(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】ジャバラ構造及び自走式振動コンベア
(51)【国際特許分類】
B65G 69/18 20060101AFI20230512BHJP
B65G 65/30 20060101ALI20230512BHJP
B65G 27/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
B65G69/18
B65G65/30 B
B65G27/00
(21)【出願番号】P 2019047412
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506000128
【氏名又は名称】日鉄環境エネルギーソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】戸高 光正
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-178730(JP,U)
【文献】特開昭58-006842(JP,A)
【文献】特開2001-139128(JP,A)
【文献】実開昭63-084034(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 69/18
B65G 65/30
B65G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャバラの一端を固定体に対して固定的に接合し、ジャバラの他端を当該ジャバラの中心軸方向に交差する方向に移動可能な移動体に対して切り離し自在に接合するジャバラ構造であって、
前記ジャバラの他端と前記移動体とが接合する接合位置では、前記ジャバラの他端側又は前記移動体側に設けた磁石による磁力に基づく接合相手との間に作用する互いに引き付ける力(以下「磁石による接合力」という。)を利用して両者を密着させ、前記移動体を前記接合位置から移動させるときに前記磁石による接合力に抗してジャバラを縮めて両者を切り離す
脱着機構を備え、
前記脱着機構は、前記ジャバラの脱着用に新たな駆動源なしに前記移動体の移動動作を利用して前記ジャバラの脱着を行う、ジャバラ構造。
【請求項2】
ジャバラの一端を固定体に対して固定的に接合し、ジャバラの他端を当該ジャバラの中心軸方向に交差する方向に移動可能な移動体に対して切り離し自在に接合するジャバラ構造であって、
前記ジャバラの他端と前記移動体とが接合する接合位置では、前記ジャバラの他端側又は前記移動体側に設けた磁石による磁力に基づく接合相手との間に作用する互いに引き付ける力(以下「磁石による接合力」という。)を利用して両者を密着させ、前記移動体を前記接合位置から移動させるときに前記磁石による接合力に抗してジャバラを縮めて両者を切り離す脱着機構として、前記移動体の移動方向に直交する方向における前記ジャバラの他端側の両側部にそれぞれ前記移動体の移動方向に転動する移動車輪を設けるとともに、前記移動体側に前記移動車輪用のレールを設け、
前記接合位置以外では、前記移動車輪が前記磁石による接合力に抗して前記レールのレール面に乗り上げることによりジャバラを縮めて前記ジャバラの他端と前記移動体との接合が切り離されるとともに、前記ジャバラの他端と前記移動体との間の隙間を保持したまま前記移動体が移動可能であり、
前記接合位置では、前記移動車輪が前記レールから外れ、前記磁石による接合力により前記ジャバラの他端と前記移動体とが接合する
、ジャバラ構造。
【請求項3】
前記磁石を前記移動車輪側に設けるとともに、前記レールを軟磁性体である機械構造用炭素鋼とし、
前記接合位置では、前記移動車輪が前記レールから外れ、前記磁石による接合力により前記ジャバラの他端と前記移動体とが接合するとともに、前記移動車輪側に設けた磁石と前記レールの距離が近接することにより前記磁石による接合力が大きくなる、請求項2に記載のジャバラ構造。
【請求項4】
前記移動車輪は、前記ジャバラの他端側の両側部にそれぞれ連結したブラケットを介して、前輪と後輪の片側2輪構造とし、それぞれの両輪は車輪回転軸方向にオフセットされて異なるレール面を転動し、前記接合位置では、同時に両輪がそれぞれのレールから外れるようレールの端面位置を変えている、請求項2又は3に記載のジャバラ構造。
【請求項5】
粉粒体を水平移送するトラフが密閉構造であるとともに水平方向に移動可能であり、かつ請求項2から4のいずれか一項に記載のジャバラ構造を備える自走式振動コンベアであって、
前記トラフの入口部に、ジャバラの他端を切り離し自在に接合しており、
粉粒体の移送時には、前記ジャバラの他端は前記磁石による接合力により前記トラフの入口部と密着し、
前記トラフの移動時には、前記移動車輪が前記磁石による接合力に抗して前記トラフの両側部に設けたレールのレール面に乗り上げることによりジャバラを縮めて前記ジャバラの他端と前記トラフの入口部との接合が切り離される、自走式振動コンベア。
【請求項6】
前記ジャバラの他端側に、前記トラフの移動時に前記トラフの入口部を閉止可能な閉止シートを備える、請求項5に記載の自走式振動コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャバラの一端を固定体に対して固定的に接合し、ジャバラの他端を当該ジャバラの中心軸方向に交差する方向に移動可能な移動体に対して切り離し自在に接合するジャバラ構造と、そのジャバラ構造を備える自走式振動コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体を水平移送するトラフを備える振動コンベアでは、通常、発塵防止のためトラフを密閉構造とし、そのトラフの入口部はジャバラを介して粉粒体の供給元に接続されている(例えば特許文献1)。
【0003】
ところが、排出先の条件でトラフを退避させる必要のある自走式振動コンベアにおいては、例えば、
図5に示すような受入バケット方式では、定期的にバケット2を鉛直方向に移動させる必要があり、その移動の際にバケット2内に貫入したトラフ1が干渉するため、このトラフ1を退避させる必要がある。
【0004】
このようにトラフ1を退避させる場合であっても、トラフ1の入口部へ粉粒体を供給する供給元(供給管7)の位置は通常変えられないため、少なくともトラフ1の移動範囲はオープントラフとなる。移送する粉粒体によってはこのオープントラフとなった部分から発塵するため、
図5に示しているように、トラフ1の移動範囲全体を固定集塵カバー6で覆い強力に集塵をかける必要がある。
しかしながら振動コンベアにおいて、トラフ1と固定集塵カバー6との間にはトラフ1の振動を妨害しない隙間が必要で、かつトラフ1と固定集塵カバー6との間で形成される空間部分では、トラフ1の振動によりアコーディオンのように容積変化が発生し、この隙間を通じてトラフ1内の空気が粉塵を伴って出入りする。
このように、固定集塵カバー6による集塵効果には限界があり、周囲を汚染するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、例えばトラフを退避させる必要のある自走式振動コンベアにおいて、粉粒体の移送時にはトラフを密閉トラフにでき、トラフの移動時にはトラフの入口部との接合を切り離すことのできるジャバラ構造と、そのジャバラ構造を備える自走式振動コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示すジャバラ構造及び自走式振動コンベアが提供される。
1.
ジャバラの一端を固定体に対して固定的に接合し、ジャバラの他端を当該ジャバラの中心軸方向に交差する方向に移動可能な移動体に対して切り離し自在に接合するジャバラ構造であって、
前記ジャバラの他端と前記移動体とが接合する接合位置では、前記ジャバラの他端側又は前記移動体側に設けた磁石による磁力に基づく接合相手との間に作用する互いに引き付ける力(以下「磁石による接合力」という。)を利用して両者を密着させ、前記移動体を前記接合位置から移動させるときに前記磁石による接合力に抗してジャバラを縮めて両者を切り離す脱着機構を備え、
前記脱着機構は、前記ジャバラの脱着用に新たな駆動源なしに前記移動体の移動動作を利用して前記ジャバラの脱着を行う、ジャバラ構造。
2.
ジャバラの一端を固定体に対して固定的に接合し、ジャバラの他端を当該ジャバラの中心軸方向に交差する方向に移動可能な移動体に対して切り離し自在に接合するジャバラ構造であって、
前記ジャバラの他端と前記移動体とが接合する接合位置では、前記ジャバラの他端側又は前記移動体側に設けた磁石による磁力に基づく接合相手との間に作用する互いに引き付ける力(以下「磁石による接合力」という。)を利用して両者を密着させ、前記移動体を前記接合位置から移動させるときに前記磁石による接合力に抗してジャバラを縮めて両者を切り離す脱着機構として、前記移動体の移動方向に直交する方向における前記ジャバラの他端側の両側部にそれぞれ前記移動体の移動方向に転動する移動車輪を設けるとともに、前記移動体側に前記移動車輪用のレールを設け、
前記接合位置以外では、前記移動車輪が前記磁石による接合力に抗して前記レールのレール面に乗り上げることによりジャバラを縮めて前記ジャバラの他端と前記移動体との接合が切り離されるとともに、前記ジャバラの他端と前記移動体との間の隙間を保持したまま前記移動体が移動可能であり、
前記接合位置では、前記移動車輪が前記レールから外れ、前記磁石による接合力により前記ジャバラの他端と前記移動体とが接合する、ジャバラ構造。
3.
前記磁石を前記移動車輪側に設けるとともに、前記レールを軟磁性体である機械構造用炭素鋼とし、
前記接合位置では、前記移動車輪が前記レールから外れ、前記磁石による接合力により前記ジャバラの他端と前記移動体とが接合するとともに、前記移動車輪側に設けた磁石と前記レールの距離が近接することにより前記磁石による接合力が大きくなる、前記2に記載のジャバラ構造。
4.
前記移動車輪は、前記ジャバラの他端側の両側部にそれぞれ連結したブラケットを介して、前輪と後輪の片側2輪構造とし、それぞれの両輪は車輪回転軸方向にオフセットされて異なるレール面を転動し、前記接合位置では、同時に両輪がそれぞれのレールから外れるようレールの端面位置を変えている、前記2又は前記3に記載のジャバラ構造。
5.
粉粒体を水平移送するトラフが密閉構造であるとともに水平方向に移動可能であり、かつ前記2から前記4のいずれか一項に記載のジャバラ構造を備える自走式振動コンベアであって、
前記トラフの入口部に、ジャバラの他端を切り離し自在に接合しており、
粉粒体の移送時には、前記ジャバラの他端は前記磁石による接合力により前記トラフの入口部と密着し、
前記トラフの移動時には、前記移動車輪が前記磁石による接合力に抗して前記トラフの両側部に設けたレールのレール面に乗り上げることによりジャバラを縮めて前記ジャバラの他端と前記トラフの入口部との接合が切り離される、自走式振動コンベア。
6.
前記ジャバラの他端側に、前記トラフの移動時に前記トラフの入口部を閉止可能な閉止シートを備える、前記5に記載の自走式振動コンベア。
【発明の効果】
【0008】
本発明のジャバラ構造は前述の脱着機構を備えることで、ジャバラの他端と移動体とが接合する接合位置では、磁石による接合力を利用して両者を密着させることができ、移動体の移動時には両者を切り離すことができる。しかも、本発明のジャバラ構造において脱着機構は、移動体の移動時にジャバラを縮めることにより両者を切り離すようにしているから、両者を切り離す際にジャバラには剪断方向(移動体の移動方向)の力が実質的に作用しないので、両者を切り離す際にジャバラが破損することを防止できる。
【0009】
そして、本発明の自走式振動コンベアは前述のジャバラ構造を備えることで、粉粒体の移送時にはジャバラの他端がトラフの入口部と密着して密閉トラフにでき、かつトラフの移動時には両者を切り離すことができる。これにより、トラフを退避させる必要のある自走式振動コンベアにおいて、従来の問題であった周囲を汚染するという問題を軽減ないし解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態であるジャバラ構造を備える自走式振動コンベアの全体構成図で、(a)は粉粒体の移送時、(b)はトラフの退避時を示す。
【
図2】本発明の一実施形態であるジャバラ構造の全体構成図で、(a)はジャバラの他端をトラフの入口部に接合した状態(以下「接合状態」という。)、(b)は両者を切り離した状態(以下「離脱状態」という。)を示す。
【
図3】
図2のA-A断面図で、(a)は
図2(a)の接合状態、(b)は
図2(b)の離脱状態を示す。
【
図4】本発明の他の実施形態である自走式振動コンベアの要部を示す斜視図で、トラフの移動時にトラフの入口部を閉止可能な閉止シートを備える例を示す。
【
図5】固定集塵カバーを備える従来の自走式振動コンベアの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、本発明の一実施形態であるジャバラ構造を備える自走式振動コンベアの全体構成を示している。
図1(a)は、振動コンベア本体であるトラフ1が粉粒体を移送している粉粒体の移送時を示しており、粉粒体の排出先であるトラフ1の先端部が鉛直方向に移動可能なバケット2内に貫入し、トラフ1の入口部には粉粒体の供給元である供給管7からジャバラ3を通じて粉粒体が供給されている。また、このトラフ1は、密閉蓋1aによって覆われて密閉構造になっており、粉粒体の移送時には
図1(a)に示すように密閉トラフになる。
【0012】
ここで、本実施形態においてトラフ1は、移動シリンダ1bによりジャバラ3の中心軸方向に直交する水平方向に移動可能である。具体的にはトラフ1は、トラフ移動用車輪1cがトラフ移動用レール1d上を転動することにより水平方向に移動可能である。また、トラフ1は加振装置1eにより振動するようになっており、このトラフ1の振動により、トラフ1内の粉粒体が自走式でバケット2に向けて移送される。
また、本実施形態においてジャバラ3の一端は固定体である供給管7に対して固定的に接合されており、ジャバラ3の他端は移動体であるトラフ1の入口部に対して切り離し自在に接合されている。
【0013】
図1(b)は、粉粒体を積載したバケット2を上昇させるため、トラフ1の振動を停止し、移動シリンダ1bによりトラフ1を後退させた状態、すなわちトラフ1の退避時を示しており、トラフ1の先端部がバケット2内から抜け出ており、ジャバラ3の他端がトラフ1の入口部から切り離されている。
なお、バケット2においてトラフ1の先端部が貫入する部分は、上下左右の4枚のゴム板で構成されており、トラフ1の先端部が貫入している
図1(a)の状態、トラフ1の先端部が抜け出ている
図1(b)の状態のいずれにおいても、バケット2の密閉性は確保されるようになっている。
【0014】
次に、
図1に示したジャバラ3を含む本実施形態のジャバラ構造の構成及び動作について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0015】
図2(a)は、ジャバラ3の他端である下フランジ部3aが、トラフ1の入口部であるジャバラ接合用開口部1f周囲のジャバラ接合用トラフ座1g(
図3(a)参照)と密着して接合した接合状態(
図1(a)の状態)を示している。この接合状態で、トラフ1を振動させながら粉粒体を移送する。
一方、
図2(b)は、トラフ1の振動を停止し、トラフ1を後退させた
図1(b)の状態を示している。なお、
図2(b)は、トラフ1を後退限まで後退させた状態を示している。この後退限までのストロークは例えば800mm程度である。
【0016】
ジャバラ3には、下フランジ部3aの両側部(トラフ1の移動方向に直交する方向における両側部)にブラケット4が対向する位置関係で取り付けられ、それぞれのブラケット4には前輪4a-1と後輪4a-2の2輪の移動車輪が設けられている。一方、トラフ1の両側部にはトラフ1の移動方向に沿ってレール1hが設けられ、移動車輪(前輪4a-1と後輪4a-2)は、ジャバラ3の下フランジ部3aとトラフ1のジャバラ接合用トラフ座1gとが接合する接合位置以外では、このレール1hのレール面上をトラフ1の移動方向に転動する。
【0017】
本実施形態において前輪4a-1と後輪4a-2は、車輪回転軸方向にオフセットしており、レール1hのレール面上を異なる軌道で転動する。そして、
図2(a)に示すように、接合位置では両輪4a-1,4a-2が同時にレール1hから外れるようにホイルベースに合わせてレール1hの端面位置を変えている。これにより、接合位置では前述のとおり両輪4a-1,4a-2が同時にレール1hから外れてジャバラ3が伸びるとともに、この接合位置からトラフ1を後退させると、両輪4a-1,4a-2が同時にレール1hに乗り上げてジャバラ3が縮むことになる。このように本実施形態では、両輪4a-1,4a-2が同時に動作することから、ジャバラ3の下フランジ3aは傾くことなく水平を維持したまま上下できる。
【0018】
図2(a)に示す接合位置では前述のとおり両輪4a-1,4a-2がレール1hから外れているが、この断面状態を示すのが
図3(a)である。
図3(a)を参照すると、ジャバラ3の下フランジ部3aが、トラフ1の密閉蓋1aに設けられているジャバラ接合用開口部1f周囲のジャバラ接合用トラフ座1gと密着して接合し、トラフ1は密閉されている。ジャバラ接合用トラフ座1gの材質は、密閉蓋1aへの固定性、及び下フランジ3aとの密着シール性を考慮し可撓性のあるゴム等が好ましい。なお、
図3中の符号3bはジャバラ3の内筒を指している。
【0019】
また、ブラケット4の下面には磁石4bが取り付けられ、一般的な機械構造用炭素鋼等の軟磁性体からなるレール1hとの間に吸着力(磁石4bによる接合力)が発生する。レール1hと磁石4bとの間にはギャップδを有するが、前述の磁石4bによる接合力をより強くするためにギャップδは、ジャバラの接合状態において振動によるジャバラ接合用トラフ座1gの厚さ変化を考慮しても互いに接触しない程度にできる限り小さくすることが好ましく、例えば2~3mm程度とする。さらに、磁石4bの材質としてはネオジウム磁石等の強い磁力を発揮できる磁石が好ましい。
【0020】
このように本実施形態では、磁石4bによる接合力を利用して、ジャバラ3の下フランジ部3aとトラフ1の入口部(ジャバラ接合用トラフ座1g)との接合を強固にしている。このため、一般に振動数10Hz,振幅10~20mm程度となるトラフ1の激しい振動時であっても、このトラフ1の振動にジャバラ3の下フランジ部3aも追従して密着状態(接合状態)を維持できる。
【0021】
図2(a)に示す接合位置からトラフ1を後退させると、前述のとおり両輪4a-1,4a-2が同時にレール1hに乗り上げて、ジャバラ3の下フランジ部3aがブラケット4を介して持ち上げられジャバラ3が縮む。そうすると
図3(b)に示すように、ジャバラ3の下フランジ部3aが磁石4bによる接合力に抗してジャバラ接合用トラフ座1gから切り離され、両者の間にはギャップαが確保される。これにより両者は互いに摺動することなく移動可能となる。なお、ギャップαは例えば20mm程度とする。
【0022】
以上のようなジャバラ構造の脱着機構によれば、ジャバラ3の脱着動作がトラフ1の移動動作を利用して行われ、新たな駆動源を必要とせず、ジャバラ3の脱着動作が可能となる。
したがって、このようなジャバラ構造(脱着機構)を備える振動コンベアによれば、粉粒体の移送時にはトラフ1を密閉トラフにでき、粉粒体の密閉移送が可能となる。また、トラフ1の退避時にはジャバラ3に他端とトラフ1の入口部との接合を切り離すことができるので、問題なくトラフ1を退避させることができる。
【0023】
ここで、
図2(b)に示すようにトラフ1を後退させた状態では、トラフ1のジャバラ接合用開口部1fが露出されるが、この状態ではトラフ1の振動を停止しており、粉粒体の流入、移送も停止しているため、振動による発塵は抑えられる。ただし、このジャバラ接合用開口部1fからは、トラフ1内の浮遊粉塵の自然拡散による漏出も想定される。
【0024】
このようなジャバラ接合用開口部1fからの粉塵の漏出を防止するためには、トラフ1の移動動作に連動する閉止シートを設けることができる。
その一実施形態を
図4に示す。
図4に実施形態では、ジャバラ3の下フランジ部3aに柔軟性を有する樹脂製の閉止シート5を設け、トラフ1が
図4(a)の接合位置から
図4(b)の退避位置まで移動するときに、閉止シート5がジャバラ接合用開口部1fを閉止するようになっている。
【0025】
以下に、以上で説明した本実施形態の変形例を例示する。
(1)本実施形態では、ジャバラ3の中心軸方向を鉛直方向とし、移動体であるトラフ1の移動方向をジャバラ3の中心軸方向に直交する水平方向としたが、トラフ1の移動方向は、ジャバラ3の中心軸方向に直交する方向には限定されず、ジャバラ3の中心軸方向に交差する方向であればよい。また、ジャバラ3の中心軸方向を水平方向とし、トラフ1の移動方向をジャバラ3の中心軸方向に直交する鉛直方向とすることもできる。
【0026】
(2)本実施形態では、磁石4bをジャバラ3の他端側であるブラケット4の下面に設けたが、磁石4bはレール1h側に設けることもできる。ただし、磁石4bはジャバラ3の他端側に設けることが好ましい。磁石4bをジャバラ3の他端側に設けると、軟磁性体よりなるレール1hとの間で常に磁石4bによる接合力が得られるからである。すなわち、磁石4bをジャバラ3の他端側に設けると、
図3(a)に示す接合位置だけでなく、
図3(b)に示す接合位置以外の位置においても磁石4bによる所定の接合力が得られるから、接合位置からトラフ1を退避させる際にジャバラ3の姿勢を安定させることができる。また、先の変形例のようにジャバラ3の中心軸方向を水平方向とし、トラフ1の移動方向をジャバラ3の中心軸方向に直交する鉛直方向とした場合に、接合位置以外の位置でジャバラ3の姿勢を保持する点からも、磁石4bはジャバラ3の他端側に設けることが好ましい。
なお、磁石4bをジャバラ3の他端側に設ける場合であっても、その設置位置はブラケット4の下面には限定されず、例えば、前輪4a-1と後輪4a-2との間に設けることもできる。
【0027】
(3)本実施形態では、脱着機構を移動車輪(前輪4a-1,後輪4a-2)とレール1hの組合せで構成したが、本発明において脱着機構は本実施形態には限定されない。例えば、トラフ1を接合位置から移動させるときにジャバラ3を吊り上げることでジャバラ3を縮めて両者を切り離す機構とすることもできる。また、トラフ1を接合位置から移動させるときにジャバラ3との接合部分に楔を進入させるなどしてジャバラ3を持ち上げて縮める機構とすることもできる。
【0028】
(4)本実施形態では、本発明のジャバラ構造を自走式振動コンベアに適用したが、本発明のジャバラ構造は自走式振動コンベア以外の機器にも適用可能である。すなわち、本発明のジャバラ構造は、ジャバラの一端を固定体に対して固定的に接合し、ジャバラの他端を当該ジャバラの中心軸方向に交差する方向に移動可能な移動体に対して切り離し自在に接合する構成を利用する機器であれば、自走式振動コンベア以外の機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 トラフ(移動体)
1a 密閉蓋
1b 移動シリンダ
1c トラフ移動用車輪
1d トラフ移動用レール
1e 加振装置
1f ジャバラ接合用開口部
1g ジャバラ接合用トラフ座
1h レール
2 バケット
3 ジャバラ
3a 下フランジ部
3b 内筒
4 ブラケット
4a-1 前輪(移動車輪)
4a-2 後輪(移動車輪)
4b 磁石
5 閉止シート
6 固定集塵カバー
7 供給管(固定体)