(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】ノズルを有する装置の安全装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20230512BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/04 G
(21)【出願番号】P 2019236479
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 祐輔
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/235172(WO,A1)
【文献】特開2014-149238(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02952903(EP,A1)
【文献】特開平8-160053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に可動して試験管に進入するノズルと、
前記試験管を保持する保持部と、
保持位置において前記保持部に保持された前記試験管を、前記保持位置から前記試験管が前記ノズルに進入される進入位置に移動させる搬送機構と、を有する装置の安全装置であって、
前記安全装置は、
鉛直軸を中心に回転可能な回転体を備え、前記回転体は第1の部位と第2の部位を有し、
前記第1の部位と前記第2の部位は、鉛直方向の真上から見たときの平面視において、前記鉛直軸を中心に所定角度離れて設けられており、
前記第1の部位は、前記試験管が前記進入位置に移動する際に前記試験管と当接して回転し、
前記第2の部位は、前記第1の部位の回転に追随して回転し、前記保持位置から前記進入位置を水平方向にみたときに前記進入位置にある前記試験管の上端から前記ノズルが最も上昇したときの前記ノズルの下端までの高さと前記試験管の上端の幅で規定される領域の少なくとも一部を覆うように構成された
安全装置。
【請求項2】
前記回転体は前記試験管が前記進入位置に移動する移動経路の両側にそれぞれ配置されて対となっている
請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記進入位置を四方から囲み、前記試験管が前記移動によって前記進入位置に進入するための開口部を有する壁面をさらに有する
請求項1又は2に記載の安全装置。
【請求項4】
前記第1の部位及び前記第2の部位の夫々は、前記鉛直軸を中心に延びる平板状の羽根である
請求項1から3のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項5】
前記回転体は、鉛直方向からの見たときの平面視において、前記鉛直軸を中心に等間隔で延びる三つの平板状の羽根を有し、前記三つの羽根のうちの二つが前記試験管の移動時に前記第1の部位及び前記第2の部位として作用する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項6】
前記羽根の端部には、前記試験管との当接による前記羽根の回転方向と逆方向に突出する凸部が形成されている
請求項4又は5に記載の安全装置。
【請求項7】
前記回転体は、前記鉛直軸と同心で回転可能な円柱から円柱外周面の一部が欠落した形状を有し、
前記回転体の側面は、円柱外周面と、それぞれ前記回転体の軸方向に延びて前記円柱の両端面を結ぶ前記円柱外周面との第1の境目及び第2の境目の間に形成された断面とを有し、
前記回転体の平面視において、前記円柱の円の中心と、前記第1の境目と前記第2の境目とのなす角度が前記所定角度をなし、
前記第1の境目は、前記進入位置へ水平移動する前記試験管と当接する前記第1の部位となり、
前記第1の境目及び前記円柱外周面が前記第2の部位となる
請求項1から3のいずれか一項に記載の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルを有する装置の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体試料、例えば、人や動物から採取した体液(血液、間質液、尿など)を収容する試験管からノズルを用いて液体試料を吸引し、検査や分析のために液体試料が含有する成分の量を測定する装置がある。また、薬液などの液体を、ノズルを用いて試験管に分注する装置もある。吸引や分注を行う際に、ノズルは収容位置から下降し、ノズルの下方に予め配置された試験管(スピッツ管と呼ばれることもある)内にその下端部を挿入した状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズルは、細長い金属製の管であり、下降の際に指があれば、その指に刺さってしまう程に鋭利なものである。このため、国際安全規格では、ノズルの移動する箇所には指が入る隙間を作らないことが望まれている。例えば、外部に露出しているノズルの下端と、下降位置に配置された試験管の上端との間の隙間は十分に小さくすることが望まれている。
【0005】
しかしながら、試験管には様々な種類があり、高さもまちまちである。このため、あらゆる種類の試験管について隙間を小さくすることは困難であった。
【0006】
本発明は、試験管がノズルの下降場所へ進入する方向において、試験管の上端とノズルの下端の間に水平方向から指が入らないようにする、ノズルを有する装置の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例の一つは、鉛直方向に可動して試験管に進入するノズルと、
前記試験管を保持する保持部と、
保持位置において前記保持部に保持された前記試験管を、前記保持位置から前記試験管がノズルに進入される進入位置に移動させる搬送機構と、を有する装置の安全装置であって、
前記安全装置は、
鉛直軸を中心に回転可能な回転体を備え、前記回転体は第1の部位と第2の部位を有し、
前記第1の部位と前記第2の部位は、鉛直方向の真上から見たときの平面視において、前記鉛直軸を中心に所定角度離れて設けられており、
前記第1の部位は、前記試験管が前記進入位置に移動する際に前記試験管と当接して回転し、
前記第2の部位は、前記第1の部位の回転に追随して回転し、前記保持位置から前記進入位置を水平方向にみたときに前記進入位置にある前記試験管の上端から前記ノズルが最も上昇したときのノズルの下端までの高さと前記試験管の上端の幅で規定される領域の少なくとも一部を覆うように構成された
安全装置である。
また、本発明は、上記安全装置と同様の特徴を有する移動経路の閉塞方法であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、試験管がノズルの下降場所へ進入する方向において、試験管の上端とノズルの下端の間に水平方向から指が入らないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2A及びBは、安全装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3A及びBは、安全装置の構成例を示す図である。
【
図5】
図5A~Dは、安全装置の動作例を示す図である。
【
図6】
図6A及びBは、安全装置の動作例を示す図である。
【
図8】
図8は、ノズルの降下処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係る安全装置は、鉛直方向に可動して試験管に進入するノズルと、保持位置において保持部に保持された試験管を、保持位置から試験管がノズルに進入される進入位置に移動させる搬送機構と、を有する装置に適用されるものであり、以下の構成を有する。
(1)鉛直軸を中心に回転可能な回転体を備え、回転体は第1の部位と第2の部位を有する。
(2)第1の部位と第2の部位は、鉛直方向の真上から見たときの平面視において、鉛直軸を中心に所定角度離れて設けられている。
(3)第1の部位は、試験管が下降位置に水平移動する際に試験管と当接して回転する。(4)第2の部位は、第1の部位の回転に追随して回転し、保持位置から進入位置を水平方向にみたときに進入位置にある試験管の上端からノズルが最も上昇したときのノズルの下端までの高さと試験管の上端の幅で規定される領域の少なくとも一部を覆うように構成されている。
【0011】
安全装置によれば、試験管は、保持部に試験管を保持させる保持位置から水平移動してノズルの下降位置、つまり試験管が鉛直方向に可動するノズルに進入される進入位置に達する。この際に第1の部位は試験管と当接して第1の回転方向に回転する。第1の部位と第2の部位は、鉛直軸を中心に所定角度離れて設けられている。そのため、第1の部位の回転に追随して第2の部位が第1の回転方向に回転し、試験管の後方、つまり試験管から保持位置方向の移動経路を塞ぐ。第2の部位は、前記第1の部位の回転に追随して回転し、前記保持位置から前記進入位置を水平方向にみたときに前記進入位置にある前記試験管の上端から前記ノズルが最も上昇したときのノズルの下端までの高さと前記試験管の上端の幅で規定される領域の少なくとも一部を覆うように構成される。例えば、第2の部位は、保持位置から下降位置を水平方向から見たときに試験管の上端からノズルが最も上昇したときのノズルの下端の高さまでの範囲のうち、下降状態のノズルが露出する露出範囲を覆うように構成されている。例えば、下降するノズルが見える範囲を前記第2の部位が覆った状態において前記下降状態のノズルが見える隙間が生じないか前記隙間の幅が所定値
以下となるように構成する。そのため、ノズルが下降することで指が穿刺される恐れがある領域(以降、危険領域ともいう。)に水平方向から指などが入るのを抑制することができる。第2の部位は、試験管のうち、高さ方向において、試験管の上端(試験管の開口部)よりも下方にある部分を含む範囲を覆う。このため、第1の部位が第1の回転方向に回転すると、第2の部位も第1の回転方向に回転し、既に下降位置に位置する試験管と当接する。また指などを下降位置に進めようとして第2の部位を押した場合も、既に下降位置に位置する試験管と当接する。下降位置にある試験管は、第2の部位と当接してもその位置を変えない。そのため、指などを下降位置に進めようとして第2の部位を押しても第2の部位はそれ以上動かず、指などが危険領域に進入することを防ぐことができる。また、回転体が試験管の移動エネルギーを受けて回転するため、回転体用の動力は設けなくても良い。
【0012】
危険領域は、ノズルが下降する際にノズルの下端が動き得る領域である。つまり、その領域に指が存在すると指が穿刺される恐れがある。危険領域は、ノズルが可動し得る範囲やノズルの種類などに応じて適宜定めることができる。危険領域の高さ範囲は、例えば、試験管の開口部からノズルが最も上昇したときのノズルの下端の高さまでの範囲と定めてもよい。または試験管の上端からノズルが最も上昇したときのノズルの下端の高さまでの範囲を危険範囲と定めてもよい。
【0013】
第1の部位、第2の部位は、鉛直軸を中心に回転可能な部位である。第1及び第2の部位は、鉛直軸の半径方向に延出する部分、または、鉛直方向から見たとき(平面視)において、鉛直軸を中心として放射状に延出する部分であってもよい。ここで、鉛直方向の真上から見ることを平面視という。第1及び第2の部位は、鉛直軸に直接に取り付けられていても(鉛直軸と一体となっていても)、固定の鉛直軸を中心に回転する回転体に取り付けられていても(回転体の一部であっても)よい。第1及び第2の部位は、平面視において、鉛直軸の周囲にある凸部または羽根であってもよい。例えば、第1及び第2の部位は、鉛直軸を中心に延びる平板状の羽根であってもよい。
【0014】
第1の部位と第2の部位は、第1の部位が試験管と当接して回転したときに、第2の部位が試験管の移動経路上に第1の部位に追随して回転するように、鉛直軸を中心に所定角度離れて設けられている。所定角度は試験管の形状や大きさに応じて適宜設定することができる。例えば鉛直軸を頂点として第1の部位と第2の部位がなす中心角度は180度未満としてもよい。第1の部位と第2の部位が所定角度離れて設けられているかどうかは、例えば、第1の部位のうち試験管が当接する部分と第2の部位のうち試験管が当接する部分がなす中心軸を頂点とした中心角が存在するかどうかで判断しても良い。
【0015】
第2の部位は、鉛直方向において、ノズルの下降位置にある試験管の上端より下の部位を塞ぐようになっている。換言すると、保持位置から下降位置を水平方向から見たときに、第2の部位はノズルの下降位置にある試験管の上端より下の部位を覆っている。これにより、上述のように、第2の部位は既にノズルの下降位置に位置する試験管と当接する。
【0016】
ノズルを有する装置は、例えば液体の成分を測定、検査、分析する装置である。液体は、人や動物の体液(血液、間質液、尿など)である。但し、装置の目的、分注又は吸引の対象となる液体の種類は制限されない。ノズルは、分注及び吸引の少なくとも一方を行うものであればよく、双方を行うものに限定されない。
【0017】
安全装置が備える鉛直軸及び第1の部位、第2の部位の数は、試験管がノズルの下降位置に水平移動する移動経路を適正に塞ぐことができる限りにおいてそれぞれ一つあればよい。但し、鉛直軸及び第1の部位、第2の部位を、試験管の移動経路の両側にそれぞれ配置されて対となっている構成を採用するのが、より適正に移動経路を塞ぐことができる点
で好ましい。
【0018】
実施形態に係る安全装置は、以下の構成を採用してもよい。
・移動経路内に位置する第2の部位の上端とノズル又は前記装置のノズルを収容した筐体の下端との間の高さ方向の距離は所定距離より短い。
【0019】
所定距離は、適宜設定可能であるが、例えば4mmである。上記構成の採用によって、ノズルの下端と試験管の上端との間に指等が入らないようにすることができる。
【0020】
実施形態に係る安全装置は、以下の構成を採用してもよい。
・ノズルの下降位置は、装置が有する部屋内にある。換言すると、安全装置は下降位置を四方から囲み、試験管が水平移動によって下降位置に進入可能な開口や隙間が設けられている壁面を有していてもよい。
・第2の部位は、第1の部位の回転によって、試験管が水平移動によって部屋内に進入する第1の方向を塞ぐ。換言すると、第2の部位は試験管が水平移動によって部屋内に進入する壁面の開口や隙間を塞ぐ。
上記構成を採用する場合に、第1の方向は、第2の部位によって塞ぎ、残りの方向は部屋の壁で閉塞される構成を採用してもよい。
【0021】
実施形態に係る安全装置において、第1及び第2の部位の夫々は、鉛直軸方向と直交する方向に延出する羽根、又は、鉛直軸を中心に伸びる平板状の羽根であるのが好ましい。或いは、実施形態において、以下の構成を採用してもよい。
・鉛直軸、第1の部位及び第2の部位が移動経路の両側にそれぞれ配置されており、対をなしている。
・対をなす第1の部位及び第2の部位の夫々は、回転体の軸方向と直交する方向に延出する複数の羽根である。
【0022】
上記構成における複数の羽根は、等間隔で延出し、そのうちの二つが試験管の水平移動時に第1の部位及び第2の部位として作用する三つの羽根である、構成を採用するのが好ましい。換言すれば、鉛直軸を中心に回転可能であり、平面視において、鉛直軸を中心に等間隔で延びる三つの平板状の羽根を有する回転体を備え、三つの羽根のうちの二つが試験管の水平移動時に第1の部位及び第2の部位として作用する、構成を採用してもよい。例えば、鉛直軸が上述の三つの羽根を有する構成を採用してもよい。また、移動経路を介して対をなす三つの羽根の対のうち一方の三つの羽根の夫々の延出方向における端部には、試験管との当接による第1の部位の回転方向の逆方向に突出する凸部が形成されている構成を採用してもよい。これにより、移動経路の両側にそれぞれ配置された羽根同士がお互いに押圧して回転体が回転しなくなることを防ぐことができる。
【0023】
また、実施形態に係る安全装置が備える第1及び第2の部位に関して、以下の構成を採用してもよい。
・鉛直軸と同心で回転可能な円柱から円柱外周面の一部が欠落した形状の回転体を有する。
・回転体の側面は、円柱外周面と、それぞれ回転体の軸方向に延びて円柱の両端面を結ぶ円柱外周面との第1の境目及び第2の境目の間に形成された断面とを有する。
・回転体の平面視において、円柱の円の中心と、第1の境目と第2の境目とのなす角度が所定角度をなす。
・第1の境目は、下降位置へ水平移動する試験管と当接する第1の部位となる。
・第2の境目及び第2の境目を形成する円柱外周面が露出範囲を覆う第2の部位となる。
【0024】
また、実施形態に係る安全装置において、以下の構成を採用してもよい。
・鉛直軸及び第1及び第2の部位が、移動経路の両側にそれぞれ配置されており対をなしている。
・対をなす第1及び第2の部位の夫々は、鉛直軸と同心で回転可能な円柱から円柱外周面の一部が欠落した形状を有する。
・回転体の側面は、円柱外周面と、それぞれ円柱の軸方向に延びて円柱の両端面を結ぶ第1の境目及び第2の境目の間に形成された断面とを有する。
・回転体の平面視において、円柱の端面の円の中心と、第1の境目と前記第2の境目とのなす角度が所定角度をなす。
・第1の境目は、下降位置へ水平移動する試験管と当接する第1の部位となる。
・第2の境目を介して断面と隣接する円柱外周面が露出範囲を覆う前記第2の部位となる。
【0025】
また、実施形態に係る安全装置は、回転体とノズルの下降位置を覆うカバーをさらに含む構成を採用してもよい。カバーの採用によって、指等の水平方向の進入が困難となること、指等が入ることで回転体の動きが妨げられることを回避し得る。このカバーには試験管がノズルの下降位置に水平移動して進入するための開口や隙間を設ける。
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。
【0027】
図1は、測定装置の外観構成例を示す。
図2A及びB、
図3A及びBは、安全装置の構成例を示す図である。
図4、
図5A~D、
図6A及びB、並びに
図7は、安全装置の動作例を示す図である。本実施形態では、後述する羽根26aが第1の部位に相当し、羽根26bが第2の部位に相当する。
【0028】
本実施形態では、ノズルを有する装置の一例として、試験管に収容された試料(液体の一例:例えば尿)を収容して液体試料の成分の測定、分析、検査などを行う測定装置を例示する。但し、液体試料は尿以外でもよく、測定装置の用途は上記以外であってもよい。
【0029】
図1において、測定装置1は、縦方向(高さ方向:X方向)、横方向(幅方向:Y方向)、及び奥行き方向(前後方向:Z方向)を有している。測定装置1の本体1Aの前面(正面)の下部には、複数の試験管(スピッツ管)を収容したラックを載置するスペース2が設けられている。スペース2の上部には、試料を吸引するための複数のノズルを収容した前側筐体3が設けられており、前側筐体3の下部3aは庇状になっている。
【0030】
スペース2には、ラックを搬送するベルトコンベアが設けられており、ラックは、所定の位置で停止する。停止位置において、ノズルが下降して各試験管内に挿入され、液体試料を吸引する。吸引後のラックは、ベルトコンベアによって所定の位置まで搬送される。
【0031】
測定装置1には、ラックに収容した試験管とは別に、一つの試験管8に収容された試料をノズル7で吸引する機構を備えている。通常、このような機構は、緊急に測定が必要な試料(緊急検体の試料)に係る測定を、通常の検体からの試料よりも優先して行う場合に使用される。
【0032】
図1に示す測定装置1の例では、スペース2の中央には、緊急検体の試料を収容した試験管8の搬送装置5(スタットポートと呼ばれる)が設けられている。
図3Bに示すように、搬送装置5は、上部に試験管8を収容するホルダ5aを備えた載置台(ベース)5bと、ベース5bの水平移動(スライド)が可能な範囲を規定するガイド機構5cとを有する。ベース5bは、試験管の保持部であり、ガイド機構5cは保持部で保持された試験管
の搬送機構である。ガイド機構5cは、ベース5bのX及びY方向(高さ及び幅方向)への移動を禁止し、Z方向(前後方向)において、奥側のストッパ5dと手前側のストッパ5eとで規制される範囲を、往復(進退)可能となっている。
【0033】
緊急検体に係る測定時には、緊急検体の試料が入った試験管8をベース5bのホルダ5aに立てて(保持させて)、ベース5bの後部をユーザがつかみ、ベース5bを測定装置1の奥側に押し込む。ベース5bは、ガイド機構5cに沿ってZ方向に水平移動(スライド)し、ストッパ5eと当接して停止する。この停止位置においてベース5bが位置する位置はノズル7の下降位置となっている。試験管8が下降位置にセットされた状態で、スタートボタン6(
図2A等)を押すと、ノズル7が下降して前側筐体3の下部3aよりも下方に降下し、試験管8の上端8aの開口部に挿入される。ノズル7の下端7aが所定の高さまで下降して停止し、試験管8に収容された試料を吸引する。吸引が終了すると、ノズル7は待機位置まで上昇し、前側筐体3内に収容される。また、ノズルの下降位置とは、ノズルが試験管の上端の開口部に進入するときの試験管の位置、試験管の上端の開口部に挿入するときの試験管の位置とも言える。
【0034】
ここで、
図2Bに示すように、測定装置1を正面視した場合において、搬送装置5に収容された試験管8の上端と、前側筐体の下端(縁部)との、高さ方向(X方向)における距離(長さ)は、4mm以上となっている。ここで、水平方向の真横からみることを正面視という。これは、以下の理由による。測定装置1に関して、高さ(長さ)や太さの異なる様々な種類の試験管をホルダ5aに収容することが想定されている。このため、試験管8の種類によっては、試験管8を保持させたベース5bを奥側に押し込むと、試験管8の上端8a(開口部)が前側筐体3の下部3a又はノズル7の下端7aと衝突する虞がある。この虞を回避するため、あらゆる種類の試験管8が衝突しないような高さに、前側筐体3の下部3aが位置する設計を採用している。
【0035】
ところが、4mm以上の間隔は、そこに指が入るに十分なサイズである。このため、ノズル7の下降中に指が入ると、ノズル7が指を傷つけてしまう虞があった。また、国際安全規格IEC 61010-1 3rd Editionでは、機械的な危険源に対する保護として、隙間を4m
m以下にすることが要求されており、試験管の上端と前側筐体の下端との間に指が入らないようにする構成の採用が望まれていた。
【0036】
実施形態に係る安全装置は、上記の事情を考慮して構成されている。
図3Aは、安全装置10にカバー20をかぶせた状態付きの安全装置10を図示し、
図3Bは、安全装置からカバー20を取り外した状態を図示する。
図4は、カバー20内を模式的に示す平面図である。
【0037】
カバー20の内部空間は、ノズル7の下降位置を有する部屋となっている(
図4参照)。カバー20の上面には、下降してきたノズル7が通過する孔20aが形成されている。また、カバー20の前面には、試験管8及び搬送装置5の輪郭形状に合わせて形成された通過口20b(
図7の一点鎖線参照)が形成されている。ベース5b及び試験管8は、通過口20bを通過して、試験管8がノズル7の下降位置に到達可能となっている。
【0038】
図3Bに示すように、カバー20を取り外すと、逆U字形の支持部材21が立設されており、支持部材21の上部の前面には、鉛直方向(X方向)に固定配置される回転軸23a及び23bの夫々を支持するコの字状のホルダ22a及び22bが取り付けられている。回転軸23a及び23bの夫々は鉛直軸の一例である。ホルダ22aとホルダ22bとの間は、カバー20の孔20aを通って下降してきたノズル7が通過するスペースとして使用される(
図4参照)。本実施形態では、ノズル7の先端が、上限の位置から下限の位置までまっすぐに往復(進退)する構成となっており、ホルダ22aとホルダ22bとの
間が、ノズル7の下降位置7Aとなっており、下降位置7Aに位置する試験管8は、ノズル7とほぼ同心の状態となる。
【0039】
図4は安全装置の上部から鉛直方向に安全装置を見た(平面視した)図である。
図4において、ベース5bに載置されて水平移動する試験管8の移動経路50を一点鎖線で示す。
図4でベース5bが示されている位置がホルダ5aに試験管8を積載する積載位置(保持位置に対応)である。移動経路50は積載位置からノズル7の下降位置7Aに至っている。
図4において、回転軸23a及び回転軸23bは、移動経路50と直交する方向において、移動経路50を挟んでその両側に立設されている。回転軸23aには、回転体24Aが回転軸23a周りを回転自在に取り付けられ、回転軸23bには、回転体24Bが回転軸23b周りを回転自在に取り付けられている。なお、本実施形態では、回転体24Aは回転軸23aが貫通する貫通孔を有し、回転軸23aを中心に右回り及び左回りに回転可能に構成されている。また、回転体24Bは回転軸23bが貫通する貫通孔を有し、回転軸23bを中心に右回り及び左回りに回転可能に構成されている。このように、本実施形態では、回転軸23a、23bの夫々は回転体24A、24Bと別体に構成されている。但し、回転軸23a及び回転体24A、回転軸23b及び回転体24Bの夫々は、一体に形成されていてもよい。一体に形成する場合は、例えば回転体の中心に鉛直方向に延長する凹部または凸部を設けることができる。
【0040】
以降の説明において、回転軸23aと回転軸23bとを区別しない場合は「回転軸23」と表記する。また、回転体24Aと回転体24Bとを区別しない場合には、「回転体24」と表記する。
【0041】
回転体24A及び回転体24Bの夫々は、対応する回転軸23の軸受けとなる中心部から延出する複数の羽根26を有する。複数の羽根26が延出する長さは回転軸23a又は回転軸23bと移動経路50との距離よりも長い。そのため、複数の羽根26が回転軸23aまたは回転軸23bを中心に回転することで、試験管8の移動経路50上に配置可能になっている。本実施形態では、複数の羽根26のそれぞれは回転軸23と直交する方向(水平方向)に延出する矩形の板状をなしており、120度の間隔(等間隔)をあけて設けられている。
【0042】
このように、実施形態に係る安全装置10では、鉛直軸及び回転体の対(回転軸23a及び23b、回転体24A及び24B)が、移動経路50の両側に配置されている。換言すると、移動経路50の一方の側に回転軸23a、他方の側に回転軸23bが設けられており、移動経路50を介して対向し、対となっている。同様に回転体24Aと24Bも対向し、対となっている。そして、対をなす回転体24A及びBの夫々は、回転体24の軸方向と直交する方向に延出する複数の羽根26を有する。換言すると回転体24の中心軸から水平方向に放射状に延びる複数の羽根26を有する。
【0043】
安全装置10の上部から鉛直方向に安全装置10を見た
図5A~Dを用いて、回転体24A及び24Bの作用を説明する。例えば、回転体24A及び24Bの羽根26b、26bが装置のZ方向(前方)を向くように配置されると、羽根26a、26aは、試験管8の移動経路50において、試験管8の外周面と対向する状態となる(
図5A)。羽根26a、26aより奥側には、ノズル7の下降位置7A(を備える部屋)がある。安全装置10の上部から重力方向に見た平面図でいうと、本実施形態においては、危険領域は下降位置7Aと重複する部分である。但し、危険領域はノズル7が下降する位置と下降するおそれがある位置を含んでもよい。また、危険領域は、下降位置7Aに移動したときの試験管8の上端以上の部分を含む。
【0044】
ユーザが試験管8を保持したベース5bを把持してZ方向奥側に押し込むと、ベース5
bに保持された試験管8は、Z方向の奥側へ移動する方向(矢印で図示、第1の方向の一例)に水平移動する。このとき、移動経路50を塞ぐ羽根26a、26bと、試験管8の外周面とが当接する(
図5B)。
【0045】
回転体24A及び24Bの夫々は、回転軸23a及び23bの夫々によって回転可能に支持されているため、試験管8の押圧力に降伏して回転する。
図5Cに示すように、平面視において、回転体24Aは反時計回り(左回り)に回転し、回転体24Bは時計回り(右回り)に回転する。移動経路50上の羽根26が試験管8の積載位置から下降位置7A方向に移動する回転方向を第1の回転方向とすると、回転体24Aと回転体24Bは第1の回転方向に回転するとも言える。回転体24A及びBの夫々の回転によって、移動経路50の外にあった羽根26b、26bが、試験管8の通過した後の移動経路50内に入ってくる。
【0046】
回転体24A及び24Bの夫々の羽根26b、26bは、回転体24A及び24Bの回転によってお互いの距離を縮め、試験管8の後方の移動経路50を塞ぐ(
図5D)。
図6Aは、試験管8がノズル7の下降位置7Aに達した場合の状況を模式的に示す安全装置の上部から鉛直方向に安全装置を見た平面図であり、
図6Bは斜視図である。
図6A及び6Bに示すように、羽根26b、26bの距離は、回転体24の惰性による回転で指が入らない微細な隙間を生じるか(
図6A及び6Bに例示)、羽根26b、26b同士が接触して、Z方向からの下降位置7Aへの指等の侵入を禁止する状態となる。また、指をノズル7の下降位置7Aに進入させようとすると、羽根26bと指の当接により回転体24は第1の回転方向に回転する。そして羽根26bは下降位置7Aに位置する試験管8と当接する。試験管8は回転体24A及び24Bの当接によっては移動しない。このため、回転体24A及び24Bはそれ以上第1の回転方向に回転しない。そのため、さらに下降位置7Aへ指等を進入しようとしても羽根26b、26bの間の隙間は広がることはなく、指等の進入を防ぐことができる。
【0047】
また、下降位置7Aに試験管8が位置する状態で回転体24が第1の回転方向と反対の第2の回転方向に回転しようとすると、羽根26aと試験管8の外周面が当接する。そのため、回転体は第2の回転方向に回転しない。そのため羽根26b、26bの間の隙間は広がることはなく、指等の進入を防ぐことができる。
【0048】
図7は、試験管8がノズル7の下降位置7Aに達した場合の状況を模式的に示す正面図である。
図7には、下降位置7Aにある試験管8を、試験管8が下降位置7Aへ水平移動する第1の方向から水平に見た場合(正面視した場合)の危険領域100を、二点鎖線の矩形で示している。危険領域100は、高さ方向(X方向)の範囲に関して、試験管8の上端8aからノズル7が最も上昇したときの下端7aまでを少なくとも含む領域である。但し、
図7に示す例では、危険領域100の高さ方向の下限の範囲は、試験管8のうち、試験管8の上端8a(開口部)より低い部分にまで及んでいる。また、危険領域100の幅方向(Y方向)の範囲は、試験管8の軸を中心として左右に延びる、試験管8の直径よりやや大きい幅長さの範囲である。回転体24A及び24Bが取り付けられていない状態、或いは、
図5Cに示す状態のような、下降位置7Aを第1の方向から直接に視認可能な状態では、筐体3の下部3aから下降するノズル7の下端7aが露出する状態にある。このような、ノズル7を直視できる範囲を露出範囲と呼ぶ。露出範囲が大きく、そこに指が入ってしまうと、指がノズル7によって傷つけられる虞れがある。回転体24A及び24Bは、試験管8との当接による回転によって、羽根26b、26bが露出範囲を覆う(塞ぐ)状態となる(
図7)。この結果、露出範囲の隙間は4mmより小さくなって、規格の要求を満たすことが可能となる。
【0049】
具体的には、正面視において、高さ方向(X方向)における羽根26b、26bの夫々
の上端は、試験管8の上端8aよりも高い位置にある。つまり、水平方向でみたときに第2の部位である羽根26b、26bは危険領域100である試験管8の上端8aからノズル7の下端7aの高さまでの範囲の一部を覆っている。羽根26b、26bの夫々の上端と、上側筐体3の下部3aとの距離(隙間)は4mm未満となっている。そのため、指を危険領域100(下降位置7A)に向けて移動させると、羽根26bと接触する。そして更に指を下降位置7Aに向けて羽根26bを押すと、羽根26bの下部は試験管8の外周部と当接し、羽根26bはそれ以上回転しない。よって指が危険領域100に進入することを抑制できる。また、幅方向(Y方向)における羽根26b、26b間の距離も、4mm未満とすることができる。これによって、国際安全規格を満たすことができる。
【0050】
以上説明した安全装置10の動作において、羽根26a、26aの夫々は、下降位置7Aへ向かって水平移動する試験管8と当接可能な状態で移動経路50内に配置される第1の部位として作用する。一方、羽根26b、26bの夫々は、羽根26a、26aの夫々と試験管8との当接による回転体24A、24Bの回転によって、試験管8の通過後の移動経路50を塞ぐ位置に移動する第2の部位として作用する。
【0051】
そして、第2の部位(羽根26b)は、鉛直方向(X方向)において、ノズル7の下降位置にある試験管8の上端8aからノズル7を収容した装置1の筐体3の下部3aまでの高さの範囲の一部を少なくとも塞ぐ。このとき、移動経路50内に位置する第2の部位(羽根26b)の上端と装置1の筐体3の下端との間の高さ方向の距離は所定距離(例えば4mm)より短くなっている。
【0052】
なお、試験管8の水平移動の開始時における回転体24A及び24Bの回転角度は、羽根26a~cのいずれかが移動経路50内にある限りにおいて任意である。また、本実施形態では、回転体24A及び24Bの羽根26a~cは同じ形状を有しているので、羽根26a~cのいずれも第1の部位及び第2の部位となることができる。また、羽根26a及びbに相当する羽根を設けて羽根26cを省略することも考えられる。但し、回転のバランスや羽根のいずれかを移動経路50内に置く手間を考えると、三つの羽根26a~cを備えるのが好ましい。状況によっては、羽根が4つ以上設けられる場合もあり得る。なお、上述した安全装置10の各部の材質は、金属、樹脂及びこれらの組み合わせによって生成することができる。
【0053】
図8は、試験管8が下降位置7Aに配置された場合における、ノズル7の降下処理の例を示すフローチャートである。測定装置1の本体1A内には、ノズル7の上下動(上昇及び下降)などを制御する制御装置(プロセッサ)40が収納されている。
【0054】
制御装置40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、
プログラム及びデータを記憶した記憶装置(メモリなど)を含み、プロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムを実行することによって、ノズル7の降下処理などを含む様々な処理を行う。なお、制御装置40が行う処理は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路やSoC(System-on-a-Chip)を用いて行われてもよい。
【0055】
図8のステップS01では、プロセッサは、ベース5Bの位置が吸引部(下降位置を備える部屋)にあるかを判定する。吸引部にはフォトインタラプタが設けられている。フォトインタラプタは、発光素子(LED)と受光素子とをと含んでいる。ベース5Bが奥側に押し込まれる前の状態では、受光素子は発光素子からの光を受光する。これに対し、押し込みによってベース5Bが吸引部に到達すると、ベース5Bが備える部材(例えば突起)が発光素子からの光を遮光する。これによって、受光素子による受光が阻害される。プロセッサは、受光素子が発光素子からの光を受光していない場合に、ベース5Bが吸引部
に位置していると判定する。
【0056】
ステップS02では、プロセッサは、試験管8がベース5Bに載置されているかを判定する。ベース5B内には、フォトセンサが設けられている。フォトセンサは、試験管8のホルダ5a内に向けて光を発する発光素子と、ホルダ5aからの反射光を検出する受光素子とを含む。受光素子は、ホルダ5aに試験管8が挿入されていない場合は、発光素子の反射光を受光できない。これに対し、受光素子は、ホルダ5aに試験管8が挿入されている場合は、試験管8が反射する発光素子からの光を受光する。フォトセンサの受光素子が反射光を受光している場合に、プロセッサは試験管8がベース5Bに載置されている、と判定する。
【0057】
ステップS03では、プロセッサは、スタートボタン6が押されているかを判定する。前側筐体3の正面には、押しボタンであるスタートボタン8が設けられており、S01及びS02でYESの判定の後に、スタートボタン6の押し下げを検知すると、プロセッサは、ノズル7の所定高さまで下降させる制御を行う。制御は、ノズル7を上下動させるアクチュエータにステッピングモータの駆動力を供給することによって行われる。プロセッサはステッピングモータの駆動量を制御する。
【0058】
実施形態による安全装置10によれば、一対の回転体24A及びBが試験管8の通過の際に、移動経路50(試験管8の下降場所7Aへの進入方向:第1の方向)における、所定の高さ範囲(試験管8の上端の高さを含む範囲)を塞ぐ。これによって、下降するノズル7と試験管8との間に指等を入る隙間を少なくすることができ、下降するノズル7が指などを傷つけることを回避できる。
【0059】
図9は、実施形態の変形例1を示す。
図9に示すように、回転体24Cの回転によって、下降位置を備える部屋の、試験管8の進入方向(第1の方向)を適正に塞ぐことができる限りにおいて、回転体の数は一つでもよい。
図9は4つの羽根74a~dを持つ一つの回転体24Cを例示している。
【0060】
図10Aは、実施形態の問題点を示し、
図10Bは、実施形態の変形例2を示す。
図10Aに示す様に、回転体24A及び24Bの夫々の回転角度によっては、羽根同士がお互いを押圧する場合がある。すると回転体24A及び24Bはそれ以上回転しなくなり、試験管8の水平移動を阻害することがあった。これに対し、
図10Bに示すように、対をなす回転体24A及び24Bのいずれか一方(片側:
図10Bの例では回転体24B)の各羽根に、凸部(突起)27を設ける。凸部は、羽根の夫々の延出方向における端部に設けられる。また、凸部27は試験管8との当接による回転体24の回転方向の逆方向に突出する。
図10Bに示す例では、回転体24Bは、試験管8と当接して時計回りに回転するため、凸部27は、反時計回り方向に突出している。回転体24A及び24Bのいずれか一方に凸部27を設けることにより、回転体24Aと24Bが下降場所7Aに進入する試験管8と接触するタイミングをずらすことができ、これにより、羽根同士がお互いを押圧することを回避できる。なお、回転体24A及び回転体24Bの両方に回転方向とは逆の方向に突出する凸部27を設けてもよい。その場合、回転体24Aの凸部27の突出する長さと回転体24Bの凸部27の突出する長さが異なるように、回転体24Aおよび24Bのそれぞれに凸部27を設けることが望ましい。
【0061】
図11A及びBは、実施形態の変形例3を示す。
図12A及びBは、回転体124A、124Bに適用される回転体124の構成を示す。回転体124Aと回転体124Bとは同じ構成を有する。
図12A及び12Bにおいて、回転体124は、上端面126aと下端面126bとを有する円柱の一部がその軸方向において欠落した形状を有する。回転体124は、回転軸23a又は23bが貫通する貫通孔125を有し、回転軸23a又は回
転軸23bに対し、それを中心軸として回転自在に取り付けられる。
【0062】
回転体124の側面は、円柱外周面124aと欠落によって生じた断面124bとを含む。円柱外周面124aと断面124bとは、境目127及び境目128によって隔てられている。境目127、128の夫々は、上端面126aと下端面126bとを軸方向に結ぶ直線状の境目である。
図12Bに示すように、回転体124の中心と第1の境目127とを結ぶ線分131と、回転体124の中心と第2の境目128とを結ぶ線分132とがなす中心角は、所定角度となっている。
【0063】
図11A及び11Bに示す変形例3では、鉛直軸(回転軸23a及び23bの夫々)に取り付けられた回転体124A、124Bが、移動経路50の両側にそれぞれ配置されている。回転体124Aと回転体124Bとは移動経路50を介して対向し、対となっている。また、対をなす回転体124A及び124Bの夫々の側面は、上述したように、境目127及び境目128で隔てられた円柱外周面124aと断面124bとを有する。そして、回転体124A及び回転体124Bとは、以下のようにして、第1の部位と第2の部位とを有する部材として作用する。
【0064】
すなわち、
図11Aに示すように、試験管8を奥側(下降位置7A)に水平移動させる前の状態では、回転体124Aの境目127、及び回転体124Bの境目128が、試験管8と対向する状態にされる。その後、試験管8が奥側に水平移動すると、回転体124Aの境目127及び回転体124Bの境目128が試験管8の外周面と当接し、回転体124Aが鉛直軸23aを中心に左回りに回転するとともに、回転軸124Bが鉛直軸23bを中心に右回りに回転する。回転体124Aの回転によって、回転体124Aの境目128を介して断面124bに隣接する円柱外周面124aが移動経路50を塞ぎ、回転体124Bの回転によって、回転体124Aの境目127を介して断面124bと隣接する円柱外周面124aが移動経路50を塞ぐ状態となる(
図11B)。このように、回転体124Aの境目127及び回転体124Bの境目128は、下降位置7Aへ水平移動する試験管8と当接する第1の境目(第1の部位)として作用する。一方、回転体124Aの境目128及び回転体124Bの境目127は第2の境目として作用し、回転体124Aの境目128を介して断面124bと隣接する円柱外周面124a、回転体124Bの境目127を介して断面124bと隣接する円柱外周面124aの夫々は第2の部位として作用する。
【0065】
図11Bの状態の装置1を正面視した場合、通過口20bから除く回転体124A及び124Bのシルエット(回転体124A、124Bが危険領域100を塞ぐ(覆う)範囲)は、回転体が回転体24A及び24Bである場合と変わらない(
図7を参照)。よって、回転体124A及び124Bを採用しても、回転体24A及び24Bを採用した場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
なお、好適な閉塞状態を得ることができる限りにおいて、変形例3で説明した回転体124を一つだけ有する構成を採用することもできる。以上説明した実施形態の構成は例示であり、実施形態で説明した構成は適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0067】
1・・・測定装置
5・・・搬送装置
5a・・・ホルダ
5b・・・ベース
7・・・ノズル
8・・・試験管
23a、23b・・・回転軸
24A、24B、124A、124B・・・回転体
26a~c・・・羽根
124a・・・円柱外周面
124b・・・断面