(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】電気刺激の正確な送達
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2021203003
(22)【出願日】2021-12-15
(62)【分割の表示】P 2019538140の分割
【原出願日】2017-12-21
【審査請求日】2021-12-15
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,デービッド・エル
(72)【発明者】
【氏名】オーサー,ヘザー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】スイルマン,デール・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ガッツマン,ケネス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロクスターカンプ,グレゴリー・ジェイ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0144190(US,A1)
【文献】特表平11-514554(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0190850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実行されたときに、医療デバイスの1つまたは複数のプロセッサに、
前記医療デバイスが患者に電気刺激を送達するために使用する
、クロックと
、当該クロックと連動したカウンタ
、を維持させ、
前記カウンタ及びクロックが前記患者に電気刺激を送達するために前記医療デバイスによって使用されることを行い、
前記患者
から受信された感知された電気信号の1つまたは複数の
波形を取得させ、
特定の時刻において測定された感知された電気信号の前記1つまたは複数の波形が、前記特定の時刻における、前記カウンタのカウントとタグ付けされることを行い、
前記患者
から受信された前記感知された電気信号の前記1つまたは複数の
波形に基づいて、
刺激を前記患者に送達する前記カウンタのカウントを識別させ、
前記カウンタのカウントが、前記カウンタの前記識別されたカウント
に到達することに基づいて前記患者に電気刺激を送達させ
、
前記患者が、周期的な電気的活動を示す場合に、前記周期的な電気的活動の特定の点又は位相と一致することが予測される将来のカウントに基づいて、電気的刺激の将来の送達を予測させる、
命令を格納する、コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項2】
前記周期的な電気的活動の特定の点又は位相が、脳波の、シータ波のピーク、又は、シータ波の谷を含む、請求項1に記載のコンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項3】
前記カウントを識別するステップが、
前記1つまたは複数のプロセッサが、前記患者の活動と一致すると予測される前記カウンタのカウントを識別するステップを含む、請求項1又は
2に記載の
コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項4】
前記患者の前記活動が、前記患者の脳のシータ波のピークを含む、請求項3に記載の
コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項5】
前記患者の前記活動が、前記患者の電気信号において周期信号中の点を含む、請求項3に記載の
コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項6】
前記患者の前記活動が、前記患者の電気信号において周期信号中の位相を含む、請求項3に記載の
コンピュータ可読ストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照
本願は、ともにその全体を参照により本明細書に組み込む、2017年1月13日出願の米国仮出願第62/445996号、および2017年12月20日出願の米国仮出願第15/848291号の利益を主張するものである。
【0002】
[0002]政府の利益
本発明は、DARPAにより提供されるprime award番号N66001-14-2-4-31、sub-award番号56400の下で政府の利益を伴って行われたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
[0003]本開示は、電気刺激治療に関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]脳深部刺激療法(DBS)、脊髄刺激療法(SCS)、骨盤刺激療法、胃刺激療法、末梢神経刺激療法、機能的電気刺激療法、あるいは医薬品、インシュリン、鎮痛剤、または抗炎症剤の患者の体内の目標組織部位への送達など、様々な治療分野で使用される電気刺激装置または治療薬送達デバイスなどの埋込み型医療デバイスが提案されている。いくつかの治療システムでは、埋込み型電気刺激装置は、医療リードによって、かつ/または電気刺激装置の筐体上に、あるいはその両方で配置することができる1つまたは複数の電極を援用して患者の体内の目標組織部位に対して電気治療を送達する。
【0005】
[0005]医療デバイスの埋込み中に行われることもあるプログラミング期間中、試験期間中、あるいは医療デバイスを患者に埋め込んだ後の院内または遠隔の経過観察期間中に、臨床医が、当該患者に有効な治療を提供することが判明した1つまたは複数の治療プログラム(治療パラメータセットとも呼ばれる)を作成することがある。ここで、各治療プログラムは、治療パラメータのセットの値を定義することもある。医療デバイスは、1つまたは複数の格納した治療プログラムに従って、患者に対して治療を送達することができる。電気刺激療法の場合には、治療パラメータは、送達される電気刺激波形の特徴を定義することがある。電気刺激が電気パルスの形態で送達される例では、例えば、治療パラメータは、電極の組合せおよび電極の極性を含む電極構成、電流の振幅であることも電圧の振幅であることもある振幅、パルス幅、およびパルスレートを含むことがある。
【0006】
[0006]いくつかの医療デバイスは、生体電気脳信号などの患者のパラメータを感知するように構成される。感知した患者のパラメータは、医療デバイスによる治療送達を制御するなど、様々な目的に使用される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の一実施例は、例えば、電気刺激の正確な送達に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0007]1つの例では、電気刺激治療の送達を制御する方法は、患者に電気刺激を送達するように構成された医療デバイスの1つまたは複数のプロセッサが、医療デバイスが患者に電気刺激を送達するために使用するクロックと連動したカウンタを維持するステップと、1つまたは複数のプロセッサが、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を取得するステップと、1つまたは複数のプロセッサが、患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別するステップと、医療デバイスが、カウンタの識別されたカウントに基づいて患者に電気刺激を送達するステップと、を含む。
【0009】
[0008]別の例では、医療デバイスは、患者についての感知された電気信号の表現を格納するように構成されたメモリと、1つまたは複数のプロセッサとを含む。この例では、1つまたは複数のプロセッサは、医療デバイスが患者に電気刺激を送達するために使用するクロックと連動したカウンタを維持し、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を取得し、患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別し、カウンタの識別されたカウントに基づいて患者に電気刺激を送達するように構成される。
【0010】
[0009]別の例では、コンピュータ可読ストレージ媒体は、実行されたときに、医療デバイスの1つまたは複数のプロセッサに、医療デバイスが患者に電気刺激を送達するために使用するクロックと連動したカウンタを維持させ、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を取得させ、患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別させ、カウンタの識別されたカウントに基づいて患者に電気刺激を送達させる命令を格納する。
【0011】
[0010]別の例では、医療デバイスは、医療デバイスが患者に電気刺激を送達するために使用するクロックと連動したカウンタを維持する手段と、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を取得する手段と、患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別する手段と、カウンタの識別されたカウントに基づいて患者に電気刺激を送達する手段とを含む。
【0012】
[0011]別の例では、電気刺激治療の送達を制御する方法は、デバイスのテレメトリモジュールが、患者に電気刺激を送達するために医療デバイスによって使用されるクロックと連動したカウンタを維持する医療デバイスから、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を受信するステップと、デバイスの1つまたは複数のプロセッサが、患者についての感知された電気信号の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別するステップと、テレメトリモジュールが、カウンタの識別されたカウントに基づいて刺激を送達するコマンドを医療デバイスに出力するステップとを含む。
【0013】
[0012]別の例では、医療デバイスプログラマは、患者に電気刺激を送達するために医療デバイスによって使用されるクロックと連動したカウンタを維持する医療デバイスと通信するように構成されたテレメトリモジュールと、1つまたは複数のプロセッサとを含む。この例では、1つまたは複数のプロセッサは、テレメトリモジュールを介して、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を医療デバイスから受信し、患者についての感知された電気信号の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別し、テレメトリモジュールを介して、カウンタの識別されたカウントに基づいて刺激を送達するコマンドを医療デバイスに出力するように構成される。
【0014】
[0013]別の例では、コンピュータ可読ストレージ媒体は、実行されたときに、医療デバイスプログラマの1つまたは複数のプロセッサに、医療デバイスプログラマのテレメトリモジュールを介して、患者に電気刺激を送達するために医療デバイスによって使用される
クロックと連動したカウンタを維持する医療デバイスから、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を受信させ、患者についての感知された電気信号の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別させ、テレメトリモジュールを介して、カウンタの識別されたカウントに基づいて刺激を送達するコマンドを医療デバイスに出力させる命令を格納する。
【0015】
[0014]別の例では、医療デバイスプログラマは、患者に電気刺激を送達するために医療デバイスによって使用されるクロックと連動したカウンタを維持する医療デバイスから、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を受信する手段と、患者についての感知された電気信号の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別する手段と、カウンタの識別されたカウントに基づいて刺激を送達するコマンドを医療デバイスに出力する手段とを含む。
【0016】
[0015]別の例では、システムは、患者に電気刺激を送達するために医療デバイスによって使用されるクロックと連動するカウンタを維持するように構成された医療デバイスと、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別するように構成された1つまたは複数のプロセッサとを含む。この例では、医療デバイスは、識別されたカウントに基づいて患者に刺激を送達するように構成される。
【0017】
[0016]1つまたは複数の例の詳細を、添付の図面および以下の説明に記載する。本開示のその他の特徴、目的、および利点は、この説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】[0017]患者の脳内の組織部位に電気刺激治療を送達するように構成された例示的な脳深部刺激(DBS)システムを示す概念図である。
【
図2】[0018]例示的な医療デバイスの構成要素を示す機能ブロック図である。
【
図3】[0019]例示的な医療デバイスプログラマの構成要素を示す機能ブロック図である。
【
図4A】[0020]電気刺激治療の例示的な送達を示すグラフである。
【
図4B】電気刺激治療の例示的な送達を示すグラフである。
【
図5】[0021]本開示の1つまたは複数の技術による、正確な時点に患者に電気刺激を送達する例示的な技術を示す流れ図である。
【
図6】[0022]本開示の1つまたは複数の技術による、正確な時点における患者への電気刺激の送達を制御する例示的な技術を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0023]一般に、本開示は、正確な時点に患者に電気刺激を送達するデバイス、システム、および方法を対象とする。デバイスは、開ループまたは閉ループ技術を用いて電気刺激を患者に送達することができる。いずれの場合も、刺激を送達すると決定したことに応答して、デバイスは、電気刺激を生成して送達することができる。いくつかの例では、デバイスは、直ちに電気刺激を送達することができる。しかし、いくつかの例では、デバイスが将来の正確な時点に電気刺激を送達することが望ましいこともある。例えば、デバイスが電気刺激の送達を患者の活動(例えば、外部源からのピーク振戦および/または患者の脳の電気的活動)と同期させることが望ましいこともある。ただし、デバイスが電気刺激を送達すると決定したことに応答して直ちに電気刺激を送達するように構成されている場合には、処理および/または通信の遅延が、電気刺激の時間的に正確な送達を妨げることがある。シータ刺激の例では、2Hzから8Hzのシータ波の周波数では、この波のピークで必ず刺激を送達するためには、30msより小さい時間域で刺激を送達する必要があることがある。処理および通信の変動は数百ミリ秒で起こることがあるので、時間的に正確に電気刺激を送達することができることは、デバイスのエネルギーを節約し、かつ/または治療を最適化する上で重要であることがある。
【0020】
[0024]本開示の1つまたは複数の技術によれば、デバイスは、特定の時点に患者に電気刺激を送達するコマンドを実行することができる。いくつかの例では、このコマンドは、デバイスが電気刺激を送達するために使用するクロックと連動するティックカウンタのカウントを識別することができる。このクロックは、デバイスの刺激エンジンを形成し、かつ/または実行する1つまたは複数のプロセッサによって使用されるクロック信号であることもある。いくつかの例では、このデバイスは、クロックのサイクルごとにティックカウンタを増分することができる。例えば、このデバイスは、クロック信号の立ち上がり縁部または立ち下がり縁部に応答してティックカウンタを増分することがある。
【0021】
[0025]このデバイスは、ティックカウンタの識別したカウンタに基づいて、電気刺激を患者に送達することができる。例えば、このデバイスは、カウンタの識別されたカウントがカウンタの現在のカウントの後で生じることになると決定したことに応答して、識別されたカウントで電気刺激を送達することもできる。しかし、いくつかの例では、カウンタの識別されたカウントが、デバイスがそのカウントを識別するコマンドを受信したときには既に過ぎてしまっていることもある。いくつかの例では、カウンタの識別されたカウントが既に過ぎていても、識別されたカウントが生じてからそれほど経過していない場合には、デバイスが電気刺激を送達することが依然として望ましいことがある。したがって、いくつかの例では、デバイスは、カウンタの識別されたカウントが既に生じており、カウンタの現在のカウントとカウンタの識別されたカウントの間の差がしきい値カウント差を満足する(すなわち「遅れマージン」内である)と判定したことに応答して、カウンタの現在のカウントで電気刺激を送達することもある。同様に、いくつかの例では、デバイスは、カウンタの識別されたカウントが既に生じており、カウンタの現在のカウントとカウンタの識別されたカウントの間の差がしきい値カウント差を満足しないと判定したことに応答して、識別されたカウントに基づいて電気刺激を送達することを控えることもある。このように、デバイスは、刺激を送達する時間的精度を改善することができる。
【0022】
[0026]上述のように、いくつかの例では、デバイスは、閉ループ技術を用いて電気刺激を送達することがある。いくつかの技術では、デバイスは、感知した患者のパラメータに基づいて、電気刺激を患者に送達することができる。いくつかの例では、デバイスは、カウンタのカウントを基準にした患者についての感知した電気信号の表現を取得することができる。デバイスは、これらの表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別することができる。カウントの識別が、カウンタのカウントを基準にした患者についての感知した電気信号の表現に基づいているので、このデバイスは、刺激を患者に送達する将来のカウントをより良好に決定することができる。例えば、患者の周期的な活動電気的活動と同期した刺激を送達することが望ましい場合には、デバイスは、その周期的活動の特定の点または位相(例えばシータ波のピーク、シータ波の谷など)と一致すると予測される将来のカウントを識別することができる。このようにして、デバイスは、刺激が送達される時間的精度を改善することができる。
【0023】
[0027]いくつかの例では、刺激を送達するカウントの識別は、刺激装置を含むデバイスによって全体が実行されることがある。例えば、デバイスは、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知した電気信号の表現を取得し、取得した表現に基づいてカウントを識別し、識別されたカウントに基づいて電気刺激を送達することができる。刺激を送達するカウントの識別の全体を1つのデバイスによって実行することができるいくつかの例では、そのデバイスを、「埋込み」モードで動作するものと考えることができる。
【0024】
[0028]いくつかの例では、1つまたは複数の他のデバイスが、刺激を送達するカウントの識別に参加することもある。例えば、刺激装置を含むデバイスは、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知した電気信号の表現を取得し、その表現を別のデバイスに伝送(例えば有線伝送またはワイヤレス伝送)するために出力することもある。この別のデバイスは、取得した表現に基づいて、刺激を送達する将来のカウントを識別し、識別されたカウントを含むコマンドを刺激装置を含むデバイスに伝送することができる。刺激装置を含むデバイスは、このコマンドを受信し、識別されたカウントに基づいて電気信号を送達することができる。刺激を送達するカウントの識別の全体、または少なくとも一部を、刺激装置を含むデバイス以外のデバイスが行うことができるいくつかの例では、そのシステムは、「分散型」モードで動作するものと考えることができる。
【0025】
[0029]
図1は、患者12に治療を送達して患者12の疾患を管理するように構成された例示的な治療システム10を示す概念図である。患者12は、通常は、人間の患者である。ただし、場合によっては、治療システム10は、人間以外の他の哺乳類または非哺乳類の患者に適用されることもある。
図1に示す例では、治療システム10は、医療デバイスプログラマ14と、埋込み型医療デバイス(IMD)16と、リード延長部18と、電極のセット24および26をそれぞれ備える1つまたは複数のリード20Aおよび20B(「リード20」と総称する)とを含む。IMD16は、電気刺激治療を生成して、リード20Aの1つまたは複数の電極24および20Bの1つまたは複数の電極26を介して患者12の脳28の1つまたは複数の領域に送達するように構成された刺激生成器を含む。
【0026】
[0030]
図1に示す例では、治療システム10は、IMD16が、例えば脳28の硬膜下の組織部位、または1つもしくは複数の枝もしくは節、あるいは繊維の走行の合流点など、脳28内の組織に直接電気刺激治療を送達するように構成されるので、脳深部刺激(DBS)システムと呼ばれることもある。他の例では、リード20は、脳28の表面(例えば脳28の皮質表面)に治療を送達するように位置決めされることもある。例えば、いくつかの例では、IMD16は、例えば脳28の皮質内の1つまたは複数の組織部位に電気刺激を送達することによって、皮質刺激治療を患者12に提供することがある。別の例として、IMD16は、1つまたは複数の迷走神経組織部位に電気刺激を送達することによって、迷走神経刺激(VNS)療法を患者12に提供することもある。
【0027】
[0031]DBSは、限定されるわけではないが、患者12の発作疾患(例えば癲癇)、痛み、偏頭痛、精神疾患(例えば大鬱病性障害(MDD)、双極性障害、不安障害、外傷後ストレス障害、気分変調症、および強迫性障害(OCD))、行動異常、気分障害、記憶障害、精神障害、運動障害(例えば突発性振戦またはパーキンソン病)、ハンチントン病、アルツハイマー病、あるいはその他の神経性または精神性疾患または障害など、様々な患者の状態を治療または管理するために使用される可能性がある。
【0028】
[0032]脳28、または患者12の体内の別の適当な治療送達目標部位への治療の送達によってその他の患者の状態を治療するように構成された治療システムも、本明細書に開示する技術に従って使用することができる。例えば、治療システム10の他の応用分野では、患者12の体内の治療送達目標部位は、患者12の体内の脊髄または仙骨神経(例えばS2、S3、またはS4の仙骨神経)、あるいは患者12の体内のその他の任意の適当な神経、器官、筋肉、または筋群の近傍の位置であることもあり、これらは、例えば患者の状態に基づいて選択することができる。例えば、治療システム10は、陰部神経、会陰神経、またはその他の神経系の領域の近傍の組織に電気刺激または治療薬を送達するために使用されることもあり、その場合には、リード20は、それぞれの神経の近傍に埋め込まれ、実質的に固定されることになる。さらに別の例では、電気刺激システムは、末梢神経障害または術後疼痛緩和を管理するのを助けるための刺激、腸骨鼠径神経刺激、肋間神経刺激、胃運動障害および肥満を治療するための胃刺激、排尿機能障害、排泄機能障害、性機能障害、その他の末梢神経痛および限局痛(例えば脚の痛みまたは背中の痛み)の緩和のための筋肉刺激を送達するように位置決めされることもある。
【0029】
[0033]
図1に示す例では、IMD16は、患者12の胸筋領域の皮下ポケット内に埋め込まれることがある。他の例では、IMD16は、患者12の腹部または臀部の皮下ポケットあるいは患者12の頭蓋の近傍の皮下ポケットなど、患者12の他の領域内に埋め込まれることもある。埋め込まれたリード延長部18は、コネクタブロック30(ヘッダとも呼ばれる)を介してIMD16に結合され、このコネクタブロック30は、例えば、リード延長部18上のそれぞれの電極に電気的に結合する電気接点を含むことがある。電気接点は、リード20に担持される電極24および26をIMD16に電気的に結合する。リード延長部18は、患者12の胸腔内のIMD16の埋込み部位から患者12の首に沿って延び、患者12の頭蓋を通って脳28に達する。IMD16は、体液によって腐食および劣化しにくい生体適合性材料で構成することができる。IMD16は、プロセッサ、治療モジュール、およびメモリなどの構成要素を実質的に封入する気密筐体34を含むこともある。
【0030】
[0034]
図1に示す例では、リード20は、実装する治療システム10の管理対象の患者の状態の種類など、多くの要因に基づいて選択することができる脳28の1つまたは複数の領域に電気刺激を送達するために、脳28の右半球および左半球内にそれぞれ埋め込まれる。リード20およびIMD16のその他の埋込み部位も考えられる。例えば、IMD16が、頭蓋32上、または頭蓋32内に埋め込まれることも、リード20が、同じ半球内の複数の目標組織部位に埋め込まれることも、あるいはIMD16が、脳28の一方または両方の半球に埋め込まれた1本のリードに結合されることもある。
【0031】
[0035]リード20は、脳28内の1つまたは複数の目標組織部位に電気刺激を送達して、患者12の疾患に関連する患者の症状を管理するように位置決めされることがある。リード20は、患者12の頭蓋骨のそれぞれの穿頭孔を通す、または頭蓋32の共通の穿頭孔を通すなど、任意の適当な技術を介して、電極24および26を脳28の所望の位置に位置決めするように埋め込まれることもある。リード20は、電極24および26が治療中に脳28内の治療送達目標部位に電気刺激を提供することができるように、脳28内の任意の位置に配置することができる。様々な神経性または精神性疾患は、脳28の領域の1つまたは複数の活動と関連している可能性があり、それは患者によって異なる可能性がある。したがって、リード20によって送達される電気刺激治療の治療送達目標部位は、患者の状態に基づいて選択することができる。例えば、患者12の運動障害を制御するのに適した脳28内の治療送達目標部位は、大脳脚橋被蓋核(pedunculopontine nucleus)(PPN)、視床、大脳基底核構造(例えば淡蒼球、黒質、または視床下核)、不確帯、繊維路、レンズ核束(およびその枝)、レンズ核ワナ、またはフォレル野(視床束)を含む可能性がある。PPNは、脚橋被蓋核(pedunculopontine tegmental nucleus)と呼ばれることもある。
【0032】
[0036]別の例として、MDD、双極性障害、OCD、またはその他の不安障害の場合には、リード20は、脳28の内包の前肢および内包の前肢の腹側部(VC/VSとも呼ばれる)のみ、帯状皮質の前帯状部分(CG25と呼ばれることもある)、前帯状皮質のブロードマン領野32および24、背外側および内側の前頭前皮質(PFC)(例えばブロードマン領野9)、腹内側前頭前皮質(例えばブロードマン領野10)、側方および内側の眼窩前頭皮質(例えばブロードマン領野11)を含む前頭前皮質の様々な部分、内側または中隔側坐核、視床、視床髄板内核、扁桃体、海馬、外側視床下部、青斑核、背側縫線核、腹側被蓋野、黒質、視床下核、下視床脚、視床の背側内側核、手綱、分界条床核、あるいはそれらの任意の組合せに電気刺激を送達するように埋め込まれることもある。
【0033】
[0037]別の例として、発作疾患またはアルツハイマー病の場合には、例えば、リード20は、例えば視床前核、内包、帯状体、脳弓体、乳頭体、乳頭体視床路(乳頭体視床束)、または海馬など、Papez回路内の領域に電気刺激を送達するように埋め込まれることもある。
【0034】
[0038]別の例として、パーキンソン病の場合には、例えば、リード20は、単側的または両側的に視床下核(STN)内の領域に電気刺激を送達するように埋め込まれることもある。患者12の脳28内に位置していない治療送達目標部位も考えられる。
【0035】
[0039]
図1では、リード20は共通のリード延長部18に結合されるものとして示してあるが、他の例では、リード20は、別個のリード延長部を介してIMD16に結合されることも、あるいは直接IMD16に結合されることもある。さらに、
図1では、システム10を、リード延長部18を介してIMD16に結合された2本のリード20Aおよび20Bを含むものとして示しているが、いくつかの例では、システム10は、リードを1本しか含まないことも、あるいは3本以上含むこともある。
【0036】
[0040]
図1に示す例では、リード20の電極24および26は、リング電極として示してある。リング電極は、比較的容易にプログラムすることができ、リード20に近接する任意の組織に電界を送達することができる可能性がある。他の例では、リード20の電極24、26は、異なる構成を有することもある。例えば、リード20の電極24、26の1つまたは複数は、インタリーブ型刺激などの成形された電界を生成することができる複雑な電極アレイの幾何学的形状を有することもある。複雑な電極アレイの幾何学的形状の例は、リードの長さに沿った異なる軸方向位置、およびリードの周囲などの外周の周りの異なる角度位置に位置決めされた電極のアレイを含む可能性がある。複雑な電極アレイの幾何学的形状は、リング電極に加えて、またはリング電極の代わりに、各リード20の外周の周りの複数の電極(例えば部分的なリング電極または分割電極)を含むこともある。このようにして、電気刺激を、リード20から特定の方向に向けて、治療効果を向上させ、大きな体積の組織を刺激することによる有害な副作用の可能性を低下させることができる。さらに別の例として、電極は、パドルリードまたは円筒形リード上に担持されることがあるパッド電極であってもよい。
【0037】
[0041]いくつかの例では、IMD16の外側筐体34は、1つまたは複数の刺激電極および/または感知電極を含むことがある。例えば、筐体34が、IMD16が患者12に埋め込まれたときに患者12の組織に対して露出する導電性材料を含むこともできるし、あるいは、電極を筐体34に取り付けることもできる。他の例では、リード20は、アクティブまたはパッシブな先端構成を有する
図1に示すような細長い円筒以外の形状を有することもある。例えば、リード20は、パドルリード、球形リード、屈曲可能リード、または患者12の治療に有効なその他の任意のタイプの形状とすることができる。
【0038】
[0042]IMD16は、1つまたは複数の刺激治療プログラム(本明細書では「刺激パラメータ値のセット」とも呼ぶ)に従って患者12の脳28に電気刺激治療を送達することができる。刺激治療プログラムは、IMD16の刺激生成器によって生成され、IMD16から1つまたは複数の電極24、26を介して患者12の体内の治療送達目標部位に送達される治療についての1つまたは複数の電気刺激パラメータ値を規定することができる。電気刺激パラメータは、電気刺激治療の特徴を規定することができ、例えば、電気刺激信号の電圧または電流の振幅、電気刺激の電荷レベル、電気刺激信号の周波数、波形の形状、およびオン/オフ繰返し状態(例えば繰返しが「オフ」である場合には、刺激は常にオンであり、繰返しが「オン」である場合には、刺激はオンとオフを繰り返す)を含む可能性があり、さらに電気刺激パルスの場合には、パルスレート、パルス幅、および持続時間または衝撃係数などその他の適当なパラメータなどを含む可能性がある。さらに、異な
る電極が刺激の送達に利用可能である場合には、治療プログラムの治療パラメータは、選択される電極24および26と、それらの極性とを規定することができる電極の組合せによってさらに特徴付けられることがある。いくつかの例では、刺激は、連続的な波形を用いて送達されることもあり、刺激パラメータは、その波形を規定することがある。
【0039】
[0043]患者12の疾患を管理するために治療を送達するように構成されるだけでなく、治療システム10は、患者の生体電気脳信号または別の生理学的パラメータを感知するように構成されることもある。例えば、IMD16は、電極24、26のサブセット、または別の電極セット、あるいはその両方を介して脳28の1つまたは複数の領域内の生体電気脳信号を感知するように構成された感知モジュールを含むこともある。したがって、いくつかの例では、電極24、26は、治療モジュールから脳28内の目標部位に電気刺激を送達するだけでなく、脳28内の脳信号を感知するために使用されることもある。ただし、IMD16は、別個の感知電極のセットを使用して、生体電気脳信号を感知することもできる。いくつかの例では、IMD16の感知モジュールは、脳28に電気刺激を送達するためにも使用される電極24、26のうちの1つまたは複数を介して生体電気脳信号を感知することもある。他の例では、電極24、26のうちの1つまたは複数が、生体電気脳信号を感知するために使用され、1つまたは複数の異なる電極24、26が、電気刺激を送達するために使用されることもある。
【0040】
[0044]外部医療デバイスプログラマ14は、治療情報を提供する、または取り出す必要があるときに、IMD16とワイヤレス通信するように構成される。プログラマ14は、例えば臨床医および/または患者12などのユーザがIMD16と通信するために使用することができる外部コンピューティングデバイスである。例えば、プログラマ14は、臨床医がIMD16と通信して、IMD16用の1つまたは複数の治療プログラムをプログラムするために使用する臨床医プログラマであることもある。これに加えて、またはその代わりに、プログラマ14は、患者12がプログラムを選択し、かつ/または治療パラメータ値を見て修正することを可能にする患者プログラマであることもある。臨床医プログラマは、患者プログラマよりも多くのプログラミング機能を含む可能性がある。換言すれば、訓練を受けていない患者がIMD16に望ましくない変更を加えることを防止するために、より複雑または繊細な作業は、臨床医プログラマによってのみ可能となるようになっていることもある。
【0041】
[0045]プログラマ14は、ユーザが見ることができるディスプレイと、プログラマ14に入力を与えるためのインタフェース(すなわちユーザ入力機構)とを備えた手持ち型コンピューティングデバイスであることもある。例えば、プログラマ14は、ユーザに情報を提示する小型ディスプレイスクリーン(例えば液晶ディスプレイ(LCD)または発光ダイオード(LED)ディスプレイ)を含むことがある。さらに、プログラマ14は、タッチスクリーンディスプレイ、キーパッド、ボタン、周辺機器のポインティングデバイス、音声起動、またはユーザがプログラマ14のインタフェース内を自由に移動して入力を与えることを可能にするその他の入力機構を含む可能性がある。プログラマ14がボタンおよびキーパッドを含む場合には、ボタンが、例えば電源ボタンなど、特定の機能を実行するための専用であることもあるし、ボタンおよびキーパッドが、ユーザが現在見ているユーザインタフェースの部分に応じて機能が変化するソフトキーであることもあるし、あるいはそれらを任意に組み合わせた形態であることもある。
【0042】
[0046]他の例では、プログラマ14は、専用のコンピューティングデバイスではなく、さらに大型のワークステーション、または別の多機能デバイス内の別個のアプリケーションであることもある。例えば、多機能デバイスは、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、ワークステーション、1つまたは複数のサーバ、携帯電話、携帯情報端末、あるいはコンピューティングデバイスが安全な医療デバイスプログラマ14として動
作することを可能にするアプリケーションを実行することができる別のコンピューティングデバイスであることもある。コンピューティングデバイスに結合されたワイヤレスアダプタが、コンピューティングデバイスとIMD16の間の安全な通信を可能にすることもある。
【0043】
[0047]プログラマ14が臨床医によって使用されるように構成されているときには、プログラマ14は、プログラミング情報をIMD16に伝送するために使用されることもある。プログラミング情報は、例えば、リード20のタイプ、リード20上の電極24、26の構成、脳28内のリード20の位置、治療パラメータ値を規定する1つまたは複数の治療プログラム、1つまたは複数の電極24、26の治療可能時間域、およびIMD16をプログラムするために有用である可能性があるその他の任意の情報などのハードウェア情報を含む可能性がある。プログラマ14は、機能試験を完了する(例えばリード20の電極24、26のインピーダンスを測定する)ことが出来ることもある。
【0044】
[0048]臨床医は、プログラマ14を援用して、治療プログラムを生成し、IMD16内に格納することもできる。プログラマ14は、有益である可能性がある治療パラメータ値を識別するシステムを提供することによって、臨床医が治療プログラムの作成/識別を行うのを支援することができる。例えば、プログラミング期間中に、プログラマ14は、患者に治療を送達するための電極の組合せを自動的に選択することがある。いくつかの例では、治療プログラムの少なくともいくつかが、同じ電極の組合せを有し(ただし少なくとも1つの他の治療パラメータの値は異なる)、これらの治療プログラムが、同じ電極の組合せをそれぞれが有する複数のサブセットに編成されることがある。プログラマ14のプロセッサは、各サブセットについて最も有効な治療プログラムを選択し、選択した治療プログラムのリストを表示することができる。臨床医は、患者の状態に関連する症状に対処するための治療を患者12に提供する治療プログラムを、そのリストから選択することができる。
【0045】
[0049]プログラマ14は、患者12によって使用されるように構成されることもある。患者プログラマとして構成されるときには、プログラマ14は、患者12が患者12にとって害になる可能性がある改変をIMD16またはアプリケーションの重要な機能に加えることを防止するために、(臨床医プログラマと比較して)限られた機能しか有していないことがある。
【0046】
[0050]プログラマ14が、臨床医が使用するように構成されるか患者が使用するように構成されるかに関わらず、プログラマ14は、IMD16、および任意選択で別のコンピューティングデバイスと、ワイヤレス通信を介して通信するように構成される。プログラマ14は、例えば、無線周波数(RF)、および/あるいは近距離、中間距離、または長距離通信用の技術を含む可能性がある当技術分野で既知の電磁誘導式テレメトリ技術を使用して、ワイヤレス通信を介してIMD16と通信することができる。プログラマ14は、802.11またはBluetooth(登録商標)規格設定によるRF通信、IRDA規格設定による赤外線(IR)通信、あるいはその他の標準的な、またはプロプライエタリなテレメトリプロトコルなど、様々なローカルワイヤレス通信技術のいずれかを使用して、有線またはワイヤレスの接続を介して別のプログラマまたはコンピューティングデバイスと通信することもある。プログラマ14は、磁気ディスクまたは光ディスク、メモリカード、あるいはメモリスティックなどの取外し可能媒体の交換を介して、他のプログラミングデバイスまたはコンピューティングデバイスと通信することもある。さらに、プログラマ14は、例えばパーソナルエリアネットワーク(PAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)、または携帯電話網などを介して通信する、当技術分野で既知の遠隔テレメトリ技術を介してIMD16および別のプログラマと通信することもある。
【0047】
[0051]治療システム10は、数カ月または数年にわたって慢性的刺激治療を患者12に提供するように実装されることもある。ただし、システム10は、完全に埋め込む前に治療を評価するために試験的に利用されることもある。一時的に実装される場合には、システム10の一部の構成要素が、患者12の体内に埋め込まれないこともある。例えば、患者12は、IMD16ではなく、試験刺激装置などの外部医療デバイスを身につけていることもある。外部医療デバイスは、経皮延長部を介して経皮リードまたは埋込みリードに結合されることがある。試験刺激装置が、DBSシステム10が有効な治療を患者12に提供すると示す場合には、臨床医は、比較的長期の治療のために慢性的刺激装置を患者12の体内に埋め込むことがある。
【0048】
[0052]DBSは一部の神経性疾患の症状を上手く軽減することもあるが、その刺激が、本明細書で悪作用とも呼ぶ、望ましくない副作用を引き起こすこともある。副作用は、失禁、刺痛、平衡感覚障害、麻痺、言語不明瞭、記憶障害、抑制の低下、およびその他の多数の神経性の問題を含む可能性がある。副作用は、軽微なものから深刻なものまである可能性がある。DBSは、目標とする解剖学的領域の付近の解剖学的領域に電気刺激パルスを不注意で与えてしまうことによって、1つまたは複数の悪作用を生じることがある。これらの解剖学的領域は、刺激悪作用に関連する領域と呼ばれることもある。そのため、臨床医は、治療の有効性とその副作用とを比較し、副作用を最小限に抑える刺激パラメータ値を規定する治療プログラム(または複数の治療プログラム)でIMD16をプログラムすることがある。
【0049】
[0053]プログラマ14または別のコンピューティングデバイスを援用して、臨床医は、電極の組合せなど、治療システム10の治療パラメータの値を選択することができる。電気刺激治療を患者12に送達するために特定の電極24、26を選択することにより、臨床医は、脳28内の1つまたは複数の特定の組織領域を対象にし、脳28内のその他の組織領域は回避するように、電気刺激治療を修正することができる。さらに、例えば振幅、パルス幅、およびパルスレートなど、電気刺激信号を規定するその他の刺激パラメータ値の値を選択することにより、臨床医は、選択した電極のサブセットを介して送達される患者12にとって有効な治療を生成することができる。生理学的な多様性、条件の相違、およびリードの配置の不正確性により、パラメータ値は、患者によって様々なである可能性がある。
【0050】
[0054]プログラミング期間中に、臨床医は、患者12に有効な治療を提供することができる1つまたは複数の治療プログラムを決定することができる。患者12は、評価中の特定のプログラムの有効性について臨床医にフィードバックを提供することがあり、このフィードバックは、その特定のプログラムによる治療の送達の悪作用に関する情報を含むことがある。いくつかの例では、患者フィードバックは、臨床評価尺度スコアを決定するために使用されることがある。臨床医が、患者12に有益である可能性がある1つまたは複数のプログラムを特定したら、患者12は、評価プロセスを継続し、どのプログラムが最も良好に患者12の状態を軽減するなどして患者12に有効な治療を提供するかを判定することができる。プログラマ14は、有益である可能性がある治療パラメータを識別する系統的なシステムを提供することによって、臨床医が治療プログラムの作成/識別を行うのを支援することができる。
【0051】
[0055]IMD16は、クロックに基づいて電気刺激を送達するように構成されることがある。例えば、IMD16の刺激エンジン(例えばIMD16の1つまたは複数のプロセッサ、および/あるいは1つまたは複数の刺激生成器)は、クロック信号に基づいて1つまたは複数の動作を実行することがある。
【0052】
[0056]本開示の1つまたは複数の技術によれば、以下でさらに詳細に述べるように、いくつかの例では、デバイス(例えばIMD16、プログラマ14、および/または別のコンピューティングデバイス)は、患者に刺激を送達する、IMD16によって使用されるクロックに基づいて増分されるカウンタのクロックを自動的に識別するように構成されることがある。例えば、デバイスは、カウンタの特定のカウントで刺激するコマンドを発行することがある。一例として、IMD16の刺激エンジンが、このコマンドを生成することがある。別の例として、プログラマ14が、このコマンドをIMD16に伝送することがある。
【0053】
[0057]IMD16は、このコマンドを実行して、患者に刺激を送達することができる。例えば、IMD16は、カウンタの識別されたカウントがカウンタの現在のカウントの後で生じることになると判定したことに応答して、この識別されたカウントで電気刺激を送達することもできる。ただし、いくつかの例では、IMD16がカウントを識別するコマンドを受信するときまでに、カウンタの識別されたカウントが過ぎてしまっていることもある。いくつかの例では、カウンタの識別されたカウントが既に過ぎていても、識別されたカウントが生じてからそれほど経過していない場合には、IMD16が電気刺激を送達することが依然として望ましいことがある。したがって、いくつかの例では、IMD16は、カウンタの識別されたカウントが既に生じており、カウンタの現在のカウントとカウンタの識別されたカウントの間の差がしきい値カウント差を満足すると判定したことに応答して、カウンタの現在のカウントで電気刺激を送達することもある。カウンタの現在のカウントとカウンタの識別されたカウントの間の差がしきい値カウント差以下である場合に、カウンタの現在のカウントとカウンタの識別されたカウントの間の差がしきい値カウント差を満足する可能性がある。いくつかの例では、IMD16は、カウンタの識別されたカウントが既に生じており、カウンタの現在のカウントとカウンタの識別されたカウントの間の差がしきい値カウント差を満足しないと判定したことに応答して、識別されたカウントに基づいて電気刺激を送達することを控えることもある。このように、IMD16は、刺激を送達する時間的精度を改善することができる。
【0054】
[0058]
図2は、例示的なIMD16の構成要素を示す機能ブロック図である。
図2に示す例では、IMD16は、プロセッサ60と、クロック61と、メモリ62と、刺激生成器64と、感知モジュール66と、スイッチモジュール68と、テレメトリモジュール70と、電源72とを含む。メモリ62、および本明細書に記載するその他のメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、およびフラッシュメモリなど、任意の揮発性媒体または不揮発性媒体を含む可能性がある。メモリ62は、プロセッサ60によって実行されたときに本明細書に記載する様々な機能をIMD16に実行させるコンピュータ可読命令を格納することができる。
【0055】
[0059]
図2に示す例では、メモリ62は、治療プログラム74、動作命令76、および刺激タイミングモジュール78を、例えばメモリ62内の別個のメモリ、またはメモリ62内の別個の領域に格納することがある。格納された各治療プログラム74は、電極の組合せ、電流または電圧の振幅などの電気刺激パラメータそれぞれの値として特定の治療プログラムを規定し、刺激生成器64が刺激パルスを生成して送達する場合には、これらの治療プログラムが、刺激信号のパルス幅およびパルスレートの値を規定することがある。格納された各治療プログラム74は、刺激パラメータ値のセットと呼ばれることもある。動作命令76は、プロセッサ60の制御下でIMD16の全体的な動作を案内するものであり、電極24、26を介して1つまたは複数の脳領域内の脳信号を監視し、患者12に電気刺激治療を送達する命令を含む可能性がある。以下でさらに詳細に述べるように、本開示の1つまたは複数の技術によれば、いくつかの例では、メモリ62は、刺激タイミングモジュール78を格納することがあり、この刺激タイミングモジュール78は、正確な時点における電気刺激の送達を可能にするためにプロセッサ60によって実行可能な命令を含むことがある。
【0056】
[0060]刺激生成器64は、プロセッサ60の制御下で、選択された電極24、26の組合せを介して患者12に送達される刺激信号を生成する。いくつかの例では、刺激生成器64は、格納された1つまたは複数の治療プログラム74に基づいて、刺激信号を生成し、選択された電極24、26の組合せを介して、脳28(
図1)の1つまたは複数の目標領域に送達する。刺激信号、またはその他のタイプの治療および刺激パラメータ値の脳28内の目標組織部位は、実装する治療システム10の管理対象の患者の状態によって決まる可能性がある。刺激パルスについて述べたが、刺激信号は、連続時間信号(例えば正弦波)など、任意の形態のものとすることができる。
【0057】
[0061]クロック61は、IMD16の1つまたは複数の構成要素にクロック信号を出力することがある。例えば、クロック61は、プロセッサ60および/または刺激生成器64にクロック信号を出力することがある。いくつかの例では、クロック61は、発振器、またはその他の任意のクロック生成器を含むことがある。
【0058】
[0062]プロセッサ60など、本開示に記載するプロセッサは、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、またはその他の等価な集積もしくは個別論理回路、あるいはそれらの組合せを含む可能性がある。本明細書に記載するプロセッサのものと考えられる機能は、ハードウェアデバイスによって提供され、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組合せとして実施される可能性がある。プロセッサ60は、クロック61から受信するクロック信号などのクロック信号に基づいて1つまたは複数の動作を実行するように構成されることがある。プロセッサ60は、メモリ62に格納された治療プログラム74に従って刺激生成器64を制御して、振幅、パルス幅、およびパルスレートなど、1つまたは複数のプログラムによって指定される特定の刺激パラメータ値を適用するように構成される。
【0059】
[0063]
図2に示す例では、リード20Aの電極24のセットは、電極24A~24Dを含み、リード20Bの電極26のセットは、電極26A~26Dを含む。プロセッサ60は、スイッチモジュール68を制御して、刺激生成器64によって生成された刺激信号を、電極24および/または電極26の選択された組合せに適用することができる。特に、スイッチモジュール68は、刺激信号をリード20内の選択された導体に結合することができ、この選択された導体が、選択された電極24および/または電極26を通して刺激信号を送達することができる。スイッチモジュール68は、スイッチアレイ、スイッチマトリクス、マルチプレクサ、あるいは刺激エネルギーを選択された電極24および/または電極26に選択的に結合し、選択された電極24および/または電極26を用いて生体電気脳信号を選択的に感知するように構成されたその他の任意のタイプの切替えモジュールとすることができる。したがって、刺激生成器64は、スイッチモジュール68およびリード20内の導体を介して電極24および/または電極26に結合される。ただし、いくつかの例では、IMD16は、スイッチモジュール68を含まない。例えば、いくつかの例では、IMD16は、各電極に結合された個別の電圧源または電流源(すなわち電極24および/または電極26のそれぞれのための別個の電圧源および/または電流源)を含むこともある。
【0060】
[0064]上述のように、プロセッサ60は、スイッチモジュール68を制御して、刺激生成器64によって生成された刺激信号を、電極24および/または電極26の選択された組合せに適用することができる。いくつかの例では、電極24および/または電極26の選択された組合せは、単極性であることもある。例えば、単極性の選択された組合せは、
一方を陽極、他方を陰極として、電極24または電極26の1つの接点と、IMD16の筐体(すなわちケースまたは缶)上の電極との組合せを含むこともある。いくつかの例では、電極24および/または電極26の選択された組合せは、双極性であることもある。一例として、双極性の選択された組合せは、一方を陽極、他方を陰極として、電極24の中から選んだ2つの接点を含むこともある。別の例として、双極性の選択された組合せは、一方を陽極、他方を陰極として、接点26の中から選んだ2つの電極を含むこともある。別の例として、双極性の選択された組合せは、一方を陽極、他方を陰極として、電極24の中から選んだ電極と、電極26の中から選んだ電極とを含むこともある。いくつかの例では、電極24および/または電極26の選択された組合せは、多極性であることもある。一例として、多極性の選択された組合せは、電極24から選択した複数の陽極および/または複数の陰極を含むこともある。別の例として、多極性の選択された組合せは、電極26から選択した複数の陽極および/または複数の陰極を含むこともある。一例として、多極性の選択された組合せは、電極24および電極26から選択した複数の陽極および/または複数の陰極を含むこともある。
【0061】
[0065]刺激生成器64は、単チャネルの刺激生成器であっても、多チャネルの刺激生成器であってもよい。特に、刺激生成器64は、単一の電極の組合せを介して所与の時点に単一の刺激パルス、複数の刺激パルス、または連続信号を送達することができることもあるし、あるいは複数の電極の組合せを介して所与の時点に複数の刺激パルスを送達することができることもある。ただし、いくつかの例では、刺激生成器64およびスイッチモジュール68は、時間的に交互に複数のチャネルを送達するように構成されることもある。例えば、スイッチモジュール68は、刺激生成器64の出力を、異なる時点において異なる電極の組合せの間で時分割して、複数のプログラムまたは刺激エネルギーチャネルを患者12に送達するように機能することもある。刺激生成器64は、クロック61から受信するクロック信号などのクロック信号に基づいて1つまたは複数の動作を実行するように構成されることがある。
【0062】
[0066]感知モジュール66は、プロセッサ60の制御下で、電極24および/または電極26の選択されたサブセットを介して、あるいは1つまたは複数の電極24および/または電極26と、IMD16の導電性外側筐体34の少なくとも一部分、IMD16の外側筐体上の電極、または別の基準部とによって、患者12の生体電気脳信号を感知するように構成される。プロセッサ60は、スイッチモジュール68を制御して、感知モジュール66を選択された電極24および/または電極26に電気的に接続することができる。このようにして、感知モジュール66は、電極24および/または電極26(ならびに/あるいは電極24および/または電極26の電極以外の基準部)の様々な組合せを用いて、生体電気脳信号を選択的に感知することができる。
【0063】
[0067]
図2では、感知モジュール66は、刺激生成器64およびプロセッサ60と共通の筐体34に組み込まれているが、他の例では、感知モジュール66は、IMD16の外側筐体34とは別個の外側筐体内にあり、有線またはワイヤレス通信技術を介してプロセッサ60と通信する。
【0064】
[0068]テレメトリモジュール70は、プロセッサ60の制御下で、IMD16と外部プログラマ14または別のコンピューティングデバイスとの間のワイヤレス通信をサポートするように構成される。IMD16のプロセッサ60は、プログラムの更新として、プログラマ14からテレメトリモジュール70を介して振幅および電極の組合せなど様々な刺激パラメータの値を受信することがある。治療プログラムの更新は、メモリ62の治療プログラム74の部分に格納されることがある。IMD16のテレメトリモジュール70、ならびにプログラマ14など本明細書に記載する他のデバイスおよびシステムのテレメトリモジュールは、RF通信技術によって通信を実施することがある。さらに、テレメトリ
モジュール70は、IMD16によるプログラマ14との近接誘導的相互作用を介して外部医療デバイスのプログラマ14と通信することもある。したがって、テレメトリモジュール70は、連続的に、定期的な間隔で、あるいはIMD16またはプログラマ14からの要求時に、外部プログラマ14に情報を送信する可能性がある。いくつかの例では、テレメトリモジュール70とプログラマ14の間のリンクの待ち時間は、様々であることがある。例えば、テレメトリモジュール70とプログラマ14の間で特定のデータを転送するための時間は、経時的に変化する可能性がある(すなわち一貫した固定値ではないこともある)。
【0065】
[0069]電源72は、IMD16の様々な構成要素に動作電力を送達する。電源72は、小型の充電式または非充電式バッテリ、および動作電力を生成する発電回路を含む可能性がある。充電は、外部充電器とIMD16内の誘導型充電コイルとの間の近接誘導型相互作用によって実施することができる。いくつかの例では、電力要件は、IMD16が患者の動きを利用して、充電式バッテリを細流充電する運動エネルギースカベンジングデバイスを実施することを可能にできる程度に小さいこともある。他の例では、従来のバッテリが、限られた時間使用されることがある。
【0066】
[0070]本開示の1つまたは複数の技術によれば、刺激タイミングモジュール78は、IMD16が正確な時点に電気刺激を送達することを可能にするようにプロセッサ60によって実行可能であることもある。例えば、刺激タイミングモジュール78は、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別することもある。いくつかの例では、カウンタは、クロック61に基づいて(すなわち連動して)増分されることもある。
【0067】
[0071]上述のように、いくつかの例では、IMD16は、閉ループ技術を用いて電気刺激を送達することがある。そのような技術では、IMD16は、感知モジュール66が得る感知された電気信号の表現など、患者の感知されたパラメータに基づいて、患者に電気刺激を送達することがある。いくつかの例では、患者についての感知された電気信号の表現は、カウンタのカウンタを基準にすることもある。例えば、特定の時点に測定された患者の電気信号のサンプルは、その特定の時点におけるカウンタのカウントでタグ付けされることがある。
【0068】
[0072]刺激タイミングモジュール78は、これらの表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別することがある。カウントの識別が、カウンタのカウントを基準にする患者の感知された電気信号の表現に基づくので、刺激タイミングモジュール78は、患者に刺激を送達する将来のカウントをより良好に決定することができる。例えば、刺激タイミングモジュール78は、外部源からのピーク振戦または内部脳信号からのシータリズムなどの関数と同期して患者に電気刺激を送達することを可能にすることもある。一例では、刺激タイミングモジュール78は、患者についての感知された電気信号の表現を解析して、患者のシータ波のピークと一致するカウンタのカウントを予測することもできる。刺激タイミングモジュール78は、識別されたティックカウントで刺激を送達するコマンドを生成することもある。いくつかの例では、コマンドは、電気刺激を送達するために使用される治療プログラム74のうちの治療プログラム(すなわち電極の組合せ、電流または電圧の振幅などを指定する治療プログラム)をさらに識別することもある。
【0069】
[0073]いくつかの例では、刺激タイミングモジュール78がカウントを識別するのに要する時間の長さは、様々である可能性がある。例えば、感知された電気信号を解析して、刺激を送達するカウントを識別するのに要する時間の長さは、経時的に変化する可能性がある(すなわち一貫した固定値ではないこともある)。
【0070】
[0074]IMD16は、命令を実行することができる。例えば、刺激タイミングモジュー
ル78は、カウンタの識別されたカウントがカウンタの現在のカウントの後で生じると判定したことに応答して、刺激生成器64に識別されたカウントで電気刺激を送達させることがある。しかし、いくつかの例では、カウンタの識別されたカウントが、デバイスがそのカウントを識別するコマンドを受信したときには既に過ぎてしまっていることもある。いくつかの例では、カウンタの識別されたカウントが既に過ぎていても、識別されたカウントが生じてからそれほど経過していない場合には、IMD16が電気刺激を送達することが依然として望ましいことがある。したがって、いくつかの例では、刺激タイミングモジュール78は、カウンタの識別されたカウントが既に生じており、カウンタの現在のカウントとカウンタの識別されたカウントの間の差がしきい値カウント差を満足する(すなわち「遅れマージン」内である)と判定したことに応答して、刺激生成器64にカウンタの現在のカウントで電気刺激を送達させることもある。同様に、いくつかの例では、刺激タイミングモジュール78は、カウンタの識別されたカウントが既に生じており、カウンタの現在のカウントとカウンタの識別されたカウントの間の差がしきい値カウント差を満足しないと判定したことに応答して、刺激生成器64に識別されたカウントに基づいて電気刺激を送達させることを控えることもある。このように、刺激タイミングモジュール78は、刺激を送達する時間的精度を改善することができる。
【0071】
[0075]いくつかの例では、IMD16の刺激タイミングモジュール78によって実行される動作のうちの1つまたは複数を、1つまたは複数の他のデバイスの間に分散させることもある。例えば、
図3を参照して以下で述べるように、外部デバイス(例えばプログラマ14)が、カウントを識別し、コマンドを生成し、そのコマンドをIMD16に伝送することもある。
【0072】
[0076]
図3は、外部の医療デバイスプログラマ14(
図1)の構成要素を示す機能ブロック図である。プログラマ14は、プロセッサ80と、メモリ82と、テレメトリモジュール84と、ユーザインタフェース86と、電源88とを含む。プロセッサ80は、ユーザインタフェース86およびテレメトリモジュール84を制御し、メモリ82に情報および命令を格納し、メモリ82から情報および命令を取り出す。プログラマ14は、臨床医プログラマまたは患者プログラマとして使用されるように構成されることがある。プロセッサ80は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、またはその他の等価な集積もしくは個別論理回路などの1つまたは複数のプロセッサの任意の組合せを含む可能性がある。したがって、プロセッサ80は、ハードウェアであるか、ソフトウェアであるか、ファームウェアであるか、またはそれらの任意の組合せであるかに関わらず、本明細書においてプロセッサ80のものとされる機能を実行する任意の適当な構造を含む可能性がある。
【0073】
[0077]臨床医または患者12などのユーザは、ユーザインタフェース86を通してプログラマ14と対話することができる。ユーザインタフェース86は、LCDまたはLEDディスプレイあるいはその他のタイプのスクリーンなどのディスプレイ(図示せず)を含み、プロセッサ80は、これを用いて、治療に関係する情報(例えば電極、および関連する治療可能時間域)を提示することができる。さらに、ユーザインタフェース86は、ユーザからの入力を受け取る入力機構を含むこともある。入力機構は、例えば、ボタン、キーパッド(例えばアルファベットキーパッド)、周辺機器のポインティングデバイス、タッチスクリーン、またはユーザがプログラマ14のプロセッサ80によって提示されるインタフェース内を自由に移動して入力を与えることを可能にするその他の入力機構を含む可能性がある。他の例では、ユーザインタフェース86は、可聴通知、命令、またはその他の音声を患者12に提供する、または患者12から音声コマンドを受け取る、あるいはその両方を行う、オーディオ回路も含む。
【0074】
[0078]メモリ82は、ユーザインタフェース86およびテレメトリモジュール84を動
作させる命令、ならびに電源88を管理する命令を含むことがある。
図3に示す例では、メモリ82は、カウンタモジュール78も格納する。
【0075】
[0079]いくつかの例では、患者12、臨床医、または別のユーザは、他のかたちでプログラマ14のユーザインタフェース86と対話して、治療プログラムを手作業で選択する、新たな治療プログラムを生成する、治療プログラムを修正する、新たなプログラムをIMD16に伝送する、またはそれらの任意の組合せを行うこともできる。
【0076】
[0080]メモリ82は、RAM、ROM、EEPROM、またはフラッシュメモリなど、任意の揮発性または不揮発性のメモリを含む可能性がある。メモリ82は、メモリ更新またはメモリ容量の増大をもたらすために使用することができる取外し可能メモリ部分を含むこともある。取外し可能メモリにより、プログラマ14を異なる患者が使用する前に、プライバシーに関わる患者データを除去できるようにすることもできる。
【0077】
[0081]プログラマ14のワイヤレステレメトリは、外部プログラマ14によるIMD16とのRF通信または近接誘導型相互作用によって実施されることがある。このワイヤレス通信は、テレメトリモジュール84を使用することによって可能である。したがって、テレメトリモジュール84は、IMD16内に収容されたテレメトリモジュールと同様であることがある。他の例では、プログラマ14は、赤外線通信、または有線接続による直接通信を行うことができることもある。このように、他の外部デバイスが、安全なワイヤレス接続を確立する必要なく、プログラマ14と通信することができることもある。
【0078】
[0082]電源88は、プログラマ14の構成要素に動作電力を送達するように構成される。電源88は、バッテリ、および動作電力を生成する発電回路を含む可能性がある。いくつかの例では、バッテリは、動作時間を延長できるように充電可能であることもある。充電は、電源88を交流(AC)コンセント差込口に接続されたクレードルまたはプラグに電気的に結合することによって行うことができる。さらに、充電は、外部充電器と、プログラマ14内の誘導型充電コイルとの間の近接誘導型相互作用によって行うこともできる。他の例では、従来のバッテリ(例えばニッケルカドミウム電池、またはリチウムイオン電池)が使用されることもある。さらに、プログラマ14を交流コンセント差込口に直接結合して動作させることもある。
【0079】
[0083]様々な情報は、プログラマ14のメモリ82に格納されるものとして図示および説明したが、別法として、またはこれに加えて、この情報の一部または全てを、IMD16のメモリ62に格納することもできることは理解されるであろう。さらに、プログラム14のプロセッサ80のものとされる機能の少なくとも一部が、別法として、またはこれに加えて、以下で述べるようにIMD16のプロセッサ60のものとされることもある(また、その逆もある)。例えば、上述のように、プログラマ14の刺激タイミングモジュール78は、刺激を送達する、IMD16によって維持されるカウンタのカウントを識別することができる。刺激タイミングモジュール78は、刺激を送達する識別されたカウントを示すコマンドを生成し、テレメトリモジュール84に、このコマンドをIMD16のテレメトリモジュール70に伝送させることもある。
【0080】
[0084]いくつかの例では、プログラマ14の刺激タイミングモジュール78は、患者についての感知された電気信号に基づいて、カウントを識別することもある。例えば、IMD16のテレメトリモジュール70は、IMD16が患者に電気刺激を送達するために使用するクロックと連動するカウンタのカウントを基準とする、患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を、プログラマ14のテレメトリモジュール84に伝送することもある。
【0081】
[0085]
図4Aおよび
図4Bは、本開示の1つまたは複数の技術による、患者への電気刺激治療の例示的な送達を示すグラフである。
図4Bは、
図4Aの一部を拡大して表すことがある。例えば、
図4Bは、
図4Aの領域400内の部分を表すことがある。
図4Aおよび
図4Bのプロット402は、患者の感知された電気信号および/または処理された電気信号など、患者のバイオマーカを表すことがある。
図4Aおよび
図4Bのこの例では、所望の刺激は、バイオマーカのピーク位相を中心とする2相パルスであることがある。
【0082】
[0086]本開示の1つまたは複数の技術によれば、患者のバイオマーカを解析することができ、時点tt(目標時点)に刺激を送達するという判断が、時点td(判定時点)に行われることもある。時点ttに刺激を送達するコマンドが、時点ttに刺激デバイス(例えばIMD16)に伝送されることもある。
【0083】
[0087]コマンドは、時点tr_minと時点tr_maxの間に刺激デバイスによって受信されることがある。上述のように、コマンドを転送するのに要する時間の長さは、通信チャネルによって決まり、1つの一定の時間ではなく、変動する。コマンドを受信すると、刺激デバイスは、ttに刺激をスケジュールすることができる。
【0084】
[0088]時点ttで、刺激デバイスは、刺激の送達を開始することができる。時点toffで、刺激デバイスは、刺激の送達を完了することができる。刺激が、設定レートの設定数のパルスであることもあるし、あるいはオフ時間がスケジュールされていることもある。
【0085】
[0089]
図5は、本開示の1つまたは複数の技術による、正確な時間に患者に電気刺激を送達する例示的な技術を示す流れ図である。説明のために、IMD16のプロセッサ60に関連して、
図5の技術を説明する。ただし、プロセッサ60以外のプロセッサが、
図5の技術の一部または全体を実行することもできる。
【0086】
[0090]IMD16は、IMD16が患者に電気刺激を送達するために使用するクロックと連動するカウンタを維持することができる(502)。クロックは、IMD16の刺激エンジンを形成および/または実行するIMD16のプロセッサ60および/または刺激生成器64によって使用されるクロック信号であることもある。いくつかの例では、プロセッサ60は、クロックのサイクルごとに、ティックカウンタと呼ばれることもあるこのカウンタを増分することがある。例えば、プロセッサ60は、クロック信号の立ち上がり縁部または立ち下がり縁部に応答してティックカウンタを増分することもある。
【0087】
[0091]IMD16は、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を取得することがある(504)。例えば、IMD16の感知モジュール66が、電極24および/または電極26の選択されたサブセットを介して、あるいは1つまたは複数の電極24および/または電極26と、IMD16の導電性外側筐体34の少なくとも一部分、IMD16の外側筐体上の電極、または別の基準部とによって、患者の生体電気脳信号を測定することもある。プロセッサ60または感知モジュール66は、それらの測定が行われた時点のカウンタの値でそれらの測定値にタイムスタンプすることがある。したがって、感知された電気信号の表現は、カウンタのカウントを基準とするものと考えることができる。
【0088】
[0092]IMD16は、患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現に基づいて、刺激を患者に送達するカウンタのカウントを識別することがある(506)。例えば、プロセッサ60は、刺激タイミングモジュール78を実行して、患者に刺激を送達する将来のカウントを決定することがある。例えば、刺激タイミングモジュール78は、外部源からのピーク振戦または内部脳信号からのシータリズムなどの関数と同期して患者
に電気刺激を送達することを可能にすることもある。一例では、刺激タイミングモジュール78は、患者についての感知された電気信号の表現を解析して、患者のシータ波のピークと一致するカウンタのカウントを予測することもできる。刺激タイミングモジュール78は、識別されたティックカウントで刺激を送達するコマンドを生成することもある。いくつかの例では、コマンドは、電気刺激を送達するために使用される治療プログラム74のうちの治療プログラム(すなわち電極の組合せ、電流または電圧の振幅などを指定する治療プログラム)をさらに識別することもある。
【0089】
[0093]いくつかの例では、1つまたは複数の他のデバイスが、刺激を送達するカウントの識別に参加することもある。例えば、IMD16は、カウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の表現を取得し、これらの表現をプログラマ15などの別のデバイスに伝送(例えば有線伝送またはワイヤレス伝送)するために出力することもある。この別のデバイスは、取得した表現に基づいて、刺激を送達する将来のカウントを識別し、識別されたカウントを含むコマンドをIMD16に伝送することができる。IMD16は、このコマンドを受信し、識別されたカウントに基づいて電気信号を送達することができる。したがって、いくつかの例では、IMD16は、プログラマ15など別のデバイスからコマンドを受信することによって、患者に刺激を送達するカウンタのカウントを識別することがある。
【0090】
[0094]IMD16は、カウンタの識別されたカウントに基づいて、電気刺激を患者に送達することがある(508)。一例として、刺激タイミングモジュール78は、刺激生成器64に、識別されたカウントで患者に電気刺激を送達させることもある。別の例として、刺激タイミングモジュール78は、刺激生成器64に、識別されたカウントに基づいて決定されたカウント(例えば識別されたカウントのNカウント前、識別されたカウントのMカウント後など)で患者に電気刺激を送達させることもある。
【0091】
[0095]
図6は、本開示の1つまたは複数の技術による、正確な時点における患者への電気刺激の送達を制御する例示的な技術を示す流れ図である。説明のために、プログラマ14のプロセッサ80に関連して、
図6の技術を説明する。ただし、プロセッサ80以外のプロセッサが、
図6の技術の一部または全体を実行することもできる。
【0092】
[0096]プログラマ14は、医療デバイスが患者に電気刺激を送達するために使用するクロックと連動したカウンタを維持する医療デバイスから、そのカウンタのカウントを基準とする患者についての感知された電気信号の1つまたは複数の表現を受信することがある(602)。例えば、プログラマ14のプロセッサ80は、IMD16からプログラマ14のテレメトリモジュール84を介して、カウンタのカウントを基準とする(例えばタグ付け、スタンプなどがなされた)感知された電気信号の表現を受信することがある。
【0093】
[0097]プログラマ14は、患者についての感知された電気信号の表現に基づいて、患者に刺激を送達するカウンタのカウントを識別することがある(604)。例えば、プロセッサ80は、刺激タイミングモジュール78を実行して、患者に刺激を送達する将来のカウントを決定することがある。例えば、刺激タイミングモジュール78は、外部源からのピーク振戦または内部脳信号からのシータリズムなどの関数と同期して患者に電気刺激を送達することを可能にすることもある。一例では、刺激タイミングモジュール78は、患者についての感知された電気信号の表現を解析して、患者のシータ波のピークと一致するカウンタのカウントを予測することもできる。刺激タイミングモジュール78は、識別されたティックカウントで刺激を送達するコマンドを生成することもある。いくつかの例では、コマンドは、電気刺激を送達するために使用される治療プログラム(すなわち電極の組合せ、電流または電圧の振幅などを指定する治療プログラム)をさらに識別することもある。
【0094】
[0098]プログラマ14は、カウンタの識別されたカウントに基づいて刺激を送達するコマンドを医療デバイスに出力することがある(606)。例えば、プロセッサ80は、テレメトリモジュール84に、カウンタの識別されたカウントに基づいて刺激を送達するコマンドを医療デバイスに伝送させることもある。一例としては、テレメトリモジュール84は、医療デバイスに識別されたカウントで患者に電気信号を送達させるコマンドを伝送する。別の例としては、テレメトリモジュール84は、医療デバイスに、識別されたカウントに基づいて決定されたカウント(例えば識別されたカウントのNカウント前、識別されたカウントのMカウント後など)で患者に電気刺激を送達させるコマンドを伝送する。
【0095】
[0099]上述の技術は、主としてIMD16のプロセッサ60、またはプログラマ14のプロセッサ80によって実行されるものとして説明したが、他の例では、1つまたは複数の他のプロセッサが、単独で、またはプロセッサ60またはプロセッサ80に加えて、本明細書に記載する技術の任意の部分を実行することもある。したがって、単に「プロセッサ」と述べていても、それが「1つまたは複数のプロセッサ」を指していることもある。同様に、「1つまたは複数のプロセッサ」は、異なる例では、1つのプロセッサを指していることも、複数のプロセッサを指していることもある。
【0096】
[0100]IMD16、プログラマ14、または様々な構成要素のものとされる技術を含めて、本開示に記載する技術は、少なくとも部分的には、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組合せで実施される可能性がある。例えば、これらの技術の様々な特徴は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、またはその他の任意の等価な集積もしくは個別論理回路などの1つまたはプロセッサ、ならびに臨床医プログラマもしくは患者プログラマなどのプログラマ内に実装されたそれらの構成要素、医療デバイス、またはその他のデバイスの任意の組合せの内部で実施される可能性がある。
【0097】
[0101]1つまたは複数の例では、本開示に記載する機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組合せで実施される可能性がある。ソフトウェアで実施される場合には、それらの機能は、コンピュータ可読媒体に1つまたは複数の命令またはコードとして格納され、ハードウェア型処理ユニットによって実行されることもある。コンピュータ可読媒体は、有形の非一時的媒体を形成するコンピュータ可読ストレージ媒体を含む可能性がある。命令は、1つまたは複数のDSP、ASIC、FPGA、汎用マイクロプロセッサ、またはその他の等価な集積もしくは個別論理回路など、1つまたは複数のプロセッサによって実行される可能性がある。したがって、本明細書で使用する「プロセッサ」という用語は、上述の構造のいずれか、または本明細書に記載する技術の実施に適したその他の任意の構造のうちの1つまたは複数を指している可能性がある。
【0098】
[0102]さらに、いくつかの態様では、本明細書に記載する機能は、専用のハードウェアおよび/またはソフトウェアモジュール内に設けられることがある。様々な特徴をモジュールまたはユニットとして表現しているのは、様々な機能的特徴を強調するためであり、必ずしもそれらのモジュールまたはユニットが別個のソフトウェアまたはソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを意味しているわけではない。逆に、1つまたは複数のモジュールまたはユニットに関連する機能は、別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実行される、あるいは共通または別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素内に一体化されることもある。また、これらの技術は、全体が1つまたは複数の回路または論理要素で実施することもできる。本開示の技術は、IMD、外部プログラマ、IMDと外部プログラマの組合せ、集積回路(IC)またはICのセット、ならびに/あるいはIMDおよび/または外部プログラマ内にある個別電気回路など、幅広い様々なデバイスまたは装置で実施される可能性がある。
【0099】
[0103]本開示の様々な例について説明した。上記その他の実施形態は、後記の特許請求の範囲に含まれる。