(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】クレーン、及びクレーンの制御方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
B66C13/22 V
(21)【出願番号】P 2019015966
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】亀井 智一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 航
(72)【発明者】
【氏名】今村 高夫
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-124078(JP,U)
【文献】特開平11-005688(JP,A)
【文献】特開昭57-184090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の搬送対象物を掴む吊具を有するクレーンであって、
前記吊具は、開閉可能な一対の爪部を含み、
前記吊具には、光を反射する反射部材、及び画像を取得する撮像部が設けられ、
前記撮像部は、前記反射部材に対し、水平方向においてずれた位置に配置されており、前記反射部材を介して前記画像を取得
し、
前記反射部材は、前記一対の爪部同士の間の領域に配置されている、クレーン。
【請求項2】
前記高温の搬送対象物は、インゴットをつくるために用いられる枠部材である、請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記高温の搬送対象物は、コイルまたはスラブである、請求項1に記載のクレーン。
【請求項4】
前記画像は、前記コイルまたは前記スラブ付近の地上に設けられるマーカーである、
請求項3に記載のクレーン。
【請求項5】
前記撮像部によって取得された前記画像に基づいて、前記吊具の位置合わせを行う位置合わせ部を更に備える、
請求項1~4の何れか一項に記載のクレーン。
【請求項6】
前記撮像部によって取得された前記画像を表示する表示部を更に備える、
請求項1~5の何れか一項に記載のクレーン。
【請求項7】
開閉可能な一対の爪部を含み、高温の搬送対象物を掴む吊具を有するクレーンの制御方法であって、
前記吊具に、光を反射する反射部材、及び前記反射部材に対し、水平方向においてずれた位置に配置されており、画像を取得する撮像部を設け、
前記撮像部によって、反射部材を介して前記画像を取得し、
前記反射部材は、前記一対の爪部同士の間の領域に配置されており、
前記撮像部によって取得された前記画像に基づいて、前記吊具の位置合わせを自動的に行う、クレーンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン、及びクレーンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクレーンとして、特許文献1に記載されたものが知られている。クレーンは、天井側を移動しながら、床面に配置された対象物を保持し、設置場所まで搬送した後に、当該設置場所へ設置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のようなクレーンでは、設置場所と対象物との位置関係を正確に把握するために、適切な位置及び適切なアングルからの画像を取得し、設置の様子を監視する必要が生じる場合がある。しかしながら、設置場所の環境や対象物の状態によっては、カメラに対して悪影響が及ぼされる場合がある。このような場合に、適切な位置及びアングルからの画像を取得せずにクレーンを動作させようとすると、正確に作業をおこなうために(例えば作業者が目視で確認するなど)手間がかかる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、正確、且つ容易に作業を行うことができるクレーン、及びクレーンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るクレーンは、吊具を有するクレーンであって、吊具には、光を反射する反射部材、及び画像を取得する撮像部が設けられ、撮像部は、反射部材を介して画像を取得する。
【0007】
クレーンにおいて、吊具には、光を反射する反射部材、及び画像を取得する撮像部が設けられる。この撮像部は、反射部材を介して画像を取得する。この場合、撮像部が適切な位置やアングルに直接設置できない場合であっても、反射部材で像を反射させることで、撮像部は離れた位置から、適切な位置やアングルからの画像を取得することができる。従って、当該画像に基づいてクレーンを動作させることが可能となるため、正確に作業を行うことができる。また、撮像部で取得された画像を用いることで、(作業者が直接目視する場合などに比して)作業を容易に行うことができる。以上により、正確、且つ容易にクレーンの作業を行うことができる。
【0008】
クレーンにおいて、撮像部は、反射部材に対し、水平方向においてずれた位置に配置されている。例えば、搬送する対象物を真上から監視する必要があり、且つ、対象物が高温である場合、対象物の真上の領域には熱が対流する。このような場合、反射部材を対象物の真上に設置しても、撮像部は反射部材及び対象物から水平方向においてずれた位置に配置される。従って、撮像部に熱の影響が及ぼされることを回避できる。
【0009】
クレーンは、撮像部によって取得された画像に基づいて、吊具の位置合わせを行う位置合わせ部を更に備えてよい。この場合、適切な位置及びアングルから得られた画像に基づいて、正確、且つ容易に吊具の位置合わせを行うことができる。
【0010】
クレーンは、撮像部によって取得された画像を表示する表示部を更に備えてよい。この場合、作業者は、適切な位置及びアングルから得られた画像を表示部で確認しながら、正確、且つ容易に吊具の操作を行うことができる。
【0011】
本発明に係るクレーンの制御方法は、吊具を有するクレーンの制御方法であって、吊具に、光を反射する反射部材、及び画像を取得する撮像部を設け、撮像部によって、反射部材を介して画像を取得し、撮像部によって取得された画像に基づいて、吊具の位置合わせを自動的に行う。
【0012】
クレーンの制御方法において、吊具には、光を反射する反射部材、及び画像を取得する撮像部が設けられる。この撮像部は、反射部材を介して画像を取得する。この場合、撮像部が適切な位置やアングルに直接設置できない場合であっても、反射部材で像を反射させることで、撮像部は離れた位置から、適切な位置やアングルからの画像を取得することができる。また、適切な位置及びアングルから得られた画像に基づいて、正確、且つ容易に吊具の位置合わせを行うことができる。以上により、正確、且つ容易にクレーンの作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、正確、且つ容易に作業を行うことができるクレーン、及びクレーンの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るクレーンを示す概略図である。
【
図7】カメラによって取得された画像の一例を示す図である。
【
図8】変形例に係るクレーンの吊具の構成を示す図である。
【
図9】変形例に係るクレーンの吊具の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るクレーン、及びクレーンの制御方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るクレーンを示す概略図である。
【0016】
本実施形態に係るクレーン100は、対象物を上方から掴み取り、当該対象物を所望の場所へ移すためのクレーンである。クレーン100は、クレーン装置15と、制御装置20と、を備えている。
【0017】
クレーン装置15は、吊具1と、移動機構2と、を備える。吊具1は、対象物を掴み取る部分である。吊具1は、吊部材3によって吊り下げられる本体部10と、本体部10に開閉可能に設けられた爪部11と、を備える。なお、吊具1の詳細な構成については後述する。クレーン装置15の説明においては、XYZ座標系を用いて説明する場合がある。X軸方向は、水平方向における所定の方向である。Y軸方向は、水平方向においてX軸方向と直交する方向である。Z軸方向は上下方向である。上側がZ軸方向の正側に設定される。
【0018】
移動機構2は、吊具1を水平方向及び上下方向に移動させるための機構である。移動機構2は、吊具1を吊部材3で吊り下げるトロリ4と、トロリ4をガイドするガーダー6と、ガーダー6をガイドするガーダー7と、を備える。トロリ4は、吊部材3の巻上げ及び巻下げを行う巻装置(不図示)を有している。トロリ4の巻装置が吊部材3の巻上げ及び巻下げを行うことで、吊具1が上下方向に移動する。
【0019】
ガーダー6は、Y軸方向へ延びる一対のガイド部材である。一対のガーダー6は、X軸方向において互いに離間しており、各ガーダー6の上面にトロリ4の縁部が配置されている。一対のガーダー6間の隙間には、トロリ4に吊された吊部材3が配置される。トロリ4は駆動部(不図示)を有しており、Y軸方向に走行する。これにより、吊具1がY軸方向に移動する。
【0020】
ガーダー7は、X軸方向へ延びる一対のガイド部材である。一対のガーダー7は、Y軸方向に互いに離間しており、ガーダー6の長手方向であるY軸方向における端部をそれぞれ支持する。ただし、Y軸方向の正側のガーダー7は省略されている。ガーダー6は駆動部(不図示)を有しており、ガーダー7の長手方向であるX軸方向に走行する。これにより、吊具1がX軸方向に移動する。
【0021】
クレーン装置15は、対象物の周囲の様子を検出する検出部8A,8Bを有する。検出部8Aは、吊具1に設けられており、当該吊具1の下方の様子を検出する。検出部8Aは、カメラ31(撮像部)を有している。検出部8Aで取得された画像は、制御装置20へ送信される。検出部8Aの詳細については後述する。検出部8Bは、移動機構2に設けられており、吊具1に対して水平方向にずれた位置に配置されている。これにより、検出部8Bは、吊具1の周囲の様子を検出することができる。検出部8Bは、下方へ向けられたカメラによって構成される。検出部8Bで取得された画像は、制御装置20へ送信される。
【0022】
制御装置20は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。制御装置20では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御装置20は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0023】
制御装置20は、情報取得部21と、クレーン制御部22と、位置合わせ部23と、を備える。情報取得部21は、検出部8A,8B及びその他のセンサ等から情報を取得する部分である。情報取得部21は、検出部8A,8Bで撮像された画像を取得する。クレーン制御部22は、クレーン装置15に動作指令を送信する部分である。クレーン制御部22は、移動機構2の駆動部及び巻装置に動作指令を送信することで、吊具1の水平方向及び上下方向への移動を制御する。また、クレーン制御部22は、吊具1の開閉駆動部に動作指令を送信することで、吊具1の爪部11の開閉動作を制御する。
【0024】
位置合わせ部23は、検出部11Aのカメラ31によって取得された画像に基づいて、吊具1の位置合わせを自動的に行う。位置合わせ部23は、吊具1と対象物の設置場所との相対的な位置関係を画像から判断する。位置合わせ部23は、吊具1と設置場所との間にずれがあるか否かを判定する。位置合わせ部23は、吊具1と設置場所との間にずれがあると判定した場合は、画像からずれ量及びずれの向きを演算する。位置合わせ部23は、演算したずれ量及びずれの向きから、ずれを解消するための吊具1の移動量及び移動の向きを演算する。位置合わせ部23は、当該演算結果をクレーン制御部22へ出力することで、吊具1と設置場所との間の位置合わせを行う。
【0025】
制御装置20には、表示部26及び入力部27が接続されている。表示部26は、クレーン100の操作等に必要な各種情報が表示される機器である。表示部26は、ディスプレイ等によって構成されている。表示部26は、検出部11Aのカメラ31で撮像された画像を表示することができる。入力部27は、ユーザーの操作によって各種情報が入力される機器である。入力部27は、操縦レバー、操縦ボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって構成される。
【0026】
次に、
図2を参照して、吊具1の詳細な構成について説明する。
図2(a)は、吊具1をY軸方向の正側から見た図である。
図2(b)は、吊具1をX軸方向の正側から見た図である。ただし、
図2(b)では、検出部8Aの構成を示すために、吊具1の本体部10のみを概略的に示し、爪部11は省略されている。
【0027】
図2(a)に示すように、吊具1は、本体部10の下端側に、一対の爪部11を回転可能に支持する軸部13を有する。軸部13は、Y軸方向に延びる。一対の軸部13は、互いにX軸方向に離間するように設けられる。一対の爪部11の基端部は、それぞれ軸部13に軸支されている。一対の爪部11は、本体部10の下端から下方へ向かって延びている。爪部11は、軸部13を中心として回動する。一対の爪部11が吊具1の中心線CL1から遠ざかるように回動することで、爪部11の開動作が行われる。一対の爪部11が吊具1の中心線CL1に近付くように回動することで、爪部11の閉動作が行われる。
【0028】
検出部8Aは、本体部10の下端側の部分に設けられる。検出部8Aは、カメラ31と、反射部材32と、コントローラ33と、を備える。カメラ31、反射部材32、及びコントローラ33は、本体部10の下面10aの下側に配置される。カメラ31、反射部材32、及びコントローラ33は、本体部10に設けられた支持フレーム35によって支持されている。支持フレーム35は、本体部10のX軸方向に対向する主面10b,10cに固定されると共に、下面10aよりも下方に突出している。カメラ31、反射部材32、及びコントローラ33は、支持フレーム35のうち、下面10aよりも下方に突出した部分に支持されている。支持フレーム35は、一対の爪部11同士の間の領域に配置されている。従って、カメラ31、反射部材32、及びコントローラ33も、一対の爪部11同士の間の領域に配置されている。Y軸方向から見て、カメラ31、反射部材32、及びコントローラ33は、中心線CL1と重なる位置に配置される。
【0029】
反射部材32は、光を反射する板状の部材である。反射部材32は、一方の面が反射面32aであるミラーによって構成される。反射部材32は、本体部10の下方に配置される。反射部材32は、中心線CL1が反射面32aを通過するような位置に配置される。反射部材32は、Y軸方向に広がるように配置される。反射部材32は、X軸方向から見て、反射面32aが中心線CL1に対して傾斜するように配置される(
図2(b)参照)。反射面32aは、吊具1に対して下側から向かってくる光をY軸方向の負側へ向けて反射する。
【0030】
なお、反射部材32の上端部は、中心線CL1よりもX軸方向の正側に配置される。反射部材32の上端部は、支持フレーム35のフレーム35aに固定される。フレーム35aは、本体部10の下面10aの近傍で主面10b,10c間でX軸方向に延びている。反射部材32の下端部は、中心線CL1よりもX軸方向の負側に配置される。反射部材32の下端部は、支持フレーム35のフレーム35bに固定される。反射部材32は、自身の上端部が下端部よりもカメラ31に近くなるように固定される。フレーム35bは、本体部10の下面10aから下方に離間した位置で主面10b,10c間でX軸方向に延びている。
【0031】
カメラ31は、反射部材32を介して画像を取得する。すなわち、カメラ31は、反射部材32の反射面32aを撮像することで、反射面32aに映し出された、反射部材32の下方の様子を示す画像を取得する。カメラ31は、反射部材32に対し、水平方向においてずれた位置に配置されている。カメラ31は、反射部材32によって反射された光を受光する位置、すなわち反射部材32に対してY軸方向の負側に配置される。カメラ31は、Y軸方向において反射部材32から負側へ離間しており、本体部10の主面10cよりもY軸方向の負側に配置されている。カメラ31は、支持フレーム35のうち、本体部10の下面10aより下方の位置にて、Y軸方向の負側へ張り出した台座部35cに載置されている。台座部35cには、カメラ31と並ぶようにカメラ用照明灯34が設けられている。
【0032】
カメラ31は、光軸がY軸方向に真っすぐ延びて、反射面32aと重なるような位置及び向きに配置される。X軸方向から見て、カメラ31の光軸は中心線CL1に対して90°をなす。中心線CL1に対する反射面32aの傾斜角は、45°に設定される。カメラ31の光軸と反射面32aとの交点は、中心線CL1と反射面32aとの交点と一致、または近接した位置に配置される。従って、カメラ31は、本体部10の下面10aの下方であって、中心線CL1を含む領域からの光を少なくとも受光し、当該領域の様子を撮像することができる。ただし、カメラ31が本体部10の下方であって中心線CL1を含む領域の様子を撮像できる限り、カメラ31の光軸の角度、反射面32aの角度はどのように設定されてもよい。
【0033】
コントローラ33は、カメラ31を制御する機器である。コントローラ33は、カメラ31で取得された画像データを制御装置20へ送信する。コントローラ33は、反射部材32に対し、水平方向においてずれた位置に配置されている。コントローラ33は、Y軸方向において反射部材32から正側へ離間しており、本体部10の主面10bよりもY軸方向の正側に配置されている。コントローラ33は、支持フレーム35のうち、本体部10の下面10aより下方の位置にて、Y軸方向の正側へ張り出した台座部35dに載置されている。
【0034】
次に、クレーン100の動作及び制御方法について
図3~
図7を参照して説明する。
図3~
図6は、クレーン100の動作の一例を示す概略図である。
図7は、カメラ31によって取得された画像の一例を示す図である。なお、検出部8Bは、X軸方向の負側のガーダー6に取り付けられている。検出部8Bは、ガーダー6からX軸方向の負側へ張り出した張出部6aに設けられている。ここでは、吊具1が円環状の外枠40(
図4参照)を地上のステージ41上の内枠42周りに設置する際の動作手順について説明する。外枠40および内枠42は、インゴットを作るために用いられる部材である。
【0035】
図3に示すように、検出部8Aが、地上にセットされているステージ41上の内枠42の画像を取得する。これにより、制御装置20(
図1参照)は、当該画像から内枠42を画像認識すると共に、当該内枠42の位置を把握する。この後、吊具1は、外枠40の置き場所へ移動し、外枠40を掴む。当該処理は、オペレータの操作によって実行される。
【0036】
図4に示すように、制御装置20は、オペレータが選択した内枠42の座標へ吊具1を自動運転で移動させる。吊具1は、外枠40の貫通孔40aの中心線CL2と吊具1の中心線CLとが略一致するような状態で、外枠40を掴んでいる。制御装置20は、内枠42よりも高い位置にて、吊具1を方向D1(ここではX軸方向の負側)へ自動横走させる。制御装置20は、外枠40の中心線CL2が、対象となる内枠42の中心線CL3の略真上に配置されるように、吊具1を移動させる。
【0037】
次に、
図5に示すように、検出部8Aのカメラ31が、反射部材32(
図2参照)を介して内枠42の画像を取得する。これにより、制御装置20は、当該画像から内枠42を画像認識すると共に、当該内枠42の位置を把握する。ここでは、制御装置20は、検出部8Bの画像によって把握していた位置よりも、正確に内枠42の位置を把握する。外枠40の中心線CL2の位置が内枠42の中心線CL3からずれている場合、制御装置20の位置合わせ部23は、両者が一致するように、吊具1を自動的に微移動させる。
【0038】
図7(a)に示すように、検出部8Aのカメラ31の画像中では、外枠40の貫通孔40aの中に内枠42が映し出される。なお、外枠40の中心線CL2の位置は、貫通孔40aの輪郭などに基づいて画像解析によって求めることができる。内枠42の中心線CL3の位置は、内枠42の輪郭などに基づいて画像解析によって求めることができる。ここでは、外枠40の中心線CL2から内枠42の中心線CL3がずれている。この場合、位置合わせ部23は、中心線CL2と中心線CL3がずれている分だけ吊具1を微移動させる。
図7(b)に示すように、外枠40の中心線CL2と内枠42の中心線CL3とが一致したら、位置決めが完了となる。
【0039】
自動位置合わせが完了したら、
図6に示すように、制御装置20は、吊具1を自動で巻き下げる。このとき、制御装置20は、外枠40と内枠42との距離が近くなったら、再度中心線CL2,CL3の位置確認及び位置合わせを行ってよい。制御装置20は、外枠40をステージ41上に着床してもよいと判断したら、着床可能である旨の信号を出す。オペレータは、検出部8Aのカメラ31の画像を確認しながら、外枠40の貫通孔40aに内枠42が挿通されるように、吊具1を操作して着床する。なお、着床の動作は、オペレータが手動で行ってもよく、制御装置20が自動で行ってもよく、制御装置20の支援を受けながらオペレータが操作を行う半自動で行ってもよい。
【0040】
次に、本実施形態に係るクレーン100、及びクレーン100の制御方法の作用・効果について説明する。
【0041】
本実施形態に係るクレーン100は、吊具1を有するクレーン100であって、吊具1には、光を反射する反射部材32、及び画像を取得するカメラ31が設けられ、カメラ31は、反射部材32を介して画像を取得する。
【0042】
クレーン100において、吊具1には、光を反射する反射部材32、及び画像を取得するカメラ31が設けられる。このカメラ31は、反射部材32を介して画像を取得する。この場合、カメラ31が適切な位置やアングルに直接設置できない場合であっても、反射部材32で像を反射させることで、カメラ31は離れた位置から、適切な位置やアングルからの画像を取得することができる。例えば、使用直後の外枠40は、インゴットの熱により高温となるため、カメラ31が外枠40に近接した位置に配置された場合、カメラ31の故障の原因となる。あるいは、カメラ31を耐熱壁で覆うなどの耐熱構造を採用した場合、コストが非常に高くなる。その一方、外枠40を離れた位置のカメラ31で斜め方向から撮像した場合、画像から外枠40と内枠42との位置関係を把握することが難しくなる。
【0043】
従って、熱の影響が少ない反射部材32が外枠40の真上に配置され、当該位置からの像をカメラ31へ送ると、カメラ31は、熱の影響が少ない位置から、適切な位置やアングルからの画像を取得することができる。当該画像に基づいてクレーンを動作させることが可能となるため、正確に作業を行うことができる。また、カメラ31で取得された画像を用いることで、作業者が直接目視する場合などに比して作業を容易に行うことができる。以上により、正確、且つ容易にクレーン100の作業を行うことができる。
【0044】
クレーン100において、カメラ31は、反射部材32に対し、水平方向においてずれた位置に配置されている。例えば、搬送する外枠40は真上から監視する必要があり、且つ、高温であるため、外枠40の真上の領域には熱が対流する。このような場合、反射部材32を外枠40の真上に設置しても、カメラ31は反射部材32及び外枠40から水平方向においてずれた位置に配置される。従って、カメラ31に熱の影響が及ぼされることを回避できる。
【0045】
クレーン100は、カメラ31によって取得された画像に基づいて、吊具1の位置合わせを行う位置合わせ部23を更に備える。この場合、適切な位置及びアングルから得られた画像に基づいて、正確、且つ容易に吊具1の位置合わせを行うことができる。
【0046】
クレーン100は、カメラ31によって取得された画像を表示する表示部26を更に備える。この場合、作業者は、適切な位置及びアングルから得られた画像を表示部26で確認しながら、正確、且つ容易に吊具1の操作を行うことができる。
【0047】
本実施形態に係るクレーン100の制御方法は、吊具1を有するクレーン100の制御方法であって、吊具1に、光を反射する反射部材32、及び画像を取得するカメラ31を設け、カメラ31によって、反射部材32を介して画像を取得し、カメラ31によって取得された画像に基づいて、吊具1の位置合わせを自動的に行う。
【0048】
クレーン100の制御方法において、吊具1には、光を反射する反射部材32、及び画像を取得するカメラ31が設けられる。このカメラ31は、反射部材32を介して画像を取得する。この場合、カメラ31が適切な位置やアングルに直接設置できない場合であっても、反射部材32で像を反射させることで、カメラ31は離れた位置から、適切な位置やアングルからの画像を取得することができる。また、適切な位置及びアングルから得られた画像に基づいて、正確、且つ容易に吊具1の位置合わせを行うことができる。以上により、正確、且つ容易にクレーン100の作業を行うことができる。
【0049】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0050】
例えば、上述の実施形態では、クレーンとして、外枠を掴む吊具を有するものを例示した。ただし、吊具の構成及び対象物は特に限定されない。また、対象物が変更された場合は、吊具に設けられる検出部の配置も変更される。
【0051】
例えば、
図8に示すように、吊具101として、コイル140を掴むコイルリフターが採用されてもよい。このとき、吊具101は、本体部110及び一対の爪部111を有する。一対の爪部111は、本体部110からX軸方向の両側へ向かって、中心線CL1から遠ざかるように延びる屈曲部111aと、屈曲部111aから下方へ延在部111bと、延在部111bの下端から中心線CL1側へ突出する突出部111cと、を備える。吊具101は、一対の爪部111を中心線CL1側へ近づけるように閉じることで、突出部111cをコイル140の貫通孔140aに挿入する。これにより、吊具101は、コイル140を掴む。
【0052】
検出部108は、吊具101の爪部111に設けられる。カメラ31及び反射部材32は、一方の爪部111の屈曲部111aに設けられる。カメラ31は、反射部材32に対して水平方向にずれた位置に配置される。ここでは、カメラ31は、コイル140から遠ざかるように、反射部材32に対してX軸方向の正側に離間するように配置される。吊具101がコイル140を設置場所に設置するときは、カメラ31は、反射部材32を介して、地上のマーカー50の画像を取得する。反射部材32は、爪部111の屈曲部111aにマーカー50からの光が遮られない位置に配置される。このように、カメラ31がコイル140から遠い位置に配置される場合であっても、コイル140付近のマーカー50を撮像することができる。これにより、カメラ31がコイル140から受ける熱などの影響を低減することができる。
【0053】
例えば、
図9に示すように、吊具201として、スラブ240掴むスラブリフターが採用されてもよい。このとき、吊具201は、本体部210及び一対の爪部211を有する。一対の爪部111は、本体部210から下方へ延びており、下端から中心線CL1側へ突出する突出部211aを備える。吊具201は、一対の爪部211を中心線CL1側へ近づけるように閉じることで、突出部211aでスラブ240を挟み込むことで、当該スラブ240を掴む。
【0054】
検出部208は、吊具201の爪部211に設けられる。カメラ31及び反射部材32は、本体部210の上面に設けられる。カメラ31は、反射部材32に対して水平方向にずれた位置に配置される。ここでは、カメラ31は、本体部210の上面に配置され、反射部材32は本体部210の端部からはみ出る位置に配置される。これにより、カメラ31は、スラブ240から遠ざかるように配置される。吊具201がスラブ240を設置場所に設置するときは、カメラ31は、反射部材32を介して、地上のマーカー50の画像を取得する。このように、カメラ31がスラブ240から遠い位置に配置される場合であっても、スラブ240付近のマーカー50を撮像することができる。これにより、カメラ31がスラブ240から受ける熱などの影響を低減することができる。
【0055】
上述の実施形態及び変形例では、カメラに対して一つの反射部材が設けられていた。これに代えて、カメラに対して二つ以上の反射部材を用いて光学系を組んでもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…吊具、31…カメラ(撮像部)、32…反射部材、23…位置合わせ部、26…表示部、100…クレーン。