IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社国際電気通信基礎技術研究所の特許一覧

特許7278120無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム
<>
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図1
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図2
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図3
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図4
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図5
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図6
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図7
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図8
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図9
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図10
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図11
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図12
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図13
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図14
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図15
  • 特許-無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20090101AFI20230512BHJP
   H04W 72/54 20230101ALI20230512BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20230512BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20230512BHJP
【FI】
H04W74/08
H04W72/54 110
H04W72/0453
H04W84/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019052260
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020155915
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年2月11日に、The 1st International Conference on Artificial Intelligence in Information and Communication(ICAIIC 2019)(2019 IEEE)(情報通信における人工知能についての第1回国際会議)にて公表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「複数周波数帯域の同時利用による周波数利用効率向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一人
(72)【発明者】
【氏名】江頭 直人
(72)【発明者】
【氏名】ウェバー ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】臼井 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義規
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】江頭直人、矢野一人、ウェバージュリアン、臼井誠、周東雅之、杉谷敦彦、雨澤泰治、鈴木義規,3周波数帯同時伝送無線LANの試作装置開発および伝送実験評価,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.118 No.474,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2019年02月27日,第118巻
【文献】矢野一人,複数周波数帯利用無線LANの研究開発,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.118 No.254,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2018年10月11日,第118巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯域および/または複数のチャネルを用いて無線通信を行う無線通信装置であって、
前記複数のチャネルのうちの1つのチャネルが送信権を獲得したときの時刻に基づいて設定される開始時刻からのチャネルのアイドル状態の継続時間を予測する予測部と、
送信権を獲得したチャネルについて、前記予測部により予測されたアイドル状態の継続時間を最大待機期間に設定し、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあるか否かを判定する判定部と、
当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあると判定された場合、当該チャネルと、送信権を獲得したチャネルとを用いて、データを送信する送信部と、
を備え、
前記予測部は、学習処理により構築される学習モデルによる予測処理を実行するものであり、
前記予測部は、自装置が送信しているときに学習処理を実行しない、
無線通信装置。
【請求項2】
複数の周波数帯域および/または複数のチャネルを用いて無線通信を行う無線通信装置であって、
前記複数のチャネルのうちの1つのチャネルが送信権を獲得したときの時刻に基づいて設定される開始時刻からのチャネルのアイドル状態の継続時間を予測する予測部と、
送信権を獲得したチャネルについて、前記予測部により予測されたアイドル状態の継続時間を最大待機期間に設定し、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあるか否かを判定する判定部と、
当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあると判定された場合、当該チャネルと、送信権を獲得したチャネルとを用いて、データを送信する送信部と、
を備え、
前記予測部は、学習処理により構築される学習モデルによる予測処理を実行するものであり、
前記予測部は、学習処理を実行している期間において、自装置が外部に送信したことを検知した場合、当該学習処理により取得されたパラメータによる前記学習モデルの更新処理を行わない、
無線通信装置。
【請求項3】
複数の周波数帯域および/または複数のチャネルを用いて無線通信を行う無線通信装置であって、
前記複数のチャネルのうちの1つのチャネルが送信権を獲得したときの時刻に基づいて設定される開始時刻からのチャネルのアイドル状態の継続時間を予測する予測部と、
送信権を獲得したチャネルについて、前記予測部により予測されたアイドル状態の継続時間を最大待機期間に設定し、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあるか否かを判定する判定部と、
当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあると判定された場合、当該チャネルと、送信権を獲得したチャネルとを用いて、データを送信する送信部と、
前記無線通信装置において学習処理を実行させるモードである学習モードと、前記無線通信装置において予測処理を実行させるモードである予測モードとを設定する制御部と、
を備え、
前記予測部は、前記学習処理により構築される学習モデルによる前記予測処理を実行するものであり、
前記予測部は、自装置が送信しているときに学習処理を実行せず、
前記送信部は、前記制御部により前記学習モードに設定されているとき、外部への送信を行わない、
無線通信装置。
【請求項4】
学習モデルは、PNNによるモデルである、
請求項1から3のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項5】
予測部と、判定部と、送信部とを備える無線通信装置を用いて実行される無線通信方法であり、複数の周波数帯域および/または複数のチャネルを用いて無線通信を行うための無線通信方法であって、
前記予測部が、前記複数のチャネルのうちの1つのチャネルが送信権を獲得したときの時刻に基づいて設定される開始時刻からのチャネルのアイドル状態の継続時間を予測する予測ステップと、
前記判定部が、送信権を獲得したチャネルについて、前記予測ステップにより予測されたアイドル状態の継続時間を最大待機期間に設定し、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあるか否かを判定する判定ステップと、
前記送信部が、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあると判定された場合、当該チャネルと、送信権を獲得したチャネルとを用いて、データを送信する送信ステップと、
を備え、
前記予測部は、学習処理により構築される学習モデルによる予測処理を実行するものであり、
前記予測ステップにおいて、前記無線通信装置が送信しているときに学習処理を実行しない、
無線通信方法。
【請求項6】
予測部と、判定部と、送信部とを備える無線通信装置を用いて実行される無線通信方法であり、複数の周波数帯域および/または複数のチャネルを用いて無線通信を行うための無線通信方法であって、
前記予測部が、前記複数のチャネルのうちの1つのチャネルが送信権を獲得したときの時刻に基づいて設定される開始時刻からのチャネルのアイドル状態の継続時間を予測する予測ステップと、
前記判定部が、送信権を獲得したチャネルについて、前記予測ステップにより予測されたアイドル状態の継続時間を最大待機期間に設定し、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあるか否かを判定する判定ステップと、
前記送信部が、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあると判定された場合、当該チャネルと、送信権を獲得したチャネルとを用いて、データを送信する送信ステップと、
を備え、
前記予測部は、学習処理により構築される学習モデルによる予測処理を実行するものであり、
前記予測ステップにおいて、学習処理を実行している期間において、自装置が外部に送信したことを検知した場合、当該学習処理により取得されたパラメータによる前記学習モデルの更新処理を行わない、
無線通信方法。
【請求項7】
予測部と、判定部と、送信部とを備える無線通信装置を用いて実行される無線通信方法であり、複数の周波数帯域および/または複数のチャネルを用いて無線通信を行うための無線通信方法であって、
前記予測部が、前記複数のチャネルのうちの1つのチャネルが送信権を獲得したときの時刻に基づいて設定される開始時刻からのチャネルのアイドル状態の継続時間を予測する予測ステップと、
前記判定部が、送信権を獲得したチャネルについて、前記予測ステップにより予測されたアイドル状態の継続時間を最大待機期間に設定し、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあるか否かを判定する判定ステップと、
前記送信部が、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあると判定された場合、当該チャネルと、送信権を獲得したチャネルとを用いて、データを送信する送信ステップと、
前記無線通信装置において学習処理を実行させるモードである学習モードと、前記無線通信装置において予測処理を実行させるモードである予測モードとを設定するモード制御ステップと、
を備え、
前記予測部は、前記学習処理により構築される学習モデルによる前記予測処理を実行するものであり、
前記予測ステップにおいて、前記無線通信装置が送信しているときに学習処理を実行せず、
前記送信ステップにおいて、前記制御ステップにより前記学習モードに設定されているとき、外部への送信を行わない、
無線通信方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の無線通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN等の無線通信のトラヒックは増加の一途を辿っており、周波数利用効率の向上は急務である。実際の無線通信環境(例えば、無線LANの環境)において、混雑している帯域、無線チャネル(以降、単に「チャネル」という)が存在する一方で、未使用のリソースが様々な帯域やチャネルに散在している。無線通信の需要増加に応えるためには、未使用リソースの活用が不可欠である。
【0003】
無線通信環境を改善するために、(1)無線通信機器の送信機会を増加させることや、(2)無線通信の伝送速度を向上させることが重要となる。
【0004】
例えば、無線通信システムにおいて、複数の周波数帯・チャネルを同時にキャリアセンスし、散在する未使用リソースを検出する。そして、検出した未使用リソースを効率良く利用することで、送信機会を増加させることができる。また、無線通信システムにおいて、検出した未使用リソースを束ねて同時に利用することで、無線通信の伝送速度を向上させることが可能となる。
【0005】
例えば、特許文献1、2には、無線通信の伝送速度を向上させるために、使用周波数帯域の異なる複数の無線LAN規格(例えば、2.4GHz帯無線LAN規格と5GHz帯無線LAN規格)を選択あるいは並行利用するヘテロジニアス型コグニティブ無線技術の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-211433号公報
【文献】特開2013-187561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の技術(特許文献1、2に開示されている技術)では、複数のリソースを同時に利用し同時並行に通信する場合、どのようにリソースの分配を行い、送信タイミングをどのようにすべきかについては、明確にされておらず、リソースの配分、送信タイミングを適切に決定することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、未使用リソースを効率良く利用することで無線通信機器の送信機会を増加させるとともに、未使用リソースを束ねて同時に利用することで無線通信の伝送速度を向上させる無線通信装置、無線通信方法、および、プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明は、複数の周波数帯域および/または複数のチャネルを用いて無線通信を行う無線通信装置であって、予測部と、判定部と、送信部と、を備える。
【0010】
予測部は、複数のチャネルのうちの1つのチャネルが送信権を獲得したときの時刻に基づいて設定される開始時刻からのチャネルのアイドル状態の継続時間を予測する。
【0011】
判定部は、送信権を獲得したチャネルについて、予測部により予測されたアイドル状態の継続時間を最大待機期間に設定し、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあるか否かを判定する。
【0012】
送信部は、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあると判定された場合、当該チャネルと、送信権を獲得したチャネルとを用いて、データを送信する。
【0013】
この無線通信装置では、予測部による予測処理によって取得された予測パターンから、複数の周波数帯域、複数のチャネルのアイドル状態の継続時間を予測する。そして、この無線通信装置では、送信権を獲得したチャネルについてアイドル状態の継続時間を上記予測部により予測し、予測したアイドル状態の継続時間に基づいて、最大待機期間を特定する。そして、この無線通信装置では、最大待機期間内に、送信権を獲得できる他のチャネルの有無を判定し、送信権を獲得できる他のチャネルがあれば、当該他のチャネルと最初に送信権を獲得したチャネルとを束ねて利用した同時並行通信を行う。
【0014】
このように、この無線通信装置では、未使用リソースを効率良く利用することで無線通信機器の送信機会を増加させるとともに、未使用リソースを束ねて同時に利用することで無線通信の伝送速度を向上させることができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明であって、予測部は、学習処理により構築される学習モデルによる予測処理を実行するものである。予測部は、自装置が送信しているときに学習処理を実行しない。
【0016】
これにより、この無線通信装置では、予測部の学習処理において、自装置からの送信データがないときの学習データによる更新のみを行うことで、高精度に予測できる予測部(予測モデル)を構築することができる。さらに、この無線通信装置では、上記処理により構築した予測モデルを用いた高精度な予測処理によって取得された予測パターンから、複数の周波数帯域、複数のチャネルのアイドル状態の継続時間を高精度に予測することができる。
【0017】
第3の発明は、第1の発明であって、予測部は、学習処理により構築される学習モデルによる予測処理を実行するものである。予測部は、学習処理を実行している期間において、自装置が外部に送信したことを検知した場合、当該学習処理により取得されたパラメータによる学習モデルの更新処理を行わない。
【0018】
これにより、この無線通信装置では、予測部の学習処理において、自装置からの送信データがないときの学習データによる更新のみを行うことで、高精度に予測できる予測部(予測モデル)を構築することができる。さらに、この無線通信装置では、上記処理により構築した予測モデルを用いた高精度な予測処理によって取得された予測パターンから、複数の周波数帯域、複数のチャネルのアイドル状態の継続時間を高精度に予測することができる。
【0019】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明であって、学習モデルは、PNNによるモデルである。
【0020】
これにより、この無線通信装置では、学習モデルをPNNによるモデルとすることができる。
【0021】
第5の発明は、複数の周波数帯域および/または複数のチャネルを用いて無線通信を行うための無線通信方法であって、予測ステップと、判定ステップと、送信ステップと、を備える。
【0022】
予測ステップは、複数のチャネルのうちの1つのチャネルが送信権を獲得したときの時刻に基づいて設定される開始時刻からのチャネルのアイドル状態の継続時間を予測する。
【0023】
判定ステップは、送信権を獲得したチャネルについて、予測ステップにより予測されたアイドル状態の継続時間を最大待機期間に設定し、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあるか否かを判定する。
【0024】
送信ステップは、当該最大待機期間内に送信権を獲得できる、送信権を獲得したチャネル以外のチャネルがあると判定された場合、当該チャネルと、送信権を獲得したチャネルとを用いて、データを送信する。
【0025】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏する無線通信方法を実現することができる。
【0026】
第6の発明は、第5の発明である無線通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0027】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏する無線通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、未使用リソースを効率良く利用することで無線通信機器の送信機会を増加させるとともに、未使用リソースを束ねて同時に利用することで無線通信の伝送速度を向上させる無線通信装置、無線通信方法、および、プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る無線通信装置100の概略構成図。
図2】第1実施形態に係る無線通信装置100の予測判定処理部6の概略構成図。
図3】第1実施形態に係る無線通信装置100の予測部63の概略構成図。
図4】予測処理部635を確率的ニューラルネットワークPNNを用いて構成する場合の予測処理部635の概略構成図。
図5】第1実施形態に係る無線通信装置100のパラメータ調整部636の概略構成図。
図6】チャネルのビジー状態/アイドル状態を示す時系列のデータXiについて説明するための図。
図7】シリアルデータDs1から予測処理用データData_Pと、目標データData_Tとを生成する方法を説明するための図。
図8】入力データx(データData_P)と、各クラスの放射基底関数データgcとの関係を示すグラフである。
図9】入力データx(データData_P)と、各クラスの放射基底関数データgcとの関係を示すグラフであり、予測処理部635での追加処理を説明するための図。
図10】入力データx(データData_P)と、各クラスの放射基底関数データgcとの関係を示すグラフであり、予測処理部635での置換処理を説明するための図。
図11】無線通信装置100から送信された通信データと、データD_sentと、学習期間とを示すタイミングチャート。
図12】モードと、無線通信装置100から送信された通信データと、学習期間とを示すタイミングチャート。
図13】無線通信装置100におけるデータ送信処理を説明するための図。
図14】無線通信装置100におけるデータ送信処理を説明するための図。
図15】無線通信装置100におけるデータ送信処理のフローチャート。
図16】CPUバス構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0031】
<1.1:無線通信装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る無線通信装置100の概略構成図である。
【0032】
図2は、第1実施形態に係る無線通信装置100の予測判定処理部6の概略構成図である。
【0033】
図3は、第1実施形態に係る無線通信装置100の予測部63の概略構成図である。
【0034】
図4は、予測処理部635を確率的ニューラルネットワークPNNを用いて構成する場合の予測処理部635の概略構成図である。
【0035】
図5は、第1実施形態に係る無線通信装置100のパラメータ調整部636の概略構成図である。
【0036】
無線通信装置100は、図1に示すように、データ分離部1と、送信制御部2と、N個(N:自然数)の送信部である第1送信部Tx1~第N送信部TxNと、チャネル利用状況観測部3と、受信制御部4と、N個(N:自然数)の受信部である第1受信部Rx1~第N送信部RxNと、データ統合部5と、予測判定処理部6と、を備える。
【0037】
データ分離部1は、データDinと、送信制御部2から出力される制御信号Ctl_divとを入力する。データ分離部1は、制御信号Ctl_divに従い、データDinに対してデータ分割処理、または、データ選択処理を行う。
(1)データ分割処理を行う場合、データ分離部1は、制御信号Ctl_divに従い、第1送信部Tx1~第N送信部TxNのそれぞれに出力するデータD1~D1を生成し、生成したデータD1~D1を、それぞれ、第1送信部Tx1~第N送信部TxNに出力する。なお、データ分離部1は、第1送信部Tx1~第N送信部TxNのいずれか2つ以上に出力するデータを生成し、生成したデータを該当する第1送信部Tx1~第N送信部TxNのいずれか2つ以上に出力してもよい。なお、この場合、データ分割処理のもとのデータを特定するために、分割された各データに、ヘッダ情報(分割したデータを元通りに統合するために必要な情報(例えば、分割元を特定するための情報)を付加してもよい。
(2)データ選択処理を行う場合、データ分離部1は、制御信号Ctl_divに従い、第1送信部Tx1~第N送信部TxNのいずれか1つを選択し、選択した送信部に出力するデータ(データD1~D1のいずれか1つ)を生成し、生成したデータを該当する送信部(選択した送信部)に出力する。
【0038】
送信制御部2は、無線通信装置100における送信処理の制御を行う機能部であり、無線通信装置100の各機能部を制御する制御部(不図示)から出力されるモード制御信号CTL_modeを入力する。送信制御部2は、データ分離部1を制御するための制御信号Ctl_divを生成し、データ分離部1に出力する。また、送信制御部2は、第1送信部Tx1~第N送信部TxNをそれぞれ制御するための制御信号Ctl_tx1~Ctl_txNを生成し、第1送信部Tx1~第N送信部TxNに出力する。なお、制御信号Ctl_txk(k:自然数、1≦k≦N)には、第k送信部Txkにおいて変調処理の処理対象とする、(1)使用周波数帯域(使用する周波数バンド(例えば、5GHz帯、2.4GHz帯、920MHz帯))を指定するデータSel_tx.bandと、(2)使用するチャネルを指定するデータSel_tx.chとを含んでいるものとする。使用周波数帯域が1つである場合、データSel_tx.bandの生成を省略しもよい。
【0039】
また、送信制御部2は、予測判定処理部6から出力されるデータD_rstを入力し、当該データD_rstに基づいて、制御信号Ctl_tx1~Ctl_txNの1または複数を生成し、生成した信号を、該当する第1送信部Tx1~第N送信部TxNの1または複数に出力する。
【0040】
また、送信制御部2は、無線通信装置100からデータ送信を行ったことを示すデータD_sentを生成し、生成したデータD_sentを予測判定処理部6に出力する。なお、データD_sentは、送信したデータ(フレーム)についての情報と、送信した時刻(タイミング)の情報とを含むものとする。
【0041】
第1送信部Tx1は、データ分離部1から出力されるデータD1と、送信制御部2から出力される制御信号Ctl_tx1とを入力する。第1送信部Tx1は、制御信号Ctl_tx1に従い、データD1に対して誤り訂正符号化処理、インターリーブ処理等を実行する。そして、第1送信部Tx1は、当該処理後のデータに対して、ベースバンド処理、RF処理を実行する。具体的には、第1送信部Tx1は、以下のように処理する。なお、訂正符号化処理、インターリーブ処理等は、データ分離部1の前段の処理部(不図示)において、実行されるものであってもよい。この場合、第1送信部Tx1は、データD1に対して、ベースバンド処理、RF処理を実行する。
【0042】
第1送信部Tx1は、制御信号Ctl_tx1、および、制御信号Ctl_tx1に含まれるSel_tx.band、および/または、Sel_tx.chに従い、誤り訂正符号化処理、インターリーブ処理等の処理後のデータ(このデータを「データD1’」と表記する)に対して、ベースバンド処理(OFDMのベースバンド処理)を実行する。つまり、第1送信部Tx1は、データD1’に対して、シリアル/パラレル変換、マッピング処理、逆FFT変換、ガードインターバル(GI)付加処理、D/A変換を行うことで、ベースバンドOFDM信号(この信号を「Sig1」と表記する)を取得する。なお、このとき、第1送信部Tx1は、(1)使用周波数帯域を、信号Sel_tx.bandにより指定されている使用周波数帯域とし、(2)使用チャネルを、信号Sel_tx.chにより指定されている使用チャネルとして、上記処理を行う。
【0043】
そして、第1送信部Tx1は、取得したベースバンドOFDM信号Sig1に対してRF処理を実行する。具体的には、以下のようにして、RF処理が実行される。
【0044】
第1送信部Tx1は、制御信号Ctl_tx1、および、制御信号Ctl_tx1に含まれるSel_tx.band、および/または、Sel_tx.chに従い、ベースバンドOFDM信号Sig1に対して、送信用発振器(不図示)から出力される参照周波数信号fr_txを用いた直交変調処理、アップコンバート処理、電力増幅処理を実行することで、搬送帯域OFDM信号(この信号を「SigRF1」と表記する)を取得する。なお、第1送信部Tx1は、Sel_tx.bandで指定される使用周波数帯域、Sel_tx.chで指定される使用チャネルに基づいて、(必要であれば、周波数変換を行い)参照周波数信号fr_txを設定する。
【0045】
そして、第1送信部Tx1は、取得した搬送帯域OFDM信号SigRF1を送信用アンテナAnttx1に出力する。
【0046】
また、第1送信部Tx1は、チャネル利用状況観測部3と接続されており、チャネル利用状況観測部3からの指令D2tx1.reqにより、キャリアセンス、あるいは、チャネルセンスを実行し、その実行結果を示す信号D2tx1.resをチャネル利用状況観測部3に出力する。
【0047】
なお、第2送信部Tx2~第N送信部TxNは、第1送信部Tx1と同様の構成を有しており、第1送信部Tx1と同様の機能を実現する。
【0048】
送信用アンテナAnttx1は、外部へRF信号(搬送帯域OFDM信号)を送信するためのアンテナである。送信用アンテナAnttx1は、第1送信部Tx1からの搬送帯域OFDM信号SigRF1を入力し、搬送帯域OFDM信号SigRF1を外部に送信する。送信用アンテナAnttx1は、例えば、マルチバンドアンテナであり、無線通信装置100で使用する周波数帯域の無線信号を外部に送信できるアンテナである。
【0049】
チャネル利用状況観測部3は、各周波数帯(各周波数帯の中では1つ以上の無線チャネル)の利用状況(各無線チャネルの空き状況など)を観測するために、キャリアセンス、および/または、チャネルセンスを実行するための指令信号(第1送信部Tx1~第N送信部TxNへ出力する指令信号D2tx1.req~D2txN.req、第1受信部Rx1~第N受信部RxNへ出力する指令信号D2rx1.req~D2rxN.req)を生成する。そして、チャネル利用状況観測部3は、生成した指令信号を、第1送信部Tx1~第N送信部TxN、および/または、第1受信部Rx1~第N受信部RxNに出力することで、キャリアセンス、および/または、チャネルセンスを実行する。
【0050】
また、チャネル利用状況観測部3は、受信電力を取得するための指令信号(第1送信部Tx1~第N送信部TxNへ出力する指令信号D2tx1.req~D2txN.req、第1受信部Rx1~第N受信部RxNへ出力する指令信号D2rx1.req~D2rxN.req)を、第1送信部Tx1~第N送信部TxN、および/または、第1受信部Rx1~第N受信部RxNに出力し、無線通信装置100の受信電力を取得する。また、取得した受信電力の値を所定の期間観測することで、無線リソース利用率(COR:channel occupation ratio)を取得する。そして、チャネル利用状況観測部3は、(1)取得した受信電力および/または無線リソース利用率CORと、(2)当該データを取得したときの使用周波数帯域と使用チャネルの情報と、を含むデータをデータData1(無線信号データData1)として予測判定処理部6に出力する。なお、周波数帯域band(例えば、周波数帯域が5GHz帯である場合、band=5GHz)、チャネルch(例えば、チャネルがxチャネル(x:自然数)である場合、ch=x)についてのデータData1を、Data1(band,ch)と表記する(以下、同様)。また、データData1において、受信電力および/または無線リソース利用率CORを取得したときの使用周波数帯域と使用チャネルを、それぞれ、「Data1.band」と「Data1.ch」と表記する(以下同様)。
【0051】
また、チャネル利用状況観測部3は、第1送信部Tx1~第N送信部TxN、および/または、第1受信部Rx1~第N受信部RxNに出力することで、キャリアセンス、および/または、チャネルセンスの結果に基づいて、各周波数帯域、各チャネルの使用状況を示すデータをデータData2として生成し、生成したデータData2を予測判定処理部6に出力する。データData2には、各周波数帯域、各チャネルの使用状況を示すデータとして、所定の期間におけるビジー状態/空き状態の判定結果や、受信フレームのMACヘッダに記載されているNAV(Network Allocation Vector(送信禁止期間))の値や、NAVにより設定されたバックオフ値(バックオフカウンタ値)等を含めてもよい。なお、周波数帯域band(例えば、周波数帯域が5GHz帯である場合、band=5GHz)、チャネルch(例えば、チャネルがxチャネル(x:自然数)である場合、ch=x)についてのデータData2を、Data2(band,ch)と表記する(以下、同様)。また、データData2において、各周波数帯域、各チャネルの使用状況を示すデータを取得したときの使用周波数帯域と使用チャネルを、それぞれ、「Data2.band」と「Data2.ch」と表記する(以下同様)。
【0052】
受信制御部4は、無線通信装置100における受信処理の制御を行う機能部である。受信制御部4は、データ統合部5を制御するための制御信号Ctl_combを生成し、データ統合部5に出力する。また、受信制御部4は、第1受信部Rx1~第N受信部RxNをそれぞれ制御するための制御信号Ctl_rx1~Ctl_rxNを生成し、第1受信部Rx1~第N受信部RxNに出力する。なお、制御信号Ctl_rxk(k:自然数、1≦k≦N)には、第k受信部Rxkにおいて復調処理の処理対象とする、(1)使用周波数帯域(使用する周波数バンド(例えば、5GHz帯、2.4GHz帯、920MHz帯))を指定するデータSel_rx.bandと、(2)使用するチャネルを指定するデータSel_rx.chとを含んでいるものとする。使用周波数帯域が1つである場合、データSel_rx.bandの生成を省略しもよい。
【0053】
受信用アンテナAntrx1は、外部からのRF信号(搬送帯域OFDM信号)を受信するためのアンテナである。受信用アンテナAntrx1は、受信したRF信号(搬送帯域OFDM信号)を信号Drf3として、第1受信部Rx1に出力する。なお、受信用アンテナAntrx1は、送信用アンテナAnttx1と共用してもよい。受信用アンテナAntrx1は、例えば、マルチバンドアンテナであり、無線通信装置100で使用する周波数帯域の無線信号を受信できるアンテナである。
【0054】
なお、受信用アンテナAntrx2~AntrxNは、受信用アンテナAntrx1と同様の構成、機能を有している。
【0055】
第1受信部Rx1は、受信用アンテナAntrx1からの搬送帯域OFDM信号Drf3と、受信制御部4から出力される制御信号Ctl_rx1とを入力する。第1受信部Rx1は、制御信号Ctl_rx1に従い、搬送帯域OFDM信号Drf3に対して、RF復調処理、ベースバンド復調処理する。具体的には、第1受信部Rx1は、増幅処理、受信用発振器(不図示)から出力される参照周波数信号fr_rxに基づくダウンコンバート処理、自動周波数制御処理(AFC処理)、参照周波数信号fr_rxに基づく直交復調処理、A/D変換処理を実行して、復調搬送帯域OFDM信号を信号Drf3’として取得する。なお、第1受信部Rx1は、制御信号Ctl_rx1に含まれるデータSel_rx.bandで指定される使用周波数帯域、および、制御信号Ctl_rx1に含まれるデータSel_rx.chで指定される使用チャネルに基づいて、(必要であれば、周波数変換を行い)参照周波数信号fr_rxを設定する。
【0056】
そして、第1受信部Rx1は、復調搬送帯域OFDM信号Drf3’に対して、ベースバンド復調処理を行い、復調ベースバンドOFDM信号を取得する。そして、第1受信部Rx1は、取得した復調ベースバンドOFDM信号に対して、デインターリーブ処理、エラー訂正処理等を実行し、当該処理後のデータをデータD3として取得する。そして、第1受信部Rx1は、データD3をデータ統合部5に出力する。なお、デインターリーブ処理、エラー訂正処理等は、データ統合部5の後段の処理部(不図示)において、実行されるものであってもよい。この場合、第1受信部Rx1は、取得した復調ベースバンドOFDM信号を、データD3として、データ統合部5に出力する。
【0057】
また、第1受信部Rx1は、チャネル利用状況観測部3と接続されており、チャネル利用状況観測部3からの指令D2rx1.reqにより、キャリアセンス、あるいは、チャネルセンスを実行し、その実行結果を示す信号D2rx1.resをチャネル利用状況観測部3に出力する。
【0058】
なお、第2受信部Rx2~第N受信部RxNは、第1受信部Rx1と同様の構成を有しており、第1受信部Rx1と同様の機能を実現する。
【0059】
データ統合部5は、制御信号Ctl_combと、第1受信部Rx1~第N受信部RxNから出力されるデータD3~D3とを入力する。データ統合部5は、制御信号Ctl_combに基づいて、データD3~D3に対して、データ統合処理を実行し、処理後のデータをデータDoutとして出力する。
【0060】
なお、データ統合部5は、第1受信部Rx1~第N受信部RxNのいずれか1つのみからデータが出力されているときは、当該データをデータDoutとして出力する。
【0061】
一方、第1受信部Rx1~第N受信部RxNのいずれか2つ以上からデータが出力されているときは、データ統合部5に入力されたデータD3~D3といずれか2つ以上のデータを、制御信号Ctl_combに従い、統合する処理を行う。なお、この場合、データ統合部5に入力されたデータD3~D3のヘッダ情報(統合処理を行うためのヘッダであって、分割元が同じデータを特定し、どのデータと統合するかについて情報を含むヘッダ情報)を参照し、当該ヘッダ情報に基づいて、データを統合する処理を実行する。そして、処理後のデータをデータDoutとして出力する。
【0062】
予測判定処理部6は、図2に示すように、予測用データ生成部61と、通信状況データ取得部62と、予測部63と、判定部64とを備える。
【0063】
予測用データ生成部61は、チャネル利用状況観測部3から出力されるデータData1(受信電力および/または無線リソース利用率CORを含むデータ)と、データData2(各周波数帯域、各チャネルの使用状況を示すデータ)とを入力する。予測用データ生成部61は、データData1、データData2に基づいて、予測処理の対象とするデータData3を生成し、生成したデータData3を予測部63に出力する。なお、周波数帯域band(例えば、周波数帯域が5GHz帯である場合、band=5GHz)、チャネルch(例えば、チャネルがxチャネル(x:自然数)である場合、ch=x)についてのデータData3を、Data3(band,ch)と表記する(以下、同様)。また、データData3において、予測処理の対象とするために生成したデータに対応する使用周波数帯域と使用チャネルを、それぞれ、「Data3.band」と「Data3.ch」と表記する(以下同様)。
【0064】
通信状況データ取得部62は、チャネル利用状況観測部3から出力されるデータData2(各周波数帯域、各チャネルの使用状況を示すデータ)を入力し、データData2に基づいて、各周波数帯域、各チャネルにおける使用状況(ビジー状況)を示すデータD_busyを取得する。そして、通信状況データ取得部62は、取得したデータD_busyを判定部64に出力する。なお、周波数帯域band(例えば、周波数帯域が5GHz帯である場合、band=5GHz)、チャネルch(例えば、チャネルがxチャネル(x:自然数)である場合、ch=x)についてのデータD_busyを、D_busy(band,ch)と表記する(以下、同様)。
【0065】
また、通信状況データ取得部62は、各周波数帯域、各チャネルにおける使用状況(ビジー状況)に基づいて、予測処理を開始する時刻tsの情報を含むデータD_time_sを生成し、生成したデータD_time_sを予測部63に出力する。
【0066】
予測部63は、図3に示すように、選択信号生成部631と、セレクタ632と、シリアルデータ取得部633と、予測用データ取得部634と、予測処理部635と、パラメータ調整部636と、平滑処理部637と、出力データ取得部638と、記憶部St1とを備える。
【0067】
選択信号生成部631は、通信状況データ取得部62から出力されるデータD_time_sと、無線通信装置100の各機能部を制御する制御部(不図示)から出力されるモード制御信号CTL_modeと、を入力する。選択信号生成部631は、モード制御信号CTL_modeとデータD_time_sとに基づいて、選択信号sel1を生成し、セレクタ632に出力する。
【0068】
具体的には、選択信号生成部631は、モード制御信号CTL_modeが学習モードを示す信号値である場合(学習モードの場合)、選択信号sel1の信号値を「0」に設定し、選択信号sel1をセレクタ632に出力する。
【0069】
選択信号生成部631は、モード制御信号CTL_modeが予測モードを示す信号値である場合(予測モードの場合)であって、データD_time_sが予測処理の開始時刻を現在時刻とすることを指定するデータである場合、選択信号sel1の信号値を「0」に設定し、選択信号sel1をセレクタ632に出力する。一方、選択信号生成部631は、モード制御信号CTL_modeが予測モードを示す信号値である場合(予測モードの場合)であって、データD_time_sが予測処理の開始時刻を現在時刻でない時刻とすることを指定するデータである場合、選択信号sel1の信号値を「1」に設定し、選択信号sel1をセレクタ632に出力する。
【0070】
セレクタ632は、チャネル利用状況観測部3から出力されるデータData1と、予測用データ生成部61から出力されるデータData3と、選択信号生成部631から出力される選択信号sel1とを入力する。セレクタ632は、選択信号sel1に従い、データData1、データData3のいずれか一方を選択し、選択したデータをデータD0として、シリアルデータ取得部633、パラメータ調整部636および出力データ取得部638に出力する。
【0071】
シリアルデータ取得部633は、セレクタ632から出力されるデータD0を入力し、データD0に基づいて、シリアルデータを生成し、生成したシリアルデータをデータDs1として、予測用データ取得部634およびパラメータ調整部636に出力する。
【0072】
なお、シリアルデータは、例えば、チャネル(無線通信装置100が使用(あるいは監視)している無線チャネル)のアイドル状態、ビジー状態の時系列における状態遷移を示すデータである。例えば、アイドル状態を「0」で表し、ビジー状態を「1」で表したとき、
(1)時刻t1~t2の期間、チャネルがアイドル状態(「0」)であり、
(2)時刻t2~t3の期間、チャネル状態がビジー状態(「1」)であり、
(3)時刻t3~t4の期間、チャネル状態がアイドル状態(「0」)であるとき、
時刻t1~t4の期間のチャネルのアイドル/ビジー状態の時系列における状態遷移を示すデータであるシリアルデータDs1は、「010」と表現される。
【0073】
予測用データ取得部634は、シリアルデータ取得部633から出力されるシリアルデータDs1と、パラメータ調整部636から出力される第1パラメータθ1(使用周波数帯域がbandであり、使用チャネルがchであるときの第1パラメータをθ1(band,ch)と表記する)と、モード制御信号CTL_modeと、を入力する。予測用データ取得部634は、モード制御信号CTL_modeにより、学習モードまたは予測モードに設定される。
【0074】
予測用データ取得部634は、学習モードにおいて、第1パラメータθ1(θ1(band,ch))に基づいて、シリアルデータDs1から予測処理用データData_Pと、目標データData_Tとを生成する。そして、予測用データ取得部634は、学習モードにおいて、生成した予測処理用データData_Pおよび目標データData_Tを予測処理部635に出力し、目標データData_Tをパラメータ調整部636に出力する。
【0075】
予測用データ取得部634は、予測モードにおいて、第1パラメータθ1(θ1(band,ch))に基づいて、シリアルデータDs1から予測処理用データData_Pを生成する。そして、予測用データ取得部634は、予測モードにおいて、生成した予測処理用データData_Pを予測処理部635に出力する。
【0076】
予測処理部635は、予測用データ取得部634から出力される予測処理用データData_Pおよび目標データData_Tと、パラメータ調整部636から出力される第2パラメータθ2(使用周波数帯域がbandであり、使用チャネルがchであるときの第2パラメータをθ2(band,ch)と表記する)と、モード制御信号CTL_modeと、を入力する。
【0077】
予測処理部635は、例えば、確率的ニューラルネットワーク(PNN:Probabilistic neural network)により構成される。
【0078】
図4は、予測処理部635を確率的ニューラルネットワークPNNを用いて構成する場合の予測処理部635の概略構成図を示す図である。以下では、説明便宜のため、予測処理部635が確率的ニューラルネットワークPNNを用いて構成される場合について説明する。
【0079】
図4に示すように、予測処理部635は、入力層(Input layer)6351と、隠れ層(Hidden layer)6352と、総和計算層(Sum layer)6353と、クラス評価値取得部6354と、を備える。
【0080】
入力層(Input layer)6351は、予測用データ取得部634から出力される予測処理用データData_Pを入力する。予測処理用データData_Pは、N行×N列(N、N:自然数)の行列のデータを構成することができるデータであるものとする。
【0081】
入力層(Input layer)6351は、図4に示すように、N個のシナプスを有しており、第q番目(q:自然数、1≦q≦N)のシナプスには、予測処理用データData_Pの第q行のデータがベクトルvqとして入力される。
【0082】
入力層6351の各シナプスは、図4に示すように、隠れ層6352の全てのシナプスと結合されている。
【0083】
隠れ層(Hidden layer)6352は、図4に示すように、M個(M:自然数)のクラスに対応するシナプス群Blk_class1~Blk_classMを有している。各シナプス群は、N個のシナプスを有している。
【0084】
第1番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class1の第s番目(s:自然数、1≦s≦N)のシナプスには、ベクトルv1,sで表される重み付けデータが割り当てられている。
【0085】
つまり、第r番目(r:自然数、1≦r≦M)のクラスに対応するシナプス群Blk_classrの第s番目(s:自然数、1≦s≦N)のシナプスには、ベクトルvr,sで表される重み付けデータが割り当てられている。
【0086】
そして、シナプス群Blk_classrでは、入力層6351からのデータに対して、ベクトルvr,sによる演算処理が実行され、演算処理結果データが総和計算層6353に出力される。なお、隠れ層6352には、第2パラメータθ2(θ2(band,ch))が入力され、第2パラメータθ2(θ2(band,ch))により、上記ベクトルvr,sによる演算処理が実行される。
【0087】
総和計算層(Sum layer)6353は、図4に示すように、M個(M:自然数)のシナプスを有している。第u番目(u:自然数、1≦u≦M)のシナプスは、隠れ層の第u番目のクラスに対応するシナプス群Blk_classuに含まれる各シナプスからの出力データを入力とし、入力データに対して総和計算処理を実行し、第u番目のクラスの放射基底関数(RBF:Radial basis function)の値を、第u番目のクラスの放射基底関数データgとして取得する。そして、取得された第u番目のクラスの放射基底関数データgは、クラス評価値取得部6354に出力される。なお、総和計算層6353には、第2パラメータθ2(θ2(band,ch))が入力され、第2パラメータθ2(θ2(band,ch))に基づいて、シナプスの追加処理が実行される。
【0088】
クラス評価値取得部6354は、総和計算層6353から出力されるM個の放射基底関数データgを入力する。クラス評価値取得部6354は、入力されたM個の放射基底関数データgに基づいて、クラス評価値データD2pを生成し、生成したクラス評価値データD2pを平滑処理部637およびパラメータ調整部636に出力する。
【0089】
パラメータ調整部636は、図5に示すように、評価部6361と、パラメータ調整処理部6362と、を備える。
【0090】
評価部6361は、シリアルデータ取得部633から出力されるデータDs1と、予測用データ取得部634から出力されるデータData_Tと、予測処理部635から出力されるクラス評価値データD2pと、モード制御信号CTL_modeと、セレクタ632から出力されるデータD0とを入力する。評価部6361は、モード制御信号CTL_modeにより、学習モードまたは予測モードに設定される。また、評価部6361は、データD0を入力し、データD0から、当該データが取得されたときの使用周波数帯域D0.band(データD0に含まれる使用周波数帯のデータ)と、使用チャネルD0.ch(データD0に含まれる使用チャネルのデータ)とを抽出する。
【0091】
評価部6361は、学習モードにおいて、目標データData_Tと、クラス評価値データD2と、に基づいて、予測処理部635での予測処理の結果データの精度を判定し、当該判定結果を示すデータをデータRstとしてパラメータ調整処理部6362に出力する。
【0092】
評価部6361は、予測モードにおいて、データDs1と、クラス評価値データD2pとに基づいて、予測処理部635での予測処理の結果データの精度を判定し、当該判定結果を示すデータをデータRst(band,ch)(band=D0.band,ch=D0.ch)としてパラメータ調整処理部6362に出力する。なお、評価部6361は、データRst(band,ch)に目標データData_Tを含めて、データRst(band,ch)をパラメータ調整処理部6362に出力する。
【0093】
パラメータ調整処理部6362は、評価部6361から出力されるデータRst(band,ch)と、モード制御信号CTL_modeと、データD_sent(無線通信装置100において、送信したデータ(フレーム)についての情報と、送信した時刻(タイミング)の情報とを含むデータ)とを入力する。パラメータ調整処理部6362は、学習モードにおいて、データRst(band,ch)に基づいて、パラメータ調整処理を実行し、パラメータ調整処理後の第1パラメータθ1(band,ch)(band=D0.band,ch=D0.ch)を予測用データ取得部634に出力し、パラメータ調整処理後の第2パラメータθ2(band,ch)(band=D0.band,ch=D0.ch)を予測処理部635に出力する。
【0094】
また、パラメータ調整処理部6362は、学習モードにおいて、予測処理の精度を示すデータRst(band,ch)に基づいて、予測処理の精度が十分なものであると判断した場合、そのときの第1パラメータを最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)(band=D0.band,ch=D0.ch)として取得し、第2パラメータを最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)(band=D0.band,ch=D0.ch)として取得する。また、パラメータ調整処理部6362は、データData_Tに基づいて、最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)が取得されたときの予測データ(目標データData_Tにより特定される予測データ)の情報をDo_pred(θ1_opt(band,ch),θ2_opt(band,ch))として取得する。
【0095】
そして、パラメータ調整処理部6362は、データD_sent(無線通信装置100において、送信したデータ(フレーム)についての情報と、送信した時刻(タイミング)の情報とを含むデータ)に基づいて、学習した期間において、無線通信装置100から外部に送信されたデータの有無を判定する。
(1)判定の結果、学習した期間において、無線通信装置100から外部に送信されたデータがなかった場合、パラメータ調整処理部6362は、最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)と、予測データDo_pred(θ1_opt(band,ch),θ2_opt(band,ch))(予測パターンのデータ)とを記憶部St1に出力する。
(2)判定の結果、学習した期間において、無線通信装置100から外部に送信されたデータがあった場合、パラメータ調整処理部6362は、最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)と予測データDo_pred(θ1_opt(band,ch),θ2_opt(band,ch))(予測パターンのデータ)とを記憶部St1に出力しない。つまり、学習により取得したパラメータのデータを記憶せずに破棄する。
【0096】
また、パラメータ調整処理部6362は、学習が終了し、予測モードに移行する場合、記憶部St1から最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)を取得する。そして、パラメータ調整処理部6362は、記憶部St1から取得した最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)を、第1パラメータθ1(band,ch)として予測用データ取得部634に出力し、記憶部St1から取得した最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)を、第2パラメータθ2(band,ch)として予測処理部635に出力する。
【0097】
記憶部St1は、パラメータ調整処理部6362から出力される最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)を入力し、当該最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)を、対応する使用周波数帯、使用チャネルの情報とともに、記憶する。また、記憶部St1は、パラメータ調整処理部6362からの要求に基づいて、記憶している最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および/または最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)を、当該パラメータに対応する使用周波数帯、使用チャネルの情報とともに、パラメータ調整処理部6362に出力する。
【0098】
また、記憶部St1は、最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)が取得されたときの予測データ(データData_Tにより特定される予測データ)の情報を記憶する。
【0099】
平滑処理部637は、予測処理部635から出力されるクラス評価値データDp2を入力する。平滑処理部637は、クラス評価値データD2pに対して平滑処理を実行し、平滑データを取得する。そして、平滑処理部637は、取得した平滑データをデータD3pとして出力データ取得部638に出力する。
【0100】
出力データ取得部638は、平滑処理部637から出力されるデータD3pと、通信状況データ取得部62から出力されるデータD_time_sと、を入力する。また、出力データ取得部638は、データD0を入力し、データD0から、当該データが取得されたときの使用周波数帯域D0.band(データD0に含まれる使用周波数帯のデータ)と、使用チャネルD0.ch(データD0に含まれる使用チャネルのデータ)とを抽出する。
(1)データD_time_sが予測処理の開始時刻を現在時刻とすることを指定するデータである場合、出力データ取得部638は、データD3pの要素(ベクトル要素、PNNのクラスに対応)のうちの最大値を取得する要素に対応するクラスを特定し、使用周波数帯域がD0.bandであり、使用チャネルがD0.chであるときの上記で特定したクラスに対応する予測データ(このデータをDo1_pred(band,ch)(band=D0.band、ch=D0.ch)とする)(予測パターンのデータ)を、記憶部St1から取り出す。
【0101】
そして、出力データ取得部638は、記憶部St1から取り出したデータを出力データDo1_pred(band,ch)(band=D0.band、ch=D0.ch)と、予測開始時刻stimeとを含むデータD_pred(band,ch,stime)を生成し、生成した出力データD_pred(band,ch,stime)を判定部64に出力する。なお、この場合、開始時刻は、現在時刻であるので、stimeを、現在時刻を示す値(例えば、stime=tc(tc:現在時刻))として、出力データ取得部638は、データD_pred(band,ch,stime)を取得する。
(2)データD_time_sが予測処理の開始時刻を現在時刻以外の時刻tsとすることを指定するデータである場合、出力データ取得部638は、データD3pの要素(ベクトル要素、PNNのクラスに対応)のうちの最大値を取得する要素に対応するクラスを特定し、使用周波数帯域がD0.bandであり、使用チャネルがD0.chであるときの上記で特定したクラスに対応する予測データ(このデータをDo1_pred(band,ch)(band=D0.band、ch=D0.ch)とする)(予測パターンのデータ)を、記憶部St1から取り出す。
【0102】
そして、出力データ取得部638は、記憶部St1から取り出したデータを出力データDo1_pred(band,ch)(band=D0.band、ch=D0.ch)と、予測開始時刻stimeとを含むデータD_pred(band,ch,stime)を生成し、生成した出力データD_pred(band,ch,stime)を判定部64に出力する。なお、この場合、開始時刻は、現在時刻以外の時刻tsであるので、stimeを、時刻tsを示す値(例えば、stime=ts)として、出力データ取得部638は、データD_pred(band,ch,stime)を生成する。
【0103】
判定部64は、予測部63から出力されるデータD_pred(band,ch,stime)と、通信状況データ取得部62から出力されるデータデータD_busy(band,ch)とを入力する。判定部64は、データD_pred(band,ch,stime)と、D_busy(band,ch)とに基づいて、送信権を獲得したチャネルと、それ以外のチャネルについて、束ねて同時に利用する通信(同時並行通信)を行うことができるか否かについて判定し、当該判定結果を示すデータをデータD_rstとして、送信制御部2に出力する。
【0104】
<1.2:無線通信装置の動作>
以上のように構成された無線通信装置100の動作について、以下、説明する。
【0105】
以下では、(1)学習モードと、(2)予測モードとに分けて、無線通信装置100の動作を説明する。
【0106】
(1.2.1:学習モード)
まず、無線通信装置100の学習モードの処理について説明する。
【0107】
無線通信装置100において、チャネル利用状況観測部3は、キャリアセンス、あるいは、チャネルセンスを実行し、所定の期間の受信電力またはCORのデータを取得する。なお、以下では、チャネル利用状況観測部3が受信電力のデータを取得する場合について説明する。
【0108】
チャネル利用状況観測部3は、取得したデータをデータData1として、予測部63のセレクタ632に出力する。学習モードの場合、選択信号生成部631により生成される選択信号の信号値は「0」であるので、セレクタ632は、データData1(Data1(band,ch))を選択し、データData1(band,ch)をデータD0として、シリアルデータ取得部633に出力する。
【0109】
シリアルデータ取得部633は、データData1(band,ch)からチャネルのビジー状態/アイドル状態を示す時系列のデータXを取得する。これについて、図6を用いて、説明する。
【0110】
図6は、チャネルのビジー状態/アイドル状態を示す時系列のデータXについて説明するための図である。なお、チャネルのビジー状態/アイドル状態を判定する期間(タイムスロット期間)の長さを、WLANを想定して、コンテンションスロット長である9μsとする。
【0111】
シリアルデータ取得部633は、データData1から、各タイムスロット期間において、チャネルがビジー状態であるか、アイドル状態であるかを判断する。
【0112】
そして、シリアルデータ取得部633は、図6に示すように、タイムスロット期間tsにおいて、チャネルがビジー状態である場合、X=0とし、タイムスロット期間において、チャネルがアイドル状態である場合、X=1として、チャネルのビジー状態/アイドル状態を示す時系列のデータXを取得する。図6は、一例として、時刻t0~t1の期間において取得される8個(8タイムスロット分)のデータXt-7~Xを示している。
【0113】
シリアルデータ取得部633は、上記のようにして取得したデータ(時系列のシリアルデータ)をシリアルデータDs1として、予測用データ取得部634およびパラメータ調整部636に出力する。
【0114】
予測用データ取得部634は、モード制御信号CTL_modeにより、学習モードに設定される。
【0115】
予測用データ取得部634は、第1パラメータθ1(band,ch)に基づいて、シリアルデータDs1から予測処理用データData_Pと、目標データData_Tとを生成する。これについて、図7を用いて説明する。
【0116】
図7は、シリアルデータDs1から予測処理用データData_Pと、目標データData_Tとを生成する方法を説明するための図である。なお、第1パラメータθ1(band,ch)は、N、N、kのデータを含むものとする。
【0117】
予測用データ取得部634は、図7に示すように、シリアルデータDs1から、N個(図7では、N=8)ごとのデータを取り出し、取り出したデータを、P{1}、P{2}、・・・、P{N}とする。これにより、予測用データ取得部634は、図7に示すように、N×Nの行列Pを取得する。すなわち、予測用データ取得部634は、予測処理用データData_P(N×Nの行列Pのデータ)を取得する。
【0118】
また、予測用データ取得部634は、図7に示すように、シリアルデータDs1から、データP{1}に後続するk個(図7では、k=3)のデータを取り出し、取り出したデータをT{1}とする。同様に、データP{j}に後続するk個のデータを取り出し、取り出したデータをT{j}とする。これにより、予測用データ取得部634は、図7に示すように、N×kの行列Tを取得する。すなわち、予測用データ取得部634は、目標データData_T(N×kの行列Tのデータ)を取得する。
【0119】
そして、予測用データ取得部634は、上記のようにして取得した予測処理用データData_Pを予測処理部635に出力し、目標データData_Tを予測処理部635およびパラメータ調整部636に出力する。
【0120】
予測処理部635の入力層(Input layer)6351は、予測用データ取得部634から出力される予測処理用データData_Pを入力する。入力層(Input layer)6351は、図4に示すように、N個のシナプスを有しており、第q番目(q:自然数、1≦q≦N)のシナプスには、予測処理用データData_Pの第q行のデータがベクトルvqとして入力される。
【0121】
つまり、入力層6351の第1番目のシナプスには、予測処理用データData_Pの第1行のデータP{1}がベクトルv図7の場合、要素が8個のベクトル)として入力される。
【0122】
入力層6351の第2番目のシナプスには、予測処理用データData_Pの第2行のデータP{2}がベクトルvとして入力される。
【0123】
入力層6351の第N番目のシナプスには、予測処理用データData_Pの第N行のデータP{N}がベクトルv(N=N)として入力される。
【0124】
隠れ層(Hidden layer)6352は、図4に示すように、M個(M:自然数)のクラスに対応するシナプス群Blk_class1~Blk_classMを有している。各シナプス群は、N個のシナプスを有している。
【0125】
第1番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class1の第s番目(s:自然数、1≦s≦N)のシナプスには、ベクトルv1,sで表される重み付けデータが割り当てられる。
【0126】
つまり、第r番目(r:自然数、1≦r≦M)のクラスに対応するシナプス群Blk_classrの第s番目(s:自然数、1≦s≦N)のシナプスには、ベクトルvr,sで表される重み付けデータが割り当てられる。
【0127】
ここで、第1番目のクラスに、図7に示すデータが割り当てられる場合について、説明する。つまり、入力データが予測処理用データData_P(N×Nの行列Pのデータ)である場合の教師データ(正解のデータ)が目標データData_T(N×kの行列Tのデータ)として、学習する場合について、説明する。
【0128】
第1番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class1の第1番目のシナプスには、データP{1}をベクトルv1,1として、当該ベクトルv1,1で表される重み付けデータが割り当てられる。
【0129】
第1番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class1の第2番目のシナプスには、データP{2}をベクトルv1,2として、当該ベクトルv1,2で表される重み付けデータが割り当てられる。
【0130】
第1番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class1の第N番目(N=N)のシナプスには、データP{N}をベクトルv1,N(N=N)として、当該ベクトルv1,N(N=N)で表される重み付けデータが割り当てられる。
【0131】
上記と同様にして、第r番目(r:自然数、1≦r≦M)のクラスを設定するための予測処理用データData_P(N×Nの行列Pのデータ)と、目標データData_T(N×kの行列Tのデータ)とを用意し、第r番目のクラスに対応するシナプス群Blk_classrの第s番目(s:自然数、1≦s≦N)のシナプスに、ベクトルvr,sで表される重み付けデータが割り当てる。
【0132】
そして、第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のクラスのシナプス群Blk_classcでは、入力層6351からのデータData_P(N個のベクトルv,v,・・・,v(N=N))に対して、ベクトルvc,sによる下記数式に相当する処理が実行される。
【数1】

σ:第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のクラスの標準偏差
上記処理により、第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のクラスのシナプス群Blk_classcのj番目のシナプスから、データD_vcjが総和計算層6353に出力される。
【0133】
総和計算層(Sum layer)6353では、第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のシナプスは、隠れ層の第c番目のクラスに対応するシナプス群Blk_classcに含まれる各シナプスからの出力データを入力とし、入力データに対して総和計算処理を実行し、第c番目のクラスの放射基底関数(RBF:Radial basis function)の値を、第c番目のクラスの放射基底関数データgとして取得する。すなわち、総和計算層6353は、以下の数式に相当する処理を実行して、第c番目のクラスの放射基底関数データgを取得する。
【数2】

σ:第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のクラスの標準偏差
そして、取得された第c番目のクラスの放射基底関数データgは、クラス評価値取得部6354に出力される。
【0134】
クラス評価値取得部6354は、総和計算層6353から出力されるM個の放射基底関数データgを入力する。クラス評価値取得部6354は、入力されたM個の放射基底関数データgに基づいて、クラス評価値データD2pを生成する。具体的には、クラス評価値取得部6354は、下記の数式に示すベクトルD2pをデータD2pとして生成する。
【数3】

そして、クラス評価値取得部6354は、生成したクラス評価値データD2pを平滑処理部637およびパラメータ調整部636に出力する。
【0135】
パラメータ調整部636の評価部6361は、目標データData_Tと、クラス評価値データD2pと、に基づいて、予測処理部635での予測処理の結果データの精度を判定する。ここで、第c番目のクラスに対応する入力データData_TをData_Tとし、その教師データ(正解のデータ)をData_Tとする。そうすると、Data_P=Data_Pのとき、第c番目のクラスに対応する放射基底関数データgの値は、最大値をとり、Data_PがData_Pに近いパターンであればあるほど、第c番目のクラスに対応する放射基底関数データgの値は大きな値となる。
【0136】
評価部6361は、データD2pの要素の中で最大値をとる放射基底関数データgを特定し、特定した放射基底関数データgに対応するクラスを特定する。そして、評価部6361は、特定したクラスに対応する教師データ(正解のデータ)Data_Tにより、予測パターンを特定する。例えば、評価部6361は、データD2pの要素の中で最大値をとる放射基底関数データgがgであると特定した場合、特定したクラスである第1番目のクラスに対応する教師データ(正解のデータ)Data_TのT{N}を予測パターンとして特定する。つまり、上記において、図7に示すデータP(行列P)に対応するデータData_Tを第1番目のクラスに対応させたので、図7に示すデータP(行列P)に対応するデータData_P(これをデータData_Pとする)が無線通信装置100に入力された場合、図7に示す目標データData_T(これをデータData_Tとする)のT{N}が「000」であるので、図7の時刻t_nowに後続するデータは、「000」であると予測される。つまり、この場合、評価部6361は、目標データData_TのT{N}を予測パターンとして特定する。
【0137】
評価部6361は、学習モードにおいて、多様なパターンのデータ(B/Iデータ)が入力された場合に上記処理により取得した予測パターンと、評価部6361に入力されるデータDsから取得した実際のデータ(正解データ)とを比較し、予測精度が十分なものであると否かを判定する。評価部6361は、その判定結果をデータRst(band,ch)として、パラメータ調整処理部6362に出力する。
【0138】
なお、上記処理は、使用周波数帯band、使用チャネルchごとに、実行されるものとし、使用周波数帯がband、使用チャネルがchであるときの判定結果のデータをデータRst(band,ch)とする。
【0139】
パラメータ調整処理部6362は、判定結果データRst(band,ch)に基づいて、予測精度が十分ではない場合、第1パラメータθ1(band,ch)(例えば、N、N、k)、および/または、第2パラメータθ2(band,ch)(例えば、σ、v_appnd_rplc)を調整し、調整後の第1パラメータを予測用データ取得部634に出力し、また、調整後の第2パラメータθ2(band,ch)を予測処理部635に出力する。
【0140】
予測用データ取得部634では、調整後の第1パラメータθ1(band,ch)(例えば、N、N、k)により、シリアルデータDs1から取得する予測処理用データData_P、および、目標データData_Tを生成し、予測処理部635に出力する。そして、上記と同様にして、パラメータ調整部636により、予測精度を判定し、予測精度が十分であると判定されるまで、上記処理を繰り返す。
【0141】
また、予測処理部635では、調整後の第2パラメータθ2(band,ch)により、処理が実行される。例えば、予測処理部635では、調整後のσ(σは、各クラスの標準偏差σを含むデータであるものとする)に基づいて、各クラスの標準偏差σ(0≦σ≦1)が設定され、予測処理部635の処理が実行される。そして、上記と同様にして、パラメータ調整部636により、予測精度を判定し、予測精度が十分であると判定されるまで、上記処理を繰り返す。
【0142】
また、予測処理部635では、データv_appnd_rplcに基づいて、隠れ層のクラスの追加処理(アペンド処理)、および/または、置換処理が実行される。これについて、図8図10を用いて説明する。
【0143】
図8は、入力データx(データData_P)と、各クラスの放射基底関数データgとの関係を示すグラフである。つまり、図8は、入力データData_Pを確率変数xとしたときの確率密度関数P(x)を示すグラフである。
【0144】
図9は、入力データx(データData_P)と、各クラスの放射基底関数データgとの関係を示すグラフであり、予測処理部635での追加処理を説明するための図である。
【0145】
図10は、入力データx(データData_P)と、各クラスの放射基底関数データgとの関係を示すグラフであり、予測処理部635での置換処理を説明するための図である。
【0146】
まず、予測処理部635での追加処理について説明する。
【0147】
図8に示すように、予測処理部635への入力データがデータData_P、Data_P、・・・、Data_Pのいずれかに近いパターンのデータである場合、予測処理部635での予測処理により、入力パターンに対応するクラスを特定することができ、その結果、精度の高い予測処理を実行することができる。しかし、予測処理部635への入力データがデータData_P、Data_P、・・・、Data_Pのいずれにも近いパターンでない場合、入力パターンに対応するクラスを特定することができず、その結果、精度の高い予測処理を実行することができない。例えば、予測処理部635への入力データが図8のデータData_PM+1である場合、データData_P、Data_P、・・・、Data_Pのいずれにも近いパターンでないので、精度の高い予測処理を実行することはできない。
【0148】
そこで、このような場合、パラメータ調整部636から、予測処理部635に指令信号(データ)v_appnd_rplcを送信し、予測処理部635に、新たなクラス(M+1番目のクラス)を追加する。例えば、図9に「ClassM+1」として示す放射基底関数データgとなるように、隠れ層6352に新たなシナプスを追加し、さらに、総和計算層6353に第M+1番目のシナプスを追加する。これにより、予測処理部635への入力データがデータData_PM+1と近いパターンである場合、第M+1番目のクラスの放射基底関数データg(=gM+1)が大きな値をとるため、Data_TM+1(行列TM+1)のT{N}により、高精度の予測処理が可能となる。
【0149】
そして、上記のクラスを追加する処理を行った後、パラメータ調整部636により、予測精度を判定し、予測精度が十分であると判定されるまで、上記処理を繰り返す。
【0150】
次に、予測処理部635での置換処理について説明する。
【0151】
予測処理部635への入力データがデータData_P、Data_P、・・・、Data_Pのいずれにも近いパターンでない場合、入力パターンに対応するクラスを特定することができず、その結果、精度の高い予測処理を実行することができない。例えば、予測処理部635への入力データが図10のデータData_PM’である場合、データData_P、Data_P、・・・、Data_Pのいずれにも近いパターンでないので、精度の高い予測処理を実行することはできない。
【0152】
そこで、このような場合、パラメータ調整部636から、予測処理部635に指令信号(データ)v_appnd_rplcを送信し、予測処理部635は、例えば、第M番目のクラスの重み付けデータ(隠れ層432のシナプス)を置換する。例えば、図10に「ClassM’」として示す放射基底関数データgとなるように、隠れ層6352において、第M番目のクラスの重み付けデータ(隠れ層6352のシナプス)を置換する。これにより、予測処理部635への入力データがデータData_PM’と近いパターンである場合、置換処理後の第M番目のクラスの放射基底関数データg(=g)が大きな値をとるため、Data_TM’(行列TM’)のT{N}により、高精度の予測処理が可能となる。
【0153】
そして、上記のクラスを置換する処理を行った後、パラメータ調整部636により、予測精度を判定し、予測精度が十分であると判定されるまで、上記処理を繰り返す。
【0154】
以上のように、無線通信装置100において、第1パラメータθ1(band,ch)(例えば、N、N、k)、および/または、第2パラメータθ2(band,ch)(例えば、σ、v_appnd_rplc)を調整し、十分な予測精度が取得される状態になったら、学習(PNNの学習処理)を終了させる。
【0155】
そして、パラメータ調整処理部6362は、データD_sent(無線通信装置100において、送信したデータ(フレーム)についての情報と、送信した時刻(タイミング)の情報とを含むデータ)に基づいて、学習した期間において、無線通信装置100から外部に送信されたデータの有無を判定する。
(1)判定の結果、学習した期間において、無線通信装置100から外部に送信されたデータがなかった場合、パラメータ調整処理部6362は、最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)と、予測データDo_pred(θ1_opt(band,ch),θ2_opt(band,ch))(予測パターンのデータ)とを記憶部St1に出力する。
(2)判定の結果、学習した期間において、無線通信装置100から外部に送信されたデータがあった場合、パラメータ調整処理部6362は、最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)と予測データDo_pred(θ1_opt(band,ch),θ2_opt(band,ch))(予測パターンのデータ)とを記憶部St1に出力しない。つまり、学習により取得したパラメータのデータを記憶せずに破棄する。
【0156】
例えば、図11に示す場合について説明する。図11は、無線通信装置100から送信された通信データと、データD_sentと、学習期間とを示すタイミングチャートである。
【0157】
図11の場合、時刻t1~t2の期間において、無線通信装置100において学習期間を学習期間Aとして、学習処理が実行されたが、この期間において、データD_sentから、無線通信装置100から送信された送信データがあると確認できるので、無線通信装置100のパラメータ調整処理部6362は、学習期間Aの学習により取得されたパラメータを破棄する(PNNモデルのパラメータ更新処理を行わない)。
【0158】
一方、時刻t2~t3の期間に、無線通信装置100において学習期間を学習期間B、学習期間C、学習期間Dとして実行された学習処理により取得されたパラメータについては、更新処理を実行する。つまり、この期間において、データD_sentから、無線通信装置100から送信された送信データはないと確認できるので、無線通信装置100のパラメータ調整処理部6362は、学習期間Aの学習により取得されたパラメータを更新する(PNNモデルのパラメータ更新処理を行う)。
【0159】
このように処理することで、無線通信装置100では、より高精度に予測できるPNNモデルを構築することができる。自装置(無線通信装置100)からの送信データがある場合、当該送信データが、監視しようとしている無線環境における無線環境状況を示すデータ(例えば、チャネルのビジー状態/アイドル状態の時系列データ)に影響を及ぼすため、自装置(無線通信装置100)から送信データがある場合の学習データを採用し、PNNモデルを構築すると、適切な予測ができない場合のあるPNNモデルが構築されることになる。そこで、無線通信装置100では、上記のように、自装置(無線通信装置100)からの送信データがない場合に実行された学習処理による学習データのみを採用して、PNNモデルの学習(PNNモデルの構築)を行う。これにより、無線通信装置100では、より高精度に予測できるPNNモデルを構築することができる。
【0160】
なお、無線通信装置100において、図12に示すように、学習モードのとき、すなわち、モード制御信号CTL_modeが学習モードであることを示す信号値であるとき、送信制御部2が、無線通信装置100から外部への送信をしないようにしてもよい。これにより、無線通信装置100では、学習モードであるとき、すなわち、学習期間中において、自装置(無線通信装置100)からの送信データがないことが保証される。このように、学習モードのとき、自装置(無線通信装置100)からの送信を禁止することで、無線通信装置100では、より高精度に予測できるPNNモデルを構築することができる。
【0161】
パラメータ調整処理部6362は、学習が終了し、予測モードに移行する場合、記憶部St1から最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)および最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)を取得する。そして、パラメータ調整処理部6362は、記憶部St1から取得した最適第1パラメータθ1_opt(band,ch)を、第1パラメータθ1(band,ch)として予測用データ取得部634に出力し、記憶部St1から取得した最適第2パラメータθ2_opt(band,ch)を、第2パラメータθ2(band,ch)として予測処理部635に出力する。これにより、無線通信装置100では、予測モードにおいて、PNNモデルを学習済みモデルの状態にして、予測処理を実行することができる。
【0162】
(1.2.2:予測モード)
次に、無線通信装置100の予測モードの処理について説明する。
【0163】
モード制御信号CTL_modeの信号値が予測モードを示す値に設定され、無線通信装置100において、予測モードの処理が実行される。
【0164】
無線通信装置100において、チャネル利用状況観測部3は、キャリアセンス、あるいは、チャネルセンスを実行し、所定の期間の受信電力またはCORのデータを取得する。なお、以下では、チャネル利用状況観測部3が受信電力のデータを取得する場合について説明する。
【0165】
チャネル利用状況観測部3は、取得したデータをデータData1として、予測部63のセレクタ632に出力する。予測モードの場合、(1)データD_time_sにおいて、予測開始時刻が現在時刻であることを示している場合、選択信号生成部631により生成される選択信号の信号値は「0」であるので、セレクタ632は、データData1(Data1(band,ch))を選択し、データData1(band,ch)をデータD0として、シリアルデータ取得部633に出力する。(2)データD_time_sにおいて、予測開始時刻が現在時刻ではない時刻tsであることを示している場合、選択信号生成部631により生成される選択信号の信号値は「1」であるので、セレクタ632は、データData3(Data3(band,ch))を選択し、データData3(band,ch)をデータD0として、シリアルデータ取得部633に出力する。
【0166】
シリアルデータ取得部633は、データD0からチャネルのビジー状態/アイドル状態を示す時系列のデータXを取得し、シリアルデータDs1として、予測用データ取得部634およびパラメータ調整部636に出力する。
【0167】
予測用データ取得部634は、モード制御信号CTL_modeにより、予測モードに設定される。
【0168】
パラメータ調整処理部6362は、処理対象のデータの使用周波数帯band、使用チャネルch用の第1パラメータθ1(band,ch)、第2パラメータθ2(band,ch)を記憶部St1から取得し、それぞれ、予測用データ取得部634、予測処理部635に出力する。
【0169】
予測用データ取得部634は、第1パラメータθ1(band,ch)に基づいて、シリアルデータDs1から予測処理用データData_Pと、目標データData_Tとを生成する。
【0170】
予測処理部635の入力層(Input layer)6351は、予測用データ取得部634から出力される予測処理用データData_Pを入力する。入力層(Input layer)6351は、図4に示すように、N個のシナプスを有しており、第q番目(q:自然数、1≦q≦N)のシナプスには、予測処理用データData_Pの第q行のデータがベクトルvqとして入力される。
【0171】
つまり、入力層6351の第1番目のシナプスには、予測処理用データData_Pの第1行のデータP{1}がベクトルv図7の場合、要素が8個のベクトル)として入力される。
【0172】
入力層6351の第2番目のシナプスには、予測処理用データData_Pの第2行のデータP{2}がベクトルvとして入力される。
【0173】
入力層6351の第N番目のシナプスには、予測処理用データData_Pの第N行のデータP{N}がベクトルv(N=N)として入力される。
【0174】
そして、隠れ層6352による処理が実行される。なお、隠れ層の各シナプスは、第2パラメータθ(band,ch)により設定されている。
【0175】
隠れ層6352による処理として、第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のクラスのシナプス群Blk_classcでは、入力層6351からのデータData_P(N個のベクトルv,v,・・・,v(N=N))に対して、ベクトルvc,sによる下記数式に相当する処理が実行される。
【数4】

σ:第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のクラスの標準偏差
上記処理により、第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のクラスのシナプス群Blk_classcのj番目のシナプスから、データD_vcjが総和計算層6353に出力される。
【0176】
総和計算層(Sum layer)6353では、第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のシナプスは、隠れ層の第c番目のクラスに対応するシナプス群Blk_classcに含まれる各シナプスからの出力データを入力とし、入力データに対して総和計算処理を実行し、第c番目のクラスの放射基底関数(RBF:Radial basis function)の値を、第c番目のクラスの放射基底関数データgとして取得する。すなわち、総和計算層6353は、以下の数式に相当する処理を実行して、第c番目のクラスの放射基底関数データgを取得する。
【数5】

σ:第c番目(c:自然数、1≦c≦M)のクラスの標準偏差
そして、取得された第c番目のクラスの放射基底関数データgは、クラス評価値取得部6354に出力される。なお、総和計算層6353の設定は、第2パラメータθ2(band,ch)に基づいて、なされている。
【0177】
クラス評価値取得部6354は、総和計算層6353から出力されるM個の放射基底関数データgを入力する。クラス評価値取得部6354は、入力されたM個の放射基底関数データgに基づいて、クラス評価値データD2pを生成する。具体的には、クラス評価値取得部6354は、下記の数式に示すベクトルD2pをデータD2pとして生成する。
【数6】

そして、クラス評価値取得部6354は、生成したクラス評価値データD2pを平滑処理部637に出力する。
【0178】
平滑処理部637は、データD2pに対して、平滑処理(例えば、加重移動平均処理)を実行する。つまり、平滑処理部637は、サンプル時刻tにおいて取得されるデータD2pをD2p(t)と表記し、データD2p(t)の重み付けデータをwとすると、下記数式に相当する処理を実行することで、平滑処理後のデータD3pを取得する。
【数7】

なお、重み付けデータは、現時刻tに近い程、大きな値とすることが好ましい。
【0179】
このように平滑処理部637により平滑処理を実行することで、特異値やノイズによる影響を低減させることができ、その結果、無線通信装置100において、安定して高精度な予測処理を実行することができる。
【0180】
そして、平滑処理後のデータD3pは、平滑処理部637から出力データ取得部638に出力される。
【0181】
出力データ取得部638は、平滑処理部637から出力されるデータD3pと、通信状況データ取得部62から出力されるデータD_time_sと、を入力する。また、出力データ取得部638は、データD0を入力し、データD0から、当該データが取得されたときの使用周波数帯域D0.band(データD0に含まれる使用周波数帯のデータ)と、使用チャネルD0.ch(データD0に含まれる使用チャネルのデータ)とを抽出する。
(1)データD_time_sが予測処理の開始時刻を現在時刻とすることを指定するデータである場合、出力データ取得部638は、データD3pの要素(ベクトル要素、PNNのクラスに対応)のうちの最大値を取得する要素に対応するクラスを特定し、使用周波数帯域がD0.bandであり、使用チャネルがD0.chであるときの上記で特定したクラスに対応する予測データ(このデータをDo1_pred(band,ch)(band=D0.band、ch=D0.ch)とする)(予測パターンのデータ)を、記憶部St1から取り出す。
【0182】
そして、出力データ取得部638は、記憶部St1から取り出したデータを出力データDo1_pred(band,ch)(band=D0.band、ch=D0.ch)と、予測開始時刻stimeとを含むデータD_pred(band,ch,stime)を生成し、生成した出力データD_pred(band,ch,stime)を判定部64に出力する。なお、この場合、開始時刻は、現在時刻であるので、stimeを、現在時刻を示す値(例えば、stime=tc(tc:現在時刻))として、出力データ取得部638は、データD_pred(band,ch,stime)を取得する。
(2)データD_time_sが予測処理の開始時刻を現在時刻以外の時刻tsとすることを指定するデータである場合、出力データ取得部638は、データD3pの要素(ベクトル要素、PNNのクラスに対応)のうちの最大値を取得する要素に対応するクラスを特定し、使用周波数帯域がD0.bandであり、使用チャネルがD0.chであるときの上記で特定したクラスに対応する予測データ(このデータをDo1_pred(band,ch)(band=D0.band、ch=D0.ch)とする)(予測パターンのデータ)を、記憶部St1から取り出す。
【0183】
そして、出力データ取得部638は、記憶部St1から取り出したデータを出力データDo1_pred(band,ch)(band=D0.band、ch=D0.ch)と、予測開始時刻stimeとを含むデータD_pred(band,ch,stime)を生成し、生成した出力データDo1_pred(band,ch,stime)を判定部64に出力する。なお、この場合、開始時刻は、現在時刻以外の時刻tsであるので、stimeを、時刻tsを示す値(例えば、stime=ts)として、出力データ取得部638は、データD_pred(band,ch,stime)を生成する。
【0184】
以上のようにして、無線通信装置100では、予測処理(予測モードの処理)が実行される。なお、予測処理の対象とする使用周波数帯band、使用チャネルchが複数ある場合は、無線通信装置100において、上記の予測処理を、使用周波数帯band、使用チャネルch用のPNNモデルとなるようにパラメータ設定して、実行し、予測処理結果を取得すればよい。
【0185】
(1.2.3:データ送信処理)
次に、無線通信装置100におけるデータ送信処理について、説明する。無線通信装置100におけるデータ送信処理では、複数の周波数帯域、チャネルにおいて、未使用リソースを、上記の予測処理の結果を用いて、適切に検出し、検出した未使用リソースを用いて高速通信を実現させる。
【0186】
なお、説明便宜のために、図13図14の場合について説明する。
【0187】
図13では、無線通信装置100におけるデータ送信処理を説明するための図である。
【0188】
図13は、4つの異なるチャネルである、
(1)チャネルa(ch_a)(周波数帯域:5GHz帯)、
(2)チャネルb(ch_b)(周波数帯域:5GHz帯)、
(3)チャネルc(ch_c)(周波数帯域:2.4GHz帯)、
(4)チャネルd(ch_d)(周波数帯域:920MHz帯)
の時刻t0以降の状況(ビジー状態/アイドル状態の時系列データ)を示している。
【0189】
なお、説明便宜のため、
(1)無線通信装置100の第1送信部、第1受信部の使用周波数帯域が5GHz帯であり、使用チャネルがチャネルaであり、
(2)無線通信装置100の第2送信部、第2受信部の使用周波数帯域が5GHz帯であり、使用チャネルがチャネルbであり、
(3)無線通信装置100の第3送信部、第3受信部の使用周波数帯域が2.4GHz帯であり、使用チャネルがチャネルcであり、
(4)無線通信装置100の第4送信部、第4受信部の使用周波数帯域が920MHz帯であり、使用チャネルがチャネルdであるものとして、以下説明する。なお、図13図14に示すように時刻t1を現時刻とする。
【0190】
また、図15は、無線通信装置100におけるデータ送信処理のフローチャートである。
【0191】
以下では、図15を参照しながら、説明する。
【0192】
無線通信装置100において、band=5GHz帯、ch=ch_aについて、チャネル利用状況観測部3が、キャリアセンス、チャネルセンスを実行し、図13の時刻t1以前の状態の時系列データ(ビジー状態/アイドル状態の時系列データ)Data1(5GHz,ch_a)を取得する。そして、当該データData1(5GHz,ch_a)を用いて、予測部63による予測処理を実行する。当該予測処理の結果、図13に示すように、時刻t1~時刻t5の期間において、アイドル状態が継続する予測パターンが取得されたものとする。
【0193】
なお、無線通信装置100では、チャネル利用状況観測部3により、band=5GHz帯、ch=ch_aについて、データData2(Data2(5GHz、ch_a))から、所定の期間におけるビジー状態/空き状態の判定結果や、受信フレームのMACヘッダに記載されているNAV(Network Allocation Vector(送信禁止期間))の値や、NAVにより設定されたバックオフ値(バックオフカウンタ値)を取得することができる。図13図14において、各チャネルについてのBusy状態またはNAV期間中(図13において「Busy/NAV」と表記)の状態、DIFS(DCF Inter Frame Space)の期間中の状態、バックオフスロット、バックオフ完了スロット、予測空き時間を、図13図14の右上に示した表示により示している。
【0194】
また、説明便宜のため、チャネルa~dのBusy状態またはNAV期間中(図13において「Busy/NAV」と表記)の状態、DIFS(DCF Inter Frame Space)の期間中の状態、バックオフスロット、バックオフ完了スロットの状態は、それぞれ、データData2(band,ch)から、図13図14に示した状態として取得されたものとする。
【0195】
(ステップS1):
図13から分かるように、時刻t1(現時刻)において、チャネルaでは、バックオフ完了スロットを検出した後である。したがって、無線通信装置100は、時刻t1において、チャネルa(周波数帯域:5GHz帯)の送信権を獲得する(ステップS1)。
【0196】
そして、無線通信装置100では、送信権を獲得したチャネルa(周波数帯域:5GHz帯)について、現在時刻t1以降のビジー状態/アイドル状態の予測パターンを取得するために、予測部63による予測処理を実行する。当該予測処理により取得された予測パターンから、送信権を獲得したチャネルa(周波数帯域:5GHz帯)について、現在時刻t1~時刻t5の期間(pred_idle_dur(ch_a)と示した期間)において、アイドル状態が継続すると予測されたものとする。この場合、無線通信装置100の予測判定処理部6の判定部64は、アイドル状態が終了する時刻である時刻t5を最大待機時刻に設定する。つまり、判定部64は、最大待機期間を、図13に示すように、時刻t1~t5の期間に設定する(ステップS1)。
【0197】
(ステップS2):
次に、ステップS2において、送信権を獲得したチャネルa(周波数帯域:5GHz帯)以外のチャネルについて、アイドル状態の継続時間の予測を行う。図13の場合、チャネルb(ch_b)(周波数帯域:5GHz帯)、チャネルc(ch_c)(周波数帯域:2.4GHz帯)、チャネルd(ch_d)(周波数帯域:920MHz帯)について、予測部63による予測処理を実行し、アイドル状態の継続時間の予測を、以下の(1)、(2)のように行う。
(1)現時刻でチャネルがビジー状態であり、(NAV等により)ビジー状態の終了時刻が分かっている場合は、当該時刻までビジー状態が継続するものとして、そこからのアイドル状態の継続時間を予測する。
(2)それ以外の場合(現時刻においてアイドル状態、または、ビジー状態の終了時刻が不明の場合)、現時刻からのアイドル状態の継続時間を予測する。
【0198】
図13の場合、チャネルb(周波数帯域:5GHz帯)、チャネルd(周波数帯域:920MHz帯)については、現時刻t1において、アイドル状態であるので、現時刻t1からの予測処理を行う。つまり、無線通信装置100において、データD_time_sが予測処理の開始時刻を現在時刻とすることを指定するデータである場合の処理を行う。すなわち、予測部63において、データData1を用いた予測処理が実行される。
【0199】
当該予測処理の結果、チャネルb(周波数帯域:5GHz帯)について、アイドル状態の継続時間pred_idle_dur(ch_b)(時刻t1~時刻t3の期間)が取得されたものとする。
【0200】
また、上記予測処理の結果、チャネルd(周波数帯域:920MHz帯)について、アイドル状態の継続時間pred_idle_dur(ch_d)(時刻t1~時刻t11の期間)が取得されたものとする。
【0201】
また、図13の場合、チャネルc(周波数帯域:2.4GHz帯)については、現時刻t1において、アイドル状態ではなく、ビジー状態(あるいはNAV期間)の終了時刻が時刻t3であると分かっているので、現時刻t3からの予測処理を行う。つまり、無線通信装置100において、データD_time_sが予測処理の開始時刻を時刻t3とすることを指定するデータである場合の処理を行う。すなわち、予測用データ生成部61が、データData1(2.4GHz帯、ch_c)、データData2(2.4GHz帯、ch_c)に基づいて、予測処理の対象とするデータData3(2.4GHz帯、ch_c)(時刻t3より前のビジー状態/アイドル状態の時系列データであって、予測処理を行うための時系列データ)を生成し、生成したデータData3(2.4GHz帯、ch_c)を予測部63に出力する。そして、予測部63において、データData3を用いた予測処理が実行される。
【0202】
当該予測処理の結果、チャネルc(周波数帯域:2.4GHz帯)について、アイドル状態の継続時間pred_idle_dur(ch_c)(時刻t3~時刻t7の期間)が取得されたものとする。
【0203】
(ステップS3):
ステップS3において、判定部64は、最大待機時刻までの間に、送信権を獲得したチャネルの他のチャネルでも送信権が獲得できるか(下記2つの条件を両方満たすか)否かを判断する。具体的には、判定部64は、
(a)他のチャネルにおいて、送信権獲得チャネルの予測空き時間が終了するまでにバックオフが完了できる(NAVとバックオフカウンタから判断)。
(b)他のチャネルにおいて、バックオフ完了後に空き時間があると予測できる。つまり、
(予測したチャネルのアイドル状態継続時間)≧(バックオフ完了に必要な時間)
が成り立つ。
【0204】
判定部64は、上記2つの条件を満たすか否かについて、他のチャネルについての予測部63による予測結果データD_pred(band,ch)と、通信状況データ取得部62により取得された各チャネルにおける使用状況(ビジー状況)を示すデータD_busy(band,ch)とに基づいて、判断する。
(1)図13の場合、チャネルb(周波数帯域:5GHz帯)については、(a)送信権獲得チャネルの予測空き時間が終了するまで(時刻t5まで)にバックオフが完了でき、かつ、(b)予測したチャネルbのアイドル状態継続時間の終了時刻t4が、バックオフ完了に必要な時間経過後(時刻t2よりも後)であるので、
(予測したチャネルのアイドル状態継続時間)≧(バックオフ完了に必要な時間)
が成り立つ。
【0205】
したがって、判定部64は、チャネルb(周波数帯域:5GHz帯)については、最大待機時刻までに送信権が獲得できると判定する。
(2)図13の場合、チャネルc(周波数帯域:2.4GHz帯)については、(a)送信権獲得チャネルの予測空き時間が終了するまで(時刻t5まで)にバックオフが完了できないので、判定部64は、チャネルc(周波数帯域:2.4GHz帯)については、最大待機時刻までに送信権が獲得できないと判定する。
(3)図13の場合、チャネルd(周波数帯域:920MHz帯)については、(b)予測したチャネルdのアイドル状態継続時間の終了時刻t11において、バックオフ完了しておらず(チャネルdのバックオフが完了するのは時刻t11よりも後の時刻であるので)、
(予測したチャネルのアイドル状態継続時間)≧(バックオフ完了に必要な時間)
が成り立たない。したがって、判定部64は、チャネルd(周波数帯域:920MHz帯)については、最大待機時刻までに送信権が獲得できないと判定する。
【0206】
(ステップS4):
ステップS4において、判定部64は、これ以上待っても他のチャネルで送信権が獲得できないと判定した時点を特定する。図13の場合、この時点は、時刻t2である。そして、判定部64は、(1)送信権を獲得したチャネルaについての情報と、(2)時刻t2から送信権を獲得できるチャネルがチャネルbであることを示す情報と、(3)特定した時刻t2についての情報とを含めたデータData_rstを送信制御部2に出力する。
【0207】
そして、送信制御部2は、データData_rstに基づいて、時刻t2より、チャネルa(周波数帯域:5GHz帯)とチャネルb(周波数帯域:5GHz帯)とを使用して、チャネルを束ねて同時に利用する通信(同時並行通信)を行う。この場合、送信制御部2は、無線通信装置100の第1送信部(使用周波数帯域が5GHz帯、使用チャネルがチャネルa)と第2送信部(使用周波数帯域が5GHz帯、使用チャネルがチャネルb)とを用いて、時刻t2より、チャネルを束ねて同時に利用する通信(同時並行通信)を行うように、制御信号Ctl_tx1、Ctl_tx2を生成し、当該制御信号Ctl_tx1、Ctl_tx2を、それぞれ、第1送信部Tx1、第2送信部Tx2に出力する。また、送信制御部2は、第1送信部Tx1、第2送信部Tx2に送信させるデータを生成するために(データDinに対するデータ分離処理を行うために)、制御信号Ctl_divを生成し、当該制御信号Ctl_divをデータ分離部1に出力する。
【0208】
データ分離部1は、データDinから、第1送信部Tx1に出力するデータD1と、第2送信部Tx2に出力するデータD1とを生成し、生成したデータD1とデータD1とを、それぞれ、第1送信部Tx1、第2送信部Tx2に出力する。
【0209】
第1送信部Tx1は、制御信号Ctl_tx1に従い、データD1を、時刻t2から、送信する処理を行う。
【0210】
第2送信部Tx2は、制御信号Ctl_tx2に従い、データD1を、時刻t2から、送信する処理を行う。
【0211】
以上により、無線通信装置100では、第1送信部Tx1、第2送信部Tx2により、時刻t2から、2つのチャネル(使用周波数帯域が5GHz帯、使用チャネルがチャネルaと、使用周波数帯域が5GHz帯、使用チャネルがチャネルb)を用いた同時並行データ送信を行うことができる。図14に示すように、無線通信装置100では、時刻t2から、2つのチャネル(使用周波数帯域が5GHz帯、使用チャネルがチャネルaと、使用周波数帯域が5GHz帯、使用チャネルがチャネルb)を用いた同時並行データ送信(データD1aおよびデータD1bの送信)を行うことができる。
【0212】
なお、複数の周波数帯域、複数のチャネルを束ねた同時並行通信については、例えば、特許第6299024号に開示されている技術を用いてもよい。
【0213】
また、上記は一例であり、同時並行送信に使用するチャネル数は、2以外の数であってもよい。
【0214】
以上のように、無線通信装置100では、予測部の学習処理において、自装置からの送信データがないときの学習データによる更新のみを行うことで、高精度に予測できる予測部(予測モデル)を構築することができる。さらに、無線通信装置100では、上記処理により構築した予測モデルを用いた高精度な予測処理によって取得された予測パターンから、複数の周波数帯域、複数のチャネルのアイドル状態の継続時間を高精度に予測することができる。そして、無線通信装置100では、送信権を獲得したチャネルについてアイドル状態の継続時間を上記予測モデルにより予測し、予測したアイドル状態の継続時間に基づいて、最大待機時刻を特定する。そして、無線通信装置100では、最大待機時刻までの期間に、送信権を獲得できる他のチャネルの有無を判定し、送信権を獲得できる他のチャネルがあれば、当該他のチャネルと最初に送信権を獲得したチャネルとを束ねて利用した同時並行通信を行う。
【0215】
このように、無線通信装置100では、未使用リソースを効率良く利用することで無線通信機器の送信機会を増加させるとともに、未使用リソースを束ねて同時に利用することで無線通信の伝送速度を向上させることができる。
【0216】
[他の実施形態]
上記実施形態では、予測部において、複数の使用周波数帯、複数の使用チャネルのデータについて、共用して、学習処理、予測処理を行う場合について、説明したが、これに限定されることはなく、例えば、複数の使用周波数帯、複数の使用チャネルごとに、個別に、予測部を設けるようにしてもよい。
【0217】
また、上記実施形態で説明した無線通信装置において、各ブロックは、LSIなどの半導体装置により個別に1チップ化されても良いし、一部又は全部を含むように1チップ化されても良い。
【0218】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0219】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。
【0220】
また、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0221】
また、上記実施形態の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。
【0222】
例えば、上記実施形態の各機能部を、ソフトウェアにより実現する場合、図16に示したハードウェア構成(例えば、CPU、ROM、RAM、入力部、出力部等をバスBusにより接続したハードウェア構成)を用いて、各機能部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0223】
また、上記実施形態における処理方法の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。
【0224】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、大容量DVD、次世代DVD、半導体メモリを挙げることができる。
【0225】
上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0226】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0227】
100 無線通信装置
6 予測判定処理部
63 予測部
64 判定部
Tx1~TxN 第1~第N送信部(送信部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16