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特許7278512グラフ処理装置、グラフ処理システム及びグラフ処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】グラフ処理装置、グラフ処理システム及びグラフ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/28 20190101AFI20230512BHJP
   G06F 16/906 20190101ALI20230512BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20230512BHJP
【FI】
G06F16/28
G06F16/906
G06Q50/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022580810
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2022029646
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2021131183
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】折井 靖光
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 修一
(72)【発明者】
【氏名】森下 夏希
(72)【発明者】
【氏名】森井 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】有川 公子
(72)【発明者】
【氏名】金田 北洋
(72)【発明者】
【氏名】光本 政敬
【審査官】松尾 真人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211846(JP,A)
【文献】特開2003-186888(JP,A)
【文献】国際公開第2020/122004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品及び/又はサービスの仕様要求に対する提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理装置であって、
前記製品及び/又はサービスに係る素材の物性データを含む、前記素材に関連した関連情報を記憶する素材関連情報記憶部と、
前記素材関連情報記憶部の前記関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、前記ノードの間をつなぐエッジによって前記カテゴリの関係性を表したグラフを生成するグラフ生成手段と、
を備える、グラフ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグラフ処理装置において、
前記所定のカテゴリには、前記製品及び/又はサービスの製造過程に関する主要要素と、前記主要要素に関連する関連要素とが含まれ、
前記グラフ生成手段は、前記カテゴリの間の関係性に基づいて前記主要要素を前記製造過程の順番に前記エッジでつなぎ、前記主要要素と前記関連要素とを前記エッジでつないだ前記グラフを生成する、グラフ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のグラフ処理装置において、
前記関連情報には、性能情報が含まれ、
前記所定のカテゴリは、前記関連要素として前記性能情報に関する前記カテゴリを含む、グラフ処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のグラフ処理装置において、
前記関連情報には、営業活動に関する情報が含まれ、
前記グラフ生成手段は、前記営業活動に関する情報を含んで前記グラフを生成する、グラフ処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のグラフ処理装置において、
ユーザの仕様要求を受け付ける仕様要求受付手段と、
前記仕様要求受付手段が受け付けた前記仕様要求を満たす前記関連情報を、前記グラフ生成手段が生成した前記グラフを探索して取得するグラフ探索手段と、
前記グラフ探索手段が取得した前記関連情報に基づく探索結果を出力する結果出力手段と、
を備える、グラフ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のグラフ処理装置において、
前記仕様要求受付手段が受け付けた前記仕様要求に応じた前記関連情報を、前記素材関連情報記憶部から取得する関連情報取得手段を備え、
前記グラフ生成手段は、前記関連情報取得手段が取得した前記関連情報を用いて前記グラフを生成する、グラフ処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のグラフ処理装置において、
前記グラフ生成手段が生成した前記グラフを出力するグラフ出力手段と、
前記グラフ出力手段が出力した前記グラフに対する前記ノード及び/又は前記エッジの結合に関する操作を受け付ける操作受付手段と、
前記操作受付手段が受け付けた前記操作に応じて前記グラフを変更するグラフ変更手段と、
を備える、グラフ処理装置。
【請求項8】
少なくとも営業活動に関する情報を関連情報として、前記関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、前記ノードの間をつなぐエッジによって前記カテゴリの関係性を表したグラフを生成するグラフ生成手段と、
ユーザのニーズを受け付ける仕様要求受付手段と、
前記仕様要求受付手段が受け付けた前記ニーズを満たす前記関連情報を、前記グラフ生成手段が生成した前記グラフを探索して取得するグラフ探索手段と、
前記グラフ探索手段が取得した前記関連情報に基づく探索結果を、前記ユーザのニーズに対する提案として出力する結果出力手段と、
を備える、グラフ処理装置。
【請求項9】
製品及び/又はサービスの仕様要求に対する提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理システムであって、
前記製品及び/又はサービスに係る素材の物性データを含む、前記素材に関連した関連情報を記憶する素材関連情報記憶装置と、
前記素材関連情報記憶装置に対して通信可能に接続されたグラフ処理装置と、
出力装置と、
を備え、
前記グラフ処理装置は、
前記素材関連情報記憶装置の前記関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、前記ノードの間をつなぐエッジによって前記カテゴリの関係性を表したグラフを生成するグラフ生成手段と、
前記グラフ生成手段が生成した前記グラフを、前記出力装置に出力するグラフ出力手段と、
を備える、グラフ処理システム。
【請求項10】
製品及び/又はサービスの仕様要求に対する提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理方法であって、
コンピュータが、
前記製品及び/又はサービスに係る素材の物性データを含む、前記素材に関連した関連情報を記憶する素材関連情報記憶部の前記関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、前記ノードの間をつなぐエッジによって前記カテゴリの関係性を表したグラフを生成するグラフ生成ステップを含む、グラフ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフを生成するグラフ処理装置、グラフ処理システム及びグラフ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ものづくりの現場において、エンドユーザ側からのニーズを受けて、例えば、完成品メーカでは、当該ニーズを満たす完成品を作製するための部品に係る要求を、部品メーカに対して行う。また、部品メーカでは、仕様を満たす部品を作製するための素材に係る要求を、素材メーカに対して行う。
他方、素材については、例えば、素材の各ユーザが容易に、素材等の電磁気特性や熱的特性に関する物性量データを用いた精度の高い電磁場解析を行うことができる電磁場解析システム及びそれを用いる素材の仕様決定方法等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-303215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法等において仕様が決定した素材からエンドユーザが求めるニーズを満たす完成品までには、上記したように、様々な工程が存在する。そのため、エンドユーザが求めるニーズを満たす製品に係る要求は、素材の段階ではかなり高いものになってしまうことがあった。
また、エンドユーザが求めるニーズを満たすために、現在ある素材のみでは足りず、新たな素材を見出すことも求められる。
【0005】
本発明は、ニーズを満たす提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理装置、グラフ処理システム及びグラフ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、製品及び/又はサービスの仕様要求に対する提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理装置であって、前記製品及び/又はサービスに係る素材の物性データを含む、前記素材に関連した関連情報を記憶する素材関連情報記憶部と、前記素材関連情報記憶部の前記関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、前記ノードの間をつなぐエッジによって前記カテゴリの関係性を表したグラフを生成するグラフ生成手段と、を備える、グラフ処理装置に関する。
【0007】
また、グラフ処理装置において、前記所定のカテゴリには、前記製品及び/又はサービスの製造過程に関する主要要素と、前記主要要素に関連する関連要素とが含まれ、前記グラフ生成手段は、前記カテゴリの間の関係性に基づいて前記主要要素を前記製造過程の順番に前記エッジでつなぎ、前記主要要素と前記関連要素とを前記エッジでつないだ前記グラフを生成してもよい。
【0008】
また、グラフ処理装置において、前記関連情報には、性能情報が含まれ、前記所定のカテゴリは、前記関連要素として前記性能情報に関する前記カテゴリを含んでもよい。
【0009】
また、グラフ処理装置において、前記関連情報には、営業活動に関する情報が含まれ、前記グラフ生成手段は、前記営業活動に関する情報を含んで前記グラフを生成してもよい。
【0010】
また、グラフ処理装置において、ユーザの仕様要求を受け付ける仕様要求受付手段と、前記仕様要求受付手段が受け付けた前記仕様要求を満たす前記関連情報を、前記グラフ生成手段が生成した前記グラフを探索して取得するグラフ探索手段と、前記グラフ探索手段が取得した前記関連情報に基づく探索結果を出力する結果出力手段と、を備えてもよい。
【0011】
また、グラフ処理装置において、前記仕様要求受付手段が受け付けた前記仕様要求に応じた前記関連情報を、前記素材関連情報記憶部から取得する関連情報取得手段を備え、前記グラフ生成手段は、前記関連情報取得手段が取得した前記関連情報を用いて前記グラフを生成してもよい。
【0012】
また、グラフ処理装置において、前記グラフ生成手段が生成した前記グラフを出力するグラフ出力手段と、前記グラフ出力手段が出力した前記グラフに対する前記ノード及び/又は前記エッジの結合に関する操作を受け付ける操作受付手段と、前記操作受付手段が受け付けた前記操作に応じて前記グラフを変更するグラフ変更手段と、を備えてもよい。
【0013】
また、本発明は、少なくとも営業活動に関する情報を関連情報として、前記関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、前記ノードの間をつなぐエッジによって前記カテゴリの関係性を表したグラフを生成するグラフ生成手段と、ユーザのニーズを受け付ける仕様要求受付手段と、前記仕様要求受付手段が受け付けた前記ニーズを満たす前記関連情報を、前記グラフ生成手段が生成した前記グラフを探索して取得するグラフ探索手段と、前記グラフ探索手段が取得した前記関連情報に基づく探索結果を、前記ユーザのニーズに対する提案として出力する結果出力手段と、を備える、グラフ処理装置に関する。
【0014】
本発明は、製品及び/又はサービスの仕様要求に対する提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理システムであって、前記製品及び/又はサービスに係る素材の物性データを含む、前記素材に関連した関連情報を記憶する素材関連情報記憶装置と、前記素材関連情報記憶装置に対して通信可能に接続されたグラフ処理装置と、出力装置と、を備え、前記グラフ処理装置は、前記素材関連情報記憶装置の前記関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、前記ノードの間をつなぐエッジによって前記カテゴリの関係性を表したグラフを生成するグラフ生成手段と、前記グラフ生成手段が生成した前記グラフを、前記出力装置に出力するグラフ出力手段と、を備える、グラフ処理システムに関する。
【0015】
本発明は、製品及び/又はサービスの仕様要求に対する提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理方法であって、コンピュータが、前記製品及び/又はサービスに係る素材の物性データを含む、前記素材に関連した関連情報を記憶する素材関連情報記憶部の前記関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、前記ノードの間をつなぐエッジによって前記カテゴリの関係性を表したグラフを生成するグラフ生成ステップを含む、グラフ処理方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ニーズを満たす提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理装置、グラフ処理システム及びグラフ処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るグラフ処理システムの全体構成を示す図である。
図2】本実施形態に係るグラフ処理サーバで生成するグラフの概念を示す図である。
図3】本実施形態に係るグラフ処理サーバの機能ブロックを示す図である。
図4A】本実施形態に係るグラフ処理サーバの階層テーブルの例を示す図である。
図4B】本実施形態に係るグラフ処理サーバの企業情報記憶部の例を示す図である。
図4C】本実施形態に係るグラフ処理サーバのユーザ情報記憶部の例を示す図である。
図4D】本実施形態に係るグラフ処理サーバの物性記憶部の例を示す図である。
図4E】本実施形態に係るグラフ処理サーバの製品記憶部の例を示す図である。
図5】本実施形態に係るグラフ処理サーバにおけるグラフ生成処理を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係るグラフ処理サーバで生成でのグラフ生成処理で生成するグラフの具体例を示す図である。
図7】本実施形態に係るグラフ処理サーバにおけるグラフ探索処理を示すフローチャートである。
図8】本実施形態に係るグラフ処理サーバでのグラフ探索処理における具体例を示す図である。
図9】本実施形態に係るグラフ処理サーバにおけるグラフ変更処理を示すフローチャートである。
図10】本実施形態に係るグラフ処理サーバでのグラフ探索処理における具体例を示す図である。
図11A】変形形態に係るCRMの情報を用いたグラフ処理サーバにおける入力情報の具体例を示す図である。
図11B】変形形態に係るCRMの情報を用いたグラフ処理サーバにおける生成グラフの具体例を示す図である。
図12A】変形形態に係るCRMの情報を用いたグラフ処理サーバにおける入力情報の具体例を示す図である。
図12B】変形形態に係るCRMの情報を用いたグラフ処理サーバにおける生成グラフの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。なお、これは、あくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
(実施形態)
〔グラフ処理システム100の全体構成〕
図1は、本実施形態に係るグラフ処理システム100の全体構成を示す図である。
図2は、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1で生成するグラフ40の概念を示す図である。
図3は、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1の機能ブロックを示す図である。
図4Aは、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1の階層テーブル32の例を示す図である。
図4Bは、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1の企業情報記憶部33の例を示す図である。
図4Cは、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1のユーザ情報記憶部34の例を示す図である。
図4Dは、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1の物性記憶部35aの例を示す図である。
図4Eは、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1の製品記憶部35bの例を示す図である。
【0019】
図1に示すグラフ処理システム100は、いわゆるものづくりの工程におけるエンドユーザ側のニーズ(仕様要求)を入力としてニーズを満たす素材を見つけ、又は、提案や気づきを得るためのグラフを生成し、生成したグラフを活用するためのシステムである。生成するグラフは、ナレッジグラフであり、ナレッジグラフは、対象とするデータに係る知識とその関連性を体系化することで、新たな知見を得ることができる、事実相関を表現したグラフである。
【0020】
図2に、生成するグラフ40の概念を示す。グラフ40は、例えば、ニーズ41を満たす物性42に基づいて素材43を探索するため、例えば、ニーズ41と素材43とをエッジ49によって結びつけることで、新たな発見や気づきを教示するものである。
従来の考え方では、サービス46がニーズ41を満たすために、まずは、完成品45を探し、完成品45でニーズ41を満たすものがあれば、次に、部品44を探し、というように、順にものづくり工程の前の段階を探して、素材43を結びつけていた。
なお、図2では、サービス46に関連するニーズ41を始点としているが、ニーズがどこにあるかにより始点は変更可能である。例えば、完成品45及び部品44にもニーズ47及び48があり、これらのニーズを始点としてもよい。
【0021】
図1のグラフ処理システム100は、グラフ処理サーバ1(グラフ処理装置)と、メーカ端末5(出力装置)と、サービス企業端末6(出力装置)とを備える。
グラフ処理サーバ1と、メーカ端末5と、サービス企業端末6とは、各々通信ネットワークNを介して通信可能になっている。通信ネットワークNは、例えば、インターネット等の通信回線網等である。通信ネットワークNは、構内通信網(LAN)や、仮想プライベートネットワーク(VPN)や、広域通信網(WAN)等を含むものであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない。
【0022】
〔グラフ処理サーバ1〕
グラフ処理サーバ1は、製品及び/又はサービスの仕様要求に対する提案を得るためのグラフを生成する処理を行う。また、グラフ処理サーバ1は、メーカ端末5やサービス企業端末6から受け付けたニーズに対するグラフ探索結果を出力する処理を行う。
グラフ処理サーバ1は、例えば、ウェブサーバである。グラフ処理サーバ1は、1台のコンピュータで構成されていてもよいし、複数台のコンピュータで構成されていてもよい。複数台のコンピュータを用いる場合には、これらのコンピュータは、例えば、通信ネットワークNを介して接続されたり、直接接続されたりする。また、グラフ処理サーバ1は、例えばクラウド上に設けられる仮想サーバ(仮想マシン)として構成してもよい。
【0023】
図3に示すように、グラフ処理サーバ1は、制御部10と、記憶部30と、通信IF(インタフェース)部39とを備える。
制御部10は、グラフ処理サーバ1の全体を制御する中央処理装置(CPU)である。制御部10は、記憶部30に記憶されているオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションプログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、各種機能を実行する。
【0024】
具体的には、本実施形態では、プログラムをコンピュータに実行させることによって、グラフ処理サーバ1を実現する態様を例にあげて説明する。プログラムは、コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、ROM(Read Only Memory)、EEOPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な非一時的(non-transitory)情報記録媒体に記録することができる。この情報記録媒体は、コンピュータとは独立して配布及び販売することができる。
【0025】
一般には、コンピュータは、非一時的情報記録媒体に記録されたプログラムを、記憶部30に含まれる一時的(temporary)記憶装置であるRAM(Random Access Memory)に読み出してから、制御部10としてのCPUが読み出されたプログラムに含まれる指令を実行する。
なお、プログラムは、プログラムが実行されるコンピュータとは独立して、通信ネットワークN等の一時的伝送媒体を介して、プログラム配布サーバ等(図示せず)からコンピュータ等へ配布及び販売することができる。
【0026】
また、プログラムを、電子回路の動作レベル記述用のプログラミング言語によって記述することも可能である。この場合には、電子回路の動作レベル記述用のプログラミング言語によって記述されるプログラムから、電子回路の配線図やタイミングチャート等、各種の設計図が生成され、当該設計図に基づいて、上記のグラフ処理サーバ1を構成する電子回路を作成することができる。例えば、電子回路の動作レベル記述用のプログラミング言語によって記述されるプログラムから、FPGA(Field Programmable Gate Array)技術によって再プログラム可能なハードウェア上に、上記グラフ処理サーバ1を、構成することができるほか、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)技術によって、特定用途専用の電子回路を構成することも可能である。
【0027】
グラフ処理サーバ1は、制御部10が以下に示す各構成部を制御することにより、本実施形態に説明する各処理を実行するように構成される。
制御部10は、関連情報取得部11(関連情報取得手段)と、グラフ生成部13(グラフ生成手段)と、グラフ出力部15(グラフ出力手段)と、ニーズ受付部17(仕様要求受付手段)と、グラフ探索部18(グラフ探索手段)と、結果出力部19(結果出力手段)と、操作受付部21(操作受付手段)と、グラフ変更部22(グラフ変更手段)とを備える。
【0028】
関連情報取得部11は、製品及び/又はサービスに係る素材の物性データを含む、素材に関連した関連情報(素材関連情報)を、後述する素材関連情報記憶部35から取得する。ここで、素材に関連した関連情報には、メーカ情報、性能、ニーズ、スペック、物性データ情報といった、種々の情報が含まれる。関連情報は、より具体的には、後述する物性記憶部35aや、製品記憶部35bに記憶された情報である。
関連情報取得部11は、素材関連情報記憶部35に記憶された情報の全てを取得してもよいし、一部を取得してもよい。一部としては、例えば、メーカ情報で限定したり、製品情報で限定したりしてもよい。
【0029】
グラフ生成部13は、関連情報取得部11が取得した関連情報を所定のカテゴリに分類して、分類したカテゴリをノードとする。そして、グラフ生成部13は、カテゴリの関係性に基づいてノード間をエッジによって結び付けることでグラフを生成する。ここで、所定のカテゴリには、製品及び/又はサービスの製造過程に関する主要要素と、主要要素に関連する関連要素とを含む。主要要素は、例えば、素材、部品、完成品といった製造過程を表すものであり、後述する階層テーブル32の各階層に対応する。また、関連要素は、性能や用途、形状といった素材、部品、完成品等の製造過程に関連する要素である。グラフ生成部13は、主要要素である各階層のカテゴリをノードとして製造過程の順にエッジでつなぎ、主要要素と主要要素に関連する関連要素とをエッジでつないだグラフを生成する。
ここで、カテゴリに分類するために、例えば、辞書ファイルを用いることができる。辞書ファイルは、カテゴリごとに専門用語等を含む語をまとめたものであり、各カテゴリに対する関連付けをも含む。辞書ファイルを用いる場合には、グラフ処理サーバ1は、使用する辞書ファイルを、記憶部30に記憶させておく。
【0030】
図2に示すグラフ40のうち、ニーズ41と素材43とを結ぶエッジ49がないものが、このグラフ生成部13により生成されるグラフの一例である。生成したグラフの主要要素を示すノードには、例えば、複数の企業名を含む。また、生成したグラフの関連要素を示すノードには、例えば、性能や形状の情報等を含む。そして、企業名と性能等とが関係付けられている(後述する図6参照。)
【0031】
グラフ出力部15は、グラフ生成部13が生成したグラフを出力する。出力先は、例えば、メーカ端末5やサービス企業端末6であってもよく、グラフの出力要求を受けて、グラフ出力部15がグラフを出力してもよい。また、グラフ出力部15は、例えば、当該グラフ処理システム100を運営する運営企業が有する端末(図示せず)に出力してもよい。当該グラフ処理システム100を運営する運営企業は、様々な素材に関連する関連情報を有する企業であり、例えば、化学品専用商社等が該当する。
【0032】
ニーズ受付部17は、ユーザの製品やサービスに係るニーズ(仕様要求)を、メーカ端末5やサービス企業端末6から受け付ける。ユーザのニーズは、図2に示したように、様々な段階であるが、いずれの段階のものであってもよい。ニーズには、スペックに代表される性能情報や、納期や納品量等の納品情報等を含んでもよい。
具体的には、ニーズ受付部17は、例えば、素材メーカが、自身の素材のスペックである「○○(スペック)を満たす要求性能を持つ部品メーカは?」といった質問を受け付けてもよい。
【0033】
グラフ探索部18は、ニーズ受付部17が受け付けたニーズを満たす関連情報を、グラフ生成部13が生成したグラフを探索して取得する。ここで、グラフ探索部18は、例えば、素材メーカからグラフで辿ることができ、素材のノードからエッジが結ばれている部品のノードを探索する。
結果出力部19は、グラフ探索部18による探索結果を出力する。例えば、ニーズ受付部17が受け付けた「○○(スペック)を満たす要求性能を持つ部品メーカは?」に対して、結果出力部19は、「部品メーカ△△です。」と回答してもよいし、探索結果がなければ「該当するものはありません。」と回答してもよい。
【0034】
操作受付部21は、グラフ出力部15が出力したグラフに対するノード及び/又はエッジの結合に関する操作を、例えば、メーカ端末5やサービス企業端末6から受け付ける。
グラフ変更部22は、操作受付部21が受け付けた操作に応じてグラフを変更する。
【0035】
記憶部30は、制御部10が各種の処理を実行するために必要なプログラム、データ等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶領域である。
記憶部30は、プログラム記憶部31と、階層テーブル32と、企業情報記憶部33と、ユーザ情報記憶部34と、素材関連情報記憶部35(素材関連情報記憶装置)と、グラフ記憶部38とを備える。
【0036】
プログラム記憶部31は、各種のプログラムを記憶する記憶領域である。プログラム記憶部31は、データ処理プログラム31aと、グラフ生成プログラム31bとを記憶している。
データ処理プログラム31aは、上述した制御部10のうち、グラフ生成に係る機能を除く各機能を実行するためのプログラムである。
グラフ生成プログラム31bは、上述したグラフ生成部13の機能を実行するためのプログラムである。
なお、この例では、データ処理プログラム31aと、グラフ生成プログラム31bとにより上述した制御部10の各機能を実行するものとして説明するが、これに限定されない。1つのプログラムで上述した制御部10の各機能を実行してもよいし、さらに複数のプログラムに細分化してもよい。
【0037】
階層テーブル32は、企業の階層に関するテーブルである。図4Aに、階層テーブル32の例を示す。この例の階層テーブル32は、企業を4つの階層R1からR4に分類している。
企業情報記憶部33は、各企業の情報を記憶する記憶領域である。図4Bに、企業情報記憶部33の項目例を示す。企業情報記憶部33は、企業コードと、階層ID(IDentification)と、企業名等とを対応付けて記憶している。
企業コードは、企業を一意に識別する識別情報である。
階層IDは、当該企業が属する階層を示す。
【0038】
ユーザ情報記憶部34は、メーカ端末5やサービス企業端末6を用いてグラフ処理サーバ1にアクセス可能なユーザに関する情報を記憶する記憶領域である。図4Cに、ユーザ情報記憶部34の項目例を示す。ユーザ情報記憶部34は、ユーザIDと、ユーザ名と、企業コード等を対応付けて記憶している。
ユーザIDは、ユーザを一意に識別する識別情報である。
企業コードは、当該ユーザが所属する企業を識別する。
【0039】
素材関連情報記憶部35は、素材に関連する関連情報を記憶する記憶領域である。素材関連情報記憶部35は、物性記憶部35aと、製品記憶部35bとを含む。
物性記憶部35aは、物性データを含む素材データ記憶する記憶領域である。図4Dに、物性記憶部35aの項目例を示す。物性記憶部35aは、素材IDと、素材名と、企業コードと、物性名と、性能情報等とを対応付けて記憶している。
素材IDは、素材を一意に識別する識別情報である。
素材名は素材の名称である。
企業コードは、当該素材を有する企業を識別する。
物性名は、素材についての物性の名称である。
性能情報は、物性の性能を示す情報である。
【0040】
製品記憶部35bは、製品データを記憶する記憶領域である。図4Eに、製品記憶部35bの項目例を示す。製品記憶部35bは、製品IDと、製品名と、企業コードと、性能情報と、素材情報等とを対応付けて記憶している。
製品IDは、製品を一意に識別する識別情報である。
製品名は製品の名称である。
企業コードは、当該製品を有する企業を識別する。
性能情報は、製品の性能を示す情報である。
素材情報は、製品に含まれる素材の情報である。素材情報は、複数の素材IDを含む。
【0041】
なお、素材関連情報記憶部35に記憶される素材に関連した関連情報は、これに限定されない。例えば、物性記憶部35aと、製品記憶部35bとには、特許情報や文献情報等を記憶していてもよい。
また、素材関連情報記憶部35に記憶する情報は、例えば、メーカ端末5がグラフ処理サーバ1に当該情報を提供することで、グラフ処理サーバ1が素材関連情報記憶部35に格納したものであってもよい。
【0042】
グラフ記憶部38は、生成したグラフを記憶する記憶領域である。グラフ記憶部38は、生成したグラフを、例えば、グラフを生成した日や、グラフの生成で使用したデータの種類や、生成したユーザ等に対応付けて記憶してもよい。また、グラフ記憶部38は、さらに、生成したグラフの使用権限を含めて対応付けてもよい。グラフの使用権限とは、生成したユーザのみに使用を許可するか、他のユーザにも使用を許可するか、といったものをいい、例えば、グラフの生成者が指定してもよい。
【0043】
なお、上記した記憶部30に記憶された各データの保有方法は、一例にすぎず、これに限定されない。
通信IF部39は、メーカ端末5やサービス企業端末6との間での通信を行うためのインタフェースである。
【0044】
〔メーカ端末5〕
メーカ端末5は、各メーカ等の企業において使用する端末である。図1では、メーカ端末5は、素材メーカ、部品メーカ、完成品メーカ等に設けられている。メーカ端末5のユーザは、自身のメーカにおける素材関連情報を、グラフ処理サーバ1に提供する情報提供機能を有する。また、メーカ端末5は、ニーズをグラフ処理サーバ1に送信してニーズに対する回答を得るサービス利用機能を有する。メーカ端末5は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)である。
メーカ端末5は、制御部と、記憶部と、通信IF部、表示部、入力部(いずれも図示せず)等を備える。
【0045】
〔サービス企業端末6〕
サービス企業端末6は、図1に示すように、サービスを提供する側であるサービス提供企業において使用する端末である。サービス企業端末6は、ニーズをグラフ処理サーバ1に送信してニーズに対する回答を得るサービス利用機能を有する。サービス企業端末6は、例えば、PCである。
サービス企業端末6は、制御部と、記憶部と、通信IF部、表示部、入力部(いずれも図示せず)等を備える。
【0046】
なお、コンピュータとは、制御部、記憶装置等を備えた情報処理装置をいい、グラフ処理サーバ1、メーカ端末5及びサービス企業端末6は、いずれも制御部、記憶部等を備えた情報処理装置であり、コンピュータの概念に含まれる。
【0047】
〔処理の説明〕
次に、グラフ処理システム100における処理を説明する。
まず、グラフ生成処理について説明する。
図5は、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1におけるグラフ生成処理を示すフローチャートである。
図6は、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1でのグラフ生成処理で生成するグラフ60の具体例を示す図である。
【0048】
以下において、グラフ生成処理は、予め素材関連情報記憶部35に記憶されたデータを用いて、グラフ処理システム100の運営会社が行うものとして説明する。グラフ処理システム100の運営会社は、様々な多岐にわたる情報を有しているため、有効なグラフを生成できる。しかし、これは一例であって、各メーカ端末5において、各メーカが有する情報を使用してグラフ生成処理を行ってもよい。また、後述するが、グラフ探索時にニーズに応じたグラフを生成してもよい。
【0049】
図5のステップS(以下、「ステップS」を単に「S」という。)11において、グラフ処理サーバ1の制御部10(関連情報取得部11)は、グラフ生成に用いる素材に関連した関連情報を取得する。より具体的には、制御部10は、素材関連情報記憶部35から素材に関連した関連情報を取得する。
S12において、制御部10(グラフ生成部13)は、取得した素材に関連した関連情報を所定のカテゴリに分類して、分類したカテゴリをノードとする。そして、制御部10(グラフ生成部13)は、カテゴリの関係性に基づいてノード間をエッジによって結び付けることでグラフを生成する。ここで、制御部10(グラフ生成部13)は、情報同士のつながりがある場合には、情報同士も関係性を有する状態にする。
S13において、制御部10(グラフ出力部15)は、生成したグラフを、グラフ記憶部38に記憶する。その後、制御部10は、本処理を終了する。
【0050】
図6に、生成したグラフ60の一例を示す。図6は、電池に関する関連情報を使用した場合のグラフ60である。
ここで、ノード61から63までは、主要要素を示すものであり、ノード61は、素材メーカであり、ノード62は、部品メーカであり、ノード63は、完成品メーカである。また、ノード61a及び61bは、ノード61に関連する関連要素を示すものであり、ノード61aは、性能であり、ノード61bは、形状である。同様に、ノード62a及び62bは、ノード62に関連する関連要素を示すものであり、ノード62aは、要求性能であり、ノード62bは、要求形状である。また、ノード63aは、ノード63に関連する関連要素を示すものであり、要求性能である。
【0051】
当該グラフ生成処理で生成するグラフは、各ノード内に複数の情報を格納したものである。そして、主要要素のノード内の各情報と、関連要素のノード内の情報とが関連付けられることを特徴としている。例えば、ノード61内の情報64は、ノード61a内の情報64aと関連付けられており、また、ノード61b内の情報64b1及び64b2と関連付けられている。これらの情報の関連付けは、「電池メーカA」の性能が、「(平均)電圧3.7V」かつ「容量劣化率≦8%@5年」であり、「電池メーカA」の形状が、「円筒」又は「ラミネート」であることを表す。このような関連付けは、「電池メーカB」や「電池メーカC」のものについても同様に行われる(図示せず)。また、部品メーカのノード62内の情報65や、完成品メーカのノード63内の情報66についても、同様に関連付けがされたものが生成される。図6では、このような情報同士のつながりを、点線で表している。この点線で表した情報同士のつながりは、後述するグラフ出力時には表示させなくてもよい。
【0052】
次に、グラフ探索について説明する。
図7は、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1におけるグラフ探索処理を示すフローチャートである。
図8及び図10は、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1でのグラフ探索処理における具体例を示す図である。
図9は、本実施形態に係るグラフ処理サーバ1におけるグラフ変更処理を示すフローチャートである。
【0053】
図7のS21において、グラフ処理サーバ1の制御部10(ニーズ受付部17)は、メーカ端末5又はサービス企業端末6からニーズを受け付ける。ここで、メーカ端末5やサービス企業端末6が送信するニーズは、例えば、質問形式のテキストで表したものであってよい。例えば、メーカ端末5やサービス企業端末6からの要求に応じて、制御部10は、メーカ端末5やサービス企業端末6に、ニーズ入力のためのテキスト入力画面を予め出力しておく。
【0054】
S22において、制御部10は、受け付けたニーズを満たすグラフを生成済であるか否かを判断する。既にグラフを生成済である場合(S22:YES)には、制御部10は、処理をS24に移す。他方、グラフが生成済ではない場合(S22:NO)には、制御部10は、処理をS23に移す。ここで、制御部10は、グラフを一律に生成してもよいが、例えば、多少のニーズ違いで同じような質問を何度もする場合には、都度グラフを生成しても同じグラフを生成することになる。そのため、既にグラフを生成済であれば、制御部10は、グラフ記憶部38に記憶されているグラフを用いればよい。
【0055】
S23において、制御部10は、グラフ生成処理(図5参照)を行って、ニーズに対応したグラフを生成する。
S24において、制御部10(グラフ探索部18)は、ニーズを満たすグラフを、エッジを辿って探索する。
S25において、制御部10(結果出力部19)は、探索結果を出力する。
【0056】
ここで、グラフ探索処理について、具体例を用いて説明する。
図8のグラフ70Aは、電池に関するグラフである。グラフ70Aは、素材のノード71と、部品のノード72と、完成品のノード73とにより構成されている。また、グラフ70Aは、素材のノード71と部品のノード72とが、エッジ74aによりつながれており、部品のノード72と完成品のノード73とが、エッジ74bによりつながれている。また、実際にグラフ処理サーバ1が生成するグラフは、図6に例示したように、主要要素のノードと、関連要素のノードとがあるものであるが、このグラフ70Aは、グラフ探索処理を分かりやすく説明するために、異なる記載にしている。
【0057】
素材のノード71にある電池メーカBの情報71aを満たす部品のノード72の情報を探索する場合を考える。
制御部10(ニーズ受付部17)は、「電池メーカBの電池スペックを満たす部品メーカは?」というニーズを、電池メーカBのメーカ端末5から受け付ける(図7のS21)。
次に、制御部10(グラフ探索部18)は、生成済のグラフ70Aを用いて、エッジ74aで結ばれた部品のノード72の各情報を探索する(図7のS24)。そうすると、情報72a及び情報72bは、いずれも「(平均)電圧」に関する要求スペックが、電池メーカBの電池スペックを満たさない((1)の状態になる)。
そのため、制御部10(結果出力部19)は、「該当なし」という回答を探索結果として出力する(図7のS25)。
【0058】
そこで、次に、メーカ端末5においては、グラフを変更する処理を行うことで、さらに探索する範囲を変えることができる。メーカ端末5では、例えば、ニーズ入力画面からグラフ画面に画面切り替えができる。そのため、メーカ端末5において、画面切り替えを行ってグラフを操作する。
図9のS31において、制御部10(グラフ出力部15)は、例えば、メーカ端末5による画面切り替えの操作に応じて、メーカ端末5に対してグラフを出力する。
【0059】
S32において、制御部10(操作受付部21)は、出力しているグラフに対する操作を受け付ける。当該操作は、例えば、GUIによる画面上の操作であってよい。
例えば、図8に示すグラフ70Aにおいて、エッジ75を追加する操作を受け付ける。なお、エッジ75は、グラフ生成時には関連付けがされておらず、S31の処理で出力されたグラフには存在しない。
図9のS33において、制御部10(グラフ変更部22)は、受け付けた操作に応じてグラフを変更する。そして、制御部10(グラフ出力部15)は、変更後のグラフを出力する。その後、制御部10は、本処理を終了する。
【0060】
メーカ端末5では、再度、グラフ画面からニーズ入力画面に画面切り替えをすることで、制御部10は、再度グラフ探索処理を行うことができる。制御部10(ニーズ受付部17)は、「電池メーカBの電池スペックを満たす完成品メーカは?」というニーズを、電池メーカBのメーカ端末5から受け付ける(図7のS21)。
図8に戻って、エッジ75において、素材のノード71と完成品のノード73とが結ばれたことにより、制御部10(グラフ探索部18)は、素材のノード71に対してエッジ75で結ばれた完成品のノード73の各情報を探索する(図7のS24)。そうすると、情報73aは、「(平均)電圧」に関する要求スペックがなく、電池メーカBの電池スペックを満たす((2)の状態になる)。
そのため、制御部10(結果出力部19)は、「医療機器メーカ」という回答を探索結果として出力する。その際、制御部10は、要求スペックをあわせて出力してもよい。
【0061】
次に、グラフ探索処理について、別の具体例を用いて説明する。
図8では、素材のニーズを満たす部品や完成品を探索するものであった。この例では、完成品のニーズを満たす部品や素材を探索するものである。
図10のグラフ70Bは、図8のグラフ70Aと同様の電池に関するグラフである。
今度は、完成品のノード73にあるドローンメーカの情報73aを満たすものを、部品のノード72から探索する。
制御部10(ニーズ受付部17)は、「ドローンメーカの要求スペックを満たす部品メーカは?」というニーズを、ドローンメーカのメーカ端末5から受け付ける(図7のS21)。
【0062】
次に、制御部10(グラフ探索部18)は、生成済のグラフ70Bを用いて、エッジ74bで結ばれた部品のノード72の各情報を探索する。そうすると、情報72a及び情報72bは、いずれも「(平均)電圧」と「容量劣化率」とに関する要求スペックが、ドローンメーカの要求スペックを満たす((1)の状態になる)。
そのため、制御部10(結果出力部19)は、「モジュール・パックメーカA」と「モジュール・パックメーカB」という回答を、探索結果として出力する。但し、いずれの部品であっても、重さやコストに関する要求スペックに対する回答がない。そのため、ドローンメーカのメーカ端末5は、重さやコストに関する要求スペックについて、各部品メーカに問い合わせをしてもよい。
【0063】
さらに、メーカ端末5においては、グラフを変更する処理を行い、素材のノード71まで探索範囲を広げることができる。グラフの変更については、上記した図8の場合と同様であり、完成品のノード73と素材のノード71との間にエッジ75を追加する操作をする。
その後、メーカ端末5では、再度、グラフ画面からニーズ入力画面に画面切り替えて、制御部10(ニーズ受付部17)は、「ドローンメーカの要求スペックを満たす素材メーカは?」というニーズを、ドローンメーカのメーカ端末5から受け付ける(図7のS21)。
【0064】
そうすることで、制御部10(グラフ探索部18)は、完成品のノード73に対してエッジ75で結ばれた素材のノード71の各情報を探索する(図7のS24)。そうすると、情報71cは、「(平均)電圧」と「容量劣化率」とに関する要求スペックが、ドローンメーカの要求スペックを満たす((2)の状態になる)。
そのため、制御部10(結果出力部19)は、「モジュール・パックメーカA」と「モジュール・パックメーカB」に加えて「電池メーカC」という回答を探索結果として出力する。
【0065】
なお、上記の図10の例では、ニーズに対する要求スペックの情報が不足している場合であった。その場合には、制御部10は、ニーズに対する回答として要求スペックとして登録されている情報を出力してもよい。
このようなものとしては、他には、例えば、納期情報が挙げられる。納期情報には、納期時期及び納期量が、ニーズに合致するか否かが問題になる。
そのような場合には、個別に該当する企業に問い合わせをしてもよい。また、グラフ処理サーバ1に問い合わせの機能をさらに有するようにして、当該企業に代わって問い合わせをし、回答をさらに情報として記憶してグラフ生成時に当該情報を用いるようにしてもよい。
【0066】
このように、本実施形態のグラフ処理システム100によれば、以下のような効果がある。
(1)グラフ処理サーバ1は、製品及び/又はサービスに係る素材の物性データを含む、素材に関連した関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、ノード間をつなぐエッジによってカテゴリの関係性を表したグラフを生成する。
よって、グラフ処理サーバ1は、製造及び/又はサービスに係るニーズを満たす提案を得るためのグラフを生成することができる。
【0067】
(2)所定のカテゴリには、製品及び/又はサービスの製造過程に関する主要要素と、主要要素に関連する関連要素とが含まれ、グラフ処理サーバ1は、カテゴリの間の関係性に基づいて主要要素を製造過程の順番に前記エッジでつなぎ、主要要素と関連要素とをエッジでつないだグラフを生成する。また、性能情報を関連要素として有する。
よって、生成したグラフは、製造過程ごとにノードを形成し、製造過程の順番でノード間をエッジにより結びつけられたものにできる。また、性能情報を有するので、ニーズに対する探索時に、探索しやすいものにできる。
【0068】
(3)グラフ処理サーバ1は、ユーザのニーズを受け付けて、生成したグラフを探索してニーズを満たす関連情報を取得して、関連情報に基づく探索結果を出力する。
よって、ニーズを満たす関連情報を、グラフを探索することで取得できるので、ニーズを満たす素材を見つけ、又は、提案や気づきを得ることができる。
【0069】
(4)グラフ処理サーバ1は、受け付けたニーズに応じた関連情報を取得し、取得した関連情報を用いてグラフを生成する。
よって、ニーズに応じたグラフを生成でき、ニーズを満たす情報を得るために、生成したグラフを探索することができる。
【0070】
(5)グラフ処理サーバ1は、生成したグラフを出力し、グラフに対するノード及び/又はエッジの結合に関する操作を受け付けて、受け付けた操作に応じてグラフを変更する。
よって、ユーザによってグラフを自由に操作することができる。また、グラフを操作することによって、変更されたグラフにより、新たな気づきや発見を導き出すことができる可能性がある。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0072】
(変形形態:CRMの情報を用いた例)
本実施形態では、素材関連情報記憶部として、物性や製品情報を例に説明したが、これに限定されない。例えば、CRM(Customer Relationship Management)システムに記憶されている、例えば、人材情報や商談情報等の営業活動に有用な情報を、素材関連情報としてさらに記憶して、グラフ生成に用いてもよい。CRMを含めてグラフを生成することで、CRMシステムの営業活動に有用な情報を活用できる。また、CRMを含めてグラフを生成することで、例えば、出力結果の確からしさを判断可能な情報を出力したりでき、有用である。
また、CRMシステムに商談結果をフィードバックして、グラフを再度生成すれば、グラフの精度を高めることができ、商談の新たな予測に用いることができる。
【0073】
なお、CRMシステムとしては、例えば、Salesforce.com社やOracle社等が提供する市販のCRMシステムを利用することもできるし、各社で保有する独自システムを利用することもできる。これらのシステムは、社内のみで利用することも可能であるし、社内外で情報の一部を共有することも可能である。
その際、CRMシステムにCRM DB(データベース)として上記の情報が記憶されている場合には、グラフ処理サーバに対してCRM DBを直接又は通信ネットワークNを介して接続して、グラフ処理サーバが、CRM DBに記憶された情報を用いてもよい。
【0074】
以下に、実際にCRMシステムの情報を用いて生成したグラフを、検索に用いた場合の具体例を説明する。
図11A及び図12Aは、変形形態に係るCRMの情報を用いたグラフ処理サーバ1における入力情報の具体例を示す図である。
図11B及び図12Bは、変形形態に係るCRMの情報を用いたグラフ処理サーバ1における生成グラフの具体例を示す図である。
【0075】
(実施例1)
まず、図11Aの表85に示すように、CRMシステムからある営業活動に関する案件の情報(27件)について、例えば、CSV形式で出力した関連情報を、グラフ処理サーバ1の素材関連情報記憶部35に記憶させておく。なお、この例におけるテーマ数は12であり、テーマの中にいくつかの案件がある。
また、所定のカテゴリに分類するために用いる5つの辞書ファイルを、グラフ処理サーバ1の記憶部30に記憶させておく。
【0076】
そして、グラフ処理サーバ1の制御部10(関連情報取得部11)は、素材関連情報記憶部35に記憶された関連情報を取得する(図5のS11)。
次に、グラフ処理サーバ1の制御部10(グラフ生成部13)は、自然言語処理を行ってカテゴリに分類し、記憶部30に記憶された辞書ファイルを用いてグラフを生成する(図5のS12)。
生成したグラフは、グラフ記憶部38に記憶される(図5のS13)。
上記図11Aの表85に示された情報を用いて生成されるグラフ80を、図11Bに示す。図11Bに示すグラフ80のノード数は396であり、エッジ数は1508である。
【0077】
次に、図11Bで示されたグラフ80を用いた検索について説明する。
例えば、制御部10(ニーズ受付部17)が、質問として、Q1「イオン液体でリサイクルに使用できる物質は?」を受け付けた場合、制御部10(グラフ探索部18)は、グラフ80を用いて物質名を探索できる。
また、例えば、制御部10(ニーズ受付部17)が、質問として、Q2「△△の機能性を有するイオン液体××の取扱い経験のある担当者は?」を受け付けた場合、制御部10(グラフ探索部18)は、グラフ80を用いて担当者名を探索できる。
例えば、制御部10(ニーズ受付部17)が、質問として、Q3「△△の機能性を有するイオン液体××に関するテーマ名は?」を受け付けた場合、制御部10(グラフ探索部18)は、グラフ80を用いてテーマ名を探索できる。なお、例えば、質問として、Q4「イオン液体××を□□の用途で使用する場合に関連するテーマ名は?」受け付けた場合も、制御部10(グラフ探索部18)は、同様にテーマ名を検索できる。
【0078】
(実施例2)
次に説明する例は、CRMシステムの情報の他、特許文献をも用いるものである。
図12Aの表95には、図11Aで示した表85の他、文献として、イオン液体に関する109件の特許文献を関連情報として、グラフ処理サーバ1の素材関連情報記憶部35に記憶させておく。特許文献は、例えば、PDF形式のファイルである。
また、所定のカテゴリに分類するために、この例では、8つの辞書ファイルを用いる。
上記の表95に示された情報を用いて生成されたグラフ90を、図12Bに示す。図12Bに示すグラフ90のノード数は113503であり、エッジ数は1176464である。
【0079】
次に、図12Bで示されたグラフ90を用いた検索について説明する。
例えば、制御部10(ニーズ受付部17)が、質問として、Q5「〔□□用にイオン液体××を使用する際に必要な機能〕に関する特許番号は?」を受け付けた場合、制御部10(グラフ探索部18)は、グラフ90を用いて特許番号を探索できる。ここで、〔 〕内がCRMのデータを用いるものであり、制御部10(グラフ探索部18)は、CRMのデータを調べた結果を用いて文献データを検索する、という流れで処理を行う。
【0080】
また、例えば、制御部10(ニーズ受付部17)が、質問として、Q6「〔□□の用途に使用するイオン液体××に関する企業〕の所持する特許番号は?」を受け付けた場合、制御部10(グラフ探索部18)は、グラフ90を用いて特許番号を探索できる。
例えば、制御部10(ニーズ受付部17)が、質問として、Q7「〔□□の用途に使用するイオン液体××〕の分析方法は?」を受け付けた場合、制御部10(グラフ探索部18)は、グラフ90を用いて分析方法を探索できる。
【0081】
例えば、制御部10(ニーズ受付部17)が、質問として、Q8「□□の用途に使用する物質を取扱う〔担当者〕は?」を受け付けた場合、制御部10(グラフ探索部18)は、グラフ90を用いて担当者を探索できる。ここで、〔 〕内がCRMのデータを用いるものであるため、制御部10(グラフ探索部18)は、特許文献から物質を探索し、CRMでその物質を取扱ったことのある担当者を探索する。こちらは、特許文献で調べた結果を用いてCRMのデータを検索する、という流れで処理を行う例である。
【0082】
また、例えば、制御部10(ニーズ受付部17)が、質問として、Q9「〔□□の用途に使用する物質をCRMから抜出して〕その物質の溶解粘度が▽▽Pa・s未満である特許番号は?」を受け付けた場合、制御部10(グラフ探索部18)は、グラフ90を用いて特許番号を探索できる。この例は、数値比較が可能な例であり、今までの特許の検索で行われてきたキーワードでは行えない素材物性データを比較して、効率のよい検索ができる。
例えば、制御部10(ニーズ受付部17)が、質問として、Q10「〔□□の用途に使用する物質をCRMから抜出して〕その物質の最適溶解粘度(Pa・s)を特許文献から調べる」を受け付けた場合、制御部10(グラフ探索部18)は、グラフ90を用いて特許番号を探索できる。この例は、数値や単位で検索が可能な例であり、今までの特許の検索で行われてきたキーワードでは行えない素材物性データを比較して、効率のよい検索ができる。
【0083】
(その他の変形形態)
(1)本実施形態では、グラフ処理サーバの記憶部に各情報を有するものを例に説明したが、これに限定されない。グラフ処理サーバに対して通信ネットワークNを介して接続された外部装置に、各情報を有してもよい。その際、例えば、セキュリティや信頼性担保等の観点から改ざん防止機能を備えた台帳管理システム(例えばブロックチェーン)により構成してもよい。
ブロックチェーンにより構成される場合、グラフ処理サーバの記憶部のうち、グラフ生成のために用いるデータは、複数のコンピュータやサーバ等である複数の記憶装置に記憶され、ブロックチェーンを構成する分散型ネットワークの構成にしてもよい。複数の記憶装置は、「ブロック」と呼ばれるデータの単位を一定時間ごとに生成し、鎖のように連結していくことによりデータを保管する。複数の記憶装置は、P2P(Peer to Peer)ネットワークを使用し、各記憶装置が台頭に直接通信を行う。鎖状に保存することによって、ブロック内のデータを一度記憶した場合、該データを遡及的に変更することができないようになる。これにより、適法にデータを管理でき、改ざん防止と安全性や信頼性が担保された状態で管理することが可能であるという利点がある。
【0084】
(2)本実施形態では、グラフの生成を、グラフ処理システムの運営会社が行うものを例に説明したが、これに限定されない。各メーカや各サービス提供企業が、それぞれが有する情報を用いてグラフを生成して使用するものであってもよい。
【0085】
(3)本実施形態では、生成したグラフを、各メーカやサービス提供企業が用いるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、生成したグラフごとに、用いることができるメーカやサービス提供企業を関連付けてもよい。また、生成したグラフの使用を、有償にて各メーカやサービス提供企業に対して提供してもよい。さらに、NFT(Non-Fungible Token)や暗号資産のように、ブロックチェーン上でグラフを発行及び有償取引してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 グラフ処理サーバ
5 メーカ端末
6 サービス企業端末
10 制御部
11 関連情報取得部
13 グラフ生成部
15 グラフ出力部
17 ニーズ受付部
18 グラフ探索部
19 結果出力部
21 操作受付部
22 グラフ変更部
30 記憶部
31a データ処理プログラム
31b グラフ生成プログラム
32 階層テーブル
33 企業情報記憶部
34 ユーザ情報記憶部
35 素材関連情報記憶部
35a 物性記憶部
35b 製品記憶部
38 グラフ記憶部
40,60,70A,70B,80,90 グラフ
85,95 表
100 グラフ処理システム
【要約】
ニーズを満たす提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理装置、グラフ処理システム及びグラフ処理方法を提供する。製品やサービスのニーズに対する提案を得るためのグラフを生成するグラフ処理サーバ1は、製品及び/又はサービスに係る素材の物性データを含む、素材に関連した関連情報を記憶する素材関連情報記憶部35と、素材関連情報記憶部35の関連情報を所定のカテゴリに分類してノードを生成し、ノード間をつなぐエッジによって前記カテゴリの関係性を表したグラフを生成するグラフ生成部13と、を備える。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B