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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/28 20060101AFI20230515BHJP
   E03C 1/14 20060101ALI20230515BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
E03C1/28 Z
E03C1/14 A
E03C1/23 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019085958
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180526
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕史
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-007358(JP,A)
【文献】特開2015-168955(JP,A)
【文献】実開平05-040376(JP,U)
【文献】特開2007-120202(JP,A)
【文献】実開昭53-000669(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体と、
前記槽体内の湯水を排出する排水口と、
前記排水口から連続する排水流路と、
前記排水口を開閉する弁部材から成る排水構造であって、
前記排水流路は、
内部に排水を貯留し、封水を形成する封水部を有する排水トラップと、
前記封水部の上流側に取り付けられ、前記封水部の上流側の前記排水流路内におけるサイホン現象の発生を防止するサイホン発生防止装置とを備え、
前記弁部材は、前記槽体内からの圧力が所定の値を超えた時に開口し、前記槽体内の湯水の内、所定水位以上の湯水を下水側に余剰水として排出する圧力弁を有し、
前記サイホン発生防止装置は、
前記圧力弁から前記封水部までの前記排水流路において、前記排水流路内に空気層を形成することによって前記余剰水によるサイホン現象の発生を防止することを特徴とする排水構造。
【請求項2】
槽体と、
前記槽体内の湯水を排出する排水口と、
前記排水口から連続する排水流路と、
前記排水口を開閉する弁部材から成る排水構造であって、
前記排水流路は、
内部に排水を貯留し、封水を形成する封水部を有する排水トラップと、
前記封水部の上流側に取り付けられ、前記封水部の上流側の前記排水流路内におけるサイホン現象の発生を防止するサイホン発生防止装置とを備え、
前記弁部材は、前記槽体内からの圧力が所定の値を超えた時に開口し、前記槽体内の湯水の内、所定水位以上の湯水を下水側に余剰水として排出する圧力弁を有し、
前記サイホン発生防止装置は、
前記圧力弁から前記封水部までの前記排水流路において、前記排水流路内に渦流を発生させることによって前記余剰水によるサイホン現象の発生を防止することを特徴とする排水構造。
【請求項3】
前記排水構造は
前記封水部内に取り付けられ、前記封水部内におけるサイホン現象の発生を防止するサイホン発生防止装置を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水構造。
【請求項4】
前記圧力弁は、
平時において閉口方向に応力が加えられており、
前記槽体内の湯水から受ける水圧による応力が前記閉口方向への応力を上回った時に開口することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水流路管内が満水になることによって生じるサイホン現象を防止する、サイホン発生防止装置を備えた排水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台や流し台、浴槽等、使用によって排水を生じる槽体を備える排水装置には、当該槽体内部に生じた湯水を下水側へ排出するため、排水流路中に排水トラップが設置されている。排水トラップは、内部に槽体から排出された排水を貯留し、排水流路の一部を当該排水によって満たすことで封水部を形成することで、上記臭気や害虫が屋内へと侵入することを防ぐ逆流防止機能を有している。尚、上記排水トラップ内に貯留され、排水流路を満たす排水を「封水」と呼ぶ。
【0003】
上記排水装置は、槽体から多量の排水が生じた際に、排水流路内が排水で満たされてサイホン現象が発生すると、排水流路内が負圧となり、排水が下流側へと引き込まれる。これにより、排水流路内の排水は勢いよく下流側へ向けて排出されるが、排水トラップ内に貯留されるはずの封水も下流側へ引き込まれていまい、封水の水面が低下する場合がある。この時、封水の水面が排水流路を満たせなくなる程低下すると、下流側と屋内が連通し、排水トラップの逆流防止機能が失われてしまう。
又、上記サイホン現象が発生した際には、排水終了時に槽体の排水口やオーバーフロー排水口から空気が引き込まれ、不快音が発生する。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の排水装置においては、封水部の下流側に吸気弁を設け、外気を排水流路内に吸入することによってサイホン現象を解消する様に構成されている。
【0005】
ところで、近年意匠性や清掃性、衛生面等の理由から、槽体にオーバーフロー排水口を設けない槽体が望まれている。そこで、特許文献2の排水装置は、槽体内からの圧力が所定よりも高くなった時に開口し、槽体内の湯水を下水側に排出する圧力弁を備えることで、槽体にオーバーフロー排水口を設けることなく、余剰水を排出可能となっている。尚、圧力弁は平時において、閉口方向に応力が加えられており、槽体内に湯水を貯留可能となっている。そして、槽体内の水位が所定以上となった際には、水圧による応力が上記閉口方向への応力を上回ることで圧力弁が開口し、余剰水を排出する構造となっている。尚、余剰水の排出によって槽体内の水位が所定以下となり、水圧による応力が上記閉口方向への応力を下回ると、圧力弁が閉口し、再び湯水を貯留可能となる。圧力弁はこのように作動することによって、槽体内の水位を所定の範囲内に収めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-90036号公報
【文献】特開2016-204895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された排水装置は、吸気弁が封水部よりも下流側に配置されていることから、封水部よりも上方、及び封水部内におけるサイホン現象を解消することはできない。従って、封水部よりも上方、及び封水部内におけるサイホン現象に伴う引き込みや不快音については解消することができない。
又、封水部よりも下流側に吸気弁等のサイホン発生防止装置を設ける従来の排水装置は、排水トラップに対してサイホン発生防止装置の取付口を形成する必要があり、排水トラップの形状が限定されてしまう。
【0008】
又、排水装置が上記圧力弁を備える場合に、封水部よりも上方、及び封水部内におけるサイホン現象によって圧力弁の下流側に負圧が生じると、水位が所定以下となったにも関わらず、負圧によって圧力弁が開口したままの状態となってしまう。この時、槽体内の水位が所定よりも低下した状態であっても圧力弁が閉口できず、湯水を貯留することが不可能となる。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、サイホン発生防止装置を備える排水装置の提供、及び当該排水装置が圧力弁を備えた際において、圧力弁の動作の安定化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、槽体と、
前記槽体内の湯水を排出する排水口と、
前記排水口から連続する排水流路と、
前記排水口を開閉する弁部材から成る排水構造であって、
前記排水流路は、
内部に排水を貯留し、封水を形成する封水部を有する排水トラップと、
前記封水部の上流側に取り付けられ、前記封水部の上流側の前記排水流路内におけるサイホン現象の発生を防止するサイホン発生防止装置とを備え、
前記弁部材は、前記槽体内からの圧力が所定の値を超えた時に開口し、前記槽体内の湯水の内、所定水位以上の湯水を下水側に余剰水として排出する圧力弁を有し、
前記サイホン発生防止装置は、
前記圧力弁から前記封水部までの前記排水流路において、前記排水流路内に空気層を形成することによって前記余剰水によるサイホン現象の発生を防止することを特徴とする排水構造である。
【0011】
請求項2に記載の本発明は、槽体と、
前記槽体内の湯水を排出する排水口と、
前記排水口から連続する排水流路と、
前記排水口を開閉する弁部材から成る排水構造であって、
前記排水流路は、
内部に排水を貯留し、封水を形成する封水部を有する排水トラップと、
前記封水部の上流側に取り付けられ、前記封水部の上流側の前記排水流路内におけるサイホン現象の発生を防止するサイホン発生防止装置とを備え、
前記弁部材は、前記槽体内からの圧力が所定の値を超えた時に開口し、前記槽体内の湯水の内、所定水位以上の湯水を下水側に余剰水として排出する圧力弁を有し、
前記サイホン発生防止装置は、
前記圧力弁から前記封水部までの前記排水流路において、前記排水流路内に渦流を発生させることによって前記余剰水によるサイホン現象の発生を防止することを特徴とする排水構造である。
【0012】
請求項3に記載の本発明は、前記排水構造は
前記封水部内に取り付けられ、前記封水部内におけるサイホン現象の発生を防止するサイホン発生防止装置を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水構造である。
【0013】
請求項4に記載の本発明は、前記圧力弁は、
平時において閉口方向に応力が加えられており、
前記槽体内の湯水から受ける水圧による応力が前記閉口方向への応力を上回った時に開口することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の排水構造である。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明によれば、封水部の上流側及び封水部内おけるサイホン現象を防止することにより、封水の引き込み、異音を防ぐことが可能となる。又、排水装置が圧力弁を備える場合において、封水部の上流側及び封水部内おけるサイホン現象に伴う圧力弁の動作不良を防ぎ、動作を安定化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の施工状態を示す断面図である。
図2】サイホン発生防止装置を示す断面図である。
図3】弁部材を示す断面図である。
図4】弁部材の構成を示す分解図である。
図5】(a)圧力弁の閉口状態を示す断面図、(b)開口状態を示す断面図である。
図6】第二実施形態に係るサイホン発生防止装置を示す(a)断面図、(b)(a)のA-A’断面図である。
図7】(a)第三実施形態に係るサイホン発生防止装置を示す断面図、(b)第四実施形態に係るサイホン発生防止装置を示す断面図である。
図8】第五実施形態に係る本発明の施工状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の第一実施形態を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。
【0020】
図1乃至図5に示す、本発明の第一実施形態に係る排水装置は、洗面台S、排水口本体1、サイホン発生防止装置2、排水トラップ3、弁部材5から構成されている。尚、図1においては排水トラップ3内に貯留された封水をハッチングにて示している。
【0021】
洗面台Sは、槽体としての洗面ボウルBと、当該洗面ボウルBを載置する、内部に配管空間を備えたキャビネットCから構成される。
洗面ボウルBは上方が開口された箱状であって、底面には排水口本体1が取り付けられる取付口を備えている。
【0022】
排水口本体1は、内部に排水流路を形成する略円筒形状であって、当該排水流路上端において排水口11を形成する。又、排水口本体1は上端より外側に突出する鍔部と、鍔部の下方において雄螺子を備えている。
上記排水口本体1は洗面ボウルB底面に形成された取付口に挿通された後、洗面ボウルB下面に配置されたナットと螺合され、鍔部とナットにより取付口周縁を挟持することで固定されている。
【0023】
図2に示すように、サイホン発生防止装置2は、排水口本体1の下方であって、排水トラップ3の封水部36よりも上流側、即ち封水部36の水面WLよりも上方に配置された筒状体であり、その内側において、旋回羽21を備えている。
旋回羽21は螺旋状に形成された2枚の羽根体であり、排水流路内を流れる排水に渦流を与えるよう構成されている。ここで、旋回羽21は排水流路の中心には達しておらず、当該中心には渦流によって空気層が形成される構造となっている。尚、旋回羽21の長さや設置数、傾斜角度や巻き数については本実施形態の形状等に限るものではない。
【0024】
排水トラップ3は、管体を略S字状に屈曲させた形状を成す管体であり、第一下り部31、第一屈曲部32、上り部33、第二屈曲部34、第二下り部35より構成されている。
第一下り部31は最も上流側の排水流路であって、上記サイホン発生防止装置2の下端に接続されている。又、第一下り部31はその下端より屈曲し、第一屈曲部32と連続している。
第一屈曲部32は管体を約180°、略U字状に屈曲して形成され、前記第一下り部31と上り部33を繋ぐとともに、底部に清掃口が形成されている。
上り部33は下流側に向けて排水流路が上昇するように延設されており、第一屈曲部32の下流端と第二屈曲部34の上流端を繋いでいる。
第二屈曲部34は管体を約180°、略U字状に屈曲して形成されて、上り部33と第二下り部35を繋いでいる。
第二下り部35は上記第二屈曲部34の下流端より連続し、排水流路を垂下させるとともに、下端において更に下流側の排水流路と接続されている。
【0025】
ここで、上記排水トラップ3は、第一下り部31、第一屈曲部32、上り部33によって、封水を形成する封水部36を構成する。封水部36は、排水トラップ3に対して排水が流入した際に排水を貯留し、当該貯留された排水が排水流路を満たすことで封水を形成する。
【0026】
図3及び図4に示すように、弁部材5は、弁体51、圧力弁52、保持機構7から構成されている。弁体51は略円盤状から成る弁体上部53と、網目状の弁体下部56、弁体上部53を覆う弁蓋57から成り、弁体上部53と弁体下部56の間に後述する圧力弁本体59が配置されている。又、圧力弁52は上記弁体上部53に形成された貫通孔54と、圧力弁本体59から構成されている。
【0027】
弁体上部53は周囲に環状のパッキンが嵌着されており、排水口11を覆うことで当該排水口11を水密的に閉塞する。又、弁体上部53はその中心を上下に貫通する貫通孔54が形成されているとともに、上面に形成された支柱58を介して弁蓋57と接続されている。貫通孔54は下方に圧力弁本体59が配置されているとともに、貫通孔54下面に形成された弁座55に圧力弁本体59が当接することによって開閉可能となっている。
弁体下部56は上端が弁体上部53に接続されているとともに、中央下面に保持機構7が着脱可能に取り付けられている。
弁蓋57は弁体51とほぼ同径であり、弁体51及び圧力弁52を覆い隠すことで意匠面を形成する蓋部材であって、内部に磁石6aが埋設されている。尚、磁石6aは後述する圧力弁本体59内部に埋設された磁石6bと引き合うように配置されている。又、弁蓋57は下面外周において下方に向けて複数本延設された支柱58によって弁体51と連結されている。
圧力弁本体59は断面視略コの字状であって、弁体51内部を上下動自在に配置されており、上端に止水部510を有するとともに、内部に磁石6bが埋設されている。止水部510はゴム等の弾性部材から成るパッキンが嵌着されており、弁体51の貫通孔54下面に形成された弁座55に当接することで貫通孔54を水密的に閉塞する。
【0028】
上記圧力弁本体59と貫通孔54から成る圧力弁52は下流側の排水流路内が大気圧と等しい状態において、磁石6aと磁石6bの磁力によって圧力弁本体59が上昇している。この時、圧力弁本体59は弁座55に止水部510が当接し、貫通孔54を水密に閉塞している。又、圧力弁52は、圧力弁本体59に対して上方から加わる圧力が設定された値を超えた際に開口し、上記排水流路を開放する様に構成されている。
【0029】
保持機構7はケーシング71と、ケーシング71内に配置された弁軸72、回転ギア73、スプリング74より構成されている。
ケーシング71は内側面において、回転ギア73を所定角度回転させる固定ギア下部75と、回転ギア73と噛合する固定ギア上部76が配置されているとともに、外側面には排水中の毛髪等を補足するための目皿が形成されている。
弁軸72はケーシング71の中心に配置されているとともに、ケーシング71の上面を貫通し、上方へ向けて延設されており、その上端に取り付けられたOリングによって、弁体下部56に対して着脱可能に嵌合している。又、弁軸72には回転ギア73が回動可能且つ上下動不能に取り付けられている。
スプリング74はケーシング71底面に配置されており、弁軸72を上方に向けて付勢している。
【0030】
上記保持機構7は弁部材5に対する押動操作に伴い、以下の様に動作することによって弁部材5を昇降させるとともに、当該弁部材5の上昇状態と下降状態を交互に保持する。
まず、排水口11が開口している状態において、回転ギア73は固定ギア上部76とは噛合していない。従って、弁軸72はスプリング74の反発によって上方へと付勢され、弁部材5は上昇状態となっている。この時、回転ギア73は固定ギア上部76よりも上方に位置するとともに、圧力弁本体59に嵌着されたパッキンが排水口本体1から離間しているため、洗面ボウルB内の湯水は排水口11より下流側へと排出される。
上記弁部材5に対し、上方より弁蓋57を押し下げるように押動操作を行うと、弁部材5が下降するとともに、回転ギア73が固定ギア下部75によって所定角度回転する。ここで、使用者が手を離すと、スプリング74の反発によって弁軸72が若干上昇し、ケーシング71の上方に形成された固定ギア上部76と噛合することで、弁部材5の下降状態が保持される。
上記下降状態にある弁部材5に対して使用者が再度押動操作を加えると、再び弁軸72が下降するとともに、回転ギア73が固定ギア下部75によって所定角度回転し、固定ギア上部76との噛合が解除されることで弁部材5が上昇し、排水口11が開放される。
【0031】
上記弁部材5が設置された洗面ボウルBに対して、弁部材5が下降し、排水口11が閉塞されている状態において、所定水位以下の湯水が貯留されている時、磁石6aと磁石6bが引き合う力が圧力弁本体59に加わる水圧よりも強いため、図5(a)に示すように、圧力弁本体59は磁力によって上昇しており、弁座55に止水部510が当接することで、圧力弁52の閉口状態を維持している。従って、使用者は所定水位まで湯水を貯留することができる。
ここで、所定水位以上の湯水が洗面ボウルBに貯留されると、圧力弁52は、水圧により加わる応力が設定された値を超えることによって開口する。即ち、磁石6aと磁石6bが引き合う力よりも圧力弁本体59に加わる水圧が上回るため、圧力弁本体59が磁力に反して押し下げられる。この時、図5(b)に示すように、止水部510が弁座55から離間し、貫通孔54より洗面ボウルB内の余剰水が排出される。尚、当該排出された余剰水は弁体下部56の網目部分を通過し、下水側へと排出される。
上記排出に伴い洗面ボウルB内の水位が低下すると、圧力弁本体59に加わる水圧が徐々に低下する。そして、磁石6aと磁石6bが引き合う力が水圧よりも上回ると、再び圧力弁本体59が上昇する。この時、弁座55に止水部510が当接することによって圧力弁52が閉口することで湯水を貯留可能となる。
【0032】
上記排水装置において、圧力弁52の作動によって余剰水が排出された際、排水が圧力弁52の下方に配置されたサイホン発生防止装置2に達すると、サイホン発生防止装置2は旋回羽21によって流れてきた排水に対して渦流を与え、排水流路の中央に空気層を形成する。上述の通り、サイホン現象は排水流路内が満水となることによって生じることから、渦流によって空気層が形成されている状態において、排水流路中にサイホン現象は発生しない。従って、排水時に排水流路内に負圧が生じることもなく、圧力弁52が負圧によって引き込まれることによる動作不良を防ぐことが可能となる。
【0033】
上記本発明の排水装置は、サイホン発生防止装置2によってサイホン現象の発生を防ぎ、封水の損失や異音の発生を防止することが可能となる。又、サイホン発生防止装置2が排水トラップ3の上流側、即ち封水部36の上流側に取り付けられていることから、封水部36の上流側の排水流路内、及び封水部36内におけるサイホン現象の発生を防止することが可能となる。これにより、封水部36の上流側の排水流路内又は封水部36内におけるサイホン現象に起因する封水の損失や異音等を防ぐことが可能となるとともに、排水装置が圧力弁52を備えている場合において、圧力弁52の作動不良を防ぐことが可能となる。
【0034】
本発明の第一実施形態は以上であるが、本発明の排水装置は上記第一実施形態の形状に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において自由に変更が可能である。例えば、上記第一実施形態において、サイホン発生防止装置2は旋回羽21によって排水に渦流を付与し、空気層を形成していたが、第二実施形態のサイホン発生防止装置2のように、旋回羽を有さない形状であっても良い。
第二実施形態に係るサイホン発生防止装置2は、図6に示すように、偏芯位置にある上流側配管22と下流側配管23が接続部24において接続されており、当該接続部において、上流側配管22から流れる排水が下流側配管23の接線方向に流れることによって排水に渦流を付与し、空気層を形成する構造となっている。
【0035】
又、本発明のサイホン発生防止装置2は、渦流によって空気層を形成するものに限られるものではない。例えば第三実施形態に係るサイホン発生防止装置2は、図7(a)に示すように、下流側に向けて垂設された壁部25を有しており、排水時には壁部25の外側に空気層を形成することによってサイホン現象の発生を防止する構造となっている。
又、図7(b)に示す第四実施形態のように、サイホン発生防止装置2は、壁部25によって排水を排水流路の内側面に向けて排出するよう付勢することで、排水流路の内側に空気層を形成する構造であっても良い。
【0036】
又、圧力弁52が取り付けられた弁部材5は、弁蓋57を直接押動することによって弁部材5が昇降する構造であったが、図8に示す第五実施形態のように、槽体の縁部等に設けられた操作部に操作を加えることによって弁部材5が昇降し、排水口を閉口する排水栓装置であっても良い。
【0037】
本発明の実施形態は以上であるが、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更を加えても良い。例えば、サイホン発生防止装置2が通気弁であり、排水流路内に外気を流入させることによってサイホン現象の発生を防止する構造であっても良い。尚、通気弁をサイホン発生防止装置とした場合には、通気弁より漏水の恐れあることから、第一乃至第五実施形態に係るサイホン発生防止装置の方が好適である。
【0038】
又、各実施形態において、サイホン発生防止装置は封水部の上流側に取り付けられていたが、これに限るものではない。例えば、サイホン発生防止装置が通気弁であって、通気弁から流入された大気が封水部に直接流入する構造である等、サイホン発生防止装置が封水部内に取り付けられていても良い。
【0039】
又、封水部の上流側又は封水部に取り付けられたサイホン発生防止装置に加え、封水部の下流側に別途通気弁等のサイホン発生防止装置を取り付けても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 排水口本体
11 排水口
2 サイホン発生防止装置
21 旋回羽
22 上流側配管
23 下流側配管
24 接続部
25 壁部
3 排水トラップ
31 第一下り部
32 第一屈曲部
33 上り部
34 第二屈曲部
35 第二下り部
36 封水部
5 弁部材
51 弁体
52 圧力弁
53 弁体上部
54 貫通孔
55 弁座
56 弁体下部
57 弁蓋
58 支柱
59 圧力弁本体
510 止水部
6a 磁石
6b 磁石
7 保持機構
71 ケーシング
72 弁軸
73 回転ギア
74 スプリング
75 固定ギア下部
76 固定ギア上部
S 洗面台
B 洗面ボウル
C キャビネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8