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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】生体浸食性薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20230512BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230512BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230512BHJP
   A61P 27/08 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K9/00
A61K45/00
A61K31/573
A61K31/404
A61P43/00 111
A61P23/00
A61P35/00
A61P31/10
A61P31/12
A61P27/06
A61P37/02
A61P31/04
A61P29/00
A61P37/08
A61P27/08
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019564178
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 US2018037082
(87)【国際公開番号】W WO2018231811
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】62/518,739
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513105155
【氏名又は名称】アイポイント ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】EyePoint Pharmaceuticals, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ホン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジアン,ビン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-519724(JP,A)
【文献】特表2006-516618(JP,A)
【文献】特開2014-040479(JP,A)
【文献】特表2014-508749(JP,A)
【文献】特表2016-519654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 45/00-45/08
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスであって、
医薬活性剤およびポリビニルアルコールからなる生体浸食性薬物コアと、
前記薬物コアを実質的に取り囲む生体浸食性外側部材であって、82:18から85:15の範囲のモル比で存在する乳酸/グリコール酸を有する乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)からなる、生体浸食性外側部材、および
前記医薬活性剤に対して透過性である少なくとも1つの送達ポートと
からなり、
前記デバイスは、眼の硝子体に注入されるように構成され、かつ前記デバイスは、少なくとも1カ月間、前記医薬活性剤の実質的に一定の投与速度を提供するように構成される、
植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールは、前記薬物コアの約1~約20%w/wを構成する、請求項1に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールは、前記薬物コア~約10%w/wを構成する、請求項2に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記薬物コアは、製造中に加熱処理されたものである、請求項2または3に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記デバイスは、製造中に加熱処理されたものである、請求項~4のいずれか一項に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項6】
前記医薬活性剤は、麻酔剤、抗癌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、細胞輸送/運動性阻害剤、抗緑内障剤、免疫応答調節剤、ペプチド、タンパク質、ステロイド化合物、コルチコステロイド、抗菌剤、神経保護薬、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗コリンエステラーゼ薬、縮瞳薬、および散瞳薬からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項7】
前記生体浸食性外側部材は管状である、請求項1~6のいずれか一項に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項8】
前記管状生体浸食性外側部材の各端部は送達ポートを有する、請求項7に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの送達ポートは、ポリマーキャップを有する、請求項8に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項10】
少なくとも1つの送達ポートは、ポリビニルアルコールキャップを有する、請求項8または9に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、少なくとも2カ月間、前記医薬活性剤の実質的に一定の投薬速度を提供するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、1カ月~6カ月間、前記医薬活性剤の実質的に一定の投薬速度を提供するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項13】
前記デバイスは、6カ月~1年間、前記医薬活性剤の実質的に一定の投薬速度を提供するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項14】
前記デバイスは、1年~3年間、前記医薬活性剤の実質的に一定の投薬速度を提供するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項15】
前記医薬活性剤はコルチコステロイドである、請求項1~14のいずれか一項に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項16】
前記デバイスは、25以上のゲージの針を通り抜けるよう設計されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項17】
植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスであって、
医薬活性剤およびポリビニルアルコールからなる生体浸食性薬物コアと、
ポリビニルアルコールからなるコーティングであって、前記薬物コアを実質的に取り囲むコーティングと、
前記薬物コアとコーティングを実質的に取り囲む生体浸食性外側部材であって、82:18から85:15の範囲のモル比の乳酸/グリコール酸を有する乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)からなる、生体浸食性外側部材、および
前記医薬活性剤に対して透過性である少なくとも1つの送達ポートと
からなり、
前記デバイスは、眼の硝子体に注入されるように構成され、かつ前記デバイスは、少なくとも1カ月間、前記医薬活性剤の実質的に一定の投与速度を提供するように構成される、
植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
【請求項18】
患者を処置するための調製物の製造における植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスの使用であって、前記処置は、
患者の処置を必要とする領域を特定することと、
治療的緩和を提供するために、前記処置を必要とする領域の十分近くに生体浸食性薬物送達デバイスを植え込むことであって、前記生体浸食性薬物送達デバイスは、
医薬活性剤およびポリビニルアルコールからなる生体浸食性薬物コアと、
前記薬物コアを実質的に取り囲む生体浸食性外側部材であって、82:18から85:15の範囲のモル比で存在する乳酸/グリコール酸を有する乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)からなる、生体浸食性外側部材、および
前記医薬活性剤に対して透過性である少なくとも1つの送達ポートとを含み、
前記デバイスは、眼の硝子体に注入されるように構成され、かつ前記デバイスは、少なくとも1カ月間、前記医薬活性剤の実質的に一定の投与速度を提供するように構成される、
生体浸食性薬物送達デバイスを植え込むことと
を含む、使用。
【請求項19】
前記医薬活性剤は、麻酔剤、抗癌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、細胞輸送/運動性阻害剤、抗緑内障剤、免疫応答調節剤、ペプチド、タンパク質、ステロイド化合物、コルチコステロイド、抗菌剤、神経保護薬、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗コリンエステラーゼ薬、縮瞳薬、および散瞳薬からなる群から選択される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記生体浸食性外側部材は管状である、請求項18または19に記載の使用。
【請求項21】
前記管状生体浸食性外側部材の各端部は送達ポートを含む、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記所定の処置期間は1~30日の範囲である、請求項18~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記所定の処置期間は1~180日の範囲である、請求項18~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記所定の処置期間は6カ月~1年の範囲である、請求項18~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記所定の処置期間は1~3年の範囲である、請求項18~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記医薬活性剤はコルチコステロイドである、請求項18~25のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多種多様な医薬活性剤を送達するための植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスに関する。本発明は、治療的緩和を必要とする患者を処置するためにそのようなデバイスを使用する方法、ならびにそのようなデバイスを製造する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
植え込み型薬物送達デバイスは、経口投与または注射などの従来の投与方法に比べていくつかの利点を有する。例えば、従来の投与方法では、薬物の濃度はかなり変化し得、投与直後に最高濃度(Cmax)に達し、その後急激に低下する。治療レベルを維持するために薬物を高投与量で投与することが必要な場合があるが、そのような投与量は、患者にとって実際には有毒な高濃度を一時的にもたらし得る。その後、薬物が体内で代謝または排出されるにつれて、薬物濃度は安全な治療レベルに低下し得る。薬物レベルが治療量以下のレベルに下がると、次の用量が投与されてよく、したがってサイクルが繰り返される。したがって、従来の投与の問題は、あるタイプの薬物では、処置に必要な繰り返す投与サイクルからの望ましくない高レベルの薬物に患者が慢性的に曝され得ることである。
【0003】
植え込み型薬物送達デバイスは、処置を必要とする領域または処置を必要とする領域の近くでの植え込みは、治療効果を達成するための薬物の高い全身濃度の必要性を減らすため、これらの問題の多くを取り除くことができる。しかしながら、一定の投与速度(いわゆるゼロ次放出)の達成は困難であり得る。多くのシステムで、放出速度は時間依存であり、放出される薬物の量は時間の平方根に比例する(すなわちフィッキアン(Fickian))。例えば、マトリックス内に分散された薬物を含有する植え込み型デバイスは、しばしばゼロ次放出を示さない。マトリックスの外表面付近の薬物は比較的容易に放出されるが、デバイスのコア内のより深くに位置する薬物は、放出されるために枯渇したマトリックスを通って拡散しなければならない。最終的に、放出速度が落ち、フィッキアン放出が一般的という結果になる。マトリックスシステムでゼロ次放出を達成するのは非常に困難である。同じ原理がゲルからの放出に適用される。
【0004】
多くの植え込み型薬物送達デバイスの別の問題は、デバイスが、薬物がすべて投与された後にも患者の体内に永久に残る非生分解性材料で構築される場合があることである。これは、多くの異なる状況で問題になる場合がある。例えば、植え込み型薬物送達デバイスが小体積で解剖学的位置中に植え込まれる場合、植え込み型薬物送達デバイスの非生分解性部分の望ましくない蓄積のため、患者に利用可能な植え込みによる治療処置の数は制限され得る。これは、植え込み型薬物送達デバイスが眼疾患または障害を処置するために眼に植え込まれる場合に特に当てはまる。眼に永久に残るデバイスの任意の非生分解性部分は、患者の視覚を妨げるリスクを示す。別の例として、植え込み型薬物送達デバイスが筋骨格状態を処置するために関節に植え込まれる場合、関節に残るデバイスの非生分解性部分は、関節の全可動域を妨げる場合がある。
【0005】
上記すべてを考慮して、所望の局所または全身の生理学的または薬理学的作用を得るために患者に薬物の放出制御および徐放を提供するデバイスを調製する設計および方法を改善する必要性が、当該技術分野に依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、医薬活性剤を含有する薬物コアを含む植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスを提供する。デバイスは、薬物コアを実質的に取り囲む第1の生体浸食性ポリマーを含む生体浸食性外側部材も有する。第1の生体浸食性ポリマーは、デバイスの植え込み後、医薬活性剤に対して透過性でない。生体浸食性外側部材は、デバイスの植え込み後、医薬活性剤に対して透過性である第2の生体浸食性ポリマーを含む少なくとも1つの送達ポートも有する。生体浸食性外側部材は、植え込み後の所定の処置期間にわたり、医薬活性剤の実質的に一定の投与速度を提供するように構成される。
【0007】
別の態様では、本発明は、患者を処置する方法を提供する。方法は、患者の処置を必要とする領域を特定することと、治療的緩和を提供するために、処置を必要とする領域の十分近くに生体浸食性薬物送達デバイスを植え込むこととを含む。生体浸食性薬物送達デバイスは、医薬活性剤を含有する薬物コアを含む。生体浸食性薬物送達デバイスは、薬物コアを実質的に取り囲み、デバイスの植え込み後、医薬活性剤に対して不透過性である生体浸食性外側部材も有する。生体浸食性外側部材は、デバイスの植え込み後、医薬活性剤に対して透過性である第2の生体浸食性ポリマーを含む少なくとも1つの送達ポートも有する。生体浸食性外側部材は、植え込み後の所定の処置期間にわたり、医薬活性剤の実質的に一定の投与速度を提供するように構成される。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスを製造する方法を提供する。方法は、医薬活性剤を第1の生体浸食性ポリマーを含む溶液と混ぜ合わせて粒状組成物を形成するステップを含む。粒状組成物は押し出され、その後、デバイスの植え込み時、医薬活性剤に対して透過性でない第2の生体浸食性ポリマーでコーティングされる。その後、コーティングされた押し出し粒状組成物は乾燥され、1つまたは複数の送達ポートを形成するために第3の生体浸食性ポリマーを適用される。これらの送達ポートは、デバイスの植え込み後、医薬活性剤に対して透過性である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】外側部材が単一のポリマー層を含む、本発明の一実施形態による例示的な植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
図2】外側部材が2つの異なるポリマー層を含む、本発明の一実施形態による例示的な植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
図3】(a)デバイスの一方の端部が薬物コア中の医薬活性剤に対して不透過性のポリマーで密封される、本発明の一実施形態による例示的な植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。(b)デバイスの各端部が、薬物コア中に含有された医薬活性剤に対して透過性であるポリマー層を含む送達ポートを含む、本発明の一実施形態による例示的な植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
図4】(a)生体浸食性外側部材が2つのポリマー層を含み、デバイスの一方の端部が薬物コア中の医薬活性剤に対して不透過性のポリマーで密封される、本発明の一実施形態による例示的な植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。(b)生体浸食性外側部材が2つのポリマー層を含み、デバイスの各端部が、薬物コア中に含有された医薬活性剤に対して透過性であるポリマー層を含む送達ポートを含む、本発明の一実施形態による例示的な植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
図5】外側部材が2つのポリマー層を含み、外側部材の最も外側のポリマー層も送達ポートの一部を形成する、本発明の一実施形態による例示的な植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
図6】外側部材が複数の送達ポートを含む、本発明の一実施形態による例示的な植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス。
図7】本発明の一実施形態によるデバイスの放出プロファイルを示すプロット。
図8】本発明の一実施形態によるデバイスの放出プロファイルを示すプロット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様では、本発明は、それを必要とする患者が局所または全身の治療的緩和を得るための、医薬活性剤の放出制御および徐放に適した植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスを提供する。本明細書で使用される場合、用語「生体浸食性(bioerodible)」(およびその変形)ならびに「生分解性(biodegradable)」(およびその変形)は、ポリマーもしくはデバイスが生体内に植え込まれた後に、ポリマーもしくはデバイスが場合に応じて、化学的に破壊され(例えば、加水分解反応を介して)、または溶解する能力を指す。本発明の利点は、医薬活性剤の投与が完了した後に薬物送達デバイスを除去する必要がないことである。むしろ、薬物送達デバイスは生体内に残されてよく、時間とともにゆっくりと生分解されて、正常な代謝プロセスによって排出される無害な副生成物を形成する。本発明の別の利点は、薬物送達デバイスが、所定の期間にわたって一定の速度で医薬活性剤を送達するのに使用され得ることである。
【0011】
概して、本発明の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスは、1つまたは複数の医薬活性剤を含む少なくとも1つの薬物コアを含む。本発明は、同じかまたは異なる医薬活性剤を含有してよい2つ以上の薬物コアを有するデバイスを明示的に企図するが、本発明の多くの実施形態では、本発明の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスは正確に1つの薬物コアを含有する。ある実施形態では、薬物コアは、任意の追加の添加剤を含まない医薬活性剤を含有する。典型的には、このタイプの薬物コアは、医薬活性剤が生体内で比較的低い溶解度を有する場合に使用される。しかしながら、望まれる場合、医薬活性剤は、増量剤として働きかつ/または生体内で医薬活性剤が溶解する速度を制御する生体浸食性ポリマーと混ぜ合わされてよい。一般に、選択される生体浸食性ポリマーは、徐放デバイスの製造中、それに続く貯蔵中、および徐放デバイスが患者の処置を必要とする領域中に植え込まれた後で、医薬活性剤に関して化学的に不活性であるべきである。本発明によって企図される生体浸食性ポリマーの非限定的な例としては、ポリビニルアルコール(PVA)および乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)が挙げられる。好ましい実施形態では、生体浸食性ポリマーは、薬物コアの約1~約5重量%、約1~約10重量%、約1~約20重量%、約1~約25重量%、約1~約30重量%、約1~約35重量%、約1~約40重量%、約1~約45重量%、または約1~約50重量%を構成する。
【0012】
ある実施形態では、薬物コアは、粉末形態の1つまたは複数の医薬活性剤を、その中に溶解した生体浸食性ポリマーを有する溶液と混ぜ合わせ、組成物が粒状物および/またはペーストの硬さになるまで混合することによって形成されてよい。望まれる場合、そのような組成物は、ダイを通して押し出されることによってさらに処理されてよい。ある実施形態では、押し出し物は略円筒形状を有するが、他の形状(例えば、立方体、円盤など)が本発明によって明示的に企図される。押し出し後、生体浸食性ポリマー溶液の溶媒を除去するために押し出し物を乾燥させることが有利である。ある実施形態では、押し出し物は室温で風乾されるが、本発明は、好ましくは、1つまたは複数の医薬活性剤または薬物コアに加えられた任意の生体浸食性ポリマーの安定性に影響しない温度での、熱による乾燥も明示的に企図する。
【0013】
本発明によって企図される医薬活性剤は特に限定されないが、製造および貯蔵条件下で十分に安定であり、植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスの作製に使用される材料と適合する任意の医薬活性剤を含んでよい。
【0014】
以下の例示的な医薬品群が、本発明のデバイスに組み込まれてよい:リドカインおよび関連化合物ならびにベンゾジアゼパムおよび関連化合物のような麻酔剤および鎮痛剤、5-フルオロウラシル、アドリアマイシンおよび関連化合物のような抗癌剤、フルコナゾールおよび関連化合物のような抗真菌剤、トリナトリウムホスホモノホルマート、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、DDI、DDC、およびAZTのような抗ウイルス剤、コルヒチン、ビンクリスチン、サイトカラシンBおよび関連化合物のような細胞輸送/運動性阻害剤、ベータ遮断薬:チモロール、ベタキソール(betaxol)、アテナロール(atenalol)などのような抗緑内障薬、ムラミルジペプチドおよび関連化合物のような免疫応答調節剤、シクロスポリン、インスリン、成長ホルモン、インスリン関連成長因子、熱ショックタンパク質および関連化合物のようなペプチドおよびタンパク質、ならびに炭酸脱水酵素阻害剤。
【0015】
ある実施形態では、医薬活性剤は抗炎症剤である。例えば、医薬活性剤はステロイドまたはコルチコステロイドであってよく、その非限定的な例としては、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-リン酸エステル、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン(fluoromethalone)およびベタメタゾンが挙げられる。本発明は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用も企図する。NSAIDの非限定的な例としては、ジクロフェナク、エトールドラク(etoldolac)、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロモキシカム(lomoxicam)、モラゾン、ナプロキセン、ペリソキサール、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、スキシブゾン、トロペシン(tropesin)、キシモプロフェン(ximoprofen)、ザルトプロフェン、ジロートン、およびゾメピラックが挙げられる。本発明によって企図されるNSAIDにはCOX-2阻害剤も含まれ、その例としては、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、およびセレコキシブが挙げられる。前述の抗炎症剤に加えて、本発明は、類縁体、誘導体、医薬的に許容される塩、エステル、プロドラック、コドラッグ(codrug)、およびそれらの保護形態の使用も明示的に企図する。
【0016】
上記薬剤に加えて、他の薬剤としては、ニモジピンおよび関連化合物のような神経保護薬、ボスチニブおよびダサチニブのようなチロシンキナーゼ阻害剤、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、エリスロマイシンのような抗生物質、スルホンアミド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフイソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウムのような抗菌薬、イドクスウチジン(idoxutidine)を含む抗ウイルス薬、アンタゾリン、メタピリリン(methapyriline)、クロルフェニラミン、ピリラミン、およびプロフェンピリダミンのような抗アレルギー薬、線維素溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼ)、フェニレフリン、ナファゾリン、およびテトラヒドラゾリン(tetrahydrazoline)のようなうっ血除去薬、ピロカルピン、サリチル酸エゼリン、カルバコール、フルオロリン酸ジイソプロピル、ホスホリンヨウ素、および臭化デメカリウムのような縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ薬、硫酸アトロピン、シクロペントラート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユーカトロピン、およびヒドロキシアンフェタミンのような散瞳薬、エピネフリンのような交感神経模倣薬、ならびにDesign of Prodrugs, Hans Bundgaard編集, Elsevier Scientific Publishing Co., Amsterdam, 1985に記載されたもののようなプロドラッグが挙げられる。繰り返しになるが、他の薬剤の同一性のために、Remington’s Pharmaceutical Sciencesのような任意の標準的な薬学の教科書を参照してよい。
【0017】
ある実施形態では、医薬活性剤は抗生剤である。いくつかの実施形態では、抗生剤は、本発明による植え込み型生体浸食性薬物送達デバイス中の単独の医薬活性剤として投与されてよい。しかしながら、他の実施形態では、抗生剤は別の医薬活性剤と同時投与される。例えば、抗炎症剤を含有する植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスが筋骨格障害を処置するために外科的に植え込まれる場合、抗生剤は、手術創での感染の可能性を減らすために同時投与されてよい。そのような場合の抗生剤の投与は、同時に植え込まれる別個の持続性送達デバイスを介してよい。あるいは、同じ薬物コアの一部となるように、抗生剤は抗炎症剤と混ぜ合わされてよい。抗生物質のタイプは特に限定されないが、使用前の製造プロセスおよびそれに続く貯蔵条件に耐えるための、必要な化学的安定性を有する任意の抗生物質であってよい。本発明によって企図される抗生物質化合物の非限定的な例としては、アミノグリコシド系(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン)、カルバペネム系(例えば、メロペネム、イミペネム、ドリペネム)、セファロスポリン系(例えば、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフェピム、セフトビプロール)、グリコペプチド系(例えば、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、ダルババンシン、オリタバンシン)、リンコサミド系(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン)、およびマクロライド系(例えば、アジスロマイシン、エリスロマイシン)が挙げられる。
【0018】
薬物コアに加えて、本発明による植え込み型薬物送達デバイスは、薬物コアを収容する生体浸食性外側部材を含む。典型的には、生体浸食性外側部材は、薬物コアを実質的に被覆またはコーティングし、その形状を保持し、所定の処置期間中、薬物コア中の医薬活性剤に対して不透過性であるのに適切な組成物および十分な厚さのものである、1つまたは複数の生体浸食性ポリマーを含む。一般に、生体浸食性外側部材の作製に使用される生体浸食性ポリマーは限定されず、インプラントとしての使用に必要な生体適合性および所定の処置期間中の不透過性を有する任意の生体浸食性ポリマーであってよい。本発明の植え込み型薬物送達デバイスに適した生体浸食性ポリマーの非限定的な例としては、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。所与の植え込み型薬物送達デバイス、生体浸食性ポリマー、および所望の所定の処置期間について、生体浸食性外側ハウジングを不透過性にする適切な厚さが、本明細書に記載されるようなシンク条件下で実行される拡散セル研究によって決定されてよい。生体浸食性外側ハウジングに有用な壁厚は、例えば、約40μm~120μmの範囲であってよい。ある好ましい実施形態では、生体浸食性外側ハウジングは、少なくとも約40μmであるが、約100100μm以下である壁厚を有する。
【0019】
本発明の植え込み型薬物送達デバイスは、薬物コア中の医薬活性剤(複数可)の送達を可能にする1つまたは複数の送達ポートを備えてよい。1つまたは複数の送達ポートの大きさが投与速度を支配することになり、より大きい送達ポートはより大きい単位時間当たりの可溶化度、したがってより速い投与速度につながることが理解されるべきである。本発明のある実装では、送達ポートは単純に、植え込み後に薬物コアが患者の体液と直接接触するのを可能にする、生体浸食性外側部材中の開口部であってよい。そのような実装では、薬物コアと体液との間の直接接触は、時間とともに、体液および周囲の組織中への、薬物コア中の医薬活性剤(複数可)の可溶化および放出につながるであろう。このタイプの送達ポートは、薬物コアが、植え込み後に薬物コアが接触する体液中で低い溶解度を有する状況に特に適する。そのような実装では、実質的に一定の投与速度を促すように、1つまたは複数の開口部の大きさは、好ましくは、所定の処置期間中で本質的に一定のままである。加えて、送達ポートは、生体浸食性外側部材中に開口部を作り出し、開口部を透過性生体浸食性ポリマーで被覆することによって作製されてよい。そのような場合、透過性生体浸食性ポリマーは、植え込み後の薬物コア中の医薬活性剤(複数可)の周囲の組織中への拡散速度を調整するために使用されてよい。これは、例えば、所定の処置期間中、透過率が本質的に一定である、生体内で十分に遅い分解速度を有する透過性生体浸食性ポリマーを選ぶことによって達成されてよい。このようにして、所定の処置期間中、デバイス中の可溶化された薬物の濃度が一定のままであるという条件で、所定の処置期間にわたって一定の投与速度(ゼロ次放出動態)が達成され得る。ある好ましい実施形態では、送達ポート上の生体浸食性ポリマー層は様々な厚さを有し、これは異なる濃度の生体浸食性ポリマー溶液(0.05%~10%)を使用することによって、または適用される溶液コーティングの回数によって調節可能であった。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスは、植え込み後の初期過渡期に続く所定の期間にわたって、実質的に一定の速度(すなわち、ゼロ次薬物放出動態)で医薬活性剤を放出する。本発明の好ましい実施形態では、初期過渡期は所定の期間よりはるかに短い(例えば、10%未満)ことが理解されるべきである。理論に制限されることを望むものではないが、初期過渡期間中の非ゼロ次放出動態は、植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスが植え込み後に徐々に定常状態に達するにつれて起こる変化(例えば、濡れまたは拡散現象)によって引き起こされると考えられる。シンク条件下の拡散セル研究が、特定の医薬活性剤が所与の透過性生体浸食性ポリマー層を通して放出される速度を決定するために行われてよい。一般に、そのような研究は、2つの構成要素:ドナー区画とレセプター区画との間の医薬活性剤の拡散を監視することを伴う。レセプター区画中の薬物の濃度は、ドナー区画中の高濃度と比較すると本質的にゼロである。
これらの条件下で、薬物放出の速度は、以下:
【数1】
で与えられ、式中、Qは放出される医薬活性剤の量であり、tは時間であり、Dは拡散係数であり、Kは分配係数であり、Aは表面積であり、DCは、透過性生体浸食性ポリマー層を通過する医薬活性剤の濃度の差であり、hは透過性生体浸食性ポリマー層の厚さである。
【0021】
シンク条件下では、ドナー側からの放出が非常に遅い場合、値DCは本質的に一定であり、ドナー区画濃度に等しい。したがって放出速度は、生体浸食性ポリマー層の表面積(A)、厚さ(h)、および拡散率(D)に依存するようになる。本発明のデバイスの構成では、大きさ(したがって表面積)は、医薬活性剤の大きさに主に依存する。したがって、対象となる所与の生体浸食性ポリマー層の透過率は、Q対時間のプロットの傾きから得られてよい。透過率Pは、以下の式:
【数2】
により、拡散係数Dに関連し得る。
【0022】
それを通した医薬活性剤の拡散に関して、対象となる透過性生体浸食性ポリマー層の透過率が確立されると、所望の用量および投与速度を達成するために適切なデバイス寸法が決定されてよい。直径および長さなどのデバイス寸法は、本明細書に教示されるように、医薬活性剤の放出速度および放出量を調整するために拡散ポート表面積とともに調節され得る。送達開口部上に透過性生体浸食性ポリマー層を含む本発明の植え込み型薬物送達デバイスでは、医薬活性剤は、化学ポテンシャルのより低い方向に、すなわち、デバイスの外面に向かって拡散することが理解されるべきである。デバイスの外面では、平衡が再び確立される。送達開口部の透過性生体浸食性ポリマー層の両側で平衡に達すると、有効剤の定常状態流束はフィックの拡散法則にしたがって確立される。この条件下では、透過性生体浸食性ポリマー層の両側薬物濃度は、時間に対して一定になるが、明らかに同じではない。拡散によって透過性生体浸食性ポリマー層を通る医薬活性剤の通過の速度は、一般に、層の厚さだけでなく、その中の薬物の溶解度にも依存する。したがって、適切な材料の選択およびデバイスの寸法(例えば生体浸食性ポリマーの厚さ、デバイスの内径、デバイスの端部をキャップするポリマーの厚さ、送達ポートの寸法であるがこれらに限定されない)および有効成分製剤すべてが協調してともに働いて活性剤の所望の放出速度を達成し、薬物コアが露出するレベルに生体浸食性ポリマーが分解する前に、すべてまたは実質的にすべての活性剤が送達ポート(複数可)から患者に送達されることを確実にする。したがって、材料およびデバイス寸法および活性剤は、企図される所望の所定の処置期間を達成するデバイスを作製するために慎重に選ばれる。したがって、例えば、植え込み型デバイスは、治療的緩和をもたらすために、高用量で短期間(例えば2週間)、疼痛管理薬を送達するように設計されてよい一方で、同じ大きさの植え込み型デバイスが、はるかに低用量で6カ月間、抗炎症剤を送達するのに使用されてよい。
【0023】
生体浸食性外側部材は、本発明したがって異なる技術を使用して作製されてよい。例えば、ある実施形態では、生体浸食性外側部材は、生体浸食性ポリマーを含有する溶液中で本発明の薬物コアを浸漬コーティングすることによって形成されてよく、生体浸食性ポリマーの非限定的な例としては、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、およびポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好適な溶液の非限定的な例としては、生体浸食性ポリマーの約1~約20%w/w、約2~約18%w/w、約5~約15%w/w、約8~約12%w/w、または約10%w/wを含有する溶液が挙げられる。望まれる場合、薬物コアは、生体浸食性外側部材の厚さを増やすために生体浸食性ポリマー溶液中に複数回浸漬されてよい。例えば、生体浸食性ポリマーを含有する溶液中への薬物コアの浸漬およびポリマーコーティングの空気乾燥の繰り返しサイクルによって、所望の厚さの生体浸食性外側部材が薬物コアの周りに形成されてよい。いくつかの実施形態では、浸漬コーティング溶液中に2つ以上の異なるタイプの生体浸食性ポリマーが共溶解する(co-dissolved)。別の方法では、発明は、薬物コアが異なるポリマー溶液に中に浸漬される連続浸漬コーティングプロセスも企図する。そのような実施形態では、薬物コアは、所与の用途に必要なコーティングを達成するために、必要に応じて、各タイプのポリマー溶液中に1回または複数回浸漬されてよい。
【0024】
薬物コアが浸漬コーティングされて不透過性生体浸食性外側部材が形成されると、薬物コア全体が不透過性生体浸食性ポリマーコーティングで完全に被覆される場合がしばしばある。そのような場合に送達ポートを形成するには、不透過性生体浸食性ポリマー層順に、医薬活性剤を送達するための対応する開口を作り出すことが有利である。望まれる場合、送達ポートを作り出すために、不透過性生体浸食性ポリマー層を穿刺、粉砕、または切断することを含む、機械的手段が使用され得る。1つの非限定的な実施形態では、押し出しによって形成され、不透過性生体浸食性ポリマー層で浸漬コーティングされた円筒形薬物コアは、横方向に切断されて薬物コアを露出する断面として送達ポートを作り出す。望まれる場合、露出された薬物コアは、医薬活性剤の送達速度を制御するように、デバイスの植え込み後に医薬活性剤に対して透過性である生体浸食性ポリマーでコーティングされてよい。前述の説明は、1つの送達ポートを有する円筒形の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスに関するが、本発明は2つ以上の送達ポートを有するデバイスも明示的に企図することが理解されるべきである。例えば、押し出しおよび不透過性生体浸食性ポリマー層での浸漬コーティングによって形成された円筒形薬物コアは、両端を横方向に切断されて2つの送達ポートを形成してよく、それは任意選択で透過性生体浸食性ポリマーでコーティングされてよい。望まれる場合、押し出された薬物コアは、浸漬コーティング前、浸漬コーティングステップ間、または浸漬コーティングの完了後のいずれかに、製造プロセス中で使用された可能性のある任意の溶媒を追い出すために加熱処理されてよい。一般に、加熱処理は、医薬活性剤(複数可)の望ましくない分解または望ましくない副反応を引き起こすことなく、溶媒を安全に追い出すことができる温度で実施される。加えて、加熱処理ステップは、本発明の植え込み型薬物送達デバイスの作製に使用される生体浸食性ポリマーの透過率または生体内での分解の速度を変えるために実施され得る。例えば、本発明の植え込み型薬物送達デバイスがポリビニルアルコール層を含有する場合、ポリビニルアルコール層の透過率および水溶性は加熱処理によって低下する。
【0025】
他の実施形態では、生体浸食性外側部材は、製造中にその中に薬物コアが挿入または沈着された剛体である。例えば、生体浸食性外側部材は、その中に薬物コアが挿入または押し出された中空の剛性管状部材であってよい。1つの非限定的な実施形態では、薬物コアは、初期は、プランジャ、プッシュロッドなどによって剛性管状生体浸食性外側部材中に挿入または押し出されてよい、十分に低い粘度を有する組成物である。場合によっては、初期の薬物コア組成物の粘度が十分に低く、組成物が真空によってチューブの中に注がれ、注入され、または引かれ得るように、医薬活性剤は、溶媒(および任意選択で生体浸食性ポリマー)と混ぜ合わされてよい。そのような場合、植え込み前にデバイスを加熱して実質的にすべての残留溶媒を追い出すことが有利であり得る。
【0026】
ある好ましい実施形態では、管状生体浸食性外側部材の外径は、本発明の植え込み型薬物送達デバイスが、25ゲージ、またはより細いそれ以上のゲージ(より細い針)の針を使用して患者の眼の中に植え込まれてよいように選択される。本発明の一態様は、植え込み型薬物送達デバイスがそのような針を使用して患者の眼の中に注入される場合、植え込み中の植え込み型薬物送達デバイスの構造的完全性および所定の処置期間にわたる所望のゼロ次放出動態の両方を維持するために、管状生体浸食性外側部材の壁は十分に熱くなければならないという認識である。したがって、例えば、そのような植え込み型薬物送達デバイスの管状生体浸食性外側部材が乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を使用して作られる場合、有用な壁厚は40~80μmの範囲に収まる。この範囲の壁厚を使用することによって、管状PLGA生体浸食性外側部材は、植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスが眼の中への埋め込み後に実質的にゼロ次放出動態を示すようにするが、管状PLGA生体浸食性部材は依然として、所定の処置期間のオーダーの時間尺度で完全に分解される。このようにして、このタイプの植え込み型薬物送達デバイスは、所定の処置期間にわたって2つ以上の使用済みデバイスが眼の中に蓄積することなく、患者の眼の中に順次埋め込まれてよい。
【0027】
一般に、製造しやすいように、植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスは、好ましくは円筒形の形状である。しかしながら、他の形状が明示的に企図され、規則的な形状(例えば、立方体、円盤など)が特に好ましい。生体浸食性薬物送達デバイスが円筒形の場合、そのようなデバイスの横断面(図示せず)はしばしば円形に見えるであろう。植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスを円形断面を有する円筒として製造することが好ましいが、卵形(oval)、楕円(ellipse)、正方形を含む矩形、三角形、および任意の他の規則的な多角形または不規則な形状などの、異なる形状の断面を有する円筒としてそのようなデバイスを製造することも本発明の範囲内である。
【0028】
ここで作図を見てみると、図1は、本発明の一実装による植え込み型薬物送達デバイス100の縦断面図を示す。デバイス100は、1つまたは複数の医薬活性剤を含有する薬物コア105を含む。1つまたは複数の医薬活性剤は、増量剤として働きかつ/または生体内での薬物コアの溶解速度を制御する少なくとも1つの生体浸食性ポリマーと任意選択で混合されてよい。デバイス100は生体浸食性外側部材110をさらに含み、これは、植え込み後、少なくとも所定の処置期間中、薬物コア105中に含有された医薬活性剤(複数可)に対して実質的に不透過性であるハウジングを作り出すために生体浸食性ポリマーを使用して作製される。デバイス100は、デバイス100の両端に位置する2つの送達ポート115も特徴とする。この特定の実施形態では、送達ポート115は薬物コア105を周囲の環境に直接露出し、デバイス100の植え込み後、薬物コア105が体液によって溶解されると、薬物コア105中に含有された医薬活性剤(複数可)が送達ポート115から放たれることになると予期される。
【0029】
図2は、本発明の別の実装による植え込み型薬物送達デバイス200の縦断面図を示す。図2では、デバイス200は、増量剤として働きかつ/または生体内での薬物コアの溶解速度を制御する少なくとも1つの生体浸食性ポリマーと任意選択で混合されてよい1つまたは複数の医薬活性剤を含有する薬物コア205を含む。デバイス200は生体浸食性外側部材210をさらに含み、これは、第1の生体浸食性ポリマー層212および第2の生体浸食性ポリマー220で構成される多層構造である。2つのポリマー層212、220のみが図2に描かれているが、本発明は、3つ以上の生体浸食性ポリマー層を含む生体浸食性外側部材を有するデバイスを企図することが理解されるべきである。また、生体浸食性外側部材110、210の各ポリマー層は、共重合体(例えば、ブロック共重合体、交互共重合体、またはランダム共重合体)で独立して構成されてよいことに留意されたい。薬物送達デバイス200は、デバイス200の両端に位置する2つの送達ポート215をさらに含む。図1の場合のように、図2の送達ポート215は、薬物コア205を周囲の環境に直接露出する。デバイス200の植え込み後、薬物コア205が体液によって溶解されると、薬物コア205中に含有された医薬活性剤(複数可)が送達ポート215から放たれることになる。
【0030】
図3(a)は、本発明の別の実装による植え込み型薬物送達デバイス301の縦断面図を示す。デバイス301は、増量剤として働きかつ/または生体内での薬物コアの溶解速度を制御する少なくとも1つの生体浸食性ポリマーと任意選択で混合されてよい1つまたは複数の医薬活性剤を含有する薬物コア305を含む。デバイス301は生体浸食性外側部材310をさらに含み、これは、薬物コア305中に含有された医薬活性剤(複数可)を実質的に被覆するハウジングを作り出すために生体浸食性ポリマーを使用して作製される。生体浸食性ポリマーは、少なくとも所定の処置期間中、薬物コア305中に含有された医薬活性剤(複数可)に対して実質的に不透過性である。デバイス301は、薬物コア305を周囲の環境に直接露出する1つの送達ポート360を特徴とする。デバイス301の植え込み後、薬物コア305が体液によって溶解されると、薬物コア305中に含有された医薬活性剤(複数可)が送達ポート360から放たれることになる。デバイス301の他方の端部では、薬物コア305中の医薬活性剤(複数可)に対して不透過性である生体浸食性ポリマーキャップ350は、生体浸食性ポリマーキャップ350が位置するデバイスの端部からのそのような薬剤の投与を防ぐ。図3(a)は、生体浸食性外側部材310のものと異なるポリマーで構成される生体浸食性ポリマーキャップ350を示すが、生体浸食性外側部材および生体浸食性ポリマーキャップは、望まれる場合、単一のモノリシックユニットとして一体に作製され得る。図3(b)は、本発明の別の実装による植え込み型薬物送達デバイス302の縦断面図を示す。図3(b)では、デバイス302は、増量剤として働きかつ/または生体内での薬物コアの溶解速度を制御する少なくとも1つの生体浸食性ポリマーと任意選択で混合されてよい1つまたは複数の医薬活性剤を含有する薬物コア305を含む。デバイス302は生体浸食性外側部材310をさらに含み、これは、薬物コア305中に含有された医薬活性剤(複数可)を実質的に被覆するハウジングを作り出すために生体浸食性ポリマーを使用して作製される。生体浸食性ポリマーは、少なくとも所定の処置期間中、薬物コア305中に含有された医薬活性剤(複数可)に対して実質的に不透過性である。デバイス302は、薬物コア305中に含有された医薬活性剤(複数可)がそれを通して拡散するのを可能にする透過性生体浸食性ポリマー層350を有する2つの送達ポートを特徴とする。
【0031】
図4は本発明の追加の実施形態を示す。図4(a)は、植え込み型薬物送達デバイス401の縦断面図を提供する。デバイス401は、増量剤として働きかつ/または生体内での薬物コアの溶解速度を制御する少なくとも1つの生体浸食性ポリマーと任意選択で混合されてよい1つまたは複数の医薬活性剤を含有する薬物コア405を含む。デバイス401は生体浸食性外側部材410をさらに含み、これは、第1の生体浸食性ポリマー層412および第2の生体浸食性ポリマー420で構成される多層構造である。図2に示された実施形態と同様に、デバイス401は、2つのポリマー層412、420のみを有する生体浸食性外側部材410に限定されない。むしろ、生体浸食性外側部材410を形成するのに3つ以上の生体浸食性ポリマー層が使用され得ることが理解されるべきである。また、生体浸食性外側部材410の各ポリマー層は、共重合体(例えば、ブロック共重合体、交互共重合体、またはランダム共重合体)で構成されてよいことに留意されたい。薬物送達デバイス401は、薬物コア405を周囲の環境に直接露出する単一の送達ポート460をさらに含む。植え込むと、薬物コア405は体液によって徐々に溶解され、薬物コア405中に含有された医薬活性剤(複数可)が送達ポート460から放たれることになる。生体浸食性ポリマーキャップ450は、所定の処置期間中、薬物コア405中の医薬活性剤(複数可)に対して不透過性であるポリマーで構成され、送達ポート460の反対側のデバイス401の端部からの医薬活性剤(複数可)の放出を防ぐ。図3(a)の場合のように、生体浸食性外側部材および生体浸食性ポリマーキャップは同じ材料の一体構造として一体に作製され得ることが理解されるべきである。
【0032】
図4(b)は、植え込み型薬物送達デバイス402の縦断面図を提供する。図4(a)のデバイス401の場合のように、図4(b)のデバイス402は、増量剤として働きかつ/または生体内での薬物コアの溶解速度を制御する少なくとも1つの生体浸食性ポリマーと任意選択で混合されてよい1つまたは複数の医薬活性剤を含む薬物コア405を含む。デバイス402は生体浸食性外側部材410をさらに含み、これは、第1の生体浸食性ポリマー層412および第2の生体浸食性ポリマー420で構成される多層構造である。望まれる場合、所望の用途およびまたは所定の処置期間に応じて追加の生体浸食性ポリマー層が含まれてよい。薬物送達デバイス402は、透過性生体浸食性ポリマー層450を含む2つの送達ポートをさらに含む。植え込むと、患者の体液は生体浸食性ポリマー層450に浸透して薬物コア405を可溶化し、それによりその中に含有された医薬活性剤(複数可)を放出する。
【0033】
図5は、本発明の別の実施形態による植え込み型薬物送達デバイス500の縦断面図を提供する。デバイス500は、増量剤として働きかつ/または生体内での薬物コアの溶解速度を制御する少なくとも1つの生体浸食性ポリマーと任意選択で混合されてよい1つまたは複数の医薬活性剤を含む薬物コア505を含む。デバイス500は、少なくとも所定の処置期間中、薬物コア505中に含有された医薬活性剤(複数可)に対して不透過性である生体浸食性ポリマーを使用して作製される生体浸食性外側部材510をさらに含む。生体浸食性ポリマー層520がデバイス全体を封入し、これは薬物コア505中に含有された医薬活性剤(複数可)に対して透過性である。植え込むと、薬物コア505は体液によって徐々に溶解され、薬物コア505中に含有された医薬活性剤(複数可)が端部領域550を通って拡散する。
【0034】
図6は、本発明の別の実施形態による植え込み型薬物送達デバイス600の上面図および縦断面図を提供する。図6では、薬物送達デバイス600は、増量剤として働きかつ/または生体内での薬物コアの溶解速度を制御する少なくとも1つの生体浸食性ポリマーと任意選択で混合されてよい1つまたは複数の医薬活性剤を含む薬物コア605を含む。デバイス600は生体浸食性外側部材620をさらに含み、これは、薬物コア605中に含有された医薬活性剤(複数可)を実質的に被覆するハウジングを作り出すために生体浸食性ポリマーを使用して作製される。生体浸食性ポリマーは、少なくとも所定の処置期間中、薬物コア605中の医薬活性剤(複数可)に対して不透過性である。図6に示すように、デバイス600は、デバイスの各端部の2つの送達ポート(650a、650b)を特徴とし、デバイス600の長さに沿って配置される追加の送達ポート(650c、650d、および650e)を有する。デバイス600の植え込み後、薬物コア605が体液によって溶解されると、薬物コア605中に含有された医薬活性剤(複数可)が送達ポート650a~eから放たれることになると予期される。したがって、追加の送達ポートの存在は、デバイス600の植え込み後、医薬活性剤(複数可)のより速い送達が望まれる場合、特に有用である。ある実施形態では、製造および取り扱いの容易さのために、追加の送達ポート650c、650d、および650eをデバイス600の同じ側に位置させることが有利である。例えば、追加の送達ポート650c、650d、および650eは、デバイス600の片側に沿って長手方向に同一直線上に並べられてよい。この構成は、投与速度に影響することなく、追加の送達ポート650c、650d、および650eの反対側のデバイスの長手方向側を介して、身体部分にデバイス600を固定しまたは付着させることを可能にするため、有利である。他の実施形態では、追加の送達ポート650c、650d、および650eはデバイス600の同じ側になく、より空間的に等方性の投与プロファイルをもたらし得る。しかしながら、図6の送達ポートの数、送達ポートの形状、および送達ポートの特定の位置は一例にすぎず、決して本発明を限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。好ましい実施形態では、図6に示すように、送達ポートは、治療的緩和を提供するために、植え込み後、それを通って医薬活性剤(複数可)が拡散しなければならない透過性生体浸食性ポリマー層を含む。望まれる場合、そのような層の透過性は、層を通した医薬活性剤(複数可)の拡散が律速となるように選ばれる。
【0035】
本発明は、所望の局所または全身の生理学的または薬理学的作用を得るために哺乳類生物を処置するための方法にさらに関する。方法は、植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスを哺乳類生物に投与すること、および医薬活性剤をデバイスから拡散させて所望の局所または全身作用をもたらすことを含む。本明細書で使用される場合、投与する(administering)という用語は、位置付けること、挿入すること、注入すること、植え込むこと、固定すること、取り付けること、またはデバイスを哺乳類生物、好ましくはヒトに露出するための任意の他の手段を意味する。投与経路は、応答または処置のタイプ、薬剤のタイプ、および好ましい投与部位を含む様々な要素に依存する。
【0036】
ある実施形態のデバイスは、以下の領域:癌性原発腫瘍(例えば膠芽腫)、眼内血管新生を含む血管新生の抑制、眼浮腫を含む浮腫、眼炎症を含む炎症、糖尿病のようなホルモン欠乏症、慢性痛のような筋骨格障害、関節炎、リウマチ状態、ならびに低身長症、ならびに移植拒絶反応の予防および癌治療でのような免疫応答の調節に少なくともに関する所望の局所または全身の生理学的または薬理学的作用を得るのに有効な、薬剤の放出制御および徐放の提供に適用できる。多種多様な他の病状も、本発明の薬物送達デバイスを使用して予防または処置されてよい。そのような病状は、当業者に既知である。当業者ではない場合、以下:Goodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Press, N.Y., 1990、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990を参照することができ、その両方は参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
本発明の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスは、緑内障、増殖性硝子体網膜症、糖尿病黄斑浮腫を含む黄斑浮腫、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、眼内血管新生、網膜静脈閉塞症、地図状萎縮および眼感染症のような眼の状態の処置に特に適する。眼ヒストプラスマ症を患う哺乳類生物(ヒトおよび獣医師使用用の両方)の処置における眼のデバイスとしての使用にも特に適し、デバイスは眼の硝子体内に外科的に植え込まれる。
【0038】
概して、本発明の植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスは、所定の処置期間にわたる1つまたは複数の医薬活性剤の実質的なゼロ次放出を提供するように設計される。所定の処置期間は、処置される疾患または障害、状態の重症度、および所望の症状緩和持続期間に応じて変化するであろう。例えば、ある実施形態では、所定の期間は少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月または12カ月、および48カ月以下、40カ月以下、36カ月以下、30カ月以下、24カ月以下または18カ月以下続く。ある実施形態では、所定の期間は、少なくとも6カ月または少なくとも12カ月である。大抵の場合、植え込み方法がより侵襲的(例えば、外科的植え込み)になればなるほど、処置のためにより長い所定の期間を有することが望ましくなることを本発明は認識する。このようにして、患者は、患者が植え込みプロセスに関連する外傷にさらされることを最小限にすることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、所定の処置期間は比較的短い(例えば、約3日、1週間未満、約1週間、約2週間、または約3週間)。いくつかの実施形態では、所定時間は1~30日、1~180日、6カ月から12カ月、または1年~3年の範囲である。
【0039】
本発明は、所望の処置期間を達成するための異なる方法を企図する。例えば、問題の徐放デバイスが患者の体液に露出する薬物コアの面積に比例する速度で投与すると仮定すると、所定の処置期間の持続期間は、徐放デバイスの物理的な長さを調節することによって調節され得る。所定の処置期間の持続期間は、薬物コア中の医薬活性剤と混合される生体浸食性ポリマーの適切な選択によって調節されてもよい。非限定的な例として、生体浸食性ポリマーがポリビニルアルコールの場合、ポリビニルアルコールは、医薬活性剤(複数可)の放出速度を制御または調節するために加熱処理されてよい。典型的には、加熱処理は、設計されたマトリックスおよび/または拡散ポートコーティングを形成するために、医薬活性剤をポリビニルアルコールと混ぜ合わせた後に実施される。しかしながら、場合によっては、薬物コアが加熱処理後に完全に形成され得ることも本発明は認識し、ポリビニルアルコールコーティング膜は、膜の透過性をさらに低下させるために、ポリビニルアルコールの結晶化度を高めるようにより高温で処理され得る。
【0040】
様々な組成物が当業者に周知であるように、上記の、本発明のデバイスを作る方法の説明は一例にすぎず、決して本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。具体的には、デバイスを作る方法は、選択された活性剤およびポリマーの同一性に依存する。活性剤ならびに外側部材およびその送達ポート(複数可)を含むポリマーの組成を考慮すれば、当業者は、従来のコーティング技術を使用して本発明のデバイスを容易に作ることができる。
【0041】
所望の局所または全身の生理学的または薬理学的作用を得るために哺乳類生物を処置するための方法は、本発明の徐放薬物送達デバイスを哺乳類生物に投与すること、および薬剤をデバイスを通して哺乳類生物に直接接触させることを含む。
【0042】
本発明の薬物送達システムは、当該技術分野で既知の任意の投与経路を介して哺乳類生物に投与されてよい。そのような投与経路としては、眼球内、経口、皮下、筋肉内、腹腔内、硝子体内、前房内、鼻腔内、真皮内、頭蓋内および硬膜内を含む脳内、足首、膝、股関節、肩、肘、手首を含む関節内、腫瘍内に直接などが挙げられる。加えて、1つまたは複数のデバイスが一度に投与されてよく、または2つ以上の薬剤が内側コアもしくはリザーバ中に含まれてよく、または2つ以上のリザーバが単一のデバイス中に設けられてよい。
【0043】
本発明の薬物送達システムは、眼の硝子体内への直接の植え込みまたは注入、および眼内レンズへの応用に特に適する。
【0044】
これらの投与方法およびその調製技術は当業者に周知である。その調製技術はRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0045】
薬物送達システムは、十分な期間、および関心のある病状の処置を可能にする条件下で投与されてよい。
【0046】
局所薬物送達のためには、デバイスは、作用部位に、または作用部位の近くに外科的に植え込まれてよい。これは、本発明のデバイスが、眼の状態、原発腫瘍、リウマチおよび関節炎状態、ならびに慢性痛の処置に使用される場合である。
【0047】
全身緩和のためには、デバイスは、皮下、筋肉内、動脈内、髄腔内、または腹腔内に植え込まれてよい。これは、デバイスが持続的な全身レベルを与え、早すぎる代謝を回避する場合である。加えて、そのようなデバイスは経口投与されてよい。
【0048】
本発明の一実施形態では、眼内血管新生を低減または予防するために有効剤としてフルオシノロンアセトニドを治療有効量で含有する眼のデバイスが調製されてよい。そのようなデバイスは、眼の硝子体内に外科的に植え込まれると、望ましくない血管新生、浮腫、または炎症に効果的に対抗し、それらを抑制するために使用されてよい。これらのデバイスに使用されるフルオシノロンアセトニドの好ましい量は、約0.01mg~約40mgの範囲である。より好ましくは、そのようなデバイスは、約0.1mg~約6mgのフルオシノロンアセトニドを含有する。これらの好ましい範囲は、数時間から5年超の期間、フルオシノロンアセトニドの徐放を提供してよい。
【0049】
そのようなデバイスが眼の硝子体内への植え込みのために調製される場合、デバイスはどの方向にも約7ミリメートルを超えないことが好ましく、その結果デバイスは、7ミリメートル未満の切開部から挿入され得る。したがって、図に示された円筒形デバイスは、好ましくは高さ7ミリメートルまたは直径3ミリメートルを超えないことになる。薬物コアの好ましい寸法は、3.5mm L×0.37mm φである。生体浸食性外側部材の好ましい厚さは、0.01mm~約1.0mmの範囲である。送達ポートの作製に使用される透過性生体浸食性ポリマー層の好ましい厚さは、約0.01mm~約1.0mmの範囲である。外層の壁の好ましい厚さは、約0.01mm~約1.0mmの範囲である。
【0050】
実施例
実施例1
チロシンキナーゼ阻害剤を使用した加齢黄斑変性を処置するためのデバイスの作製
この例は、本発明の一実施形態による植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスの放出動態を研究する。本研究で使用される植え込み型生体浸食性薬物送達デバイスを、チロシンキナーゼ阻害剤であるスニチニブ250mgを、乳鉢および乳棒を使用して微粒子に粉砕することによって作製した。250μlの体積の10%ポリビニルアルコール溶液を、さらに混合しながら微粒子に加えて粒状物/ペーストの硬さを有する組成物を形成した。結果として生じる粒状物/ペーストを1.0mlのインジェクタに移し、0.013”IDの分注チップを通して押し出して、チロシンキナーゼ阻害剤および生体浸食性ポリマー(ポリビニルアルコール)を含む管状薬物コアを形成した。押し出し物を一晩空気乾燥した。
【0051】
乾燥した押し出し物を120℃で2時間加熱処理し、その後、5%ポリビニルアルコール(PVA)溶液中で浸漬コーティングした。続いて浸漬コーティングされた押し出し物を25℃で30分間空気乾燥した。その後、PVAコーティングされた押し出し物をアセトン中の7%PLGA(75:25)溶液でコーティングし、25℃で30分間空気乾燥した。7%PLGA(75:25)溶液中でのコーティングおよびその後の25℃で30分間の空気乾燥のサイクルをさらに2回繰り返した。その後、コーティングされた押し出し物を60℃で60分間加熱した。
【0052】
コーティングされた押し出し物の放出プロファイルを研究するため、押し出し物を小片に切断し、各小片は約3.5mmの長さを有していた。水浴への浸漬を介して37℃に維持された1.0mlの体積のリン酸緩衝食塩水(PBS)中に、小片の1つを置いた。図7は、時間の関数としての、デバイスの放出プロファイルのプロットを示す。実験の最初の10日間の初期非線形誘導期を除いて、プロットは、放出されたAPIの累積量は、約12日目~約35日目の時間で本質的に線形(R=0.9935)に増加することを示す。この線形挙動は、同じ期間にわたる一定の放出速度の特徴である。したがって、図7のプロットは、この例で作製されたデバイスが実質的なゼロ次放出動態を達成できることを示す。
【0053】
実施例2
PLGAマイクロチューブによる浸食性Durasertインプラントの説明
本発明の一実施形態による植え込み型生体浸食性デバイスを、以下の方法で作製した。フルオシノロンアセトニド(FA)の950mgの試料を950μlの10%ポリビニルアルコールと混ぜ合わせて粒状/ペースト組成物を形成した。粒状/ペースト組成物をシリンジに移し、2つの異なるタイプの乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)マイクロチューブ中に押し出した。第1のタイプのチューブは、85:15の乳酸/グリコール酸モル比(すなわち、L85:G15)を有し、一方第2のタイプのチューブは82:18の乳酸/グリコール酸モル比(L82:G18)を有していた。空気乾燥後、充填されたチューブを3.0または3.5mmの長さの小片に切断し、各小片の両端を10% PVAでコーティングし、25℃で30分間空気乾燥した。PVA溶液でのコーティングおよびその後の25℃で30分間の空気乾燥のサイクルをさらに2回繰り返した。インプラントに105℃で2時間の加熱処理を行った。
【0054】
実施例3
PLGAマイクロチューブ放出プロファイル
本発明の一実施形態による植え込み型生体浸食性マイクロチューブデバイスを、医薬活性剤は安定しかつ制御された速度で、マイクロチューブから、およびマイクロチューブの両端上の放出ポートからのみ放出されるべきであり、チューブのシェルは薬物コア中の医薬活性剤に対して透過性でないという設計原理で作製した。加えて、マイクロチューブを、担持された医薬活性剤が完全に放出されるまでその構造的および機械的完全性を維持するように設計した。
【0055】
植え込み型生体浸食性マイクロチューブデバイスは、0.20mmの内径、約0.075mmの壁厚、および3.5mmの長さを有していた。マイクロチューブの外側シェルはPLGAポリマー(乳酸/グリコール酸モル比85:15)製マイクロチューブであり、粒状のフルオシノロンアセトニド/ポリビニルアルコール(PVA)組成物をPLGAマイクロチューブ中に押し出すことによってデバイスを作製した。インプラントの両端を10%PVA水溶液でコーティングし、空気乾燥し、105℃で2時間加熱処理した。
【0056】
デバイスを放出媒体中に浸漬することによってインビトロ放出実験を実施し、放出媒体は水浴中で37℃に維持されたリン酸緩衝食塩水(PBS)であった。分析のためにPBS放出媒体を定期的に除去し、新しいPBSと交換した。得られた放出プロファイル(図8)は、約160日間、本質的に線形であり、この間、薬物がデバイスの両端上の放出ポートからのみ放出されたことを示唆する。約160日後、医薬活性剤の放出速度は上昇し、マイクロチューブ自体が十分に分解して医薬活性剤がマイクロチューブのPLGA壁を透過できるようになったことを示した。このデバイスの放出プロファイルは、デバイスが最長約160日間の薬剤の制御された徐放に適することを示す。この植え込み型生体浸食性デバイスを眼障害を処置するために使用する利点は、デバイスが、その医薬活性剤を送達した後、比較的速く溶解することである。したがって、眼障害の処置を続けるための同じタイプの別の植え込み型生体浸食性デバイスの次の注入時、いつでもせいぜい2つのデバイスのみが患者の眼内にある。
【0057】
本発明の上記の実施形態は、医薬活性剤の量の好ましい範囲、および生体浸食性ポリマー層の好ましい厚さの観点から記載されているが、これらの選好は、決して本発明を限定することを意図したものではない。当業者には容易に理解されるように、好ましい量、材料および寸法は、投与方法、使用される有効剤、使用されるポリマー、所望の放出速度などに依存する。同様に、実際の放出速度および放出持続期間は、上記に加えて、処置されている病状、患者の年齢および状態、投与経路、ならびに当業者には容易に明らかであろう他の要素などの、様々な要素に依存する。前述の米国特許および他の出版物はすべて、その各々の全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0058】
前述の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認でき、その趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な使用法および条件に適合させるために本発明の様々な変更および/または修正を行うことができる。したがって、これらの変更および/または修正は、以下の特許請求の範囲の均等の全範囲内であることが、適切に、公正に、意図される。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7
図8