(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】がんの処置において使用するための、Notch阻害剤およびPI3K/mTOR阻害剤を用いた併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/55 20060101AFI20230512BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20230512BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230512BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230512BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A61K31/55 ZMD
A61K31/4745
A61P43/00 121
A61P35/02
A61P35/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021112585
(22)【出願日】2021-07-07
(62)【分割の表示】P 2018553368の分割
【原出願日】2017-04-05
【審査請求日】2021-07-28
(32)【優先日】2016-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】パテル,バーヴィン クマール
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ミシェル シー.
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/016081(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/097039(WO,A1)
【文献】NCT02079636 (Submitted Date: February 2, 2016 (Last Update Posted: February 4, 2016)), A Study of Abemaciclib (LY2835219) in Combination With Another Anti-cancer Drug in Participants With Lung Cancer (NSCLC), ClinicalTrial.gov Archive, Retrieved from Internet: https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02079636?V_17=View#StudyPageTop [retrieved on 2021-02-8]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物
を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん
、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がん
、または皮膚がんであるがんを処置する方法
に使用するためのものであり、
前記方法は、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む、医薬組成物。
【請求項2】
8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がん、または皮膚がんであるがんを処置する方法に使用するためのものであり、
前記方法は、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と組み合わせて投与することを含む、医薬組成物。
【請求項3】
T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん
、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がん
、または皮膚がん
であるがんの処置
のために組合せて使用
するための、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物
と、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩
との組合せ物。
【請求項4】
T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん
、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がん
、または皮膚がん
であるがんの
処置における同時、別々
、または逐次の
使用のための
組合せ調製物としての、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物
と、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩
とを含む製品。
【請求項5】
前記使用が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩とを、同時に投与することによるがんの処置のための使用である、請求項1または2に記載の医薬組成物、または請求項3に記載の組合せ物、または請求項4に記載の製品。
【請求項6】
前記使用が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩とを、別々に投与することによるがんの処置のための使用である、請求項1または2に記載の医薬組成物、または請求項3に記載の組合せ物、または請求項4に記載の製品。
【請求項7】
前記使用が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩とを、逐次に投与することによるがんの処置のための使用である、請求項1または2に記載の医薬組成物、または請求項3に記載の組合せ物、または請求項4に記載の製品。
【請求項8】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の量が、2.5 mg~75 mgである、請求項1、2、5~7のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項3、5~7のいずれかに記載の組合せ物、または請求項4~7のいずれかに記載の製品。
【請求項9】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の量が、5 mg~50 mgである、請求項8に記載の医薬組成物、または請求項8に記載の組合せ物、または請求項8に記載の製品。
【請求項10】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の量が、25 mgである、請求項8に記載の医薬組成物、または請求項8に記載の組合せ物、または請求項8に記載の製品。
【請求項11】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の量が、50 mgである、請求項8に記載の医薬組成物、または請求項8に記載の組合せ物、または請求項8に記載の製品。
【請求項12】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物が、1日おきに1日1回5日間投与した後、2日間投与しない(T.I.W.)、請求項1、2、5~11のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項3、5~11のいずれかに記載の組合せ物、または請求項4~11のいずれかに記載の製品。
【請求項13】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物が、1日1回(QD)、1日2回(B.I.D.)、1日3回(T.I.D.)、1日おき(Q2D)、または3日毎(Q3D)に使用するためのものである、請求項1、2、5~11のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項3、5~11のいずれかに記載の組合せ物、または請求項4~11のいずれかに記載の製品。
【請求項14】
8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩の量が、75 mg~250 mgである、請求項1、2、5~13のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項3、5~13のいずれかに記載の組合せ物、または請求項4~13のいずれかに記載の製品。
【請求項15】
8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩の量が100 mg~200 mgである、請求項14に記載の医薬組成物、または請求項14に記載の組合せ物、または請求項14に記載の製品。
【請求項16】
8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩の量が、150 mgである、請求項14に記載の医薬組成物、または請求項14に記載の組合せ物、または請求項14に記載の製品。
【請求項17】
8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩の量が、200 mgである、請求項14に記載の医薬組成物、または請求項14に記載の組合せ物、または請求項14に記載の製品。
【請求項18】
8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩が、1日2回(B.I.D.)に使用するためのものである、請求項1、2、5~17のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項3、5~17のいずれかに記載の組合せ物、または請求項4~17のいずれかに記載の製品。
【請求項19】
8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩が、1日1回(QD)、1日2回(B.I.D.)、1日3回(T.I.D.)、1日おき(Q2D)、または3日毎(Q3D)に使用するためのものである請求項1、2、5~17のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項3、5~17のいずれかに記載の組合せ物、または請求項4~17のいずれかに記載の製品。
【請求項20】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物が、T.I.W.の使用のためのものであり、
8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩が、QDの使用のためのものである、
請求項1、2、5~7のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項3、5~7のいずれかに記載の組合せ物、または請求項4~7のいずれかに記載の製品。
【請求項21】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩とが、経口投与用に製剤化される、請求項1、2、5~20のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項3、5~20のいずれかに記載の組合せ物、または請求項4~20のいずれかに記載の製品。
【請求項22】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩とが、28日間のサイクルに亘って投与される、請求項1、2、5~21のいずれかに記載の医薬組成物、または請求項3、5~21のいずれかに記載の組合せ物、または請求項4~21のいずれかに記載の製品。
【請求項23】
第1の医薬品の製造のための4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の使用、および
第2の医薬品の製造のための8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、
前記第1の医薬品と前記第2の医薬品は、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がん、または皮膚がんであるがんの処置に組合せて用いられる、使用。
【請求項24】
前記がんの処置に組合せて用いられることが、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩とを、同時、別々、または逐次の投与によりがんを処置するための使用である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記第1の医薬品が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を2.5 mg~75 mgの量で含む、請求項23または24に記載の使用。
【請求項26】
前記第1の医薬品が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を5 mg~50 mgの量で含む、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記第1の医薬品が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を25 mgの量で含む、請求項25に記載の使用。
【請求項28】
前記第1の医薬品が、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を50 mgの量で含む、請求項25に記載の使用。
【請求項29】
前記第1の医薬品が、1日おきに1日1回5日間投与した後、2日間投与しない(T.I.W.)使用ために製剤化される、請求項23~28のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
前記第1の医薬品が、1日1回(QD)、1日2回(B.I.D.)、1日3回(T.I.D.)、1日おき(Q2D)、または3日毎(Q3D)の使用のために製剤化される、請求項23~28のいずれかに記載の使用。
【請求項31】
前記第2の医薬品が、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を75 mg~250 mgの量で含む、請求項23~30のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
前記第2の医薬品が、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を100 mg~200 mgの量で含む、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記第2の医薬品が、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を150 mgの量で含む、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
前記第2の医薬品が、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を200 mgの量で含む、請求項31に記載の使用。
【請求項35】
前記第2の医薬品が、1日2回(B.I.D.)の使用のために製剤化される、請求項23~34のいずれかに記載の使用。
【請求項36】
前記第2の医薬品が、1日1回(QD)、1日2回(B.I.D.)、1日3回(T.I.D.)、1日おき(Q2D)、または3日毎(Q3D)の使用のために製剤化される、請求項23~34のいずれかに記載の使用。
【請求項37】
前記第1の医薬品が、T.I.W.の使用のためのものであり、
前記第2の医薬品が、QDの使用のためのものである、
請求項23~34のいずれかに記載の使用。
【請求項38】
前記第1の医薬品と、前記第2の医薬品とが、28日間のサイクルに亘って投与される、請求項23~37のいずれかに記載の使用。
【請求項39】
前記第1の医薬品と、前記第2の医薬品とが、経口投与用に製剤化される、請求項23~38のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がん、または皮膚がんであるがんを処置する方法に使用するためのものである、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2
-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン
-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学
的に許容される塩もしくは水和物(化合物A)および8-[5-(1-ヒドロキシ-1-
メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-
メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはそ
の薬学的に許容される塩(化合物B)を用いるがん治療、ならびにがんを処置するために
組合せを使用する方法に関する。
【0002】
卵巣がん、卵管がんおよび原発性腹膜がんは、合衆国において女性におけるがん死亡の
第5の主要な原因であり、一般に「卵巣がん」という成句に統一される。これらのがんは
、進行した段階でしばしば見つけられる。これは一部には、それらが早期の兆候または症
状を引き起こさないことがあるとともにそれらのための良好なスクリーニング試験がない
ためである。卵巣がんの最も共通の型は、卵巣上皮がんと呼ばれる。それは、卵巣を覆う
組織において始まる。がんは時々、卵巣の近くの卵管の末端で始まり、卵巣に広がる。が
んは腹膜において始まり、卵巣に広がることもある。段階および処置は、一般に、卵巣上
皮がん、卵管がんおよび原発性腹膜がんと同じである。
【0003】
4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキ
シエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル
]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容さ
れる塩もしくは水和物は、Notch経路シグナル伝達阻害剤化合物である。Notch
シグナル伝達は、発達および組織恒常性維持中に重要な役割を果たす。リガンドおよび/
または受容体の突然変異、増幅または過剰発現によるNotchシグナル伝達の調節不全
は、多数の悪性腫瘍に関係する。Notchシグナル伝達の阻害は、がん治療剤の開発の
ための潜在的標的である。化合物Aならびにこの化合物を製造および使用する方法は、T
細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性
白血病、赤白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、結
腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がん、扁平細胞癌腫(口腔)、
皮膚がんおよび髄芽腫の処置を含み、国際公開第2013/016081号パンフレット
に開示されている。化合物Aは、第1相臨床試験、および規定された分子経路変更または
組織ベースの悪性の腫瘍を有する拡大コホートにおいて、ならびにT細胞急性リンパ芽球
性白血病またはT細胞リンパ芽球性リンパ腫(T-ALL/T-LBL)を有する患者に
おける臨床試験において、調査されているところである。
【0004】
8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2
S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,
5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩は、ホスホイノシチド3-
キナーゼ(PI3キナーゼ;PI3K)および哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mT
OR)のデュアル阻害剤である。PI3K/mTOR経路は、様々な成長因子およびそれ
らの受容体によって刺激され、細胞代謝、細胞成長、細胞生存、細胞増殖および細胞運動
性を調節する。PI3K/mTOR経路は、がんにおいて最も頻繁に突然変異される経路
の1つであると思われる。化合物Bならびにこの化合物を製造および使用する方法は、膀
胱がん、結腸がん、胃がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、メラ
ノーマ、卵巣がん、膵臓がん、神経膠芽腫、前立腺がん、肺がん、腎がん、肉腫、造血お
よびリンパ系組織がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、肝臓がん、皮膚がん、胃がん、甲状
腺がん、上部消化管がんならびに尿がんの処置を含み、国際公開第2012/05703
9号パンフレットに開示されている。化合物Bは、中皮腫、乳がんおよび無痛性非ホジキ
ンリンパ腫についての第1相臨床試験および腫瘍特異的拡大コホートにおいて、ならびに
扁平非小細胞肺がん(ネシツムマブとの組合せで)、子宮内膜がん、前立腺がん(エンザ
ルタミドとの組合せで)、結腸直腸がん(プレキサセルチブ(prexasertib)、LY26
06368モノメシレート一水和物;CHK1/2阻害剤との組合せで)、および非小細
胞肺がん(アベマシクリブ;N-[5-(4-エチル-ピペラジン-1-イルメチル)-
ピリジン-2-イル]-[5-フルオロ-4-(7-フルオロ-3-イソプロピル-2-
メチル-3H-ベンゾイミダゾール-5-イル)-ピリミジン-2-イル]-アミンまた
はその薬学的に許容される塩との組合せで)を有する患者における臨床試験において、調
査されているところである。
【0005】
Notch経路阻害剤とPI3K/AKT/mTOR経路阻害剤の組合せは、当技術分
野において企図されてきた:Sheperd et al., Leukemia, 2013, 27: 650-660; Gutierrez
and Look, Cancer Cell, 2007, 12: 411-413;およびPalomero and Ferrando, Clin. Ca
ncer Res., 2008, 14(17): 5314-5317。がんを有する患者のための現存の処置選択肢にも
かかわらず、増強された効力およびより低い毒性の一方または両方を与える新たなおよび
異なる治療が必要とされ続けている。
【0006】
本発明は、化合物Aと化合物Bを組み合わせた活性に由来して、T細胞急性リンパ芽球
性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵
巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞
癌腫(ACC)、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんおよび
皮膚がんに対して、いずれかの薬剤単独で提供される治療効果と比較した場合に、有益な
治療効果を提供すると考えられる。
【0007】
本発明の一態様は、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(
7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3
]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミ
ドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および有効量の8-[5-(1-ヒ
ドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプ
ロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2
-オンまたはその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする患者に投与することを含む
、患者におけるT細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白
血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽
腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫(ACC)、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮
頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がんを処置する方法を提供する。
【0008】
本発明のさらなる態様は、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-
[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d
][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタ
ンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および有効量の8-[5-(
1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メト
キシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリ
ン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする患者に投与すること
を含む、患者における卵巣がんを処置する方法を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[
(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][
3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンア
ミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および有効量の8-[5-(1-
ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシ
プロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-
2-オンまたはその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする患者に、同時に、別々に
または逐次に投与することを含む、患者においてT細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リ
ンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノー
マ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫(ACC)、
結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がんを処置す
る方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[
(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][
3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンア
ミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および有効量の8-[5-(1-
ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシ
プロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-
2-オンまたはその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする患者に、同時に、別々に
または逐次に投与することを含む、患者における卵巣がんを処置する方法を提供する。
【0011】
本発明のさらなる態様は、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、
急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓が
ん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫(ACC)、結腸直腸がん、頭頸
部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がんの処置における同時、別々ま
たは逐次の使用のための;化合物4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[
(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][
3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンア
ミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;および化合物8-[5-(1-ヒ
ドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプ
ロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2
-オンまたはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、卵巣がんの処置における同時、別々または逐次の使用のための;
化合物4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒド
ロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-
イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許
容される塩もしくは水和物;および化合物8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチ
ル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1
,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に
許容される塩を提供する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、以下を提供する:
T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄
性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デス
モイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫(ACC)、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺
がん、肝臓がんまたは皮膚がんの同時、別々または逐次の処置のための医薬の製造のため
の、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロ
キシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イ
ル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容
される塩もしくは水和物、および8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリ
ジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジ
ヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容され
る塩の使用。
【0014】
本発明のさらなる態様は、以下を提供する:
卵巣がんの同時、別々または逐次の処置のための医薬の製造のための、4,4,4-トリ
フルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オ
キソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メ
チル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和
物、および8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1
-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダ
ゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【0015】
本発明の別の態様は、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性
骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、
神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫(ACC)、結腸直腸がん、頭頸部が
ん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がんの処置において使用するための、
各治療剤の別々の組成物または本発明の治療剤の組合せを含む単一の組成物と、同時、別
々または逐次の投与についての指示とを含む市販のパッケージである。
【0016】
本発明のまたさらなる態様は、卵巣がんの処置において使用するための、各治療剤の別
々の組成物または本発明の治療剤の組合せを含む単一の組成物と、同時、別々または逐次
の投与についての指示とを含む市販のパッケージである。
【0017】
化合物4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒ
ドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7
-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に
許容される塩もしくは水和物、(化合物A)は、CAS登録番号142138-81-4
を有する。代替として、該化合物は、N-[(1S)-2-[[(7S)-6,7-ジヒ
ドロ-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-5H-ピリド[3,2-a][3]
ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソエチル]-4,4,4-
トリフルオロブタンアミドと名付けることができる。化合物Aを明確に同定するため、他
の名前が使用され得る。
【0018】
化合物8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-
[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ
[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩、(化合物B)は、
CAS登録番号1386874-06-1を有する。代替として、該化合物は、1,3-
ジヒドロ-8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-3-ピリジニル]-1-
[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-2H-イミダゾ[4,5-c]キノ
リン-2-オンと名付けることができる。化合物Bを明確に同定するため、他の名前が使
用され得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す
。
【0020】
「治療有効量」または「有効量」は、腫瘍細胞成長を阻害するとともに患者におけるが
んの進行を排除または緩徐または抑止するのに必要な、化合物Aまたはその薬学的に許容
される塩もしくは水和物あるいは化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和
物を含有する医薬組成物の投与量、および化合物Bもしくはその薬学的に許容される塩ま
たは化合物Bもしくはその薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物の投与量を意味す
る。化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の予測投与量は、5日間は
1日おきに1日1回、1日当たり2.5mg/患者から75mg/患者の範囲であり、そ
の後、投薬せずに2日間おく(T.I.W.)。化合物Bまたはその薬学的に許容される
塩の予測投与量は、1日2回(B.I.D.)の投薬で、75mgから250mgの範囲
である。化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の好ましい投与量は、
T.I.Wで5mgから50mgの範囲であり、化合物Bまたはその薬学的に許容される
塩は、1日2回で100mgから200mgの範囲であると予測される。患者を処置する
のに必要とされる正確な投与量および処置時間の長さは、疾患の段階および重症度、なら
びに個々の患者の特定の必要性および応答を考慮して、医師によって決定される。投薬投
与は、より最適な治療的利益を患者に提供するとともに任意の薬物関連毒性を管理または
改善させるように調整することができる。代替の投薬スケジュール、例えば1日1回(Q
D)、1日2回(B.I.D.)、1日3回(T.I.D.);1日おきに1日1回(Q
2D)投薬;5日間は1日おきに1日1回投薬し、続いて2日間は投薬しない(T.I.
W.);または3日毎の投薬(Q3D)は、化合物Aおよび化合物Bの各々に適切であり
得る。
【0021】
本発明の併用療法は、処置を必要としている、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リ
ンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノー
マ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫(ACC)、
結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がん、好まし
くは卵巣がん患者に、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量
を28日サイクルで各週(7日)のうち5日間は1日おきに1日1回投薬し、2日間は投
薬与せず、化合物Bまたはその薬学的に許容される塩を28日サイクルで1日1回投薬す
ることによって実施される。
【0022】
「処置」、「処置する」および「処置すること」という用語は、患者が患っているがん
のための介入の全スペクトル、例えば、症状の1つまたは複数を軽減、緩徐、停止または
好転させるための、およびがんが実際に排除されなくてもがんの進行を遅延、停止または
好転させるための、化合物AおよびBの投与を含むと意味される。
【0023】
化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物は、好ましくは、薬学的に許
容される担体を使用するとともに様々な経路によって投与される医薬組成物として製剤化
される。好ましくは、このような組成物は、経口投与用である。化合物Bまたはその薬学
的に許容される塩は、好ましくは、薬学的に許容される担体を使用するとともに様々な経
路によって投与される医薬組成物として製剤化される。好ましくは、このような組成物は
、経口投与用である。このような医薬組成物およびそれらを調製するためのプロセスは、
当技術分野においてよく知られている。例えば、HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENT
S, 5th edition, Rowe et al., Eds., Pharmaceutical Press (2006);およびREMINGTON:
THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY (Troy, et al., Eds., 21st edition, Lippin
cott Williams & Wilkins (2006)を参照されたい。
【0024】
化合物Aおよび化合物Bの各々は、多数の無機および有機対イオンと反応することで、
薬学的に許容される塩を形成することができる。このような薬学的に許容される塩および
それらを調製するための共通の方法論は、当技術分野においてよく知られている。例えば
、P. Stahl, et al., HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS: PROPERTIES, SELECTION AND
USE, (VCHA/Wiley-VCH, 2002);S.M. Berge, et al., “Pharmaceutical Salts, “ Jou
rnal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 66, No. 1, January 1977を参照されたい。
【0025】
本発明の併用療法の効果は、以下に限定されないが、腫瘍退縮、腫瘍の重量またはサイ
ズの縮小、進行までの時間、全生存、無進行生存、全応答率、応答の持続期間、腫瘍退縮
がない転移拡散の阻害、およびPET/CTイメージングを含む、がん処置を評価するこ
とにおいて共通して使用される様々なエンドポイントによって測定することができる。
【0026】
「組合せ」、「治療的組合せ」および「医薬組合せ」という用語は、以下のいずれかを
指す:1)1つの投与単位形態における固定用量組合せ;あるいは2)任意選択により組
合せ投与のための指示と一緒にパッケージされた非固定用量組合せであって、個々の治療
剤、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および化合物Bまたはそ
の薬学的に許容される塩は、治療剤が協同効果を発揮するのを可能にする時間間隔内で、
同じ時にまたは別々に独立して投与することができる、非固定用量組合せ。
【0027】
「同時」投与という用語は、2つの薬剤が、投与のための単一剤形に組み込まれる(固
定用量組合せ)場合、ならびに化合物Aおよび化合物Bの各々が、化合物AおよびBが協
同治療効果を示すのを可能にする時間間隔内で、実質的に同時にまたは別々に独立して投
与される場合など、単一の行為における患者への化合物Aおよび化合物Bの各々の投与を
意味する。
【0028】
「別々の」投与という用語は、任意の順序で同時に、実質的に並行してまたは逐次に非
固定用量組合せ剤形から患者への化合物Aおよび化合物Bの各々の投与を意味する。各化
合物の投与について、特定の時間間隔が存在してもよいまたは存在しなくてもよい。
【0029】
「逐次」投与という用語は、別々の行為において非固定(別々の)剤形から患者への化
合物Aおよび化合物Bの各々の投与を意味する。2つの投与行為は、特定の時間間隔によ
って連結されてもよいまたは連結されなくてもよい。例えば、化合物AをT.I.W.で
投与すること、および化合物Bを1日1回投与すること。
【0030】
「との組合せにおける」という成句は、処置を必要とするがん患者、特に卵巣がん患者
への化合物Aおよび化合物Bの各々の同時、別々および逐次の投与を含む。
【0031】
「同時投与」または「組合せ投与」という用語は、単一患者への治療剤の投与を包含し
、薬剤が、異なる投与経路によってまたは異なる時間で投与され得る処置レジメンを含む
。
【0032】
単独で投与される各薬剤の単純な相加効果よりも大きい、単一患者における効果を生成
する2種の治療剤の有益な作用は、例えば、Sigmoid-Emax方程式(Holford
and Scheiner, Clin. Pharmacokinet., 1981, 6: 429-453)、Loewe加法の方程式(
Loewe and Muischenk, Arch. Exp. Pathol. Pharmacol., 1926, 114: 313-326)、med
ian-effect方程式(Chou and Talalay, Adv. Enzyme Regul., 1984, 22: 27-5
5)、およびBliss Independence方法、または公知の同等なものなど
、当技術分野において知られている適当な方法を使用して算出することができる。各方程
式は、実験データに適用することで、相加、相加未満または相加超の生物学的に関連する
範囲内で、薬物組合せの相加効果を判定することに役立つ対応グラフを発生させることが
できる。
【0033】
がんは、開始および進行が、DNA修復、ゲノム安定性、細胞増殖、細胞死、接着、血
管形成、侵入、ならびに細胞および組織の微小環境における転移を調節する1つまたは複
数の遺伝子の異常機能によって誘発される、疾患の不均一集団であるとますます認識され
る。「がん」遺伝子の変異機能または異常機能は、自然発生のDNA多型、ゲノムコピー
数の変化(増幅、欠失、染色体損失または複製を介する)、遺伝子および染色体構造の変
化(染色体転座、逆位、または遺伝子発現の調節解除に至る他の再構成を介する)、およ
び点突然変異に起因し得る。がん性新生物は1つの異常な遺伝子機能によって誘発され、
同じ異常な遺伝子機能によって維持され、または維持および進行は追加の異常な遺伝子機
能によって悪化されることがある。
【0034】
上に記述されている遺伝子の染色体異常を超えて、がんの各々は、DNAメチル化、ゲ
ノムインプリンティングを含めたゲノムのエピジェネティック修飾、およびアセチル化、
メチル化またはリン酸化によるヒストン修飾を含むこともある。エピジェネティック修飾
は、悪性腫瘍の誘発および/または維持における役割を果たすことがある。
【0035】
がんの性質は、注記されている通り、多因子性である。適切な状況下で、異なる作用機
序を有する治療剤が組み合わせられ得る。しかしながら、異なる作用モードを有する治療
剤の組合せを考えるだけでは、有利な効果を有する組合せに必ずしも至るわけでない。治
療剤のうちのただ1つの単剤治療と比較して、実証された有益な効果(増強された効力お
よび/またはより低い毒性などの治療効果)を与える特定の治療剤が好ましい。
【0036】
本発明の組合せは、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨
髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神
経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫(ACC)、結腸直腸がん、頭頸部がん
、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がんの処置に適当であり、特に、標準的
治療に失敗したことがある卵巣がん患者の処置に適当であると考えられる。これは、単剤
治療に耐性を示すまたは本発明と異なる組合せに耐性を示すがんを有する患者を含む。
【0037】
RECIST v1.1, Eisenhauer et al., European Journal of Cancer, 2009, 45, 228-247
による定義と一致する、「完全応答」(CR)、「部分応答」(PR)、「進行性疾患」
(PD)、「安定疾患」(SD)、「客観的応答」(OR)という用語が使用される。
【0038】
「疾患進行までの時間」(TTP)という用語は、初期処置の時からがんが進行するま
での週または月の単位で一般に測定された時間(RECISTv1.1進行性疾患につい
ての定義を参照されたい)を指し、これは、研究中の最も小さい和を参照として(これは
、ベースライン和が研究中で最も小さいならば、ベースライン和を含む)、標的病変の直
径の和の少なくとも20%の増加である。20%の相対的増加に加えて、該和は、少なく
とも5mmの絶対的増加も示さなければならない。1つまたは複数の新たな病変の出現も
進行と考えられる。このような進行は、臨床医によって評価される。
【0039】
「TTPを延長すること」という用語は、i)未処置患者、またはii)化合物Aおよ
び化合物Bの両方未満で処置された患者に相対して、処置患者における疾患進行までの時
間を増加させることを指す。
【0040】
「生存」という用語は、生き残っている患者を指し、全生存ならびに無進行生存を含む
。
【0041】
「全生存」という用語は、診断または処置の時から1年、5年など、規定された時間期
間の間生き残っている患者を指す。
【0042】
「無進行生存」という用語は、がんが進行せずに生き残っている患者を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「生存を延長すること」という用語は、i)未処置患者、
ii)化合物Aおよび化合物Bの両方未満で処置された患者、またはiii)対照処置プ
ロトコールに相対して、処置患者における全生存または無進行生存を増加させることを意
味する。生存は、処置の開始に続いてまたはがんの初期診断に続いて1カ月、6カ月、1
年、5年または10年など、規定された時間期間モニタリングされる。
【0044】
「原発腫瘍」または「原発病変」という用語は、本来のがんを意味しており、患者体内
の別の組織、器官または位置に位置される転移性の腫瘍または病変を意味していない。
【0045】
一実施形態において、化合物Aの用量は、最大耐用投与量が達せられるまで漸増され、
本発明の化合物Bは、固定用量で投与される。代替として、化合物Aは固定用量で投与す
ることができ、化合物Bの用量は漸増され得る。各患者は、化合物Aおよび/または化合
物Bの用量を毎日または間欠的のいずれかで受けることができる。処置の効力は、このよ
うな研究において、例えば、12週後、18週後または24週後に、6週毎の症状スコア
の評価によって決定することができる。
【0046】
化合物Aは、国際公開第2013/016081号パンフレットに記載されている手順
によって調製することができる。
【0047】
化合物Bは、国際公開第2012/057039号パンフレットに記載されている手順
によって調製することができる。
【0048】
以下の実施例は、単独で化合物A、単独で化合物Bの各々ならびに化合物Aおよび化合
物Bの組合せの活性を例示する。
【実施例】
【0049】
[生物学的実施例1]
A2780は、ヒト卵巣細胞株(Sigma-Aldrich)である。該細胞を培養
培地中にて37℃で5% CO2中、雰囲気中の湿度で成長させる。A2780ヒト卵巣
癌腫のための細胞培養培地はRPMI-1640(フェノールレッドを用いない)であり
、2.05mMのL-グルタミン、0.01mg/mlのインスリンおよび10% ウシ
胎児血清(FBS)が添加されている。
【0050】
インビボ効力および効果を評価するため、1:1のMatrigel(登録商標)ミッ
クス(0.2mLの体積)中のA2780(2×106)細胞を、皮下注射によって6~
8週齢の胸腺欠損ヌード雌性マウス(Harlan Laboratories)の後脚
に移植する。合計7匹から10匹のマウスを各群に使用する。移植直前に、動物に照射す
る(450全身照射)。マウスに正常固形飼料を無制限に給餌した。腫瘍サイズが150
±50mm3に達した時に、0.2mLの体積で化合物Aもしくはビヒクル(0.25%
Tween(登録商標)80中1%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-
CMC))または1% ヒドロキシエチルセルロース(HEC)/0.25% Twee
n(登録商標)80/0.05% 消泡剤中の化合物Bもしくはそれらのビヒクルの経口
投与(胃管栄養法)を用いて、処置を開始し、これはこの場合、腫瘍測定が研究9日目に
行われた後であった。化合物Aを4mg/kgまたは8mg/kgで月曜日、水曜日およ
び金曜日のスケジュールにて4週間投与し、化合物Bを15mg/kgまたは30mg/
kgで毎日、28日間投与した。腫瘍成長および体重を、時間をかけてモニタリングする
ことで、毒性の効力および兆候を評価する。腫瘍の二次元測定を週2回行い、腫瘍体積を
以下の式に基づいて算出する:(腫瘍体積)=[(L)×(W2)×(Π/6)]、ここ
で、Lは軸中央長さであり、Wは軸中央幅である。腫瘍体積データを対数スケールに変換
することで、時間および処置群にわたる変動を均等化する。SAS(商標)ソフトウェア
(バージョン8.2)におけるMIXED(商標)手順を使用して、時間および処置によ
る変動の二方向反復測定分析を用いて、対数体積データを分析する。反復測定のための相
関モデルは、spatial powerである。腫瘍体積スケールに対して逆対数化さ
れた、反復測定分析からの最小二乗平均を、表1に示す。研究36日目に各対群を比較す
るためのP値を表2に示す。試験群は以下である:
01:対照:1% HEC/0.25% Tween80/0.05% 消泡剤;1%
CMC/0.25% Tween80/0.05% 消泡剤;
02:化合物A 8mg/kg;
03:化合物B 30mg/kg;
04:ラパマイシン 4mg/kg;
05:化合物A 8mg/kgおよび化合物B 30mg/kg;
06:化合物A 4mg/kgおよび化合物B 30mg/kg;
07:化合物B 15mg/kgおよび化合物A 8mg/kg;
08:化合物B 15mg/kgおよび化合物A 4mg/kg;
09:化合物A 8mg/kgおよびラパマイシン 4mg/kg。
【0051】
【0052】
【0053】
表2は、化合物Aおよび化合物Bの組合せが、この試験において、単独で化合物Aおよ
び化合物Bの各々を上回る統計的に有意な腫瘍成長阻害結果を示したことを示している(
群5対いずれか群2または群3)。
【0054】
組合せ分析方法
前に記載されている反復測定分析を使用して、対比記述を使用することで、組み合わさ
れた2つの特定の処置を使用する研究36日目の相互作用効果について試験する。この試
験は、p=0.022で統計的に有意であり、組合せ群における推定平均腫瘍体積(35
8mm3)が、Bliss Independence方法での予想相加腫瘍体積(16
16×1664/3711=725mm3)未満であるため、相加的または相乗的よりも
良好な活性を実証している。
【0055】
臨床評価
進行固形腫瘍または転移性固形腫瘍を有する患者における、8-[5-(1-ヒドロキ
シ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル
]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン
化合物Bとの組合せにおける4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7
S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]
ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミド
水和物、化合物Aの研究。
【0056】
研究設計
この研究は、様々な固形腫瘍由来の進行/転移性がんを有する患者における用量漸増相
、続いて特定の腫瘍型における用量確認相からなる多施設非無作為化非盲検研究である。
用量漸増相において、適格患者は、クラスIホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(
PI3K)との組合せにおいてTIWで経口的に与えられる化合物A、および12時間毎
に経口的に与えられる哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)(PI3K/mT
OR)阻害剤化合物Bを、28日サイクルで受ける。化合物Bの単一用量も、PK評価の
ために3日のリードイン期間中(用量漸増相のみ)1日目に与えられる。用量確認相にお
いて、各々進行結腸がんもしくは転移性結腸がんまたは軟組織肉腫を有するおよそ10人
の患者が処置される。結腸がん患者は、Notch経路シグナル伝達に関連する突然変異
、増幅または遺伝子発現変更を有することが必要とされる。
【0057】
研究目的
この研究の一次目的は、PI3K/mTOR阻害剤化合物B抗がん剤との個々の組合せ
における、化合物Aの推奨第2相用量を決定することである。
【0058】
該研究の二次目的は、国立がん研究所(NCI)有害事象共通用語規準(CTCAE)
v4.0によって判定される通りの、化合物Bとの組合せにおける化合物Aの安全性およ
び毒性プロファイルを特徴付けること;化合物Aとの組合せにおける化合物BのPKパラ
メータを推定すること;化合物Bとの組合せにおける化合物Aを用いて観察された任意の
抗腫瘍活性を報告すること;ならびに応答および無進行生存(PFS)の持続期間を判定
することである。
【0059】
探索目的は、Notch活性を示すバイオマーカーに対する化合物Aの薬力学的(PD
)効果または化合物Bの薬力学的(PD)効果を探索すること;化合物Bとの組合せにお
ける化合物Aを用いる処置効果を判定するためのポジトロン放出断層撮影法(PET)走
査の有用性を探索すること、;コルチゾールおよび6β-ヒドロキシコルチゾールなどの
シトクロムP450(CYP)酵素の誘発に関連する予測バイオマーカーを探索すること
;ならびにNotchシグナル伝達経路および薬物標的経路に関連するバイオマーカー、
免疫機能化、研究薬物(単数または複数)または疾患状態の作用機序、ならびに該研究の
目的とのそれらの潜在的関連性について、腫瘍組織および血液を評価することである。
【0060】
トライアル薬物
28日サイクルで1週に3回投与し、投与する日には1日1回経口投与するための25
mgおよび50mgのカプセルとしての、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-
2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3
-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]
ブタンアミド水和物(化合物A)。
【0061】
28日サイクル中およそ12時間毎の慢性/連続的処置としての経口投与のための、1
00mgもしくは200mgのカプセルとしてまたは50mg、100mg、150mg
もしくは200mgの錠剤として、8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピ
リジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-
ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン(化合物B)。用量漸増の
ため、化合物Bの単一用量を3日のリードイン期間中1日目に投与し、28日サイクルの
1日目から28日目にB.I.D.で投与する。
【0062】
処置/投薬の予定持続期間
用量漸増研究であるという性質によって、データは、組合せの最大耐用量(MTD)が
決定されるまで、継続的に評価される。用量漸増は、3+3方法によって推進される。
【0063】
各新用量レベルは、それに登録された最小3人の患者を有する。1人の患者が、任意の
用量レベルにて、化合物Aの第1のサイクル内で用量制限毒性(DLT)を経験すれば、
最大3人までの追加患者が、その用量レベルで登録される。DLTが、任意の用量レベル
で2人以上の患者において観察されれば、用量漸増は終わり、前の用量レベルがMTDと
宣言されるか、またはスポンサーと調査者との間の考察に続いて、追加患者が前の用量レ
ベルと現在の用量レベルとの間の中間用量で処置され得るかのいずれかである。
【0064】
用量漸増中、化合物Aの開始用量は25mg TIWであり、化合物Bの開始用量は1
50mg BIDである。用量漸増は、表3に従って進むようにスケジューリングされる
。
【0065】
【0066】
評価のための基準
安全性:NCI CTCAE、バージョン4.0、用量制限毒性(DLT)。
効力:各患者は、腫瘍測定についての以下の放射線学的試験の1つまたは複数によって
判定される:コンピューター断層撮影(CT)走査;磁気共鳴画像法(MRI);および
PET走査(用量前および用量後)。各患者の完全な疾患程度は以下を用いても判定され
る:
RECIST 1.1(Eisenhauer et al., Eur. J. Cancer, 2009; 45(2): 228-247
)による腫瘍測定。軟組織肉腫を有する患者における腫瘍測定評価のため、Choi et al.,
J. Clin. Oncol., 2007; 25(13): 1753-1759応答基準が、RECIST 1.1に加え
て使用される。ニューロ-腫瘍学(RANO)基準における応答判定は、神経膠芽腫患者
のために使用される(Wen et al., J. Clin. Oncol., 2010; 28(11): 1963-1972);
必要であれば、腫瘍マーカーの評価;
パフォーマンスステータスの評価(Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG ); Ok
en et al., Am. J. Clin. Oncol., 1982; 5: 649-655)。
【0067】
客観的応答を確認するため、全ての病変は放射線学的に判定されるべきであり、初期応答決定のために使用される同じ放射線学的方法は、ベースライン時に使用された試料方法を使用する客観的応答の初期観察に続いて少なくとも4週反復されるべきである。患者が研究から中断される場合、進行性疾患の明らかな臨床的兆候が存在するならば反復放射線学判定は省くことができる。
本発明は、下記の態様を含む。
<1>
有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および有効量の8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする患者に投与することを含む、患者におけるT細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がんであるがんを処置する方法。
<2>
前記がんが卵巣がんである、<1>に記載の方法。
<3>
有効量の4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および有効量の8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を、同時に、別々にまたは逐次に投与することを含む、処置を必要とする患者においてT細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がんであるがんを処置する方法。
<4>
前記がんが卵巣がんである、<3>に記載の方法。
<5>
T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がんの処置における、同時、別々または逐次の使用のための、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩。
<6>
前記がんが卵巣がんである、<5>に記載の使用。
<7>
T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、卵巣がん、メラノーマ、肺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肉腫、デスモイド腫瘍、腺様嚢胞癌腫、結腸直腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、前立腺がん、肝臓がんまたは皮膚がんの同時、別々または逐次の処置のための医薬の製造のための、4,4,4-トリフルオロ-N-[(1S)-2-[[(7S)-5-(2-ヒドロキシエチル)-6-オキソ-7H-ピリド[2,3-d][3]ベンゾアゼピン-7-イル]アミノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩の使用。
<8>
前記がんが卵巣がんである、<7>に記載の使用。