(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/16 20060101AFI20230512BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230512BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20230512BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20230512BHJP
【FI】
B23K26/16
B23K26/00 H
B23K26/08 D
B23K26/38 Z
(21)【出願番号】P 2020200294
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿下 健一
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-031669(JP,A)
【文献】特開2016-000423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0241419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/16
B23K 26/00
B23K 26/08
B23K 26/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工される電極シートを搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される前記電極シートの第1表面に向けてレーザ光を照射して、前記電極シートにレーザ加工を施すレーザ照射機構と、
前記電極シートの前記第1表面側から前記電極シートのレーザ加工点を覆う集塵フードを有し、前記集塵フードと前記電極シートとによって囲まれる領域内の空気を排出して集塵する集塵機構と、を備える
レーザ加工装置であって、
前記搬送機構は、1または複数の搬送ロールを有し、前記電極シートを前記搬送ロールの外周面に巻き付けるようにして、前記電極シートを前記搬送方向に搬送し、
前記レーザ照射機構によって前記電極シートに生じさせる各々の前記レーザ加工点において前記電極シートの前記第1表面に接する各仮想接平面を境界として、前記仮想接平面に接する前記電極シートが位置する側の領域を第1領域とし、その反対側の領域を第2領域と定義すると、
前記集塵フードの開口部の端縁
は環状であり、前記端縁の全ては前記各仮想接平面について前記第1領域内に位置している
レーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
前記搬送機構は、前記電極シートの前記第1表面とは反対側の第2表面を巻き付けて、前記電極シートを搬送する1本の前記搬送ロールを有し、
前記レーザ照射機構は、前記電極シートのうち前記搬送ロールの外周面上に位置する部位に対してレーザ加工を行う
レーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
前記搬送機構は、
第1搬送ロールと第2搬送ロールを有し、
前記電極シートの前記第1表面とは反対側の第2表面を前記第1搬送ロールの外周面に巻き付けつつ、前記電極シートを前記第1搬送ロールの周方向に搬送した後、前記第1搬送ロールから前記第2搬送ロールに向けて前記電極シートを搬送し、その後、前記電極シートの前記第2表面を前記第2搬送ロールの外周面に巻き付けつつ、前記電極シートを前記第2搬送ロールの周方向に搬送し、
前記レーザ照射機構は、前記電極シートのうち前記第1搬送ロールから前記第2搬送ロールに向けて搬送されている部位に対してレーザ加工を行う
レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工装置として、加工対象物の第1表面に向けてレーザ光を照射して、加工対象物にレーザ加工を施すレーザ照射機構と、加工対象物の第1表面側から加工対象物のレーザ加工点を覆う集塵フードを有し、集塵フードと加工対象物とによって囲まれる領域内の空気を排出(吸引)して集塵する集塵機構と、を備えるレーザ加工装置が知られている。このようなレーザ加工装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のレーザ加工装置では、集塵フードの開口部(レーザ加工点側に開口する開口部)の端縁と加工対象物の第1表面との間に隙間が空いている。このようなレーザ加工装置では、加工対象物のレーザ加工点から第1表面側に飛散するスパッタ等の飛散物が、レーザ加工点から低い角度で直線状に飛散した場合に、集塵フードの開口部の端縁と加工対象物の第1表面との間の隙間を通じて集塵フードの外部に飛散してしまい、集塵機構によって集塵することができないことがあった。なお、加工対象物としては、例えば、電極シートが知られており、レーザ照射機構としては、例えば、搬送機構によって搬送方向に搬送される電極シートの第1表面に向けてレーザ光を照射して、電極シートにレーザ加工を施すレーザ照射機構が知られている。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、集塵フードの外部に漏れて集塵機構によって集塵できなくなる飛散物(電極シートのレーザ加工点から飛散するスパッタ等の飛散物)の量を低減することができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、レーザ加工される電極シートを搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される前記電極シートの第1表面に向けてレーザ光を照射して、前記電極シートにレーザ加工を施すレーザ照射機構と、前記電極シートの前記第1表面側から前記電極シートのレーザ加工点を覆う集塵フードを有し、前記集塵フードと前記電極シートとによって囲まれる領域内の空気を排出して集塵する集塵機構と、を備えるレーザ加工装置であって、前記搬送機構は、1または複数の搬送ロールを有し、前記電極シートを前記搬送ロールの外周面に巻き付けるようにして、前記電極シートを前記搬送方向に搬送し、前記レーザ照射機構によって前記電極シートに生じさせる各々の前記レーザ加工点において前記電極シートの前記第1表面に接する各仮想接平面を境界として、前記仮想接平面に接する前記電極シートが位置する側の領域を第1領域とし、その反対側の領域を第2領域と定義すると、前記集塵フードの開口部の端縁は環状であり、前記端縁の全ては前記各仮想接平面について前記第1領域内に位置しているレーザ加工装置である。
【0007】
上述のレーザ加工装置は、搬送機構によって搬送される電極シートの第1表面に向けて(第1表面に対して)レーザ光を照射して、電極シートにレーザ加工を施すレーザ照射機構を備える。さらに、電極シートの第1表面側から電極シートのレーザ加工点を覆う集塵フードを有する集塵機構を備える。この集塵機構は、集塵フードと電極シートとによって囲まれる領域内の空気を排出(吸引)して集塵する。
【0008】
ところで、電極シートのレーザ加工点から第1表面側(第2表面側とは反対の側)に直線状に飛散するスパッタ等の飛散物は、レーザ加工点から最も低い角度で飛散した場合でも、各レーザ加工点における各仮想接平面(レーザ加工点において電極シートの第1表面に接する仮想平面)について、第2領域内に飛び散ることになる。なお、電極シートは、第1表面と、第1表面とは反対側の第2表面とを有する。また、各仮想接平面について、仮想接平面を境界として、仮想接平面に接する電極シートが位置する側の領域が第1領域であり、その反対側の領域が第2領域である。
【0009】
これに対し、上述のレーザ加工装置では、集塵フードの開口部(レーザ加工点側に開口する開口部)の端縁は環状であり、前記端縁の全ては各仮想接平面について第1領域内に位置している。換言すれば、集塵フードの環状の壁部は、各仮想接平面について、第2領域内から第1領域内にまで延びている。すなわち、集塵フードの内部空間は、第2領域内のみならず第1領域内にまで達している。
【0010】
これにより、電極シートのレーザ加工点から第1表面側に直線状に飛散する飛散物のいずれについても、集塵フードの内面に当てることができるので、飛散物が集塵フードの外部に漏れて集塵できなくなることを低減することができる。従って、上述のレーザ加工装置によれば、集塵フードの外部に漏れて(外部へ飛散して)集塵機構によって集塵できなくなる飛散物(電極シートのレーザ加工点から飛散するスパッタ等の飛散物)の量を低減することができる。
【0011】
なお、上述のレーザ加工装置は、搬送機構として、1または複数の搬送ロールを有し、電極シートを搬送ロールの外周面に巻き付けるようにして、電極シートを搬送方向に搬送する搬送機構を備えている。このような搬送機構を備えることによって、集塵フードの開口部(レーザ加工点側に開口する開口部)の端縁を、各仮想接平面について第1領域内に容易に配置することができる。
【0012】
さらに、前記のレーザ加工装置であって、前記搬送機構は、前記電極シートの前記第1表面とは反対側の第2表面を巻き付けて、前記電極シートを搬送する1本の前記搬送ロールを有し、前記レーザ照射機構は、前記電極シートのうち前記搬送ロールの外周面上に位置する部位に対してレーザ加工を行うレーザ加工装置とすると良い。
【0013】
上述のレーザ加工装置では、搬送機構が、1本の搬送ロールであって、電極シートの第1表面とは反対側の第2表面を当該搬送ロールの外周面に接触させるようにして電極シートを巻き付けて、電極シートを当該搬送ロールの周方向に搬送する1本の搬送ロールを有する。そして、レーザ照射機構が、電極シートのうち搬送ロールの外周面上に位置する部位に対してレーザ加工を行う。すなわち、電極シートを搬送ロールの外周面に沿って搬送しているときに、レーザ照射機構によって、電極シートのうち搬送ロールの外周面上に位置する所定部位(被照射部)に対してレーザ光を照射してレーザ加工を行う。
【0014】
このような装置では、例えば、電極シートの各レーザ加工点が生じる位置において、電極シートの形態が搬送ロールの外周面に沿った円弧形状になる。このため、集塵フードの形態を、例えば、電極シートに生じるレーザ加工点が当該集塵フードの内部空間に収容されるように、搬送ロールの少なくとも一部を覆う形態にすることができる。このようにすることで、集塵フードの開口部の端縁を、各仮想接平面について第1領域内に配置することができる。
【0015】
あるいは、前記のレーザ加工装置であって、前記搬送機構は、第1搬送ロールと第2搬送ロールを有し、前記電極シートの前記第1表面とは反対側の第2表面を前記第1搬送ロールの外周面に巻き付けつつ、前記電極シートを前記第1搬送ロールの周方向に搬送した後、前記第1搬送ロールから前記第2搬送ロールに向けて前記電極シートを搬送し、その後、前記電極シートの前記第2表面を前記第2搬送ロールの外周面に巻き付けつつ、前記電極シートを前記第2搬送ロールの周方向に搬送し、前記レーザ照射機構は、前記電極シートのうち前記第1搬送ロールから前記第2搬送ロールに向けて搬送されている部位に対してレーザ加工を行うレーザ加工装置とすると良い。
【0016】
上述のレーザ加工装置では、搬送機構が、第1搬送ロールと第2搬送ロールを有する。この搬送機構は、電極シートの第1表面とは反対側の第2表面を第1搬送ロールの外周面に巻き付けつつ、電極シートを第1搬送ロールの周方向に搬送した後、第1搬送ロールから第2搬送ロールに向けて電極シートを搬送し、その後、電極シートの第2表面を第2搬送ロールの外周面に巻き付けつつ、電極シートを第2搬送ロールの周方向に搬送する。そして、レーザ照射機構が、電極シートのうち第1搬送ロールから第2搬送ロールに向けて搬送されている部位に対してレーザ加工を行う。すなわち、電極シートが第1搬送ロールと第2搬送ロールとの間に位置しているときに、レーザ照射機構によって、電極シートのうち第1搬送ロールと第2搬送ロールとの間に位置する部位(ロール間部位とする)の所定部位(被照射部)に対してレーザ光を照射してレーザ加工を行う。
【0017】
このようなレーザ加工装置では、集塵フードの形態を、例えば、電極シートのロール間部位に含まれる第1表面を当該集塵フードの内部空間に収容する形態にすることができる。このようにすることで、集塵フードの開口部の端縁を各仮想接平面について第1領域内に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1にかかるレーザ加工装置の概略図である。
【
図3】実施形態2にかかるレーザ加工装置の概略図である。
【
図5】変形形態1にかかるレーザ加工装置の概略図である。
【
図6】変形形態1にかかる電極シートのレーザ加工を説明する図である。
【
図7】変形形態2にかかるレーザ加工装置の概略図である。
【
図8】変形形態2にかかる電極シートのレーザ加工を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施形態1のレーザ加工装置1は、
図1に示すように、電極シート10をレーザ加工する装置である。具体的には、レーザ加工装置1は、
図1に示すように、搬送機構20と、レーザ照射機構30と、集塵機構50とを備える。なお、本実施形態1では、レーザ加工として、長手方向DLに延びる帯状の電極シート10に対し、電極シート10の幅方向(長手方向DLに直交する方向、
図1において紙面に直交する方向)の一端から他端にまで直線状にレーザ光LBを照射してゆくことによって、電極シート10を幅方向に切断する加工を行って、複数の短冊状の電極シート10を作製する。電極シート10は、例えば、リチウムイオン二次電池の正極または負極として使用される。
【0020】
搬送機構20は、レーザ加工の対象物である電極シート10を搬送方向DMに搬送する。なお、搬送方向DMは、レーザ加工前の電極シート10の長手方向DLに沿った方向である。本実施形態1の搬送機構20は、電極シート10の第1表面11とは反対側の第2表面12を巻き付けて、電極シート10を搬送する1本の搬送ロール21を有する。詳細には、搬送ロール21は、電極シート10の第2表面12を当該搬送ロール21の外周面21bに接触させるようにして電極シート10を巻き付けて、電極シート10を搬送方向DM(搬送ロール21の周方向)に搬送する(
図1参照)。
【0021】
なお、搬送ロール21は、中空円筒形状のサクションロールであり、外周面21bを構成する円筒形状の壁部に多数の貫通孔21dが形成されている(
図1参照)。この搬送ロール21には、搬送ロール21の内部空間の空気を吸引する吸引装置(図示なし)が接続されている。この吸引装置によって搬送ロール21内の空気が吸引されることによって、搬送ロール21の外周面21bに巻き付けられている電極シート10が、搬送ロール21の貫通孔21dを通じて搬送ロール21の中心側に吸引される力を受ける。これにより、搬送ロール21の外周面21bに巻き付けられた電極シート10は、搬送ロール21の外周面21bに吸着されながら、搬送ロール21の外周面21bに沿って搬送される。また、搬送ロール21には、その軸線方向に延びる線状をなし、外周面21bを構成する壁部を貫通する線状貫通孔21cが形成されている。
【0022】
レーザ照射機構30は、ファイバーレーザ発振器31と、ガルバノミラー32と、fθレンズ33とを備える(
図1参照)。このレーザ照射機構30は、搬送機構20によって搬送される電極シート10の第1表面11に向けて(第1表面11に対して)レーザ光LBを照射して、電極シート10にレーザ加工を施す。詳細には、レーザ照射機構30は、電極シート10のうち搬送ロール21の外周面21b上に位置する部位15に対してレーザ加工を行う。すなわち、電極シート10を搬送ロール21の外周面21bに沿って搬送しているときに、レーザ照射機構30によって、電極シート10のうち搬送ロール21の外周面21b上に位置する所定部位(被照射部15b)に対してレーザ光LBを照射してレーザ加工を行う。
【0023】
本実施形態1では、レーザ照射機構30は、長手方向DLに延びる帯状の電極シート10のうち幅方向(長手方向DLに直交する方向、
図1において紙面に直交する方向)の一端から他端にまで直線状に延びる被照射部15bに対して、レーザ光LBを幅方向の一端から他端に向かって連続的に照射してゆくことによって、電極シート10を幅方向に切断するレーザ加工を行う。これにより、帯状の電極シート10から複数の短冊状の電極シート10が作製される。作製された短冊状の電極シート10は、搬送ロール21の下方に位置する収容ケース70内に収容される。なお、被照射部15bは、搬送ロール21の周方向への回転と共に、搬送ロール21の外周面21bに沿って移動してゆく。このため、被照射部15bの移動に合わせて、ガルバノミラー32の角度を変えることによって、被照射部15bの全体にわたってレーザ光LBを照射するようにしている。
【0024】
集塵機構50は、集塵フード40と、集塵フード40と吸引装置(図示なし)との間を接続する集塵ホース51とを備える。集塵フード40は、レーザ光透過ガラスからなる天井部45と、天井部45の外周縁から下方に延びる環状の側壁部41とを有する。集塵フード40は、電極シート10の第1表面11側から電極シート10のレーザ加工点LPを覆う。なお、本実施形態1のレーザ加工点LPは、電極シート10の被照射部15bの全体にわたって生じるものであり、電極シート10の幅方向の一端から他端にまで、幅方向に連なるように生じる。この集塵機構50は、集塵フード40と電極シート10とによって囲まれる領域AC内の空気を、集塵ホース51を通じて図示しない吸引装置によって吸引して排出することによって、電極シート10のレーザ加工点LPから飛散するスパッタ等の飛散物を集塵する。
【0025】
ところで、電極シート10のレーザ加工点LPから第1表面11側(第2表面12側とは反対の側)に直線状に飛散するスパッタ等の飛散物は、レーザ加工点LPから最も低い角度で飛散した場合でも、各レーザ加工点LPにおける各仮想接平面FSについて、第2領域A2内に飛び散ることになる。ここで、仮想接平面FSは、
図2に示すように、各レーザ加工点LPにおいて電極シート10の第1表面11に接する仮想平面である。また、各仮想接平面FSについて、仮想接平面FSを境界として、仮想接平面FSに接する電極シート10が位置する側(
図2において下側)の領域が第1領域A1であり、その反対側(
図2において上側)の領域が第2領域A2である(
図2参照)。
【0026】
これに対し、本実施形態1のレーザ加工装置1では、集塵フード40の開口部42(レーザ加工点LP側に開口する開口部、
図2において下方に開口する開口部)の端縁43(環状をなす端縁)が、各仮想接平面FSについて第1領域A1内に位置している。具体的には、集塵フード40の側壁部41は、各仮想接平面FSについて、第2領域A2内から第1領域A1内にまで延びている。すなわち、集塵フード40の内部空間(天井部45と側壁部41とによって囲まれた空間)は、第2領域A2内のみならず第1領域A1内にまで達している(
図2参照)。
【0027】
なお、レーザ加工点LP1は、電極シート10の幅方向の一端に生じるレーザ加工点LPであり、レーザ加工点LP3は、電極シート10の幅方向の他端に生じるレーザ加工点LPであり、レーザ加工点LP2は、電極シート10の幅方向の中央に生じるレーザ加工点LPである。また、仮想接平面FS1は、レーザ加工点LP1において電極シート10の第1表面11に接する仮想平面であり、仮想接平面FS2は、レーザ加工点LP2において電極シート10の第1表面11に接する仮想平面であり、仮想接平面FS3は、レーザ加工点LP3において電極シート10の第1表面11に接する仮想平面である(
図2参照)。従って、集塵フード40の開口部42の端縁43が、仮想接平面FS1と仮想接平面FS3の両方について第1領域A1内に位置していれば、集塵フード40の開口部42の端縁43が、全ての仮想接平面FSについて第1領域A1内に位置することになる。
【0028】
なお、
図1及び
図2は、レーザ加工点LP2が生じたときの図であり、
図1及び
図2では、電極シート10について、レーザ加工点LP2における断面を示している。また、
図1及び
図2では、集塵フード40の環状の側壁部41を構成する4つの壁部のうち、搬送ロール21の軸線に沿って延びる2つの壁部の断面のみを示しているが、当該2つの壁部を連結する他の2つの壁部(図示なし)についても、各仮想接平面FSについて、第2領域A2内から第1領域A1内にまで延びている。
【0029】
これにより、電極シート10のレーザ加工点LPから第1表面11側に直線状に飛散する飛散物のいずれについても、集塵フード40の内面に当てることができるので、飛散物が集塵フード40の外部に漏れて集塵できなくなることを低減することができる。従って、本実施形態のレーザ加工装置1によれば、集塵フード40の外部に漏れて(外部へ飛散して)集塵機構50によって集塵できなくなる飛散物(電極シート10のレーザ加工点LPから飛散するスパッタ等の飛散物)の量を低減することができる。
【0030】
また、本実施形態1では、電極シート10の被照射部15b(レーザ加工点LPが生じる部位)が、搬送ロール21の線状貫通孔21cに対して搬送ロール21の径方向外側の位置に配置されるように構成されている(
図2参照)。このため、電極シート10のレーザ加工点LPから第2表面12側に飛散する飛散物は、線状貫通孔21cを通じて、搬送ロール21の内部に進入する。搬送ロール21の内部空間の空気を吸引することによって、搬送ロール21の内部に進入した飛散物を集塵することができる。
【0031】
なお、本実施形態のレーザ加工装置1は、搬送機構として、搬送ロール21を有し、電極シート10を搬送ロール21の外周面21bに巻き付けるようにして電極シート10を搬送する搬送機構20を備えている。このような搬送機構20を備えることによって、集塵フード40の開口部42の端縁43を、各仮想接平面FSについて第1領域A1内に容易に配置することができる。
【0032】
詳細には、本実施形態のレーザ加工装置1では、電極シート10の各レーザ加工点LPが生じる位置において、電極シート10の形態が搬送ロール21の外周面21bに沿った円弧形状になる(
図2参照)。このため、集塵フード40の形態を、全てのレーザ加工点LPが当該集塵フード40の内部空間に収容されるように、搬送ロール21の少なくとも一部(上部)を覆う形態にすることができる。このようにすることで、集塵フード40の開口部42の端縁43を、各仮想接平面FSについて第1領域A1内に配置することができる。
【0033】
<実施形態2>
次に、実施形態2にかかるレーザ加工装置101について説明する。なお、ここでは、実施形態1のレーザ加工装置1と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。本実施形態2でも、実施形態1と同様に、帯状の電極シート10を幅方向に切断するレーザ加工を行って、複数の短冊状の電極シート10を作製する。レーザ加工装置101は、
図3に示すように、実施形態1とは異なる搬送機構120と、実施形態1と同等のレーザ照射機構30と、実施形態1とは異なる集塵機構150を備える。
【0034】
搬送機構120は、2本の搬送ロール(第1搬送ロール121と第2搬送ロール122)と、サクションベルト125とを有し、電極シート10を搬送方向DMに搬送する。第1搬送ロール121は、円柱形状の搬送ロールである。第2搬送ロール122は、中空円筒形状のサクションロールであり、外周面122bを構成する円筒形状の壁部に多数の貫通孔122dが形成されている(
図3参照)。
【0035】
この搬送機構120は、電極シート10の第2表面12を第1搬送ロール121の外周面121bに接触させる態様で、電極シート10を第1搬送ロール121の外周面121bに巻き付けつつ、電極シート10を第1搬送ロール121の周方向に搬送する。次いで、第1搬送ロール121から第2搬送ロール122に向けて電極シート10を搬送する。次いで、電極シート10の第2表面12を第2搬送ロール122の外周面122bに接触させる態様で、電極シート10を第2搬送ロール122の外周面122bに巻き付けつつ、電極シート10を第2搬送ロール122の周方向に搬送する。なお、サクションベルト125は、電極シート10のうち、レーザ加工による切断位置に対して搬送方向DMの上流側に隣接する部位と下流側に隣接する部位を吸着して、当該部位を含む電極シート10を第2搬送ロール122に向けて電極シート10を搬送する。
【0036】
レーザ照射機構30は、電極シート10のうち第1搬送ロール121から第2搬送ロール122に向けて搬送されている部位(ロール間部位115)に対してレーザ加工を行って、電極シート10を幅方向に切断する。すなわち、電極シート10が第1搬送ロール121と第2搬送ロール122との間に位置しているときに、レーザ照射機構30によって、電極シート10のうち第1搬送ロール121と第2搬送ロール122との間に位置するロール間部位115の所定部位(被照射部115b)に対してレーザ光LBを照射して、電極シート10を幅方向に切断するレーザ加工を行う。なお、被照射部115b(
図4参照)は、実施形態1の被照射部15bと同等である。
【0037】
集塵機構150は、集塵フード140と、集塵フード140と吸引装置(図示なし)との間を接続する集塵ホース51とを備える(
図3参照)。集塵フード140は、レーザ光透過ガラスからなる天井部145と、天井部145の外周縁から下方に延びる環状の側壁部141とを有する。集塵フード140は、電極シート10の第1表面11側から電極シート10の各レーザ加工点LPを覆う。この集塵機構150は、集塵フード140と電極シート10とによって囲まれる領域AC内の空気を、集塵ホース51を通じて図示しない吸引装置によって吸引して排出することによって、電極シート10の各レーザ加工点LPから飛散するスパッタ等の飛散物を集塵する。
【0038】
本実施形態2でも、実施形態1と同様に、集塵フード140の開口部142の端縁143(環状をなす端縁)が、各仮想接平面FSについて第1領域A1内に位置している。具体的には、集塵フード140の側壁部141は、各仮想接平面FSについて、第2領域A2内から第1領域A1内にまで延びている。すなわち、集塵フード140の内部空間(天井部145と側壁部141とによって囲まれた空間)は、第2領域A2内のみならず第1領域A1内にまで達している(
図4参照)。
【0039】
なお、
図3及び
図4は、レーザ加工点LP2が生じたときの図であり、
図3及び
図4では、電極シート10について、レーザ加工点LP2における断面を示している。また、
図3及び
図4では、集塵フード140の環状の側壁部141を構成する4つの壁部のうち、第1搬送ロール121及び第2搬送ロール122の軸線に沿って延びる2つの壁部の断面のみを示しているが、当該2つの壁部を連結する他の2つの壁部(図示なし)も、各仮想接平面FSについて、第2領域A2内から第1領域A1内にまで延びている。
【0040】
これにより、電極シート10のレーザ加工点LPから第1表面11側に直線状に飛散する飛散物のいずれについても、集塵フード140の内面に当てることができるので、飛散物が集塵フード140の外部に漏れて集塵できなくなることを低減することができる。従って、本実施形態のレーザ加工装置101によれば、集塵フード140の外部に漏れて(外部へ飛散して)集塵機構150によって集塵できなくなる飛散物(電極シート10のレーザ加工点LPから飛散するスパッタ等の飛散物)の量を低減することができる。
【0041】
なお、本実施形態2では、レーザ加工点LP1~LP3のそれぞれにおける仮想接平面FSが、いずれも同一になる。従って、本実施形態2では、全てのレーザ加工点LPにおいて、仮想接平面FSが同一になる。仮想接平面FSを境界として、仮想接平面FSに接する電極シート10が位置する側(
図4において下側)の領域が第1領域A1であり、その反対側(
図4において上側)の領域が第2領域A2である。
【0042】
また、本実施形態1では、電極シート10に生じるレーザ加工点LPの下方(第1搬送ロール121と第2搬送ロール122との間)に、集塵機構180の集塵フード181が配置されている(
図3参照)。このため、電極シート10のレーザ加工点LPから第2表面12側に飛散する飛散物を、集塵機構180によって集塵することができる。
【0043】
<変形形態1>
実施形態1,2では、帯状の電極シート10を幅方向に切断するレーザ加工を行うレーザ加工装置1,101を例示した。しかしながら、
図5に示す変形形態1のレーザ加工装置201を用いて、
図6に示すように、帯状の電極シート210のうち幅方向DWの一方端部(
図6において右端部)である非積層部216において長手方向DLに延びる被照射部215b(
図6において二点鎖線で示す部位)にレーザ光LBを照射することによって、帯状の電極シート210の非積層部216の一部(
図6において被照射部215bよりも右側に位置する部位)を切り離すようにしても良い。なお、電極シート210は、集電箔217の表面に電極合材層219が積層された積層部218と、集電箔217の表面に電極合材層219が積層されていない非積層部216とからなる。
【0044】
変形形態1のレーザ加工装置201は、実施形態1とは異なる搬送機構220と、実施形態1とは異なるレーザ照射機構230と、実施形態1と同等の集塵機構50を備える。搬送機構220は、実施形態1の搬送機構20と比較して、搬送ロールのみが異なる。具体的には、変形形態1の搬送ロール221は、実施形態1の搬送ロール21と比較して、線状貫通孔21cを線状貫通溝221cに変更した点のみが異なる。線状貫通溝221cは、平面視で電極シート210の被照射部215b(
図6参照)と同形状の溝部であり、搬送ロール221の全周にわたって被照射部215bに対向する位置に形成されている。また、線状貫通溝221cの底部には貫通孔221dが多数形成されている。レーザ照射機構230は、実施形態1のレーザ照射機構30と比較して、ガルバノミラー232を変更して、電極シート10に対するレーザ光LBの照射位置を変更した点のみが異なる。
【0045】
本変形形態1でも、実施形態1と同様に、集塵フード40の開口部42の端縁43(環状をなす端縁)が、各仮想接平面FSについて第1領域A1内に位置している(
図5参照)。これにより、電極シート10のレーザ加工点LPから第1表面211側に直線状に飛散する飛散物のいずれについても、集塵フード40の内面に当てることができるので、集塵フード40の外部に漏れて集塵できなくなることを低減することができる。従って、本変形形態1のレーザ加工装置201でも、集塵フード40の外部に漏れて(外部へ飛散して)集塵機構50によって集塵できなくなる飛散物(電極シート210のレーザ加工点LPから飛散するスパッタ等の飛散物)の量を低減することができる。なお、本変形形態1では、全てのレーザ加工点LPにおける仮想接平面FSが、いずれも同一になる。
【0046】
<変形形態2>
変形形態2のレーザ加工装置301は、実施形態1と異なる搬送機構320と、実施形態1と異なるレーザ照射機構330と、変形形態1と同等のレーザ照射機構230と、実施形態1と異なる集塵機構350を備える(
図7参照)。搬送機構320は、第1搬送ロール321と第2搬送ロール322と第3搬送ロール323を備え、これら3つのロールが搬送方向DMの上流側からこの順に配置されている。電極シート310は、第1搬送ロール321~第3搬送ロール323の外周面321b~323bに第2表面312が接触する態様で、第1搬送ロール321~第3搬送ロール323によって搬送方向DMに搬送される。
【0047】
レーザ照射機構330は、実施形態1のレーザ照射機構30と比較して、ガルバノミラー332を変更して、電極シート310に対するレーザ光LBの照射位置を変更した点が異なる(
図7参照)。レーザ照射機構330は、電極シート310のうち第1搬送ロール321から第2搬送ロール322に向けて搬送されている部位(電極シート310の幅方向一端部)に対してレーザ加工を行って、電極シート310の電極合材層319の幅方向一端部(
図8において右端部)を除去する。
【0048】
なお、レーザ照射機構330によってレーザ加工される前の電極シート310は、集電箔317の表面全体に電極合材層319が積層されている。レーザ照射機構330によるレーザ加工によって、電極シート310は、集電箔317の表面に電極合材層319が積層された積層部318と、集電箔317の表面に電極合材層319が積層されていない非積層部316とからなる電極シート310になる(
図8参照)。レーザ照射機構230は、電極シート310のうち第2搬送ロール322から第3搬送ロール323に向けて搬送されている部位(被照射部215b)に対して、変形形態1と同様のレーザ加工を行う。
【0049】
集塵機構350は、集塵フード340と、集塵フード340と吸引装置(図示なし)との間を接続する集塵ホース351とを備える(
図7参照)。集塵フード340は、レーザ光透過ガラスからなる天井部345,346と、天井部345と346との間をつなぐ天井部347と、天井部345,346,347の外周縁から第1搬送ロール321~第3搬送ロール323が位置する側に延びる環状の側壁部341とを有する。
【0050】
集塵フード340は、電極シート310の第1表面311側から電極シート310の各レーザ加工点LPを覆う(
図7参照)。なお、レーザ照射機構330によるレーザ加工点LPをレーザ加工点LP1とし、レーザ照射機構230によるレーザ加工点LPをレーザ加工点LP2とする。この集塵機構350は、集塵フード340と電極シート210とによって囲まれる領域AC内の空気を、集塵ホース351を通じて図示しない吸引装置によって吸引して排出することによって、電極シート310の各レーザ加工点LP1,LP2から飛散するスパッタ等の飛散物を集塵する。
【0051】
本変形形態2でも、集塵フード340の開口部342の端縁343(環状をなす端縁)が、各仮想接平面FS1について第1領域A11内に位置し、且つ、各仮想接平面FS2について第1領域A21内に位置している(
図7参照)。なお、レーザ加工点LP1における仮想接平面FSを仮想接平面FS1とし、レーザ加工点LP2における仮想接平面FSを仮想接平面FS2としている。また、全てのレーザ加工点LP1における仮想接平面FS1が、いずれも同一になり、全てのレーザ加工点LP2における仮想接平面FS2が、いずれも同一になる。仮想接平面FS1を境界として、仮想接平面FS1に接する電極シート310が位置する側(
図7において下側)の領域が第1領域A11であり、その反対側(
図7において上側)の領域が第2領域A12である。また、仮想接平面FS2を境界として、仮想接平面FS2に接する電極シート310が位置する側(
図7において左側)の領域が第1領域A21であり、その反対側(
図7において右側)の領域が第2領域A22である。
【0052】
従って、本変形形態2のレーザ加工装置301では、電極シート310のレーザ加工点LP1,LP2から第1表面311側に直線状に飛散する飛散物のいずれについても、集塵フード340の内面に当てることができるので、飛散物が集塵フード340の外部に漏れて集塵できなくなることを低減することができる。従って、本変形形態2のレーザ加工装置301でも、集塵フード340の外部に漏れて(外部へ飛散して)集塵機構350によって集塵できなくなる飛散物(電極シート310のレーザ加工点LP1,LP2から飛散するスパッタ等の飛散物)の量を低減することができる。
【0053】
また、本変形形態2では、電極シート310に生じるレーザ加工点LP1の下方(第1搬送ロール321と第2搬送ロール322との間)、及び、電極シート310に生じるレーザ加工点LP2の左方(第2搬送ロール322と第3搬送ロール323との間)に、集塵機構380の集塵フード381が配置されている(
図7参照)。このため、電極シート310のレーザ加工点LP1,LP2から第2表面312側に飛散する飛散物を、集塵機構380によって集塵することができる。
【0054】
以上において、本発明を実施形態1,2及び変形形態1,2に即して説明したが、本発明は前記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1,101,201,301 レーザ加工装置
10,210,310 電極シート
11,211,311 第1表面
12,212,312 第2表面
20,120,220,320 搬送機構
21,221 搬送ロール
21b,121b,122b,221b,321b,322b,323b 外周面
30,230,330 レーザ照射機構
40,140,340 集塵フード
42,142,342 開口部
43,143,343 端縁
50,150,350 集塵機構
121,321 第1搬送ロール
122,322 第2搬送ロール
323 第3搬送ロール
A1,A11,A21 第1領域
A2,A12,A22 第2領域
DM 搬送方向
FS,FS1,FS2,FS3 仮想接平面
LB レーザ光
LP,LP1,LP2,LP3 レーザ加工点