳細構成:
次に、図6を用いて、接合部30における拡径接合部貫通孔139の周辺部(図2および図3におけるX2部)の詳細構成について説明する。上述の通り、Z軸方向視において、拡径接合部貫通孔139の直径Wboは、当該拡径接合部貫通孔139に連通する低温時調整用ベース部材貫通孔129の直径Wbaと比較して大きい。すなわち、本実施形態において、板状部材10の下面S2における拡径接合部貫通孔139への露出面の面積は、拡径接合部貫通孔139以外の接合部貫通孔130への露出面の面積と比較して大きい。Z軸方向視において、拡径接合部貫通孔139の直径Wboは、1mm以上、10mm以下であることが好ましい。また、拡径接合部貫通孔139の直径Wboと低温時調整用ベース部材貫通孔129の直径Wbaとの差(すなわち、Wa×2)は、0mm以上、5mm以下であることが好ましい。なお、上述の通り、拡径接合部貫通孔139には温度調整部分33は充填されていない。すなわち、板状部材10の下面S2と、低温時調整用ベース部材貫通孔129の内面S9とは、温度調整部分33によって接合されていない。このように、拡径接合部貫通孔139の周辺部では、温度調整部分33を備えておらず、また、板状部材10の下面S2における拡径接合部貫通孔139への露出面の面積が大きいことにより、板状部材10からベース部材20への熱引きを抑制することができる。
【0039】
本実施形態の静電チャック100では、接合部30を上記構成とすることにより、温度調整部分33の周辺部においては、板状部材10からベース部材20への熱引きを向上させ、拡径接合部貫通孔139の周辺部において、当該熱引きを抑制することができる。これにより、板状部材10の吸着面S1に高温または低温の温度特異点が発生することを抑制し、ひいては、吸着面S1における温度分布の均一性を向上させた静電チャック100を得ることができる。ここで、吸着面S1の温度分布が均一であるとは、吸着面S1における最高温度部分と最低温度部分との温度差Δtが例えば2℃以下であることを意味する。
【0040】
A-3.静電チャック100の製造方法:
図7は、本実施形態における静電チャック100の製造方法を示すフローチャートである。また、図8は、本実施形態における静電チャック100の製造方法を概略的に示す説明図である。
【0041】
(板状部材10の準備工程)
まず、板状部材10を準備する(S100)。板状部材10は、公知の方法によって作製することができる。板状部材10は、例えば、以下の方法で作製される。すなわち、複数のセラミックスグリーンシート(例えばアルミナグリーンシート)を準備し、各セラミックスグリーンシートに、チャック電極40やヒータ電極50等を構成するためのメタライズインクの印刷等を行い、その後、複数のセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、所定の円板形状にカットした上で焼成し、最後に研磨加工等を行うことにより、板状部材10が作製される。
【0042】
(ベース部材20の準備工程)
次に、ベース部材20を準備する(S110)。ベース部材20は、公知の方法によって作製された円形平板の板状部材に対して、冷媒流路21およびZ軸方向に貫通するベース部材貫通孔120を形成することにより作製される。図4に示すように、本実施形態では、ベース部材20に対して、Z軸方向視において、板状部材10の吸着面S1に重なる位置に、8つのベース部材貫通孔120を形成している。また、上述の通り、8つのベース部材貫通孔120は、吸着面S1の外周付近において、周方向に略等間隔に形成される。ベース部材貫通孔120は、例えば、ドリル形状のツールが取り付けられたマシニングセンタを用いることによって形成することができる。なお、冷媒流路21は、公知の方法により形成することができる。ベース部材20の準備工程は、特許請求の範囲における第1の工程に相当する。
【0043】
(第1の接合部30aの準備工程)
次に、第1の接合部30aを準備する(S120)。第1の接合部30aは、静電チャック100を構成する接合部30における、板状部材10とベース部材20とを接合する前の状態である。第1の接合部30aは、公知の方法によって作製された接着剤シートに対して、例えば打ち抜き加工を行うことにより、所望の形状(例えば、略円形)とし、さらに、Z軸方向に貫通する接合部貫通孔130を形成することにより作製される。本実施形態では、第1の接合部30aに対して、ベース部材20に形成されたベース部材貫通孔120と略同径の8つの接合部貫通孔130を、それぞれベース部材貫通孔120に連通するよう形成する。すなわち、第1の接合部30aに形成された接合部貫通孔130は、Z軸方向視で、吸着面S1の外周付近において、周方向に略等間隔となるよう形成される。第1の接合部30aの準備工程は、特許請求の範囲における第2の工程に相当する。
【0044】
(積層体100aの作製工程)
次に、板状部材10とベース部材20とが接合部30によって接合された積層体100aを作製する(S131,S133)。まず、上記準備された、板状部材10の下面S2と、ベース部材20の上面S3との間に、第1の接合部30aを配置して積層体100aの前駆体を作製する(S131)。第1の接合部30aは、Z軸方向において、接合部貫通孔130が、ベース部材20に形成されたベース部材貫通孔120に重なるように配置される。続いて、作製された積層体100aの前駆体に対して、第1の接合部30aを構成する接着剤を硬化させる硬化処理を行い、積層体100aを作製する(S133)。以上の工程により、図8の(A)欄に示すように、ベース部材20に形成されたベース部材貫通孔120と接合部30に形成された接合部貫通孔130とが連通した積層体100aを作製することができる。積層体100aの作製工程は、特許請求の範囲における第3の工程に相当する。
【0045】
(吸着面S1の温度分布の測定工程)
次に、上記工程で作製された積層体100aの板状部材10における吸着面S1の温度分布を測定する(S141)。なお、吸着面S1の温度分布は、吸着面S1に略平行な面方向(上下方向に略垂直な方向)における温度分布をいう。このとき、使用時の状態における板状部材10の吸着面S1の温度分布を測定することが好ましい。例えば、板状部材10に備えられたチャック電極40およびヒータ電極50に電力を供給し、かつ、ベース部材20に形成された冷媒流路21に冷媒を供給した状態で、吸着面S1の温度分布を測定する。吸着面S1の内の複数の箇所(測温箇所)において測温することにより、各測温箇所における測定温度を取得する。温度分布の測定は、熱電対付きウェハや、赤外線サーモグラフィや、赤外線放射温度計等の温度測定機器を用いて行うことができる。なお、吸着面S1の温度分布の測定工程は、特許請求の範囲における第4の工程に相当する。
【0046】
(高温時調整工程)
上記ステップS141で得られた吸着面S1の温度分布の測定の結果、吸着面S1の温度分布に高温領域の存在が示されたとき(S143:高温領域あり)、ステップS151へ進む。図8の(B)欄に示すように、ステップS151では、ベース部材20に形成されたベース部材貫通孔120の内、Z軸方向視において、高温領域に重なる領域に位置する全てのベース部材貫通孔120(高温時調整用ベース部材貫通孔127)に対して、温度調整部分33を充填する。本実施形態においては、高温時調整用ベース部材貫通孔127に連通する接合部貫通孔130に対しても、温度調整部分33を充填している。温度調整部分33の充填は、例えば、注入器等を用いて、接合部30と同じ材料(接着剤)をベース部材貫通孔120および接合部貫通孔130に注入することにより実行することができる。これにより、板状部材10の下面S2と、高温時調整用ベース部材貫通孔127を画定するベース部材20の内面S7とが、温度調整部分33によって連結される。換言すれば、温度調整部分33は、板状部材10の下面S2と、高温時調整用ベース部材貫通孔127を画定するベース部材20の内面S7との両方の面に接するように充填される。温度調整部分33は、Z軸方向における長さLf(図5参照)が、面間接合部分31の厚さより長く、また、温度調整部分33の下端面が、冷媒流路21の上端面より上側に位置する(図2参照)よう充填されることが好ましい。本実施形態において、ステップS151の後、温度調整部分33を硬化させる硬化処理を行う(S153)。
【0047】
このように、温度調整部分33の周辺部では、温度調整部分33と板状部材10における下面S2との接触面積と、温度調整部分33とベース部材20における内面S7との接触面積との両方を十分に確保していることにより、板状部材10からベース部材20への熱引きを確保することができる。なお、吸着面S1の温度分布における高温領域は、公知の方法によって特定することができる。例えば、吸着面S1における高温の温度特異点を中心とする所定の範囲内(例えば、直径30mmの範囲内)を高温領域と特定することができる。ここで、高温の温度特異点とは、吸着面S1における平均温度と比較して、所定の温度(例えば、2℃)以上高い部分を意味する。温度調整部分33は、特許請求の範囲における充填部材に相当し、高温時調整工程は、特許請求の範囲における第5の工程に相当する。
【0048】
(低温時調整工程)
上記ステップS141で得られた吸着面S1の温度分布の測定の結果、吸着面S1の温度分布に低温領域の存在が示されたとき(S143:低温領域あり)、ステップS160へ進む。図8の(C)欄に示すように、ステップS160では、ベース部材20に形成されたベース部材貫通孔120の内、Z軸方向視において、低温領域に重なる領域に位置する全てのベース部材貫通孔120(低温時調整用ベース部材貫通孔129)に連通する各接合部貫通孔130に対して、接合部30(面間接合部分31)の一部を除去して、拡径接合部貫通孔139を形成する。接合部30(面間接合部分31)の除去は、例えば、カギ型の樹脂製治具等を用いて行うことができる。これにより、拡径接合部貫通孔139の直径Wboは、拡径接合部貫通孔139に連通する低温時調整用ベース部材貫通孔129の直径Wbaと比較して大きくなる。換言すれば、本実施形態において、板状部材10の下面S2における拡径接合部貫通孔139への露出面の面積は、拡径接合部貫通孔139以外の接合部貫通孔130(通常接合部貫通孔135)への露出面の面積と比較して大きくなる。板状部材10からベース部材20への熱引きを抑制する観点から、Z軸方向視において、拡径接合部貫通孔139の直径Wboが、1mm以上、10mm以下となることが好ましい(図6参照)。また、拡径接合部貫通孔139の直径Wboと低温時調整用ベース部材貫通孔129の直径Wbaとの差(すなわち、Wa×2)が、0mm以上、5mm以下となることが好ましい。
【0049】
このように、拡径接合部貫通孔139の周辺部では、温度調整部分33を充填することなく、また、接合部30(面間接合部分31)の一部を除去することにより、板状部材10からベース部材20への熱引きを抑制することができる。なお、吸着面S1の温度分布における低温領域は、公知の方法によって特定することができる。例えば、吸着面S1における低温の温度特異点を中心とする所定の範囲内(例えば、直径30mmの範囲内)を低温領域と特定することができる。ここで、低温の温度特異点とは、吸着面S1における平均温度と比較して、所定の温度(例えば、2℃)以上低い部分を意味する。低温時調整工程は、特許請求の範囲における第6の工程に相当する。
【0050】
主として、以上の工程により、板状部材10の吸着面S1における温度分布の均一性を向上させた静電チャック100の製造が完了する。
【0051】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、Z軸方向に略直交する吸着面S1と、吸着面S1とは反対側の下面S2と、を有する板状部材10と、上面S3を有し、上面S3が板状部材10の下面S2側に位置するように配置されたベース部材20と、板状部材10とベース部材20とを接合する接合部30とを備え、板状部材10の吸着面S1上に対象物(例えば、ウェハW)を保持する装置である。また、本実施形態の静電チャック100では、ベース部材20には、Z軸方向に貫通し、かつ、Z軸方向視において、板状部材10の吸着面S1に重なる位置に配置された高温時調整用ベース部材貫通孔127と、低温時調整用ベース部材貫通孔129と、冷媒流路21とが形成されている。また、本実施形態の静電チャック100では、接合部30は、板状部材10の下面S2と、ベース部材20の上面S3と、に接合された面間接合部分31と、板状部材10の下面S2と、高温時調整用ベース部材貫通孔127を画定するベース部材20の内面S7と、に接合された温度調整部分33とを備えている。また、本実施形態の静電チャック100では、板状部材10の下面S2と、通常ベース部材貫通孔125を画定するベース部材20の内面とが接合されておらず、また、板状部材10の下面S2と、低温時調整用ベース部材貫通孔129を画定するベース部材20の内面S9とが接合されていない。
【0052】
このように、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視において、板状部材10の吸着面S1に重なる位置に複数のベース部材貫通孔120が形成されている。また、複数のベース部材貫通孔120の内の高温時調整用ベース部材貫通孔127については、その内面S7が温度調整部分33を介して板状部材10の下面S2と接合されている。一方、複数のベース部材貫通孔120の内の通常ベース部材貫通孔125および低温時調整用ベース部材貫通孔129については、その内面は板状部材10の下面S2と接合されていない。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、温度調整部分33を備えていない通常ベース部材貫通孔125および低温時調整用ベース部材貫通孔129の周辺と比較して、温度調整部分33を備えた高温時調整用ベース部材貫通孔127の周辺において、板状部材10とベース部材20との間の伝熱が良好である。
【0053】
静電チャックの板状部材における吸着面には、静電チャック製造時のバラツキ等に起因して、高温の温度特異点が発生することがある。本実施形態の静電チャック100では、高温時調整用ベース部材貫通孔127の周辺において、板状部材10とベース部材20との間の伝熱(熱引き)が良好となることにより、ベース部材20に形成された冷媒流路21による冷却効率を向上させることができる。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、上記構成が採用されているため、吸着面S1において、Z軸方向視における高温時調整用ベース部材貫通孔127に重なる領域とその付近の温度を降温調整することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、板状部材10における吸着面S1の温度分布が制御された(例えば、温度分布の均一性を向上させた)静電チャック100を提供することができ、ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態の静電チャック100では、接合部30が備える面間接合部分31を形成する材料と、温度調整部分33を形成する材料とは、同じである。このため、本実施形態の静電チャック100が歪みや圧縮等の応力を受けたときに、面間接合部分31と温度調整部分33とが同様に変形することにより、当該変形に伴う応力を効果的に緩和することができる。また、本実施形態の静電チャック100によれば、面間接合部分31と温度調整部分33とが同じ材料により形成されていることにより、両者の親和性が良好であり、温度調整部分33が面間接合部分31から剥離することを抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の静電チャック100では、板状部材10の吸着面S1は、略円形である。また、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視において、板状部材10の吸着面S1の中心POとベース部材20に形成されたベース部材貫通孔120(通常ベース部材貫通孔125、高温時調整用ベース部材貫通孔127、低温時調整用ベース部材貫通孔129)の中心との距離Lrとは、吸着面S1における半径Rの2分の1以上の長さである。換言すれば、本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視において、上記複数のベース部材貫通孔120は、板状部材10の吸着面S1の内の外周付近に位置している。板状部材の吸着面の内の外周付近は、静電チャック製造時のバラツキ等に起因した、温度特異点が発生しやすい部分である。本実施形態の静電チャック100では、上記構成が採用されているため、Z軸方向視において、上記温度特異点が発生しやすい部分である吸着面S1の外周付近における、ベース部材貫通孔120に重なる領域とその付近の温度を調整することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、板状部材10における吸着面S1の外周付近の温度分布が制御された(例えば、温度分布の均一性を向上させた)静電チャック100を提供することができ、ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態の静電チャック100では、接合部30には、接合部貫通孔130が形成されている。また、接合部貫通孔130の内の拡径接合部貫通孔139について、その直径Wboは、拡径接合部貫通孔139に連通する低温時調整用ベース部材貫通孔129の直径Wbaと比較して大きい。換言すれば、本実施形態の静電チャック100において、板状部材10の下面S2における拡径接合部貫通孔139への露出面の面積は、ベース部材貫通孔120と同径の通常接合部貫通孔135への露出面の面積と比較して大きい。このため、拡径接合部貫通孔139の周辺では、通常接合部貫通孔135の周辺と比較して、板状部材10とベース部材20との間の伝熱が抑制される。
【0057】
静電チャックの板状部材における吸着面には、静電チャック製造時のバラツキ等に起因して、低温の温度特異点が発生することがある。本実施形態の静電チャック100では、低温時調整用ベース部材貫通孔129の周辺において、板状部材10とベース部材20との間の伝熱(熱引き)が抑制されることにより、ベース部材20に形成された冷媒流路21による冷却効率を抑制することができる。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、上記構成が採用されているため、吸着面S1において、Z軸方向視における低温時調整用ベース部材貫通孔129に重なる領域とその付近の温度を昇温調整することができる。従って、本実施形態の静電チャック100によれば、板状部材10における吸着面S1の温度分布がより効果的に制御された(例えば、温度分布の均一性を向上させた)静電チャック100を提供することができ、ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性をより効果的に向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態の静電チャック100の製造方法では、まず、ベース部材20に対して、Z軸方向に貫通し、かつ、Z軸方向視において、板状部材10の吸着面S1に重なる位置にベース部材貫通孔120(通常ベース部材貫通孔125、高温時調整用ベース部材貫通孔127、低温時調整用ベース部材貫通孔129)と、冷媒流路21とが形成されたベース部材20を準備し(ベース部材20の準備工程、S110)、接合部30における、板状部材10とベース部材20とを接合する前の状態である第1の接合部30aに対して、Z軸方向に貫通し、かつ、ベース部材20に形成されたベース部材貫通孔120(通常ベース部材貫通孔125、高温時調整用ベース部材貫通孔127、低温時調整用ベース部材貫通孔129)に連通する接合部貫通孔130が形成された第1の接合部30aを準備する(第1の接合部30aの準備工程、S120)。その後、板状部材10とベース部材20との間に第1の接合部30aを配置し、板状部材10とベース部材20とが接合部30によって接合された積層体100aを作製し(積層体100aの作製工程、S131,S133)、積層体100aを構成する板状部材10における吸着面S1の温度分布を測定する(吸着面S1の温度分布の測定工程、S141)。さらに、ステップS141において、板状部材10における吸着面S1の温度分布の測定の結果、吸着面S1の温度分布に高温領域の存在が示されたとき(S143:高温領域あり)、Z軸方向視において、高温領域に重なる領域に位置するベース部材貫通孔120(高温時調整用ベース部材貫通孔127)に対して、温度調整部分33を充填することにより、板状部材10の下面S2と、高温時調整用ベース部材貫通孔127を画定するベース部材20の内面S7とを、連結し(高温時調整工程、S151,S153)、ステップ141において、板状部材10における吸着面S1の温度分布の測定の結果、吸着面S1の温度分布に低温領域の存在が示されたとき(S143:低温領域あり)、Z軸方向視において、低温領域に重なる領域に位置するベース部材貫通孔120(低温時調整用ベース部材貫通孔129)に連通する接合部貫通孔130に対して、接合部貫通孔130の直径Wboが、接合部貫通孔130に連通する低温時調整用ベース部材貫通孔129の直径Wbaと比較して大きくなるよう、接合部30(面間接合部分31)の一部を除去して、拡径接合部貫通孔139とする(低温時調整工程、S160)。
【0059】
このように、本実施形態の静電チャック100の製造方法では、予めベース部材20に対してベース部材貫通孔120を形成する。次いで、ベース部材貫通孔120が形成されたベース部材20と、板状部材10と、第1の接合部30a(接合部30)とから構成される積層体100aを作製し、作製された積層体100aにおける板状部材10の吸着面S1の温度分布を測定する。当該測定の結果、吸着面S1に温度分布の高温領域の存在が示されたとき、Z軸方向視において、高温領域に重なる領域に位置するベース部材貫通孔120(高温時調整用ベース部材貫通孔127)に対して、上記高温時調整工程を実行する。また、上記測定の結果、吸着面S1に温度分布の低温領域の存在が示されたとき、Z軸方向視において、低温領域に重なる領域に位置するベース部材貫通孔120(低温時調整用ベース部材貫通孔129)に連通する接合部貫通孔130に対して、上記低温時調整工程を実行する。
【0060】
高温時調整工程では、高温時調整用ベース部材貫通孔127に温度調整部分33を充填することにより、板状部材10の下面S2と、高温時調整用ベース部材貫通孔127を画定するベース部材20の内面S7とを連結する。これにより、板状部材10からベース部材20への熱引きを向上させることができ、ベース部材20に形成された冷媒流路21による冷却効率を向上させることができる。すなわち、吸着面S1の内の高温領域の温度を降温させることができる。また、低温調整工程では、低温時調整用ベース部材貫通孔129に連通する接合部貫通孔130に対して、板状部材10の下面S2の当該接合部貫通孔130への露出面がより大きくなるよう、接合部30(面間接合部分31)の一部を除去して拡径接合部貫通孔139を形成する。これにより、板状部材10からベース部材20への熱引きを抑制させることができ、ベース部材20に形成された冷媒流路21による冷却効率を抑制させることができる。すなわち、吸着面S1の内の低温領域の温度を昇温させることができる。従って、本実施形態の静電チャック100の製造方法によれば、積層体100aの板状部材10における吸着面S1の温度分布の測定結果に基づいて、板状部材10における吸着面S1の温度分布を制御する(例えば、温度分布の均一性を向上させる)ことができ、ひいては、吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御性を向上させることができる。
【0061】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0062】
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまでも一例であり、種々変形可能である。例えば、板状部材10の内部に、チャック電極40およびヒータ電極50の少なくとも一方を備えない構成としてもよい。また、上記実施形態では、板状部材10の内部にヒータ電極50が配置されているが、必ずしも板状部材10の内部にヒータ電極50が配置されている必要はなく、板状部材10の表面にヒータ電極50が配置されていてもよい。また、上記各実施形態では、ベース部材20に冷媒流路21が形成されているが、必ずしもベース部材20に冷媒流路21が形成されている必要はなく、ベース部材20にペルチェ素子等の他の冷却機構が備えられていてもよい。
【0063】
上記実施形態における静電チャック100では、板状部材10における吸着面S1の形状を略円形平面状としているが、これに限定されない。例えば、多角形平面状や他の形状であってもよい。
【0064】
上記実施形態における静電チャック100では、ベース部材20において、8つのベース部材貫通孔120が、吸着面S1の外周付近(吸着面S1における半径Rの2分の1以上の長さとなる位置)において、周方向に略等間隔に配置されるよう形成されているが、これに限定されない。例えば、ベース部材貫通孔120の数は、2以上8未満であってもよく、8を超えていてもよい。また、ベース部材貫通孔120は、吸着面S1の外周付近に形成されるものでなくてもよく、例えば、吸着面S1の全面または中央部に形成されていてもよい。また、ベース部材貫通孔120は、吸着面S1上に略等間隔に形成されるものでなくてもよく、例えば、ランダムに形成されていてもよい。
【0065】
上記実施形態において、接合部30を構成する温度調整部分33は、温度調整部分33の表面の内の板状部材10の下面S2に対向する表面の全面およびベース部材20の高温時調整用ベース部材貫通孔127を画定するベース部材20の内面S7に対向する表面の全面において、板状部材10およびベース部材20と接合されているがこれに限定されない。例えば、温度調整部分33の上記各表面の内、それぞれ、板状部材10の下面S2およびベース部材20の内面S7と接合していない部分があってもよい。また、上記実施形態において、面間接合部分31と温度調整部分33とは、互いに接合されているがこれに限定されず、面間接合部分31と温度調整部分33との間に接合されていない部分があってもよい。
【0066】
上記実施形態において、接合部30が、拡径接合部貫通孔139を備える構成を採用しているが、これに限定されず、拡径接合部貫通孔139を備えていない構成であってもよい。すなわち、接合部30が備える接合部貫通孔130が、全て通常接合部貫通孔135であってもよい。また、上記実施形態において、全ての低温時調整用ベース部材貫通孔129が、それぞれ、拡径接合部貫通孔139に連通しているが、これに限定されない。例えば、全てのまたは一部の低温時調整用ベース部材貫通孔129が、それぞれ、通常接合部貫通孔135に連通している構成であってもよい。
【0067】
上記実施形態において、接合部30に形成された拡径接合部貫通孔139および低温時調整用ベース部材貫通孔129において、さらに、温度調整部分33が備えられていてもよい。また、温度調整部分33に代えて、板状部材10の下面S2の内の拡径接合部貫通孔139へ露出する部分と、ベース部材20の上面S3の内の拡径接合部貫通孔139へ露出する部分とを接合する接合部が備えられていてもよい。
【0068】
上記実施形態において、接合部30が備える面間接合部分31と温度調整部分33とが同じ材料である構成を採用したが、これに限定されず、面間接合部分31と温度調整部分33とが異なる材料である構成であってもよい。なお、面間接合部分31と温度調整部分33との間の剥離を抑制する観点、および、面間接合部分31と温度調整部分33との応力緩和の程度を同等とする観点から、面間接合部分31と温度調整部分33とは同じ材料であることが好ましい。
【0069】
上記実施形態の静電チャック100の製造方法において、第1の接合部30aの準備工程の際に、接合部貫通孔130を形成したが、これに限定されず、接合部貫通孔130を形成しないとしてもよい。この場合、上記高温時調整工程の際には、接合部30の下面の内の高温時調整用ベース部材貫通孔127へ露出する部分と高温時調整用ベース部材貫通孔127を画定するベース部材20の内面S7とが接合されるよう温度調整部分33を充填することができる。また、低温時調整工程の際には、接合部30における低温時調整用ベース部材貫通孔129の周辺部分において、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との少なくとも一方が露出するよう、接合部30の一部を除去して拡径接合部貫通孔139を形成することができる。
【0070】
上記実施形態の静電チャック100の製造方法において、積層体100aの作製工程が、第1の接合部30aの硬化処理を含むとしているが、これに限定されない。例えば、接合部30として用いる接着剤が硬化処理を必要としない場合等には、積層体100aの作製工程に、上記硬化処理を含まなくてもよい。
【0071】
上記実施形態の静電チャック100の製造方法において、高温時調整工程および低温時調整工程の両方を実行しているが、これに限定されず、吸着面S1の温度分布の測定結果に応じて、いずれか一方の工程を行うこととしてもよい。
【0072】
上記実施形態の静電チャック100の製造方法において、高温時調整工程では、Z軸方向視において、吸着面S1の内の上記高温領域に重なる領域に位置する全てのベース部材貫通孔120に対して、温度調整部分33を充填しているが、これに限定されず、一部のベース部材貫通孔120に対して温度調整部分33を充填することとしてもよい。また、低温時調整工程においても、Z軸方向視において、吸着面S1の内の上記低温領域に重なる領域に位置する全てのベース部材貫通孔120に連通する各接合部貫通孔130に対して、拡径接合部貫通孔139とする処理を行っているが、これに限定されず、一部のベース部材貫通孔120に対して拡径接合部貫通孔139とする処理を行うこととしてもよい。
【0073】
また、上記各実施形態では、板状部材10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、板状部材10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記各実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0074】
本発明は、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック100に限らず、板状部材と、ベース部材と、接合部とを備え、板状部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、真空チャック等)にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10:板状部材 20:ベース部材 21:冷媒流路 25:孔 30:接合部 30a:第1の接合部 31:面間接合部分 33:温度調整部分 35:孔 40:チャック電極 50:ヒータ電極 100:静電チャック 100a:積層体 120:ベース部材貫通孔 125:通常ベース部材貫通孔 127:高温時調整用ベース部材貫通孔 129:低温時調整用ベース部材貫通孔 130:接合部貫通孔 131:第1のガス流路孔 132:第2のガス流路孔 133:横流路 134:拡径部 135:通常接合部貫通孔 139:拡径接合部貫通孔 141:ステップ 160:充填部材(通気性プラグ) Lf:長さ Lr:距離 PO:中心 R:半径 S1:吸着面 S2:下面 S3:上面 S4:下面 S7:内面 S9:内面 W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8