(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】気化器
(51)【国際特許分類】
F22B 1/18 20060101AFI20230512BHJP
F22B 3/02 20060101ALI20230512BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
F22B1/18 J
F22B3/02
H01L21/304 651L
H01L21/304 648G
H01L21/304 648K
H01L21/304 648L
(21)【出願番号】P 2019220265
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000134028
【氏名又は名称】株式会社SCREEN SPE テック
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】呉 希宣
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-093899(JP,A)
【文献】特開2005-064482(JP,A)
【文献】特開2004-296552(JP,A)
【文献】特開2015-056524(JP,A)
【文献】特開2012-154599(JP,A)
【文献】特開2016-157709(JP,A)
【文献】特開2006-066579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/18
F22B 3/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤を気化させる気化器であって、
前記溶剤を貯留するタンクと、
前記タンクを加熱するタンクヒータと、
前記タンクの上部空間に設置されており、前記溶剤をミスト状に吐出する溶剤ノズルと、
前記タンクの前記上部空間に設置されており、高温ガスを吐出して、前記溶剤ノズルからのミスト状の前記溶剤を前記高温ガスにより気化させるガスノズルと、
ガスを加熱する第1ガスヒータと、
前記
ガスノズルに接続されており、前記第1ガスヒータによって加熱された前記ガスを前記高温ガスとして前記ガスノズルに供給する第1ガス供給配管と、
前記タンクの前記上部空間において開口し、前記溶剤の蒸気を乾燥ユニットに供給する蒸気供給配管と
を備える、気化器。
【請求項2】
請求項1に記載の気化器であって、
前記溶剤ノズルの吐出口は下側を向いており、
前記ガスノズルの吐出口の高さ位置は、前記溶剤ノズルの吐出口の高さ位置よりも低い、気化器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の気化器であって、
平面視において、前記ガスノズルの吐出口は前記溶剤ノズルの吐出口に向いており、前記ガスノズルから吐出された前記高温ガスは、前記溶剤ノズルからのミスト状の前記溶剤を気化させつつ、前記溶剤の蒸気を前記蒸気供給配管の先端口に搬送する、気化器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の気化器であって、
前記ガスノズルの内部流路のうち吐出口側の流路端部の断面は、前記吐出口に向かうにつれて広くなる、気化器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の気化器であって、
前記第1ガスヒータによって加熱された前記高温ガスの第1ガス温度は、前記タンク内に貯留された前記溶剤の液体温度よりも高い、気化器。
【請求項6】
請求項5に記載の気化器であって、
前記液体温度は前記溶剤の沸点未満であり、前記第1ガス温度は前記溶剤の沸点よりも高い、気化器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の気化器であって、
前記タンク内に貯留された前記溶剤をバブリングするバブリング機構をさらに備える、気化器。
【請求項8】
請求項7に記載の気化器であって、
前記バブリング機構は、
前記タンク内に貯留された前記溶剤に浸漬する位置に設けられ、当該溶剤中にバブリングガスを供給するバブリング管と、
バブリングガスを加熱する第2ガスヒータと、
前記第2ガスヒータによって加熱された前記バブリングガスを前記バブリング管に供給する第2ガス供給配管と
を含み、
前記第2ガスヒータによって加熱された前記バブリングガスの第2ガス温度は、前記タンク内に貯留された前記溶剤の液体温度よりも高い、気化器。
【請求項9】
請求項8に記載の気化器であって、
前記第1ガスヒータによって加熱された前記高温ガスの第1ガス温度は、前記第2ガス温度よりも高い、気化器。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の気化器であって、
前記タンクと前記溶剤ノズルとを接続する循環配管と、
前記循環配管に改装され、前記タンク内に貯留された前記溶剤を前記溶剤ノズルに送液する循環ポンプと
をさらに備える、気化器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機溶剤を気化させる蒸気発生装置が提案されている(例えば特許文献1)。例えば特許文献1では、蒸気発生装置はタンクとヒータと窒素ガス導入管とIPA(イソプロピルアルコール)ガス供給配管とを含んでいる。タンクには、液体のIPAが貯留される。タンクの上部には蓋が設けられる。ヒータはタンクを加熱することにより、タンク内に貯留されたIPAを加熱する。これにより、IPAの気化が促進される。
【0003】
窒素ガス導入管は蓋を貫通しており、その先端口がタンク内の上部空間において開口する。窒素ガス導入管はその先端口からタンク内の上部空間に窒素ガスを導入する。窒素ガスは、タンク内のIPA蒸気を搬送するキャリアガスとして機能する。
【0004】
IPAガス供給配管も蓋を貫通しており、その先端口がタンク内の上部空間において開口する。IPAガス供給配管の他端口はIPA蒸気の供給先に接続される。タンク内のIPA蒸気は窒素ガスとともに、IPAガス供給配管の先端口からIPAガス供給配管の内部に流入し、供給先に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IPA蒸気は、例えば、半導体デバイス用の基板を乾燥させる乾燥装置に供給される。乾燥装置は、例えば当該基板を純水で洗浄した後に、IPA蒸気を利用して、当該基板に付着した純水をIPAに置換する。乾燥装置は当該基板に高温ガスを吹き付けてIPAを気化させて、基板を乾燥する。
【0007】
ところで、基板の表面に形成されたパターンの微細化はますます進行している。このような基板を純水で洗浄すれば、非常に狭いパターン間に純水が付着する。この純水をIPAに置換させるには、乾燥装置に供給されるIPA蒸気の濃度は高いことが望ましい。
【0008】
そこで、本願は、より高い濃度で溶剤の蒸気を生成することができる気化器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
気化器の第1の態様は、溶剤を気化させる気化器であって、前記溶剤を貯留するタンクと、前記タンクを加熱するタンクヒータと、前記タンクの上部空間に設置されており、前記溶剤をミスト状に吐出する溶剤ノズルと、前記タンクの前記上部空間に設置されており、高温ガスを吐出して、前記溶剤ノズルからのミスト状の前記溶剤を前記高温ガスにより気化させるガスノズルと、ガスを加熱する第1ガスヒータと、前記ガスノズルに接続されており、前記第1ガスヒータによって加熱された前記ガスを前記高温ガスとして前記ガスノズルに供給する第1ガス供給配管と、前記タンクの前記上部空間において開口し、前記溶剤の蒸気を乾燥ユニットに供給する蒸気供給配管とを備える。
【0010】
気化器の第2の態様は、第1の態様にかかる気化器であって、前記溶剤ノズルの吐出口は下側を向いており、前記ガスノズルの吐出口の高さ位置は、前記溶剤ノズルの吐出口の高さ位置よりも低い。
【0011】
気化器の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる気化器であって、平面視において、前記ガスノズルの吐出口は前記溶剤ノズルの吐出口に向いており、前記ガスノズルから吐出された前記高温ガスは、前記溶剤ノズルからのミスト状の前記溶剤を気化させつつ、前記溶剤の蒸気を前記蒸気供給配管の先端口に搬送する。
【0012】
気化器の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる気化器であって、前記ガスノズルの内部流路のうち吐出口側の流路端部の断面は、前記吐出口に向かうにつれて広くなる。
【0013】
気化器の第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる気化器であって、前記第1ガスヒータによって加熱された前記高温ガスの第1ガス温度は、前記タンク内に貯留された前記溶剤の液体温度よりも高い。
【0014】
気化器の第6の態様は、第5の態様にかかる気化器であって、前記液体温度は前記溶剤の沸点未満であり、前記第1ガス温度は前記溶剤の沸点よりも高い。
【0015】
気化器の第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる気化器であって、前記タンク内に貯留された前記溶剤をバブリングするバブリング機構をさらに備える。
【0016】
気化器の第8の態様は、第7の態様にかかる気化器であって、前記バブリング機構は、前記タンク内に貯留された前記溶剤に浸漬する位置に設けられ、当該溶剤中にバブリングガスを供給するバブリング管と、バブリングガスを加熱する第2ガスヒータと、前記第2ガスヒータによって加熱された前記バブリングガスを前記バブリング管に供給する第2ガス供給配管とを含み、前記第2ガスヒータによって加熱された前記バブリングガスの第2ガス温度は、前記タンク内に貯留された前記溶剤の液体温度よりも高い。
【0017】
気化器の第9の態様は、第8の態様にかかる気化器であって、前記第1ガスヒータによって加熱された前記高温ガスの第1ガス温度は、前記第2ガス温度よりも高い。
【0018】
気化器の第10の態様は、第1から第9のいずれか一つの態様にかかる気化器であって、前記タンクと前記溶剤ノズルとを接続する循環配管と、前記循環配管に改装され、前記タンク内に貯留された前記溶剤を前記溶剤ノズルに送液する循環ポンプとをさらに備える。
【発明の効果】
【0019】
気化器の第1の態様によれば、溶剤ノズルが溶剤をミスト状に吐出し、ガスノズルが高温ガスにより、ミスト状の溶剤を気化させる。よって、タンクの上部空間における溶剤の蒸気の量を増加させることができる。つまり、より高い濃度で溶剤の蒸気を生成することができる。したがって、気化器はより高い濃度で蒸気を乾燥ユニットに供給できる。
【0020】
気化器の第2の態様によれば、高温ガスがミスト状の溶剤に当たりやすい。よって、溶剤の蒸気量をさらに増加できる。
【0021】
気化器の第3の態様によれば、高温ガスがキャリアガスとして機能するので、溶剤の蒸気を外部に供給しやすい。
【0022】
気化器の第4の態様によれば、高温ガスが広がって流れるので、ミスト状の溶剤が広がっていても、高温ガスが溶剤に接触しやすい。よって、溶剤の蒸気をさらに増加できる。
【0023】
気化器の第5の態様によれば、タンク内に貯留された溶剤が沸騰する可能性を低減しつつ、高温ガスによってミスト状の溶剤を速やかに気化させることができる。
【0024】
気化器の第6の態様によれば、タンク内に貯留された溶剤の沸騰を回避しつつ、高温ガスによってミスト状の溶剤をより速やかに気化させることができる。
【0025】
気化器の第7の態様によれば、タンク内に貯留された溶剤から発生する蒸気の量を増加させることができる。
【0026】
気化器の第8の態様によれば、タンク内に貯留された溶剤が沸騰する可能性を低減しつつも、当該溶剤から発生する蒸気の量を増加させることができる。
【0027】
気化器の第9の態様によれば、タンク内に貯留された溶剤が沸騰する可能性を低減しつつ、高温ガスによってミスト状の溶剤をより速やかに気化させることができる。
【0028】
気化器の第10の態様によれば、タンク内に貯留された溶剤を利用して溶剤ノズルからミスト状の溶剤を噴出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】乾燥処理装置の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】乾燥ユニットの構成の一例を概略的に示す側面図である。
【
図3】気化器の構成の一例を概略的に示す側面図である。
【
図4】ガスノズルの構成の一例を概略的に示す断面図である。
【
図5】溶剤ノズルの吐出口、ガスノズルの吐出口および蒸気供給配管の先端口の位置関係の一例を概略的に示す平面図である。
【
図6】乾燥ユニットの構成の他の一例を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されており、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされ得る。また、図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また各図において、構成要素の位置関係を明確にするため、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。以下では、Z軸方向の一方側(ここでは鉛直上側)を+Z側と呼び、Z軸方向の他方側(ここでは鉛直下側)を-Z側とも呼ぶ。X軸およびY軸も同様である。
【0031】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0032】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0033】
<第1の実施の形態>
<乾燥処理装置の概要>
まず、本実施の形態の気化器を用いた乾燥処理装置の概要について説明し、その後、気化器を説明する。
図1は、乾燥処理装置100の構成の一例を概略的に示すブロック図である。この乾燥処理装置100は乾燥ユニット200と流体供給ユニット300とを含んでいる。乾燥ユニット200は配管群80を介して流体供給ユニット300と接続されている。乾燥ユニット200は流体供給ユニット300から供給される流体を用いて基板に対する処理を行う。
【0034】
図1の例では、流体供給ユニット300は純水供給ユニット310と蒸気供給ユニット(気化器)1とガス供給ユニット330とを含んでいる。純水供給ユニット310は純水供給配管81を介して乾燥ユニット200に接続され、蒸気供給ユニット1は蒸気供給配管8を介して乾燥ユニット200に接続され、ガス供給ユニット330はガス供給配管83を介して乾燥ユニット200に接続されている。
【0035】
純水供給ユニット310は純水供給配管81を介して乾燥ユニット200に純水を供給する。乾燥ユニット200は、純水供給ユニット310から供給された純水で基板を洗浄することができる。蒸気供給ユニット1は、例えば純水よりも揮発性の高い溶剤の蒸気を、蒸気供給配管8を介して乾燥ユニット200に供給する。溶剤としては、例えばIPA(イソプロピルアルコール)などの有機溶剤を採用できる。乾燥ユニット200は、揮発性の高い有機溶剤を基板に付着させて、基板の表面の純水を当該有機溶剤に置換させる。ガス供給ユニット330はガス供給配管83を介して不活性ガスを乾燥ユニット200に供給する。不活性ガスとしては、基板と化学反応を起こしにくい気体(例えば、ヘリウムおよびアルゴンのような希ガス、または、窒素ガス)を採用できる。乾燥ユニット200は、ガス供給ユニット330から供給された不活性ガスを基板の表面に向かって吹き付ける。これにより、基板の表面の有機溶剤が気化し、基板を乾燥することができる。
【0036】
<乾燥ユニットの概略構成>
乾燥ユニット200の構成は特に限定されないものの、その一例について概説する。
図2は、乾燥ユニット200の構成の一例を概略的に示す図である。
図2の例では、乾燥ユニット200は、複数の基板Wに対して一括して乾燥処理を行うバッチ式の装置である。
【0037】
処理対象となる基板Wは平板状の形状を有しており、
図2の例では、基板Wの厚み方向に沿って見て、円形状を有している。基板Wは例えば半導体基板である。半導体基板はシリコンの他、GaAs(ガリウムヒ素)またはSiC(シリコンカーバイド)等の半導体基板も含む。
【0038】
複数の基板WはキャリアCに格納された状態で、不図示の搬送機構によって乾燥ユニット200内に搬送される。このキャリアCは、少なくとも+Z側および-Z側に開口する内部空間を有しており、この内部空間内に複数の基板Wが格納される。複数の基板WはキャリアCの内部空間において、起立姿勢をとっており、また基板Wの法線方向(厚み方向:ここではY軸方向)に沿って並んで格納される。起立姿勢とは、基板Wの法線方向(厚み方向)が水平方向に沿う姿勢である。キャリアCに格納される基板Wの枚数は特に限定される必要はないものの、例えば数十枚(例えば50枚)程度である。
【0039】
乾燥ユニット200は乾燥チャンバ210と貯留槽220と液ノズル230と蒸気ノズル240とガスノズル250と排出部270とを含んでいる。
【0040】
乾燥チャンバ210は筐体211と蓋212とを含んでいる。筐体211は、+Z側に開口する箱状の形状を有している。蓋212は開閉可能に筐体211の+Z側の端部に取り付けられている。蓋212が閉じることで、乾燥チャンバ210の+Z側の開口部が閉塞する。
【0041】
乾燥チャンバ210の内部には、貯留槽220が配置されている。貯留槽220は、+Z側に開口する開口部を有しており、この開口部から貯留槽220の内部に純水が供給される。貯留槽220は、供給された純水を貯留する。
図2の例では、貯留槽220は筐体211の底部から離れた状態で固定部材260を介して筐体211に固定されている。
【0042】
複数の基板WはキャリアCに格納された状態で、不図示の搬送機構によって乾燥チャンバ210内に搬送される。具体的には、キャリアCは蓋212が開いたときの筐体211の開口部を通過して、貯留槽220の内部に搬入され、貯留槽220の底部の上に載置される。
【0043】
液ノズル230は純水供給配管81を介して純水供給ユニット310に接続される。純水供給配管81にはバルブ234が改装されている。バルブ234が開くことにより、液ノズル230は貯留槽220の内部に純水を吐出する。これにより、貯留槽220には純水が貯留される。貯留槽220には、キャリアCが純水に浸漬できる程度に純水が貯留される。
【0044】
蒸気ノズル240は蒸気供給配管8を介して蒸気供給ユニット1に接続される。蒸気供給配管8にはバルブ244が改装されている。バルブ244が開くことにより、蒸気ノズル240は乾燥チャンバ210の内部空間のうち、貯留槽220よりも+Z側の上部空間に対して、有機溶剤の蒸気を供給する。この有機溶媒の蒸気は上部空間で広がり、その一部が貯留槽220に貯留された純水の液面で液化して有機溶剤の液膜Fを形成する。なお、蒸気供給ユニット1は、有機溶剤の蒸気を搬送するキャリアガスとしての不活性ガスも蒸気供給配管8に供給してもよい。
【0045】
図2の例では、蒸気供給配管8には、ヒータ242が設けられている。ヒータ242は、蒸気供給配管8の内部を流れる有機溶剤の蒸気を加熱し、当該蒸気が凝結する可能性を低減する。
【0046】
排出部270は、貯留槽220の底部に接続されたバルブ付きの配管271および乾燥チャンバ210の底部に接続されたバルブ付きの配管272を含んでおり、貯留槽220内の純水を乾燥チャンバ210の外部へ排出することができる。排出部270は、貯留槽220内の純水の液面に有機溶剤の液膜Fが形成された状態で、純水を排出する。これにより、有機溶剤の液膜Fは貯留槽220において時間の経過とともに下降する。この液膜Fが各基板WおよびキャリアCの表面と接触することで、各表面に付着した純水が、蒸発潜熱の小さい有機溶剤に順次に置換される。
【0047】
ガスノズル250はガス供給配管83を介してガス供給ユニット330に接続される。ガス供給配管83には、バルブ254が改装されている。バルブ254が開くことにより、ガスノズル250は基板WおよびキャリアCに向けて不活性ガスを供給する。
図2の例では、ガス供給配管83には、ヒータ252が設けられている。ヒータ252は、ガス供給配管83の内部を流れる不活性ガスを加熱する。これにより、ガスノズル250から高温の不活性ガスが吐出される。純水の排出後にガスノズル250が高温の不活性ガスを基板WおよびキャリアCに供給することにより、基板WおよびキャリアCを乾燥することができる(乾燥処理)。
【0048】
<蒸気供給ユニット(気化器)>
次に、乾燥ユニット200に有機溶剤の蒸気を供給する蒸気供給ユニット1について説明する。この蒸気供給ユニット1は液体の有機溶剤を気化させることにより、有機溶剤の蒸気を生成し、その蒸気を乾燥ユニット200に供給する。よって、蒸気供給ユニット1は気化器であるともいえる。以下では、蒸気供給ユニット1を気化器1とも呼ぶ。
【0049】
図3は、気化器1の構成の一例を概略的に示す側面図である。気化器1はタンク2とヒータ3と溶剤ノズル4とガスノズル5とヒータ6と液ノズル7と蒸気供給配管8と制御部9とを含んでいる。
【0050】
タンク2は底板21と側壁22と蓋23とを含んでいる。底板21は板状の形状を有しており、その厚み方向がZ軸方向に沿う姿勢で配置される。側壁22は底板21の周縁から+Z側に延在している。蓋23は側壁22の+Z側の端部に取り付けられている。蓋23は着脱可能に側壁22に取り付けられてもよい。
【0051】
液ノズル7はタンク2の内部に設けられている。液ノズル7はその吐出口7aからタンク2の内部に液体の有機溶剤を吐出する。これにより、タンク2には、有機溶剤が貯留される。
図3に例示するように、液ノズル7は配管71を介して溶剤供給ユニット73に接続されている。
図3の例では、配管71はタンク2の蓋23を貫通しており、タンク2の外部に設けられた溶剤供給ユニット73に接続される。溶剤供給ユニット73は液体の有機溶剤を配管71に供給する。配管71には、バルブ72が介装されている。バルブ72は配管71の内部流路の開閉を切り替える。バルブ72は制御部9によって制御される。
【0052】
制御部9がバルブ72を開くことにより、有機溶剤が配管71の内部を流れて液ノズル7に供給され、液ノズル7の吐出口7aからタンク2の内部に吐出される。タンク2内には、貯留された有機溶剤の量を検出するセンサが設けられてもよい。当該センサによる測定結果を示す電気信号は制御部9に出力される。制御部9は当該測定結果に基づいてバルブ72を閉じることにより、所定量の有機溶剤をタンク2内に貯留することができる。
【0053】
ヒータ3はタンク2内に貯留された有機溶剤を加熱する。ヒータ3の熱源は特に限定されないものの、例えば、電熱線を採用することが可能である。
図3の例では、ヒータ3はタンク2に当接しており、タンク2を加熱することにより、タンク2内に貯留された有機溶剤を加熱する。ヒータ3はタンクを加熱するので、以下では、ヒータ3をタンクヒータ3とも呼ぶ。
図3の例では、タンクヒータ3はタンク2の底板21に取り付けられている。タンクヒータ3は制御部9によって制御される。タンクヒータ3が、タンク2内に貯留された有機溶剤を加熱することにより、当該有機溶剤の気化を促進することができる。よって、タンク2内の上部空間に、より多くの有機溶剤の蒸気を供給することができる。ここでいう上部空間とは、タンク2の内部空間のうち貯留された有機溶剤の液面よりも+Z側の空間である。
【0054】
タンクヒータ3はタンク2内に貯留された有機溶剤を、その有機溶剤の沸点を超えない程度に加熱するとよい。これによれば、タンク2内の有機溶剤の沸騰を回避することができる。有機溶剤としてIPAを採用する場合、その沸点は82.4℃であるので、タンクヒータ3は、タンク2内に貯留された有機溶剤の温度(以下、液体温度と呼ぶ)を例えば70℃程度に加熱する。
【0055】
なお、
図3の例では、液ノズル7の吐出口7aは、タンク2内に貯留された有機溶剤の液面よりも+Z側に位置しているものの、液ノズル7の吐出口7aが有機溶剤の液面よりも-Z側に位置していてもよい。
【0056】
溶剤ノズル4はタンク2の内部に設置されており、タンク2内の有機溶剤の液面よりも+Z側に位置している。溶剤ノズル4は例えば一流体ノズルまたは二流体ノズルであり、タンク2内の上部空間において有機溶剤をミスト状に吐出する。ここでいうミスト状の有機溶剤とは、溶剤ノズル4が吐出する有機溶剤の微小液滴の粒径が例えば1mm以下であることをいう。微小液滴の粒径は数百μm以下または数十μm以下であってもよい。溶剤ノズル4はミストノズルまたはスプレーノズルとも呼ばれ得る。
【0057】
溶剤ノズル4は平面視においてタンク2の中央付近に設けられ得る。また
図3の例では、溶剤ノズル4は主として-Z側に向けて有機溶剤をミスト状に吐出する。溶剤ノズル4は、その吐出口4aから離れるにしたがって広がるように有機溶剤をミスト状に吐出してもよい。例えば、溶剤ノズル4は略等方的に有機溶剤の微小液滴群(ミスト)を吐出してもよく、あるいは、-Z側に向けて円錐状に有機溶剤の微小液滴群を吐出してもよい。
【0058】
溶剤ノズル4は配管41の一端に接続されている。
図3の例では、配管41はタンク2の蓋23をZ軸方向に貫通する。また、
図3の例では、配管41の他端はタンク2の側壁22の下部に接続されている。タンク2内に貯留された有機溶剤は配管41の他端から配管41の内部を流れ、溶剤ノズル4へ供給される。つまり、
図3の例では、配管41は、タンク2と溶剤ノズル4とを接続する循環配管である。
図3の例では、配管41はタンク2の側壁22の下部に接続されているものの、タンク2の底板21に接続されてもよい。
【0059】
配管41には、フィルタ42および循環ポンプ43が介装されている。循環ポンプ43は、タンク2内に貯留された有機溶剤を、配管41を介して溶剤ノズル4に送液する。循環ポンプ43は制御部9によって制御される。
【0060】
フィルタ42は循環ポンプ43よりも溶剤ノズル4に近い位置に設けられており、配管41の内部を流れる有機溶剤中の不純物を捕捉する。これにより、溶剤ノズル4に供給される有機溶剤中の不純物の量を低減することができる。
【0061】
ガスノズル5はタンク2内の上部空間に設置されている。ガスノズル5も溶剤ノズル4と同様に、タンク2内の有機溶剤の液面よりも+Z側に位置している。ガスノズル5は高温の不活性ガスをタンク2の上部空間に吐出する。より具体的には、ガスノズル5は、溶剤ノズル4から吐出された有機溶剤の微小液滴群に向かって、高温の不活性ガスを吐出する。言い換えれば、ガスノズル5の吐出口5aが、溶剤ノズル4からの有機溶剤の微小液滴群を向くように、ガスノズル5が設置される。
【0062】
ガスノズル5はガス供給配管51の一端に接続されている。
図3の例では、ガス供給配管51はタンク2の側壁22を貫通しており、ガス供給配管51の他端がタンク2の外部のガス供給ユニット330に接続される。ガス供給ユニット330はガス供給配管51に不活性ガスを供給する。ガス供給配管51には、ヒータ6およびバルブ52が介装されている。バルブ52はガス供給配管51の内部流路の開閉を切り替える。バルブ52は制御部9によって制御される。バルブ52は、ガス供給配管51の内部を流れる不活性ガスの流量を調整可能なバルブであってもよい。
【0063】
ヒータ6は、ガス供給配管51の内部を流れる不活性ガスを加熱する。ヒータ6は不活性ガスを加熱することから、以下では、ヒータ6をガスヒータ6とも呼ぶ。ガスヒータ6の熱源は特に限定されないものの、例えば、電熱線を採用することが可能である。ガスヒータ6は制御部9によって制御される。
【0064】
バルブ52が開いた状態でガスヒータ6が不活性ガスを加熱する。これにより、ガスヒータ6によって加熱された高温の不活性ガスがガス供給配管51の内部を流れてガスノズル5に供給され、ガスノズル5の吐出口5aからタンク2内の上部空間に吐出される。この高温の不活性ガスは、溶剤ノズル4から吐出された有機溶剤の微小液滴群に向かって流れる。これにより、高温の不活性ガスが、体積の小さい有機溶剤の各微小液滴に接触する。したがって、有機溶剤の微小液滴群は速やかに気化する。
【0065】
以上のように、タンク2内の上部空間には、タンク2内に貯留された有機溶剤からの蒸気のみならず、溶剤ノズル4によって吐出されたミスト状の有機溶剤からも蒸気が供給される。したがって、タンク2内の上部空間における有機溶剤の蒸気の量を増加させることができる。
【0066】
ガスヒータ6は、不活性ガスの温度(以下、ガス温度と呼ぶ)がタンク2内の有機溶剤の液体温度(例えば70℃)よりも高くなるように、不活性ガスを加熱してもよい。より具体的には、ガスノズル5によって吐出された直後のガス温度がタンク2内の有機溶剤の液体温度よりも高くなるように、ガスヒータ6が不活性ガスを加熱する。これによれば、より高温の不活性ガスが有機溶剤の微小液滴群に接触するので、当該微小液滴群をより速やかに気化させることができる。
【0067】
例えば、ガスヒータ6は不活性ガスのガス温度が有機溶剤の沸点(82.4℃)よりも高くなるように不活性ガスを加熱してもよい。例えばガスヒータ6は、ガスヒータ6の直後の不活性ガスのガス温度が100℃~150℃となるように不活性ガスを加熱してもよい。これによれば、ガスヒータ6からガスノズル5の吐出口5aへ流れる間にガス温度が低下しても、ガスノズル5から吐出された不活性ガスのガス温度を有機溶剤の沸点(82.4℃)よりも高くすることができる。沸点を超える高温の不活性ガスが有機溶剤の微小液滴群に接触すると、当該微小液滴群がさらに速やかに気化する。なお、有機溶剤の微小液滴の体積は小さいので、ほとんど沸騰せずにそのまま気化する。
【0068】
図3の例では、溶剤ノズル4は吐出口4aから少なくとも-Z側に有機溶剤をミスト状に吐出するところ、ガスノズル5の吐出口5aは溶剤ノズル4の吐出口4aよりも-Z側に位置している。言い換えれば、ガスノズル5の吐出口5aの高さ位置は、溶剤ノズル4の吐出口4aの高さ位置よりも低い。より具体的な一例として、ガスノズル5の吐出口5aの+Z側の端部(最上端)が溶剤ノズル4の吐出口4aの-Z側の端部(最下端)に対して、-Z側に位置している。これによれば、ガスノズル5の吐出口5aからの高温の不活性ガスは溶剤ノズル4からの有機溶剤の微小液滴群に当たりやすい。
【0069】
また、
図3の例では、ガスノズル5の吐出口5aの中心軸は水平に沿っているので、ガスノズル5は主として水平に向けて不活性ガスを吐出する。ただし、ガスノズル5は、不活性ガスが吐出口5aから遠ざかるにつれて広がるように、当該不活性ガスを吐出してもよい。
図4は、ガスノズル5の構成の一例を概略的に示す断面図である。ガスノズル5の内部流路のうち、吐出口5aに繋がる流路端部の断面は、吐出口5aに向かうにつれて広くなっている。このようなガスノズル5はラッパノズルとも呼ばれ得る。不活性ガスはガスノズル5の流路端部において広がりながら吐出口5aへ向かって流れるので、ガスノズル5は、その吐出口5aから遠ざかるにつれて広がるように、不活性ガスを吐出する。
【0070】
これによれば、ガスノズル5から高温の不活性ガスが広がって流れるので、溶剤ノズル4からのミスト状の有機溶剤が広がっていても、高温の不活性ガスが有機溶剤の微小液滴群に当たりやすい。よって、有機溶剤の蒸気の量をさらに増加できる。
【0071】
図3に例示するように、気化器1には、蒸気供給配管8も設けられている。蒸気供給配管8の先端口8aはタンク2の上部空間において開口している。ガスノズル5の吐出口5aから吐出された高温の不活性ガスは、溶剤ノズル4からの有機溶剤の微小液滴群を気化させつつ、その蒸気を蒸気供給配管8の先端口8aに搬送する。つまり、不活性ガスは有機溶剤の蒸気を搬送するキャリアガスとしても機能する。蒸気供給配管8はタンク2の例えば蓋23を貫通しており、先端口8aとは反対側において、乾燥ユニット200に接続される。具体的には、蒸気供給配管8は乾燥ユニット200の蒸気ノズル240に接続される。これにより、気化器1は蒸気供給配管8を介して有機溶剤の蒸気を乾燥ユニット200に供給することができる。
【0072】
蒸気供給配管8の先端口8a、溶剤ノズル4の吐出口4aおよびガスノズル5の吐出口5aの平面視における位置関係は特に限定されないものの、
図3の例では、蒸気供給配管8の先端口8aは、平面視において、溶剤ノズル4の吐出口4aに対してガスノズル5の吐出口5aとは反対側に位置している。
図5は、蒸気供給配管8、溶剤ノズル4およびガスノズル5の位置関係の一例を概略的に示す平面図である。
図5では、平面視における蒸気供給配管8の先端口8a、溶剤ノズル4の吐出口4aおよびガスノズル5の吐出口5aの位置関係の一例が概略的に示されている。
図4に例示するように、平面視において、蒸気供給配管8の先端口8aは仮想線A2に対してガスノズル5の吐出口5aとは反対側に位置していてもよい。仮想線A2は、平面視において、溶剤ノズル4の吐出口4aの中心とガスノズル5の吐出口5aの中心とを結ぶ仮想線A1に対して垂直であり、かつ、溶剤ノズル4の吐出口4aの中心を通る線である。
【0073】
また、蒸気供給配管8の先端口8aおよび溶剤ノズル4の吐出口4aは、平面視において、ガスノズル5の吐出口5aの吐出領域内に含まれていても構わない。ここでいう吐出領域とは、平面視においてガスノズル5のうち吐出口5aの両端にそれぞれ繋がる一対の側面をそのまま仮想的に延在して得られる一対の仮想線B1,B2によって挟まれた領域である。
【0074】
これによれば、ガスノズル5の吐出口5aから吐出された不活性ガスは、溶剤ノズル4からの有機溶剤の微小液滴群を気化させつつ、タンク2内の上部空間の蒸気とともに蒸気供給配管8の先端口8a側に向かって流れる。よって、不活性ガスは有機溶剤の蒸気とともに蒸気供給配管8の先端口8aに流入しやすい。
【0075】
図5に例示するように、平面視において、ガスノズル5の吐出口5aの中心軸の延長線上に溶剤ノズル4の吐出口4aが位置していてもよい。これによれば、溶剤ノズル4からの有機溶剤の複数の微小液滴が分散して吐出されても、ガスノズル5からの高温の不活性ガスが微小液滴群に当たりやすい。よって、溶剤ノズル4からの有機溶剤の微小液滴群が気化しやすい。
【0076】
制御部9は気化器1の各種構成を制御する。この制御部9は電子回路機器であって、例えばデータ処理装置および記憶媒体を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体には、例えば制御部9が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部9が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部9が実行する処理の一部または全部が例えば論路回路などのハードウェア回路によって実行されてもよい。
【0077】
<気化器1の動作>
次に、気化器1の動作の一例を説明する。まず、制御部9がバルブ72を開く。これにより、液ノズル7から液体の有機溶剤がタンク2内に供給され、タンク2内には所定量の有機溶剤が貯留される。次に制御部9はタンクヒータ3に加熱を行わせる。これにより、タンク2内に貯留された有機溶剤が加熱され、気化が促進される。さらに制御部9はバルブ52を開きつつ、ガスヒータ6に加熱を行わせる。これにより、ガスノズル5からタンク2内の上部空間に高温の不活性ガスが吐出される。さらに制御部9は循環ポンプ43を作動させて有機溶剤を溶剤ノズル4へ送液させる。これにより、溶剤ノズル4からタンク2内の上部空間にミスト状の有機溶剤が吐出される。溶剤ノズル4から吐出された有機溶剤の微小液滴群は、ガスノズル5からの高温の不活性ガスによって速やかに気化する。タンク2内の上部空間における有機溶剤の蒸気は不活性ガスとともに、蒸気供給配管8の先端口8aに流入し、その供給先である乾燥ユニット200に供給される。
【0078】
以上のように、本気化器1によれば、タンク2内に貯留された有機溶剤はタンクヒータ3によって加熱される。よって、タンク2内に貯留された有機溶剤の気化を促進できる。しかも、本気化器1によれば、溶剤ノズル4はタンク2の上部空間において有機溶剤をミスト状に吐出し、その有機溶剤の微小液滴群に向かって、ガスノズル5から高温の不活性ガスが吐出される。これにより、溶剤ノズル4からの有機溶剤の微小液滴群を速やかに気化することができる。したがって、タンク2の上部空間には、タンク2内に貯留された有機溶剤のみならず、溶剤ノズル4によって吐出された有機溶剤からも蒸気が供給される。よって、タンク2内の上部空間における有機溶剤の蒸気の量を増加させることができる。つまり、気化器1はより高い濃度で有機溶剤の蒸気を生成することができる。したがって、気化器1はより高い濃度で有機溶剤の蒸気を乾燥ユニット200に供給することができる。
【0079】
また、タンクヒータ3が有機溶剤の液体温度をその沸点未満に調整することで、有機溶剤の気化を促進しつつも有機溶剤の沸騰を回避することができる。
【0080】
一方、ガスヒータ6は、ガスノズル5から吐出された不活性ガスのガス温度が有機溶剤の液体温度よりも高くなるように、不活性ガスを加熱する。これにより、溶剤ノズル4からの有機溶剤の微小液滴群をより速やかに気化させることができる。ガスヒータ6が不活性ガスのガス温度を有機溶剤の沸点よりも高くすることにより、さらに速やかに有機溶剤の微小液滴群を気化させることができる。
【0081】
また、上述の例では、配管41は循環配管である。よって、タンク2内に貯留された有機溶剤を利用して溶剤ノズル4から有機溶剤をミスト状に吐出することができる。
【0082】
<第2の実施の形態>
図6は、第2の実施の形態にかかる気化器1Aの構成の一例を概略的に示す図である。気化器1Aはバブリング機構10の有無を除いて、気化器1と同様の構成を有している。バブリング機構10は、タンク2内に貯留された有機溶剤をバブリングする。より具体的には、バブリング機構10は、タンク2内に貯留された有機溶剤の内部に複数の気泡を供給する。
【0083】
図6の例では、バブリング機構10はバブリング管11を含んでいる。バブリング管11はタンク2の内部において-Z側に設けられている。バブリング管11は、タンク2内に貯留された有機溶剤に浸漬する位置に配置されている。バブリング管11は例えば水平平面(XY平面)において延在する配管であり、その外周面において複数の吐出口(不図示)が形成される。バブリング管11の内部には後述のガス供給配管12からバブリングガスが供給され、当該バブリングガスが複数の吐出口から有機溶剤中に吐出される。これにより、タンク2内に貯留された有機溶剤中に複数の気泡(バブリングガス)が供給される。バブリングガスは例えば不活性ガスである。
【0084】
図6に例示するように、バブリング管11はガス供給配管12の一端に接続される。ガス供給配管12はタンク2の例えば側壁22を貫通してガス供給ユニット330に接続される。このガス供給配管12には、バルブ13およびヒータ14が介装されている。バルブ13はガス供給配管12の内部流路の開閉を切り替える。バルブ13は制御部9によって制御される。バルブ13は、ガス供給配管12の内部を流れる不活性ガスの流量を調整可能なバルブであってもよい。
【0085】
ヒータ14は、ガス供給配管12の内部を流れるバブリングガスを加熱する。ヒータ14はバブリングガスを加熱することから、以下では、ヒータ14をガスヒータ14とも呼ぶ。ガスヒータ14の熱源は特に限定されないものの、例えば、電熱線を採用することが可能である。ガスヒータ14は制御部9によって制御される。
【0086】
バルブ13が開いた状態でガスヒータ14がバブリングガスを加熱する。これにより、ガスヒータ14によって加熱された高温のバブリングガスはガス供給配管12の内部を流れてバブリング管11に供給され、バブリング管11の複数の吐出口から有機溶剤中に吐出される。タンク2内に貯留された有機溶剤はバブリングガスの気泡からの熱を受けて気化し、当該気泡中に有機溶剤の蒸気が供給される。この気泡は浮力により有機溶剤中を+Z側に移動して、有機溶剤の液面からタンク2内の上部空間に供給される。
【0087】
以上のように、気化器1Aによれば、タンク2内に貯留された有機溶剤は、タンクヒータ3による加熱のみならず、バブリング機構10からの高温の気泡によっても気化する。したがって、タンク2内の上部空間における有機溶剤の蒸気の量をさらに増加させることができる。ひいては、気化器1Aはより高い濃度で有機溶剤の蒸気を乾燥ユニット200に供給することができる。
【0088】
ガスヒータ14によって加熱されたバブリングガスのガス温度は、タンク2内の有機溶剤の液体温度よりも高くてもよい。より具体的には、バブリング管11の各吐出口の直後におけるバブリングガスのガス温度は有機溶剤の液体温度よりも高くてもよい。これによれば、タンク2内に貯留された有機溶剤の気化をさらに促進することができる。
【0089】
より好ましくは、ガスヒータ14によって加熱されたバブリングガスのガス温度は、ガスノズル5からの不活性ガスのガス温度よりも低くするとよい。より具体的には、バブリング管11の各吐出口の直後のバブリングガスのガス温度は、ガスノズル5の吐出口5aの直後の不活性ガスの温度よりも低くするとよい。なぜなら、バブリング管11からのバブリングガスは、タンク2内に貯留された有機溶剤中に供給されるのに対して、ガスノズル5からの不活性ガスはタンク2内の上部空間に供給されるからである。
【0090】
つまり、ガスノズル5からの不活性ガスは、タンク2内に貯留された有機溶剤の沸騰を招きにくいので、その温度をより高くしてもよく、その一方で、バブリング管11からのバブリングガスは、ガスノズル5からの不活性ガスに比べれば有機溶剤の沸騰を招くので、バブリング管11からのバブリングガスのガス温度をガスノズル5からの不活性ガスのガス温度よりも低くするのである。これによれば、タンク2内に貯留された有機溶剤が沸騰する可能性を低減しつつも、当該有機溶剤からの蒸気量を増加させることができる。また、ガスノズル5からの不活性ガスのガス温度を高くしているので、溶剤ノズル4からの有機溶剤の微小液滴群をより速やかに気化することもできる。
【0091】
以上、実施の形態が説明されたが、この気化器1はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。本実施の形態は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0092】
例えば気化器1において、配管41は必ずしも循環配管である必要はない。例えば配管41の他端は溶剤供給ユニット73に接続されていてもよい。これによっても、溶剤ノズル4は有機溶剤をミスト状に吐出し、その有機溶剤の微小液滴群にガスノズル5からの高温の不活性ガスが接触する。よって、溶剤ノズル4からの有機溶剤の微小液滴群を速やかに気化することができる。
【0093】
また、気化器1,1Aによる溶剤の蒸気の供給先は乾燥ユニット200に限らず、溶剤の蒸気を必要とする任意の外部装置であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 気化器
2 タンク
3 タンクヒータ(ヒータ)
4 溶剤ノズル
5 ガスノズル
6 第1ガスヒータ(ヒータ)
8 蒸気供給配管
10 バブリング機構
11 バブリング管
12 第2ガス供給配管(ガス供給配管)
14 第2ガスヒータ(ヒータ)
41 循環配管(配管)
51 第1ガス供給配管(ガス供給配管)