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  • 特許-電力監視システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】電力監視システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019061217
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162358
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 仁
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/115137(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧受電設備の高圧を低圧に変換する三相変圧器及び単相変圧器のそれぞれに流れる電流と電圧の情報を入手する計測手段と、
前記高圧受電設備から電力が供給される個々の負荷機器の動作電流情報及び力率情報を含む負荷機器情報を記憶する負荷情報記憶部と、
前記計測手段の計測情報と前記負荷情報記憶部の情報とを基に、稼働している負荷機器を推定すると共に、稼働している個々の負荷機器の使用電力を推定する負荷推定部と、
推定結果を表示する表示手段とを有することを特徴とする電力監視システム。
【請求項2】
前記負荷推定部は、所定の時間毎の平均値データを基に稼働負荷を推定することを特徴とする請求項1記載の電力監視システム。
【請求項3】
前記高圧受電設備に、前記計測手段と前記負荷推定部とを備えた監視装置を配置する一方、
通信ネットワーク上に配置したクラウドサーバに前記負荷情報記憶部を配置して、前記クラウドサーバと前記監視装置との間で通信を可能とし、
前記表示手段と前記監視装置とは、伝送線或いは前記通信ネットワークを介して通信を実施することを特徴とする請求項1又は2記載の電力監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家に設置された高圧受電設備の電力状況を監視する電力監視システムに関し、特に高圧受電設備に設置された変圧器の電力情報から稼働負荷を推定する電力監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、省エネルギーを推進するために、また稼働状況を把握するために複数の負荷機器を備えた電力設備の電力使用状況を監視する電力監視装置がある。
このような電力監視装置は、負荷機器毎に例えば分電盤や分岐回路毎に電流及び電圧を計測する計測装置を設けて、それらから個々に情報を入手してデータ処理等を行い監視していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-132812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の電力監視装置は多数の計測装置が必要であったし、それらは分散して設置されたため、取り付ける工事も面倒であり大きな費用が発生していた。
しかし、高圧受電設備の場合、電力を供給する負荷機器はそれぞれ稼働する際の電流及び力率特性に特徴を有しており、この特徴を予め把握すれば、個々に電流等を計測しなくても供給元である高圧受電設備から供給される電力及び力率から、稼働している負荷機器を推定することが可能である。
例えば、同様の三相負荷であっても、電気炉であれば三相に均等な電流が流れ、力率は0.9から1であり高いが、モータ負荷であれば、稼働時の電流は比較的小さく、力率は0.6から0.7と低い。このような特性から、電力供給元のみのデータでも判断することが可能である。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、個々の負荷機器に対して計測装置を設けることなく、高圧受電設備から各負荷に供給する変圧器毎の電力を計測するだけで、稼働している負荷機器の稼働状況を推定できる電力監視システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係る電力監視システムは、高圧受電設備の高圧を低圧に変換する三相変圧器及び単相変圧器のそれぞれに流れる電流と電圧の情報を入手する計測手段と、高圧受電設備から電力が供給される個々の負荷機器の動作電流情報及び力率情報を含む負荷機器情報を記憶する負荷情報記憶部と、計測手段の計測情報と負荷情報記憶部の情報とを基に、稼働している負荷機器を推定すると共に、稼働している個々の負荷機器の使用電力を推定する負荷推定部と、推定結果を表示する表示手段とを有することを特徴とする。
この構成によれば、複数の負荷機器が同時に稼働していても、計測した電流/電圧情報から負荷推定部が稼働状態にある負荷機器及び個々の負荷機器の使用電力を推定する。よって、負荷機器毎に電流計測手段、電圧計測手段を設置することなく、負荷毎の稼働状況を把握することができ、省エネルギーの推進に活用できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、負荷推定部は、所定の時間毎の平均値データを基に稼働負荷を推定することを特徴とする。
この構成によれば、負荷推定部は所定時間の平均値データを基に稼働負荷を推定することで、負荷機器の立ち上がり時の電流の大きな変動やノイズ等の関与を除去でき、精度の高い情報を提供できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、高圧受電設備に、計測手段と負荷推定部とを備えた監視装置を配置する一方、通信ネットワーク上に配置したクラウドサーバに負荷情報記憶部を配置して、クラウドサーバと監視装置との間で通信を可能とし、表示手段と監視装置とは、伝送線或いは通信ネットワークを介して通信を実施することを特徴とする。
この構成によれば、高圧受電設備の負荷情報を通信ネットワーク上のクラウドサーバが管理することで、複数の需要家の負荷機器の情報を一括管理でき、各需要家においてはシステムを低コストで構築できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の負荷機器が同時に稼働していても、高圧受電設備に設置された変圧器の電流/電圧情報から、負荷推定部が稼働状態にある負荷及び個々の負荷の使用電力を推定する。よって、負荷機器毎に電流計測手段、電圧計測手段を設置することなく、負荷毎の稼働状況を把握することができ、省エネルギーの推進に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電力監視システムの一例を示すブロック図である。
図2】監視装置の計測結果を表示装置に表示した説明図である。
図3図2の計測結果から負荷の稼働状況を推定した結果を表示した説明図である。
図4】表示装置の他の表示を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る電力監視システムの一例を示すブロック図であり、監視装置1、表示装置2、クラウドサーバ3を備えている。
監視装置1とクラウドサーバ3とは、インターネット網等の通信ネットワークを介して接続され、監視装置1と表示装置2とは伝送線を介して接続されている。尚、この監視装置1と表示装置2の間も通信ネットワークを介して接続しても良い。
【0012】
監視装置1はキュービクル等の高圧受電設備に設置され、複数の電圧センサ4が接続可能な電圧情報入力部11、複数の電流センサ5が接続可能な電流情報入力部12、各種情報を記憶するメモリ13、監視装置1を制御する監視装置CPU14、クラウドサーバ3と通信する第1通信IF15、表示装置2と通信する第2通信IF16等を備えている。
電圧情報入力部11に接続された電圧センサ4、及び電流情報入力部12に接続された電流センサ5は、高圧受電設備内で高圧を低圧に変換する三相変圧器及び単相変圧器(何れも図示せず)のそれぞれの電圧/電流を計測し、データが監視装置1に送られる。尚、電圧センサ4は計測部位に接続した単なる電線を含む。
【0013】
この計測データを受けた監視装置1は、監視装置CPU14が所定の演算を行いメモリ13に演算結果を蓄積する。詳しくは、入手した電流データ、電圧データから所定時間毎(ここでは30分毎とする)の平均値を算出し、この平均値を基に電力を算出してメモリ13に蓄積する。また力率も所定時間毎の平均を算出してメモリ13に蓄積する。尚、平均値を算出する所定時間は10分でも良いし、1時間でも良い。
【0014】
表示装置2は需要家の管理室等に設置され、表示部21、操作部22、監視装置1と通信する通信IF23等を有している。操作部22を操作して使用電力に関する所望する情報を監視装置1から入手して表示部21に表示できる。また、操作部22の操作により、高圧受電設備が電力を供給する個々の負荷機器の動作電流(電力)、力率等の諸特性の情報を、監視装置1を介してクラウドサーバ3に入力可能としている。
【0015】
クラウドサーバ3は、通信ネットワークを介して複数の監視装置1と通信を実施する。そして、監視装置1毎(需要家毎)の、高圧受電設備が電力を供給する個々の負荷機器の動作電流(或いは電力)、力率の情報を記憶する負荷情報データベース31、個々の負荷機器の運転開始/終了の平均的な時刻情報、稼働してからの電流変化特性、力率変化の特性等の運転モード特徴を記憶する運転情報データベース32等を備えている。尚、動作電流は、定格電流或いは稼働時の実際の計測電流値の何れかでも良いし、双方のデータを記憶しても良い。
【0016】
図2は表示装置2の表示例を示し、需要家Aの監視装置1が計測した電流(電力)及び力率の推移を示している。図2では、所定時間毎(ここでは30分毎)に算出された平均電流と力率を表示しており、監視装置CPU14が演算してメモリ13に蓄積されているデータが取り出されて表示される。
具体的に、高圧受電設備に設置された三相変圧器の計測値を示している。表示している時間帯では、計測を開始してから30分間は電流を計測しないため無負荷であるが、30分後から3時間後までは電流が計測されている。このことから、負荷機器が稼働していることがわかる。
【0017】
但し、クラウドサーバ3には、需要家Aの負荷機器として、三相変圧器には電気炉とモータが負荷機器として接続されていることで登録されている。また、電気炉の動作電流が100アンペア、力率が1.0で登録され、モータの定格は35アンペア、力率-0.6で登録されている。
【0018】
この情報を基に、監視装置CPU14は、30分後から1時間後までの間は、電流が約100アンペア、力率が0.9から1.0の間であることから、電気炉がフル稼働状態にあると推定する。
また、1時間後から1.5時間後までは、電流が約135アンペア、力率が0.8から0.9の間であることから、電気炉フル稼働+モータ稼働と推定する。また、1.5時間後から2.5時間後までは、電流が約70アンペア、力率が0.7から0.8の間であることから、電気炉が35アンペア稼働、モータ稼働状態にあると推定する。
更に、2.5時間後から3時間後までは、約35アンペア、力率0.9から1.0の間であることから、モータは停止し電気炉のみ駆動状態にあると推定する。
そして、3時間後は電流が計測されないことから無負荷と推定する。
【0019】
図3は、このような推定結果を表示部21に表示した状態を示している。D1が電気炉の稼働状態を示し、D2がモータの稼働状態を示している。図3に示すように、電気炉は計測を開始して30分後から3時間後まで稼働し、モータは1時間後から2.5時間後まで稼働したと推定している。
【0020】
このように、複数の負荷機器が同時に稼働していても、高圧受電設備に備えられた変圧器の電流/電圧を計測し、力率を算出するだけで、複数の負荷の稼働状況を把握することができる。よって、負荷機器毎に電流センサ等の計測手段を設置することなく、負荷毎の稼働状況を把握することができ、省エネルギーの推進に活用できる。
また、監視装置1は30分等所定時間の平均値データを基に稼働負荷を推定することで、負荷機器の立ち上がり時の電流の大きな変動やノイズ等の関与を除去でき、精度の高い情報を提供できる。
更に、高圧受電設備の負荷情報を通信ネットワーク上のクラウドサーバ3が管理することで、複数の需要家の負荷機器の情報を一括管理でき、各需要家においてはシステムを低コストで構築できる。
【0021】
図4は、表示装置2の他の表示を示し、需要家Aにおいて、高圧受電設備に備えられている単相変圧器が電力を供給する負荷機器の使用電力情報を、三相変圧器に接続された負荷機器と合わせて表示した例を示し、特定の時刻での使用電力を表示している。
単相変圧器には、主に照明と多数のパーソナルコンピュータが負荷機器として接続されており、クラウドサーバ3にその動作電流(電力)と力率が登録されている。
図4に示すように、単相変圧器に取り付けられた電圧センサ4、電流センサ5の計測値情報を基に、監視装置CPU14がクラウドサーバ3の運転情報データベース32が記憶する運転モード特徴を加味することで照明とパソコンの使用電力を推定できる。
このように、負荷機器が電気炉とモータ等に限定されるもので無く、単相変圧器の接続負荷においても、それぞれの時間帯での稼働状況を把握することはできる。
【0022】
尚、同一変圧器に接続された負荷機器同士が近い特性を有する場合は、定格値情報や力率情報に加えて、それぞれの平均的な稼働時間、起動時の電流特性等をクラウドサーバ3の運転情報データベース32に登録し、監視装置CPU14にこの登録データを参照させて時刻情報や電流の変動情報等を更に加味させることで、稼働している負荷機器を判別し推定することができる。
また上記実施形態では、クラウドサーバ3に負荷情報を蓄積しているが、クラウドサーバ3を配置せずに、個々の監視装置1内に或いは監視装置1毎に負荷情報/運転情報を記憶する記憶部を設けても良い。
【符号の説明】
【0023】
1・・監視装置、2・・表示装置(表示手段)、3・・クラウドサーバ、4・・電圧センサ(計測手段)、5・・電流センサ(計測手段)、14・・監視装置CPU(負荷推定部)、21・・表示部、31・・負荷情報データベース(負荷情報記憶部)、32・・運転情報データベース。
図1
図2
図3
図4