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特許72783155-アルコキシメチルフルフラールの製造方法
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  • 特許-5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法 図1
  • 特許-5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/46 20060101AFI20230512BHJP
   C07D 307/68 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
C07D307/46
C07D307/68
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021018025
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2021127337
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0017437
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514266091
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヨンギュ
(72)【発明者】
【氏名】リ マウム
(72)【発明者】
【氏名】プラヴィン パンダリナス ウパーレ
(72)【発明者】
【氏名】ホン ドヨン
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507358(JP,A)
【文献】国際公開第2013/043131(WO,A1)
【文献】特表2015-514699(JP,A)
【文献】特表2014-515037(JP,A)
【文献】Catalyst Today,2017年,279,305-316
【文献】ChemSusChem,2019年,12(14),3263-3270
【文献】ChemSusChem,2011年,4(6),723-726
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/00
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルクトース(fructose)を有機酸触媒下で、有機溶媒に添加し、反応させて、5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural)を得る、
前記有機酸触媒が酢酸(acetic acid)であり、
前記有機溶媒がメタノール又はエタノールであり、
前記酢酸は、フルクトース100重量部に対して、1~30重量部で添加される、
ことを特徴とする、
5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項2】
(a)フルクトースを準備する段階;
(b)前記フルクトースと有機酸触媒及び有機溶媒とを混合して、混合溶液を製造する段階;及び、
(c)前記混合溶液を加熱反応させて、5-アルコキシメチルフルフラールを製造する段階;とを含み、
前記有機酸触媒が酢酸(acetic acid)であり、
前記有機溶媒がメタノール又はエタノールであり、
前記酢酸は、フルクトース100重量部に対して、1~30重量部で添加される、
、5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項3】
前記(c)段階は、
常圧~30barに加圧することを特徴とする、
請求項2に記載の5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項4】
前記(c)段階は、
60~120℃に加熱することを特徴とする、
請求項2に記載の5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法。
【請求項5】
(a)フルクトースを準備する段階;
(b)前記フルクトースと有機酸触媒及び有機溶媒とを混合して、混合溶液を製造する段階;
(c)前記混合溶液を加熱反応させて、5-アルコキシメチルフルフラールを製造する段階;及び、
(d)前記(c)段階で製造した溶液から2,5-フランジカルボン酸を製造する段階;とを含み、
前記有機酸触媒が酢酸(acetic acid)であり、
前記有機溶媒がメタノール又はエタノールであり、
前記酢酸は、フルクトース100重量部に対して、1~30重量部で添加され、
前記(d)段階は精製及び触媒の分離のさらなる後処理をすることなく進められる、2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法に関し、より詳細には、フルクトース(fructose)から5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス(Biomass)を含有する糖類又は糖を経済的に有用な化合物に転換させる技術は、次々と研究開発されており、このうち、フルクトース(fructose)は、還元基であって、ケトンを有する単糖類であり、ヘキソースの一つで、植物界に広く存在し、ブドウ糖と共に果物の中にガラス状に入っているか、ブドウ糖と結合してスクロースとして存在する。
【0003】
フルクトースのような糖類を酸触媒下で、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-hydroxymethylfurfural;以下、「HMF」)に転換させて、これをポリエチレンテレフタラートタイプのバイオ系モノマーを得るための出発物質として選択する技術が最近、導入しつつある。
【0004】
HMFは、フラン単量体を生成するための良い出発物質であるものの、フルクトースからHMFの生成メカニズムに関係なく、反応過程で縮合、再脱水、逆反応、その他再配列は、さらなる付加反応が順次に起こり、これによって、所望しない副産物が生成される問題がある。
【0005】
特に、HMFから2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid)を製造する過程は、1段階として、フルクトース脱水反応を通じてHMFを製造し、2段階として、HMFの酸化反応を通じて行われる。
【0006】
1段階のフルクトース脱水反応を水溶液状で行う場合、生成されたHMFは、水との2次反応によってレブリン酸(levulinic acid)とギ酸(formic acid)とに容易に分解されるため、HMFの歩留りを上げるためには、水溶液よりは、高沸点有機溶媒(例:1-Butanol、GVL、DMFなど)を用いることが有利である(非特許文献1;Green Chem.、2015,17,3310、非特許文献2;Green Chem.、2011,13,754)。
【0007】
HMFの酸化反応におけるFDCAの歩留りを上げるためには、水溶液状で反応を行うことが有利である(特許文献1、韓国公開特許公報第10-2018-7018309号)。
【0008】
したがって、フルクトースから高い歩留りでFDCAを製造するためには、高沸点有機溶媒上でHMFを製造した後、HMFの酸化反応の前にHMFを有機溶媒から分離しなければならない。
【0009】
しかし、有機溶媒からHMFを分離するためには多くの努力が必要であり、分離過程で、HMFの損失は避けられない。
【0010】
例えば、蒸発法により溶媒を除去する場合は、HMFが分解されないために、反応温度を50℃未満に維持しなければならない。
【0011】
これによって、高沸点溶媒を除去するためには、非常に低い圧力が必要であり、これは大規模の産業工程で行うことは、ほとんど不可能であり、経済的でない。
【0012】
さらに他の方法として、有機溶媒抽出剤を用いて、HMFを高沸点有機溶媒から分離する技術が紹介されているものの、有機溶媒抽出剤におけるHMFの溶解度の限界によって、効率が落ちる問題点があり、これも経済的でない。
【0013】
したがって、フルクトースから経済的にFDCAを製造するためには、1段階のフルクトース脱水反応後、さらなる後処理することなく、直ちに酸化反応を行える中間体を製造する方法の開発が非常に至急な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
(特許文献1)韓国公開特許公報第10-2018-7018309号(公開日2018.08.13)
【非特許文献】
【0015】
(非特許文献1)Green Chem.、2015,17,3310;
(非特許文献2)Green Chem.、2011,13,754
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決するためのものであって、フルクトースから2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid)を副産物なく高純度で製造することのできる中間体である、5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural)を製造する方法を提供することにある。
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、以上に言及した課題に制限されないし、言及していないさらに他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解するることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の一実施例による5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural)の製造方法は、フルクトース(fructose)を有機酸触媒下で、有機溶媒に添加し、反応させて、5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural)を得ることができる。
【0019】
また、前記有機酸触媒は、酢酸(acetic acid)であってもよい。
【0020】
また、前記有機溶媒は、メタノール又はエタノールであってもよい。
【0021】
本発明の他の実施例による5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法は、
(a)フルクトースを準備する段階;
(b)前記フルクトースと有機酸触媒及び有機溶媒とを混合して、混合溶液を製造する段階;及び、
(c)前記混合溶液を加熱反応させて、5-アルコキシメチルフルフラールを製造する段階;とを含む。
【0022】
また、前記有機溶媒は、メタノール又はエタノールであってもよい。
【0023】
また、前記エタノールは、バイオマス由来のバイオエタノールであってもよい。
【0024】
また、前記有機酸触媒は、酢酸(acetic acid)であってもよい。
【0025】
また、前記酢酸の濃度が増加するほど、前記(c)段階の反応速度は、増加し得る。
【0026】
また、前記酢酸は、フルクトース100重量部に対して、1~30重量部で添加されてもよい。
【0027】
また、上記(c)段階は、常圧~30barに加圧することができる。
【0028】
また、上記(c)段階は、60~120℃に加熱することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、植物界で非常に豊かなフルクトース(fructose)から2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid)を副産物なく製造することのできる、5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural)を高い歩留りで製造することができる。
【0030】
また、有機酸触媒として酢酸(acetic acid)を選択し、5-ヒドロキシメチルフルフラールを生成しないながらも、非常に高い歩留りで5-アルコキシメチルフルフラールを得ることができる。
【0031】
また、有機溶媒を用いて、溶液状で5-アルコキシメチルフルフラールを形成して、精製及び触媒の分離など、さらなる後処理することなく、直ちに酸化反応を行って、2,5-フランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic acid)を製造することができる。
【0032】
また、フルクトースを有機酸触媒と反応させて、フルクトースを100%転換(conversion)することができ、生成物の5-アルコキシメチルフルフラールに対する選択性を増加させて、非常に高い歩留り(yield)で5-アルコキシメチルフルフラールを得ることができる。
【0033】
また、環境に優しい有機酸及び有機溶媒下で、フルクトースを反応させて、廃棄物処理を含む工程負荷が減少する。
【0034】
発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載した発明の構成から推論可能なすべての効果を含むと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の他の実施例による5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural)の製造方法の工程を示した工程流れ図。
図2】溶媒によるフルクトースの転換率とHMFの歩留りを示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に添付する図面を参照しながら、本発明による好ましい実施例を詳説する。
【0037】
本発明の利点及び特徴、そしてそれを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。
【0038】
しかし、本発明は、以下に開示の実施例によって限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に具現することができる。但し、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0039】
また、本発明を説明するにおいて、関連する公知技術などが本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合、それに関する詳説は省略する。
【0040】
本発明者たちは、フルクトース(fructose)の脱水反応を水溶液状で行う場合、生成された5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-hydroxymethylfurfural、以下、「HMF」)は、水との2次反応によって、レブリン酸(levulinic acid)とギ酸(formic acid)とに容易に分解されて、2,5-フランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic acid;以下、「FDCA」)を製造する場合、歩留りが非常に低い問題があり、これによって、HMFよりも化学的に安定した5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural;以下、「AMF」)を中間体として、ワンポット(one-pot)でFDCAを製造する場合、副産物を生成することなく、高い歩留りでFDCAを得ることができることを確認して、フルクトースから有機酸触媒及び有機溶媒を用いてAMFを製造する方法を完成した。
【0041】
本発明者たちが知っている限り、フルクトース脱水反応過程で、有機酸触媒として酢酸を選択し、有機溶媒としてエタノール又はメタノールを用いてAMFを製造する方法は、開示されたところがない。
【0042】
本発明の一実施例による5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法は、フルクトース(fructose)を有機酸触媒下で、有機溶媒に添加し、加熱反応させて、5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural;以下、「AMF」)を得ることができる。
【0043】
前記フルクトースは、植物資源を始め、バイオマスから容易に得ることができ、グルコース、スクロース又はガラクトースの中で、溶媒を用いる脱水反応過程における副産物の生成が少なくて、AMFを生成するための出発物質として選択することが好ましい。
【0044】
[反応式1]
【0045】
上記反応式1は、本発明の一実施例による5-エトキシメチルフルフラールの製造方法における反応段階を示したものである。
【0046】
フルクトースを出発物質として、エタノール(ethanol)を混合し、加熱反応させて、5-エトキシメチルフルフラール(5-ethoxymethylfurfural;以下、「EMF」)を得ることができる。
【0047】
ここで、有機酸触媒として酢酸(acetic acid)を添加することができる。
【0048】
前記酢酸を有機酸触媒として用いる場合、EMFの生成速度を増加させることができ、回収されるEMFの歩留り(yield)を効果的に増加させることができる。
【0049】
前記有機溶媒は、メタノール(methanol)又はエタノール(ethanol)であってもよい。
【0050】
以下において、AMFは、メタノールを有機溶媒として得た5-メトキシメチルフルフラール(5-methoxymethylfurfural)と、エタノールを有機溶媒として得た5-エトキシメチルフルフラール(5-ethoxymethylfurfural)とを含むことを意味する。
【0051】
前記有機溶媒と酢酸を用いて、脱水反応で副産物なくAMFを効果的に製造することができる。
【0052】
図1は、本発明の他の実施例による5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural)の製造方法の工程を示した工程流れ図である。
【0053】
図1を参照すれば、本発明の他の実施例による5-アルコキシメチルフルフラール(5-alkoxymethylfurfural)の製造方法は、
(a)フルクトースを準備する段階;
(b)前記フルクトースと有機酸触媒及び有機溶媒とを混合して、混合溶液を製造する段階;及び、
(c)前記混合溶液を加熱反応させて、5-アルコキシメチルフルフラールを製造する段階;とを含む。
【0054】
先ず、フルクトースを準備する(S100)。
【0055】
前記フルクトースは、バイオマスからブタノールを溶媒として、固体酸又は塩基触媒の存在下で反応させて得たものであってもよい。
【0056】
ブタノールを溶媒としてフルクトースを得る場合、高い歩留りでフルクトースを得ることができる。
【0057】
バイオマス由来の単糖類のうち、前記フルクトースを除いたその他は、有機酸触媒による加熱反応時、AMFの歩留りが高くない問題がある。
【0058】
前記フルクトースと、有機酸触媒及び有機溶媒とを混合して、混合溶液を製造する(S200)。
【0059】
前記有機酸触媒及び有機溶媒とを混合して、混合溶液を製造し、加熱反応して、溶液状で5-アルコキシメチルフルフラールを形成することができる。
【0060】
形成された5-アルコキシメチルフルフラールを含む溶液は、精製及び触媒の分離など、さらなる後処理することなく、直ちに酸化反応を行って、後段連続工程で、2,5-フランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic acid)を製造することができる。
【0061】
前記有機酸触媒は、酢酸である。
【0062】
前記酢酸を有機酸触媒として用いる場合、EMFの生成速度を増加させることができ、回収されるEMFの歩留り(yield)を効果的に増加させることができる。
【0063】
前記有機溶媒は、メタノール(methanol)又はエタノール(ethanol)であってもよい。
【0064】
前記有機溶媒としてメタノール又はエタノールを選択する場合は、MMF又はEMFを副産物を生成することなく、非常に高い歩留りで得ることができる。
【0065】
前記エタノールは、バイオマス由来のバイオエタノールであってもよい。
【0066】
前記エタノールがバイオエタノールであり、有機酸触媒が酢酸である場合、非常に環境に優しいし、無機酸触媒と異なって、副産物処理に対する負荷が非常に減少し得る。
【0067】
一方、前記酢酸の濃度が増加するほど、上記S300段階の反応速度は、増加し得る。
【0068】
前記酢酸の濃度を調節して、5-アルコキシメチルフルフラールの生成速度を調節することができる。
【0069】
前記酢酸は、フルクトース100重量部に対して、1~30重量部で添加されてもよい。
【0070】
前記酢酸の添加量が範囲に及ぼさない場合、AMFは、十分に生成されないし、上記範囲を超える場合、回収されるAMF選択性が低くなる問題が発生する。
【0071】
前記混合溶液を加熱反応させて、5-アルコキシメチルフルフラールを製造する(S300)。
【0072】
前記混合溶液を常圧~30barに加圧することができる。
【0073】
前記圧力範囲に及ぼさない場合、回収されるAMFの歩留りは、低くなるし、上記範囲を超える場合、エネルギーが消耗しすぎて、AMFの歩留りが高くならない。
【0074】
前記混合溶液を60~120℃に加熱することができる。
【0075】
上記温度範囲で反応させて、AMFを生成して回収することができる。
【0076】
上記温度範囲に及ぼさない場合、回収されるAMFの歩留りは、非常に低くなるし、温度範囲を超える場合、エネルギーが消耗しすぎて、エネルギー消耗量に比べて、AMFの歩留りが増加しない。
【0077】
本発明の他の実施例で得たAMFは、FDCAを製造するための中間体として用いることができる。
【0078】
以下では、本発明を理解するために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示するだけであり、本発明の範囲は、下記の実施例に限定されもるものではない。
【0079】
実験例1:化学的安全性比較
図2は、溶媒によるフルクトースの転換率と歩留りを示したグラフである。
【0080】
触媒Amberlyst-15 1.0g、フルクトース15g、及び溶媒85gとを混合し、100℃で反応させて、転換率とHMFの歩留りを確認した。
【0081】
図2を参照すれば、ブタノール溶媒におけるフルクトースの転換率は、水溶液における転換率よりも高いと示されており、但し、反応時間によってHMFは、化学的に不安定的であり、加水分解によるレブリン酸及びギ酸の生成と縮合によるフミンの生成によって、歩留りが非常に低くなることを確認した。
【0082】
【表1】
【0083】
上記表1は、MMF及びEMFの反応温度及び時間による組成変化を示したものである。
【0084】
表1を参照すれば、MMF及びEMFの場合、温度及び時間変化による初期及び最終の組成変化がほとんどないことを確認し、MMFとEMFは、触媒反応条件でも化学的に安定したことを確認した。
【0085】
したがって、FDCAを製造するための中間体として、MMF及びEMFが好ましいことを確認した。
【0086】
実施例1
フルクトース1gをエタノール9ml、有機酸触媒として酢酸0.05gと混合した後、常圧で70℃に加熱した後、20時間反応を行った。反応後、溶液をliquid chromatographyで分析した結果、フルクトース転換率は、100%、EMFの歩留りは、90%と確認された。
【0087】
実施例2:加圧による歩留り確認
フルクトース1gをエタノール9ml、有機酸触媒として酢酸0.05gと混合した後、25barに加圧し、100℃に加熱した後、8時間反応を行った。 反応後、溶液をliquid chromatographyで分析した結果、フルクトース転換率は、100%、EMFの歩留りは、92%と確認された。
【0088】
実施例3:酢酸触媒量による歩留り確認
フルクトース1gをエタノール9ml、有機酸触媒として酢酸0.1gと混合した後、常圧で70℃に加熱した後、12時間反応を行った。反応後、溶液をliquid chromatographyで分析した結果、フルクトース転換率は、100%、EMFの歩留りは、87%と確認された。
【0089】
実施例4:酢酸触媒量による歩留り確認
フルクトース1gをエタノール9ml、有機酸触媒として酢酸0.2gと混合した後、常圧で70℃に加熱した後、6時間反応を行った。反応後、分離した溶液をliquid chromatographyで分析した結果、フルクトース転換率は、100%、EMFの歩留りは、84%と確認された。
【0090】
実施例5:酢酸触媒量による歩留り確認
フルクトース1gをエタノール9ml、有機酸触媒として酢酸0.3gと混合した後、常圧で70℃に加熱した後、4時間反応を行った。反応後、分離した溶液をliquid chromatographyで分析した結果、フルクトース転換率は、100%、EMFの歩留りは、82%と確認された。
【0091】
実施例6:加圧による歩留り確認
フルクトース1gをエタノール9ml、有機酸触媒として酢酸0.05gと混合した後、15barに加圧し、100℃に加熱した後、10時間反応を行った。 反応後、分離した溶液をliquid chromatographyで分析した結果、フルクトース転換率は、100%、EMFの歩留りは、80%と確認された。
【0092】
比較例1:無機酸触媒を用いてEMF製造
フルクトース1gをエタノール9ml、無機酸触媒として硫酸(HSO)0.03gと混合した後、25barで90℃に加熱した後、6時間反応を行った。反応後、溶液をliquid chromatographyで分析した結果、フルクトース転換率は 、85%、EMFの歩留りは、32%と確認された。
【0093】
比較例2:商業用固体酸触媒を用いてEMF製造
フルクトース1gをエタノール9ml、Amberlyst-15 0.25gと混合した後、25barで90℃に加熱した後、6時間反応を行った。反応後、固体酸触媒を分離した溶液をliquid chromatographyで分析した結果、フルクトース転換率は、92%、EMFの歩留りは、44%と確認された。
【0094】
比較例3:酢酸触媒量による歩留り確認
フルクトース1gをエタノール9ml、有機酸触媒として酢酸1.0gと混合した後、常圧で70℃に加熱した後、2時間反応を行った。反応後、溶液をliquid chromatographyで分析した結果、フルクトース転換率は、100%、EMFの歩留りは、41%と確認された。
【0095】
実施例7:フルクトース由来のEMFからFDCA製造
実施例1から製造したEMF/エタノール混合液10mlを、Pt(5%)/C触媒0.5gと混合した後、酸素気体を15barに加圧した後、100℃で2時間反応を行った。
【0096】
反応後、常温に冷却した後、ろ過を通じて固体混合物をろ過液から分離した。 ろ過液をliquid chromatographyで分析した結果、EMF転換率は、100%と確認された。
【0097】
前記固体混合物をDMF溶媒10mlと混合した後、ろ過を通じて触媒を溶液と分離した。分離した溶液をliquid chromatographyで分析した結果、FDCAの歩留りは、90%と確認された。
【0098】
上記実施例及び比較例を参照すれば、酢酸を有機酸触媒として用いて、フルクトースをエタノール溶媒と混合及び加熱して、EMFを製造する場合、特定の濃度及び温度範囲内で、無機酸又は固体酸を触媒として用いる場合に比べて、EMFを80%以上高い歩留りで得ることができるだけでなく、HMFが生成されず、副産物の生成を効果的に防止することができることを確認した。
【0099】
また、実施例7によれば、本発明によって製造したEMF中間体は、別途触媒分離工程なく、直ちに酸化反応を通じてFDCAを高い歩留りで製造することができることを新たに確認したことである。
【0100】
今まで本発明の実施例による5-アルコキシメチルフルフラールの製造方法に関する具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲で脱しない限りでは、様々な実施の変形が可能であることは自明である。
【0101】
よって、本発明の範囲は、説明した実施例に限って定められてはならないし、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等なものによって定めるべきである。
【0102】
すなわち、前述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきであり、本発明の範囲は、詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から想到するすべての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。
図1
図2