(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】アピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物およびそれから製造された生体適合性ポリマー系アピキサバン含有微粒球
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20230512BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20230512BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230512BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230512BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230512BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230512BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230512BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61K47/06
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/34
A61K9/10
A61K9/16
A61P7/02
(21)【出願番号】P 2021560156
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 KR2020003876
(87)【国際公開番号】W WO2020197185
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0035354
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521438663
【氏名又は名称】エイチエルビー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HLB PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ドヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、イェ-ジ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ ヒョン
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530141(JP,A)
【文献】特表2001-515862(JP,A)
【文献】特開2015-110637(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105997887(CN,A)
【文献】CHU, Dafeng et al.,CHEM. PHARM. BULL,2007年,vol. 55, no. 4,pages 625 - 628
【文献】YASUDA, Chikao et al,Pathophysiology,2010年,Vol.17, No.2,pages 149-155
【文献】NIWA, T. et al.,International Journal of Pharmaceutics,1995年,Vol.121, No.1,pages 45-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐放性の注射可能な製剤のためのアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物であって、前記アピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物は、
i)アピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩;
ii)生体適合性ポリマー;
iii)
アピキサバンの結晶およびポリマーアピキサバン沈殿物の形成を抑制するための脂肪酸またはトリグリセリド;および
iv)ハロゲン有機溶媒、
を含
み、
前記生体適合性ポリマーは、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)およびポリカプロラクトン(PCL)からなる群より選択されたいずれか1つ以上のものである、アピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項2】
前記アピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩が、前記生体適合性ポリマーに対して10~50重量%で含まれるものである、請求項1に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項3】
前記ポリ乳酸-グリコール酸共重合体におけるラクチド:グリコリドの平均比率が、50:50~95:5である、請求項
1に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項4】
前記生体適合性ポリマーが、前記ハロゲン有機溶媒に対して5~30w/v%の量で含まれるものである、請求項1に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸が、1つ以上のカルボキシル基を有する炭素数12~18の脂肪酸である、請求項1に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸が、ステアリン酸(stearic acid)またはラウリン酸(lauric acid)である、請求項
5に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項7】
前記トリグリセリドが、炭素数10以上の脂肪酸3個とグリセロールとがエステル結合で形成されたものである、請求項1に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項8】
前記トリグリセリドが、トリドデカン酸グリセリル(glyceryl tridodecanoate)である、請求項
7に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸が、アピキサバンに対して1倍超~5倍未満のモル比で含まれ、前記生体適合性ポリマーに対して50重量%以下の量で含まれるものである、請求項1に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項10】
前記トリグリセリドが、アピキサバンに対して0.3倍超~1.6倍のモル比で含まれ、前記生体適合性ポリマーに対して50重量%以下の量で含まれるものである、請求項1に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項11】
前記ハロゲン有機溶媒が、ジクロロメタンである、請求項1に記載のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物。
【請求項12】
徐放性の注射可能な製剤のための生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球であって、前記徐放性の注射可能な製剤のための生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球は、
i)アピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩;
ii)生体適合性ポリマー;および
iii)
アピキサバンの結晶およびポリマーアピキサバン沈殿物の形成を抑制するための脂肪酸またはトリグリセリド、
を含
み、
前記生体適合性ポリマーは、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)およびポリカプロラクトン(PCL)からなる群より選択されたいずれか1つ以上のものである、生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球。
【請求項13】
前記
徐放性の注射可能な製剤のための生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球が、請求項1に記載の
徐放性の注射可能な製剤のためのアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物から製造したものである、請求項
12に記載の
徐放性の注射可能な製剤のための生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球。
【請求項14】
前記
徐放性の注射可能な製剤のための生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球が、前記微粒球に対して5~30重量%のアピキサバンを含むものである、請求項
12に記載の
徐放性の注射可能な製剤のための生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球。
【請求項15】
前記
徐放性の注射可能な製剤のための生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球が、アピキサバンを初期30分以内で5%以下に放出するものである、請求項
12に記載の
徐放性の注射可能な製剤のための生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球。
【請求項16】
請求項
12に記載の
徐放性の注射可能な製剤のための生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球を含む、薬学的組成物。
【請求項17】
前記薬学的組成物が、アピキサバンを徐放性に放出するためのものである、請求項
16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記薬学的組成物が、皮下または筋肉注射の剤型である、請求項
16に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アピキサバン含有微粒球製造するための分散相組成物およびそれから製造された生体適合性ポリマー系アピキサバン含有微粒球に関する。具体的には、本発明は、i)アピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩;ii)生体適合性ポリマー;iii)脂肪酸またはトリグリセリド;およびiv)ハロゲン有機溶媒を含むアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物およびそれから製造された生体適合性ポリマー系アピキサバン含有微粒球に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に持続的に投与される医薬品は、患者の薬物服用利便性を高めるため、徐放性注射剤として開発された。例えば、リポソームまたはナノ粒子は、主に、1週間以内に体内で薬物放出を完了し、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(Poly(lactic-co-glycolic acid);PLGA)、ポリ乳酸(Polylactic acid;PLA)またはポリカプロンラクトン(Polycaprolactone;PCL)などの合成ポリマーで構成された微粒球の場合、ポリマーの組成、微粒子の形態、薬物の溶解度および微粒球の製造方法によって、生体内注入後1週~18ヶ月内に薬物放出を完了する。このように、上記の長期持続型注射製剤は、患者に投与した場合、体内薬物濃度を有効範囲内に長期間維持できるという利点を有するため、持続的薬物投与を要する認知症、糖尿病、パーキンソン病などの疾患を治療する目的で主に開発されており、持続的体内薬物の有効濃度を維持することによる薬物服用利便性増加(薬物投与回数の減少)だけでなく、投与経路の変更、薬物副作用の低減、局所的薬物処置などの目的でも開発された。
【0003】
PLGA、PLAまたはPCLを使用してこのような微粒球製剤を開発するためには、薬物の物性、薬物の投与量、薬物とポリマーの物理化学的適合性、および薬物の有機溶媒相における薬物の溶解性を考慮しなければならない。上記のすべての要因を考慮しても、微粒球を製造する方法と、各製造方法によるプロセス変数に基づいて製造される製剤の薬物放出パターンが異なる。
【0004】
アピキサバン(Apixaban)は股関節や膝関節置換術を受けた成人患者の静脈血栓塞栓症の予防、非弁膜症性心房細動患者における脳卒中および全身塞栓症の危険性の低減、深在性静脈血栓症および肺塞栓症の治療および再発危険減少の目的のために投与される医薬品原料として、各適応症の推奨投与期間は、股関節置換術は、32~38日、膝関節置換術は、10~14日であり、非弁膜症性心房細動患者の場合、脳卒中と全身塞栓症を予防するため、持続的に投与を推奨し、深在性静脈血栓症および肺塞栓症の治療のためには7日間、深在性静脈血栓症と肺塞栓症のリスクを減らすため、6ヶ月以上の長期間薬物投与が推奨される。したがって、上記のように、各適応症に合う持続的な投与が推奨されるアピキサバンの場合、長期持続型注射剤として開発されると、患者の利便性増大の面で大きな長所があっても、アピキサバンはPLGA、PLAまたはPCLなどのポリマーを用いて製造された微粒球製剤として開発された事例がない。これは、アピキサバンの場合、微粒球の製造に一般的に使用される溶媒であるハロゲン有機溶媒としてアピキサバンを溶解させれば、時間の経過につれて溶液内で薬物が再析出され、産業的な利用時に大量生産(Scale up)が不可能で、水相に露出または分散時に薬物が急速に結晶を形成するためである。
【0005】
一般的に、初期バースト放出はPLGA、PLAまたはPCLベースの微粒球の最も深刻な問題として認識される。上記の生体適合性ポリマー系微粒球は、主に皮下または筋肉注射を通じて患者に投与され、注射針の浸透位置および深さによって局所出血が発生することが多い。アピキサバンは血液凝固段階でfactor Xaを選択的に抑制し、血栓の形成を防止する。したがって、アピキサバンが微粒球から急激な初期放出を示す場合、注入された微粒球の周辺部位の血液凝固が遅れ、局所的しこりが生じることがある。したがって、注射可能なアピキサバン微粒球を開発するためには、注射部位で止血が完了した最初の30分以内に放出される薬物の量(以下、初期薬物放出またはinitial burst release)を減らす必要がある。急激な初期放出は、微粒球の内部と外部水相の浸透圧差とマイクロ水路(Micro-water channel)による薬物の拡散現象がその原因で、これを解決するための方法としては、pore closing技術(非特許文献1)を代表的に使用する。しかし、アピキサバンの場合、微粒球形成段階で多孔性微粒球表面が形成されないことがあるため、上記の技術では、アピキサバンの急激な初期放出を抑制できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of Controlled Release、112(2006)、167-174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、微粒球製造用有機溶媒相でアピキサバンの再析出が生じず、微粒球形成過程時に、薬物の安定的封入と完成された微粒球から低い初期薬物溶放出率を示すことができ微粒球製造用分散相の組成について研究した結果、アピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物に脂肪酸またはトリグリセリドを添加する場合、上記の組成物が、優れた安定性を示し、高含量のアピキサバンが微粒球に安定的に封入され、これより製造された生体適合性ポリマー系微粒球からアピキサバンの初期薬物放出が抑制されることを確認して、本発明を完成した。
【0008】
本発明の一つの目的は、i)アピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩;ii)生体適合性ポリマー;iii)脂肪酸またはトリグリセリド;およびiv)ハロゲン有機溶媒を含むアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の一つの目的は、生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、上記の生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球を含む薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様は、i)アピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩;ii)生体適合性ポリマー;iii)脂肪酸またはトリグリセリド;およびiv)ハロゲン有機溶媒を含むアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物を提供する。
【0011】
具体的には、上記の構成要素を含む、アピキサバン含有徐放性射剤用微粒球を製造するための分散相の組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物は、優れた安定性を示すので、アピキサバン含有微粒球製造に有用に利用することができるので、生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球は高含量のアピキサバンを安定に封入して、初期薬物放出を抑制できるため、薬学的組成物に含まれて、治療剤などとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】非ハロゲン有機溶媒である酢酸エチル、ギ酸エチル(ethyl formate)、プロピオン酸メチルおよびエタノールにアピキサバンをそれぞれ添加し、攪拌した後、デジタルカメラで撮影した写真である。
【
図2】ジクロロメタンにアピキサバンを溶解直後および12時間後、デジタルカメラで撮影した写真である。
【
図3】ジクロロメタンにアピキサバンを溶解後12時間後の形成された結晶を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図4】ジクロロメタンにアピキサバンとポリマーを溶解後0分、15分、30分後に、デジタルカメラで撮影した写真である。
【
図5】ジクロロメタンにアピキサバンとポリマーを溶解後形成されたポリマーアピキサバン沈殿物を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図6】ジクロロメタンにアピキサバン、脂肪酸(ステアリン酸)とポリマーを溶解後0分、6時間後に、デジタルカメラで撮影した写真である。
【
図7】ジクロロメタンにアピキサバン、脂肪酸(ラウリン酸)とポリマーを溶解後0分、6時間後に、デジタルカメラで撮影した写真である。
【
図8】ジクロロメタンにアピキサバンとポリマーを溶解後0分、15分、30分、および45分後に、デジタルカメラで撮影した写真である。
【
図9】アピキサバンと脂肪酸(ステアリン酸)のモル(mol)比によるアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の安定性を示す写真である。
【
図10】アピキサバンと脂肪酸(ラウリン酸)のモル(mol)比によるアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の安定性を示す写真である。
【
図11】一般的なアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物(薬物+ポリマー+ハロゲン有機溶媒)を用いて、溶媒蒸発法で製造したアピキサバン含有微粒球を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図12】一般的なアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物(薬物+ポリマー+ハロゲン有機溶媒)を用いて、微細流体法で製造したアピキサバン含有微粒球を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図13】実験例5-1で製造したアピキサバン含有微粒球(実施例1)を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図14】実験例5-2で製造したアピキサバン含有微粒球(実施例2)を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図15】実験例5-3で製造したアピキサバン含有微粒球(実施例3)を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図16】実験例5-4で製造したアピキサバン含有微粒球(実施例4)を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図17】実験例5-5で製造したアピキサバン含有微粒球(実施例5)を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図18】実験例5-6で製造したアピキサバン含有微粒球(実施例6)を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図19】実験例5-7で製造したアピキサバン含有微粒球(実施例7)を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図20】
図20は、実験例5で製造したアピキサバン含有微粒球、実施例1~3の時間による薬物の溶出率(release rate)を示したグラフである。
【
図21】実験例5で製造したアピキサバン含有微粒球、実施例2、5および6の時間による薬物の溶出率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の用語、“アピキサバン(apixaban)”は、下記化学式1の構造を有する化合物を意味する。アピキサバンは、構造内に3つのアミドを有し、アミド固有の極性(dipole)構造を有する。したがって、アピキサバンはN-H…Oで構成されている分子間の水素結合を形成することができ、従って、プロトンを提供する物質(Proton donor)またはプロトンを受ける物質(Proton accepter)が存在する場合、適切な溶媒で、共沈殿物を形成することができ、アピキサバンの分子間の水素結合を形成することもできるので、アピキサバンのみを溶解しても、一定期間後に結晶を形成する。
【0015】
【0016】
本発明の具体的な一実施例では、PLGA、PLAまたはPCL-系微粒球の製造において最も一般的に使用される有機溶媒であるジクロロメタンにアピキサバンを溶解した場合、ジクロロメタンに対するアピキサバンの溶解度が非常に高く、溶解直後には、アピキサバンの結晶が観察されないが、溶解後、一定時間、12時間後に、アピキサバンの分子間水素結合によって再結晶が起きたことを確認した(
図2および3)。
【0017】
上記のアピキサバンの再結晶は、薬物濃度に依存しており、アピキサバンはジクロロメタンに10mg/mL以上の濃度で溶解すると、再結晶現象が発生する。アピキサバンの1回投与量を考慮すると、10mg/mL以下の低濃度でアピキサバンを溶解した微粒球製造用分散相の組成物を用いて製造したアピキサバン含有微粒球は商用化が困難である。
【0018】
本発明の用語、“薬剤学的に許容可能な塩”は、陽イオンと陰イオンが静電気的の引力により結合する物質である塩の中でも、薬剤学的に使用できる形態の塩を意味し、通常的に、金属塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などになることがある。例えば、金属塩は、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アルミニウム塩などになることもあって、有機塩基との塩としては、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチレンジアミンなどの塩になることもあって、無機酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの塩になることもあって;有機酸との塩としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などとの塩になることもあって;塩基性アミノ酸との塩としては、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩になることもあって;酸性アミノ酸との塩としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩になることがある。
【0019】
本発明のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物は、上記のアピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩を生体適合性ポリマーに対して10~50重量%の量で含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
アピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩を生体適合性ポリマーに対して10重量%未満で含む場合、最終的に収得される微粒球内のアピキサバン含量が少なく体内に投与しなければならない微粒球量が増加するため臨床的に使用しにくく、アピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩を生体適合性ポリマーに対して50重量%超で含む場合、微粒球からアピキサバンの初期放出を抑制することができない。
【0021】
本発明の用語、“生体適合性ポリマー(biocompatible polymer)”は、生体内に投与時、高い細胞毒性および炎症反応などを引き起こさない、生体内の安全性が確保されたポリマーを意味し、本明細書において単にポリマーと呼ばれることもある。
【0022】
本発明で使用される生体適合性ポリマーは、具体的には、ポリエステル(Polyester)であることができ、より具体的にポリ乳酸-グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid);PLGA)、ポリ乳酸(polylactic acid;PLAおよびポリカプロラクトン(polycaprolactone;PCL)からなる群から選択されたいずれか1種以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明の具体的な一実施例では、アピキサバンとポリマーをジクロロメタンに同時に溶解すると、ポリマーアピキサバン沈殿物が形成されることを確認したが(
図4および5)、これは、ポリマーとアピキサバンの間の水素結合が形成されるためであると解釈することができる。
【0024】
また、本発明の具体的な一実施例では、ポリマーの種類によって、ポリマーアピキサバン沈殿物の生成速度が異なることを確認したが、具体的には、PLGAの場合、グリコリドユニットの比率が高いほど、ポリマーアピキサバン沈殿物の形成が促進され、PLAの場合、ポリマーアピキサバン沈殿物がほとんど形成されなかった(
図8)。PLAの場合、ラクチドユニットだけで構成されており、上記のラクチドユニットのメチル基がポリマーとアピキサバンとの間の水素結合を阻害するためであると解釈することができる。
【0025】
上記のようなポリマーアピキサバン沈殿物の形成により、ポリマー、アピキサバンおよびハロゲン有機溶媒のみを含む組成物は、アピキサバン含有微粒球の生産工程に導入が難しい。
【0026】
本発明において、上記のポリマーは、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid;PLGA))のラクチド:グリコリドの平均比率が50:50~95:5であり、具体的に50:50~75:25であるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明の具体的な一実施例では、PLGAのグリコリドユニットの比率が高いほど、初期薬物放出が抑制され、ラクチドユニット比率が高いほど、初期薬物放出が促進され、特定のグリコリド-ラクチドの比率のポリマーを単一ポリマーとして利用する場合、ラクチド(lactide):グリコリド(glycolide)の平均比率が75:25~50:50であると、初期薬物溶出率を5%以内に減らすことができることを確認した(表3)。
【0028】
本発明において、上記のポリ乳酸は、初期薬物放出促進剤として使用され、上記のポリカプロラクトンは、初期薬物放出抑制として使用されることがある。
本発明の具体的な実施例では、ラクタイド残基のないPCLの場合、初期薬物放出を阻害して初期薬物放出抑制剤として使用でき、ラクタイドユニットだけで構成されたPLAの場合、初期薬物放出を促進することを確認した(
図20)。
【0029】
本発明のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物は、生体適合性ポリマーをハロゲン有機溶媒に対して5~30wv%で含むものであるが、これらに限られるものではない。
【0030】
生体適合性ポリマーをハロゲン有機溶媒に対して5w/v%未満で含み、微粒球の製造方法の一例として、微細流体法(Microfluidic method)を用いた場合、同量のポリマーを利用するための組成物の体積が増加して注入時間が長くなり、粘度が落ちて薬物の封入が効率的ではなく、微粒球の硬化(液滴から有機溶媒の揮発)が効率的ではない。一方、生体適合性ポリマーをハロゲン有機溶媒に対して30w/v%超で含む場合、粘度が上がりすぎて、微粒球の製造に限界がある。
【0031】
本発明のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物は、上記組成物の安定化(すなわち、薬物の結晶およびポリマーアピキサバン沈殿物形成抑制)、微粒球内薬物の安定的封入および高含量のアピキサバンを含む生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球の製造のために、脂肪酸またはトリグリセリドを含む。
【0032】
本発明において、上記の脂肪酸またはトリグリセリドは、本発明の効果に影響をしない限り、i)医薬学的に許容可能で、ii)アピキサバンと水素結合を形成できる官能基を有し、iii)ハロゲン有機溶媒に対する溶解度が高ければ制限なく使用できる。
【0033】
本発明の用語、“脂肪酸(fatty acid)”は、飽和または不飽和脂肪族鎖および1つ以上のカルボキシル基を有する化合物を意味する。脂肪酸は、i)医薬学的に許容可能で、ii)アピキサバンと水素結合を形成することができるカルボキシル基を有し、iii)ハロゲン有機溶媒に対する溶解度が高いので、本発明に用いることができる。具体的には、上記の脂肪酸は微粒球製造時有機溶媒を揮発するための最低温度が35℃以上の融点を持つ、1つ以上のカルボキシル基を持つ炭素数12~18の脂肪酸であることができ、より具体的にはステアリン酸(stearic acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、またはラウリン酸(lauric acid)であることができ、より具体的には、ステアリン酸またはラウリン酸であることができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の用語、“トリグリセリド(triglyceride)”は、3つの脂肪酸がグリセロール(glycerol)とエステル(ester)結合によって形成された化合物を意味する。トリグリセリドは、i)医薬学的に許容可能で、ii)アピキサバンと水素結合を形成することができるエステル基を有し、iii)ハロゲン有機溶媒に対する溶解度が高いので、本発明に用いることができる。具体的には、上記のトリグリセリドは、室温で固体の形態で存在し、炭素数10以上の3つの脂肪酸とグリセロールがエステル結合で形成されたものであることができ、より具体的には、トリデカン酸グリセリル(glyceryl tridecanoate)、トリウンデカン酸グリセリル(glyceryl triundecanoate)、トリドデカン酸グリセリル(glyceryl tridodecanoate)、トリミリスチン酸グリセリル(glyceryl trimyristate)、トリパルミチン酸グリセリル(glyceryl tripalmitate)またはトリステアリン酸グリセリル(glyceryl tristearate)であることができ、より具体的には微粒球の製造時の有機溶媒を揮発するための最低温度である35℃以上の融点を有するトリドデカン酸グリセリル(glyceryl tridodecanoate)であることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物は、脂肪酸をアピキサバンに対して1~5倍のモル比で含んでおり、生体適合性ポリマーに対して50重量%以下に含むことができる。具体的には、本発明のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物は、脂肪酸をアピキサバン対比1~5倍、1~4倍、1~3倍、1~2倍、1.25~5倍、1.25~4倍、1.25~3倍、1.25~2倍、1.5~5倍、1.5~4倍、1.5~3倍、より具体的に1.5~2.0倍で含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明のアピキサバン有微粒球製造分散相の組成物は、トリグリセリドをアピキサバンに対して0.3~1.6倍のモル比で含んでおり、生体適合性ポリマーに対して50重量%以下で含むことができる。具体的には、本発明のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物は、トリグリセリドを0.3~1.6倍、0.3~1.3倍、0.3~1倍、0.3~0.7倍、0.~1.6倍、0.~1.3倍、0.4~1倍、0.4~0.7倍、0.5~1.6倍、0.5~1.3倍、0.5~1倍、より具体的に0.5~0.7倍で含むことができるが、これらに限定されるものではない。トリグリセリドは3つの脂肪酸を含む化合物なので、脂肪酸のモル(mol)対比約3分の1を使用しても、本発明の効果を示すことができる。
【0037】
本発明の具体的な一実施例では、アピキサバンに対して1倍を超えるモル(mol)に該当する脂肪酸を添加した場合、沈殿物が発生していない安定した分散相が形成されることを確認した(
図9および10)。
【0038】
脂肪酸またはトリグリセリドを生体適合性ポリマーに対して50重量%超で含む場合、微粒球の製造時微粒球の硬度が低下して球形ではない、微粒子が製造されることがあり、微粒球の硬度低下や形相の不均一性は、物理化学的安定性の低下と溶出率変化などの品質上の問題を引き起こすことがある。
【0039】
本発明の用語、“ハロゲン有機溶媒”は、F、Cl、BrまたはIのようなハルロゲン族元素を含む有機溶媒を意味する。アピキサバンの場合、他の一般的な疎水性薬物とは異なり、非ハロゲン有機溶媒に対する溶解度が非常に低く、非ハロゲン有機溶媒は、アピキサバン含有微粒球の製造に使用できない。
【0040】
本発明において、上記のハロゲン有機溶媒は、本発明の効果に影響しない限り微粒球製造に使用することがあれば、その種類に制限はない。具体的には、上記のハロゲン有機溶媒は、ジクロロメタン(CH2Cl2)、クロロホルム(CHCl3)、カーボンテトラクロライド(CCl4)であってもよく、より具体的にジクロロメタンであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の具体的な一実施例では、アピキサバンは非ハロゲン有機溶媒である酢酸エチル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチルおよびエタノールに溶解されないが、ハロゲン有機溶媒であるジクロロメタンに一時的に溶解されていることを確認した(
図1および2)。
【0042】
本発明の用語、“微粒球の製造用分散相の組成物”は、微粒球を製造するために使用される分散相の組成物を意味し、本明細書では単に分散相として呼ばれることもある。上記の用語“分散相(dispersion phase)”は、油中水型(water in oil)微粒球の場合、内部水相(Water phase)を構成するための組成物、水中油型(Oil in water)微粒球の場合、内部油相(Oil phase)を構成するための組成物、水中油中水型(water in oil in water)微粒球の場合、内部1次油中水型乳剤(water in oil emulsionまたはPrimary emulsion)を構成するための組成物として、微粒球の製造用組成物中の外相(Outer phase)を除く、内相(inner phase)、すなわち、薬物とポリマーが溶解または分散した形の混合物を意味する。
【0043】
また、上記のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物は、アピキサバン含有徐放性注射剤用微粒球を製造するための分散相の組成物を指すものであることができる。
本発明の他の一つの態様は、生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球を提供する。具体的には、生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有徐放性注射剤用微粒球を提供することができる。
【0044】
この時、上記の“アピキサバン”および“生体適合性ポリマー”の説明は、前述した通りである。
本発明の用語、“生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球”は、生体適合性ポリマーを用いて製造された微粒球内のアピキサバンが封入されたことを意味し、本明細書では単にアピキサバン含有微粒球、アピキサバン微粒球または微粒球などで呼ばれることもある。生体適合性ポリマーを用いて製造された微粒球内にアピキサバンが封入されたものであれば、利用した生体適合性ポリマーの種類などに限定されない、本発明の範囲に属する。
【0045】
アピキサバンの場合、微粒球の製造に一般的に使用される溶媒であるジクロロメタンに溶解させると、時間の経過につれて薬物は溶液内で薬物が再析出され、産業的な利用時に大量生産(Scale up)が不可能で、水相に露出または分散時に薬物が急速に結晶を形成するので、アピキサバンは、これまで微粒球として開発されたことがなく、本発明者たちによって初めて生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球が開発されたことから、その意義は極めて大きいといえる。
【0046】
本発明の生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球はi)アピキサバンまたはその薬剤学的に許容される塩;ii)生体適合性ポリマー;およびiii)脂肪酸またはトリグリセリドを含むことができる。
【0047】
本発明の生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球は、上記のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物を用いて製造することができる。
この時、上記の“生体適合性ポリマー”、“脂肪酸”、“トリグリセリド、“微粒球の製造用分散相の組成物”、および“分散相”の説明は、前述した通りである。
【0048】
上記のアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物を用いて、アピキサバン含有微粒球の製造時、アピキサバン含有微粒球が製造されると、その製造方法は限定されない。具体的には、本発明のアピキサバン微粒球は、溶媒蒸発法(solvent evaporation method)、噴霧乾燥法(spray drying method)、溶媒抽出法(solvent extraction method)、微細流体法(microfluidic method)で製造されることができ、より具体的には、微細流体法(microfluidic method)で製造されることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球は5~30重量%のアピキサバンを含むことができる。具体的には5~30重量%、8~28重量%、10~25重量%、12~22重量%、より具体的には15~20重量%のアピキサバンを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の具体的な一実施例では、本発明が提供する実施例1~6の微粒球が15~20重量%、高含量のアピキサバンを含むことを確認した(表2)。
本発明の生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球はアピキサバンを初期30分以内、5%以下で放出することができる。アピキサバンの初期薬物放出に関与する要因(factor)である、生体適合性ポリマー内ラクチド:グリコリドの平均比率または生体適合性ポリマーの混合比などについて、アピキサバンを初期30分以内、5%以下に放出することができるものであれば、上記の要因のすべての組み合わせは、本発明の範囲に属する。
【0051】
本発明の具体的な一実施例では、実施例2~5の場合、アピキサバンを初期30分以内、5%以下で放出することを確認した(表3)。
本発明において、上記の放出は、生体適合性ポリマー内ラクチド:グリコリドの平均比率で調節することができる。
【0052】
アピキサバンの初期薬物放出は、生体適合性ポリマーの中でも、中性環境でアピキサバンと水素結合可能な官能基の多いポリマーほど、初期薬物放出が抑制される傾向を示す。一般的疎水性薬物の放出傾向とは異なってアピキサバンはPLGA中でグリコリドユニットの比率が高いポリマーを使用すればするほど、初期薬物放出が抑制され、PLAがPLGAより初期薬物放出が速い。これはラクチドのメチル基がアピキサバンとポリマーの水素結合形成を阻害するためであると解釈することができる。
【0053】
本発明の具体的な一実施例では、特定のグリコリド-ラクチドの比率のポリマーを単一のポリマーで利用する場合、ラクチド(lactide):グリコリド(glycolide)の平均比率が、50:50(実施例3)~75:25(実施例2)に該当する場合、初期薬物放出を5%以内に減らせることを確認した(表3)。
【0054】
本発明において、上記の放出は、生体適合性ポリマーの混合比で制御することができる。
同じ原理で、ポリマーの化学構造上メチル基を含まないPCLはアピキサバン水素結合を容易にするだけでなく、体内注入後の分解速度がPLGAよりも遅く、初期薬物放出を阻害することに寄与することができる。
【0055】
これに対して、ポリマーの混合物を利用する場合、ポリマーの混合比によって、初期薬物の溶出率が結晶されるので、ポリマーの混合比は、特に制限されず、初期薬物溶出率の設定によって、適切なポリマーの混合比を選択して適用することができる。
【0056】
本発明の具体的な一実施例では、ラクチド残基がないPCLを一緒に使用する場合(実施例5)初期薬物放出を抑制することができ、ラクチドユニットだけで構成されたPLAを使用する場合(実施例6)初期薬物放出を促進することができることを確認した(
図20)。
【0057】
本発明のもう一つの態様は、生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球を含む薬学的組成物を提供する。
この時、上記の“アピキサバン”と“生体適合性ポリマー系のアピキサバン含有微粒球”に対する説明は、前述した通りである。
【0058】
本発明の薬学的組成物は、アピキサバンを徐放性に放出するためのものであることができる。
本発明の用語、“徐放性”は、薬物の放出機序を調節して、体内で長時間薬物を放出することを意味し、具体的には、本発明では、初期薬物放出が抑制されることを意味することがあるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明の薬学的組成物は、アピキサバンが予防または治療などの効果を示すことができるすべての対象疾病、具体的に非弁膜症性心房細動、深在性静脈血栓症、肺塞栓症などの予防または治療の目的で使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
また、抗凝固剤の用途に使用することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の薬学的組成物は、アピキサバン含有微粒球のほかに、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。
【0061】
具体的には、上記の薬学的組成物に含まれる賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールなどの凍結保存剤と、でん粉、アルギン酸塩、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの増粘剤、医薬学的利用可能なpH緩衝液、界面活性剤や水などを挙げることができる。
【0062】
上記の薬学的組成物は、皮下または筋肉注射製型であることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
下記の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
実験例1:アピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の安定性
実験例1-1:非ハロゲン有機溶媒でのアピキサバン溶解
酢酸エチル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチルおよびエタノール各1mLにアピキサバン25mgを添加して攪拌した。その結果、
図1に示すように、アピキサバンは、上記4種の有機溶媒に溶解されないことを確認した。
【0064】
このことから、アピキサバン微粒球の製造のための溶媒として非ハロゲン有機溶媒を使用することができないことを明らかにすることができた。
実験例1-2:ハロゲン有機溶媒でのアピキサバン溶解
25mgのアピキサバンを1mLのジクロロメタンに溶解し、12時間後に写真撮影を行った。その結果、
図2に示すように、アピキサバンは、初期には、完全に溶解されるが、一定時間経過後、ジクロロメタンで結晶を形成することを確認した。
【0065】
また、上記の結晶を光学顕微鏡で撮影した結果、
図3に示すように、針像構造を形成することを観察した。
このことから、アピキサバンが一時的にジクロロメタンに溶解されても、時間が経過すると、それ自体の結晶性が高く、溶媒内で再結晶されることを明らかにすることができた。
【0066】
実験例1-3:一般的なアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の安定性
100mgのPLGA RG503Hと25mgのアピキサバンを1mLのジクロロメタンに溶解した後0分、15分、30分後に写真撮影を行った。その結果、
図4に示すように、初期には完全に溶解するか、一定時間経過後、ポリマーアピキサバン沈殿物が形成されることを確認した。
【0067】
また、上記のポリマーアピキサバン沈殿物を光学顕微鏡で撮影した結果、
図5に示すように、沈殿物内の針像の薬物とポリマーが凝集されていることを観察した。
このことから、一般的なアピキサバン含有微粒球製造用分散相の組成物(薬物+ポリマー+ハロゲン有機溶媒)だけでは安定性が低く微粒球の製造に使用できないことがわかった。
【0068】
実験例1-4:脂肪酸の添加によるアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の安定性
100mgのPLGA RG503H、25mgのアピキサバンおよび25mgのステアリン酸を1mLのジクロロメタンに溶解した後0分、6時間後に写真撮影を行った。その結果、
図6に示すように、沈殿物が発生しない安定した分散相が形成されることを確認した。
【0069】
また、100mgのPLGA RG503H、25mgのアピキサバンおよび17.3mgのラウリン酸を1mLのジクロロメタンに溶解した後0分、6時間後に写真撮影を行った。その結果、
図7に示すように、沈殿物が発生しない安定な分散相が形成されることを確認した。
【0070】
このことから、本発明が提供する脂肪酸が添加されたアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の場合、分散相が安定化されて微粒球の製造に使用できることを明らかにすることができた。
【0071】
実験例2:ポリマーの種類によるアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の安定性
100mgのポリマー(PLGA RG503H、PLGA RG753H、PLA R202H)および25mgのアピキサバンを1mLのジクロロメタンに溶解した後、45分間、15分間隔で写真撮影を行った。その結果、
図8に示すように、PLGAのグリコリドユニットの比率が高いほど、ポリマーとアピキサバンが凝集されたポリマーアピキサバン沈殿物が過量形成されることを確認し、ラクチドユニットだけで構成されたPLA R202Hの場合、ポリマーアピキサバン沈殿物が析出されないことを確認した。
【0072】
これは、ラクチドユニットのメチル基がポリマーとアピキサバンの間の水素結合を阻害するためと解釈される。
実験例3:アピキサバンおよび脂肪酸のモル比によるアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の安定性
実験例3-1:アピキサバンおよびステアリン酸のモル比によるアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の安定性
100mgのPLGA RG503H、25mgのアピキサバンおよび濃度別ステアリン酸(アピキサバン対比ステアリン酸のモル比=1:0、1:1、1:1.5、1:2)を1mLのジクロロメタンに溶解し、6時間後に写真撮影を行った。その結果、
図9に示すように、アピキサバン対比1倍を超えるモル(mol)に該当するステアリン酸を添加する場合、沈殿物が発生しない安定した分散相が形成されることを確認した。
【0073】
実験例3-2:アピキサバンおよびラウリン酸のモル比によるアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物の安定性
100mgのPLGA RG503H、25mgのアピキサバンおよび濃度別ラウリン酸(アピキサバン対比ラウリン酸のモル比=1:0、1:1、1:1.5、1:2)を1mLのジクロロメタンに溶解し、6時間後に写真撮影を行った。その結果、
図10に示すように、アピキサバン対比1倍を超えるモル(mol)に該当するラウリン酸を添加する場合、沈殿物が発生しない安定した分散相が形成されることを確認した。
【0074】
実験例4:一般的なアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物を用いたアピキサバン微粒球の製造
実験例4-1:溶媒蒸発法を用いたアピキサバン微粒球の製造(比較例1)
25mgのアピキサバンおよび100mgのPLA R202Hを1mLのジクロロメタンに同時に溶解して分散相を製造した後、1,500rpmで攪拌されているHigh shear mixer(Silverson、L5M-A)を用いて、1%ポリビニルアルコール(poly vinyl alcohol;PVA)溶液に分散した。この時、
図11に示すように、分散を始めると同時に、アピキサバンはすぐに水相に析出され、針状結晶を形成した。
【0075】
このことから、一般的なアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物(薬物+ポリマー+ハロゲン有機溶媒)を利用する場合、溶媒蒸発法でアピキサバン微粒球を製造できないことがわかった。
【0076】
実験例4-2:微細流体法を用いたアピキサバン微粒球の製造(比較例2)
25mgのアピキサバンと100mgのPLA R202Hを1mLのジクロロメタンに同時に溶解して分散相を製造した後、0.01mL/minの流速で微細流体チップ(Microfluidic chip;Dolomite、3D focusing hydrophilic chip)に注入した。この時、水相は1%PVA溶液を用いており、0.1mL/minの流速で分散相と同時に注入し、微細流体チップ(Microfluidic chip)の内部で形成された液滴を150rpmで攪拌されている1%PVA溶液に収得した。収得された微粒球液滴を光学顕微鏡で観察した結果、
図12に示すように、多量の針状結晶が形成されることを確認した。
【0077】
このことから、一般的なアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物(薬物+ポリマー+ハロゲン有機溶媒)を利用する場合、微細流体法でアピキサバン微粒球を製造できないことがわかった。
【0078】
上記の過程から得られた針状の薬物結晶および微粒球の混合物から75μm mesh sieveを用いて3回、水で洗浄しながら、最大限薬物結晶を除くことによって、上記の混合物から微粒球を最大限に分離し、分離された微粒球をメンブレーンフィルター(membrane filter)を利用して、再取得し、2日間凍結乾燥して乾燥された形態の微粒球を得た。
【0079】
実験例5:本発明のアピキサバン含有微粒球製造用分散相組成物を用いたアピキサバン含有微粒球の製造
実験例5-1:アピキサバン含有微粒球の製造(実施例1)
25mgのアピキサバン、100mgのPLA R202Hおよび25mgのステアリン酸を1mLのジクロロメタンに同時に溶解して分散相を製造した後、0.01mL/minの流速で微細流体チップ(Microfluidic chip;Dolomite、3D focusing hydrophilic chip)に注入した。この時、水相は1%PVA溶液を用いており、0.1mL/minの流速で分散相と同時に注入し、微細流体チップの内部で形成された液滴を150rpmで攪拌されている1%PVA溶液に収得した。収得された微粒球液滴を光学顕微鏡で観察した結果、
図13に示すように、微粒球液滴から析出された薬物が観察されなかった。
【0080】
上記の微粒球液滴を35℃の条件でさらに2時間攪拌しながら有機溶媒を揮発し、有機溶媒が除去された後、メンブレーンフィルター(membrane filter)を利用して、硬化された微粒球を得て、2日間凍結乾燥して乾燥された形態の微粒球を得た。
【0081】
実験例5-2:アピキサバン含有微粒球の製造(実施例2)
25mgのアピキサバン、100mgのPLGA RG753Hおよび25mgのステアリン酸を1mLのジクロロメタンに同時に溶解して分散相を製造した後、0.01mL/minの流速で微細流体チップ(Microfluidic chip;Dolomite、3D focusing hydrophilic chip)に注入した。この時、水相は1%PVA溶液を用いており、0.1mL/minの流速で分散相と微細流体チップの内部で形成された液滴を150rpmで攪拌されている1%PVA溶液に収得した。収得された微粒球液滴を光学顕微鏡で観察した結果、
図14に示すように、微粒球液滴から析出された薬物が観察されなかった。
【0082】
上記の微粒球液滴を35℃の条件でさらに2時間攪拌しながら有機溶媒を揮発し、有機溶媒が除去された後、メンブレーンフィルター(membrane filter)を利用して、硬化された微粒球を得て、2日間凍結乾燥して乾燥された形態の微粒球を得た。
【0083】
実験例5-3:アピキサバン含有微粒球の製造(実施例3)
25mgのアピキサバン、100mgのPLGA RG503Hおよび25mgのステアリン酸を1mLのジクロロメタンに同時に溶解して分散相を製造した後、0.01mL/minの流速で微細流体チップ(Microfluidic chip;Dolomite、3D focusing hydrophilic chip)に注入した。この時、水相は1%PVA溶液を用いており、0.1mL/minの流速で分散相と同時に注入し、微細流体チップの内部で形成された液滴を150rpmで攪拌されている1%PVA溶液に収得した。収得された微粒球液滴を光学顕微鏡で観察した結果、
図15に示すように、微粒球液滴から析出された薬物が観察されなかった。
【0084】
上記の微粒球液滴を35℃の条件でさらに2時間攪拌しながら有機溶媒を揮発し、有機溶媒が除去された後、メンブレーンフィルター(membrane filter)を利用して、硬化された微粒球を得て、2日間凍結乾燥して乾燥された形態の微粒球を得た。
【0085】
実験例5-4:アピキサバン含有微粒球の製造(実施例4)
25mgのアピキサバン、100mgのPLGA RG503Hおよび25mgのラウリン酸を1mLのジクロロメタンに同時に溶解して分散相を製造した後、0.01mL/minの流速で微細流体チップ(Microfluidic chip;Dolomite、3D focusing hydrophilic chip)に注入した。この時、水相は1%PVA溶液を用いており、0.1mL/minの流速で分散相と同時に注入し、微細流体チップの内部で形成された液滴を150rpmで攪拌されている1%PVA溶液に収得した。収得された微粒球液滴を光学顕微鏡で観察した結果、
図16に示すように、微粒球液滴から析出された薬物が観察されなかった。
【0086】
上記の微粒球液滴を35℃の条件でさらに2時間攪拌しながら有機溶媒を揮発し、有機溶媒が除去された後、メンブレーンフィルター(membrane filter)を利用して、硬化された微粒球を得て、2日間凍結乾燥して粉末形態の微粒球を得た。
【0087】
実験例5-5:アピキサバン含有微粒球の製造(実施例5)
25mgのアピキサバン、90mgのPLGA RG753Hおよび10mgのPCL(平均Mw 45,000g/mol)および25mgのステアリン酸を1mLのジクロロメタンに同時に溶解して分散相を製造した後、0.01mL/minの流速で微細流体チップ(Microfluidic chip;Dolomite、3D focusing hydrophilic chip)に注入した。この時、水相は1%PVA溶液を用いており、0.1mL/minの流速で分散相と同時に注入し、微細流体チップの内部で形成された液滴を150rpmで攪拌されている1%PVA溶液に収得した。収得された微粒球液滴を光学顕微鏡で観察した結果、
図17に示すように、微粒球液滴から析出された薬物が観察されなかった。
【0088】
上記の微粒球液滴を35℃の条件でさらに2時間攪拌しながら有機溶媒を揮発し、有機溶媒が除去された後、メンブレーンフィルター(membrane filter)を利用して、硬化された微粒球を得て、2日間凍結乾燥して乾燥された形態の微粒球を得た。
【0089】
実験例5-6:アピキサバン含有微粒球の製造(実施例6)
25mgのアピキサバン、90mgのPLGA RG753Hおよび10mgのPLA R202Hと25mgのステアリン酸を1mLのジクロロメタンに同時に溶解して分散相を製造した後、0.01mL/minの流速で微細流体チップ(Microfluidic chip;Dolomite、 3D focusing hydrophilic chip)に注入した。この時、水相は1%PVA溶液を用いており、0.1mL/minの流速で分散相と同時に注入し、微細流体チップの内部で形成された液滴を150rpmで攪拌されている1%PVA溶液に収得した。収得された微粒球液滴を光学顕微鏡で観察した結果、
図18に示すように、微粒球液滴から析出された薬物が観察されなかった。
【0090】
上記の微粒球液滴を35℃の条件でさらに2時間攪拌しながら有機溶媒を揮発し、有機溶媒が除去された後、メンブレーンフィルター(membrane filter)を利用して、硬化された微粒球を得て、2日間凍結乾燥して乾燥された形態の微粒球を得た。
【0091】
実験例5-7:アピキサバン含有微粒球の製造(実施例7)
25mgのアピキサバン、100mgのPLGA RG503および10mgのPLA R202Hおよび18.7mgのトリドデカン酸グリセリル(glyceryl tridodecanoate)を1mLのジクロロメタンに同時に溶解して分散相を製造した後、0.01mL/minの流速で微細流体チップ(Microfluidic chip;Dolomite、3D focusing hydrophilic chip)に注入した。この時、水相は1%PVA溶液を用いており、0.1mL/minの流速で分散相と同時に注入し、微細流体チップの内部で形成された液滴を150rpmで攪拌されている1%PVA溶液に収得した。収得された微粒球液滴を光学顕微鏡で観察した結果、
図19に示すように、微粒球液滴から析出された薬物が観察されなかった。
【0092】
上記の微粒球液滴を35℃の条件でさらに2時間攪拌しながら有機溶媒を揮発し、有機溶媒が除去された後、メンブレーンフィルター(membrane filter)を利用して、硬化された微粒球を得て、2日間凍結乾燥して乾燥された形態の微粒球を得た。
【0093】
実験例6:アピキサバン含有微粒球内の薬物含量分析
上記の実験例4で製造した比較例1および2、上記の実験例5で製造した実施例1~7に該当する凍結乾燥された微粒球の薬物含量を測定するために、最終凍結乾燥された微粒球1mgを1mLのアセトニトリルに溶解した後0.45μmPVDFシリンジフィルター(syringe filter)を利用して、濾過して、下記表1に示す条件によってHPLC-UV機器を用いて定量分析した。
【0094】
【0095】
微粒球に封入された薬物含量は、下記式(1)によって計算した。
含量=HPLC分析された薬物の濃度(mg/mL)÷1mg/mLX100(%)-(1)
上記式(1)によって分析された微粒球内のアピキサバン含量分析結果は、表2に示した通りである。
【0096】
【0097】
具体的に、比較例1の場合、薬物結晶が多すぎて薬物結晶を除去しにくく、微粒球内のアピキサバン含量測定が不可能であり、比較例2の場合75μm mesh sieveを用いて3回、水で洗浄しながら、最大限薬物結晶を除去し、凍結乾燥して収得した微粒球を使用して、微粒球内のアピキサバン含量を測定した。
【0098】
その結果、本発明が提供する実施例1~7の微粒球は15~20%、高含量のアピキサバンを含むことができることを確認した。
また、このことから、凍結乾燥後にもアピキサバンは、本発明が提供する微粒球内にうまく封入されていることがわかった。
【0099】
実験例7:アピキサバン含有微粒球の薬物溶出分析
実験例7-1:ポリマーの種類による薬物溶出分析
上記の実験例5で製造した実施例1~6に該当する微粒球のポリマー種類による薬物溶出を分析するために、上記の実施例1~7に該当する微粒球28mgを0.2%ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl sulfate)が含まれている50mLのpH7.4のリン酸緩衝液(phosphate buffer;イオン強度154mM)にそれぞれ含めた後、恒温水槽を用いて37℃、50rpmの条件で左/右振とう(shaking)した。30分経過後に、各溶液の上層液を1mLずつ取り、9,000rpmで5分間遠心分離した。上層液0.5mLをHPLC-UV機器を用いて定量分析し、下記式(2)に溶出率(drug release rate)を算定した。
【0100】
溶出率=溶出サンプル内の薬物濃度÷完全溶出時の理論的薬物濃度X100(%)-(2)
上記式(2)により算定された微粒球の薬物溶出率分析結果は、表3に示した通りである。
【0101】
【0102】
実験例7-2:時間による薬物溶出分析
上記の実験例5で製造した実施例1~3に該当する微粒球の時間による薬物溶出を分析するために、上記の実施例1~3に該当する微粒球28mgを0.2%ラウリル硫酸ナトリウム(sodium Lauryl sulfate)が含まれている50mLのpH7.4のリン酸緩衝液(phosphate buffer;イオン強度154mM)にそれぞれ含めた後、恒温水槽を用いて37℃、50rpmの条件で左/右振とう(Shaking)した。あらかじめ設定された一定時間(0.5、1、2、4、8時間、1、2、4、7、10、14、17、21日)に、各溶液の上層液を1mLずつ取り、9,000rpmで5分間遠心分離した。上層液0.5mLを上記の実験例7-1と同一の条件でHPLC-UV機器を用いて定量分析し、上記式(2)によって溶出率を計算した。
【0103】
上記式(2)により算定された微粒球の薬物溶出率分析結果は、
図20に示した通り、PLA R202H(実施例1)、PLGA RG753H(75:25,実施例2)、PLGA RG503H(50:50,実施例3)の薬物溶出率を示す。
【0104】
本実験の結果、PLGAのグリコリドユニットの比率が高いほど、薬物放出が抑制されてラクチドユニットの比率が高いほど、薬物放出が促進されることを確認した。そこで、特定のグリコリド-ラクチドの比率のポリマーを単一のポリマーで使用する場合、ラクチド(lactide):グリコリド(glycolide)の平均比率が、50:50(実施例3)~75:25(実施例2)に該当すると、初期薬物放出を5%以内に減らすことができることを確認した。
【0105】
PLAを単一ポリマーとして使用する場合(実施例1;ラクチド(lactide):グリコリド(Glycolide)の平均比率が100:0の場合)、溶出初期に微粒球から溶出液にアピキサバンが急速に広がり、これは実験例2で確認したように、ラクチドユニットのメチル基がポリマーとアピキサバンの間の水素結合を阻害するためであると解釈することができる。
【0106】
そこで、
図21に示すように、ラクチド残基がないPCLの場合(実施例5)、初期薬物放出を阻害して、初期薬物放出抑制剤として使用可能であり、ラクチドユニットだけで構成されたPLAの場合(実施例6)、初期薬物放出を促進して、初期放出促進剤として使用可能である。
【0107】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されることがあることを理解できるであろう。これに関連して、以上のような実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものとして理解しなければならない。本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりも、後述する特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。