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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】自然流下式の貯留倉庫
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/64 20060101AFI20230515BHJP
   B65G 65/40 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B65D88/64 B
B65G65/40 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019078297
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020175911
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】花岡 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】井上 領介
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-028093(JP,U)
【文献】特開昭58-041071(JP,A)
【文献】特開平07-207983(JP,A)
【文献】特開2001-278381(JP,A)
【文献】特開平11-244789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/64
B65G 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体物を一時的に貯留し、排出するための自然流下式の貯留倉庫であって、
排出口が形成された床と、
前記排出口の真上に配置される仕切部であって、前記固体物が充填されない非充填空間が前記仕切部の直下に形成され、かつ、前記固体物が充填される充填空間と前記排出口とが連通するように、前記貯留倉庫の内部空間を部分的に仕切る仕切部と
を備え、
前記貯留倉庫は、前記充填空間に前記固体物が充填されている場合であっても、前記非充填空間内に人が出入り可能に構成されており、
前記貯留倉庫は、また、
外壁と、
前記外壁の所定高さのところの内面から前記床まで延在する内壁と
を備え、
前記内壁の内側には、前記充填空間が形成され、
前記内壁と前記外壁との間には、前記充填空間から隔離された、人が出入りできる外側メンテナンス空間が形成されており、
前記非充填空間は、別の空間を介することなく、前記外側メンテナンス空間に連通している
貯留倉庫。
【請求項2】
固体物を一時的に貯留し、排出するための自然流下式の貯留倉庫であって、
排出口が形成された床と、
前記排出口の真上に配置される仕切部であって、前記固体物が充填されない非充填空間が前記仕切部の直下に形成され、かつ、前記固体物が充填される充填空間と前記排出口とが連通するように、前記貯留倉庫の内部空間を部分的に仕切る仕切部と
を備え、
前記貯留倉庫は、前記充填空間に前記固体物が充填されている場合であっても、前記非充填空間内に人が出入り可能に構成されており、
前記貯留倉庫は、該貯留倉庫に出入りするための第1の倉庫出入口および第2の倉庫出入口を備え、
前記第1の倉庫出入口を通って前記非充填空間に入り、該非充填空間から前記第2の倉庫出入口を通って前記貯留倉庫から出る動線が直線的に設定されている、
貯留倉庫。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の貯留倉庫であって、
前記外側メンテナンス空間は、前記貯留倉庫の外周全てに亘って形成された
貯留倉庫。
【請求項4】
請求項に記載の貯留倉庫であって、
前記外壁は、円筒形状を有し、
前記内壁は、逆円錐台の側面の形状を有する
貯留倉庫。
【請求項5】
請求項または請求項に記載の貯留倉庫であって、
前記仕切部は、前記内壁の内側を横断するように設置される
貯留倉庫。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記仕切部の数は一つである
貯留倉庫。
【請求項7】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記仕切部は、前記床まで延在しており、
前記仕切部は、前記充填空間と前記排出口とを連通させるための開口を備える
貯留倉庫。
【請求項8】
請求項に記載の貯留倉庫であって、
前記仕切部は、縦断面で見て、前記床に対して斜めに角度付けられた第1の面および第2の面を有する三角形の形状を有し、
前記第1の面および前記第2の面の両方に前記開口が形成された
貯留倉庫。
【請求項9】
請求項または請求項に記載の貯留倉庫であって、
前記開口の下端は、少なくとも前記第1の面および前記第2の面よりも外側の領域における前記床の上面と同一レベルに位置する
貯留倉庫。
【請求項10】
請求項ないし請求項のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記仕切部は、前記固体物の安息角を60度としたときに、前記開口から前記排出口に向けて流れる前記固体物と干渉しない幅1m以上の通路を前記非充填空間内に確保可能に構成される
貯留倉庫。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記排出口には、網目構造の蓋が設けられる
貯留倉庫。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の貯留倉庫であって、
前記排出口は、前記非充填空間内の前記床に対して段差無く形成された
貯留倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体物を一時的に貯留し、排出するための自然流下式の貯留倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス発電施設では、バイオマス燃料を一次貯留し、排出するための容器として、大型スクリュー型オーガまたはスイープを備える機械排出式容器が使用されることが一般的である(例えば、下記特許文献1)。このような機械排出式容器は、ブリッジ防止の確実性が高く、排出量の調整も容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-137169号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機械排出式容器は高価である。また、機械排出式容器は、故障時には排出不能となることや、故障対応に比較的長時間を要することが欠点となる。このため、自然流下式容器を採用することが望ましい場合がある。一方、自然流下式容器は、機械排出式容器と比べてブリッジが発生しやすいという欠点がある。また、機械排出式にしろ、自然流下式容器にしろ、小規模な容器(例えば、ホッパ)には、大量のバイオマス燃料を貯留できないという欠点もある。また、このような貯留設備は、ブリッジが発生した場合のブリッジの解消作業や、ブリッジの発生の有無の確認作業などのメンテナンス作業が行いやすいことが望ましい。かかる問題は、バイオマス燃料用の容器に限らず、固体物を貯留するための種々の貯留設備にも共通する。
【0005】
このようなことから、大量の固体物を貯留することができ、かつ、ブリッジが発生しにくい自然流下式貯留設備を提供することが求められる。さらに、メンテナンス作業を容易に行えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本発明の第1の形態によれば、固体物を一時的に貯留し、排出するための自然流下式の貯留倉庫が提供される。この貯留倉庫は、排出口が形成された床と、排出口の真上に配置される仕切部であって、固体物が充填されない非充填空間が仕切部の直下に形成され、かつ、固体物が充填される充填空間と排出口とが連通するように、貯留倉庫の内部空間を部分的に仕切る仕切部と、を備えている。貯留倉庫は、充填空間に固体物が充填されている場合であっても、非充填空間内に人が出入り可能に構成される。
【0008】
かかる貯留倉庫によれば、ホッパなどの小規模な容器と比べて、大量の固体物を貯留することができる。しかも、非充填空間が形成されることに起因して、貯留用容器内の固体物の自重が、排出口付近に存在する固体物に作用することを抑制できる。したがって、排出口付近でのブリッジの発生を抑制できる。さらに、充填空間に固体物が充填されている場合であっても、非充填空間内に人が出入りすることができるので、メンテナンス作業(例えば、ブリッジが発生した場合のブリッジの解消作業や、ブリッジの発生の有無の確認作業、貯留倉庫を空にする際に平坦部に残留した固体物の除去など)を非充填空間において容易に行うことができる。
【0009】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、貯留倉庫は、外壁と、外壁の所定高さのところの内面から床まで延在する内壁と、を備えている。内壁の内側には、充填空間が形成される。内壁と外壁との間には、充填空間から隔離された、人が出入りできる外側メンテナンス空間が形成される。かかる形態によれば、充填空間の外側からもメンテナンス作業を行うことができるので、メンテナンスの利便性が向上する。例えば、外側メンテナンス空間にブリッジ解消装置(例えば、エアブラスター、ハンマリング装置など)を設置する場合には、当該ブリッジ解消装置のメンテナンス作業を外側メンテナンス空間において容易に行うことができる。なお、本願において「外壁」とは、貯留機能を有する空間を最も外側で形成する壁をいい、必ずしも外部空気に接触する壁をいうとは限らない。例えば、貯留倉庫と事務棟とが併設される場合には、貯留倉庫と事務棟とを仕切る壁が「外壁」となる場合もある。
【0010】
本発明の第3の形態によれば、第2の形態において、非充填空間は、別の空間を介することなく、外側メンテナンス空間に連通している。かかる形態によれば、作業者の動線を効率化することができる。
【0011】
本発明の第4の形態によれば、第2または第3の形態において、外側メンテナンス空間は、貯留倉庫の外周全てに亘って形成される。かかる形態によれば、貯留倉庫の外周の任意の場所でメンテナンス作業を行えるので、利便性が向上する。また、充填空間内に位置する床の面積が低減するので、固体物の残留量(排出口に排出されずに、平坦部に残留する量)を低減することができる。その結果、メンテナンス作業(より具体的には、残留物の除去作業)の負荷が低減される。なお、本願において「貯留倉庫の外周」とは、貯留機能を有する空間の外周をいう。
【0012】
本発明の第5の形態によれば、第4の形態において、外壁は、円筒形状を有し、内壁は、逆円錐台の側面の形状を有する。かかる形態によれば、内壁の下端を排出口に近づけることができる。その結果、充填空間内に位置する床の面積が低減し、固体物の残留量をいっそう低減することができる。また、固体物が内壁に沿って排出口に誘導されるので、排出口に向けた固体物の流れが促進され、ブリッジが発生しにくくなる。
【0013】
本発明の第6の形態によれば、第4または第5の形態において、仕切部は、内壁の内側を横断するように設置される。かかる形態によれば、充填空間内に位置する床の面積が低減し、固体物の残留量をいっそう低減することができる。
【0014】
本発明の第7の形態によれば、第1ないし第6のいずれかの形態において、仕切部の数は一つである。かかる形態によれば、貯留倉庫の構造を簡素化できる。しかも、仕切部の数が複数である場合と比べて一つの仕切部の大きさ(換言すれば、非充填空間の大きさ)を大きくできる。したがって、非充填空間内においてメンテナンス用の通路幅を大きく確保しやすくなり、メンテナンス作業の利便性が向上する。
【0015】
本発明の第8の形態によれば、第1ないし第7のいずれかの形態において、仕切部は、床まで延在している。仕切部は、充填空間と排出口とを連通させるための開口を備えている。かかる形態によれば、仕切部を床で支持することができるので、仕切部を上方から支持する場合と比べて、貯留倉庫の構造を簡素化できる。また、仕切部を上方から支持する支持構造が不要になるので、当該支持構造がブリッジを生じさせることがない。
【0016】
本発明の第9の形態によれば、第8の形態において、仕切部は、縦断面で見て、床に対して斜めに角度付けられた第1の面および第2の面を有する三角形の形状を有する。第1の面および第2の面の両方に開口が形成される。かかる形態によれば、仕切部上に固体物が残留することがない。床に対する内壁の傾斜角度と、床に対する第1の面および第2の面のそれぞれの傾斜角度と、は同じであってもよい。こうすれば、固体物が内壁の内面に沿って排出口に向かう方向と、第1の面および第2の面にそれぞれ形成された開口の開口方向と、が一致するので、排出口に向けた固体物の流れが促進され、ブリッジが発生しにくくなる。
【0017】
本発明の第10の形態によれば、第8または第9の形態において、開口の下端は、少なくとも第1の面および第2の面よりも外側の領域における床の上面と同一レベルに位置する。かかる形態によれば、開口よりも下方に固体物の滞留スペースが形成されることがない。したがって、固体物の残留量をいっそう低減することができる。
【0018】
本発明の第11の形態によれば、第8ないし第10のいずれかの形態において、仕切部は、固体物の安息角を60度としたときに、開口から排出口に向けて流れる固体物と干渉しない幅1m以上の通路を非充填空間内に確保可能に構成される。かかる形態によれば、作業員と固体物との干渉を避けるためのデッキなどを設けなくても、非充填空間内においてメンテナンス用の通路の、固体物と干渉しない最低限の幅を確保できる。
【0019】
本発明の第12の形態によれば、第1ないし第11のいずれかの形態において、排出口には、網目構造の蓋が設けられる。かかる形態によれば、排出口の排出機能を確保しつつ、排出口からの作業員の転落を防止することができる。
【0020】
本発明の第13の形態によれば、第1ないし第12のいずれかの形態において、排出口は、非充填空間内の床に対して段差無く形成される。かかる形態によれば、作業員が、非充填空間内の床に散乱した固体物を排出口に排出しやすい。
【0021】
本発明の第14形態によれば、第1ないし第13のいずれかの形態において、貯留倉庫は、貯留倉庫に出入りするための第1の倉庫出入口および第2の倉庫出入口を備えている。第1の倉庫出入口を通って非充填空間に入り、非充填空間から第2の倉庫出入口を通って貯留倉庫から出る動線が直線的に設定される。かかる形態によれば、このような貯留倉庫を複数設置する場合に、各貯留倉庫の直線的な動線が一直線に並ぶように複数の貯留倉庫を配置すれば、作業員は、複数の貯留倉庫に亘って一直線に歩きながらメンテナンス作業を行うことができ、作業動線が効率化される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態の貯留用倉庫の概略構成を示す断面図である。
図2】貯留用倉庫の外観を示す斜視図であり、その内部を透視で示している。
図3図1の貯留用倉庫の斜視図であり、一部を断面で示している。
図4図1の貯留用倉庫の斜視図であり、一部を破断して内部構造を示している。
図5】排出口付近の拡大断面図である。
図6】仕切部の開口付近の構造の変形例を示す断面図である。
図7】本発明の第2実施形態の貯留用倉庫の概略構成を示す断面図である。
図8】本発明の第3実施形態の貯留用倉庫の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態としての貯留倉庫10(以下、単に倉庫とも呼ぶ)の概略構成を示す断面図である。図2は倉庫10の斜視図であり、倉庫10の内部が透視で示されている。図3は倉庫10の半分の斜視図であり、倉庫10の一部は断面で示されている。図4は、図3は倉庫10の半分の斜視図であり、領域A1を破断して、倉庫10の内部構造を示している。倉庫10は、固体物を一時的に貯留し、排出するための自然流下式の倉庫である。つまり、倉庫10は、その内部に貯留された固体物を排出口から排出するための機械装置を備えていない。倉庫10は、例えば、バイオマス発電施設において、木質バイオマス燃料(例えば、木質チップ(縦40mm×横40mm×厚み10mm)、木質ペレット(径6~10mm×長さ30mm)、パームヤシ殻(直径10mmの半球状)など)を一時的に貯留してもよい。倉庫10は、本実施形態では、鉄板造であるが、任意の構造を有していてもよい。例えば、倉庫10は、コンクリート構造物を含んでいてもよい。
【0024】
倉庫10は、円柱状の外形を有しており(図2参照)、図1では、その半分のところで切断した縦断面を示している。倉庫10のうちの図示していない残り半分も、図1に示される倉庫10と同じ構造を有している。図1に示すように、倉庫10は、外壁20と、床30と、内壁40と、仕切部50と、を備えている。外壁20は、円筒状の形状を有している。外壁20は、実際には、図1に示すよりも上方まで延在しており、その上端は屋根によって閉じられている。外壁20の内部には、固体物が充填される充填空間21が形成されている。充填空間21へは、外壁20の上端付近に設けられた投下口(図示省略)から、コンベヤ、シュートなどを介して固体物が供給される。限定はされないが、外壁20は、例えば、直径15m×高さ40mのサイズを有していてもよい。
【0025】
図3に示すように、床30には、複数の排出口31が形成されている。排出口31は、2列に並んで形成されている。排出口31の真上には、仕切部50が配置されている。本明細書において「真上」、「真下」とは、鉛直方向に見た場合の位置にのみ言及しており、鉛直方向において隣接した位置関係を有しているか否かについては関係がない。つまり、仕切部50と排出口31との間に他の部材や空間が介在するか否かについては言及していない。
【0026】
仕切部50は、倉庫10の内部空間を部分的に仕切っている。その結果、固体物が充填されない非充填空間51が、仕切部50の直下に形成される。本明細書において「直下」、「直上」とは、鉛直方向に見た場合の位置に加えて、鉛直方向において隣接した位置関係を有していることにも言及している。つまり、非充填空間51は、仕切部50の真下にあり、かつ、仕切部50と非充填空間51とは、鉛直方向において隣接している。
【0027】
仕切部50は、床30まで延在している。つまり、仕切部50は、床30上に支持されている。仕切部50は、縦断面で見て、床30に対して斜め(本実施形態では、60度)に角度付けられた二つの面を有する三角形の形状を有している。この二つの面のそれぞれには、複数の開口52が水平方向に並んで形成されている。排出口31および開口52は、開口52の開口方向から見て互いに重複する位置に配置されている。開口52は、充填空間21と非充填空間51(ひいては、排出口31)とを連通させている。これにより、充填空間21に充填された固体物が開口52を介して排出口31に導かれる。上述の形状の仕切部50によれば、仕切部50上に固体物が残留することがない。ただし、仕切部50は、任意の形状とすることができる。
【0028】
上述のように非充填空間51が形成されると、充填空間21の固体物の全ての自重が、排出口31の付近の固体物に作用することを抑制できる。その結果、排出口31の付近でのブリッジの発生を抑制できる。
【0029】
仕切部50は、床30上に支持される構成に代えて、梁などによって上方から支持されてもよい。この場合は、仕切部50には、開口52が形成されていなくてもよく、その代わりに、仕切部50と床30との間の隙間が開口52の役割(すなわち、充填空間21に充填された固体物を排出口31に導く役割)を果たしてもよい。ただし、本実施例のように仕切部50を床30で支持することによって、倉庫10の構造を簡素化できる。しかも、梁などの支持構造がブリッジを生じさせることがない。
【0030】
図1に示すように、床30の下方には、地下ピット90が形成されている。地下ピット90には、シュート91とコンベア92とが設けられている。排出口31から排出される固体物は、シュート91によってコンベア92に導かれ、コンベア92によって後段の設備(例えば、発電設備)に搬送される。排出口31の下面には、排出口31を開閉するシャッタ(図示省略)が設けられてもよい。このシャッタは、コンベア92のメンテナンスを行う際に閉められてもよい。非充填空間51は、上述したブリッジ発生抑制効果の他、当該シャッタまたはコンベア92に作用する固体物の荷重を低減する効果も有している。
【0031】
図1に示すように、内壁40は、外壁20の所定の高さのところの内面から床30まで延在している。本実施形態では、内壁40は、倉庫10の外周全てに亘って形成されている。この内壁40の内側には、充填空間21が形成されている。一方、内壁40の外側、すなわち、内壁40と外壁20との間には、外側メンテナンス空間41が形成されている。外側メンテナンス空間41は、内壁40によって充填空間21から隔離されている。このため、作業員は、充填空間21での固体物の貯留状況にかかわらず、外側メンテナンス空間41に出入りすることができる。したがって、外側メンテナンス空間41にブリッジ解消装置(例えば、エアブラスター、ハンマリング装置など)を設置する場合には、当該ブリッジ解消装置のメンテナンス作業または操作を外側メンテナンス空間41において容易に行うことができる。また、外側メンテナンス空間41が倉庫10の外周全てに亘って形成されているので、メンテナンス作業の利便性が向上する。しかも、充填空間21内に位置する床30の面積が低減するので、固体物の残留量(排出口31に導かれずに、平坦部に残留する量)を低減することができる。したがって、残留物の除去作業の負荷が低減される。ただし、外側メンテナンス空間41は、倉庫10の外周の一部のみに形成されていてもよい。もとより、外側メンテナンス空間41は、形成されていなくてもよい。
【0032】
内壁40は、本実施形態では、逆円錐台の側面の形状を有している。このため、内壁40の一部が鉛直方向に延在する場合と比べて、内壁40の下端を排出口31に近づけることができる。その結果、充填空間21内に位置する床30の面積が低減し、固体物の残留量をいっそう低減することができる。また、固体物が内壁40に沿って排出口31に誘導されるので、排出口31に向けた固体物の流れが促進され、ブリッジが発生しにくくなる。
【0033】
さらに、図5に示すように、本実施形態では、床30に対する仕切部50の二つの面のそれぞれの傾斜角度θ1と、床30に対する内壁40の傾斜角度θ2と、は同じである(本実施形態では、θ1=θ2=60度)。このため、固体物が内壁40の内面に沿って排出口31に向かう方向と、仕切部50の二つの面に形成された開口52の開口方向と、が一致するので、排出口31に向けた固体物の流れが促進され、ブリッジが発生しにくくなる。
【0034】
図3に示すように、仕切部50は、内壁40の内側を横断するように設置される。そして、仕切部50の内部、すなわち、非充填空間51に面する床30には、床30の強度を考慮して、横断方向に亘って極力大きい排出口31が確保される。かかる構成によれば、充填空間21内に位置する床30の面積がいっそう低減し、固体物の残留量をいっそう低減することができる。また、後述するように、非充填空間51と外側メンテナンス空間41との間の移動が行いやすくなる。
【0035】
図1,2に示すように、外壁20には二つの倉庫出入口25が形成されている(図1では一つのみ示されているが、図2では倉庫出入口25a,25bとして二つ示されている)。図2では、地下部分を含めて外壁20を示しており、倉庫出入口25a,25bは、実際には、グランドレベル付近に形成されている。倉庫出入口25a,25bには、扉が設けられてもよい。図4に示すように、倉庫出入口25は、外側メンテナンス空間41に連通している。非充填空間51と外側メンテナンス空間41とを仕切る内壁40には、非充填空間出入口42(図2では非充填空間出入口42a,42bとして二つ示されている)が形成されている。このため、非充填空間51は、別の空間を介することなく、外側メンテナンス空間41に連通する。したがって、作業者は、非充填空間51と外側メンテナンス空間41との間での移動を効率的に行うことができる。かかる構成により、作業者は、二つの倉庫出入口25a,25bのいずれかを通って外側メンテナンス空間41に入ることができ、また、外側メンテナンス空間41から非充填空間出入口42a,42bのいずれかを通って非充填空間51に入ることができる。ただし、非充填空間51と外側メンテナンス空間41とは、直接的に連通していなくてもよい。例えば、図4に示される非充填空間出入口42が設けられていない場合には、図2に示される倉庫出入口25が外側メンテナンス空間41専用の出入口として使用されてもよい。この場合、作業者が地下ピット90から非充填空間51に入れるようにするために、非充填空間51内の床30に、地下ピット90に通じる出入口が設けられてもよい。また、外側メンテナンス空間41が設けられない場合には、倉庫出入口25は、非充填空間51に直接的に連通していてもよい。
【0036】
図5は、排出口31付近の拡大断面図である。図5では、充填空間21に充填された固体物15(ハッチングで示している)が、開口52を介して排出口31へ排出されている様子が示されている。開口52を出た固体物15は、固体物15の物理的特性によって定まる安息角θ3の傾斜で、排出口31に流れている。図5に示すように、一方側の開口52から排出される固体物15の山と、他方側の開口52から排出される固体物15の山とは、干渉していない。このような構成にすれば、一方の山の流れが、他方の山の逆方向の流れによって阻害されないので、ブリッジの発生を抑制することができる。
【0037】
しかも、非充填空間51内において、山と山との間に間隔が空いているので、それらの山の間に位置する床30を、人が出入りできる、固体物と干渉しないメンテナンス通路として使用することができる。図5に示す例では、幅D1のメンテナンス通路が確保されている。この例では、非充填空間51内の床30は、固体物15の山の内側の下端よりも内側に退避した位置に設けられている。換言すれば、排出口31は、固体物15の山よりも内側まで延在している。このため、固体物15が非充填空間51内の床30上に飛散しにくい。安全対策として、排出口31に網目構造の蓋(例えば、グレーチング)が設けられる場合には、幅D1よりも大きい幅D2のメンテナンス通路を確保できる。ただし、非充填空間51内の床30を固体物15の山の内側の下端のところまで延在させて、幅D2のメンテナンス通路を確保してもよい。
【0038】
例えば、作業者は、定期的に非充填空間51内を見て回り、ブリッジの発生の有無の確認作業を行ってもよい。あるいは、作業者は非充填空間51においてブリッジの解消作業を行ってもよい。具体的には、作業者は、非充填空間51から棒を開口52内に挿入することによってブリッジの解消を試みてもよい。あるいは、作業者は、非充填空間51内に設置されたブリッジ解消装置を作動させてもよい。あるいは、非充填空間51内の作業者は、倉庫10を空にした際に、充填空間21に面する床30に残留した固体物15を、レーキなどを使用して排出口31に向けて掻き出して排出する作業を行ってもよい。
【0039】
このような非充填空間51内のメンテナンス通路を確保するために、仕切部50の下端の幅D3は、例えば、固体物15の安息角θ3を60度(図5では、そのように示されている)としたときに、開口52から排出口31に向けて流れる固体物15と干渉しない幅1m以上(つまり、幅D1または幅D2が1m以上)の通路を確保するように設計されてもよい。固体物15がバイオマス燃料である場合、安息角θ3は、一般的には最大でも60度未満であるから、この設計条件は、非充填空間51内において固体物15と干渉しないメンテナンス通路を床30に確保するためのほぼ最低条件であるといえる。メンテナンス通路は、大きな幅で確保できるほど利便性が向上するので、1mよりも大きな幅が確保されてもよい。また、幅D3は、貯留する固体物15の特徴に応じた安息角θ3に応じて設計すればよく、安息角θ3が小さくなるほど、確保すべき幅D3は大きくなる。
【0040】
本実施形態のように、単一の仕切部50を設置する場合には、複数の仕切部を並べて設置する場合(後述する図7,8参照)と比べて、非充填空間51内のスペースを大きく確保できる。つまり、非充填空間51内においてメンテナンス通路の幅(D1またはD2)を大きく確保しやすくなる。なお、上記の1m以上の通路幅は必須ではなく、固体物15と干渉しない十分な通路幅が確保できない場合には、床30のレベルよりも上方、かつ、固体物15と干渉しない高さのところに作業デッキが設けられてもよい。
【0041】
図5に示すように、排出口31は、非充填空間51内の床30に対して段差無く形成される。かかる構成によれば、作業員は、非充填空間51内の床30に散乱した固体物15を排出口31に排出しやすい。
【0042】
図2に示すように、倉庫出入口25a,25bおよび非充填空間出入口42a,42bは、仕切部50が内壁40を横断する方向において、非充填空間51(図2では、図示省略)と倉庫出入口25a,25bと非充填空間出入口42a,42bが一直線に並ぶように配置されている。つまり、倉庫出入口25a,25bの一方と非充填空間出入口42a,42bの一方とを通って非充填空間51に入り、非充填空間51を前方に進んで、非充填空間51から倉庫出入口25a,25bの他方と非充填空間出入口42a,42bの他方とを通って倉庫10から出る作業者のメンテナンス動線は、直線的に設定されている。このような倉庫10を複数設置する場合には、各倉庫10の直線的なメンテナンス作業動線が一直線に並ぶように、複数の倉庫10が配置されてもよい。こうすれば、作業員は、複数の倉庫10に亘って一直線に歩きながらメンテナンス作業を行うことができ、メンテナンス作業動線が効率化される。
【0043】
図6は、仕切部50の開口52付近の構造の変形例を示す断面図である。図示する例では、仕切部50よりも外側の領域における(つまり、充填空間21内の)床30は、モルタル33によってかさ上げされている。その結果、開口52の下端53は、モルタル33の上面34と同一レベルに位置している。かかる構成によれば、開口52よりも下方に固体物の滞留スペースが形成されることがない。したがって、固体物の残留量をいっそう低減することができる。非充填空間51の床30についても、充填空間21の床30と同一レベルまでかさ上げされてもよい。
【0044】
図7は、第2実施形態の倉庫120の概略構成を示す断面図であり、図1に対応している。以下、第1実施例と異なる点についてのみ説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成要素には、第1実施形態と同様の符号を付している。この例では、床130上に2つの仕切部150a,150bが設置されている。仕切部150a,150bは、同一形状を有している。仕切部150aは、床130に対して斜めに角度付けられた第1の部分と、第1の部分よりも下方に位置し、鉛直方向に延在する第2の部分と、を備えている。第2の部分には、開口152aが形成されている。このように、鉛直方向に延在する第2の部分に開口152aが形成されていると、開口152aにシャッタを設ける場合には、シャッタに作用する固体物の荷重を低減することができる。
【0045】
仕切部150a,150bは、同一形状を有しているので、仕切部150bについての説明は省略する。両側の開口152aにそれぞれ対応して、排出口131aが2列に並んで形成されている。また、仕切部150a,150bのそれぞれに対応して、非充填空間151a,151bに入るための倉庫出入口125a,125bが外壁120に形成されている。内壁240にも、倉庫出入口125a,125bに対応する非充填空間出入口がそれぞれ形成される。
【0046】
図8は、第3実施形態の倉庫220の概略構成を示す断面図であり、図1に対応している。以下、第1実施例と異なる点についてのみ説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成要素には、第1実施形態と同様の符号を付している。この例では、床230上に2つの仕切部250a,250bが設置されている。仕切部250a,250bは、同一形状を有している。仕切部250a,250bは、同一形状を有しているので、仕切部250bについての説明は省略する。両側の開口252aにそれぞれ対応して、排出口231aが2列に並んで形成されている。つまり、倉庫220では、第1実施例の仕切部50に代えて、仕切部50をサイズダウンした二つの仕切部250a,250bが設けられる。
【0047】
また、仕切部250a,250bのそれぞれに対応して、外側メンテナンス空間41から非充填空間251a,251bに入るための非充填空間出入口242a,242bが内壁240に形成されている。これらの第2実施形態および第3実施形態においても、第1実施形態と同様のメンテナンスが可能である。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。例えば、本発明は、非充填空間51の内部には人が出入りできないが、外側メンテナンス空間41が設けられた倉庫としても実現可能である。また、メンテナンス性を考慮せずに、上述したブリッジ抑制効果を奏する種々の構造の少なくとも一部のみを備える貯留倉庫としても実現することもできる。
【符号の説明】
【0049】
10,120,220…貯留倉庫
15…固体物
20,120…外壁
21…充填空間
25,25a,25b,125a,125b…倉庫出入口
30,130,230…床
31,131a,231a…排出口
33…モルタル
34…モルタルの上面
40,240…内壁
41…外側メンテナンス空間
42,42a,42b,242a,242b…非充填空間出入口
50,150a,150b,250a,250b…仕切部
51,151a,151b,251a,251b…非充填空間
52,152a,252a…開口
53…開口の下端
90…地下ピット
91…シュート
92…コンベア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8