(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】ルテインのブルーライトカット能増強剤および、化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20230515BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230515BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20230515BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/55
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2021561318
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042660
(87)【国際公開番号】W WO2021106657
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019216474
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591254958
【氏名又は名称】株式会社タイキ
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 淳
(72)【発明者】
【氏名】戸島 寛人
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-025209(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026970(WO,A1)
【文献】特開平05-025028(JP,A)
【文献】特開2013-177367(JP,A)
【文献】特開2019-099580(JP,A)
【文献】Suiss Vitale, Switzerland,Energising Cream Mask,Mintel GNPD [online],2019年07月,Internet : <URL:https://portal.mintel.com>,ID#6679075, [検索日:2020.12.17], 表題部分及び成分
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)~(c)を含有
し、前記成分(a)~(c)によりαゲル構造体が形成されることを特徴とする、ルテインのブルーライトカット能増強剤。
(a)炭素数12~36のアルキル基を有するアルキルリン酸エステルから選択される1種以上
(b)塩基性アミノ酸および有機塩基から選択される1種以上
(c)水
【請求項2】
下記成分(a)~(d)を含有
し、前記成分(a)~(c)によりαゲル構造体が形成されることを特徴とする、化粧品組成物。
(a)炭素数12~36のアルキル基を有するアルキルリン酸エステルから選択される1種以上
(b)塩基性アミノ酸および有機塩基から選択される1種以上
(c)水
(d)ルテイン
【請求項3】
成分(d)ルテインを、化粧品組成物全量に対して0.0025重量%以上含有することを特徴とする、請求項2に記載の化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテインのブルーライトカット能増強剤や、この増強剤とルテインを含有する化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光線を浴び続けることにより引き起こされる、肌のシミ、シワ、たるみなどを肌の「光老化」といい、肌の老化の原因は、加齢による老化が2割程度であるのに対し、この「光老化」は8割程度を占めるといわれている。肌の「光老化」の主な原因は、太陽光線に含まれる紫外線(UV-A、UV-B)、ブルーライト、近赤外線である。第3の紫外線とも称されるブルーライトは、可視光線の中で最も波長が短い青色光であり、長期的には加齢黄斑変性症の原因の1つとして挙げられている。また、紫外線よりも波長が長いブルーライトは、紫外線に最も近い強いエネルギーを有しているため、紫外線よりも肌の奥へと到達し、メラニンを発生させて、色素沈着を引き起こしシミやくすみの原因になるとされている。このブルーライトは、パソコンやスマートフォンなどのLEDディスプレーやLED照明に多く含まれているため、現代人は、季節に関わらず、毎日、しかも長時間にわたり、ブルーライトを浴び続ける環境におかれている。
【0003】
このような環境において、最近、ブルーライトを遮断する成分を添加した化粧品や、ブルーライトによる影響を低減させる成分を配合した化粧品などが提案されている。例えば、下記特許文献1には、翡翠の粉末がブルーライトを遮断(反射)する効果を有することに基づき、翡翠の粉末を有効成分とする化粧品組成物が提案されている。また、下記特許文献2には、ブルーベリーの1種であるビルベリー抽出物が、ブルーライトの照射により引き起こされる皮膚細胞の生育阻害を抑制する効果を有することに基づき、ビルベリー抽出物を有効成分とする化粧品組成物が提案されている。
しかしながら、これらの化粧品組成物は、十分な効果が得られるとまでは未だいえず、ブルーライトによる肌の「光老化」を十分に抑制または低減させ得る、新たな提案が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-519260号公報
【文献】特開2015-044773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ブルーライトによる肌の「光老化」を抑制または低減できる、新たな化粧品組成物の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有するαゲル構造体が、ルテインが有するブルーライトカット能を増強することを見出し、上記課題を解決したものである。
【0007】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.下記成分(a)~(c)を含有することを特徴とする、ルテインのブルーライトカット能増強剤:
(a)炭素数12~36のアルキル基を有するアルキルリン酸エステルから選択される1種以上
(b)塩基性アミノ酸および有機塩基から選択される1種以上
(c)水。
2.下記成分(a)~(d)を含有することを特徴とする、化粧品組成物:
(a)炭素数12~36のアルキル基を有するアルキルリン酸エステルから選択される1種以上
(b)塩基性アミノ酸および有機塩基から選択される1種以上
(c)水
(d)ルテイン。
3.成分(d)ルテインを、化粧品組成物全量に対して0.0025重量%以上含有することを特徴とする、2.に記載の化粧品組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、特定のアルキルリン酸エステルと特定の塩基を組み合わせることにより得られるαゲル構造体が、ルテインが有するブルーライトカット能を増強するという、新たな知見に基づく発明であり、優れた効果を発揮するものである。
本発明により得られる化粧品組成物は、ルテインの添加量を増量させることなく、ルテインが有するブルーライトカット能を増強し、肌の「光老化」の原因の1つであるブルーライトの肌への影響を低減することができ有用である。
また、本発明により得られる化粧品組成物は、本発明の成分(a)と成分(b)の組み合わせによりαゲル構造体を構築することにより、多量の水を含むことが可能であるほか、従来のαゲル構造体と異なり高級アルコールを使用していないため、べたつきが少なくさっぱりとした感触で使用感の良い化粧品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例の「ブルーライトカット能増強効果の確認試験」における、実施例5A、5Bの化粧品組成物試験検体と比較例5A、5Bの化粧品組成物試験検体それぞれの、波長380~500nmにおけるブルーライト透過率(%T)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ルテインのブルーライトカット能増強剤や、この増強剤とルテインを含有する化粧品組成物に関する。
本発明におけるブルーライトとは、波長が380~500nmの範囲である青色光を意味する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
<ルテイン>
ルテインは、植物色素、キサントフィル、ジヒドロキシカロテノイドであり、抗酸化作用を持つ黄色の天然色素である。マリーゴールドなどの黄色の花弁やほうれん草、にんじん、かぼちゃなどの緑黄色野菜、植物の緑葉に多く含まれており、目の老化を引き起こす活性酸素を抑えたり、波長445nm前後のブルーライトを吸収する能力を有することが公知な化合物である。そのIUPAC名は、β,ε-カロテン-3,3’-ジオールであり、以下に示す化学構造を有する化合物である。
【化1】
【0012】
<成分(a)>
本発明は、炭素数12~36のアルキル基を有するアルキルリン酸エステルから選択される1種以上からなる成分(a)を含有するものである。本発明の成分(a)としては、モノアルキルリン酸エステルであることが好ましく、モノエステル含量が95%以上であることがより好ましい。また、そのアルキル基は、炭素数が12~30のアルキル基が好ましく、炭素数が14~22のアルキル基がより好ましく、炭素数が14~18のアルキル基が特に好ましい。さらに、アルキル基は直鎖状であることが好ましい。
本発明における成分(a)は、例えば、「油化学、第15巻、第11号、1966年、第598~600頁」に記載されている製造方法に準じて、モノアルキルリン酸エステルを合成して得ることができる。
【0013】
<成分(b)>
本発明は、塩基性アミノ酸および有機塩基から選択される1種以上からなる成分(b)を含有するものである。塩基性アミノ酸の具体例としては、例えば、アルギニン、リシン、ヒスチジン、トリプトファン等が挙げられる。有機塩基の具体例としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられる。これらの中でも、塩基性アミノ酸が好ましく、特にアルギニンが好ましい。
【0014】
本発明において、成分(a)および成分(b)の合計量は、ルテインのブルーライトカット能増強剤または化粧品組成物の全量に対して、0.5~99.0重量%の範囲において配合することができる。そのうち、成分(a)は、0.3~85.0重量%の範囲で配合することが好ましく、2.0~35.0重量%の範囲がより好ましい。成分(b)は、0.10~48.0重量%の範囲で配合することが好ましく、0.25~28.5重量%の範囲がより好ましい。さらに、成分(a)に対して成分(b)の配合量は、0.5~1.5当量が好ましい。
本発明の化粧品組成物は、成分(a)と成分(b)の配合量により、粘度の異なる組成物として調製することができ、例えば、10000~50000mPa・s程度の粘度の組成物を調製するためには、成分(a)と成分(b)の合計量が0.5重量%以上であることが好ましい。
【0015】
<成分(c)>
本発明は、水を成分(c)として含有するものである。水は、一般に化粧品に使用されるものであり、具体的には、イオン交換水、蒸留水等の精製水、水道水、天然水、アルカリイオン水等が挙げられる。
【0016】
<αゲル構造体>
本発明の成分(a)は、下記実施例において詳細に説明するが、特定の中和剤である成分(b)により、水中での構造安定性に優れた両親媒性物質である「塩」を形成する。この両親媒性物質である「塩」は、固体結晶状態では水に分散させても変化しないが、温度が上昇するとラメラ層が膨潤しゲル状態へと変化し、αゲル構造体を形成する。このように、αゲル構造体を形成することにより、溶液の粘度が大きく上昇し、安定な高含水構造をとることができる。
ここで、αゲル構造体は、規則的な配列をもち、固体のような感触の特徴的な構造体である。αゲル構造体は、内部に多量の水を保持することができるため、高い閉塞性、保湿性を有する。これまで、高級アルコールと親水性非イオン性界面活性剤を組み合わせてαゲル構造体を形成させ、製剤の機能性の向上や感触改良が多く研究されてきたが、界面活性剤単独で形成させる本発明のαゲル構造体は、高級アルコールを使用していないため、べたつきの少ないさっぱりとした感触が得られる。
具体的には、本発明の成分(a)~(c)を80℃程度に加温して、均一に混合したのち、撹拌下において室温(25℃程度)まで冷却することにより、αゲル構造体を形成させることができる。
本発明の成分(a)~(c)によるαゲル構造体と、ルテインとを組み合わせることにより、ルテインが有するブルーライトを吸収する能力、すなわち、ブルーライトカット能を増強するメカニズムについては、その詳細は不明であるが、本発明の成分(a)~(c)によるαゲル構造体が規則的な配列を有することにより、ルテインがある規則性をもって整列ないし配向することにより、ブルーライトに対する吸収能を増強し得るのではないかと推測している。
【0017】
<その他成分>
本発明のルテインのブルーライトカット能増強剤または化粧品組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧品または皮膚外用剤に用いられる各種の成分、例えば、油分、保湿成分、界面活性剤、増粘剤、安定化剤、色素、香料等を配合することができる。
【0018】
油分としては、化粧品に配合できるものであれば特に制限されず、天然物由来のものでも合成のものでもよく、液体でも固体でもよい。
具体的には、アボカド油、タートル油、トウモロコシ油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、パーシック油、ひまし油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ミンク油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、卵黄油、パーム油、パーム核油、トリイソオクタン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリル、コレステロール脂肪酸エステル、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、月見草油、エノ油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギル油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、馬油、硬化やし油、牛脂、牛脚脂、羊脂、硬化牛脂、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、硬化ひまし油等の油脂;
流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、スクワラン、水添ポリオレフィン(C6~12)等の炭化水素;
ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カボックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングルコール、ポリオキシエチレン水素添加ラノリンアルコールエーテルおよびその誘導体等のロウ;
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸;
ラウリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、アラキルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;
コレステロール、フィトステロール等のステロール類;
ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オクタン酸セチル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアレン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸-2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソプロピル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸-2-ヘキシルデシル、パルミチン酸-2-ヘキシルデシル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸-2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等のエステル油;
金属石鹸、ジメチルポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、揮発性シリコーン、環状シリコーン等のシリコーン類等の高分子シリコーン、環状シリコーン等のシリコーン系物質;
ラベンダー油、ベルガモット果実油、グレープフルーツ果皮油、オレンジ果皮油、レモン果皮油、ローズマリー油等の精油;
等がある。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
保湿成分としては、化粧品に配合できるものであれば特に制限されず、天然物由来のものでも合成のものでもよく、液体でも固体でもよい。具体的には、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、1,2-ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、1,2-ペンタンジオール、トリメチルグリシン、トレハロース、ソルビトール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、キシリトール等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
界面活性剤としては、化粧品に配合できるものであれば特に制限されない。具体的には、モノステアリン酸グリセリル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル又はポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
増粘剤としては、一般的に使用されている各種のものを用いることができる。例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸;微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン、ヒアルロン酸等)等の天然の水溶性高分子、 デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末、塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等の半合成の水溶性高分子、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー;ポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテル・ヘキサメチレンジイソシアネート・ポリエチレングリコール11000共重合体;塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ローカストビーンガム;ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル・アクリル酸ステアリル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体;合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム等の合成の水溶性高分子が挙げられる。
【0022】
安定化剤として、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤、pH緩衝剤等を配合することができる。酸化防止剤としては、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンなどが挙げられる。キレート剤としては、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウム塩などが挙げられる。防腐剤としては、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、フェノキシエタノールなどが挙げられる。pH緩衝剤としては、クエン酸、リン酸、クエン酸塩およびリン酸塩などが挙げられる。
【0023】
本発明のルテインのブルーライトカット能増強剤または化粧品組成物の使用用途は、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ローション、乳液、ゲル、クリーム、ヘアジェルなど種々の製品に応用することが可能である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。
なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0025】
<αゲル構造体形成確認試験1>
(1)試験検体の調製
実施例1A(ルテインあり)
(a)モノセチルリン酸エステル0.5重量部、(b)アルギニン0.3重量部、(d)ルテイン分散液(ルテイン濃度0.05重量%)3.0重量部および(c)精製水を使用して、全体量を100重量部とした。これを、概略80℃程度に加熱撹拌し、均一な溶液となったことを確認後、室温(25℃)まで撹拌しながら冷却して、実施例1Aの試験検体を得た。
実施例1B(ルテインなし)
(a)モノセチルリン酸エステル0.5重量部、(b)アルギニン0.3重量部および(c)精製水を使用して、全体量を100重量部とした。これを、概略80℃程度に加熱撹拌し、均一な溶液となったことを確認後、室温(25℃)まで撹拌しながら冷却して、実施例1Bの試験検体を得た。
比較例1A(成分(b)とは異なる塩基、ルテインあり)
(a)モノセチルリン酸エステル0.5重量部、水酸化カリウム0.08重量部、(d)ルテイン分散液(ルテイン濃度0.05重量%)3.0重量部および(c)精製水を使用して、全体量を100重量部とした。これを、概略80℃程度に加熱撹拌し、均一な溶液となったことを確認後、室温(25℃)まで撹拌しながら冷却して、比較例1Aの試験検体を得た。
比較例1B(成分(b)とは異なる塩基、ルテインなし)
(a)モノセチルリン酸エステル0.5重量部、水酸化カリウム0.08重量部および(c)精製水を使用して、全体量を100重量部とした。これを、概略80℃程度に加熱撹拌し、均一な溶液となったことを確認後、室温(25℃)まで撹拌しながら冷却して、比較例1Bの試験検体を得た。
(2)αゲル構造体の形成を確認する方法
αゲル構造体の形成を確認する方法としては、先行技術文献(例えば、国際公開第2009/016989号の段落[0043]等)に記載されているように、上記試験検体(実施例1A、1B、比較例1A、1B)を、X線散乱測定により確認することができる。
各試験検体を観測し、αゲル構造体の形成を確認できたものを「〇」、確認できなかったものを「×」として、下記表1に各試験検体の組成とともに示した。表1中の数字は、重量部を表す。
【0026】
【0027】
表1に示すとおり、本発明の成分(a)~(c)を含有する実施例1A、1Bの試験検体は、ルテインの配合に関わらずαゲル構造体を形成することが確認された。一方、本発明の成分(b)とは異なる水酸化カリウムを含有する比較例1A、1Bの試験検体は、何れもαゲル構造体を形成しないことが確認された。
【0028】
<αゲル構造体形成確認試験2>
(1)試験検体の調製
上記「αゲル構造体形成確認試験1」と同様にして、試験検体(実施例2A、2B、比較例2A、2B)を下記表2に示した配合で調製した。
(2)αゲル構造体の形成を確認する方法
上記「αゲル構造体形成確認試験1」と同様にして、各試験検体を観測し、αゲル構造体の形成を確認できたものを「〇」、確認できなかったものを「×」として、下記表2に各試験検体の組成とともに示した。表2中の数字は、重量部を表す。
【0029】
【0030】
表2に示すとおり、本発明の成分(a)~(c)を含有する実施例2A、2Bの試験検体は、実施例1A、1Bと比較して成分(a)、(b)を20倍量含有する組成であるが、ルテインの配合に関わらずαゲル構造体を形成することが確認された。一方、比較例2A、2Bの試験検体は、比較例1A、1Bの試験検体と同様、何れもαゲル構造体を形成しないことが確認された。
【0031】
<αゲル構造体形成確認試験3>
(1)試験検体の調製
上記「αゲル構造体形成確認試験1」と同様にして、試験検体(実施例3A、3B、4A、4B、比較例3A、3B、4A、4B)を下記表3に示した配合で調製した。
(2)αゲル構造体の形成を確認する方法
上記「αゲル構造体形成確認試験1」と同様にして、各試験検体を観測し、αゲル構造体の形成を確認できたものを「〇」、確認できなかったものを「×」として、下記表3に各試験検体の組成とともに示した。表3中の数字は、重量部を表す。
【0032】
【0033】
表3に示すとおり、ルテイン配合量を減じた実施例3A、4Aを含む実施例3B、4Bの試験検体もαゲル構造体を形成することが確認された。また、比較例3A、3B、4A、4Bの試験検体は、αゲル構造体を形成しないことを確認した。
【0034】
<αゲル構造体形成確認試験4>
(1)化粧品組成物試験検体の調製
実施例5A
(a)モノセチルリン酸エステル0.5重量部、親油性界面活性剤2.0重量部、油分(高級アルコール、エステル油、炭化水素等)14.0重量部および賦香精油0.1重量部を、概略80℃程度に加熱撹拌し、均一な溶液(I)とした。
(b)アルギニン0.3重量部、(d)ルテイン分散液(ルテイン濃度0.05重量%)3.0重量部、保湿成分13.0重量部、安定化剤(酸化防止剤、キレート剤、防腐剤、pH緩衝剤等)0.6重量部および(c)精製水を使用して、全体量を100重量部とし、これを概略80℃程度に加熱撹拌し、均一な溶液(II)とした。
上記溶液(I)と溶液(II)をホモミキサーで乳化し、室温(25℃)まで撹拌しながら冷却して、実施例5Aの化粧品組成物試験検体を得た。
同様に、化粧品組成物試験検体(実施例5B、6A、6B、比較例5A、5B、6A、6B)を下記表4に示した配合で調製した。
(2)αゲル構造体の形成を確認する方法
上記「αゲル構造体形成確認試験1」と同様にして、各化粧品組成物試験検体を観測し、αゲル構造体の形成を確認できたものを「〇」、確認できなかったものを「×」として、下記表4に化粧品組成物各試験検体の組成とともに示した。表4中の数字は、重量部を表す。
【0035】
【0036】
表4に示すとおり、実施例5A、5B、6A、6Bの化粧品組成物試験検体もαゲル構造体を形成することが確認された。また、比較例5A、5B、6A、6Bの化粧品組成物試験検体は、αゲル構造体を形成しないことを確認した。
【0037】
<ブルーライトカット能増強効果の確認試験>
(1)試験検体の各波長におけるブルーライト透過率の測定方法
実施例1~4、比較例1~4の試験検体を、それぞれ1cm角セルに充填したものを検体とした。また、実施例5、6、比較例5、6の試験検体は、それぞれ専用セルにより20μmの厚さに調整したものを検体とした。
上記検体を、紫外可視赤外分光光度計(V-770DS:日本分光製)、積分球ISN-923を用いて、波長380~500nmにおける透過率(%T)を測定した。測定はそれぞれ3回行い、透過率(%T)は平均値を用いた。
(2)ブルーライトカット能増強率の算出方法
実施例5と比較例5の波長450nmにおける透過率(%T)を例として、ブルーライトカット能増強率の算出方法を説明する。
実施例5A(ルテインあり)の透過率(%T):88.45
実施例5B(ルテインなし)の透過率(%T):89.56
上記結果より、αゲル構造体におけるルテイン添加による波長450nmの透過率(%T)の減少度、すなわち、αゲル構造体におけるルテイン添加による波長450nmのカット能上昇度は、「89.56-88.45=1.11」である。
比較例5A(ルテインあり)の透過率(%T):88.69
比較例5B(ルテインなし)の透過率(%T):89.70
上記結果より、ルテイン添加による波長450nmの透過率(%T)の減少度、すなわち、ルテイン添加による波長450nmのカット能上昇度は、「89.70-88.69=1.01」である。
上記2つの波長450nmのカット能上昇度から、αゲル構造体による波長450nmにおけるブルーライトカット能増強割合は、「1.11÷1.01×100≒109.9%」であることが明らかとなった。
この手法を用いて、実施例1~4の試験検体と実施例5、6の化粧品組成物試験検体の波長380~500nmにおけるブルーライトカット能増強割合を算出し、下記表5にまとめて示す。
また、実施例5A、5Bの化粧品組成物試験検体と比較例5A、5Bの化粧品組成物試験検体それぞれの、波長380~500nmにおけるブルーライト透過率(%T)を示すグラフを
図1に示す。
【0038】
【0039】
表5、
図1に示すとおり、本発明の具体例である実施例1A~4Aの試験検体と実施例5A、6Aの化粧品組成物試験検体は、極めて優れたブルーライトカット能増強効果を発揮することが明らかとなった。
本発明の成分(a)~(c)によるαゲル構造体と、ルテインとを組み合わせることにより、ルテインが有するブルーライトを吸収する能力、すなわち、ブルーライトカット能を増強するメカニズムは、詳細は不明であるものの、本発明の成分(a)~(c)によるαゲル構造体が規則的な配列を有することにより、ルテインがある規則性をもって整列ないし配向することにより、ブルーライトに対する吸収能を増強し得るものと考えている。
さらに、実施例6Aの化粧品組成物試験検体は、特に優れたブルーライトカット能増強効果を発揮する。これは、本発明の成分(a)および成分(b)の合計量を増加させ、界面活性剤や油分等の他の成分と組み合わせることにより、よりブルーライトカット能の優れた規則的なαゲル構造体が形成された結果によるものと考えている。
なお、本発明の成分(a)として、炭素数12、14、18、20、24、28、32、36のアルキル基を有するアルキルリン酸エステルを採用した場合においても、上記実施例に使用した炭素数16のアルキル基を有するモノセチルリン酸エステルと同様に、αゲル構造体が形成され、優れたルテインのブルーライトカット能増強効果が得られることが確認された。
これらの結果より、本発明は、化粧品組成物へ応用した場合に、より優れたブルーライトカット能増強効果が得られ、有用である。