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特許7278411高速ビット誤り率(BER)統計値に基づく光学性能監視
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】高速ビット誤り率(BER)統計値に基づく光学性能監視
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/079 20130101AFI20230512BHJP
【FI】
H04B10/079 150
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021560075
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2020084501
(87)【国際公開番号】W WO2020207501
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】62/833,232
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/829,744
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504161984
【氏名又は名称】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】ジピン・ジアン
(72)【発明者】
【氏名】アリ・サレヒオムラン
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-082485(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02230782(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0157824(US,A1)
【文献】特開2011-089945(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106533998(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/079
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コヒーレント検出トランシーバであって、
性能モニタを備え、前記性能モニタは、
100マイクロ秒(μsec)以下のサンプリング時間間隔で受信される光信号の高速ビット誤り率を計算し、
ある期間にわたって、前記計算された高速ビット誤り率に関連するビット誤り率分布データを生成し、
前記ビット誤り率分布データの統計的属性データを抽出するために前記ビット誤り率分布データに、全雑音レベルに寄与する非線形雑音成分と線形雑音成分とを別々に決定するための統計的属性データを抽出するための、フィッティングされた分布曲線エンベロープ、平均値、中央値、モード値、標準偏差値、歪度値、ピアソンの係数値、非対称特性値、ポアソン偏差値、及び、分布データテールスロープ値のうちの少なくとも1つを含む統計的測定値を適用し、
全雑音レベルに寄与する非線形雑音成分と線形雑音成分とを別々に決定するために前記抽出された統計的属性データを処理する
ように構成され、
前記トランシーバは、別々に決定された非線形雑音成分及び線形雑音成分にしたがって送信されるべき光信号と関連付けられる出射電力を変更するように構成される、
光コヒーレント検出トランシーバ。
【請求項2】
前記サンプリング時間間隔が1ナノ秒(nsec)~100マイクロ秒(μsec)である、請求項1に記載の光コヒーレント検出トランシーバ。
【請求項3】
前記期間が10~50分である、請求項1又は2に記載の光コヒーレント検出トランシーバ。
【請求項4】
前記抽出された統計的属性データの前記処理は、人工ニューラルネットワーク(ANN)技術、線形/非線形回帰分析技術、サポートベクトル回帰技術、ランダムフォレスト技術、非線形曲線フィッティング技術、及び、経験式推定技術のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光コヒーレント検出トランシーバ。
【請求項5】
前記抽出された統計的属性データの前記処理は、前記統計的属性データ間の非線形関係をモデル化して前記非線形雑音成分及び線形雑音成分の雑音対信号比(NSR)を予測するように動作する多層パーセプトロン(MLP)ANN技術によって実行される、請求項4に記載の光コヒーレント検出トランシーバ。
【請求項6】
光ファイバベースの通信ネットワークの性能を監視するための方法であって、
100マイクロ秒(μsec)以下のサンプリング時間間隔で受信される光信号の高速ビット誤り率を計算するステップと、
ある期間にわたって、前記計算された高速ビット誤り率に関連するビット誤り率分布データを生成するステップと、
前記ビット誤り率分布データの統計的属性データを抽出するために前記ビット誤り率分布データに、全雑音レベルに寄与する非線形雑音成分と線形雑音成分とを別々に決定するための統計的属性データを抽出するための、フィッティングされた分布曲線エンベロープ、平均値、中央値、モード値、標準偏差値、歪度値、ピアソンの係数値、非対称特性値、ポアソン偏差値、及び、分布データテールスロープ値のうちの少なくとも1つを含む統計的測定値を適用するステップと、
全雑音レベルに寄与する非線形雑音成分と線形雑音成分とを別々に決定するために前記抽出された統計的属性データを処理するステップと、
別々に決定された非線形雑音成分及び線形雑音成分にしたがって送信されるべき光信号と関連付けられる出射電力を変更するステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記サンプリング時間間隔が1ナノ秒(nsec)~100マイクロ秒(μsec)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記期間が10~50分である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出された統計的属性データの前記処理は、人工ニューラルネットワーク(ANN)技術、線形/非線形回帰分析技術、サポートベクトル回帰技術、ランダムフォレスト技術、非線形曲線フィッティング技術、及び、経験式推定技術のうちの少なくとも1つを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出された統計的属性データの前記処理は、前記統計的属性データ間の非線形関係をモデル化して前記非線形雑音成分及び線形雑音成分の雑音対信号比(NSR)を予測するように動作する多層パーセプトロン(MLP)ANN技術によって実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
光ファイバ通信ネットワークであって、
少なくとも1つの光コヒーレント検出トランシーバを備え、
前記少なくとも1つの光コヒーレント検出トランシーバは、前記光ファイバ通信ネットワークを介して光信号を送受信するように構成され、
前記少なくとも1つの光コヒーレント検出トランシーバは、
性能モニタを備え、前記性能モニタは、
100マイクロ秒(μsec)以下のサンプリング時間間隔で受信される光信号の高速ビット誤り率を計算し、
ある期間にわたって、前記計算された高速ビット誤り率に関連するビット誤り率分布データを生成し、
前記ビット誤り率分布データの統計的属性データを抽出するために前記ビット誤り率分布データに、全雑音レベルに寄与する非線形雑音成分と線形雑音成分とを別々に決定するための統計的属性データを抽出するための、フィッティングされた分布曲線エンベロープ、平均値、中央値、モード値、標準偏差値、歪度値、ピアソンの係数値、非対称特性値、ポアソン偏差値、及び、分布データテールスロープ値のうちの少なくとも1つを含む統計的測定値を適用し、
全雑音レベルに寄与する非線形雑音成分と線形雑音成分とを別々に決定するために前記抽出された統計的属性データを処理する、
ように構成され、
前記少なくとも1つの光コヒーレント検出トランシーバは、別々に決定された非線形雑音成分及び線形雑音成分にしたがって送信されるべき光信号に関連する出射電力を変更するように構成される、
光ファイバ通信ネットワーク。
【請求項12】
前記サンプリング時間間隔が1ナノ秒(nsec)~100マイクロ秒(μsec)である、請求項11に記載の光ファイバ通信ネットワーク。
【請求項13】
前記期間が10~50分である、請求項11又は12に記載の光ファイバ通信ネットワーク。
【請求項14】
前記抽出された統計的属性データの前記処理は、人工ニューラルネットワーク(ANN)技術、線形/非線形回帰分析技術、サポートベクトル回帰技術、ランダムフォレスト技術、非線形曲線フィッティング技術、及び、経験式推定技術のうちの少なくとも1つを含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の光ファイバ通信ネットワーク。
【請求項15】
前記抽出された統計的属性データの前記処理は、前記統計的属性データ間の非線形関係をモデル化して前記非線形雑音成分及び線形雑音成分の雑音対信号比(NSR)を予測するように動作する多層パーセプトロン(MLP)ANN技術によって実行される、請求項14に記載の光ファイバ通信ネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2020年3月25日に出願された米国特許出願第16/829,744号の利益を主張し、この米国特許出願は、2019年4月12日に出願された米国仮出願第62/833,232号の利益を主張し、いずれの出願も「高速ビット誤り率(BER)統計値に基づく光学性能監視」と題され、これらの出願の内容は参照によりそれらの全体が本願に組み入れられる。
【0002】
本開示は、一般に、光ネットワークの分野に関し、特に、光ファイバベースの通信ネットワークの性能を監視することに関する。
【背景技術】
【0003】
高データスループットの要求に対処する際、例えば高密度波長分割多重(DWDM)ネットワークなどの光ファイバベースの通信ネットワークは、光ファイバに沿って異なる波長で動作する複数の光信号を組み合わせて同時に高速で送信するように構成される。そのようなDWDMネットワークは、複数の情報伝達光信号の伝送を容易にするために、様々な受動及び能動の処理要素を組み込む。しかしながら、これらの要素の幾つか及び光ファイバ自体の物理的特性は、ネットワークを通じて伝搬する光信号の品質に影響を及ぼす特定の雑音寄与度を導入し得る。
【0004】
光信号の品質は、一般に、光信号対雑音比(OSNR)によって定量化され、光信号対雑音比は、光信号がネットワークを通じて伝搬した後の受信雑音電力に対する受信光信号電力の比率を決定する性能測定指標である。他の一般的に適用される性能測定指標としては、ビット誤り率(BER)及びシンボル誤り率(SER)が挙げられる。これらの指標は、指定された期間中に受信されるビット/シンボルの総数に対する受信されて検出されるビット/シンボル誤りの数の比率を表わす。
【0005】
光ファイバ通信システムは、一般に、OSNR監視及びBER/SER測定技術を使用して、性能に影響を及ぼす全雑音寄与度の集約効果を決定する。しかしながら、雑音の構成成分の監視は、構成雑音成分の特定の発生源を検出及び分析するのに有利となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、光ファイバベースの通信ネットワークの性能を監視するための、特に、全雑音レベルに寄与する線形及び非線形雑音成分を決定するための方法を提供することである。方法は、100マイクロ秒(μsec)以下のサンプリング時間間隔で受信される光信号の高速ビット誤り率を計算するステップと、ある期間にわたって、計算された高速ビット誤り率に関連するビット誤り率分布データを生成するステップと、ビット誤り率分布データの統計的属性データを抽出するためにビット誤り率分布データに統計的測定値を適用するステップと、全雑音レベルに寄与する非線形雑音成分と線形雑音成分とを別々に決定するために抽出された統計的属性データを処理するステップと、別々に決定された非線形雑音成分及び線形雑音成分にしたがって送信されるべき光信号と関連付けられる出射電力を変更するステップとを含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的によれば、本開示の一態様は、サンプリング時間間隔が1ナノ秒(nsec)~100マイクロ秒(μsec)であることを提供する。
【0008】
この目的によれば、本開示の一態様は、期間が10~50分であることを提供する。
【0009】
本開示の更なる態様は、ビット誤り率分布データに適用される統計的測定値が、フィッティングされた分布曲線エンベロープ、平均値、中央値、モード値、標準偏差値、歪度値、ピアソンの係数値、非対称特性値、ポアソン偏差値、及び、分布データテールスロープ値のうちの少なくとも1つを含むことを提供する。
【0010】
本開示の更なる態様は、抽出された統計的属性データの処理が、人工ニューラルネットワーク(ANN)技術、線形/非線形回帰分析技術、サポートベクトル回帰技術、ランダムフォレスト技術、非線形曲線フィッティング技術、及び、経験式推定技術のうちの少なくとも1つを含むことを提供する。
【0011】
本開示の他の目的は、光コヒーレント検出トランシーバであって、性能モニタを備え、性能モニタが、100マイクロ秒(μsec)以下のサンプリング時間間隔で受信される光信号の高速ビット誤り率を計算し、ある期間にわたって、計算された高速ビット誤り率に関連するビット誤り率分布データを生成し、ビット誤り率分布データの統計的属性データを抽出するためにビット誤り率分布データに統計的測定値を適用し、全雑音レベルに寄与する非線形雑音成分と線形雑音成分とを別々に決定するために抽出された統計的属性データを処理するように構成され、トランシーバが、別々に決定された非線形雑音成分及び線形雑音成分にしたがって送信されるべき光信号と関連付けられる出射電力を変更するように構成される、光コヒーレント検出トランシーバを提供することである。
【0012】
本開示の他の態様によれば、サンプリング時間間隔が1ナノ秒(nsec)~100マイクロ秒(μsec)である、光コヒーレント検出トランシーバ。
【0013】
本開示の他の態様によれば、期間が10~50分である、光コヒーレント検出トランシーバ。
【0014】
本開示の他の態様によれば、光コヒーレント検出トランシーバであって、ビット誤り率分布データに適用される統計的測定値が、フィッティングされた分布曲線エンベロープ、平均値、中央値、モード値、標準偏差値、歪度値、ピアソンの係数値、非対称特性値、ポアソン偏差値、及び、分布データテールスロープ値のうちの少なくとも1つを含む、光コヒーレント検出トランシーバ。
【0015】
本開示の他の態様によれば、抽出された統計的属性データの処理が、人工ニューラルネットワーク(ANN)技術、線形/非線形回帰分析技術、サポートベクトル回帰技術、ランダムフォレスト技術、非線形曲線フィッティング技術、及び、経験式推定技術のうちの少なくとも1つを含む、光コヒーレント検出トランシーバ。
【0016】
本開示の他の態様によれば、抽出された統計的属性データの処理が、統計的属性データ間の非線形関係をモデル化して非線形雑音成分及び線形雑音成分の雑音対信号比(NSR)を予測するように動作する多層パーセプトロン(MLP)ANN技術によって実行される、光コヒーレント検出トランシーバ。
【0017】
本発明の他の目的は、少なくとも1つの光コヒーレント検出トランシーバを備える光ファイバ通信ネットワークであって、少なくとも1つの光コヒーレント検出トランシーバが、光ファイバ通信ネットワークを介して光信号を送受信するように構成され、少なくとも1つの光コヒーレント検出トランシーバが性能モニタを備え、性能モニタが、100マイクロ秒(μsec)以下のサンプリング時間間隔で受信される光信号の高速ビット誤り率を計算し、ある期間にわたって、計算された高速ビット誤り率に関連するビット誤り率分布データを生成し、ビット誤り率分布データの統計的属性データを抽出するためにビット誤り率分布データに統計的測定値を適用し、全雑音レベルに寄与する非線形雑音成分と線形雑音成分とを別々に決定するために抽出された統計的属性データを処理するように構成され、少なくとも1つの光コヒーレント検出トランシーバが、別々に決定された非線形雑音成分及び線形雑音成分にしたがって送信されるべき光信号に関連する出射電力を変更するように構成される、光ファイバ通信ネットワークを提供する。
【0018】
本開示の他の態様によれば、サンプリング時間間隔が1ナノ秒(nsec)~100マイクロ秒(μsec)である、光ファイバ通信ネットワーク。
【0019】
本開示の他の態様によれば、期間が10~50分である光ファイバ通信ネットワーク。
【0020】
本開示の他の態様によれば、光ファイバ通信ネットワークであって、ビット誤り率分布データに適用される統計的測定値が、フィッティングされた分布曲線エンベロープ、平均値、中央値、モード値、標準偏差値、歪度値、ピアソンの係数値、非対称特性値、ポアソン偏差値、及び、分布データテールスロープ値のうちの少なくとも1つを含む、光ファイバ通信ネットワーク。
【0021】
本開示の他の態様によれば、抽出された統計的属性データの処理が、人工ニューラルネットワーク(ANN)技術、線形/非線形回帰分析技術、サポートベクトル回帰技術、ランダムフォレスト技術、非線形曲線フィッティング技術、及び、経験式推定技術のうちの少なくとも1つを含む、光ファイバ通信ネットワーク。
【0022】
本開示の他の態様によれば、抽出された統計的属性データの処理が、統計的属性データ間の非線形関係をモデル化して非線形雑音成分及び線形雑音成分の雑音対信号比(NSR)を予測するように動作する多層パーセプトロン(MLP)ANN技術によって実行される、光ファイバ通信ネットワーク。
【0023】
本開示の特徴及び利点は、添付図面と組み合わせて解釈される、以下の詳細な説明から明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(従来技術)光ネットワークのブロック図を示す。
図2】2つの再構成可能光分岐挿入装置(ROADM)間のリンクのブロック図を示す。
図3】本開示の様々な実施形態に係る、光コヒーレント検出トランシーバのそれぞれで用いられる性能モニタの高レベル機能ブロック図を示す。
図4】本開示の様々な実施形態に係る、特定の光ファイバ通信シナリオに関するFASTビット誤り率(BER)分布データヒストグラムを示す。
図5】本開示の様々な実施形態に係る、光ファイバ通信シナリオに関する典型的なFAST BER分布データヒストグラムを示す。
図6】本開示の様々な実施形態に係る、線形及び非線形雑音寄与度を予測する代表的なANN処理技術を示す。
図7A1】ANN予測線形及び非線形雑音寄与度と実測線形及び非線形雑音寄与度との間の誤差をグラフで示す。
図7A2】ANN予測線形及び非線形雑音寄与度と実測線形及び非線形雑音寄与度との間の誤差をグラフで示す。
図7B1】ANN予測線形及び非線形雑音寄与度と実測線形及び非線形雑音寄与度との間の誤差をグラフで示す。
図7B2】ANN予測線形及び非線形雑音寄与度と実測線形及び非線形雑音寄与度との間の誤差をグラフで示す。
図8A】ANN予測線形及び非線形雑音値と実測線形及び非線形雑音値との間の正規化されたパーセント誤差をグラフで示す。
図8B】ANN予測線形及び非線形雑音値と実測線形及び非線形雑音値との間の正規化されたパーセント誤差をグラフで示す。
図8C】ANN予測線形値及び非線形値の絶対パーセント誤差をグラフで示す。
図9】本開示の様々な実施形態に係る、光ファイバベースの通信ネットワークの性能を監視するための方法に関する機能フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面及び対応する説明の全体にわたって同様の特徴は同様の参照符号によって特定されることが理解されるべきである。更に、図面及び以下の説明が単なる例示目的を意図しており、そのような開示が請求項の範囲を限定しようとするものでないことが理解されるべきである。
【0026】
本明細書中で使用される用語「約」又は「およそ」は、公称値から±10%の変動を指す。そのような変動が、具体的に言及されるか否かにかかわらず、本明細書中で与えられる所定の値に常に含まれることが、理解されるべきである。
【0027】
別段規定されなければ、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、記載される実施形態が属する分野の当業者によって共通に理解される意味と同じ意味を有する。
【0028】
本開示は、光ファイバベースの通信ネットワークの性能を監視するための方法及びシステムに関する。特に、光ファイバベースのネットワークの性能を向上させるべく、雑音成分の特定の発生源を検出及び分析するために。
【0029】
ここで図面を参照すると、図1は、従来の光ファイバベースの通信ネットワーク100のブロック図を示す。図示のように、光ファイバネットワーク100は一般に複数のノードを含む。各ノードは、例えば、少なくとも1つの波長選択スイッチ(WSS)を含む再構成可能光分岐挿入装置(ROADM)10などの光分岐挿入装置を含んでもよい。
【0030】
光ネットワーク100は、光信号を増幅するために、1つ以上のレーザ光源並びに複数の光増幅器、例えばエルビウムがドープされたファイバ増幅器(EDFA)を組み込んでもよい。光ネットワーク100は、例えば、光学フィルタ、WSS、アレイ導波路格子、及び、他の適切な構成要素などの、(能動及び受動素子/モジュールのいずれか又は両方を含んでもよい)1つ以上の光ネットワーク素子及びモジュールを更に使用してもよい。しかしながら、簡単のため及び扱い易さのため、これらの要素は図1から省かれてしまっている。
【0031】
図2は、高速高密度波長分割多重(DWDM)光ファイバ通信ネットワークの2つのROADM 10a、10b間のリンク部200のより詳細な図を示す。ROADM 10a、10bはそれぞれ光コヒーレント検出トランシーバ227a、227bに通信可能に結合され、光コヒーレント検出トランシーバ227a、227bはそれぞれ送信機Tx 220a及び受信機Rx 225a、220b並びにTx 220b及び受信機Rx 225bを含むことができる。ROADM 10a、10bは、1つ以上のDWDM信号202、204を送信、受信、及び、処理するように構成される。
【0032】
また、リンク200は、例えばEDFAなどの複数の光増幅器12も含む。光増幅器12は、例えば、中程度の範囲の距離用の標準シングルモードファイバ(SSMF)又はより長い範囲の距離用の大有効面積ファイバ(LEAF)を備える光ファイバセグメントによって相互接続されてもよい。
【0033】
リンク部200を通じて伝搬する光信号の品質は、一般に、OSNR値指標によって定量化される。OSNRは、所定の帯域幅内の受信雑音電力に対する受信光信号電力の比率として表わされてもよい
【数1】
ここで、Piはi番目の光チャネルにおける光信号電力であり、Bmは等価雑音帯域幅であり、NiはBm内に導入された雑音電力であり、Brは基準光帯域幅である。
【0034】
リンク部200を通じて伝搬する光信号の他の一般的に適用される性能測定指標は、ビット誤り率(BER)及びシンボル誤り率(SER)のうちの少なくとも一方の測定値であり、この測定値は、特定の期間中の受信されたビット/シンボルの総数に対する受信されて検出されたビット/シンボル誤りの数の比率を示す。所定の変調コンステレーションに関して、SERとBERとの間に倍率関係が存在する(例えば、コンステレーションシェーピング16QAM、SERはBERの約3.7倍である)。BER/SERは、一般に、1秒のサンプリング時間間隔にわたって平均化され、サンプリング時間間隔は、それぞれのサンプリング時間間隔に関して平均BER/SER、最小BER/SER、及び、最大BER/SERを報告するために、しばしば5分、10分、15分など延長される。
【0035】
光信号性能に関して、前述したように、光ファイバネットワーク処理要素は、光ファイバ自体の特性と共に、ネットワークを通じて伝搬する光信号の品質に影響を及ぼす特定の雑音寄与度を導入することができる。特に、光増幅器は、光チャネル信号に雑音を著しく導入する場合がある。そのような雑音は、自然放射増幅光(ASE)に関連し、光リンクのOSNR及びBER/SER指標に影響を与える全光リンク雑音に寄与する。
【0036】
全光リンク雑音量に寄与する他の重要な因子は、ファイバ非線形(FNL)雑音である。FNL雑音は、自己位相変調(SPM)及び相互位相変調(XPM)などのコヒーレントファイバ光通信システムにより受けられるファイバ非線形性に由来する。SPMは、信号チャネル自体の属性によって引き起こされる非線形効果を誘発し、一方、XPMは、隣り合う信号チャネルによって引き起こされる非線形効果を誘発する。SPM/XPMによって引き起こされるFNL雑音は、ASE雑音として振る舞い、しばしば誤って特徴付けられ、それにより、光リンクのOSNRに更に影響を与える。
【0037】
前述したように、伝搬する光信号の品質を測定及び管理するために、光ファイバ通信システムは、全光リンク雑音に基づいてOSNR及びBER/SER性能指標値を決定する監視技術を使用する。言い換えると、従来のOSNR及びBER/SER監視技術は、全光リンク雑音に寄与する成分ASE及びFNL雑音成分の集約効果を定量化するように動作する。しかしながら、そのような従来技術は、OSNR及びBER/SER性能指標に対するASE雑音成分及びFNL雑音成分のそれぞれの影響同士の間を監視、測定、又は、区別しない。
【0038】
FNL雑音の影響を検出、定量化してASE雑音寄与度から分離できる能力が、光ファイバネットワーク及び関連する動作要素の性能を向上させる動作及び構成測定を決定する際にかなりの利点を与えることが理解されるべきである。例えば、FNL雑音の影響を定量化することは、チャネル電力最適化、障害位置特定、最適なシステムパラメータ構成などを決定する際に有用な情報を与える。
【0039】
前述したように、従来の光コヒーレント検出トランシーバによって計算される典型的なBER/SER測定値は、全リンク雑音を表わす性能統計値を生成するために、≧1秒の時間窓にわたって平均化される。しかしながら、これらのBER/SER統計値は、OSNRに対するFNL雑音の影響をASE雑音の影響から区別するためのFNL雑音挙動に関するいかなる有用な情報も提供しない。
【0040】
このように、本開示の様々な実施形態は、全リンク雑音に対するFNL雑音の寄与度をASE雑音から区別する光ファイバベースの通信ネットワークの性能を監視するための方法及びシステムに関する。
【0041】
図3は、本開示の様々な実施形態に係る、光コヒーレント検出トランシーバ227a及び227bのそれぞれで用いられる性能モニタ240の高レベル機能ブロック図を示す。特定の実施形態において、光コヒーレント検出トランシーバ227bは、光コヒーレント検出トランシーバ227aによって送信される光信号を受信するように構成されてもよい。光コヒーレント検出トランシーバ227bは、受信される光信号の品質を測定及び管理するべく更なる処理のために受信される光信号を性能モニタ240に与えることができる。したがって、性能モニタ240は、100マイクロ秒(μsec)以下のサンプリング時間間隔で受信される光信号のFAST BERを計算するように構成されてもよい。特定の実施形態において、サンプリング時間間隔は、1ナノ秒(nsec)~100マイクロ秒(μsec)であってもよい。
【0042】
特定の実施形態において、性能モニタ240は、特定の期間にわたって計算されたFAST BERを観察するように構成されてもよい。非限定的な例として、性能モニタ240は、1μsecのサンプリング間隔で受信される光信号のFAST BERを計算することができ、性能モニタ240は、次の15分間FAST BERを観察することができる。性能モニタがFAST BERを観察する期間が10~50分まで変化し得ることが理解されるべきである。FAST BERが観測されている期間にわたって、性能モニタ240は、FAST BERを表わす高分解能分布データ及び関連する分布曲線ヒストグラムを生成することができる。BERの計算に関連するサンプリング時間間隔をnsec又はμsecまで実質的に減少させることによって、そのような加速されたBER/SER計算(本明細書ではまとめて「FAST BER」と称される)が、ASE及びFNL雑音寄与度を示す有用な情報を含むより詳細な統計値及びより高い分解能の分布を生成することが実験的に観察されてきた。一例として、50nsecのサンプリング時間間隔が1秒で2000万のBER/SER測定値をもたらし、それにより、統計的にロバスト性が高い、より高分解能のBER/SER分布曲線が与えられる。
【0043】
図4は、本開示の様々な実施形態に係る、3つの同一に構成された光ファイバ通信実験シナリオに関するFAST BER計算によって生成されたBER分布ヒストグラムを示す。具体的には、光ファイバ通信シナリオ構成は、15個の光ファイバセグメントを含む光ファイバリンクを組み込み、この場合、各セグメントは、80kmの距離に及ぶシングルモードファイバ(SMF)、16QAMコンステレーションを備える信号フォーマット、及び、チャネル40で動作する試験信号を伴うC帯域の80チャネルを占有する完全装荷システムを備える。更に、FAST BER計算は、327,680個のBER測定値をレンダリングするために34GBaud/秒で動作する1280個の送信シンボルをサービスする37.6nsecのサンプリング時間間隔を含む。リアルタイムの用途では、総測定期間が容易に数秒又は数分に至る場合があり、その結果、測定値の数は、より一層詳細なFAST BER分布曲線を提供するべくより大きな規模の程度に達し得ることに留意すべきである。
【0044】
図4に戻ると、図4A1図4A3図4B1図4B3、及び、図4C1図4C3はそれぞれ、0.0dBm、2.0dBm、及び、4.0dBmの光ファイバ通信シナリオ構成に導入された光信号出射電力レベルの関数として、2×10-2、3×10-2、及び、3.5×10-2の目標平均BERに関するFAST BER分布ヒストグラムを示す。
【0045】
図示のように、0.0dBmの光信号出射電力レベルの場合、図4A1図4B1図4C1はそれぞれ、光ファイバ通信シナリオ構成の2×10-2、3×10-2、及び3.5×10-2の目標平均BERのそれぞれに関して、FAST BER計算が、(実線で示される)理論的なポアソン確率分布モデルに実質的に一致する分布を与えることを示す。これらの結果は、比較的低い光信号電力レベルでは、FNL雑音が比較的小さく、FAST BER分布に大きく影響しないことを証明している。したがって、0.0dBmの電力レベルでは、ポアソン分布モデルからの任意の僅かな偏差は、FNL雑音からの寄与度が小さい状態でASE雑音寄与度に直接に起因する。
【0046】
これに対し、図4A2図4B2図4C2及び図4A3図4B3図4C3はそれぞれ、光信号出射電力レベルが2.0dBm及び4.0dBmまで増大される際のFAST BER分布ヒストグラムを示す。図示されたFAST BER分布は、目標BER(例えば、2×10-2、3×10-2、及び3.5×10-2)のそれぞれに関して、光信号出射電力が増加されるにつれて、ポアソンモデルからの有意な非対称の傾斜偏差が生成されることを実証している。具体的には、FAST BER分布は、実質的に傾斜した密なテール部を示す。これらの結果は、かなりの光信号出射電力レベルにおいて、光ファイバの非線形特性が、FNL雑音寄与度を誘発するように動作する光信号電力レベルによって影響されることを証明している。そして、nsec/μsecの時間間隔窓において、これらのFNL雑音の寄与度は、傾斜した密の分布テール部として現れる。
【0047】
したがって、本開示の様々な実施形態によれば、光ファイバネットワークのためのASE及びFNL雑音寄与度に関する情報を提供するためにFAST BER分布の特性が利用されてもよい。例えば、図示された分布は、同じ目標BERに関して、全リンク雑音が同じであることを示し、したがって、変化するのは、光出射電力が増加するにつれて、FNL雑音寄与度に対するASEの比率である。更に、図示された分布は、同じ出射電力に関して、FNL雑音寄与度が同じであるが、ASE雑音寄与度が異なることも示す。更に、図示の分布は、光出射電力が増加するにつれて、特に右の分布テールに関して、誤りカウント分布に有意差があることも示す。これらの示された分布特性のそれぞれを分析及び処理して、ASE及びFNL雑音寄与度を個別に定量化する情報を抽出することができる。
【0048】
具体的には、本開示の様々な実施形態によれば、1つ以上の統計的指標を分布特性に適用して、雑音寄与度を示すデータを抽出することができる。特定の実施形態において、性能モニタ240は、FAST BER分布データの統計的属性データを抽出するために、FAST BER分布データに様々な統計的演算及び計算演算を適用するように構成されてもよい。
【0049】
特に、図5は、本開示の様々な実施形態に係る、代表的なFAST BER分布ヒストグラムを示す。簡単にするために、図示された分布ヒストグラムは、FAST BER計算分布データ(星形プロットによって示される)を、例えばフィッティングされた分布曲線包絡線、分布データの平均、中央値、及び、モードなどの分布データに適用され得る様々な統計的指標を示す重ね合わされた基準線と共に示す。更に、図5に列挙されるように、例えば標準偏差、歪度、ピアソン係数、非対称性、ポアソンモデルからの偏差、テールスロープなどの他の統計的指標が更に適用されてもよい。開示された実施形態によれば、BER分布に適用される示された統計的測定値が決して限定しようとするものでないことが理解され得る。
【0050】
その後、FAST BER分布から抽出される測定された統計データは、ASE及びFNL雑音寄与度を決定して定量化するために、性能モニタ240によって処理されてもよい。開示された実施形態によれば、そのような処理としては、人工ニューラルネットワーク(ANN)技術、線形/非線形回帰分析技術、サポートベクトル回帰技術、ランダムフォレスト技術、非線形曲線フィッティング技術、実験式推定技術などを挙げることができる。開示された実施形態によれば、測定された統計データに適用される示された処理技術は、決して限定しようとするものでないことも理解され得る。
【0051】
図6は、本開示の一実施形態に係る、BER分布データから抽出された測定された統計データに基づいて個々のASE及びFNL雑音寄与度を決定して定量化する代表的なANN処理技術500を示す。図示の実施形態において、処理技術500は、BER分布データから抽出された測定された統計データと推定/予測された雑音対信号比(NSR)(すなわち、OSNRの逆数)との間の非線形関係をモデル化するように動作する多層パーセプトロン(MLP)ANNとして構築される。
【0052】
一般的なMLP ANNアーキテクチャは、動作ノードを含む少なくとも3つの層、すなわち、入力層、1つ以上の隠れ層、及び、出力層から成る。隠れ層は、入力データ(例えば、この場合、測定されたBER統計データ)と出力情報(例えば、この場合、推定/予測されたNSR)との間の非線形関係特性を学習するように構成される。したがって、隠れ層のノードは、例えば、受信されるノードデータ、所定の重み係数、及び、バイアス値に基づいて計算を実行するガウス関数、ロジスティック関数、双曲線関数などの非線形活性化関数を実行する人工ニューロンとして特徴付けられる。最終的な推定値(例えば、この場合、予測されたNSR)が出力層ノードに転送されるまで、1つの隠れ層の人工ニューロンは、計算値を、同様の計算を実行する後続の隠れ層のニューロンに通信する。
【0053】
図示の実施形態において、MLP ANN 500は、それぞれが3つのノード(例えば、i=1,2,3)を備える2つの隠れ層(例えば、g(a1 i)、g(a2 i))と、2つのノード(例えば、a3 1、a3 2)を備える出力層とを伴って構成される。図示のように、MLP ANN 500入力には、BER分布データの平均及び非対称性を示す測定された統計データが供給される。MLP ANN 500は、隠れ層全体にわたって非線形活性化関数及び関連する重み係数を適用することによって、入力された測定された統計データを処理するように動作する。MLP ANNをトレーニングするために、前述した光ファイバ通信シミュレーション試行シナリオ条件のそれぞれが20回処理され、また、Fast BERを使用して、非線形FNL雑音に起因する予測NSR及び線形ASE雑音に起因する予測NSRを表わす情報を抽出した。
【0054】
図7A1は、非線形FNL雑音寄与度に関するMLP ANN 500予測値を、実測非線形OSNRの関数としてグラフで示し、一方、図7A2は、ANN 500予測非線形FNL雑音寄与度値と実測非線形FNL雑音寄与度値との間の誤差をグラフで定量化する。したがって、非線形OSNRを測定する間の雑音寄与度はFNL雑音である。同様に、図7B1は、線形ASE雑音寄与度に関するMLP ANN 500予測値を実測線形OSNRの関数としてグラフで示し、図7B2は、ANN 500予測線形ASE雑音寄与度値と実測線形ASE雑音寄与度値との間の誤差をグラフで定量化する。したがって、線形OSNRを測定する間の雑音寄与度はASE雑音である。
【0055】
図7A2の定量化された予測誤差グラフは、ANN 500予測非線形FNL雑音寄与度値と実測非線形FNL雑音寄与度値との間の誤差が約2.0dBの許容範囲内に実質的に限定されることを実証する。同様に、図7B2の定量化された予測誤差グラフは、ANN 500予測線形ASE雑音寄与度値と実測線形ASE雑音寄与度値との間の誤差が約0.5dB未満の許容範囲内に実質的に限定されることを実証する。
【0056】
そうすることで、図7A2図7B2の定量化された予測誤差グラフは、ANN 500予測非線形FNL及びASE線形雑音寄与度値と実測非線形FNL及び線形ASE雑音寄与度値との間の実質的な一致を確認する。
【0057】
同様の線に沿って、図8Aは、非線形FNL雑音に起因する予測ANN 500 NSR値とFNL雑音に起因する実測NSR値との間の正規化されたパーセント誤差をグラフで示す。図8Bは、線形ASE雑音に起因する予測ANN 500 NSR値とASE雑音に起因する実測NSR値との間の正規化されたパーセント誤差をグラフで示す。図8A図8Bに示されるように、予測ANN 500 NSR値と実測NSR値との間の正規化されたパーセント誤差は、約8%の許容できる許容誤差範囲内にある。
【0058】
図8Cは、ANN 500予測線形値及び非線形値の平均絶対パーセント誤差をグラフで示す。平均絶対パーセント誤差は、従来のBER対OSNR(BO)分布曲線及び全雑音に対して正規化されるANN 500予測分布曲線の線形雑音値と非線形雑音値との間の差を定量化する。精度のこの指標は、特に雑音成分のうちの1つが他の雑音成分よりも実質的に小さい場合、絶対誤差よりも有意であることが理解される。図示のように、平均絶対パーセント誤差が4%未満の分散を示すため、従来の分布曲線とANN 500分布曲線との間に実質的な一致がある。
【0059】
図3に戻ると、性能モニタ240は、OSNR及びBER/SER性能測定指標に対するASE雑音成分及びFNL雑音成分の影響を別々に決定することができる。前述のように、光ファイバへの光信号出射電力が増加すると、ASE雑音成分は減少するが、FNL雑音成分は増加する。特定の実施形態において、光コヒーレント検出トランシーバ227a及び227bは、別個に決定されたASE雑音成分及びFNL雑音成分にしたがって光信号出射電力を変更することができる。光信号出射電力の変化は、増加、減少、リセットなどを含み得るが、これらに限定されない。例えば、光コヒーレント検出トランシーバ227a及び227bなどは、決定されたFNL雑音成分が高すぎる場合、光信号出射電力を減少させることができる。
【0060】
本開示の特定の非限定的な実施形態では、OSNR及びBER/SER性能測定指標に対するASE雑音成分及びFNL雑音成分の影響を別々に決定したことに基づいて、性能モニタ240が動作雑音マージンをより効率的に推定することができる。その際、性能モニタ240は、光リンクのロバスト性など、対応する光リンクの健全性を評価するように更に構成されてもよい。特定の実施形態では、一部の光リンクの健全性が特定の閾値を下回る場合、性能モニタ240は、高い優先度のトラフィックデータをより高い動作雑音マージンを有する他のリンクに再ルーティングし、低い動作雑音マージンを有するリンクを使用して低い優先度のトラフィックデータを搬送するように構成され得る。
【0061】
図9は、本開示の様々な実施形態に係る、光ファイバベースの通信ネットワークの性能を監視することを対象としたプロセス800を示すフローチャートを描く。プロセス800はタスクブロック802で開始し、このブロックにおいて、性能モニタ240は、100マイクロ秒(μsec)以下のサンプリング時間間隔で受信される光信号のFAST BERを計算する。前述したように、FAST BER計算は、サンプリング時間間隔を100μsec未満の大きさ程度まで、特に10、20、30又はそのようなnsec~10、20、30又はそのようなμsecなどのnsec~μsec程度まで減少させることによって達成され、それにより、FAST BERは、従来のBER測定よりも大幅に増加した量のBER測定データを生成して、より詳細な誤差統計値及びより高い分解能の分布データを提供する。
【0062】
プロセス800のタスクブロック804において、性能モニタ240は、ある期間にわたって、計算された高速ビット誤り率に関連するビット誤り率分布データを生成するように動作する。詳細な分布曲線は、ASE及びFNL雑音寄与度を明らかにするために利用され得る特定の情報特性を明示し得る。次に、タスクブロック806において、性能モニタ240は、対象の統計的測定値を分布曲線に適用して、統計的データ属性を抽出する。前述して図5に示されるように、性能特性を示す詳細な分布曲線が与えられると、例えば平均、中央値、モード標準偏差、歪度、ピアソン係数、非対称性、ポアソンモデルからの偏差、テールスロープなどの様々な統計的測定値を適用して分布曲線から関連する統計的データ属性を抽出することができる。
【0063】
タスクブロック808において、性能モニタ240は、分布曲線の抽出された関連する統計的データ属性を処理して、全リンク雑音に対するASE及びFNL雑音寄与度を決定して定量化する。前述したように、抽出された統計的データ属性の処理としては、人工ニューラルネットワーク(ANN)技術、線形/非線形回帰分析技術、サポートベクタ回帰技術、ランダムフォレスト技術、非線形曲線フィッティング技術、経験式推定技術などを挙げることができる。これらの処理技術は、NSRレベルに寄与するASE及びFNL雑音成分を特定するように構成され得る。
【0064】
最後にタスクブロック810において、少なくとも一方の光コヒーレント検出トランシーバ227a及び227bは、別々に決定された非線形雑音成分及び線形雑音成分にしたがって送信されるべき光信号に関連する出射電力を変更する。例えば、光コヒーレント検出トランシーバ227a及び227bなどは、決定されたFNL雑音成分が高すぎる場合、光信号出射電力を減少させることができる。
【0065】
したがって、開示された実施形態によれば、FAST BER及び統計的測定技術を適用してASE雑音からのFNL雑音の寄与度を別々に検出して定量化することによって、光ファイバベースの通信ネットワーク性能の効果的な監視及び最適化を達成することができる。FNL及びASE雑音寄与度のそのような別個の検出は、光ファイバネットワークの性能を向上させる動作パラメータ及び構成パラメータを最適化する機会を可能にする。送信されるべき光信号と関連付けられる出射電力は、別個に決定されたFNL雑音成分及びASE雑音成分にしたがって変更されてもよいが、別個に決定されたFNL雑音成分及びASE雑音成分情報は、様々な他の有形の用途及び関連する特定のシステム要件において使用されてもよいことが理解され得る。
【0066】
開示された方法の動作及び機能が、ハードウェアベース要素、ソフトウェアベース要素、ファームウェアベース要素のうちの少なくとも1つによって達成され得ることが、理解されるべきである。そのような動作の代替形態は、決して本開示の範囲を限定するものではない。特に、性能モニタ240及びプロセス800は、コンピュータ、メモリに動作可能に接続されるプロセッサ、又は、機械によって実施される一連の動作を含むことができ、これらの動作は、機械、プロセッサ、又は、コンピュータによって読み取り可能な一連の命令として記憶することができ、非一時的な有形の媒体に記憶することができる。
【0067】
本明細書中に提示された原理及び実施形態を特定の特徴、構造、及び、実施形態に関連して説明してきたが、そのような開示から逸脱することなく様々な修正及び組み合わせが成され得ることが明らかであることもまた理解されるべきである。したがって、明細書及び図面は、添付の特許請求の範囲によって規定される発明の実施形態及び原理の例示として単にみなされるべきであり、本開示の範囲内に含まれるありとあらゆる修正、変形、組み合わせ、又は、均等物を包含すると考えられる。
【符号の説明】
【0068】
12 光増幅器
100 光ネットワーク、光ファイバネットワーク
10a ROADM
10b ROADM
200 リンク部
202 信号
204 信号
220a 送信機
220b 送信機
225a 受信機
225b 受信機
227a 光コヒーレント検出トランシーバ
227b 光コヒーレント検出トランシーバ
240 性能モニタ
500 処理技術
800 プロセス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A1
図7A2
図7B1
図7B2
図8A
図8B
図8C
図9
【図 】
【図 】
【図 】
【図 】
【図 】
【図 】
【図 】