(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】外科用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20230512BHJP
A61B 17/04 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A61B17/56
A61B17/04
(21)【出願番号】P 2022522590
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2020059257
(87)【国際公開番号】W WO2021074735
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】102019000018869
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】カキック,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベルベリッヒ,サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】ルッキーニ,リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】パリーシ,ジャンルカ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-209055(JP,A)
【文献】米国特許第7604636(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0121337(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0078251(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0006254(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0345989(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0154271(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節鏡手術用の外科用器具(1)であって、
-患者の骨(T)に対して前記外科用器具(1)を当接するように構成された折り曲げられた接触端(4)を有する挿入アーム(2)と、
-前記折り曲げられた接触端(4)の反対側にある前記挿入アーム(2)の接続端(2a)に接続されており、前記挿入アーム(2)に対して横方向に延びるハンドル(3)と、
-前記挿入アーム(2)に接続された回収要素(11)であって、当該回収要素(11)が前記折り曲げられた接続端(4)で縫合糸(S)の先端を捕まえる引き出された位置から引き込まれた位置に前記挿入アーム(2)に沿って移動可能であり、且つ当該回収要素(11)が前記先端を保持する前記引き込まれた位置から前記引き出された位置に移動可能である、回収要素(11)と、を備え、
前記回収要素(11)は、前記縫合糸(S)の前記先端を受け入れるのに適した格納容積を規定する可撓性材料で作られたバスケットであり、前記格納容積は、前記引き込まれた位置から前記引き出された位置への移行で拡大し、前記引き出された位置から前記引き込まれた位置への移行で収縮するように構成されている、外科用器具(1)。
【請求項2】
前記バスケットがニチノールでできている、請求項1に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項3】
前記挿入アーム(2)に沿って延在し且つ前記挿入アーム(2)の前記折り曲げられた接触端(4)に通じる出口区間(12a)と、前記接続端(2a)に位置する入口区間(12b)とを有する前記回収要素(11)の格納チャネル(12)を備える、請求項1または2に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項4】
前記回収要素(11)は、前記引き込まれた位置で前記格納チャネル(12)の完全に内側に配置されており、前記引き出された位置で前記格納チャネル(12)の前記出口区間(12a)を超えて少なくとも部分的に現れる、請求項3に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項5】
前記格納チャネル(12)が前記挿入アーム(2)の上面(13a)に沿って少なくとも部分的に延びており、前記挿入アーム(2)は、前記挿入アーム(2)の前記上面(13a)から下面(13b)への前記格納チャネル(12)の通過のためのスロット(14)を有する、請求項3または4に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項6】
前記回収要素(11)を非動作構成とセミ動作構成との間および前記セミ動作構成と動作構成との間で切り替えるように構成された、前記回収要素(11)のためのスイッチ(15)を備え、
前記非動作構成では、前記回収要素(11)が前記引き込まれた位置にあり且つ前記縫合糸(S)の前記先端を捕まえず、前記セミ動作構成では、前記回収要素(11)は前記引き出された位置にあり且つ前記先端を捕まえることができ、
前記動作構成では、前記回収要素(11)は引き込まれた位置にあり且つ前記先端を保持している、請求項1から4のいずれか一項または複数に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項7】
前記スイッチ(15)が、前記ハンドル(3)に近接した前記挿入アーム(2)の前記接続端(2a)に配置されている、請求項6に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項8】
前記スイッチ(15)が、前記挿入アーム(2)に沿って回収要素(11)を、前記折り曲げられた接触端(4)から離れるように、または前記折り曲げられた接触端(4)に近づけるように移動させるように構成されたスライダ(16)を備える、請求項6または7に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項9】
前記スライダ(16)がスライドブロックである、請求項8に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項10】
前記スライダ(16)がキャスタである、請求項8に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項11】
前記スイッチ(15)に接続され且つ前記回収要素(11)を前記引き込まれた位置に維持するように構成されたばねを含む、請求項6から10の一項または複数に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項12】
前記ハンドル(3)の突出部分(3a)が、前記折り曲げられた接触端(4)に向けられた長手方向軸(X)周りに延びる結合アイレット(5)を有し、前記結合アイレット(5)は、その中に前記縫合糸(S)のガイド要素(6)をスライド可能に受け入れるように構成され、前記ガイド要素(6)は、前記先端を前記折り曲げられた接触端(4)に配置するために、前記長手方向軸(X)と一致する直線ガイド経路(P)に沿って移動可能である、請求項1から11の一項または複数に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項13】
前記折り曲げられた接触端(4)が、ヘッド部分(4a)を有し、前記ヘッド部分(4a)は、前記結合アイレット(5)の前記長手方向軸(X)に沿って配置された溝(19)を含み、前記溝(19)に前記ガイド要素(6)は当接できる、請求項12に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項14】
前記折り曲げられた接触端(4)の前記ヘッド部分(4a)は、前記溝(19)の周りの前記ヘッド部分(4a)の拡張部を規定する突出する側縁(17)を有する、請求項13に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項15】
前記折り曲げられた接触端(4)が、骨(T)に当接するように構成された少なくとも1つの接触歯(18)を含む、請求項1から14の一項に記載の関節鏡手術用の外科用器具(1)。
【請求項16】
外科用器具のための回収ユニット(10)であって、
-縫合糸(S)の一方の先端を受け入れるように構成された回収要素(11)と、
-前記回収要素(11)を非動作構成とセミ動作構成との間および前記セミ動作構成と動作構成との間で切り替えるように構成されたスイッチ(15)であって、
前記非動作構成では、前記回収要素(11)が引き込まれた位置にあり且つ前記縫合糸(S)の前記先端を捕まえず、前記セミ動作構成では、前記回収要素(11)が前記先端を捕まえるために引き出された構成にあり、
前記動作構成では、前記回収要素(11)は前記引き込まれた位置にあり且つ前記先端を保持する、スイッチ(15)と、
-前記回収ユニット(10)をポインタの挿入アーム(2)に可逆的に接続するように構成された少なくとも1つの取り付け要素(20)であって、前記ポインタが、前記外科用器具(1)を患者の骨(T)に当接するように構成された折り曲げられた接触端(4)を備える挿入アーム(2)と、前記折り曲げられた接触端(4)の反対側にある、前記挿入アーム(2)の接続端(2a)に接続され且つ前記挿入アーム(2)に対して横方向に延びるハンドル(3)とを備える、少なくとも1つの取り付け要素(20)と、を備え、
前記回収要素(11)は、可撓性材料で作られたバスケットであり、前記縫合糸(S)の前記先端を受け入れるのに適した格納容積を規定し、前記格納容積は、前記引き込まれた位置から前記引き出された位置への移行で拡張し、前記引き出された位置から前記引き込まれた位置への移行で収縮するように構成されている、回収ユニット(10)。
【請求項17】
前記回収要素(11)の格納チャネル(12)を備え、前記回収要素(11)は、前記引き込まれた位置で前記格納チャネル(12)の完全に内側に配置され、前記引き出された位置で前記格納チャネル(12)の出口セクションを超えて少なくとも部分的に現れる、請求項16に記載の回収ユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用器具、特に関節鏡手術用の外科用器具に関する。
【0002】
本発明は、整形外科手術の分野で特定の用途を見出す。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、例として、関節鏡手術において膝の後十字靭帯を再建するための手術のための外科用器具に言及するが、それによって本発明の一般性を失うものではない。
【0004】
この種の手術は一般に、膝関節において互いに傾斜した脛骨管(tibial tunnel)および大腿骨管(femoral tunnel)の構築を伴い、その中に移植片としても知られる置換靭帯が通る。
【0005】
移植片は通常、それが脛骨板に現れるまで、脛骨の前面に形成された脛骨管の正面入口から挿入され、次に大腿骨の顆間窩周りで向きを変えられ(「キラーターン」)、最後に大腿骨管に挿入される。
【0006】
移植片を脛骨管に挿入するには、管の出口を越えた縫合糸の先端を引っ張ることによって移植片が入口区間を通って管の内部に引きずり込まれ得るように、移植片が最後尾に接続された縫合糸を管に通さねばならない。
【0007】
縫合糸を脛骨管に挿入するには、ピンセットまたは湾曲した縫合ループのいずれかを使用でき、これは、縫合糸の先端が管の出口を越えて配置されるまで、脛骨管の穿設軸とほぼ一致する所定の挿入方向に沿って案内される。
【0008】
縫合糸の先端が脛骨管の出口区間から現れると、脛骨板で、外科医は、この端を別のツール(ピンセットなど)でつかんで、前内側ポータル(anteromedial portal)を通して膝の前に引っ張り、移植片を脛骨管に引きずり込む必要がある。
【0009】
出願人は、関節鏡手術の際に縫合糸の先端をつかむ操作は易しくなく、実際、特に厄介で危険であることに気付いた。
【0010】
実際、出願人は、縫合糸の先端をつかむ場所をはっきりと見ていない外科医は、脛骨管の出口で糸の自由端に到達するためにピンセットを挿入する操作中、脛骨板、半月板、および血管に損傷を与えるリスクがあることに気付いた。
【0011】
視界が悪い状態で手術を行う場合、関節鏡手術で膝の後十字靭帯の外科的再建を行うことは非常に複雑であるので、外科用ツールの取り扱いに関する深い知識、経験、および精度を必要とする。
【発明の概要】
【0012】
これに関連して、本発明の根底にある技術的タスクは、従来技術の上記の欠点の1つまたは複数を克服する関節鏡手術用の外科用器具を提案することである。
【0013】
特に、本発明の目的は、膝関節の靭帯の再建に関与する外科的ステップの精度および安全性のレベルを高めることによって外科医の手術技能を改善する関節鏡手術用の外科用器具を提供することである。
【0014】
特に、本発明の目的は、周囲の神経血管構造を保存するために、外科医が簡単且つ正確な態様で患者の脛骨管に挿入された縫合糸の先端を効率的且つ効果的に把持することを可能にする関節鏡手術用の外科用器具を提供することである。
【0015】
本発明の追加の目的は、外科医が縫合糸の先端を効率的且つ効果的に回収することを可能にし、関節鏡手術用の既存の外科用器具に容易に実装できる回収ユニットを提案することである。
【0016】
特定された技術的タスクおよび目的は、基本的に、添付の特許請求の範囲の請求項の1つまたは複数に記載された技術的特徴を含む関節鏡手術用の外科用器具を用いて達成される。
【0017】
特に、本発明は、挿入アームおよびハンドルを備える関節鏡手術用の外科用器具を提供する。
【0018】
挿入アームは、患者の骨に対して外科用器具を当接するように構成された折り曲げられた接触端を有する。
【0019】
ハンドルは、折り曲げられた接触端の反対側にある挿入アームの接続端に接続されており、挿入アームに対して横方向に延びる。
【0020】
有利には、外科用器具はまた、挿入アームに接続された縫合糸の先端を回収するための回収要素を備える。
【0021】
回収要素は、引き込まれた位置から引き出された位置に挿入アームに沿って移動可能であり、引き出された位置では、折り曲げられた接触端で縫合糸の先端を捕まえる。
【0022】
有利なことに、回収要素はまた、引き出された位置から引き込まれた位置に移動可能であり、引き込まれた位置では、前記先端を保持する。
【0023】
回収要素のおかげで、外科用器具は、患者の骨と接触する接触端に配置される縫合糸の先端を容易に且つ正確に捕まえて保持することを可能にする。
【0024】
膝の後十字靭帯の外科的再建において、挿入アームの折り曲げられた接触端は、脛骨の後部領域に当接するように構成され、脛骨の後部領域内に脛骨管が進み、本発明によれば、回収要素は、脛骨管の出口部分に配置された縫合糸の先端を(引き出された位置で)実用的に且つ正確に捕まえ、引き込まれた位置に切り替えられた後にそれを保持することを可能にする。
【0025】
このようにして、外科医は、縫合糸を引っ張る、したがってそれに取り付けられた移植片を引っ張り、縫合糸を脛骨管に引きずり込むために、前内側ポータルを通して、関節から挿入アームを簡単に引き抜くことができる。
【0026】
有利なことに、外科用器具を脛骨管の出口に当接させることにより、追加の器具を必要とせず、外科用器具の初期の位置決めによって与えられる精度で、回収要素を引き出された位置と引き込まれた位置との間で切り替えるだけで、縫合糸の先端を直接把持することが可能である。
【0027】
外科用器具は、実際には、通常、脛骨管を生成するための手術の準備段階から直接使用されるポインタ(「目標(aimer)」)である。したがって、脛骨管のポインティングと穿設に使用されるのと同じ外科用器具で、移植片を運ぶ縫合糸を正確に挿入することが可能である。
【0028】
実際、脛骨の接触位置から挿入アームを取り外し、それを膝から外側に引っ張ることにより、移植片を管内に簡単に正確に且つ安全な態様で引きずり込むために、脛骨管の出口で回収され捕まえられ且つ回収要素によって保持された縫合糸の先端を引っ張ることが可能である。
【0029】
有利なことに、回収要素は、縫合糸の先端を受け入れるのに適した格納容積を規定する可撓性材料で作られたバスケットである。
【0030】
特に、格納容積は、引き込まれた位置から引き出された位置への移行で拡大し、引き出された位置から引き込まれた位置への移行で狭くなるように構成されている。
【0031】
参考のために本明細書に含まれる従属請求項は、本発明の種々の実施形態に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の追加の特徴および利点は、添付の図面に示されるように、関節鏡手術用の外科用器具の好ましいが排他的ではない実施形態の指示的、したがって非限定的な説明からより明確になるであろう。
【
図1】1つの使用ステップ中の本発明による関節鏡手術用の外科用器具の概略斜視図であり、当該使用ステップでは外科用器具が患者の骨に当接している図である。
【
図2】
図1の器具の概略斜視図であり、回収要素が引き出された位置にある図である。
【
図3】
図1の器具の概略斜視図であり、回収要素が引き込まれた位置にある図である。
【
図4】本発明による回収ユニットの概略斜視図であり、回収要素が引き出された位置にある図である。
【
図5】本発明による回収ユニットの概略斜視図であり、回収要素が引き込まれた位置にある図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の図を参照して、参照番号1は全体として、本発明による関節鏡手術用の外科用器具を示し、外科用器具は、これ以降、単に器具1と示される。
【0034】
器具1は、挿入アーム2およびハンドル3を備える。
【0035】
挿入アーム2およびハンドル3は、好ましくは、いわゆる外科用ポインタを規定する。
【0036】
挿入アーム2は、患者の骨Tに対して器具1を当接するように構成された折り曲げられた接触端4を有する。
【0037】
特に、
図1には、患者の膝関節の一部が示されており、骨Tは脛骨であり、折り曲げられた接触端4は、脛骨管Cの(図示されていない)出口区間が生成されることになる脛骨板の下の後部領域に当接するように構成される。
【0038】
折り曲げられた接触端4は、挿入中に鋭いエッジが怪我を引き起こすのを避けるために、好ましくは湾曲している。
【0039】
器具1が使用されている間、挿入アーム2は、患者の膝の内部に部分的に挿入され得、一方、アームの下に延びるハンドル3は、外科医によって把持されるために膝の外側に留まる。特に、挿入アーム2の挿入は、脛骨Tと大腿骨Fとの間に規定される顆間ポータルを通って、それが脛骨板の後部領域に到達するまで、前部で行われる。
【0040】
ハンドル3は、折り曲げられた接触端4の反対側の挿入アーム2の接続端2aに接続されており、挿入アーム2に対して横方向に延びる。
【0041】
ポインタは、既知の手術技術に従って、直線経路に沿って脛骨Tを穿設して
図1に示す脛骨管Cを実行するために使用される。
【0042】
ポインタは、好ましくは、少なくとも挿入アーム2およびハンドル3によって規定される。
【0043】
ハンドル3の突出部分3aは、好ましくは、折り曲げられた接触端4に真っ直ぐに向かって長手方向軸X周りに延びる結合アイレット5を有する。
【0044】
結合アイレット5は、その内部に縫合糸Sのガイド要素6をスライド可能に受け入れるように構成される。ガイド要素6は、
図2にピンセットとして概略的に示されており、折り曲げられた接触端4に縫合糸Sの先端を配置するように、長手方向軸Xと一致する真っ直ぐなガイド経路Pに沿って移動可能である。
【0045】
言い換えれば、ガイド要素6は、結合アイレット5および脛骨管Cの内部に挿入されて、ポインタが脛骨Tと接触して配置されている場合に挿入アーム2の末端の接触端4に縫合糸Sの先端を導くのに適した形態を有するツールである。
【0046】
突出部分3aは、好ましくは取り外し可能であり、挿入角度、すなわち長手方向軸Xの向きを調整するために回転され得る。
【0047】
有利には、器具1は、挿入アーム2に接続され且つ引き込まれた位置と引き出された位置との間で挿入アーム2に沿って移動可能である回収要素11を備える。
【0048】
特に、引き出された位置では、回収要素11は、折り曲げられた接触端4で縫合糸Sの先端を捕まえ(
図2)、引き込まれた位置では、縫合糸Sの先端を保持する(
図3)。
【0049】
特に、回収要素11は、挿入アーム2に取り付けられて、今説明した2つの動作位置の間でのみ移動するので、外科医は、他のツールを使用する必要なしに、引き出された位置で糸Sを迅速に捕まえ、引き込まれた位置でそれを保持することができる。
【0050】
糸Sが引き込まれた位置で保持されると、外科医は、靭帯を置換するための移植片が最後尾で好都合に接続されている縫合糸Sを引くことができるよう、患者から挿入アーム2を簡単に引き抜くことができ、それにより、図示されていない移植片は、靭帯を再構築するために脛骨管Cの内側に引きずり込まれ得る。
【0051】
したがって、回収要素11の使用のおかげで、手術時間を大幅に短縮し、即時に使用することができ、手術効率を高めることができ、縫合糸Sの把持は正確且つ安全である。
【0052】
さらに、回収要素11は、患者の膝に対して挿入および取り出す必要のある外科用器具の数が最小限に抑えられるので、膝の後部領域で起こり得る損傷に関連するリスクを低減する。
【0053】
添付の図に示されている実施形態を参照すると、回収要素11は、可撓性材料、好ましくはニチノールで作られたバスケットであり、縫合糸Sの先端を受け入れるのに適した格納容積を規定している。
【0054】
特に、格納容積は、引き込まれた位置から引き出された位置への移行で拡大し、引き出された位置から引き込まれた位置への移行で狭くなるように構成されている。
【0055】
図2Aに明確に見られるように、他の用語では、バスケットは、隙間11bによって隔てられた複数の糸11aによって規定されるケージである。特に、隙間11は、縫合糸Sの通過を可能にするのに適切なサイズである。
【0056】
有利なことに、バスケットは、糸Sを効果的に把持するために360°の把持領域を有することを可能にし、外科医が糸Sを捕まえるために行わなければならない操作を制限する。
【0057】
有利なことに、バスケットは、外科医のニーズに応じてカスタマイズされた構成で形成され得る。
【0058】
バスケットの形状の選択は、さらに、膝の後部領域におけるその開口部およびのその動きに利用可能な空間に依存する可能性がある。
【0059】
引き出された位置から引き込まれた位置への移行でバスケットの容積を狭くすることは、ピンセットを挿入するだけでは効率的に得ることができなかった糸Sの先端の効果的な把持を保証する。
【0060】
さらに、器具1は、好ましくは、回収要素11のための格納チャネル12を備え、格納チャネル12は、挿入アーム2に沿って延在し且つ挿入アーム2の折り曲げられた接触端4に通じる出口セクション12aと、接続端2aに配置された入口セクション12bと、を有する。
【0061】
有利には、格納チャネル12は、回収要素11を案内および保護するという二重の機能を実行する。
【0062】
回収要素11は、好ましくは、引き込まれた位置(
図3A)で格納チャネル12の内側に完全に配置され、引き出された位置(
図2A)で格納チャネル12の出口セクション12aを少なくとも部分的に超えて現れる。
【0063】
有利なことに、ニチノールは形状記憶材料であるので、ニチノールバスケットが引き込まれた位置に位置するとき、それは変形可能であり、押しつぶされて、コンパクトな線形形状をとって格納チャネル12に配置され得、一方、引き出された構成に配置されるために取り出されるとき、拡張してバスケットの形状をとる。
【0064】
添付の図に見られるように、格納チャネル12は、好ましくは、挿入アーム2の展開の主要部分に沿って配置される。
【0065】
さらに、格納チャネル12は、好ましくは、挿入アーム2の上面13aに沿って少なくとも部分的に延びる。特に、挿入アーム2は、格納チャネル12を挿入アーム2の上面13aから下面13bに通過させるためのスロット14を有する。
【0066】
「下面」13bは、ハンドル3に面している表面を指し、一方、上面13aは、ハンドル3に面していない反対側の表面を指していることに留意されたい。
【0067】
本発明による器具1は、好ましくは、さらに、回収要素11を非動作構成とセミ動作構成の間およびセミ動作構成と動作構成との間で切り替えるように構成された回収要素11のスイッチ15を含み、非動作構成では、回収要素11は引き込まれた位置にあり且つ縫合糸Sの先端を捕まえず、セミ動作構成では、回収要素11が引き込まれた位置にあり且つ先端を捕まえることができ(
図2および2A)、動作構成では、回収要素11は引き込まれた位置にあり且つ糸Sの先端を保持する(
図3および3A)。
【0068】
特に、動作構成では、バスケットと糸Sは、それらを互いに一体にする結び目N(
図3A)を生成し、外科医によって手術される膝からの糸Sの効率的な引き抜き運動を可能にする。
【0069】
スイッチ15は、好ましくは、ハンドル3に近接した挿入アーム2の接続端2aに配置される。したがって、有利なことに、スイッチ15は快適な位置に配置され、外科医の親指によって容易に操作することができる。
【0070】
スイッチ15は、好ましくは、挿入アーム2に沿って、折り曲げられた接触端4から離れるように、または当該接触端4に近づくように、回収要素11を移動させるように構成されたスライダ16を備える。
【0071】
回収要素11は、好ましくは、縫合糸Sの制御された回収を可能にし、周囲組織の神経血管構造を損傷するリスクを低減するように、所定の長さのセクションSLに沿って格納チャネル12から引き出され得る。
【0072】
外科医のために、セクションSLの固定値は、回収要素11が膝の後部領域内に必要以上に突出しないことを保証する。
【0073】
したがって、
図2を参照すると、セクションSLは、有利には、格納チャネル12の出口セクション12aを超える回収要素11の可動域を表す。
【0074】
添付の図に示されている実施形態を参照すると、スライダ16は、実際には、セクションSLに沿ってスライドするスライドブロックである。
【0075】
一方、添付の図に示されていない追加の実施形態によれば、スライダ16は、セクションSLに等しい円弧周りに回転するように構成されたキャスタであり得る。
【0076】
本発明による器具1は、さらに、添付の図には示されていないばねを備えてもよく、当該ばねは、スイッチ15に接続され且つ回収要素11を引き込まれた位置に維持するように構成される。
【0077】
有利なことに、このようにして、一方の構成と他方の構成との間でスイッチを誤って作動することを回避することが可能である。
【0078】
ばねは、好ましくは、挿入アーム2または格納チャネル12の内側、または、スイッチ16と回収要素11との間に配置される。
【0079】
図2Aおよび3Aを参照すると、折り曲げられた接触端4は、好ましくは、ガイド要素6が当接することができる結合アイレット5の長手方向軸Xに沿って配置された溝19を含むヘッド部分4aを有する。
【0080】
有利には、溝19は、基本的に、脛骨管C内のガイド要素6の過度の前進を回避するガイド経路Pの端部停止部を規定する。
【0081】
さらに、ヘッド部分4aは、好ましくは、溝19周りのヘッド部分4aの拡張部を規定する突出した側縁17を有する。
【0082】
「拡張部」という用語は、特に、挿入アーム2の展開方向に垂直な方向において挿入アーム2の下面13bに沿って測定されたヘッド部分4aの幅を指す。
【0083】
有利には、突出する側縁17は、脛骨管C内にガイド要素6が中心から外れて挿入された場合に、周囲の構造を損傷するリスクを低減することを可能にする。
【0084】
換言すれば、突出する側縁17は、ガイド要素6が脛骨管Cに深く挿入され過ぎて、溝19に対して中心から外れた位置で折り曲げられた接触端4に接触する場合の追加の側部保護を規定する。
【0085】
折り曲げられた接触端4は、さらに、骨Tに当接するように構成された少なくとも1つの接触歯18を含む。
【0086】
さらにより好ましくは、図示の実施形態では、折り曲げられた接触端4は、ヘッド部分4aに配置された2つの接触歯18を含む。
【0087】
さらに、格納チャネル12の移行スロット14は、好ましくは、溝19の上方および溝19に近接して配置され、脛骨Tを穿設するステップ中に、回収要素11が引き込まれた位置にあり、回収要素11が保護されており且つガイド経路Pの外側にあり、一方、引き出された位置では、回収要素11は、縫合糸Sの先端がもたらされる容積を占めることができる。
【0088】
有利には、格納チャネル12は、溝19につながるまで、挿入アーム2の曲線に従う。
【0089】
本発明の追加の態様によれば、さらに、関節鏡手術用の外科用器具のための回収ユニット10が提供され、回収ユニット10は、
-上記の内容に従った回収要素11と、
-上記の内容に従ったスイッチ15と、
-回収ユニット10をポインタの挿入アーム2に可逆的に接続するように構成された少なくとも1つの取り付け要素20(例えばクリップ)と、を備える。
【0090】
本発明による回収ユニット10は、これが外科医によって膝関節に挿入される前にポインタに引っ掛けることができる使い捨て機構のように構成される。取り付け要素20の存在のおかげで、実際、滅菌回収ユニット10を既存のポインタに楽に固定し、手術の最後にそれを取り除くことが可能である。
【0091】
図4および5は、本発明による回収ユニット10の好ましい実施形態を概略的に示す。
【0092】
特に、手術の開始前、したがって、ポインタを患者の膝に挿入する前に、外科医は、クリップ20を挿入アーム2の上面13aに楽に取り付けることができ、格納チャネル12の端部をスロット14の内部に挿入して、出口セクション12aが折り曲げられた接触端4に配置されるようにする。
【0093】
したがって、本発明は、提案された目的を達成し、不満があった従来技術の欠点を克服し、回収要素11の存在のおかげで、外科医が正確且つ迅速に、そして低侵襲的な方法で手術することを可能にする効率的な外科用器具1をユーザに提供する。
【0094】
特に、本発明は、脛骨Tを穿設して脛骨管Cを生成することと、移植片を脛骨管Cに挿入するために脛骨板の周りに縫合糸Sを通過させることの両方が可能な単一の器具1を提供する。
【0095】
有利には、さらに、回収要素11を含む回収ユニット10は、器具1と一体であるか、または既存の外科用器具を楽に改良するためにポインタに可逆的に結合できる別個の要素を規定することができる。