(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 5/378 20150101AFI20230512BHJP
H01Q 9/40 20060101ALI20230512BHJP
H01Q 1/50 20060101ALI20230512BHJP
H01Q 21/29 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H01Q5/378
H01Q9/40
H01Q1/50
H01Q21/29
(21)【出願番号】P 2019120170
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 由晴
【審査官】佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0280319(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118710(US,A1)
【文献】特開2013-021716(JP,A)
【文献】特開2018-207491(JP,A)
【文献】特開2012-209752(JP,A)
【文献】特開2004-201278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00-11/00
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたグランドパッドの横方向に形成された境界部に給電部を備えて、当該給電部から前記グランドパッドを離れる縦方向に直線形成された第1放射素子と、前記第1放射素子の先端から前記グランドパッドの前記境界部に平行するよう延設された第2放射素子とを有するT型のモノポールアンテナと、当該モノポールアンテナに隣接してパターン形成された無給電アンテナとを有するアンテナであって、
前記グランドパッドは、前記基板の表面に形成された第1グランドパッドと、裏面に形成された第2グランドパッドとを有し、
前記モノポールアンテナ及び前記無給電アンテナのうち、少なくとも前記モノポールアンテナは表面に形成される一方、前記第2グランドパッドは前記第1グランドパッドより縦に広く形成され、
前記無給電アンテナは、前記グランドパッドに連結されて前記第2放射素子を超える部位まで延びたアース素子と、当該アース素子の先端から横方向に延びた帯状素子とを有し、一方に延びた前記帯状素子は前記第2放射素子の上部を覆う長さを有し、
前記無給電アンテナ全体はT形状を
成して前記基板の裏面に形成され、前記アース素子は前記第2グランドパッドに連結されて成ることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記第2放射素子から、前記グランドパッドに向けて前記第1放射素子と平行に延びたスタブを有
し、前記スタブは前記第2グランドパッドとの間で静電容量結合して成ることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項3】
前記グランドパッドは前記基板の中央に配置されて、前記基板の縦方向両端部にはアンテナパターン領域が設けられ、
一方の前記アンテナパターン領域に、前記モノポールアンテナと前記無給電アンテナが配置され、
他方の前記アンテナパターン領域の前記モノポールアンテナと対峙する位置には、前記モノポールアンテナと同一形状で上下及び左右を反転して形成されたモノポールアンテナが配置されて成ることを特徴とする請求項
1又は2記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にパターン形成したアンテナに関し、詳しくはモノポールアンテナを基本とした広帯域のアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
モノポールアンテナは、放射電波の4分の1波長の長さの放射素子を立てれば良いため、省スペースに配置でき小型の通信機器に広く採用されている。そして、このモノポールアンテナの広帯域化を図るために、周囲に別途導体パターンを配置して複雑なアンテナ形状としたものがある。
例えば、特許文献1では基板上に形成したモノポールアンテナの周囲にグランドに接続した放射素子を配置して広帯域化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のアンテナは、単純なモノポールアンテナより広帯域なアンテナとすることができた。しかしながら、基板上にパターン形成した素子に加えて立体構造のエレメントを備えているためコスト高なものとなっていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、基板上にパターン形成するだけで、広帯域な特性を得ることが可能なアンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、基板上に形成されたグランドパッドの横方向に形成された境界部に給電部を備えて、当該給電部からグランドパッドを離れる縦方向に直線形成された第1放射素子と、第1放射素子の先端からグランドパッドの境界部に平行するよう延設された第2放射素子とを有するT型のモノポールアンテナと、当該モノポールアンテナに隣接してパターン形成された無給電アンテナとを有するアンテナであって、グランドパッドは、基板の表面に形成された第1グランドパッドと、裏面に形成された第2グランドパッドとを有し、モノポールアンテナ及び無給電アンテナのうち、少なくともモノポールアンテナは表面に形成される一方、第2グランドパッドは第1グランドパッドより縦に広く形成され、無給電アンテナは、グランドパッドに連結されて第2放射素子を超える部位まで延びたアース素子と、当該アース素子の先端から横方向に延びた帯状素子とを有し、一方に延びた帯状素子は第2放射素子の上部を覆う長さを有し、無給電アンテナ全体はT形状を成して基板の裏面に形成され、アース素子は第2グランドパッドに連結されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、基板上にパターン形成したT型のモノポールアンテナと無給電アンテナにより、低い周波数帯と高い周波数帯の2領域の共振周波数帯を生成でき、広帯域の周波数に対応可能となる。
また、無給電アンテナを基板の裏面に形成してアース素子を第2グランドパッドに連結するため、モノポールアンテナのカップリングを低減でき、アンテナを小型にできる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、第2放射素子から、グランドパッドに向けて第1放射素子と平行に延びたスタブを有し、スタブは第2グランドパッドとの間で静電容量結合して成ることを特徴とする。
この構成によれば、整合回路を設ける必要が無くなり、小型で安価な構成にできる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、グランドパッドは基板の中央に配置されて、基板の縦方向両端部にはアンテナパターン領域が設けられ、一方のアンテナパターン領域に、モノポールアンテナと無給電アンテナが配置され、他方のアンテナパターン領域のモノポールアンテナと対峙する位置には、モノポールアンテナと同一形状で上下及び左右を反転して形成されたモノポールアンテナが配置されて成ることを特徴徴とする。
この構成によれば、T型のモノポールアンテナと無給電アンテナの組に加えて、別途T型のモノポールアンテナを備えることで、T型モノポールアンテナの指向性の歪みを補償でき、良好な送受信特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板上にパターン形成したモノポールアンテナと無給電アンテナにより、低い周波数帯と高い周波数帯の2領域の共振周波数帯を生成でき、広帯域の周波数に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るアンテナの一例を示し、基板の表面のパターンに加えて裏面のパターンも合わせて示した正面説明図である。
【
図7】アンテナの放射パターン図を示し、(a)はメインアンテナの特性、(b)はサブアンテナの特性である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1~3は本発明に係るアンテナの一例を示す説明図であり、
図1は基板の表面のアンテナパターンに加えて裏面に形成したアンテナパターンを合わせて表示した正面説明図、
図2は基板の正面図、
図3は基板正面から背面のパターン図である。1は第1モノポールアンテナ(以下、「第1アンテナ」と称する。)、2は無給電アンテナ、3は第2モノポールアンテナ(以下、「第2アンテナ」と称する。)、4はパターン形成されたグランドパッドであり、これらは誘電体から成る基板5の表面或いは裏面に銅箔によりパターン形成されている。
【0014】
第1アンテナ1と無給電アンテナ2とでメインアンテナを構成し、第2アンテナ3がサブアンテナを構成している。以下、図面の上下方向、左右方向を基板5の縦方向、左右方向(横方向)として説明する。
【0015】
グランドパッド4は、基板5の表裏両面に形成され、表面に第1グランドパッド4aが形成され、裏面に第2グランドパッド4bが形成されている。双方のグランドパッド4a,4bは、パターンのほぼ全域が重なるよう形成され、適宜部位が連結されている。
具体的に、グランドパッド4は、基板5の中央部全体に形成され、帯状を成して基板5の左右端部に至る幅を有している。そして、基板5の縦方向の両端(上部及び下部)には一定の空間を有するよう形成され、上部及び下部の両面にグランドパターンの無いアンテナパターン領域Pを設けている。
【0016】
第1グランドパッド4aのアンテナパターン領域Pとの境界部は、左右方向に直線形成された境界線を有して形成されている。また、第2グランドパッド4bは第1グランドパッド4aより上下に広く形成されている。
【0017】
第1アンテナ1は、基板5の表面に形成され、上側のアンテナパターン領域Pに形成されている。第1グランドパッド4aの上辺境界部に給電部6を有して、上方に棒状に伸びた第1放射素子11と、この放射素子11の上端において左右方向に伸びた第2放射素子12とを備え、T型アンテナとして形成されている。
【0018】
但し、第1放射素子11の左側近傍において、第2放射素子12から第1放射素子11と平行にグランドパッド4に向けてスタブ13が垂下形成されている。そして、このスタブ13の下端は、基板5の裏面に形成された第2グランドパッド4bと僅かに重なるよう形成されている。
【0019】
図4はA部を拡大した図であり、スタブ13と第2グランドパッド4bとの重なり部Dを示している。
図4に示すように、0.5mm重なるようスタブ13は形成され、スタブ13と第2グランドパッド4bとが静電容量結合している。
【0020】
無給電アンテナ2は、基板5の裏面に形成され、第2グランドパッド4bに連結されて、途中メアンダ状に折り曲げ形成されたアース素子21と、このアース素子21の先端から左右方向に延びた帯状素子22とにより構成され、全体はT型を成すT型アンテナである。
また、この無給電アンテナ2は、前面(表面)から見て第1アンテナ1の左側に隣接するよう配置され、アース素子21は、表面に形成された第1放射素子11を超える上方まで延びており、帯状素子22のうち第1アンテナ1の方へ延びた一方の帯状素子22aは、第1アンテナ1の第2放射素子12の上部を覆うよう延設されている。
一方、他方に延びた帯状素子22bは、基板5の端部まで延設され、更に先端は下方に折り曲げられてコ字状に形成されている。
【0021】
第2アンテナ3は、基板5の表面下部のアンテナパターン領域Pに形成され、第1アンテナ1に対峙するよう形成されている。具体的に、第1アンテナ1と同一形状で形成され、第1放射素子11a、第2放射素子12a、スタブ13aを有し、第1グランドパッド4aとの境界部に給電部6aを有し、左右及び上下が反転されて形成され、第1アンテナ1と点対称形状となっているT型アンテナである。
【0022】
アンテナの主な寸法を記すと、
図1に示すように第1アンテナ1の第1放射素子11の長さは20.5mm、第2放射素子12の左右方向の長さは30mm、スタブ13の長さは10mmである。
また、無給電アンテナ2のアース素子21はメアンダ部を伸ばすと50mm以上の長さを有し、帯状素子22の第1アンテナ1側は44mmの長さ、反対側は直線部が33mmの長さで形成され、その先が折り曲げられている。
尚、基板5は厚さ0.8mmの誘電体基板であるFR4(ガラスエポキシ基板)を使用している。
【0023】
図5はメインアンテナである第1アンテナ1と無給電アンテナ2との組のVSWR特性を示している。
図5に示すように、VSWRが3.0未満となる周波数エリアは0.688GHz~1.029GHzの低い周波帯と1.667GHz~2.778GHzの高い周波帯の2つ存在し、広帯域な特性を示している。
また、
図6はサブアンテナである第2アンテナ3のVSWR特性を示している。
図6に示すように、VSWRが3.0未満となる周波数エリアは1.214GHz~2.890GHzであり、メインアンテナの上述した高い周波帯を含む帯域においてVSWRが良好な特性を示している。
【0024】
図7はアンテナの放射パターン図を示し、(a)はメインアンテナの特性、(b)はサブアンテナの特性である。尚、この特性は基板5に直交する面方向に対しての特性である。
この
図7に示すように、サブアンテナである第2アンテナ3の放射パターンは、2.7GHzにおいてメインアンテナと大きな違いを有しているが、メインアンテナの放射パターンを補う特性を示している。そのため、第1アンテナ1、無給電アンテナ2、そして第2アンテナ3を組み合わせることにより、良好な放射特性を得ることができることがわかる。
【0025】
このように、基板5上にパターン形成したT型モノポールアンテナである第1アンテナ1と無給電アンテナ2により、低い周波数帯と高い周波数帯の2領域の共振周波数帯を生成でき、広帯域の周波数に対応可能となる。
また、スタブ13を設けるため、整合回路を減らすことが可能となり、安価な構成とすることが可能である。特に、スタブ13とグランドパッド4とを容量結合させることで、整合回路を設ける必要が無くなり、小型で安価に構成できる。
更に、無給電アンテナ2を第1アンテナ1と異なる基板5の裏面に形成することで、第1アンテナのカップリングを低減でき、アンテナを小型にできる。
加えて、T型のモノポールアンテナである第1アンテナ1と無給電アンテナ2の組に加えて、別途T型のモノポールアンテナである第2アンテナ3を備えることで、T型モノポールアンテナの指向性の歪みを補償でき、良好な送受信特性を得ることができる。
【0026】
尚、上記実施形態では、サブアンテナとして第2アンテナ3を備えているが、
図5のVSWR特性から分かるように、第1アンテナ1と無給電アンテナ2とから成るメインアンテナだけでも広帯域な周波数特性を得ることができる。
また、正面から見て第1アンテナ1の左側に無給電アンテナ2を配置したが、左右反転しても良い。この場合、第2アンテナ3も第1アンテナ1に合わせて左に移動すれば良い。
【符号の説明】
【0027】
1・・第1アンテナ(第1モノポールアンテナ)、2・・無給電アンテナ、3・・第2アンテナ(第2モノポールアンテナ)、4・・グランドパッド、4a・・第1グランドパッド、4b・・第2グランドパッド、5・・基板、6,6a・・給電部、11・・第1放射素子、12・・第2放射素子、13・・スタブ、21・・アース素子、22・・帯状素子、P・・アンテナパターン領域。