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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】試料ホルダ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20230512BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20230512BHJP
【FI】
G01N21/01 B
G01N21/3563
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019177669
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021056043
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】593230855
【氏名又は名称】株式会社エス・テイ・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】中川 孝郎
(72)【発明者】
【氏名】増谷 浩二
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-255902(JP,A)
【文献】特開平04-285828(JP,A)
【文献】実開平01-132955(JP,U)
【文献】実開昭51-029886(JP,U)
【文献】特開2015-175666(JP,A)
【文献】特開2018-063269(JP,A)
【文献】特開平07-128206(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104515748(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
G01N 1/00 - G01N 1/44
G01N 3/00 - G01N 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の一方の側を支持する第1のホルダ部であって、前記試料に接触する第1の接触面を有し且つ前記試料を分析する赤外光に対して透明な第1の赤外透明部材、を有する前記第1のホルダ部と、
前記試料の他方の側を支持する第2のホルダ部であって、前記試料に接触する第2の接触面を有し且つ前記試料を分析する赤外光に対して透明な第2の赤外透明部材、を有する前記第2のホルダ部と、
前記第1の接触面と前記第2の接触面との距離を調整して、前記試料に作用する圧力を調整する圧力調整具と、
前記第1の接触面と同一の断面積を有する柱状に形成された前記第1の赤外透明部材と、
前記第2の接触面側に行くにつれて断面積が狭くなる錐台状に形成された前記第2の赤外透明部材と、
を備え、
前記試料は、加圧されながら挟まれた状態で前記第1のホルダ部と前記第2のホルダ部との間に配置され、
前記第2の接触面の表面積は、前記第1の接触面よりも狭い面積を有する、
ことを特徴とする試料ホルダ。
【請求項2】
試料の一方の側を支持する第1のホルダ部であって、前記試料に接触する第1の接触面を有し且つ前記試料を分析する赤外光に対して透明な第1の赤外透明部材、を有する前記第1のホルダ部と、
前記試料の他方の側を支持する第2のホルダ部であって、前記試料に接触する第2の接触面を有し且つ前記試料を分析する赤外光に対して透明な第2の赤外透明部材、を有する前記第2のホルダ部と、
前記第1の接触面と前記第2の接触面との距離を調整して、前記試料に作用する圧力を調整する圧力調整具と、
前記第1のホルダ部および前記第2のホルダ部を支持する基体であって、突起状の位置決め部を有する前記基体と、
前記第1のホルダ部に形成され且つ前記位置決め部が通過して位置決めされる第1の被位置決め部と、
前記第2のホルダ部に形成され且つ前記位置決め部が通過する第2の被位置決め部であって、前記位置決め部に対する隙間が前記第1の被位置決め部よりも大きな形状の前記第2の被位置決め部と、
前記位置決め部と前記第1の被位置決め部および前記第2の被位置決め部とで前記試料に対する前記第2の接触面の位置を調整した状態で、前記第1の接触面と前記第2の接触面との距離を近づけて前記第1のホルダ部と前記第2のホルダ部とを固定する前記圧力調整具と、
を備え、
前記試料は、加圧されながら挟まれた状態で前記第1のホルダ部と前記第2のホルダ部との間に配置され、
前記第2の接触面の表面積は、前記第1の接触面よりも狭い面積を有する、
とを特徴とする試料ホルダ。
【請求項3】
前記分析する赤外光に対して透明であるととともに、可視光に対しても透明な前記第1の赤外透明部材および前記第2の赤外透明部材、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の試料ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を保持する試料ホルダに関し、特に、試料を挟んで圧縮延伸する試料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から試料を観測、分析するための装置として、赤外光(IR:Infrared)を利用したFT-IR法(フーリエ変換赤外分光法、例えば、特許文献1参照)が知られている。
FT-IRにおいて、試料に赤外光を透過させて観測、分析を行う場合には、試料を薄く切り出す必要があるとともに、薄く切り出された試料をホルダで保持する必要がある。そして、試料を薄く切り出しても、薄さが充分でない場合は図6の構成をもった試料ホルダにより圧縮延伸することが行われる。
【0003】
図6は従来の試料ホルダの説明図である。
図6において、従来の試料ホルダ01は、試料02を挟むように、第1のホルダ部01aと、第2のホルダ部01bとを有する。従来の試料ホルダは、第1のホルダ部01aと第2のホルダ部01bは、同一の構成となっており、試料02を挟んで向かい合わせに配置されて、挟み込むように試料02を保持した状態でネジ(図示せず)で固定する。
各ホルダ部01a,01bの中央部には、赤外光03の光軸に対応して、貫通孔04が形成されている。各貫通孔04には、赤外光03に対して透明な赤外透明部材として、それぞれダイヤモンド06が設置されている。ダイヤモンド06は、試料02との接触面06a側の角が面取りされてはいるが基本的には円柱状の形状に形成されている。そして、試料02を各ホルダ部01a,01bで両側から挟んだ状態でネジを締めて試料02を圧縮して試料02の厚みを薄くし、FT-IR装置に試料ホルダ01をセットして、貫通孔04やダイヤモンド06、試料02を通過した赤外光03を観測して、分析をおこなう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-156385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術の問題点)
前述の従来の試料ホルダ01では、切り出された試料02の厚さが、想定よりも厚い場合や表面の凹凸が大きい場合に使用する。取り扱う試料02は慎重な取り扱いが必要であり、静電気で取り扱いが難かったり、弱い空気の流れでも散逸、紛失したりしやすい問題がある。試料ホルダ01に使用するダイヤモンド06の径が大きいときには、試料02の取り扱いは比較的容易であるが、試料02を圧縮する圧力はダイヤモンド06の径の二乗に反比例するため大きくすることが困難である。一方、ダイヤモンド06の径が小さいときには、試料02を圧縮する圧力を大きくできるが、試料02の測定部位をダイヤモンド06の測定位置にセットするのに手間がかかることや、対のダイヤモンド06のお互いの位置合わせが困難になり、両者の位置ずれはダイヤモンド06の破損の原因や赤外光03の透過率であるスループットを低下させ測定データの劣化を招く。
【0006】
本発明は、試料を両側から挟む接触面の面積が同一の構成に比べて、試料に高い圧力を加えられることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の試料ホルダは、
試料の一方の側を支持する第1のホルダ部であって、前記試料に接触する第1の接触面を有し且つ前記試料を分析する赤外光に対して透明な第1の赤外透明部材、を有する前記第1のホルダ部と、
前記試料の他方の側を支持する第2のホルダ部であって、前記試料に接触する第2の接触面を有し且つ前記試料を分析する赤外光に対して透明な第2の赤外透明部材、を有する前記第2のホルダ部と、
前記第1の接触面と前記第2の接触面との距離を調整して、前記試料に作用する圧力を調整する圧力調整具と、
前記第1の接触面と同一の断面積を有する柱状に形成された前記第1の赤外透明部材と、
前記第2の接触面側に行くにつれて断面積が狭くなる錐台状に形成された前記第2の赤外透明部材と、
を備え、
前記試料は、加圧されながら挟まれた状態で前記第1のホルダ部と前記第2のホルダ部との間に配置され、
前記第2の接触面の表面積は、前記第1の接触面よりも狭い面積を有する、
ことを特徴とする。
【0009】
前記技術的課題を解決するために、請求項2に記載の発明の試料ホルダは、
試料の一方の側を支持する第1のホルダ部であって、前記試料に接触する第1の接触面を有し且つ前記試料を分析する赤外光に対して透明な第1の赤外透明部材、を有する前記第1のホルダ部と、
前記試料の他方の側を支持する第2のホルダ部であって、前記試料に接触する第2の接触面を有し且つ前記試料を分析する赤外光に対して透明な第2の赤外透明部材、を有する前記第2のホルダ部と、
前記第1の接触面と前記第2の接触面との距離を調整して、前記試料に作用する圧力を調整する圧力調整具と、
前記第1のホルダ部および前記第2のホルダ部を支持する基体であって、突起状の位置決め部を有する前記基体と、
前記第1のホルダ部に形成され且つ前記位置決め部が通過して位置決めされる第1の被位置決め部と、
前記第2のホルダ部に形成され且つ前記位置決め部が通過する第2の被位置決め部であって、前記位置決め部に対する隙間が前記第1の被位置決め部よりも大きな形状の前記第2の被位置決め部と、
前記位置決め部と前記第1の被位置決め部および前記第2の被位置決め部とで前記試料に対する前記第2の接触面の位置を調整した状態で、前記第1の接触面と前記第2の接触面との距離を近づけて前記第1のホルダ部と前記第2のホルダ部とを固定する前記圧力調整具と、
を備え、
前記試料は、加圧されながら挟まれた状態で前記第1のホルダ部と前記第2のホルダ部との間に配置され、
前記第2の接触面の表面積は、前記第1の接触面よりも狭い面積を有する、
とを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の試料ホルダにおいて、
前記分析する赤外光に対して透明であるととともに、可視光に対しても透明な前記第1の赤外透明部材および前記第2の赤外透明部材、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1,2に記載の発明によれば、試料を両側から挟む接触面の表面積が同一の構成に比べて、試料に高い圧力を加えられる。よって、試料の厚みを薄くしつつ接触面との密着性を向上でき、分光分析の精度を向上させることができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、錐台状の第2の赤外透明部材で試料に高い圧力を加えることができる。さらに、錐台状の第2の赤外透明部材の試料側面で集光した赤外光は広がって進行するので、円筒状の場合には赤外光のケラレが起こるが、錐台状の場合はケラレが押さえられるためSN比のよいデータを得ることが可能になる。
また、請求項2に記載の発明によれば、第2の被位置決め部と位置決め部との隙間を利用して、試料に対して第2の接触面の位置を調整し、試料の測定部位を第2の被位置決め部の中央に配置するなどの操作性の向上を図ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、可視光に対して透明な各赤外透明部材を通して、試料を目視やカメラ等で確認することで試料測定部位を分析する光の光路に適切に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の実施例1の試料ホルダの全体説明図であり、図1Aは平面図、図1B図1AのIB-IB線断面図、図1C図1Bの矢印IC部分の拡大図、図1D図1Aの矢印ID部分の断面図である。
図2図2は実施例1の試料ホルダの基体の説明図であり、図2Aは平面図、図2Bは側面図である。
図3図3は実施例1の第1のホルダ部の説明図であり、図3Aは平面図、図3B図3AのIIIB-IIIB線断面図、図3C図3Bの矢印IIIC部分の拡大図である。
図4図4は実施例1の第2のホルダ部の説明図であり、図4Aは平面図、図4B図4AのIVB-IVB線断面図、図4C図4Bの矢印IVC部分の拡大図である。
図5図5は実施例1の実験結果の説明図であり、図5Aは実施例1の試料ホルダを使用し且つ試料を加圧した状態の実験例の説明図、図5Bは実施例1の試料ホルダを使用し且つ試料を加圧していない状態の比較例1の説明図、図5Cは従来の試料ホルダを使用し且つ試料を加圧した状態の比較例2の説明図、図5Dは従来の試料ホルダを使用し且つ試料を加圧していない状態の比較例3の説明図である。
図6図6は従来の試料ホルダの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1の試料ホルダの全体説明図であり、図1Aは平面図、図1B図1AのIB-IB線断面図、図1C図1Bの矢印IC部分の拡大図、図1D図1Aの矢印ID部分の断面図である。
図2は実施例1の試料ホルダの基体の説明図であり、図2Aは平面図、図2Bは側面図である。
図3は実施例1の第1のホルダ部の説明図であり、図3Aは平面図、図3B図3AのIIIB-IIIB線断面図、図3C図3Bの矢印IIIC部分の拡大図である。
図4は実施例1の第2のホルダ部の説明図であり、図4Aは平面図、図4B図4AのIVB-IVB線断面図、図4C図4Bの矢印IVC部分の拡大図である。
【0015】
図1において、FT-IR装置等の光学分析装置で使用可能な本発明の実施例1の試料ホルダ1は、基体の一例としてのベース部材2を有する。図1図2において、ベース部材2は、板状の部材により構成されている。ベース部材2の中央部には、測定光(の光軸)Lの通過方向である板厚方向に貫通する開口3が形成されている。
開口3の周囲には、位置決め部の一例としてのピン4が配置されている。実施例1のピン4は、開口3と同心円上の位置に配置されており、120°間隔で3つ設置されている。
開口3の周囲には、締結部の一例としてのネジ孔6が配置されている。実施例1のネジ孔6は、ピン4と同一の同心円上の位置に配置されており、ピン4どうしの中間の位置に120°間隔で3つ設置されている。
【0016】
図1図3において、ベース部材2の上面には、第1のホルダ部の一例としての第1のホルダプレート11が配置されている。実施例1の第1のホルダプレート11は、円板状に形成されている。
第1のホルダプレート11には、前記ピン4に対応する位置に、第1の被位置決め部の一例としての第1のピン貫通孔12が形成されている。なお、第1のピン貫通孔12の内径は、ピン4の外径に対応する大きさに形成されている。すなわち、第1のピン貫通孔12は、ピン4が通過可能且つ位置決めがされるように、ピン4貫通のための余裕分だけピン4の外径よりも大きな内径に形成されている。
また、第1のホルダプレート11には、ネジ孔6に対応する位置に、第1のネジ貫通孔13が形成されている。
【0017】
第1のホルダプレート11の中央部には、第1の光通過部の一例としての第1の透過口14が形成されている。図1C図3B図3Cにおいて、第1の透過口14は、ベース部材2側から離れるにつれて内径が小さくなる第1のテーパ部14aと、第1のテーパ部14aの内端から円柱状に延びる第1の小径部14bと、第1の小径部14bに対して段差状に形成され且つ内径が第1の小径部14bよりも大きな第1の大径部14cとを有する。
【0018】
第1の大径部14cには、第1の赤外透明部材の一例としての第1のダイヤモンド16が配置されている。実施例1の第1のタイヤモンド16は、測定光Lである赤外光に対して透明であるダイヤモンドで構成されており、赤外光が透過可能である。実施例1の第1のダイヤモンド16は、内径や断面積が同一の柱状の一例としての円柱状に構成されている。図3Cに示すように、実施例1の第1のダイヤモンド16は、試料側の角部が、破損防止のため面取りされている。すなわち、従来技術でも同様であるが、第1のホルダ部01aと第2のホルダ部01bとが接近、離間する方向に対して相対的に傾斜した場合に、対向して配置されたダイヤモンド06の一方の角が、他方の接触面に接触して、傷が形成されたり、欠けたりといった破損する場合があるが、面取りを行うことで、これが抑制される。なお、本願明細書および特許請求の範囲において、試料を挟むための面積を変更するための構成ではない面取りや製造工程上の必要なダイヤモンド16,26の形状の相違等は、面取り等のない形状に技術的に含まれるものとして説明を行う。
【0019】
また、実施例1の第1のダイヤモンド16は、第1の小径部14bと第1の大径部14cとの第1の段差面14dに接着剤等を介して、第1のホルダプレート11に固定されている。
さらに、実施例1の第1のダイヤモンド16の外表面である第1の接触面16aは、第1のホルダプレート11の外表面11aと接着剤等によりわずかに突出するように構成されている。
【0020】
図1図4において、第1のホルダプレート11の上方には、第2のホルダ部の一例としての第2のホルダプレート21が配置されている。実施例1の第2のホルダプレート21は、第1のホルダプレート11と同様に、円板状に形成されている。
第2のホルダプレート21には、前記ピン4に対応する位置に、第2の被位置決め部の一例としての第2のピン貫通孔22が形成されている。図1Dにおいて、実施例1の第2のピン貫通孔22にはピン4が挿入可能に構成されているが、第2のピン貫通孔22の内径は、ピン4の外径および第1のピン貫通孔12の内径よりも、大きな内径に形成されている。したがって、第2のピン貫通孔22とピン4との隙間22aは、第1のピン貫通孔12とピン4との隙間(=ほとんどない)に比べて、大きな隙間となるように、第2のピン貫通孔22の形状が形成されている。
【0021】
また、第2のホルダプレート21には、ネジ孔6に対応する位置に、第2のネジ貫通孔23が形成されている。実施例2のネジ貫通孔23も、第2のピン貫通孔22における隙間22aに対応する隙間を有するように内径が形成されている。
第2のホルダプレート21の中央部には、第2の光通過部の一例としての第2の透過口24が形成されている。なお、第2の透過口24は、第1の透過口14と同様に形成されている。したがって、第2の透過口24は、第2のテーパ部24aと、第2の小径部24bと、第2の大径部24cと、第2の段差面24dと、を有する。
【0022】
前記第2の大径部24cには、第2の赤外透明部材の一例としての第2のダイヤモンド26が配置されている。実施例1の第2のダイヤモンド26は、測定光Lである赤外光に対して透明であるダイヤモンドで構成されており、赤外光が透過可能である。実施例1の第2のダイヤモンド26は、試料S側に行くにつれて内径や断面積が小さくなる錐台の一例としての円錐台状に形成されている。なお、第2のダイヤモンド26において、第1のダイヤモンド16のところで説明した面取り等についての扱いについては同様である。
したがって、実施例1では、第2のダイヤモンド26の外表面である第2の接触面26aは、第1の接触面16aよりも直径や面積が小さく形成されている。一例として、実施例1では、第1の接触面16aは、直径2.1mm(φ2.1)に形成され、第2の接触面26aは直径0.5mm(φ0.5)に形成されている。
また、実施例1の第2のダイヤモンド26は、第2の接触面26aが、第2のホルダプレート21の外表面21aよりも外側に突出するように構成されている。
よって、実施例1では、図1Cに示すように、第1の接触面16aと第2の接触面26aとで試料Sを挟んだ状態で保持可能である。
【0023】
図1において、ベース部材2の各ネジ孔6には、圧力調整具の一例としてのネジ31が支持されている。ネジ31は、ネジ頭部31aをユーザが指で回転させることで、ネジ31を締めるまたは緩めることが可能である。そして、ネジ31を締める方向に回転すると、ネジ頭部31aが第2のホルダプレート21をベース部材2側に押さえることとなる。したがって、挟まれた試料Sに、圧縮される(潰される)方向の力が作用すると共に、ベース部材2と第1のホルダプレート11と第2のホルダプレート21とが締結、固定されることとなる。逆に、ネジ31を緩める方向に回転されると、試料Sへの圧力が低下すると共に、ベース部材2と第1のホルダプレート11と第2のホルダプレート21との締結を緩めることが可能である。
【0024】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の試料ホルダ1では、ネジ31を締めると、試料Sに対して圧力を増大させることが可能である。この時、実施例1では、第2の接触面26aの面積が第1の接触面16aに比べて小さい。よって、従来のように対向する接触面06a,06aが同一の場合に比べて、同じ締結力でも、面積の狭い第2の接触面26aでは圧力(=単位面積当たりの力)が強くなる。よって、従来の構成に比べて、試料Sを圧縮する力を強くすることができる。よって、試料Sが想定よりも厚かったり、想定よりも凹凸が大きかったりしても、ネジ31を締めることで、従来よりも強い力で試料Sを圧縮することが可能であり、試料Sを薄く、平坦にすることが可能である。よって、FT-IR装置での分析の精度を向上させることが可能である。
【0025】
(実験例)
次に、実施例1の効果を確かめるために実験を行った。
実験は、試料Sとして、80μmの厚さのポリエチレンフィルムの試料片を使用した。また、FT-IR装置として、Thermo Fisher Scientific社製Nicolet 6700を使用して、吸光度スペクトルを測定した。実験例1では、実施例1の試料ホルダ1を使用して、試料Sを加圧した。比較例1では、実施例1の試料ホルダ1を使用したが、試料Sの加圧を行っていない。比較例2では、図6に示す従来の試料ホルダ1を使用し、試料Sを加圧した。比較例3では、図6に示す従来の試料ホルダ01を使用したが、試料Sの加圧を行っていない。
実験結果を図5に示す。
【0026】
図5は実施例1の実験結果の説明図であり、図5Aは実施例1の試料ホルダを使用し且つ試料を加圧した状態の実験例の説明図、図5Bは実施例1の試料ホルダを使用し且つ試料を加圧していない状態の比較例1の説明図、図5Cは従来の試料ホルダを使用し且つ試料を加圧した状態の比較例2の説明図、図5Dは従来の試料ホルダを使用し且つ試料を加圧していない状態の比較例3の説明図である。
図5に示すように、加圧していない比較例1(図5B)および比較例3(図5D)では、試料が厚過ぎるためバンドピーク部の透過率が0%と吸収が大きいので、吸光度バンドのピーク部は大きなノイズに覆われている。また、加圧した比較例2(図5C)でも、比較例3よりはノイズは減少したが、依然として多くのノイズが観測される。一方で、実験例1(図5A)では比較例2に比べて顕著にノイズが減少していることが確認された。これは、試料Sを押す圧力が強くなったことで、試料Sの膜厚が透過測定に適した薄さに達したためにノイズが減少した。よって、実施例1の試料ホルダ1では、従来の構成に比べて、FT-IR装置での測定の精度が向上することが確認された。
【0027】
また、実施例1では、ピン4に対する第2のピン貫通孔22での隙間22aが、第1のピン貫通孔12に比べて大きく形成されている。したがって、ネジ31を緩めた状態で第2のホルダプレート21の位置、すなわち、試料Sに対する第2の接触面26aの位置を微調整することが可能である。赤外光Lは、第2の接触面26aの領域を通過した光が観測されるが、一般的に、第2の接触面26aの中心に近いほど光の強度が強く、観測されるスペクトルの強度も強くなる。したがって、試料Sの位置が、第2の接触面26aから外れていたり、第2の接触面26aの内側でも中心から離れた外縁部であれば、観測される強度が低下して、精度が低下する恐れがある。特に、試料Sが微小なものであると、第2の接触面26aの中心の位置に合わせてユーザが設置したつもりでもずれていることがあり、微小な試料Sの位置をずらして第2の接触面26aに合わせることは作業に時間と手間がかかる問題がある。これに対して、実施例1では、ネジ31を一旦緩めることで、第2のホルダプレート21の位置を微調整することが可能である。したがって、試料Sよりも大きく操作しやすい第2のホルダプレート21を操作して、第2の接触面26aの中心に近い位置に試料Sを接触させることが可能である。
【0028】
また、実施例1では、第2のダイヤモンド26が円錐台状に形成されている。したがって、円錐台状の第2の赤外透明部材の試料側面で集光した赤外光は広がって進行するので、円筒状の場合には赤外光のケラレが起こるが、円錐台状の場合はケラレが押さえられるためSN比のよいデータを得ることが可能になる。
さらに、実施例1では、赤外光Lに対して透明であると共に、可視光に対しても透明なダイヤモンド16,26が使用されている。したがって、試料Sがダイヤモンド16,26で挟まれた後でも、開口3や各透過口14,24を通じて目視またはカメラ等で観察可能である。したがって、試料Sがどの辺りにあるのか、きちんとセットされているのかを、ユーザが確認可能で、より信頼性の高いデータの取得が可能になる。
【0029】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)~(H08)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、試料Sとして、第2の接触面26aよりも小さな試料を例示したがこれに限定されない。第2の接触面26aよりも大きい試料を保持することも可能である。
(H02)前記実施例において、各接触面16a,26aと外表面11a,21aとが突出している場合に限定されない。第1の接触面16aが面一であっても、内側に入っていても問題はない。また、第2の接触面26aは突出していることが望ましいが、面一とすることも可能である。
【0030】
(H03)前記実施例において、赤外透明部材の一例としてダイヤモンド16,26を例示したが、これに限定されない。分析に使用する分析光の波長に応じて、分析光が透過可能な材料を使用可能である。例えば、赤外光であれば、ZnSeやGe、Si、サファイヤ、フッ化カルシウム(CaF)等、を使用可能である。なお、赤外光に対して透明かつ可視光にも透明な材料の一例としてのダイヤモンドを例示したが、これに限定されない。赤外光に対して透明かつ可視光にも透明な材料のサファイヤやフッ化カルシウムを使用することも可能であるが、強度、耐久性の面からダイヤモンドを使用することが好ましい。
(H04)前記実施例において、第1の赤外透明部材16と第2の赤外透明部材26とで同一の材料であるダイヤモンドを使用したが、これに限定されない。例えば、第1の赤外透明部材16と第2の赤外透明部材26とで異なる材料を使用することも可能である。例えば、白色の試料の場合、第1の赤外透明部材を可視光に不透明な材料(例えば、暗い色の材料であるSi等)とし、第2の赤外透明部材を可視光に透明な材料(例えば、ダイヤモンド)とすることで、不透明な第1の赤外透明部材の上に乗る白色の試料を確認しやすくすることも可能である。
【0031】
(H05)前記実施例において、第1のダイヤモンド16として円柱状のものを例示し、第2のダイヤモンド26として円錐台状のものを例示したが、これに限定されない。多角柱状のものや多角錐台状(切頂多角錐状)のものとすることが可能である。また、第2のダイヤモンド26として、試料Sに近づくにつれて連続的に径が小さくなる錐状のものを例示したが、これに限定されない。例えば、階段状に径が小さくなる構成とすることも可能である。
(H06)前記実施例において、ピン4の形状も円柱状に限定されず、多角柱状とすることも可能である。また、ピン4やネジ31の個数や形状も、設計や仕様等に応じて適宜変更可能である。
【0032】
(H07)前記実施例において、試料Sを加圧するための構成として、ネジ31で構成された圧力調整具を例示したが、これに限定されない。例えば、空気圧で加圧したり、モータでネジ31を回転させる伝動機構を設ける等、任意の変更が可能である。
(H08)前記実施例において、隙間22aを形成して第2のホルダプレート21を微調整する機構を有することが望ましいが、微調整の機構を設けないようにすることも可能である。逆に、第1のホルダプレート11に微調整の機構を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…試料ホルダ、
2…基体、
4…位置決め部、
11…第1のホルダ部、
12…第1の被位置決め部、
16…第1の透明部材、
16a…第1の接触面、
21…第2のホルダ部、
22…第2の被位置決め部、
22a…隙間、
26…第2の透明部材、
26a…第2の接触面、
31…圧力調整具、
L…光、
S…試料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6