(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】認知機能強化型トレッドミル
(51)【国際特許分類】
A63B 22/02 20060101AFI20230515BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20230515BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A63B22/02
A63B24/00
A63B69/00 C
(21)【出願番号】P 2022181406
(22)【出願日】2022-10-25
【審査請求日】2022-11-24
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000194413
【氏名又は名称】菅野 康幸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 康幸
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0046373(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0255186(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0026123(US,A1)
【文献】特開2006-301276(JP,A)
【文献】特開2003-164544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 22/02
A63B 24/00
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルとハンドルを有し
、歩行速度調節機能と運動時間設定機能と消費カロリー表示機能を備え
、任意のビートとテンポ
を有したリズム音を
スピーカーから発する機能を有
する一台の電子メトロノームと、マイクとアンプと表示装置とACアダプターを主要構成要素と
して、電子メトロノームのスピーカー音の動態をマイクによって電気信号に換えてアンプに
送信し、アンプは送られてきた電気信号を増幅して表示装置に
送り、電子メトロノーム
が発した音の音量の動態を表示装置を用いて視覚情報として示す機能を
有する聴覚刺激可視化装置と、荷重センサーと荷重変換器と表示装置と
安定化電源装置を主要構成要素と
し、荷重センサーをトレッドミルの左右の前脚部に設置
し、荷重変換器と表示装置と
安定化電源装置をトレッドミルのテーブルに設置して、歩行によって
左右の前脚部が受ける荷重の動態を示す電気信号を荷重センサーから荷重変換器に
送信し、
送られてきた電気信号を
荷重変換器で増幅して表示装置に送
り、トレッドミル上での歩行時にトレッドミルの前脚部が受け
た荷重の動態を表示装置を用いて視覚情報として示す機能を有
する脚力動態可視化装置を備えたトレッドミルに於いて、
電子メトロノームの音量の動態と、脚力の動態を示すトレッドミルの前脚部が受ける左右前脚部の平均荷重の動態の、二つの動態を表示針を有するそれぞれの表示装置によってリアルタイムに表示する機能を有していることを特徴とするトレッドミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有酸素運動に二つの感覚刺激を組み合わせたフイ―ドバック歩行運動を行う際に、認知機能を強化する機能を備えているトレッドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
近代文明の急速な進歩は急激なモータリゼーションと飽食環境を生み出し、人々の運動量が激減する一方で食生活はオーバーカロリーになり易く、世界の多くの人々はカロリー摂取量とエネルギー消費量とのバランスが取り難い生活環境の中で暮らすことになったが、これに対するヒトは生物学的適応をする間を持つことができなかった。
その結果、肥満による生活習慣病が増加する一方で医療が進歩して、平均寿命の延びが続いてきた。しかし、健康寿命が延びないことから平均寿命と健康寿命との乖離が生じて、近年では運動機能と認知機能の減退によって必ずしも健やかな老後ではない年月が長くなる場合も多くなってきた。
このため、肥満や老後の運動機能虚弱、認知症等は、現代の人々が抱える大きな問題と成り、これらを解決するための手段の確立は世界的な課題の一つとなってきた。
【0003】
従来から、認知症の発症と関わりの深い生活習慣病を予防するためには、肥満を予防することが重要とされ、その中でも運動の必要性が強く指摘されてきたが、近年では運動量の多い人々の認知症に罹る割合が、運動量の少ない人々の該割合と比べて小さいとの報告が多くなされるようになり、運動が認知症を予防するとの直接的な証拠がまだ提示されていないものの、運動が認知症に罹り難くするとの認識は一般的に認められるようになった。
また、ランニングによって前頭前野の機能が高まることや、最大酸素摂取量が高い人ほど海馬の容量が大きいこと等が示されていた他、筋力・ストレッチトレーニングでは海馬の容量がしだいに減少したのに対して、有酸素運動では海馬の容量が増加したこと等が示されて、認知症予防に於ける有酸素運動の有効性が益々認められるようになってきた。(非特許文献1参照)
さらに近年では、若い時期の有酸素運動によってあらかじめ海馬を大きくしておくことで、老後に於ける認知症の発症を予防できるとの見解が示されるようになった。
【0004】
従って、有酸素運動によって、肥満を防ぎ生活習慣病を予防すること、運動機能の虚弱化を防ぐことの他、認知症の発症を予防できることが明らかとなり、健やかな老後に向けて運動することの大切さが明確となってきた。
【0005】
一方、パーキンソン病患者の理学療法に於いて、メトロノームのリズム音を利用した歩行訓練が行われ、「すくみ足」の改善が認められるとの報告がなされていた。
これは、音による感覚神経刺激が求心神経を経由して脳の中枢神経系に至り、情報処理とそれに基づいた前頭葉に於ける歩行の意志決定を行なって、錐体路系を下行し脊髄前角の運動神経に至って筋を制御する系に関与したことを示すもので、リズムを有した聴覚刺激によってリズムを認識し、これに合わせて歩こうとする意志に基づいたフイ―ドバック歩行運動は、脳に大脳皮質を含む広範な分野を連携させて、前頭葉と感覚機能と運動機能を統御する作用のあることを示すものであった。
【0006】
また、リズムの運動での利用で力の入れ具合のメリハリが明確となり、無駄な力を省くことが容易となって楽に運動を行えることが知られていた。(非特許文献2参照)
【0007】
さらに、脳の聴覚情報によるリズムの認識に、音と同期して動く指標を用いた視覚情報を加えることで、リズムの予測精度が高まりより正確な認識が可能になることから、音と同期して動くメトロノーム棒を備えた電子メトロノームが提供されていた。
【0008】
一方、音を聞いて、音のリズムに自分の歩行運動の歩調を合わせるフイ―ドバック歩行運動では、自分の歩行運動の動態を視覚で客観的に知ることで、より正確なフイ―ドバック歩行運動が可能になると考えられ、該フイ―ドバック歩行運動に於いて、脳への同一リズムに関連する聴覚情報と視覚情報の同時入力が、脳に大脳皮質を含む広範な分野を連携させた高度な統御機能の発動を可能とすることから、該二つの感覚情報の脳への同時入力は該フイ―ドバック歩行運動に於いて前頭葉と感覚機能と運動機能を統御する脳機能を高めて、脳を活性化させるためのトレーニング手段に成ると考えることができる。
従来、歩行動態の解析を目的として、感圧センサーを設置した靴を装着して歩行することにより、歩行時の足裏にかかる圧をパーソナルコンピューターを用いてディスプレイ上に波形表示することが可能であったが、そのためには毎回センサーを装着した靴を履く必要があり、圧力信号を導出するためのケーブルが付いている等の不便さから、運動量の大きな運動、あるいは長時間の運動には適当でなかった他、歩行者の脳を活性化するための脳機能のトレーニング手段として視覚情報を活用するものではなく、トレッドミルに圧力センサーを設置するものでもなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】田中宏暁(2019):ランニングする前に読む本 ブルーバックス、237-240
【文献】NHK.(2022):ガッテン,01月12日放送
【文献】小滝透(1996):ヒトはなぜまっすぐあるけるのか 第三書館、4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
運動機能と認知機能の賦活化作用を有する有酸素運動に於いて、認知機能賦活化作用を強化して、運動機能と認知機能の減退を共に予防し、健康寿命を延長する運動方法を支援する機能を有したトレッドミルの開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
電子メトロノームと前脚部に荷重センサーを設置したトレッドミルに、電子メトロノームの音量の動態とトレッドミルに掛かる荷重の動態を可視化する、聴覚刺激可視化装置と脚力可視化装置を設置して、音量の動態に脚力の動態を同調させるデュアルタスク様のフイ―ドバック歩行運動を支援し、該フイ―ドバック歩行運動に於ける脳の連携範囲を広げて高度な統御を行わせることで脳機能を賦活化し、有酸素運動の認知症予防作用と相乗作用を生じさせ、認知機能賦活化作用を強化することを手段とするものである。
【発明の効果】
本発明の効果を下記に示す。
【0012】
リズムの身体的効果
脚運動のリズムを音のリズムのメリハリに合わせることは、脚部の筋肉のメリハリのある収縮と弛緩が一定な間隔を置いて繰り返されることである。
リズムを利用することによって動作のタイミングや力の入れ具合にメリハリができ、筋肉の収縮と弛緩においても、しっかりと収縮し、しっかりと弛緩して、筋肉による静脈の締め付け具合にメリハリが生じることから、マッスルポンプ機能が効果的に働いて末梢循環を促進し、筋活動による代謝産物の筋組織からの排出が促進され、筋疲労の発生を抑制すると共に、静脈血の心臓への還流を促進して、運動における心臓の負担を軽減することができる。
正しく、強弱のある脚運動は第二の心臓としての機能を果たすことができ、同じ運動負荷ならば身体的負担をより少なくして達成することができる。
これは、繰り返されるトレーニングによって、無駄な動きが省かれて生じる運動効率の向上に等しく、正しくトレーニング効果である。
従って、本発明の脚運動に於けるリズムの適用には、歩行者が即座にトレーニング効果を得るに等しい作用効果がある。
【0013】
上記の様に、リズムを適用することによって即座にトレーニング効果を得ることができ、所定の運動を身体的負担を少なくして達成することが可能なことから、運動の苦しさが減少して、運動の非鍛錬者あるいは運動の弱者であっても、運動に向かうモチベーションを上げ、運動を習慣化することに効果を期待することができる。
【0014】
本発明による有酸素運動の、運動効率の向上と運動の習慣化は、より強い運動や、より長く運動を続けることを可能とし、結果としてダイエットを成功に導くことや、運動機能の減退を防ぎ、有酸素運動による認知症の発症を防ぐ効果を期待することができる。
【0015】
立位によるフイ―ドバック歩行運動の効果
デュアルタスク運動が認知機能を高める作用を有していて、屋外で音のリズムに合わせて歩行することが一種のデュアルタスク運動であり効果的であるとして薦められている他、異なる動作あるいは作業を組み合わせることが認知機能の衰えを防ぐとして薦められている。
しかしながら、本発明が課題とする運動の様に、大きな運動量の確保を目標とするために、大筋肉の活動を伴う歩行運動の中で他の作業を行なうことは、大筋肉運動と小筋肉運動の組み合わせ、あるいは大筋肉運動と知的作業の組み合わせとなって、微妙で正確な運動制御が脳機能的に難しかった他、歩行運動への意識の集中が緩慢となって危険性が生じるために、認知機能や運動機能に衰えがある場合には、屋内にて座位で行なわれる脚運動に、他の運動あるいは知的作業を組み合わせることが行われていた。
しかし、本発明では、トレッドミルを用いた立位によるカロリー消費の大きな大筋肉運動を目標とすることから、生命に最も大切な平衡感覚が運動の遂行に向けて高いレベルで動員され、しかも有酸素運動によって脳への酸素供給量が増えている状態で、脳が広く連携し多くの情報を処理するフイ―ドバック歩行運動を行うことになるため、脳を活性化して認知症を予防し、運動機能の虚弱化を防ぎ、肥満を予防する作用効果を期待することができる他、能力に応じた客観的な歩行速度の調節が可能な屋内での歩行運動であり、しかも歩行運動に限局した意識の集中ができることから安全性が高く、認知機能や運動機能にいくらかの衰えがある人々にも適用できる特徴がある。
【0016】
二足歩行は片足立ちの繰り返しであり、片足立ちは狭い足踵で重心の高い身体を支えることであることから、極めて不安定な姿勢である。従って、姿勢を保つには各種の平衡感覚(視器、前提迷路、深部感覚器、皮膚感覚器)と平衡中枢(脳幹、小脳等)が密接に連携する必要があり、さらに歩くためには、意志の存在と姿勢の動的制御が必要である。
前頭葉で情報をもとに考察して形成される意志は、錐体路を経由して平衡機能と結びつくことで意志に基づく歩行を可能とし(非特許文献3参照)、さらに、座位による作業と異なり立位での歩行運動は、生命の根幹に関わる脳機能と意志の形成に関わる前頭葉の機能が大きく動員され、その分、脳を賦活化する作用も大きいと考えることができ、有酸素運動が有する認知症の予防作用と相乗作用を有して認知機能を高め、トレッドミルを用いた有酸素運動が元々有する認知機能を強化して、健康寿命延長作用の強化を期待することができる。
【0017】
聴覚刺激の可視化効果
トレッドミルのテーブルに電子メトロノームのスピーカーに向けたマイクを設置して、電子メトロノームの音量の動態を表示装置を用いて可視化することにより、音のリズムを視覚情報としてリアルタイムに脳に入力することが可能である。
本発明の実施例では、聴覚刺激可視化装置の表示装置として直流電圧計を用いることから、前回の音の発生から経過した時間の長さの認識と、次の音が発生するまでの時間の長さの予測を、直流電圧計のメーター針の位置と動く方向と速さで推測することが可能となり、聴覚と視覚による音量動態の情報と前頭葉で形成される歩く意志の下で、聴覚刺激可視化装置のメーター針がピークを示す時点に脚を踏み込む時点を正確に合わせようとするフイ―ドバック歩行運動のトレーニングが可能であり、脳の機能的なトレーニングによる脳の賦活化作用と、有酸素運動による運動機能の賦活化作用はもとより、有酸素運動が有する認知症の予防作用との相乗作用によって、認知機能を高め、トレッドミルを用いた有酸素運動が本来有する健康寿命延長作用の強化を期待することができる。
【0018】
聴覚と視覚の二つの感覚情報による効果
聴覚刺激では直接的に感情が揺さぶられ、音につられて受動的に体が動いてしまう受動的作用が強く、音の動態を可視化した視覚刺激では前頭葉が作動して、理性に基づく意志が体を動かす能動的作用が強いと考えられることから、聴覚情報と視覚情報の同時入力によって生じる脳機能の相乗作用によって、フイ―ドバック歩行運動が続け易くなる作用効果を期待することができる。
【0019】
脚力の可視化効果
トレッドミルの左右の前脚部に脚力可視化装置の荷重センサーを設置して、運動中のトレッドミルの左右の前脚部に加わる加重の平均荷重の動態を脚力可視化装置の表示装置を用いてリアルタイムに表示することによって、音の動態の聴覚情報に加えて歩調リズムの視覚情報を得ることができ、さらに、荷重の大きさが質量と加速度の積に比例することから、歩行運動中のトレッドミルの左右の前脚部が受ける平均荷重の大きさの動態は、歩行ベルトに踏み込む際の加速度の大きさと、トレッドミルの後脚を支点とする前後的な位置が関係するモーメントから、脚を前に出して踏み込んだ時点が最大の値を示し、その後は小さくなる性質があるため、トレッドミルの左右の前脚部に加わる平均荷重の動態を示すことによって、歩行運動の歩調と脚力の動態を知ることができ、音の拍力の大きさとそのタイミングに、脚力の大きさと歩調を正確に同調させるフイ―ドバック歩行運動のトレーニングを支援することができる。
従って本発明は、多くの情報処理を伴い前頭葉の関与を必要とする該フイ―ドバック歩行運動の正確な制御をトレーニングできる機能を有していて、感覚機能と運動制御機能と前頭葉を連携して働かせることができる機能があることから、大脳と小脳を連携し統御機能を高めて脳を賦活化する作用効果を期待することができる他、拍力の強弱に合わせて脚力の強弱を制御するには、それを行おうとする明確な意志が必要なため、一歩毎に前頭葉の作動が必要とされ、故に、思考と意志の形成を司る前頭葉を賦活して、脳を活性化し意欲を高める作用効果を期待することができ、有酸素運動の運動機能を賦活化する作用はもとより、有酸素運動の認知症の予防作用と相乗作用を有することによって、脳を活性化して健康寿命の延長が期待できる作用効果を期待することができる。
【0020】
コンピューター利用の効果
トレッドミルの前脚部に設置された荷重センサーの電気出力をアンプによって増幅し、A/Dコンバーターを介してパーソナルコンピューターに取り込むことによって、データの記録と波形分析による歩行動態の解析が可能となり、運動機能や脳の統御機能を推察することに作用することが可能となる。
具体的には、各歩行速度に於ける運動中のトレッドミルの前脚部が受ける荷重動態の波形分析から、歩行運動の一歩毎の時間間隔とバラツキを、その平均値と標準偏差によって知ることが可能となり、各歩行速度に於けるそれらの値から、脳の統御機能と身体的運動能力が複合された能力を推察することに利用することが可能になる。
例えば、歩行速度を速くしても該標準偏差の値が大きくならない場合には、脳の統御機能と身体的運動能力が複合された能力が高いと考えられ、該標準偏差の値が一定な大きさの値になるまでの歩行速度を比較することで、脳の統御機能と身体的運動能力が複合された能力を比較することが可能となる。
また、心拍数を身体的運動能力と関連する指標として、該複合能力から脳の統御機能と身体的運動能力を区別することに利用することが可能であり、心拍数の増大と該標準偏差の増大との相関が大きい場合には、体力即ち運動の身体的能力が制限要素となって歩行リズムが乱れると考えることが可能であり、逆であれば、統御機能が制限要素となって歩行リズムが乱れると考えることが可能であり、これらは臨床への応用に道を拓くことができると考えられる。
【0021】
さらに、電子メトロノーム音のマイクを通した電気出力をアンプによって増幅し、A/Dコンバーターを介してパーソナルコンピューターに取り込むことによって、音量データの記録と波形分析が可能となり、トレッドミルの前脚部が受けた荷重の波形と同一時間軸上で比較分析することが可能となる。
音量のピークとトレッドミルが受ける荷重のピークのズレ時間の平均値とその標準偏差を各歩行速度に於いて測定し、それらの値を脳の統御機能と運動能力の複合的な能力として推察することに利用することが可能となる他、フイ―ドバック歩行運動中の単位時間毎に於けるそれらの値の変化から、疲労の尺度あるいは逆数を体力の尺度あるいは練度として利用することが可能となり、それらの経月的変化をトレーニング効果の判定に利用することが可能となる。
【0022】
1/4拍子のリズム音に歩調と脚力を合わせるフイ―ドバック歩行運動の効果
1/4拍子の、強、強、強、強(タン、タン、タン、タン)と、任意のテンポで強弱の無いフラットなリズム音に歩行運動の歩調と脚力を合わせることは、錐体外路系が主として働くため能動的意識が低くても(前頭葉の活動が比較的低くても)可能であり、速度(テンポ)の認識が簡単なことから、該リズムの利用は、いくらか認知機能障害のある方々のトレーニングに適していて、脳の統御機能と運動機能のさらなる減退を予防する作用効果を期待することができる。
【0023】
2/4拍子のリズム音に歩調と脚力を合わせるフイ―ドバック歩行運動の効果
2/4拍子は、強、弱、強、弱(タン、タ、タン、タ)であり、任意の歩行速度による任意のテンポで、強拍子と弱拍子のある2/4拍子のリズムに歩調と脚力の強弱を合わせる歩行運動では、脳活動は脚力に強弱を付ける分、フラットな1/4拍子のテンポにだけ同調させる脳の作業よりもレベルが高くなり、大脳皮質に於ける運動制御の指令が複雑となって、より脳の統御機構を働かせることから、脳の統御機能と運動機能の減退を予防する効果を期待することができる。
【0024】
4/4拍子のリズム音に歩調と脚力を合わせるフイ―ドバック歩行運動の効果
4/4拍子では、強、弱、中強 弱(タン、タ、タッ、タ)となり、これに歩調と脚力の強弱を同調させる歩行運動では、普段の歩き方ではないために脳活動が複雑となって、真剣に向かわなければできない課題となり、脳の統御機能と運動機能の減退を予防する効果を期待することができる。
【0025】
3/4拍子のリズム音に歩調と脚力を合わせるフイ―ドバック歩行運動の効果
3/4拍子では、強、弱、弱、強、弱、弱(タン、タッ、タ、タン、タッ、タ)であり、強泊になる脚が左右で毎回交代することから、強拍のタイミングに脚力を強くして同調させるには、踏み込む脚力の強弱とその左右をコントロールしなければならない。しかも強脚力の交代を毎回繰り返すことから、脳に於いては統御機能を速く作動せねばならず、いわゆる頭の回転を速くする必要があるが、ワルツのリズムで馴染み易く、楽しさが感じられて適度な認知課題である点で優れており、脳の統御機能と運動機能の減退を予防する効果を期待することができる。
【0026】
上記の拍子(ビート)は基本であり、電子メトロノームが備える様々な機能を利用することによって様々な脚運動を行うことを支援し、認知症の予防や進行の抑制に役立てることが可能と考えられるが、一方で、リズムが複雑に成る程、脳の統御機構の作業量が増えて運動機能の制御に支障が生じ、運動を速く行うにはマイナスに働くことから、安全性が損なわれる恐れが生じる他、歩行速度と単位時間当たりの運動量が低下して、大きなカロリー消費を目的の一つとする本発明の効果を得るためには適当でなく、やはり、1/4,2/4,3/4,4/4拍子のビートと任意のテンポを組み合わせたフイ―ドバック歩行運動が基本的な運動方法と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1~
図4
【
図1】聴覚刺激可視化装置の主要構成要素を示す模式図
【
図3】脚力可視化装置と聴覚刺激可視化装置をパーソナルコンピューターに接続する場合の主要構成要素を示す模式図
【
図4】本発明の請求項1による実施例のトレッドミルの模式図
【
図5】左前脚部へのロードセルの設置状況を示す模式図
【発明を実施するための形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明の請求項1による実施例のトレッドミルに設置する聴覚刺激可視化装置の主要構成要素を示す模式図で
ある。
該装置は、マイ
クとゲイン調整ダイヤ
ルを備えたアンプと表示装置とする0調整ダイヤ
ルと表示針を備えたボルトメータ
ーとACアダプターで構成され、マイ
クはスピーカ
ーの音量の動態を電気信号に変換してアンプに送り、アンプは送られてきた電気信号をゲイン調整ダイヤ
ルによって設定された増幅率に増幅してボルトメータ
ーに送り、ボルトメーターの表示針
(メーター針)を動かして音量の動態を示すものである。
また、
マイ
クを用いずに電子メトロノームのスピーカ
ーに入力されるスピーカーの駆動電力を直接表示する装置を用いて表示することを否定するものではなく、マイクも一般的なダイナミックマイクに拘らず、指向性マイク等、様々な種類のマイクの使用が可能である。
【0029】
図2は、本発明の請求項1による実施例の、トレッドミルに設置する脚力可視化装置の主要構成要素を示す模式図で
ある。
脚力可視化装置は同一仕様の2台のロードセルと接続箱(接続器)とゲイン調整ダイヤルを備えたロードセル変換器と安定化電源
装置と0調整ダイヤ
ルを備えた表示装置と
するボルトメータ
ーから構成され、トレッドミルの左右の前脚部にそれぞれ1個ずつロードセ
ルを設置し、それぞれのロードセルを接続箱(接続器)に接続して二つのロードセルの平均値を示す一つの電気信号を1台のロードセル変換器に入力し、該ロードセル変換器は入力された電気信号をゲイン調整ダイヤ
ルで設定された増幅率で増幅した上でボルトメータ
ーに出力し、トレッドミルの左右の前脚部に加えられた荷重の動態を
感知する2台のロードセルの平均値を1台のボルトメータ
ーの表示針(メーター針
)の振れによって表示するものである。
ロードセル変換器は、トレッドミルの電源スイッ
チが入ることによってテーブ
ル内に在る交流電源と接続している安定化電源
装置を介して直流電源が供給されるものである。
また、荷重センサーはロードセルに拘るものではなく、半導体や導電性ゴム等を用いた感圧センサー等を用いることに差支えがあるものではなく、アンプもそれぞれに適したものが用いられるものである。
【0030】
図3は、脚力可視化装置と聴覚刺激可視化装置をそれぞれのA/Dコンバーターを介して、入力装置と表示装置と記憶装置を備えたパーソナルコンピューターと接続する場合の主要構成要素を示す模式図で、これによって、時間軸を等しくして荷重と音量の動態の記録や各種波形分析が可能となり、パーソナルコンピューターにプリンターを備えることによって印刷が可能となる。
【0031】
図4は、歩行速度調節機能と運動時間設定機能と消費カロリー表示機能を備え、電子メトロノーム
と荷重センサーを設置したトレッドミルに、聴覚刺激可視化装置
と脚力可視化装置を設置した本発明の請求項1による実施例の外観を示す模式図で、トレッドミルのハンドル(15)の基部には電源スイッチボタン(9)が設置され、該ボタンは、トレッドミル本体と、トレッドミルのテーブル(7)内に設置された電子メトロノームと聴覚刺激可視化装置のACアダプター
と、脚力可視化装置の安定化電源装置への、
それぞれの交流電源の接続をオン/オフするものである。
トレッドミルのテーブル(7)の右側にはトレッドミルの歩行速度調節ダイヤル(16)と運動時間設定ダイヤル(17)と歩行ベルト(18)の駆動と停止を制御するスタート/ストップボタン(19)とデ゛イスプレイ(20)が設置され、デ゛イスプレイ(20)には歩行速度と歩行距離と運動の残り時間と運動による消費カロリーが表示されるものである。
トレッドミルのテーブル(7)の左側には電子メトロノームのビート(拍子)選択ダイヤル(21)とテンポ設定ダイヤル(22)と音量調節ダイヤル(23)と音発振のスタート/ストップボタン(24)とデ゛イスプレイ(25)が設置され、デ゛イスプレイ(25)には
設定されたビートとテンポと音量
の大きさが表示されるものである。
トレッドミルのテーブル(7)の上部中央には電子メトロノームのスピーカー(6)が設置されていて、聴覚刺激可視化装置のマイク(1)がスピーカー(6)に向けてフレキシブルアーム(8)の先端に取り付けられている。
電子メトロノームは、ビート選択ダイヤル(21)によって1/4,2/4,3/4,4/4拍子の中からビートを選択し、テンポ設定ダイヤル(22)によって40~180回/minの範囲でテンポを設定して、音量調節ダイヤル(23)によって音量を調節するものである。
スタート/ストップボタン(24)は、押すことによって設定されたリズムの音を発生させ、該ボタンを再度押すことによって音の発生を停止するものである。
トレッドミルのテーブル(7)の中央上段には、聴覚刺激可視化装置のボルトメーター(4)が設置され、その下側には0調整ダイヤル(3)とゲイン調整ダイヤル(2)が設置されている。
これによって、スピーカー(6)から発せられる音の聴覚刺激を視覚情報としても脳に入力することが可能となり、脳の広範囲な連携を必要とする脳の統御機能のトレーニングが可能である。
【0032】
また、脚力可視化装置は、同一仕様の2台のロードセル(10)と接続箱(接続器)とゲイン調整ダイヤル(11)を備えたロードセル変換器と安定化電源装置と0調整ダイヤル(12)を備え表示装置とするボルトメーター(13)から構成され、トレッドミルの左右の前脚部にそれぞれ1個ずつロードセル(10)を設置し、それぞれのロードセルを接続箱(接続器)に接続して二つのロードセルの平均値を示す一つの電気信号を1台のロードセル変換器に入力し、該ロードセル変換器は入力された電気信号をゲイン調整ダイヤル(11)で設定された増幅率で増幅してボルトメーター(13)に出力し、トレッドミルの左右の前脚部に加えられた荷重の動態を感知する2台のロードセルの出力の平均値の動態を1台のボルトメーター(13)の表示針であるメーター針(14)の振れによって表示するものである。
ロードセル変換機には、トレッドミルの電源スイッチ(9)が入ることによって、テーブル(7)内に在る交流電源と接続している安定化電源装置を介した直流電源が供給されるものである。
トレッドミルのテーブル(7)の中央下段には、脚力可視化装置のボルトメーター(13)が設置され、その側に0調整ダイヤル(12)とゲイン調整ダイヤル(11)が設置されている。
また、荷重センサーはロードセルに拘るものではなく、半導体や導電性ゴム等を用いた感圧センサー等を用いることに差支えがあるものではなく、アンプもそれぞれに適したものが用いられるものである。
【0033】
図4は本願発明の請求項1による実施例の、トレッドミルの模式図で、音による聴覚刺激を与え、且つ、音量の視覚情報と脚力動態の視覚情報を同時に示すことが可能であり、脳を広範に連携させて前頭葉を働かせ、脳を活性化するためのより高度なデユアルタスク様の有酸素運動を用いたトレーニングが可能である。
本願発明が課題とするフイ―ドバック歩行運動では、二つのメーター針の動きを見て同調させれば良く、高度な統御機能を働かせる割には容易であり、楽しく運動を続けることができる特徴がある。
【0034】
図5はロードセルを設置した左前脚部の側面の様子を示す模式図であり、右前脚部も同様である。
トレッドミルの歩行ベルト(18)を囲むフレーム(26)の左側前方下部に設置したセンサー取り付け具(27)の下面に、剛金製の基底盤(28)に固定された上下の円形フランジ(29)、(30)で挟まれたロードセル(10)を取り付けた様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1.マイク
2.ゲイン調整ダイヤル(聴覚刺激可視化装置)
3.0調整ダイヤル(聴覚刺激可視化装置)
4.ボルトメーター(聴覚刺激可視化装置)
5.表示針(聴覚刺激可視化装置)
6.スピーカー
7.テーブル
8.フレキシブルアーム
9.電源スイッチ(トレッドミル)
10.ロードセル
11.ゲイン調整ダイヤル(脚力可視化装置)
12.0調整ダイヤル(脚力可視化装置)
13.ボルトメーター(脚力可視化装置)
14.メーター針(脚力可視化装置)
15.ハンドル
16.歩行速度調節ダイヤル
17.運動時間設定ダイヤル
18.歩行ベルト
19.スタート/ストップボタン(トレッドミル)
20.デイスプレイ(トレッドミル)
21.ビート(拍子)選択ボタン
22.テンポ設定ダイヤル
23.音量調節ダイヤル
24.スタート/ストップボタン(電子メトロノーム)
25.デイスプレイ(電子メトロノーム)
26.フレーム
27.センサー取り付け具
28.剛金製基盤
29.上円形フランジ
30.下円形フランジ
31.左後脚
32.右後脚
33.左前脚
【要約】 (修正有)
【課題】運動機能と認知機能の賦活化作用を有する有酸素運動に於いて、認知機能賦活化作用を強化して、運動機能と認知機能の減退を共に予防し、健康寿命を延長する運動方法の支援が可能なトレッドミルの開発を課題とするものである。
【解決手段】電子メトロノームと前脚部に荷重センサーを設置したトレッドミルに、電子メトロノームの音量の動態とトレッドミルに掛かる荷重の動態を可視化する、聴覚刺激可視化装置と脚力可視化装置を設置して、音量の動態に脚力の動態を同調させるデユアルタスク様のフイ―ドバック歩行運動を支援し、該フイ―ドバック歩行運動動に於ける脳の連携範囲を広げて高度な統御を行わせることで脳機能を賦活化し、有酸素運動の認知症予防作用と相乗作用を生じさせ、認知機能賦活化作用を強化することを手段とするものである。
【選択図】
図4