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  • 特許-可燃物の処理方法及び処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】可燃物の処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/027 20060101AFI20230512BHJP
   C04B 7/44 20060101ALI20230512BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20230512BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
F23G5/027 Z ZAB
C04B7/44
C04B7/38
B01D53/56 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021538592
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030925
(87)【国際公開番号】W WO2021024386
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000185961
【氏名又は名称】太平洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰史
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-342046(JP,A)
【文献】特開2007-205640(JP,A)
【文献】特開2010-043269(JP,A)
【文献】特開2009-300006(JP,A)
【文献】特開2012-078032(JP,A)
【文献】特開2005-097063(JP,A)
【文献】特開2008-114173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/027
C04B 7/44
C04B 7/38
B01D 53/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃物をセメント焼成装置のプレヒータサイクロンの原料シュートから分取した600℃以上900℃以下の予熱原料と混合してガス化し、
ガス化した可燃物及び前記予熱原料をセメント焼成装置の窯尻から仮焼炉の領域に供給することを特徴とする可燃物の処理方法。
【請求項3】
可燃物をセメント焼成装置のプレヒータサイクロンの原料シュートから分取した600℃以上900℃以下の予熱原料と混合してガス化する混合装置と、
ガス化した可燃物及び前記予熱原料をセメント焼成装置の窯尻から仮焼炉の領域に供給する供給装置とを備えることを特徴とする可燃物の処理装置。
【請求項4】
前記混合装置に水分を添加して水性ガス化反応を行わせる水分添加装置を備えることを特徴とする請求項3に記載の可燃物の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック、廃タイヤ、もみがら、木屑、PKS、RDF、汚泥等の可燃性廃棄物を有効利用すると共に、前記可燃性廃棄物及び石炭、コークス等の化石燃料の燃焼効率を向上させ、さらにセメントキルン排ガス中のNOx濃度を効率よく低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の一般廃棄物及び汚泥等の産業廃棄物は、そのまま埋立処分されたり、ごみ焼却場等で焼却される。焼却の際に発生した焼却灰は最終処分場へ持ち込まれるが、近年最終処分場の新規立地が難しいことから、最終処分場の残余容量は逼迫しつつある。そこで、廃プラスチックや汚泥等の可燃性廃棄物を焼却したりガス化処理して有効利用している(例えば、特許文献1)。また、可燃性廃棄物を窯尻や仮焼炉で燃焼させる技術はあるが、処理量を増やすには細かく破砕するか、仮焼炉内の燃焼時間を1~3秒から5秒以上に改造する必要があった。
【0003】
また、昨今では廃プラスチックの排出量が増加していると共に、中国等で廃プラスチックが輸入禁止となったため、国内外で廃プラスチック処理のニーズが増大している。また、中国、韓国で大気に放出される排ガスのNOx規制が強化されている。
【0004】
一方、セメントキルンの排ガスには、焼成帯の高温域に起因するNOxが含まれ、NOxの濃度が高い場合には、尿素やアンモニア等の脱硝剤を投入したり、仮焼炉における燃焼による還元作用によってNOx濃度を低減している。しかし、尿素を脱硝剤として利用する方法では、尿素が高価であるため運転コストが高騰する。また、尿素を添加するのみでは脱硝効率が低く、NOxと反応しなかった余剰アンモニアがそのまま系外へ排出される虞もある。
【0005】
そこで、本出願人は、セメントキルンの窯尻内に燃料及び燃焼用空気を吹き込む脱硝用バーナーを設け、セメントキルン排ガス中のNOxを窯尻内の低酸素領域において還元すると共に、燃料を燃焼させることでセメント原料の脱炭酸効率も向上させることができ、仮焼炉の形式を問わず、良好な焼成状態を維持しながらセメントキルン排ガス中のNOx濃度を効率よく低減する技術を提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本特開2018-155484号公報
【文献】日本国特許第6476165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
廃プラスチック、廃タイヤ、もみがら、木屑、PKS、RDF、汚泥等の可燃性廃棄物をガス化すると、タールが発生するため、付着や詰まり等により安定運転が阻害される問題があった。また、燃焼により爆発等の危険性が否定できなかった。
【0008】
一方、セメントキルンの排ガスの脱硝について、特許文献2に記載の石炭の二段燃焼ではNOxの還元剤が不足し、脱硝効果が十分でないと共に、石炭の導入部にコーチングが付着するなどの問題もあった。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、安定運転を維持しながら、廃プラスチック、廃タイヤ、もみがら、木屑、PKS、RDF、汚泥等の可燃性廃棄物を有効利用すると共に、石炭、コークス等の化石燃料の燃焼効率を向上させ、さらにセメントキルン排ガス中のNOx濃度を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、可燃物の処理方法であって、可燃物をセメント焼成装置のプレヒータサイクロンの原料シュートから分取した600℃以上900℃以下の予熱原料と混合してガス化し、ガス化した可燃物及び前記予熱原料をセメント焼成装置の窯尻から仮焼炉の領域に供給することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、可燃性廃棄物や化石燃料等の可燃物を予熱原料と混合することで、ガス化の際に生じたタールによる付着トラブル等を回避することができる。また、無酸素状態で可燃物をガス化させることで還元物質を発生させることができ、予熱原料中のFe23もFeOへ還元でき還元剤の量を増加できる。さらには、ガス化により燃焼時間を短縮することができるため、可燃性廃棄物を仮焼炉内の排ガスの滞留時間が1~3秒の従来の石炭燃焼用仮焼炉でも効果的に燃焼させることができ、石炭使用量及び発生するCOの量を削減することができる。還元剤を含むガス化した可燃物と、還元剤を含む前記予熱原料が随伴して窯尻から仮焼炉の領域に供給され、粉体及びガスをガス中に分散させることができ、セメントキルン燃焼ガス中のNOxを効果的に還元することができる。さらに、ガス化した可燃物及び前記予熱原料は仮焼炉に導入されるため、コーチングの付着トラブルを回避することができる。また、ガス化により燃焼時間を短縮することができるため、可燃物の破砕電力を低減することもできる。
【0012】
前記可燃物の処理方法において、前記可燃物を前記予熱原料と混合する際に水分を添加して水性ガス化反応を行い、生じた水性ガス及び前記予熱原料をセメント焼成装置の窯尻から仮焼炉の領域に導入することができる。酸素を導入せずに水蒸気で封印するため、爆発の危険性がなく、水性ガス化反応によりH2の還元剤が発生すると共に、原料中のFe23もFeOに還元されるため、還元剤の量が飛躍的に増加する。これによって、セメントキルン燃焼ガス中のNOxを効果的に還元することができる。
【0013】
また、本発明は、可燃物の処理装置であって、可燃物をセメント焼成装置のプレヒータサイクロンの原料シュートから分取した600℃以上900℃以下の予熱原料と混合してガス化する混合装置と、ガス化した可燃物及び前記予熱原料をセメント焼成装置の窯尻から仮焼炉の領域に供給する供給装置とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、可燃性廃棄物や化石燃料等の可燃物を予熱原料と混合することで、ガス化の際に生じたタールによる付着トラブル等を回避することができる。また、無酸素状態で可燃物をガス化させることで還元物質を発生させることができ、予熱原料中のFe23もFeOへ還元でき還元剤の量を増加できる。さらには、ガス化により燃焼時間を短縮することができるため、可燃性廃棄物を仮焼炉内の排ガスの滞留時間が1~3秒の従来の石炭燃焼用仮焼炉でも効果的に燃焼させることができ、石炭使用量及び発生するCOの量を削減することができる。還元剤を含むガス化した可燃物と、還元剤を含む前記予熱原料が随伴して窯尻から仮焼炉の領域に供給され、粉体及びガスをガス中に分散させることができ、セメントキルン燃焼ガス中のNOxを効果的に還元することができる。さらに、ガス化した可燃物及び前記予熱原料は仮焼炉に導入されるため、コーチングの付着トラブルを回避することができる。また、ガス化により燃焼時間を短縮することができるため、可燃物の破砕電力を低減することもできる。
【0015】
前記可燃物の処理装置において、前記混合装置に水分を添加して水性ガス化反応を行わせる水分添加装置を備えることができる。これによって、爆発の危険性を解消し、水性ガス化反応によりH2の還元剤が発生し、原料中のFe23もFeOに還元されるため、還元剤の量が飛躍的に増加し、セメントキルン燃焼ガス中のNOxを効果的に還元することができる。また、水性ガス化反応は吸熱反応であり、基本的には温度が上がり過ぎることもないため、混合装置の材料をSUS310Sで賄うことができる。仮に温度が上昇しても、水分の蒸発、原料の脱炭酸により吸熱し、最高でも850℃までしか温度上昇しない。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、安定運転を維持しながら、廃プラスチックや汚泥等の可燃性廃棄物を有効利用すると共に、前記可燃性廃棄物及び石炭、コークス等の化石燃料の燃焼効率を向上させ、さらにセメントキルン排ガス中のNOx濃度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る可燃物の処理装置の一実施の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る可燃物の処理装置の一実施の形態を示し、この処理装置1は、可燃物Cを受け入れるホッパ2と、ホッパ2から供給された可燃物Cをセメント焼成装置10のプレヒータ11の下から2段目のサイクロン11Bから分取した600℃以上900℃以下の予熱原料R2と混合してガス化する混合装置3と、ガス化した可燃物C及び予熱原料R2(ガス化しなかった可燃物Cも含む、以下「混合原料M」という。)をセメント焼成装置10のセメントキルン13の窯尻13aから仮焼炉12の領域に供給する供給装置5を備える。尚、図1では、サイクロン11Bが2つ描かれているが、説明の便宜上であり、2つは同一のものである。
【0019】
上記処理対象の可燃物Cは、廃プラスチック、廃タイヤ、もみがら、木屑、PKS、RDF、汚泥等の可燃性廃棄物や、石炭、コークス等の化石燃料等である。
【0020】
混合装置3は、水平軸3aに多数のブレード3bが取り付けられ、水平軸3aを回転させることでブレード3bも回転するパグミル等であって、可燃物Cを予熱原料R2と混合してガス化する。
【0021】
混合装置3の上方には散水装置(不図示)が設けられ、混合装置3内に散水され(水分Wが供給され)、水性ガス化反応が行われる。混合装置3には、急激な水蒸気発生によって飛散ダストが増大することを防止するため、フード3cが設けられる。
【0022】
混合装置3の下方には、シャットダンパー4が設置され、気密性を保ちながら混合原料Mを供給装置5を介してセメント焼成装置10のセメントキルン13の窯尻13aから仮焼炉12の領域に導入する。また、ガス化したガスGを排出する排気ダクト6が設けられ、排気ダクト6から排出されたガスGは、シャットダンパー4の下方で混合原料Mと合流し、供給装置5を介して、セメント焼成装置10のセメントキルン13の窯尻13aから仮焼炉12の領域に導入される。供給装置5にはシュート、ダクト、輸送機が利用される。
【0023】
上記処理装置1が付設されるセメント焼成装置10は、セメント原料R1を予熱するプレヒータ11と、プレヒータ11の下から2段目のサイクロン11Bからの予熱原料R2を仮焼する仮焼炉12と、プレヒータ11の最下段サイクロン11Aからの原料R3を主バーナー15から吹き込まれた燃料Fによって焼成するセメントキルン13と、セメントキルン13で焼成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラ14等で構成され、従来のものと同様である。尚、供給装置5による混合原料Mの供給位置には、本出願人による特許第6396433号の粉粒体分散装置を設置し、ガス化した可燃物C及び粉体の予熱原料をガス中に効果的に分散させることが好ましい。
【0024】
次に、上記処理装置1による可燃物の処理方法について、図1を参照しながら説明する。
【0025】
セメント焼成装置10の運転時に、ホッパ2に受け入れた可燃物Cを混合装置3に供給すると共に、プレヒータ11のサイクロン11Bから排出される予熱原料R2の一部を分取し、分取した予熱原料R2を混合装置3に導入する。尚、分取されなかった予熱原料R2は、通常通り仮焼炉5、最下段サイクロン11Aで脱炭酸された後、セメントキルン13で焼成されてセメントクリンカが生成する。
【0026】
混合装置3において、可燃物Cと予熱原料R2を混合撹拌しながら搬送し、分取した予熱原料R2によって可燃物Cを加熱してガス化すると共に、散水装置から散水し、水性ガス化反応を行う。可燃物Cを予熱原料R2と混合することで、ガス化の際に生じたタールによる付着トラブルを回避することができる。また、可燃物Cから発生した酸性ガスは予熱原料R2に固定することができる。さらに、ガス化により燃焼時間を短縮することができるため、従来の石炭燃焼用の仮焼炉12でも効果的に燃焼させることができ、石炭使用量及び発生するCOの量を削減することができる。
【0027】
尚、可燃物Cと予熱原料R2の混合割合は特に限定されないが、可燃物Cが混合装置3の内部や搬送路に付着する場合には、予熱原料R2の混合割合を増加させる。また、廃プラスチック等を処理する場合には、混合装置3の前段で予め200mm以下程度に破砕しておくことが好ましい。また、混合装置3における可燃物Cの滞留時間を5~15分とし、混合装置3の水平軸3aの回転速度を可変とし、滞留時間を調整できるように構成することが好ましい。
【0028】
また、混合装置3に酸素を導入せずに水蒸気で封印するため、爆発の危険性がなく、水性ガス化反応によりH2の還元剤が発生すると共に、予熱原料R2中のFe23もFeOに還元されるため、還元剤の量が飛躍的に増加する。
【0029】
混合装置3から排出された混合原料Mは、シャットダンパー4を経て、供給装置5によってセメント焼成装置10のセメントキルン13の窯尻13aから仮焼炉12の領域に供給される。上述のように、還元剤の量が飛躍的に増加しているため、セメントキルン燃焼ガス中のNOxを効果的に還元することができる。また、混合原料Mのうち、ガス化しなかった可燃物Cは、仮焼炉12で燃料代替として利用され、分取した予熱原料R2は仮焼炉12、最下段サイクロン11Aで脱炭酸された後、セメントキルン13で焼成されてセメントクリンカが生成する。
【0030】
尚、上記実施の形態においては、プレヒータ11のサイクロン11Bから予熱原料R2を分取したが、分取するセメント原料の温度が600℃以上900℃以下であれば他の部位から分取することもできる。
【0031】
また、散水装置を設け、混合装置3内に散水することで水性ガス化反応を行ったが、散水をせずに、可燃物Cを分取した予熱原料R2で混合してガス化するだけでも、ガス化の際に生じたタールによる付着トラブルを回避することができ、ガス化により燃焼時間を短縮することができるなどの効果があり、処理装置1及びセメント焼成装置10の安定運転を維持しながら、可燃物Cを有効利用すると共に、セメントキルン排ガス中のNOx濃度を低減することができる。
【0032】
さらに、混合装置3の構成は上述のものに限定されず、可燃物Cを分取した予熱原料R2で混合してガス化することができれば、さらに、水分を添加して水性ガス化反応を行うことができれば、他の種類の装置でも採用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 可燃物の処理装置
2 ホッパ
3 混合装置
4 シャットダンパー
5 供給装置
6 排気ダクト
10 セメント焼成装置
11 プレヒータ
12 仮焼炉
13 セメントキルン
14 クリンカクーラ
15 主バーナー
図1