(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合装置、その運転方法、及び継手構造
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
B23K20/12 360
B23K20/12 364
B23K20/12 344
B23K20/12 320
(21)【出願番号】P 2020551229
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019040048
(87)【国際公開番号】W WO2020075813
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2018192520
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の「革新的新構造材料等研究開発」の「マルチマテリアル接合技術の基盤研究」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武岡 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 良司
(72)【発明者】
【氏名】村松 良崇
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓也
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特許第5854451(JP,B2)
【文献】特開2016-153134(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006378(WO,A1)
【文献】特開2016-153132(JP,A)
【文献】特開2017-136631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材、第2部材、及び第3部材を有する、被接合物を接合する摩擦攪拌接合装置であって、
前記摩擦攪拌接合装置は、
円柱状に形成され、軸線周りの回転と該軸線に沿った方向への進退移動とが可能なように構成されているツールと、
前記ツールを前記軸線周りに回転させる回転駆動器と、
前記ツールを前記軸線に沿って進退移動させる直動駆動器と、
制御装置と、を備え、
前記第2部材及び前記第3部材は、前記第1部材よりも、融点が高くなるように構成されていて、
前記第3部材は、前記第2部材よりも硬度が高くなるように構成されていて、
前記制御装置は、前記被接合物を、前記第1部材が前記ツールと対向し、かつ、前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材の順となるように配置させる(A)と、
前記ツールを回転させた状態で、前記ツールの先端部が前記被接合物の被接合部を押圧するように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器を制御する(B)と、
前記直動駆動器及び前記回転駆動器を制御して、軟化した前記第3部材が、前記第2部材の上面よりも上方に延びるように、前記ツールの先端部を予め設定されている所定の第1位置に到達させる(C)と、
前記ツールを回転させた状態で、前記被接合部から引き抜くように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器を制御する(D)と、を実行するように構成されている、摩擦攪拌接合装置。
【請求項2】
前記ツールの先端部は、第1先端部と、前記第1先端部よりも基端側に位置する第2先端部を有し、
前記第1先端部及び前記第2先端部は、それぞれ、円錐台状に形成されていて、
前記第1先端部は、その先端面の面積が、前記第2先端部の先端面の面積よりも小さくなるように形成されている、請求項1に記載の摩擦攪拌接合装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記(C)において、前記ツールの先端部が、予め設定されている所定の第1時間以内に前記第1位置に到達するように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器を制御するように構成されている、請求項1又は2に記載の摩擦攪拌接合装置。
【請求項4】
前記被接合部の温度を検出する温度検出器をさらに備え、
前記制御装置は、前記(C)において、前記温度検出器が検出した温度に基づいて、前記ツールの先端部が、前記第1時間以内に前記第1位置に到達するように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器を制御するように構成されている、請求項3に記載の摩擦攪拌接合装置。
【請求項5】
前記被接合部の温度と、前記ツールの押圧力及び回転数と、の相関関係を示す第1データが記憶されている記憶装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記(C)において、前記記憶装置に記憶されている第1データに基づいて、前記直動駆動器及び前記回転駆動器を制御するように構成されている、請求項4に記載の摩擦攪拌接合装置。
【請求項6】
第1部材、第2部材、及び第3部材を有する、被接合物を接合する摩擦攪拌接合装置の運転方法であって、
前記摩擦攪拌接合装置は、
円柱状に形成され、軸線周りの回転と該軸線に沿った方向への進退移動とが可能なように構成されているツールと、
前記ツールを前記軸線周りに回転させる回転駆動器と、
前記ツールを前記軸線に沿って進退移動させる直動駆動器と、を備え、
前記第2部材及び前記第3部材は、前記第1部材よりも、融点が高くなるように構成されていて、
前記第3部材は、前記第2部材よりも硬度が高くなるように構成されていて、
前記被接合物を、前記第1部材が前記ツールと対向し、かつ、前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材の順となるように配置させる(A)と、
前記ツールを回転させた状態で、前記ツールの先端部が前記被接合物の被接合部を押圧するように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器が動作する(B)と、
前記直動駆動器及び前記回転駆動器が動作して、軟化した前記第3部材が、前記第2部材の上面よりも上方に延びるように、前記ツールの先端部を予め設定されている所定の第1位置に到達させる(C)と、
前記ツールを回転させた状態で、前記被接合部から引き抜くように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器が動作する(D)と、を備える、摩擦攪拌接合装置の運転方法。
【請求項7】
前記ツールの先端部は、第1先端部と、前記第1先端部よりも基端側に位置する第2先端部を有し、
前記第1先端部及び前記第2先端部は、それぞれ、円錐台状に形成されていて、
前記第1先端部は、その先端面の面積が、前記第2先端部の先端面の面積よりも小さくなるように形成されている、請求項6に記載の摩擦攪拌接合装置の運転方法。
【請求項8】
前記(C)において、前記ツールの先端部が、予め設定されている所定の第1時間以内に前記第1位置に到達するように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器が動作する、請求項6又は7に記載の摩擦攪拌接合装置の運転方法。
【請求項9】
前記被接合部の温度を検出する温度検出器をさらに備え、
前記(C)において、前記温度検出器が検出した温度に基づいて、前記ツールの先端部が、前記第1時間以内に前記第1位置に到達するように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器が動作する、請求項8に記載の摩擦攪拌接合装置の運転方法。
【請求項10】
前記被接合部の温度と、前記ツールの押圧力及び回転数と、の相関関係を示す第1データが記憶されている記憶装置をさらに備え、
前記(C)において、前記記憶装置に記憶されている第1データに基づいて、前記直動駆動器及び前記回転駆動器が動作する、請求項9に記載の摩擦攪拌接合装置の運転方法。
【請求項11】
第1部材、第2部材、及び第3部材を有する被接合物が、被接合部で接合されることにより形成される、継手構造であって、
前記第2部材及び前記第3部材は、前記第1部材よりも、融点が高くなるように構成されていて、
前記第3部材は、前記第1部材及び前記第2部材よりも、材料硬度が高くなるように構成されていて、
前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材は、この順となるように配置されていて、
前記被接合部は、前記第3部材由来の材料が、前記第2部材の上面よりも上方に延びるように形成されている、継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合装置、その運転方法、及び継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製板部材とこれより比重の軽い軽金属製板材を含む車体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されている車体の製造方法では、軽金属製板材と鋼製板材とを重ね合わせ、軽金属製板材の側から押圧される回転ツールの摩擦熱で軽金属製板材を局所的に軟化および塑性流動させることにより、軽金属製板材と鋼製板材を接合する第1の接合工程と、前記第1の接合工程で接合された軽金属製板材および鋼製板材と、2枚以上の鋼製板材と、を重ね合わせ、その複数箇所を電気抵抗スポット溶接により接合する第2の接合工程と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記特許文献1に開示されている車体の製造方法とは異なる、3つの部材を接合することができる摩擦攪拌接合装置及びその運転方法を想到した。本発明は、新規な構成を備える摩擦攪拌接合装置及びその運転方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記特許文献1に開示されている車体の製造方法で接合された被接合物(車体)とは、異なる構成の継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る摩擦攪拌接合装置は、第1部材、第2部材、及び第3部材を有する、被接合物を接合する摩擦攪拌接合装置であって、前記摩擦攪拌接合装置は、円柱状に形成され、軸線周りの回転と該軸線に沿った方向への進退移動とが可能なように構成されているツールと、前記ツールを前記軸線周りに回転させる回転駆動器と、前記ツールを前記軸線に沿って進退移動させる直動駆動器と、制御装置と、を備え、前記第2部材及び前記第3部材は、前記第1部材よりも、融点が高くなるように構成されていて、前記第3部材は、前記第2部材よりも硬度が高くなるように構成されていて、前記制御装置は、前記被接合物を、前記第1部材が前記ツールと対向し、かつ、前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材の順となるように配置させる(A)と、前記ツールを回転させた状態で、前記ツールの先端部が前記被接合物の被接合部を押圧するように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器を制御する(B)と、前記直動駆動器及び前記回転駆動器を制御して、軟化した前記第3部材が、前記第2部材の上面よりも上方に延びるように、前記ツールの先端部を予め設定されている所定の第1位置に到達させる(C)と、前記ツールを回転させた状態で、前記被接合部から引き抜くように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器を制御する(D)と、を実行するように構成されている。
【0006】
これにより、3つの部材からなる被接合物を充分に接合することができる。
【0007】
また、本発明に係る摩擦攪拌接合装置の運転方法は、第1部材、第2部材、及び第3部材を有する、被接合物を接合する摩擦攪拌接合装置の運転方法であって、前記摩擦攪拌接合装置は、円柱状に形成され、軸線周りの回転と該軸線に沿った方向への進退移動とが可能なように構成されているツールと、前記ツールを前記軸線周りに回転させる回転駆動器と、前記ツールを前記軸線に沿って進退移動させる直動駆動器と、を備え、前記第2部材及び前記第3部材は、前記第1部材よりも、融点が高くなるように構成されていて、前記第3部材は、前記第2部材よりも硬度が高くなるように構成されていて、前記被接合物を、前記第1部材が前記ツールと対向し、かつ、前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材の順となるように配置させる(A)と、前記ツールを回転させた状態で、前記ツールの先端部が前記被接合物の被接合部を押圧するように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器が動作する(B)と、前記直動駆動器及び前記回転駆動器が動作して、軟化した前記第3部材が、前記第2部材の上面よりも上方に延びるように、前記ツールの先端部を予め設定されている所定の第1位置に到達させる(C)と、前記ツールを回転させた状態で、前記被接合部から引き抜くように、前記直動駆動器及び前記回転駆動器が動作する(D)と、を備える。
【0008】
これにより、3つの部材からなる被接合物を充分に接合することができる。
【0009】
さらに、本発明に係る継手構造は、第1部材、第2部材、及び第3部材を有する被接合物が、被接合部で接合されることにより形成される、継手構造であって、前記第2部材及び前記第3部材は、前記第1部材よりも、融点が高くなるように構成されていて、前記第3部材は、前記第1部材及び前記第2部材よりも、材料硬度が高くなるように構成されていて、前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材は、この順となるように配置されていて、前記被接合部は、前記第3部材由来の材料が、前記第2部材の上面よりも上方に延びるように形成されている。
【0010】
本発明に係る継手構造では、第3部材由来の材料が、第2部材の上面よりも上方に延びた、アンカー部分が形成される。そして、アンカー部分により、引張せん断に対する強度が高くなり、相対的に剥離強度も高くなるといったアンカー効果を得ることができる。このため、3つの部材からなる被接合物を充分に接合することができ、強固な継手構造を提供することができる。
【0011】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施形態の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る摩擦攪拌接合装置及びその運転方法によれば、3つの部材からなる被接合物を充分に接合することができる。また、本発明に係る継手構造によれば、3つの部材からなる被接合物を充分に接合することで、強固な継手構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置の要部を示す模式図であり、ツールにより、摩擦攪拌接合を実行した状態を示す。
【
図4】
図4は、本実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置におけるツールの先端部の概略構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、被接合物を摩擦攪拌接合装置により、接合した状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態1又は2に係る摩擦攪拌接合装置によって、被接合物Wを摩擦攪拌接合した条件を示す表である。
【
図7】
図7は、
図6に示す試験例1の条件で被接合物を摩擦攪拌接合した結果を示す写真である。
【
図8】
図8は、
図6に示す試験例2の条件で被接合物を摩擦攪拌接合した結果を示す写真である。
【
図9】
図9は、
図6に示す試験例3の条件で被接合物を摩擦攪拌接合した結果を示す写真である。
【
図10】
図10は、
図6に示す試験例4の条件で被接合物を摩擦攪拌接合した結果を示す写真である。
【
図11】
図11は、
図6に示す試験例5の条件で被接合物を摩擦攪拌接合した結果を示す写真である。
【
図12】
図12は、
図6に示す試験例6の条件で被接合物を摩擦攪拌接合した結果を示す写真である。
【
図13】
図13は、
図6に示す試験例7の条件で被接合物を摩擦攪拌接合した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するために必要となる構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置は、第1部材、第2部材、及び第3部材を有する、被接合物を接合する摩擦攪拌接合装置であって、摩擦攪拌接合装置は、円柱状に形成され、軸線周りの回転と該軸線に沿った方向への進退移動とが可能なように構成されているツールと、ツールを軸線周りに回転させる回転駆動器と、ツールを軸線に沿って進退移動させる直動駆動器と、制御装置と、を備え、第2部材及び第3部材は、第1部材よりも、融点が高くなるように構成されていて、第3部材は、第2部材よりも硬度が高くなるように構成されていて、制御装置は、被接合物を、第1部材がツールと対向し、かつ、第1部材、第2部材、及び第3部材の順となるように配置させる(A)と、ツールを回転させた状態で、ツールの先端部が被接合物の被接合部を押圧するように、直動駆動器及び回転駆動器を制御する(B)と、直動駆動器及び回転駆動器を制御して、軟化した第3部材が、第2部材の上面よりも上方に延びるように、ツールの先端部を予め設定されている所定の第1位置に到達させる(C)と、ツールを回転させた状態で、被接合部から引き抜くように、直動駆動器及び回転駆動器を制御する(D)と、を実行するように構成されている。
【0016】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置では、制御装置は、(C)において、ツールの先端部が、予め設定されている所定の第1時間以内に第1位置に到達するように、直動駆動器及び回転駆動器を制御するように構成されていてもよい。
【0017】
以下、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置の一例について、
図1~
図3を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[摩擦攪拌接合装置の構成]
図1は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置の概略構成を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101は、ツール10、基体2、可動体3、ツール保持体4、直動駆動器7、回転駆動器8、位置検出器11、及び制御装置110を備えていて、第1部材W1、第2部材W2、及び第3部材W3を有する、被接合物Wの被接合部Waを摩擦熱で軟化させて、塑性流動させ、接合を行うように構成されている。
【0020】
被接合物Wは、第2部材W2及び第3部材W3は、第1部材W1よりも、融点が高くなるように構成されていて、第3部材W3が、第2部材W2よりも硬度が高くなるように構成されている。第1部材W1、第2部材W2、及び第3部材W3は、本実施の形態1においては、板状に形成されている。
【0021】
第1部材W1は、金属材料(例えば、アルミニウム又はマグネシウム)、又は繊維強化プラスチック(例えば、炭素繊維強化プラスチック)で構成されていてもよい。また、第2部材W2は、例えば、金属材料で構成されていて、鋼(軟鋼)又はアルミニウムで構成されていてもよい。さらに、第3部材W3は、金属材料で構成されていて、鋼(軟鋼又は高張力鋼)で構成されていてもよい。また、被接合物Wは、第1部材W1がマグネシウム又は繊維強化プラスチックで構成されていて、第2部材W2がアルミニウムで構成されていて、第3部材W3が鋼(軟鋼又は高張力鋼)で構成されていてもよい。
【0022】
なお、本実施の形態1においては、被接合物Wを板状の第1部材W1、第2部材W2、及び第3部材W3で構成されている形態を採用したが、これに限定されず、被接合物W(第1部材W1、第2部材W2、及び第3部材W3)の形状は任意であり、例えば、直方体状であってもよく、円弧状に形成されていてもよい。
【0023】
基体2は、ロボット9の先端部に着脱可能に取り付けられている。なお、ロボット9としては、水平多関節型・垂直多関節型などのロボットを採用することができる。また、本実施の形態1においては、基体2が、ロボット9に取り付けられている形態を採用したが、これに限定されず、適宜な場所に固定されている形態を採用してもよい。
【0024】
基体2には、可動体3が、ツール保持体4の軸線X方向に移動可能に取り付けられている。可動体3の先端部には、ツール保持体4が設けられている。
【0025】
ツール保持体4は、その軸線X周りに回転可能であり、かつ、可動体3と一体となって、軸線Xの方向に移動可能に構成されている。ツール保持体4の先端部には、ツール10が着脱可能に設けられている。なお、ツール10の着脱(交換)は、作業者が実行してもよく、ロボット9とは異なるロボットが実行してもよい。
【0026】
また、基体2の内部には、直動駆動器7が配置されている。直動駆動器7は、可動体3(ツール10)を軸線X方向に直動させるように構成されている。直動駆動器7としては、例えば、電動モータ(サーボモータ)とボールネジ又はリニアガイド等を用いてもよく、エアシリンダ等を用いてもよい。
【0027】
可動体3の内部には、回転駆動器8が配置されている。回転駆動器8は、ツール保持体4、ツール10を軸線X周りに回転させるように構成されている。回転駆動器8としては、例えば、電動モータ(サーボモータ)を用いてもよい。
【0028】
さらに、基体2には、略C字状(略L字状)に形成されている湾曲フレーム5が固定されている。湾曲フレーム5は、その先端部が、ツール10に対して、対向するように形成されている。また、湾曲フレーム5の先端部には、支持台6が設けられている。支持台6は、被接合物Wを支持するように構成されている。すなわち、本実施の形態1においては、基体2、可動体3、ツール保持体4、湾曲フレーム5、及び支持台6は、C型ガン(C型フレーム)で構成されている。
【0029】
制御装置110は、マイクロプロセッサ、CPU等の演算器110aと、ROM、RAM等の記憶器(記憶装置)110bと、を備えている。記憶器110bには、基本プログラム、各種固定データ等の情報が記憶されている。演算器110aは、記憶器110bに記憶されている基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、摩擦攪拌接合装置101、及びロボット9の各種動作を制御する。
【0030】
また、記憶器110bは、公知のメモリ、ハードディスク等で構成されている。記憶器110bは、単一である必要はなく、複数の記憶装置(例えば、ランダムアクセスメモリ及びハードディスクドライブ)として構成されていてもよい。
【0031】
なお、制御装置110は、集中制御する単独の制御装置110によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御装置110によって構成されていてもよい。また、制御装置110は、マイクロコンピュータで構成されていてもよく、MPU、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等によって構成されていてもよい。
【0032】
[摩擦攪拌接合装置の動作(摩擦攪拌接合装置の運転方法)及びその作用効果]
次に、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101の動作(運転方法)について、
図1~
図3を参照しながら説明する。なお、以下の動作は、制御装置110の演算器110aが、記憶器110bに格納されているプログラムを読み出すことにより実行される。
【0033】
図2は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図3は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置の要部を示す模式図であり、ツールにより、摩擦攪拌接合を実行した状態を示す。
【0034】
まず、作業者が入力器(図示せず)を操作して、制御装置110に被接合物Wの接合実行をすることを示す指示情報が入力されたとする。
【0035】
すると、
図2に示すように、制御装置110は、ロボット9とは異なるロボットに第1部材W1、第2部材W2、及び第3部材W3を搬送させ、第1部材W1がツール10と対向し、かつ、第1部材W1、第2部材W2、及び第3部材W3の順となるように、摩擦攪拌接合装置101の支持台6に載置(配置)させる(ステップS101)。なお、作業者が、第1部材W1、第2部材W2、及び第3部材W3を摩擦攪拌接合装置101に配置してもよい。
【0036】
次に、制御装置110は、回転駆動器8を駆動させて、ツール10を所定の回転数(回転速度;例えば、500~3000rpm)で回転させる(ステップS102)。ついで、制御装置110は、ツール10を回転させた状態で、直動駆動器7を駆動させて、ツール10を進行させて、ツール10の先端を被接合物Wの被接合部Waに当接させる(ステップS103)。
【0037】
なお、被接合物Wの被接合部Waとは、被接合物Wを接合する部分であり、ツール10の回転と押圧により、第1部材W1~第3部材W3が軟化された領域をいう。
【0038】
次に、制御装置110は、ツール10の先端部が、予め設定されている所定の第1時間以内に、予め設定されている所定の第1位置まで移動するように、直動駆動器7を駆動させる(ステップS104)。このとき、制御装置110は、ツール10が予め設定された所定の押圧力(例えば、4kN~70kN)で被接合物Wを押圧するように、直動駆動器7を制御する。
【0039】
なお、所定の回転数、所定の押圧力、第1位置、及び第1時間は、予め実験等により、適宜設定することができ、記憶器110bに第1データ110cとして記憶されている。第1データ110cは、後述する試験例1~7の結果に基づいて、作成してもよい。
【0040】
また、ツール10の先端部の位置情報は、位置検出器11により検出されて、制御装置110に出力される。位置検出器11としては、例えば、直動駆動器7に設けられているエンコーダであってもよく、ツール10の移動量を検出する検出器であってもよい。
【0041】
ここで、第1位置とは、第3部材W3の第2部材W2と当接する面を0%とし、第3部材W3の裏当て部材6と当接する面を100%とした場合に、0%より大きく、かつ、100%未満の間で任意に設定される位置をいう。
【0042】
なお、接合強度を向上させる観点から、第1位置は、第3部材W3の裏当て部材6と当接する面に近い方がよく、25%以上であってもよく、50%以上であってもよく、75%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよい。
【0043】
また、第1時間は、後述するアンカー部分Apを形成させる観点から、10秒以内であってもよく、7秒以内であってもよく、5秒以内であってもよい。
【0044】
これにより、ツール10が、被接合物Wの被接合部Waに当接し、ツール10の先端部と被接合部Waとの摩擦により、摩擦熱が発生し、被接合物Wの被接合部Waが軟化されて、塑性流動が生じる。
【0045】
そして、
図3に示すように、ツール10の先端部が、被接合部Waの内部に圧入されることにより、第3部材W3の軟化部分である第2軟化部分42が、第2部材W2の上面よりも上方にまで延びて、第1部材W1の軟化部分である第1軟化部分41に入り込む(突き刺さる)。なお、本明細書においては、第2軟化部分42のうち、第2部材W2の下面から第2部材W2の上面よりも上方にまで延びた部分をアンカー部分Apと称する。
【0046】
次に、制御装置110は、位置検出器11が検知した、ツール10の先端部の位置情報を基に、ツール10の先端部が、第1位置まで到達したか否かを判定する(ステップS105)。制御装置110は、ツール10の先端部が、第1位置まで到達していないと判定した場合(ステップS105でNo)には、ツール10の先端部が、第1位置まで到達するまで、ステップS104~ステップS105の各処理を実行する。一方、制御装置110は、ツール10の先端部が、第1位置まで到達していると判定した場合(ステップS105でYes)には、ステップS106の処理を実行する。
【0047】
ステップS106では、制御装置110は、ツール10を回転させた状態で、ツール10の先端部を被接合部Waから引き抜くように、直動駆動器7を駆動させる。そして、制御装置110は、ツール10の先端部が、被接合部Waから引き抜かれると、ツール10の回転を停止するように、回転駆動器8を停止させて、本プログラムを終了する。なお、複数の被接合部Waを接合する場合には、制御装置110は、ツール10の回転を停止させずに、次の被接合部Waの接合を開始するように構成されていてもよい。
【0048】
このように構成された、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101では、第3部材W3の第2軟化部分42が、第2部材W2の上面よりも上方にまで延びることで、3つの部材からなる被接合物を充分に接合することができる。また、アンカー部分Apが形成されることにより、引張せん断に対する強度が高くなり、相対的に剥離強度も高くなるといったアンカー効果が得られる。
【0049】
また、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101により、形成された被接合物Wの被接合部Waが、本実施の形態1に係る継手構造の一例である。
【0050】
なお、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101においては、制御装置110が、ツール10の先端部が第1位置まで到達すると、ツール10の先端部を被接合部Waから引き抜くように、直動駆動器7を制御する形態を採用したが、これに限定されない。
【0051】
例えば、制御装置110は、ツール10の先端部が第1位置まで到達すると、ツール10を水平方向に移動するように、又は、ツール10の軸線Xが傾斜するように、ロボット9を動作させてもよく、ツール10の回転速度を増加させるように、回転駆動器8を制御してもよい。これにより、第3部材W3の軟化部分を増加させることができ、アンカー部分Apの体積を増加させることができる。このため、より高いアンカー効果を得ることができる。
【0052】
また、本実施の形態1に係る継手構造は、上述したように、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101により形成される形態を採用したが、これに限定されない。本実施の形態1に係る継手構造は、第2部材W2及び第3部材W3が、第1部材W1よりも、融点が高くなるように構成されていて、第3部材W3が、第1部材W1及び第2部材W2よりも、材料硬度が高くなるように構成されていて、第1部材W1、第2部材W2、及び第3部材W3が、この順となるように配置されていて、被接合部Waが、第3部材W3由来の材料が、第2部材W2の上面よりも上方に延びるように形成されていればよい。このため、本実施の形態1に係る継手構造は、本実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101以外の摩擦攪拌接合装置により形成されていてもよく、他の機器により、形成されていてもよい。
【0053】
さらに、本実施の形態1に係る継手構造は、被接合部Waが、軟化して硬化した第1部材W1、軟化して硬化した第2部材W2、及び軟化して硬化した第3部材W3から構成されていて、軟化して硬化した第3部材W3(第3部材W3由来の材料)が、第2部材W2の上面よりも上方に延びるように形成されていてもよい。
【0054】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置は、実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置において、ツールの先端部は、第1先端部と、第1先端部よりも基端側に位置する第2先端部を有し、第1先端部及び第2先端部は、それぞれ、円錐台状に形成されていて、第1先端部は、その先端面の面積が、第2先端部の先端面の面積よりも小さくなるように形成されている。
【0055】
以下、本実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置の一例について、
図4を参照しながら詳細に説明する。
【0056】
[摩擦攪拌接合装置の構成]
図4は、本実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置におけるツールの先端部の概略構成を示す模式図である。
【0057】
図4に示すように、本実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置101は、実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101と基本的構成は同じであるが、ツール10の先端部の構成が異なる。
【0058】
具体的には、ツール10の先端部は、第1先端部10aと、第1先端部10aよりも基端側に位置する第2先端部10bを有する。第1先端部10a及び第2先端部10bは、それぞれ、円錐台状に形成されている。
【0059】
また、第1先端部10aの先端面10cの面積が、第2先端部10bの先端面10dの面積よりも小さくなるように形成されている。なお、第2先端部10bの先端面10dは、第1先端部10aと第2先端部10bの境界上の面である。
【0060】
また、ツール10の穿孔効率をより増加させる観点から、第1先端部10aの先端面10cの面積は小さくてもよい。さらに、先端面10cの面積は小さくした場合に、第2先端部10bで被接合物Wの被接合部Waを撹拌させる観点から、第1先端部10aの高さh(先端面10cと先端面10dの間の長さ(距離))が小さくてもよい。これにより、被接合物Wに圧入される体積を大きくすることができ、アンカー部分Apを大きくすることができる。このため、被接合物Wの被接合部Waの接合強度を大きくすることができる。
【0061】
このように構成された、本実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置101であっても、実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101と同様の作用効果を奏する。なお、本実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置101により、形成された被接合物Wの被接合部Waが、本実施の形態2に係る継手構造の一例となる。
【0062】
また、本実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置101では、ツール10の先端部が、第1先端部10aと第2先端部10bを有していて、第1先端部10aの先端面10cの面積が、第2先端部10bの先端面10dの面積よりも小さくなるように形成されている。
【0063】
これにより、本実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置101では、実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101に比して、ツール10の穿孔効率を増加させることができる。このため、ツール10の先端をより短時間で、第1位置にまで到達させることができ、アンカー部分Apをより形成しやすくすることができる。
【0064】
<試験例>
次に、本実施の形態1又は2に係る摩擦攪拌接合装置101において、種々の条件で、被接合物Wを摩擦攪拌接合した場合の試験例について、説明する。
【0065】
ところで、本発明においては、
図3に示すアンカー部分Apの高さ寸法を第2部材W2の高さ寸法よりも大きくする必要がある。ここで、
図5に示す模式図を用いて、アンカー部分Apの高さ寸法と、第2部材W2の高さ寸法等の関係について、説明する。
【0066】
図5は、被接合物を摩擦攪拌接合装置により、接合した状態を示す模式図である。
【0067】
図5に示すように、第3部材W3に圧入されたツール10の先端部の体積をVとし、ツール10の先端部における第3部材W3の上面と水平な部分の半径をr1とし、アンカー部分Apにおける第3部材W3の上面と水平な部分の長さ(幅)をr2とする。また、第1部材W1の厚み(高さ)をt1とし、第2部材W2の厚み(高さ)をt2とし、第3部材W3の厚み(高さ)をt3とする。
【0068】
そして、
図5に示すように、アンカー部分Apを筒状(円筒状)に形成されていると仮定し、第3部材W3に圧入されたツール10の先端部の体積と、アンカー部分Apの体積が等しいと仮定する。すると、アンカー部分Apの高さhaは、(1)に示す関係式が成立する。
【0069】
ha=V/π{(r1+r2)2-r12}>t2 (1)
ここで、(1)において、第3部材W3に圧入されるツール10の先端部の体積Vは、予め操作者等が設定した第1位置によって、算出することができる。また、体積Vが算出されれば、ツール10の先端部における第3部材W3の上面と水平な部分の半径r1も算出することができる。
【0070】
このため、(1)において、長さr2を調整することで、アンカー部分Apの高さhaを第2部材W2の高さt2よりも大きくすることができる。そこで、本発明者らは、種々の条件で、被接合物Wを摩擦攪拌接合し、アンカー部分Apにおける第3部材W3の上面と水平な部分の長さr2を予め実験により、設定することができることを示した。以下、具体的な条件について、説明する。
【0071】
なお、以下の試験例においては、摩擦攪拌接合装置101は、被接合部Wの温度を検知する温度検知器が備えている。また、以下の試験例においては、第1部材W1として、厚み1.2mmのアルミニウム合金板(A5052)を用い、第2部材W2として、厚み0.7mmの亜鉛メッキ鋼板(原板が270MPa級の鋼板)を用い、第3部材W3として、厚み1.2mmの980MPa級の鋼板を用いている。
【0072】
図6は、本実施の形態1又は2に係る摩擦攪拌接合装置によって、被接合物Wを摩擦攪拌接合した条件を示す表である。また、
図7~
図13は、
図6に示す試験例1~7の条件で被接合物を摩擦攪拌接合した結果を示す写真である。
【0073】
なお、
図6においては、ツール10の先端の形状が、実施の形態1に係る摩擦攪拌接合装置101の構成である場合を実施の形態1と示し、実施の形態2に係る摩擦攪拌接合装置101の構成である場合を実施の形態2と示している。第1位置については、被接合物Wの第1部材W1の上面からの距離(mm)で表している。
【0074】
また、
図6において、接合時間は、ツール10の先端が被接合物W(正確には、第1部材W1の上面)に当接してから第1位置に到達する間にかかった時間を示している。さらに、圧入温度は、ツール10の先端が、第3部材W3の上面に到達して、第3部材W3内に圧入したときに、温度検知器が検知した被接合部Waの温度を示している。
【0075】
図6~
図13に示すように、ツール10の先端が、実際に第1位置に到達するまでにかかった時間である、接合時間が長いと、アンカー部分Apが形成されないことが示唆された(試験例2、5参照)。これらの結果から、ツール10の先端を第1位置までに到達させる時間である、第1時間は、11秒以内に設定してもよく、6秒以内に設定してもよく、5秒以内に設定してもよい。
【0076】
また、被接合部Waの圧入温度が高くなると、アンカー部分Apが形成されないことが示唆された(試験例2、5参照)。本発明者らは、これらの結果から、被接合部Waの圧入温度が高くなると、被接合部Waへの入熱量が大きくなり、第1部材W1、第2部材W2、及び第3部材W3の軟化する部分が、水平方向に広がって、第3部材W3の軟化した部分の高さが小さくなり、アンカー部分Apを形成することができないと推測している。
【0077】
さらに、試験例1~2の結果と試験例3~7の結果から、ツール10の回転速度が大きくなると、被接合部Waの圧入温度が高くなる傾向があり、ツール10の加圧力(ツール10の先端部が被接合部Waを押圧する圧力)が大きくなると、接合時間が短くなる(ツール10の圧入速度が大きくなる)ことが示唆された。
【0078】
したがって、上記試験例1~7に示す結果から、温度検知器が検知した被接合部Waの温度に応じて、ツール10の回転速度(回転数)と、押圧力(加圧力)を予め設定することにより、アンカー部分Apを形成することができることが示唆された。
【0079】
また、上記試験例1~7に示す結果から、被接合物Wを構成する第1部材W1~第3部材W3の材質、板厚を変更したとしても、予め実験により、アンカー部分Apを形成することができることができる、第1位置、第1時間、ツール10の回転数、及び押圧力を適宜設定することができることが示唆された。
【0080】
特に、被接合部Waの温度が高い場合には、ツール10の回転速度を小さくし、接合時間が長い場合には、ツール10の押圧力(加圧力)を大きくすることで、アンカー部分Apを形成できることが示唆された。
【0081】
なお、上記実施の形態1及び2に係る摩擦攪拌接合装置101においては、予め実験により、第1位置、第1時間、ツール10の回転数、及び押圧力を適宜設定する形態を採用したが、これに限定されない。第1位置と第1時間を設定し、制御装置110が、温度検知器が検知した被接合部Waの温度情報に基づいて、直動駆動器7及び回転駆動器8をフィードバック制御する形態を採用してもよい。
【0082】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良又は他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の摩擦攪拌接合装置及びその運転方法は、第1部材、第2部材、及び第3部材からなる被接合物を充分に接合することができるため、有用である。また、本発明に係る継手構造は、3つの部材からなる被接合物を充分に接合することで、強固な継手構造を提供することができるため、有用である。
【符号の説明】
【0084】
2 基体
3 可動体
4 ツール保持体
5 湾曲フレーム
6 支持台
7 直動駆動器
8 回転駆動器
9 ロボット
10 ツール
10a 第1先端部
10b 第2先端部
10c 先端面
10d 先端面
41 第1軟化部分
42 第2軟化部分
101 摩擦攪拌接合装置
110 制御装置
110a 演算器
110b 記憶器
110c 第1データ
Ap アンカー部分
h 高さ
ha 高さ
r1 長さ
r2 長さ
t1 高さ
t2 高さ
t3 高さ
W 被接合物
W1 第1部材
W2 第2部材
W3 第3部材
Wa 被接合部
X 軸線