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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】電解セル、及びセルスタック装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20230512BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20230512BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20230512BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20230512BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20230512BHJP
   C25B 11/075 20210101ALI20230512BHJP
   C25B 11/091 20210101ALI20230512BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/042
C25B1/23
C25B3/26
C25B9/77
C25B11/075
C25B11/091
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022181383
(22)【出願日】2022-11-11
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2021185601
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-074263(JP,A)
【文献】特開2017-130304(JP,A)
【文献】特開2009-064641(JP,A)
【文献】特開2017-208230(JP,A)
【文献】特開2014-216297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/00
C25B 1/042
C25B 1/23
C25B 3/26
C25B 9/77
C25B 11/075
C25B 11/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気及び二酸化炭素が流れる第1流路が内部に形成された支持基板と、
前記支持基板に支持される第1素子部と、
前記支持基板に支持され、前記第1流路内を流れる水蒸気及び二酸化炭素の流通方向において前記第1素子部の下流側に配置される第2素子部と、
を備え、
前記第1素子部及び前記第2素子部それぞれは、酸素極と、前記酸素極及び前記支持基板の間に配置される水素極活性部と、前記酸素極及び前記水素極活性部の間に配置される電解質とを有し、
前記第1素子部及び前記第2素子部それぞれの前記水素極活性部は、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有し、
前記第2素子部の前記水素極活性部が含有するニッケルの粒径は、前記第1素子部の前記水素極活性部が含有するニッケルの粒径より大きい、
電解セル。
【請求項2】
水蒸気が流れる第1流路が内部に形成された支持基板と、
前記支持基板に支持される第1素子部と、
前記支持基板に支持され、前記第1流路内を流れる水蒸気の流通方向において前記第1素子部の下流側に配置される第2素子部と、
を備え、
前記第1素子部及び前記第2素子部それぞれは、酸素極と、前記酸素極及び前記支持基板の間に配置される水素極活性部と、前記酸素極及び前記水素極活性部の間に配置される電解質とを有し、
前記第1素子部及び前記第2素子部それぞれの前記水素極活性部は、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有し、
前記第2素子部の前記水素極活性部が含有するニッケルの粒径は、前記第1素子部の前記水素極活性部が含有するニッケルの粒径より大きい、
電解セル。
【請求項3】
前記第1素子部及び前記第2素子部それぞれは、前記支持基板と前記水素極活性部との間に配置される水素極集電部を有し、
前記第1素子部及び前記第2素子部それぞれの前記水素極集電部は、ニッケルを含有し、
前記第2素子部の前記水素極集電部が含有するニッケルの粒径は、前記第1素子部の前記水素極集電部が含有するニッケルの粒径より大きい、
請求項1又は2に記載の電解セル。
【請求項4】
支持基板と、
前記支持基板内に形成され、水蒸気及び二酸化炭素が流れる第1流路と、
前記支持基板に支持される素子部と、
を備え、
前記素子部は、酸素極活性部と、前記酸素極活性部及び前記支持基板の間に配置される水素極活性部と、前記酸素極活性部及び前記水素極活性部の間に配置される電解質とを有し、
前記水素極活性部は、第1部分と、前記第1流路内を流れる水蒸気及び二酸化炭素の流通方向において前記第1部分の下流側に接続される第2部分とを含み、
前記第1部分及び前記第2部分それぞれは、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有し、
前記第2部分が含有するニッケルの粒径は、前記第1部分が含有するニッケルの粒径より大きい、
電解セル。
【請求項5】
支持基板と、
前記支持基板内に形成され、水蒸気が流れる第1流路と、
前記支持基板に支持される素子部と、
を備え、
前記素子部は、酸素極活性部と、前記酸素極活性部及び前記支持基板の間に配置される水素極活性部と、前記酸素極活性部及び前記水素極活性部の間に配置される電解質とを有し、
前記水素極活性部は、第1部分と、前記第1流路内を流れる水蒸気の流通方向において前記第1部分の下流側に接続される第2部分とを含み、
前記第1部分及び前記第2部分それぞれは、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有し、
前記第2部分が含有するニッケルの粒径は、前記第1部分が含有するニッケルの粒径より大きい、
電解セル。
【請求項6】
電解質と、
前記電解質の第1主面側に配置された酸素極活性部と、
前記電解質の第2主面側に配置された水素極活性部と、
を備え、
前記水素極活性部は、第1部分と、前記電解質の前記第2主面側の流路内を流れる水蒸気及び二酸化炭素の流通方向において前記第1部分の下流側に接続される第2部分とを含み、
前記第1部分及び前記第2部分それぞれは、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有し、
前記第2部分が含有するニッケルの粒径は、前記第1部分が含有するニッケルの粒径より大きい、
電解セル。
【請求項7】
電解質と、
前記電解質の第1主面側に配置された酸素極活性部と、
前記電解質の第2主面側に配置された水素極活性部と、
を備え、
前記水素極活性部は、第1部分と、前記電解質の前記第2主面側の流路内を流れる水蒸気の流通方向において前記第1部分の下流側に接続される第2部分とを含み、
前記第1部分及び前記第2部分それぞれは、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有し、
前記第2部分が含有するニッケルの粒径は、前記第1部分が含有するニッケルの粒径より大きい、
電解セル。
【請求項8】
前記水素極活性部は、前記第1部分と前記第2部分とが重なった第1オーバーラップ部を有する、
請求項4乃至7のいずれかに記載の電解セル。
【請求項9】
前記水素極活性部上に配置される水素極集電部を備え、
前記水素極集電部は、第3部分と、前記流通方向において前記第3部分の下流側に接続される第4部分とを含み、
前記第3部分及び前記第4部分それぞれは、ニッケルを含有し、
前記第4部分が含有するニッケルの粒径は、前記第2部分が含有するニッケルの粒径より大きい、
請求項4乃至7のいずれかに記載の電解セル。
【請求項10】
前記水素極集電部は、前記第3部分と前記第4部分とが重なった第2オーバーラップ部を有する、
請求項9に記載の電解セル。
【請求項11】
供給室及び回収室を有するマニホールドと、
前記マニホールドに支持される、請求項1,2,4,5のいずれかに記載の電解セルと、
を備え、
前記支持基板は、先端部において前記第1流路と連通する第2流路を有し、
前記第1流路は、前記供給室と連通し、
前記第2流路は、前記回収室と連通する、
セルスタック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解セル、及びセルスタック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックス製の電極および電解質からなる電解セルを用いて、水蒸気(HO)及び二酸化炭素(CO)を共電解することで、水素(H)及び一酸化炭素(CO)を合成する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された電解セルは、素子部と、素子部を支持する支持基板とを有している。支持基板の内部には、CO及びHOが流れる流路が形成される。素子部は、支持基板上に配置される水素極と、酸素極と、水素極及び酸素極の間に配置される電解質とを有する。水素極は、酸素イオン伝導性材料とニッケル(Ni)とによって構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6110246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電解セルの作動中、水素極に含まれるNiどうしが表面張力によって互いに結合して粗大化(凝集)することで水素極の活性が低下してしまう結果、電解セルの性能が低下する。そのため、電解セルの性能を安定化させたいという要請がある。
【0006】
本発明の課題は、性能を安定化させることのできる電解セル及びセルスタック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面に係る電解セルは、支持基板と、第1素子部と、第2素子部とを備える。支持基板の内部には、水蒸気及び二酸化炭素が流れる第1流路が形成される。第1素子部は、支持基板に支持される。第2素子部は、支持基板に支持され、第1流路内を流れる水蒸気及び二酸化炭素の流通方向において第1素子部の下流側に配置される。第1素子部及び第2素子部それぞれは、酸素極と、酸素極及び支持基板の間に配置される水素極活性部と、酸素極及び水素極活性部の間に配置される電解質とを有する。第1素子部及び第2素子部それぞれの水素極活性部は、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有する。第2素子部の水素極活性部が含有するニッケルの粒径は、第1素子部の水素極活性部が含有するニッケルの粒径より大きい。
【0008】
本発明の第2の側面に係る電解セルは、支持基板と、第1素子部と、第2素子部とを備える。支持基板の内部には、水蒸気が流れる第1流路が形成される。第1素子部は、支持基板に支持される。第2素子部は、支持基板に支持され、第1流路内を流れる水蒸気の流通方向において第1素子部の下流側に配置される。第1素子部及び第2素子部それぞれは、酸素極と、酸素極及び支持基板の間に配置される水素極活性部と、酸素極及び水素極活性部の間に配置される電解質とを有する。第1素子部及び第2素子部それぞれの水素極活性部は、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有する。第2素子部の水素極活性部が含有するニッケルの粒径は、第1素子部の水素極活性部が含有するニッケルの粒径より大きい。
【0009】
本発明の第3の側面に係る電解セルは、上記第1又は第2の側面に係り、第1素子部及び第2素子部それぞれは、支持基板と水素極活性部との間に配置される水素極集電部を有し、第1素子部及び第2素子部それぞれの水素極集電部は、ニッケルを含有し、第2素子部の水素極集電部が含有するニッケルの粒径は、第1素子部の水素極集電部が含有するニッケルの粒径より大きい。
【0010】
本発明の第4の側面に係る電解セルは、支持基板と、支持基板内に形成され、水蒸気及び二酸化炭素が流れる第1流路と、支持基板に支持される素子部とを備える。素子部は、酸素極活性部と、酸素極活性部及び支持基板の間に配置される水素極活性部と、酸素極活性部及び水素極活性部の間に配置される電解質とを有する。水素極活性部は、第1部分と、第1流路内を流れる水蒸気及び二酸化炭素の流通方向において第1部分の下流側に接続される第2部分とを含む。第1部分及び第2部分それぞれは、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有する。第2部分が含有するニッケルの粒径は、第1部分が含有するニッケルの粒径より大きい。
【0011】
本発明の第5の側面に係る電解セルは、支持基板と、支持基板内に形成され、水蒸気が流れる第1流路と、支持基板に支持される素子部とを備える。素子部は、酸素極活性部と、酸素極活性部及び支持基板の間に配置される水素極活性部と、酸素極活性部及び水素極活性部の間に配置される電解質とを有する。水素極活性部は、第1部分と、第1流路内を流れる水蒸気の流通方向において第1部分の下流側に接続される第2部分とを含む。第1部分及び第2部分それぞれは、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有する。第2部分が含有するニッケルの粒径は、第1部分が含有するニッケルの粒径より大きい。
【0012】
本発明の第6の側面に係る電解セルは、電解質と、電解質の第1主面側に配置された酸素極活性部と、電解質の第2主面側に配置された水素極活性部とを備える。水素極活性部は、第1部分と、電解質の第2主面側の流路内を流れる水蒸気及び二酸化炭素の流通方向において第1部分の下流側に接続される第2部分とを含む。第1部分及び第2部分それぞれは、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有する。第2部分が含有するニッケルの粒径は、第1部分が含有するニッケルの粒径より大きい。
【0013】
本発明の第7の側面に係る電解セルは、電解質と、電解質の第1主面側に配置された酸素極活性部と、電解質の第2主面側に配置された水素極活性部とを備える。水素極活性部は、第1部分と、電解質の第2主面側の流路内を流れる水蒸気の流通方向において第1部分の下流側に接続される第2部分とを含む。第1部分及び第2部分それぞれは、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有する。第2部分が含有するニッケルの粒径は、第1部分が含有するニッケルの粒径より大きい。
【0014】
本発明の第8の側面に係る電解セルは、上記第4乃至第7いずれかの側面に係り、水素極活性部は、第1部分と第2部分とが重なった第1オーバーラップ部を有する。
【0015】
本発明の第9の側面に係る電解セルは、上記第4乃至第8いずれかの側面に係り、水素極活性部上に配置される水素極集電部を備え、水素極集電部は、第3部分と、流通方向において第3部分の下流側に接続される第4部分とを含み、第3部分及び第4部分それぞれは、ニッケルを含有し、第4部分が含有するニッケルの粒径は、第2部分が含有するニッケルの粒径より大きい。
【0016】
本発明の第10の側面に係る電解セルは、上記第9の側面に係り、水素極集電部は、第3部分と第4部分とが重なった第2オーバーラップ部を有する。
【0017】
本発明の第11の側面に係るセルスタック装置は、供給室及び回収室を有するマニホールドと、マニホールドに支持される、上記第1乃至第5の側面、及び、上記第4又は第5の側面を引用する上記第8乃至第10の側面のいずれかに係る電解セルとを備える。支持基板は、先端部において第1流路と連通する第2流路を有する。第1流路は、供給室と連通する。第2流路は、回収室と連通する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、性能を安定化させることのできる電解セル、及びセルスタック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】セルスタック装置の斜視図。
図2】マニホールドの断面図。
図3】マニホールドの平面図。
図4】セルスタック装置の断面図。
図5】マニホールドに取り付けられた電解セルの平面図。
図6】電解セルの断面図。
図7】基端部における電解セルの断面図。
図8】先端部における電解セルの断面図。
図9】変形例cに係る電解セルの平面図。
図10図9のA-A断面図。
図11】変形例dに係る電解セルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態に係る電解セルについて図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、電解セルの一例として固体酸化物形電解セル(SOEC)を用いて説明する。図1はセルスタック装置を示す斜視図、図2はマニホールドの断面図である。図3は、マニホールドの平面図である。なお、図1乃至図3において、いくつかの電解セルの記載を省略している。
【0021】
[セルスタック装置]
図1に示すように、セルスタック装置100は、マニホールド2と、複数の電解セル10と、を備えている。
【0022】
[マニホールド]
図2に示すように、マニホールド2は、複数の電解セル10のそれぞれにガスを分配するように構成されている。また、マニホールド2は、電解セル10によって生成されたガスを回収するように構成されている。マニホールド2は、供給室21と回収室22とを有している。供給室21には、水蒸気(HO)、及び二酸化炭素(CO)などが供給される。なお、供給室21には、水素(H)がさらに供給されてもよい。回収室22は、各電解セル10にて生成されたH及び一酸化炭素(CO)などを回収する。
【0023】
マニホールド2は、マニホールド本体部23と、仕切板24とを有している。マニホールド本体部23は、内部に空間を有している。マニホールド本体部23は、直方体状である。
【0024】
仕切板24は、マニホールド本体部23の空間を供給室21と回収室22とに気密に仕切っている。詳細には、仕切板24は、マニホールド本体部23の長手方向に延びている。
【0025】
供給室21の底面には、供給口211が形成されている。また、回収室22の底面には、排出口221が形成されている。なお、供給口211及び排出口221は、底面ではなく側面や上面に形成されていてもよい。
【0026】
供給口211は、例えば、電解セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第1端部201側に配置されている。一方、排出口221は、例えば、電解セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第2端部202側に配置されている。
【0027】
図3に示すように、マニホールド本体部23の天板部231には、複数の貫通孔232が形成されている。各貫通孔232は、マニホールド本体部23の長手方向(z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。各貫通孔232は、マニホールド本体部23の幅方向(y軸方向)に延びている。各貫通孔232は、供給室21及び回収室22と連通している。なお、各貫通孔232は、供給室21と連通する部分と回収室22と連通する部分とに分かれていてもよい。
【0028】
[電解セル]
図4は、セルスタック装置の断面図である。また、図5は、マニホールドに取り付けられた電解セル10の平面図である。図4及び図5に示すように、電解セル10は、マニホールド2から第1方向に延びている。なお、本実施形態では、電解セル10は、マニホールド2から上方に延びている。
【0029】
電解セル10は、基端部101及び先端部102を有している。電解セル10は、基端部101においてマニホールド2に取り付けられている。すなわち、マニホールド2は、各電解セル10の基端部101を支持している。一方、電解セル10の先端部102は、マニホールドなどに固定されていない。すなわち、電解セル10の先端部102は、自由端となっている。本実施形態では、電解セル10の基端部101は下端部を意味し、電解セル10の先端部102は上端部を意味する。
【0030】
図1に示したように、各電解セル10は、主面同士が対向するように並べられている。また、各電解セル10は、マニホールド2の長手方向(z軸方向)に沿って間隔をあけて並べられている。すなわち、電解セル10の配列方向は、マニホールド2の長手方向に沿っている。
【0031】
図4及び図5に示すように、電解セル10は、支持基板4と、複数の素子部5と、を有している。また、電解セル10は、連通部材3をさらに有している。
【0032】
[支持基板]
支持基板4は、マニホールド2から上方に延びている。支持基板4は、板状である。詳細には、支持基板4は、平面視(z軸方向視)が長方形状である。支持基板4は、長手方向(x軸方向)と幅方向(y軸方向)とを有している。本実施形態では、図4及び図5の上下方向(x軸方向)が支持基板4の長手方向であり、図4及び図5の左右方向(y軸方向)が支持基板4の幅方向である。
【0033】
支持基板4は、基端部41と先端部42とを有している。基端部41及び先端部42は、支持基板4の長手方向(x軸方向)における両端部である。本実施形態では、支持基板4の基端部41は下端部を意味し、支持基板4の先端部42は上端部を意味する。
【0034】
支持基板4の基端部41は、マニホールド2に取り付けられる。例えば、支持基板4の基端部41は、接合材400などによってマニホールド2の天板部231に取り付けられる。詳細には、支持基板4の基端部41は、天板部231に形成された貫通孔232に挿入されている。なお、支持基板4の基端部41は、貫通孔232に挿入されていなくてもよい。すなわち、支持基板4の第1端面411によって貫通孔232を覆うように、支持基板4が天板部231上に載置されていてもよい。
【0035】
支持基板4には、複数の第1流路43、及び1つの第2流路44が形成されている。第1流路43及び第2流路44の数は、それぞれ適宜変更可能である。
【0036】
第1及び第2流路43、44は、支持基板4内を第1方向に延びている。なお、第1方向とは、第1及び第2流路43,44が延びる方向を意味する。本実施形態では、第1及び第2流路43,44は、支持基板4の長手方向に延びている。また、第1方向と交差する方向を「第2方向」と称する。なお、本実施形態では、第2方向は第1方向と直交している。第2方向は、支持基板4の幅方向(y軸方向)に沿って延びている。
【0037】
第1及び第2流路43、44は、支持基板4を貫通している。各第1流路43は、第2方向において互いに間隔をあけて配置されている。また、各第2流路44は、第2方向において第1流路43と間隔をあけて配置されている。すなわち、各第1流路43と第2流路44とは、第2方向において互いに間隔をあけて配置されている。なお、第1流路43と第2流路44との間隔は、第1流路43同士の間隔よりも大きいことが好ましい。
【0038】
第1流路43は、その基端部431において、供給室21と連通している。このため、第1流路43には、供給室21からHO及びCOなどが供給される。すなわち、第1流路43の基端部431から先端部432に向かって、HO及びCOなどが第1方向に沿って流れる。
【0039】
第2流路44は、その先端部442において、第1流路43と連通している。すなわち、第1流路43の先端部432と第2流路44の先端部442は互いに連通している。詳細には、第1流路43の先端部432と、第2流路44の先端部442とは、後述する連通流路30を介して連通している。また、第2流路44は、その基端部441において、回収室22と連通している。
【0040】
第2流路44には、電解セル10によって生成されたH及びCOなどが先端部442から基端部441に向かって流れる。そして、第2流路44内を第1方向に沿って流れるH及びCOなどは、第2流路44の基端部441から回収室22に排出される。
【0041】
支持基板4は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板4は、例えば、イットリア(Y)、酸化マグネシウム(MgO)、マグネシアアルミナスピネル(MgAl)、或いはこれらの複合物などによって構成することができる。支持基板4の気孔率は、例えば、20~60%程度である。この気孔率は、例えば、アルキメデス法により測定される。
【0042】
支持基板4は、緻密層48によって覆われている。緻密層48は、第1流路43及び第2流路44から支持基板4内に拡散されたガスが外部に排出されることを抑制するように構成されている。本実施形態では、緻密層48は、支持基板4の表面のうち、素子部5が形成されていない部分を覆っている。なお、本実施形態では、緻密層48は、後述する電解質7に使用される材料、又は結晶化ガラス等によって構成することができる。緻密層48は、支持基板4よりも緻密である。例えば、緻密層48の気孔率は、0~7%程度である。
【0043】
図6及び図7は、第2方向と直交する面で電解セル10を切断した切断面を示している。なお、図6及び図7は、第1流路43に沿って電解セル10を切断した切断面である。
【0044】
図6に示すように、支持基板4は、第1主面45、第2主面46、複数の凹部49、及び複数の桟部50を有している。各凹部49は、第1方向において、互いに間隔をあけて配置されている。凹部49は、第2方向に延びている。なお、本実施形態では、凹部49は、平面視(z軸方向視)において、第2流路44と重複する部分には形成されていない。
【0045】
桟部50は、一対の凹部49の間に配置される。すなわち、一対の凹部49の間の部分が桟部50となる。桟部50は、第2方向に延びている。第1方向において、凹部49と桟部50とが交互に配置される。
【0046】
[連通部材]
図4に示すように、電解セル10は、第1流路43と第2流路44とを連通する連通流路30を有している。なお、連通流路30は、支持基板4に取り付けられた連通部材3に形成されている。連通部材3は、支持基板4と一体的に形成されていることが好ましい。
【0047】
連通部材3は、例えば、多孔質である。また、連通部材3は、その外側面を構成する緻密層31を有している。緻密層31は、連通部材3の本体よりも緻密に形成されている。例えば、緻密層31の気孔率は、0~7%程度である。この緻密層31は、連通部材3と同じ材料、上述した電解質7に使用される材料、又は結晶化ガラス等によって形成することができる。
【0048】
[素子部]
図5に示すように、複数の素子部5が、支持基板4上に配置されている。なお、本実施形態では、支持基板4の両面において、複数の素子部5が支持されている。なお、第1主面45及び第2主面46それぞれに形成される複数の素子部5の数は特に限られず、2以上であればよい。第1主面45に形成される素子部5の数と第2主面46に形成される素子部5の数とは、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。また、素子部5は、支持基板4の第1主面45及び第2主面46のどちらか一方のみに支持されていてもよい。以下の説明では、支持基板4の第1主面45に配置された複数の素子部5に着目する。
【0049】
複数の素子部5は、第1方向に配列されている。すなわち、本実施形態に係る電解セル10は、いわゆる横縞形の電解セルである。なお、複数の素子部5は、インターコネクタ9(図6参照)によって、互いに電気的に直列に接続されている。
【0050】
図5に示すように、複数の素子部5が、1つの第1素子部5aと、3つの第2素子部5bとを含んでいる。第1素子部5aは、第1流路43内を流れるHO及びCOの流通方向(以下、「流通方向」と略称する。)において、3つの第2素子部5bの上流側に配置される。第1素子部5aは、複数の素子部5の中で最もマニホールド2に近い。3つの第2素子部5bそれぞれは、流通方向において第1素子部5aの下流側に配置される。3つの第2素子部5bは、流通方向において順に並べられる。なお、本実施形態において、流通方向は、第1方向と同じである。
【0051】
素子部5は、第2方向に延びている。本実施形態において、素子部5は、平面視(z軸方向視)において、第1流路43と重複する一方で、第2流路44とは重複していない。すなわち、第1流路43は、平面視において素子部5と重複するように配置されており、第2流路44は、平面視において、素子部5と重複しないように配置されている。なお、平面視とは、電解セル10の厚さ方向に沿って見ることを言う。
【0052】
支持基板4は、第1領域R1と第2領域R2とに分けることができる。第1領域R1は、第1方向視(x軸方向視)において、供給室21と重複する領域である。第2領域R2は、第1方向視(x軸方向視)において、回収室22と重複する領域である。
【0053】
素子部5は、支持基板4の第1領域R1に配置されており、第2領域R2には配置されていない。また、第1流路43は、支持基板4の第1領域R1内に形成されており、第2流路44は、支持基板4の第2領域R2内に形成されている。
【0054】
図6及び図7に示すように、各素子部5は、水素極6(カソード)、電解質7、及び酸素極8(アノード)を有している。支持基板4側から、水素極6、電解質7、酸素極8の順で配置されている。各素子部5は、反応防止膜11をさらに有している。なお、図7に示される第1素子部5aの基本構成は、図6に示される第2素子部5bの基本構成と同じであるが、後述するように水素極活性部62の構成材料は相違している。
【0055】
[水素極]
水素極6は、支持基板4及び電解質7の間に配置される。水素極6は、下記(1)式に示す共電解の電気化学反応に従って、CO及びHOから、H、CO、及びO2-を生成する。
【0056】
・水素極6:CO+HO+ 4e→CO+H+2O2-・・・(1)
【0057】
水素極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される。水素極6は、焼成体である。水素極6は、水素極集電部61と水素極活性部62とを有する。各水素極6は、支持基板4上に配置されている。各水素極6は、第1方向(x軸方向)において、互いに間隔をあけて配置されている。
【0058】
[水素極集電部]
水素極集電部61は、支持基板4上に配置される。水素極集電部61は、支持基板4及び酸素極8の間に配置される。より詳細には、水素極集電部61は、支持基板4及び水素極活性部62の間に配置される。
【0059】
本実施形態において、水素極集電部61は、凹部49内に配置されている。凹部49は、支持基板4に形成されている。詳細には、水素極集電部61は、凹部49を埋めており、凹部49と同様の形状を有する。
【0060】
水素極集電部61の主面611は、支持基板4の第1主面45と実質的に同一面上にある。すなわち、支持基板4の第1主面45と、各水素極集電部61の主面611とによって、一つの面が構成されている。なお、水素極集電部61の主面611は、支持基板4の第1主面45と完全に同一面上になくてもよく、例えば、支持基板4の第1主面45との間に20μm以下程度の段差があってもよい。
【0061】
水素極集電部61は、電子伝導性を有する。水素極集電部61は、水素極活性部62よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。水素極集電部61は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0062】
本実施形態に係る水素極集電部61は、ニッケル(Ni)を含有する。Niは、電子伝導性材料として機能する。水素極集電部61が含有するNiは、基本的には金属Niの状態で存在しているが、一部は酸化ニッケル(NiO)の状態で存在していてもよい。
【0063】
水素極集電部61は、酸素イオン伝導性材料を含有していてもよい。酸素イオン伝導性材料としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、ガドリニウムドープセリア(GDC)、サマリウムドープセリア(SDC)、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた混合材料などを用いることができる。水素極集電部61の厚さ、及び凹部49の深さは、例えば、50~500μm程度である。
【0064】
水素極集電部61は、NiOを含む成形体を焼成することにより形成することができる。成形体は、所望により酸素イオン伝導性材料及び非酸素イオン伝導性材料の少なくとも一方を含んでいてもよい。水素極集電部61の成形体において、NiOの含有率は、例えば55wt%以上85wt%以下とすることができる。水素極集電部61の成形体において、酸素イオン伝導性材料及び非酸素イオン伝導性材料の合計含有率は、例えば15wt%以上45wt%以下とすることができる。
【0065】
[水素極活性部]
水素極活性部62は、水素極集電部61上に配置される。水素極活性部62は、酸素極8及び支持基板4の間に配置される。より詳細には、水素極活性部62は、水素極集電部61及び電解質7の間に配置される。
【0066】
本実施形態において、水素極活性部62は、水素極集電部61の主面611上に配置されている。このため、水素極活性部62は、凹部49から突出している。すなわち、水素極活性部62は、水素極集電部61に埋設されていない。水素極活性部62の端縁は、主面611上において、水素極集電部61の端縁よりも内側に形成されている。詳細には、水素極活性部62は、水素極集電部61よりも平面視(z軸方向視)の面積が小さい。そして、水素極活性部62は、水素極集電部61の主面611内に収まっている。
【0067】
水素極活性部62は、酸素イオン伝導性及び電子伝導性を有する。水素極活性部62は、水素極集電部61より高い酸素イオン伝導性を有することが好ましい。水素極活性部62は、上記(1)式に示した電気化学反応を担う。
【0068】
水素極活性部62は、Niと酸素イオン伝導性材料とを含有する。Niは、電子伝導性材料として機能するとともに電極触媒として機能する。水素極活性部62が含有するNiは、基本的には金属Niの状態で存在しているが、一部はNiOの状態で存在していてもよい。酸素イオン伝導性材料としては、YSZ、CSZ、ScSZ、GDC、SDC、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた混合材料などを用いることができる。
【0069】
水素極活性部62は、NiO及び酸素イオン伝導性材料を含む成形体を焼成することにより形成することができる。水素極活性部62の成形体において、NiOの含有率は、例えば50wt%以上70wt%以下とすることができる。水素極活性部62の成形体において、酸素イオン伝導性材料の含有率は、例えば30wt%以上50wt%以下とすることができる。
【0070】
水素極活性部62は、水素極集電部61より薄くてよい。水素極活性部62の厚さは、例えば、5~30μm程度である。
【0071】
なお、水素極6の断面をSEM(電子顕微鏡)で観察することによって、水素極集電部61及び水素極活性部62の界面を特定することができる。
【0072】
[水素極活性部62におけるNiの粒径]
第2素子部5b(図5及び図6参照)の水素極活性部62が含有するNiの粒径は、第1素子部5a(図5及び図7参照)の水素極活性部62が含有するNiの粒径より大きい。
【0073】
すなわち、上流側に位置する第1素子部5aの水素極活性部62が含有するNiは相対的に微粒であり、下流側に位置する第2素子部5bの水素極活性部62が含有するNiは相対的に粗粒である。
【0074】
このように、電解セル10の作動中に高温になりやすい第2素子部5bの水素極活性部62が含有するNiが粗粒であるため、Niどうしが表面張力によって互いに結合して粗大化(凝集)することを抑制できる。従って、電解セル10の作動中において、水素極活性部62の活性が低下して電解セル10の性能が変動(低下)してしまうことを抑制できる。
【0075】
また、電解セル10の作動中に第2素子部5bほど高温にならない第1素子部5aの水素極活性部62が含有するNiは微粒であるため、水素極活性部62の電極活性を高めて電解セル10全体としての性能を維持することができる。
【0076】
以上の通り、下流側の水素極活性部62が含有するNiの粒径を相対的に大きくすることによって、電解セル10の初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を抑制することができる。
【0077】
第1素子部5aの水素極活性部62が含有するNiの粒径は、例えば0.3μm以上3.0μm以下とすることができる。第1素子部5aの水素極活性部62が含有するNiの粒径は、0.3μm以上2.0μm以下が好ましい。第2素子部5bの水素極活性部62が含有するNiの粒径は、例えば0.3μm以上4.0μm以下とすることができる。第2素子部5bの水素極活性部62が含有するNiの粒径は、0.3μm以上2.0μm以下が好ましい。
【0078】
水素極活性部62が含有するNiの粒径は、次の手法により測定される。
【0079】
まず、水素極活性部62の断面を精密機械研磨した後に、株式会社日立ハイテクノロジーズのIM4000によってイオンミリング加工処理を施す。
【0080】
次に、インレンズ二次電子検出器を用いたFE-SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope:電界放射型走査型電子顕微鏡)を用いて、酸素イオン伝導性材料及びNiそれぞれの粒子を確認できる程度の倍率(例えば、5000~30000倍)で水素極活性部62の断面を拡大したSEM画像を取得する。
【0081】
次に、SEM画像の輝度を256階調に分類することによって、酸素イオン伝導性材料とNiと気孔との明暗差を3値化する。例えば、酸素イオン伝導性材料を薄灰色、Niを濃灰色、気孔を黒色に表示させることができる。
【0082】
次に、MVTec社(ドイツ)製の画像解析ソフトHALCONを用いて、SEM画像を画像解析することによって、Ni粒子が強調表示された解析画像を取得する。そして、解析画像から無作為に選択した50個のNi粒子の平均円相当径をNiの粒径とする。Ni粒子の平均円相当径とは、各Ni粒子の円相当径の算術平均値である。Ni粒子の円相当径とは、Ni粒子と同じ面積を有する円の直径である。
【0083】
[水素極集電部61におけるNiの粒径]
第2素子部5b(図5及び図6参照)の水素極集電部61が含有するNiの粒径は、第1素子部5a(図5及び図7参照)の水素極集電部61が含有するNiの粒径より大きいことが好ましい。
【0084】
すなわち、上流側に位置する第1素子部5aの水素極集電部61が含有するNiは相対的に微粒であることが好ましく、下流側に位置する第2素子部5bの水素極集電部61が含有するNiは相対的に粗粒であることが好ましい。
【0085】
このように、電解セル10の作動中に高温になりやすい第2素子部5bの水素極集電部61が含有するNiが粗粒であるため、Niどうしが表面張力によって互いに結合して粗大化することを抑制できる。従って、電解セル10の作動中に水素極集電部61の導電性が低下することを抑制できるため、電解セル10の性能が変動(低下)してしまうことを更に抑制できる。
【0086】
また、電解セル10の作動中に第2素子部5bほど高温にはならない第1素子部5aの水素極集電部61が含有するNiは微粒であるため、水素極集電部61の導電性を高めて電解セル10全体としての性能を維持することができる。
【0087】
以上の通り、下流側の水素極集電部61が含有するNiの粒径を相対的に大きくすることによって、電解セル10の初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を更に抑制することができる。
【0088】
第1素子部5aの水素極集電部61が含有するNiの粒径は、例えば0.5μm以上4.0μm以下とすることができる。第1素子部5aの水素極集電部61が含有するNiの粒径は、0.5μm以上2.0μm以下が好ましい。第2素子部5bの水素極集電部61が含有するNiの粒径は、例えば0.5μm以上5.0μm以下とすることができる。第2素子部5bの水素極集電部61が含有するNiの粒径は、0.5μm以上3.0μm以下が好ましい。
【0089】
水素極集電部61が含有するNiの粒径は、上述した水素極活性部62が含有するNiの粒径と同じ手法で測定される。
【0090】
[電解質]
電解質7は、水素極6及び酸素極8の間に配置される。より詳細には、電解質7は、水素極活性部62及び酸素極8の間に配置される。
【0091】
電解質7は、酸素イオン伝導性を有する。電解質7は、水素極6において生成されたO2-を酸素極8に伝達させる。電解質7は、水素極6上を覆うように配置されている。詳細には、電解質7は、一のインターコネクタ9から他のインターコネクタ9まで第1方向に延びている。すなわち、第1方向において、電解質7とインターコネクタ9とが交互に配置されている。
【0092】
電解質7は、支持基板4よりも緻密である。例えば、電解質7の気孔率は、0~7%程度である。電解質7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質7は、例えば、YSZ、又は、LSGM(ランタンガレート)などによって構成することができる。電解質7の厚さは、例えば、3~50μm程度である。
【0093】
[反応防止膜]
反応防止膜11は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜11は、平面視において、水素極活性部62と略同一の形状であり、水素極活性部62と重複するように配置されている。反応防止膜11は、電解質7を介して、水素極活性部62と対応する位置に配置されている。反応防止膜11は、電解質7内のYSZと酸素極活性部81内のSrとが反応して電解質7と酸素極活性部81との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜11は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)などによって構成することができる。反応防止膜11の厚さは、例えば、3~50μm程度である。
【0094】
[酸素極]
酸素極8は、下記(2)式に示す化学反応に従って、電解質7を介して水素極6より伝達されるO2-からOを生成する。
【0095】
・酸素極8:2O2-→O+4e・・・(2)
【0096】
酸素極8は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される。酸素極8は、焼成体である。酸素極8は、水素極6と協働して電解質7を挟むように配置されている。酸素極8は、酸素極活性部81及び酸素極集電部82を有している。
【0097】
[酸素極活性部]
酸素極活性部81は、反応防止膜11上に配置されている。酸素極活性部81は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。酸素極活性部81は、酸素極集電部82より高い酸素イオン伝導性を有することが好ましい。
【0098】
酸素極活性部81は、多孔質の材料から構成される。酸素極活性部81は焼成体である。酸素極活性部81は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)、又はSSC=(Sm,Sr)CoO(サマリウムストロンチウムコバルタイト)、およびそれらとGDCなどの酸素イオン伝導性材料との複合物によって構成することができる。また、酸素極活性部81は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。酸素極活性部81の厚さは、例えば、10~100μmである。
【0099】
[酸素極集電部]
酸素極集電部82は、酸素極活性部81上に配置されている。酸素極集電部82は、酸素極活性部81から、隣の素子部5に向かって延びている。酸素極集電部82は、インターコネクタ9を介して隣の素子部5の水素極集電部61と電気的に接続されている。なお、水素極集電部61と酸素極集電部82とは、第1方向において、反応領域から互いに反対側に延びている。なお、反応領域とは、電解セル10の平面視(z軸方向視)において、水素極活性部62と電解質7と酸素極活性部81とが重複する領域である。
【0100】
酸素極集電部82は、電子伝導性を有する多孔質材料から構成される。酸素極集電部82は、焼成体である。酸素極集電部82は、酸素極活性部81よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。酸素極集電部82は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0101】
酸素極集電部82は、例えば、LSCF、LSC、Ag(銀)、又は、Ag-Pd(銀パラジウム合金)などによって構成することができる。なお、酸素極集電部82の厚さは、例えば、50~500μm程度である。
【0102】
[インターコネクタ]
インターコネクタ9は、第1方向において隣り合う素子部5同士を電気的に接続するように構成されている。インターコネクタ9は、隣り合う素子部5の一方の素子部5の水素極6と、他方の素子部5の酸素極8とを電気的に接続している。詳細には、インターコネクタ9は、隣り合う素子部5の一方の素子部5の水素極集電部61と、他方の素子部5の酸素極集電部82とを電気的に接続している。
【0103】
このように、各素子部5は、インターコネクタ9によって、第1及び第2主面45、46のそれぞれにおいて電解セル10の基端部101から先端部102まで直列に接続されている。
【0104】
インターコネクタ9は、水素極集電部61の主面611上に配置されている。インターコネクタ9は、第1方向において、水素極活性部62と間隔をあけて配置されている。
【0105】
インターコネクタ9は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される。インターコネクタ9は、焼成体である。インターコネクタ9は、支持基板4よりも緻密である。例えば、インターコネクタ9の気孔率は、0~7%程度である。インターコネクタ9は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)、又は、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)などによって構成することができる。インターコネクタ9の厚さは、例えば、10~100μmである。
【0106】
図7に示すように、各電解セル10において最も基端側に配置されたインターコネクタ9は、第1主面45に配置される素子部5と、第2主面46に配置される素子部5とを電気的に接続している。
【0107】
第2主面46において最も基端側に配置された素子部5の酸素極集電部82は、第2主面46から支持基板4の側面を介して第1主面45まで延びている。すなわち、この最も基端側に配置された素子部5の酸素極集電部82は、環状に延びている。そして、第1主面45において最も基端側に配置されたインターコネクタ9は、第2主面46から第1主面45まで延びる酸素極集電部82と、第1主面45において最も基端側に配置された素子部5の水素極集電部61と、を電気的に接続している。
【0108】
このように、第1主面45において直列接続された複数の素子部5と、第2主面46において直列接続された複数の素子部5とは、インターコネクタ9によって、電解セル10の基端部101において直列接続されている。
【0109】
[集電部材]
図8に示すように、セルスタック装置100は、集電部材12をさらに有している。集電部材12は、隣り合う電解セル10の間に配置されている。そして、集電部材12は、隣り合う電解セル10を互いに電気的に接続している。集電部材12は、隣り合う電解セル10の先端部102同士を接合している。例えば、集電部材12は、支持基板4の両主面に配置された複数の素子部5のうち、最も先端側に配置された素子部5よりも先端側に配置されている。集電部材12は、隣り合う電解セル10の最も先端側に配置された素子部5同士を電気的に接続している。
【0110】
集電部材12は、導電性接合材103を介して、素子部5から延びる酸素極集電部82に接合される。導電性接合材103としては、周知の導電性セラミックス等を用いることができる。例えば、導電性接合材103は、(Mn,Co)、(La,Sr)MnO、及び(La,Sr)(Co,Fe)Oなどから選ばれる少なくとも1種によって構成することができる。
【0111】
[使用方法]
上述したように構成されたセルスタック装置100では、電極間に電力を供給しながら、マニホールド2の供給室21にHO及びCOを供給する。そして、第1流路43内を流れるHO及びCOが素子部5において共電解されて、H、及びCOが生成される。このように生成されたH、及びCOは、第2流路44内を流れて、回収室22で回収される。
【0112】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0113】
(a)上記実施形態において、電解セル10は、1つの第1素子部5aと3つの第2素子部5bとを有することとしたが、これに限られない。電解セル10は、1つの第1素子部5aと、当該第1素子部5aより下流側に配置された1つの第2素子部5bとを有している限り、第1素子部5a及び第2素子部5bそれぞれの数及び配置は適宜変更できる。例えば、第1素子部5aが複数配置されていてもよいし、第2素子部5bが1つだけ配置されていてもよい。
【0114】
(b)上記実施形態では、電解セル10によって生成されたガスをマニホールド2に回収するように構成されることとしたが、これに限られない。例えば、電解セル10の連通部材3を省略して、電解セル10の先端部102に開口する第1流路43からガスを回収してもよい。
【0115】
(c)上記実施形態において、電解セル10は、いわゆる横縞形の電解セルであることとしたが、いわゆる縦縞形の電解セルであってもよい。図9に示すように、縦縞形の電解セル20は、支持基板4の一主面45に配置された1つの素子部5cを有する。
【0116】
図10は、図9のA-A断面図である。図10に示すように、素子部5cは、酸素極8と、酸素極8及び支持基板4の間に配置される水素極6aと、酸素極8及び水素極6aの間に配置される電解質7とを有する。水素極6aは、水素極活性部65及び水素極集電部66を含む。素子部5cのうち水素極活性部65以外の構成は上記実施形態にて説明したとおりである。
【0117】
水素極活性部65は、第1部分65aと、第1流路43内を流れるHO及びCOの流通方向において第1部分65aの下流側に接続される第2部分65bとを含む。第1部分65a及び第2部分65bそれぞれは、酸素イオン伝導性材料とNiとを含有する。
【0118】
第2部分65bが含有するNiの粒径は、第1部分65aが含有するNiの粒径より大きい。このように、電解セル20の作動中に高温になりやすい第2部分65bが含有するNiが粗粒であることによって、Niが粗大化することを抑制できるため、電解セル20の性能が変動(低下)してしまうことを抑制できる。また、電解セル20の作動中に第2部分65bほど高温にならない第1部分65aが含有するNiは微粒であるため、水素極活性部65の電極活性を高めて電解セル20全体としての性能を維持することができる。よって、電解セル10の初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を抑制することができる
【0119】
第1部分65aが含有するNiの粒径は、例えば0.3μm以上3.0μm以下とすることができる。第1部分65aが含有するNiの粒径は、0.3μm以上2.0μm以下が好ましい。第2部分65bが含有するNiの粒径は、例えば0.3μm以上4.0μm以下とすることができる。第2部分65bが含有するNiの粒径は、0.3μm以上2.0μm以下が好ましい。
【0120】
図10に示すように、水素極活性部65は、第2方向において、第1部分65aの下流側端部と第2部分65bの上流側端部とが重なったオーバーラップ部65xを有する。これによって、第1部分65a及び第2部分65bの端面同士が接続される場合に比べて、両者の接続性を向上させることができる。
【0121】
なお、水素極活性部65の電解質側主面の平面視における、水素極活性部65の全面積に対する第1及び第2部分65a,65bそれぞれの面積の割合は、初期性能の確保と性能劣化の抑制とのいずれを重要視するかによって適宜設定可能である。同様に、水素極活性部65の水素極集電部側主面の平面視における、水素極活性部65の全面積に対する第1及び第2部分65a,65bそれぞれの面積の割合も、初期性能の確保と性能劣化の抑制とのいずれを重要視するかによって適宜設定可能である。
【0122】
図10に示すように、水素極集電部66は、水素極活性部65と支持基板4との間に配置される。
【0123】
水素極集電部66は、第3部分66aと、第1流路43内を流れるHO及びCOの流通方向において第3部分66aの下流側に接続される第4部分66bとを含む。第3部分66a及び第4部分66bそれぞれはNiを含有する。第3部分66a及び第4部分66bそれぞれは酸素イオン伝導性材料を含有していてもよい。
【0124】
第4部分66bが含有するNiの粒径は、第3部分66aが含有するNiの粒径より大きい。このように、電解セル20の作動中に高温になりやすい第4部分66bが含有するNiが粗粒であることによって、Niが粗大化することを抑制できるため、電解セル20の性能が変動(低下)してしまうことを更に抑制できる。また、電解セル20の作動中に第4部分66bほど高温にならない第3部分66aが含有するNiは微粒であるため、水素極集電部66の導電性を高めて電解セル20全体としての性能を維持することができる。よって、電解セル10の初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を更に抑制することができる
【0125】
第3部分66aが含有するNiの粒径は、例えば0.5μm以上4.0μm以下とすることができる。第3部分66aが含有するNiの粒径は、0.5μm以上2.0μm以下が好ましい。第4部分66bが含有するNiの粒径は、例えば0.5μm以上5.0μm以下とすることができる。第4部分66bが含有するNiの粒径は、0.5μm以上3.0μm以下が好ましい。
【0126】
図10に示すように、水素極集電部66は、第2方向において、第3部分66aの下流側端部と第4部分66bの上流側端部とが重なったオーバーラップ部66xを有する。これによって、第3部分66a及び第4部分66bの端面同士が接続される場合に比べて、両者の接続性を向上させることができる。
【0127】
なお、水素極集電部66の水素極活性部側主面の平面視における、水素極集電部66の全面積に対する第3及び第4部分66a,66bそれぞれの面積の割合は、初期性能の確保と性能劣化の抑制とのいずれを重要視するかによって適宜設定可能である。同様に、水素極集電部66の支持基板側主面の平面視における、水素極集電部66の全面積に対する第3及び第4部分66a,66bそれぞれの面積の割合も、初期性能の確保と性能劣化の抑制とのいずれを重要視するかによって適宜設定可能である。
【0128】
(d)上記実施形態において、電解セル10は、いわゆる横縞形の電解セルであることとしたが、いわゆる平板形の電解であってもよい。図11に示すように、平板形の電解セル30は、電解質7と、電解質7の第1主面71側に配置された酸素極8と、電解質7の第2主面72側に配置された水素極6bとを有する。水素極6bは、水素極活性部67及び水素極集電部68を含む。電解セル30は、酸素極8と電気的に接続されたインターコネクタと、水素極6bと電気的に接続されたインターコネクタとの間に配置される。電解質7は、緻密な絶縁性接合材を介してセパレータに接合されており、電解質7の第1主面71側には酸素が流れる第1流路L1が形成され、電解質7の第2主面72側にはHO及びCOが流れる流路L2が形成される。
【0129】
図11に示すように、水素極活性部67は、第1部分67aと、第2流路L2内を流れるHO及びCOの流通方向において第1部分67aの下流側に接続される第2部分67bとを含む。第1部分67a及び第2部分67bそれぞれは、酸素イオン伝導性材料とNiとを含有する。
【0130】
第2部分67bが含有するNiの粒径は、第1部分67aが含有するNiの粒径より大きい。このように、電解セル30の作動中に高温になりやすい第2部分67bが含有するNiが粗粒であることによってNiが粗大化することを抑制できるため、電解セル30の性能が変動(低下)してしまうことを抑制できる。また、電解セル30の作動中に第2部分67bほど高温にならない第1部分67aが含有するNiは微粒であるため、水素極活性部67の電極活性を高めて電解セル30全体としての性能を維持することができる。よって、電解セル10の初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を抑制することができる
【0131】
第1部分67aが含有するNiの粒径は、例えば0.3μm以上3.0μm以下とすることができる。第1部分67aが含有するNiの粒径は、0.3μm以上2.0μm以下が好ましい。第2部分67bが含有するNiの粒径は、例えば0.35μm以上4.0μm以下とすることができる。第2部分67bが含有するNiの粒径は、0.3μm以上2.0μm以下が好ましい。
【0132】
図11に示すように、水素極活性部67は、第2方向において、第1部分67aの下流側端部と第2部分67bの上流側端部とが重なったオーバーラップ部67xを有する。これによって、第1部分67a及び第2部分67bの端面同士が接続される場合に比べて、両者の接続性を向上させることができる。
【0133】
なお、水素極活性部67の電解質側主面の平面視における、水素極活性部67の全面積に対する第1及び第2部分67a,67bそれぞれの面積の割合は、初期性能の確保と性能劣化の抑制とのいずれを重要視するかによって適宜設定可能である。同様に、水素極活性部67の水素極集電部側主面の平面視における、水素極活性部67の全面積に対する第1及び第2部分67a,67bそれぞれの面積の割合も、初期性能の確保と性能劣化の抑制とのいずれを重要視するかによって適宜設定可能である。
【0134】
図11に示すように、水素極集電部68は、水素極活性部67上に配置される。
【0135】
水素極集電部68は、第3部分68aと、第2流路L2内を流れるHO及びCOの流通方向において第3部分68aの下流側に接続される第4部分68bとを含む。第3部分68a及び第4部分68bそれぞれはNiを含有する。第3部分68a及び第4部分68bそれぞれは酸素イオン伝導性材料を含有していてもよい。
【0136】
第4部分68bが含有するNiの粒径は、第3部分68aが含有するNiの粒径より大きい。このように、電解セル30の作動中に高温になりやすい第4部分68bが含有するNiが粗粒であることによってNiが粗大化することを抑制できるため、電解セル30の性能が変動(低下)してしまうことを更に抑制できる。また、電解セル30の作動中に第4部分68bほど高温にならない第3部分68aが含有するNiは微粒であるため、水素極集電部68の導電性を高めて電解セル30全体としての性能を維持することができる。よって、電解セル10の初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を更に抑制することができる。
【0137】
第3部分68aが含有するNiの粒径は、例えば0.5μm以上4.0μm以下とすることができる。第3部分68aが含有するNiの粒径は、0.5μm以上2.0μm以下が好ましい。第4部分68bが含有するNiの粒径は、例えば0.5μm以上5.0μm以下とすることができる。第4部分68bが含有するNiの粒径は、0.5μm以上3.0μm以下が好ましい。
【0138】
図11に示すように、水素極集電部68は、第2方向において、第3部分68aの下流側端部と第4部分68bの上流側端部とが重なったオーバーラップ部68xを有する。これによって、第3部分68a及び第4部分68bの端面同士が接続される場合に比べて、両者の接続性を向上させることができる。
【0139】
なお、水素極集電部68の水素極活性部側主面の平面視における、水素極集電部68の全面積に対する第3及び第4部分68a,68bそれぞれの面積の割合は、初期性能の確保と性能劣化の抑制とのいずれを重要視するかによって適宜設定可能である。同様に、水素極集電部68の水素極活性部と反対側の主面の平面視における、水素極集電部68の全面積に対する第3及び第4部分68a,68bそれぞれの面積の割合も、初期性能の確保と性能劣化の抑制とのいずれを重要視するかによって適宜設定可能である。
【0140】
また、平板形の電解セル30は、電解質7が支持体としての機能を担う電解質支持形セルであってもよいし、水素極6bが支持体としての機能を担う水素極支持形セルであってもよいし、或いは、水素極6b又は酸素極8に接合された金属基板が支持体としての機能を担うメタルサポート形セルであってもよい。電解セル30が電解質支持形セルである場合、電解質7は、水素極6b及び酸素極8より厚くてよい。電解セル30が水素極支持形セルである場合、水素極6bは、電解質7及び酸素極8より厚くてよい。
【0141】
(e)上記実施形態において、連通流路30は連通部材3に形成されていたが、連通流路30の構成はこれに限定されない。例えば、連通流路30は、支持基板4内に形成されていてもよい。この場合、セルスタック装置100は、連通部材3を備えていなくてもよい。この支持基板4内に形成された連通流路30によって、第1流路43と第2流路44とが連通されている。
【0142】
(f)上記実施形態において、電解セル10では、水素極6に二酸化炭素及び水蒸気を供給して共電解することによって一酸化炭素及び水素を生成することとしたが、水素極6に水蒸気を供給して電解することによって水素を生成してもよい。この場合、水蒸気が第1流路43に供給され、水素が第2流路44から回収される。
【実施例
【0143】
本実施例では、下流側の水素極活性部が含有するNiの粒径を上流側の水素極活性部が含有するNiの粒径より大きくすることによって、電解セルの初期性能の確保と経時的な性能劣化の抑制とを両立できることを検証した。
【0144】
(実施例1~7及び比較例1~4に係る横縞形電解セル)
実施例1~7及び比較例1~4として、図5~7に示した横縞形電解セルを作製した。実施例1~7及び比較例1~4は、第1素子部(上流側)と第2素子部(下流側)における水素極活性部及び水素極集電部それぞれの材料組成とNiの粒径を表1に示すように変更した点のみで相違している。なお、Niの粒径は、原料粉末であるNiOの粒径を変更することによって調整した。本実施例において、Niの粒径とは、上記実施形態にて説明したNi粒子の平均円相当径である。
【0145】
実施例1~3,7では、第2素子部の水素極活性部が含有するNiの粒径を第1素子部の水素極活性部が含有するNiの粒径より大きくし、かつ、第2素子部の水素極集電部が含有するNiの粒径を第1素子部の水素極集電部が含有するNiの粒径と同じとした。実施例4~6では、第2素子部の水素極活性部が含有するNiの粒径を第1素子部の水素極活性部が含有するNiの粒径より大きくし、かつ、第2素子部の水素極集電部が含有するNiの粒径を第1素子部の水素極集電部が含有するNiの粒径より大きくした。
【0146】
一方、比較例1~4では、第1素子部の水素極活性部が含有するNiの粒径を第2素子部の水素極活性部が含有するNiの粒径と同じとし、かつ、第1素子部の水素極集電部が含有するNiの粒径を第2素子部の水素極集電部が含有するNiの粒径と同じとした。
【0147】
(電解試験)
実施例1~7及び比較例1~4について、水素極側に水素ガスを供給しながら酸素極側に空気を供給することによって水素極のNiOをNiに還元させた後、以下の条件で1000時間の電解試験を実施した。
【0148】
・セル温度:750℃
・電流密度:0.5A/cm(水素極の主面の面積に対する値)
・水素極に水素含有ガスを供給(HO:CO:H=28:62:10)
・酸素極に空気を供給
・電解率:70%(HOとCOが全てHとCOに共電解された場合を電解率100%と定義した時の値)
【0149】
そして、実施例1~7及び比較例1~4について、定電流負荷時の電圧を計測することによって、初期電圧と、1000時間連続電解後の電圧を測定した。測定結果を表1に示す。また、表1に示すように、1000時間連続電解後における劣化率(電圧低下率)を下記式(3)から算出した。
劣化率(電圧低下率)[%]=100×(1000時間後電圧[V]-初期電圧[V])/初期電圧[V]・・・(3)
【0150】
表1では、初期性能について、初期電圧が1.300V未満であれば「〇」と評価し、初期電圧が1.300V以上であれば「×」と評価した。また、表1では、1000時間電解後性能について、劣化率が2%未満であれば「◎」と評価し、劣化率が2%以上10%未満であれば「〇」と評価し、劣化率が10%以上であれば「×」と評価した。さらに、表1では、総合評価として、初期性能の評価が「〇」かつ1000時間電解後性能の評価が「◎」であれば「◎」と評価し、初期性能の評価が「〇」かつ1000時間電解後性能の評価が「〇」であれば「〇」と評価し、初期性能及び1000時間電解後性能いずれかの評価が「×」であれば「×」と評価した。
【0151】
【表1】
【0152】
表1に示すように、実施例1~7では、比較例1~4に比べて、初期性能及び1000時間電解後性能の両方を向上させることができた。このような結果が得られたのは、下流側に位置する第2素子部の水素極活性部が含有するNiの粒径を、上流側に位置する第1素子部の水素極活性部が含有するNiの粒径より大きくすることによって、第2素子部ではNiの凝集を抑制でき、かつ、第1素子部では電極活性を高めることができたためである。このことから、下流側の水素極活性部が含有するNiの粒径を相対的に大きくすることによって、電解セルの初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を抑制できることが確認できた。
【0153】
また、表1に示すように、実施例4~6では、実施例1~3,7に比べて、1000時間電解後性能を更に向上させることができた。このような結果が得られたのは、下流側に位置する第2素子部の水素極集電部が含有するNiの粒径を、上流側に位置する第1素子部の水素極集電部が含有するNiの粒径より大きくすることによって、第2素子部ではNiの凝集を抑制でき、かつ、第1素子部では電極活性を高めることができたためである。このことから、下流側の水素極集電部が含有するNiの粒径を下流側の水素極集電部が含有するNiの粒径より大きくすることによって、電解セルの初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を更に抑制できることが確認できた。
【0154】
(実施例8~14及び比較例5~8に係る平板形電解セル)
実施例8~14及び比較例5~8として、図11に示した平板形電解セルを作製した。実施例8~14及び比較例5~8は、水素極活性部の第1部分(上流側)及び第2部分(下流側)と水素極集電部の第3部分(上流側)及び第4部分(下流側)それぞれの材料組成とNiの粒径を表2に示すように変更した点のみで相違している。なお、Niの粒径は、原料粉末であるNiOの粒径を変更することによって調整した。
【0155】
実施例8~10,14では、水素極活性部において第2部分が含有するNiの粒径を第1部分が含有するNiの粒径より大きくし、かつ、水素極集電部において第4部分が含有するNiの粒径を第3部分が含有するNiの粒径と同じとした。実施例11~13では、水素極活性部において第2部分が含有するNiの粒径を第1部分が含有するNiの粒径より大きくし、かつ、水素極集電部において第4部分が含有するNiの粒径を第3部分が含有するNiの粒径より大きくした。
【0156】
一方、比較例5~8では、水素極活性部において第1部分が含有するNiの粒径を第2部分が含有するNiの粒径と同じとし、かつ、水素極集電部において第3部分が含有するNiの粒径を第4部分が含有するNiの粒径と同じとした。
【0157】
(電解試験)
実施例8~14及び比較例5~8について、水素極側に水素ガスを供給しながら酸素極側に空気を供給することによって水素極のNiOをNiに還元させた後、以下の条件で1000時間の電解試験を実施した。
【0158】
・セル温度:750℃
・電流密度:0.5A/cm(水素極の主面の面積に対する値)
・水素極に水素含有ガスを供給(HO:CO:H=28:62:10)
・酸素極に空気を供給
・電解率:70%(HOとCOが全てHとCOに共電解された場合を電解率100%と定義した時の値)
【0159】
そして、実施例8~14及び比較例5~8について、定電流負荷時の電圧を計測することによって、初期電圧と、1000時間連続電解後の電圧を測定した。測定結果を表2に示す。また、表2に示すように、1000時間連続電解後における劣化率(電圧低下率)を上記式(3)から算出した。
【0160】
表2では、初期性能について、初期電圧が1.300V未満であれば「〇」と評価し、初期電圧が1.300V以上であれば「×」と評価した。また、表2では、1000時間電解後性能について、劣化率が2%未満であれば「◎」と評価し、劣化率が2%以上10%未満であれば「〇」と評価し、劣化率が10%以上であれば「×」と評価した。さらに、表2では、総合評価として、初期性能の評価が「〇」かつ1000時間電解後性能の評価が「◎」であれば「◎」と評価し、初期性能の評価が「〇」かつ1000時間電解後性能の評価が「〇」であれば「〇」と評価し、初期性能及び1000時間電解後性能いずれかの評価が「×」であれば「×」と評価した。
【0161】
【表2】
【0162】
表2に示すように、実施例8~14では、比較例5~8に比べて、初期性能及び1000時間電解後性能の両方を向上させることができた。このような結果が得られたのは、水素極活性部において下流側に位置する第2部分が含有するNiの粒径を上流側に位置する第1部分が含有するNiの粒径より大きくすることによって、第2部分ではNiの凝集を抑制でき、かつ、第1部分では電極活性を高めることができたためである。このことから、水素極活性部の下流側におけるNiの粒径を相対的に大きくすることによって、電解セルの初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を抑制できることが確認できた。
【0163】
また、表2に示すように、実施例11~13では、実施例8~10,14に比べて、1000時間電解後性能を更に向上させることができた。このような結果が得られたのは、水素極集電部において下流側に位置する第4部分が含有するNiの粒径を上流側に位置する第3部分が含有するNiの粒径より大きくすることによって、第4部分ではNiの凝集を抑制でき、かつ、第3部分では電極活性を高めることができたためである。このことから、水素極集電部の下流側におけるNiの粒径を相対的に大きくすることによって、電解セルの初期性能を確保しながら経時的な性能劣化を更に抑制できることが確認できた。
【0164】
以上の通り、実施例8~14では平板形電解セルにおける効果の確認を行ったが、基本構成が類似する縦縞形電解セル(図9,10参照)においても実施例8~14と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0165】
2 :マニホールド
21 :供給室
22 :回収室
4 :支持基板
5 :素子部
5a :第1素子部
5b :第2素子部
6 :水素極
61,65,67 :水素極集電部
62,66,68 :水素極活性部
7 :電解質
8 :酸素極
81 :酸素極活性部
82 :酸素極集電部
10,20,30 :電解セル
43 :第1流路
44 :第2流路
100 :セルスタック装置
【要約】
【課題】性能を安定化させることのできる電解セル、及びセルスタック装置を提供する。
【解決手段】電解セル10は、支持基板4と第1素子部5aと第2素子部5bとを備える。支持基板4の内部には、水蒸気及び二酸化炭素が流れる第1流路43が形成される。第2素子部5bは、第1流路43内を流れるHO及びCOの流通方向において第1素子部5aの下流側に配置される。第1素子部5a及び第2素子部5bそれぞれの水素極活性部61は、酸素イオン伝導性材料とニッケルとを含有する。第2素子部5bの水素極活性部61が含有するニッケルの粒径は、第1素子部5aの水素極活性部61が含有するニッケルの粒径より大きい。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11