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特許7278572跳ね上げコンベヤ装置及び搬送ラインのレイアウト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】跳ね上げコンベヤ装置及び搬送ラインのレイアウト
(51)【国際特許分類】
   B65G 21/14 20060101AFI20230515BHJP
   B65G 13/12 20060101ALI20230515BHJP
   B65G 13/071 20060101ALN20230515BHJP
【FI】
B65G21/14 C
B65G13/12
B65G13/071 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019007325
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020117319
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 朋延
(72)【発明者】
【氏名】横田 圭祐
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147660(JP,A)
【文献】実開昭58-102507(JP,U)
【文献】特開2016-088649(JP,A)
【文献】特開平10-152212(JP,A)
【文献】実開平02-145943(JP,U)
【文献】特開2017-100812(JP,A)
【文献】米国特許第06409011(US,B1)
【文献】特開平07-285629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00-69/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を形成する搬送路成形部を有し、当該搬送路成形部が搬送姿勢と跳ね上げ姿勢をとることが可能な跳ね上げコンベヤ装置において、
当該跳ね上げコンベヤ装置は、一連の搬送ラインの一部を構成し、跳ね上げられて当該搬送ラインに人が横切ることができる通路を開くものであり、
前記搬送路成形部を跳ね上げ方向に付勢する付勢手段と、前記搬送路成形部の姿勢を変更するモータを有し、
前記搬送路成形部は、前記モータの動力によって前記付勢手段の付勢力に抗して搬送姿勢が維持され、
前記モータに対する給電が停止すると、前記付勢手段の付勢力によって前記搬送路成形部が跳ね上げ姿勢に変化することを特徴とする跳ね上げコンベヤ装置。
【請求項2】
搬送路成形部は、揺動中心を中心として揺動するものであり、
搬送路成形部に固定された円弧形状の受動部材と、モータによって回転する駆動部材を有し、前記駆動部材と前記受動部材が係合し、モータの回転によって搬送路成形部が揺動することを特徴とする請求項1に記載の跳ね上げコンベヤ装置。
【請求項3】
受動部材及び駆動部材は互いに係合する歯を有することを特徴とする請求項2に記載の跳ね上げコンベヤ装置。
【請求項4】
受動部材の円弧形状は、60度以上180度以下の範囲に渡っていることを特徴とする請求項2又は3に記載の跳ね上げコンベヤ装置。
【請求項5】
モータに給電して跳ね上げ姿勢から搬送姿勢に変化させ、搬送姿勢に至ると、モータに給電する電流値を低下させて搬送路成形部を搬送姿勢に維持することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の跳ね上げコンベヤ装置。
【請求項6】
バランス錘を有し、当該バランス錘は、搬送路成形部が搬送姿勢に近い姿勢となっている時には搬送路成形部を搬送姿勢に近づける方向にモーメントを発生させ、搬送路成形部が搬送姿勢から遠ざかると、モーメントの方向が変化して搬送路成形部を跳ね上げ姿勢に近づける方向にモーメントを発生させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の跳ね上げコンベヤ装置。
【請求項7】
前記搬送路成形部は、複数の搬送ローラを搬送方向に所定間隔で軸支したローラコンベヤ装置、ベルトコンベヤ装置、チェーンコンベヤ装置のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の跳ね上げコンベヤ装置。
【請求項8】
壁と出入口を有する建屋内に構築される搬送ラインのレイアウトにおいて、内部から出入口に向かう直線経路上に請求項1乃至のいずれかに記載の跳ね上げコンベヤ装置が配置されていることを特徴とする搬送ラインのレイアウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連の搬送ラインの一部を構成し、搬送路の一部を跳ね上げて当該搬送ラインを横切る通路を確保する跳ね上げコンベヤ装置に関するものである。
また本発明は、避難経路を確保することができる搬送ラインのレイアウトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
配送場や集荷場、倉庫等では、建屋内にコンベヤ装置による搬送ラインが構築される場合が多い。
また作業上の都合から、搬送ラインを人が横切って移動したい場合がある。同様に、台車やフォークリフト等の移動式のマテリアルハンドリング機器で搬送ラインを横切りたい場合もある。
この目的を達成するための方策として、搬送ラインの一部に跳ね上げコンベヤ装置を設置する場合がある。跳ね上げコンベヤ装置は、基端側搬送路と、前方側搬送路の間に設置される。
跳ね上げコンベヤ装置は、搬送路を形成する搬送路成形部を有している。跳ね上げコンベヤ装置では、シリンダーやワイヤによって搬送路成形部を揺動させ、搬送路成形部を搬送姿勢と跳ね上げ姿勢にすることができる。
【0003】
ここで搬送姿勢は、搬送路成形部が略水平となって基端側搬送路と前方側搬送路の間を繋ぎ、搬送物を移動させて基端側搬送路から前方側搬送路に受け渡すことができる姿勢である。
跳ね上げ姿勢は、搬送路成形部の前方側を上昇させて縦姿勢とし、基端側搬送路と前方側搬送路の間に隙間を形成する姿勢である。
跳ね上げコンベヤ装置が跳ね上げ姿勢を取ると、基端側搬送路と前方側搬送路の間に隙間ができ、その間を人やフォークリフト等が通過することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-152212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配送場等の建屋には、当然に出入口がある。また通常の出入口以外にも非常用出入口が設置されている。
地震や火災といった非常事態が起きた場合には、建屋内の作業者は、出入口や非常口出入口から脱出する。
しかしながら、大規模な配送場等では、搬送ラインが網の目のごとく張りめぐらされ、通路が迷路状となっている場合がある。
【0006】
また非常時には、停電する場合もある。
停電によって建屋の照明が消灯する場合があり、跳ね上げコンベヤ装置が搬送姿勢であるのか、跳ね上げ姿勢であって横切ることができる状態であるのかが咄嗟に分かりにくい場合がある。
さらに従来技術の跳ね上げコンベヤ装置は、動力によって搬送姿勢から跳ね上げ姿勢に変化させるものであるから、停電状態になると、搬送姿勢から跳ね上げ姿勢に変化させることができない場合もある。
そのため非常時に迅速な脱出が出来なくなる懸念がある。
【0007】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、非常時に避難経路を確保し易い跳ね上げコンベヤ装置及び、搬送ラインのレイアウトを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための態様は、搬送路を形成する搬送路成形部を有し、当該搬送路成形部が搬送姿勢と跳ね上げ姿勢をとることが可能な跳ね上げコンベヤ装置において、前記搬送路成形部を跳ね上げ方向に付勢する付勢手段と、前記搬送路成形部の姿勢を変更するモータを有し、前記搬送路成形部は、前記モータの動力によって前記付勢手段の付勢力に抗して搬送姿勢が維持され、前記モータに対する給電が停止すると、前記付勢手段の付勢力によって前記搬送路成形部が跳ね上げ姿勢に変化することを特徴とする跳ね上げコンベヤ装置である。
上記した課題を解決するための具体的態様は、搬送路を形成する搬送路成形部を有し、当該搬送路成形部が搬送姿勢と跳ね上げ姿勢をとることが可能な跳ね上げコンベヤ装置において、当該跳ね上げコンベヤ装置は、一連の搬送ラインの一部を構成し、跳ね上げられて当該搬送ラインに人が横切ることができる通路を開くものであり、前記搬送路成形部を跳ね上げ方向に付勢する付勢手段と、前記搬送路成形部の姿勢を変更するモータを有し、前記搬送路成形部は、前記モータの動力によって前記付勢手段の付勢力に抗して搬送姿勢が維持され、前記モータに対する給電が停止すると、前記付勢手段の付勢力によって前記搬送路成形部が跳ね上げ姿勢に変化することを特徴とする跳ね上げコンベヤ装置である。
【0009】
本態様の跳ね上げコンベヤ装置では、停電状態となってモータに対する給電が停止すると、搬送路成形部が跳ね上げ姿勢となって搬送ラインを横切る通路が確保される。そのため非常時に避難経路が確保される。
【0010】
上記した態様において、搬送路成形部は、揺動中心を中心として揺動するものであり、搬送路成形部に固定された円弧形状の受動部材と、モータによって回転する駆動部材を有し、前記駆動部材と前記受動部材が係合し、モータの回転によって搬送路成形部が揺動することが望ましい。
【0011】
本態様の跳ね上げコンベヤ装置は、全高を低くすることができる。
【0012】
上記した態様において、受動部材及び駆動部材は互いに係合する歯を有することが望ましい。
【0013】
本態様によると、受動部材と駆動部材の間にすべりが生じない。
【0014】
上記した態様において、受動部材の円弧形状は、60度以上180度以下の範囲に渡っていることが望ましい。
【0015】
上記した態様において、モータに給電して跳ね上げ姿勢から搬送姿勢に変化させ、搬送姿勢に至ると、モータに給電する電流値を低下させて搬送路成形部を搬送姿勢に維持することが望ましい。
【0016】
本態様によると、搬送姿勢を維持する際におけるモータに供給される電流が少ないので、モータの焼損を防止することができる。
【0017】
上記した各態様において、バランス錘を有し、当該バランス錘は、搬送路成形部が搬送姿勢に近い姿勢となっている時には搬送路成形部を搬送姿勢に近づける方向にモーメントを発生させ、搬送路成形部が搬送姿勢から遠ざかると、モーメントの方向が変化して搬送路成形部を跳ね上げ姿勢に近づける方向にモーメントを発生させることが望ましい。
【0018】
本態様によると、搬送路成形部が搬送姿勢に近い姿勢に至った際に、バランス錘がモータの駆動力を補助する方向のモーメントを生じさせ、バランス錘のモーメントとモータの動力の双方によって搬送路成形部を搬送姿勢に至らせ、搬送路成形部を搬送姿勢に維持する。
一方、搬送路成形部が搬送姿勢から遠ざかると、バランス錘が付勢手段の付勢力を補助する方向のモーメントを生じさせ、バランス錘のモーメントと付勢手段の付勢力の双方によって搬送路成形部を跳ね上げ姿勢に至らせ、搬送路成形部を跳ね上げ姿勢に維持する。
上記した各態様において、前記搬送路成形部は、複数の搬送ローラを搬送方向に所定間隔で軸支したローラコンベヤ装置、ベルトコンベヤ装置、チェーンコンベヤ装置のいずれかであることが望ましい。
【0019】
搬送ラインのレイアウトに関する態様は、壁と出入口を有する建屋内に構築される搬送ラインのレイアウトにおいて、内部から出入口に向かう直線経路上に前記したいずれかに記載の跳ね上げコンベヤ装置が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の跳ね上げコンベヤ装置は、通常時に搬送姿勢であったとしても、停電時に跳ね上げ姿勢となるので、非常時に避難経路を確保し易い。また本発明の搬送ラインのレイアウトによると、非常時に避難経路を確保し易い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は本発明の実施形態の跳ね上げコンベヤ装置の正面図であって搬送姿勢にある状態を示し、(b)はその平面図である。
図2図1の跳ね上げコンベヤ装置の正面図であって跳ね上げ姿勢にある状態を示す。
図3図1の跳ね上げコンベヤ装置の揺動機構部分の斜視図である。
図4図1の跳ね上げコンベヤ装置で採用するモータ内蔵ローラの断面図である。
図5図1の跳ね上げコンベヤ装置のモータに供給される電流値と、搬送路成形部の揺動角度との関係を示すグラフである。
図6】(a)は本発明の他の実施形態の跳ね上げコンベヤ装置の正面図であって搬送姿勢にある状態を示し、(b)はその平面図である。
図7図6の跳ね上げコンベヤ装置の正面図であって搬送姿勢と跳ね上げ姿勢の中間姿勢となっている状態を示す。
図8図6の跳ね上げコンベヤ装置の正面図であって跳ね上げ姿勢にある状態を示す。
図9図1の跳ね上げコンベヤ装置が設置された搬送ラインのレイアウトである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
図1図2は、搬送ライン100の一部を示すものであり、中間部に本発明の実施形態の跳ね上げコンベヤ装置1が設置されている。
搬送物は、図1の矢印の方向に搬送されるものと仮定し、説明の便宜上、上流側のコンベヤ装置を基端側搬送路200と称し、下流側のコンベヤ装置を前方側搬送路201と称する。
また跳ね上げコンベヤ装置1は、固定側搬送路10と、跳ね上げ側搬送路(搬送路成形部)20を有している。
【0023】
搬送ライン100の図示された領域は、いずれもローラコンベヤ装置を搭載するものであり、基端側搬送路200、固定側搬送路10、跳ね上げ側搬送路20及び前方側搬送路201は、ローラコンベヤによって構成されている。
【0024】
各搬送路200、10、20、201を構成するローラコンベヤ装置は、全長やフレームのサイズが相違するものの基本構造は同一である。
各ローラコンベヤ装置は、平行に配置された左右の一対のサイドフレーム3、3間に物品を搬送する複数の搬送ローラ5を搬送方向に所定間隔で軸支したものである。搬送ローラ5は、自由に回転する従動ローラと、駆動用モータ(図示しない)を内蔵するモータ内蔵ローラとからなる。本実施形態では、モータ内蔵ローラは1本だけであり、他はすべて従動ローラである。
【0025】
隣接する搬送ローラ5同士は図示しない伝動ベルトで巻回されている。そのため、モータ内蔵ローラの回転力を全ての従動ローラに伝動することができる。
【0026】
前記した様に跳ね上げコンベヤ装置1は、固定側搬送路10と、跳ね上げ側搬送路20を有している。
固定側搬送路10は、跳ね上げコンベヤ装置1自体の固定フレーム28に姿勢変更不能に取り付けられている。固定側搬送路10は、前後の基端側搬送路200、前方側搬送路201と同様、床面に対して、平行に固定されるものであり、姿勢変更することはできない。
これに対して、跳ね上げ側搬送路20は、固定フレーム28の一端に軸止されており、当該軸を揺動中心21として上下に揺動する。
跳ね上げ側搬送路20は、揺動する搬送路を形成するものであり、搬送路成形部として機能する。
【0027】
揺動機構22は、図3の様であり、2本の付勢手段23と、回動機構25によって構成されている。なお作図の関係上、図3に示す跳ね上げコンベヤ装置1は、搬送ローラ5の図示を省略している。
付勢手段23は、ガススプリングであり、シリンダー26内にガスが封入されたものである。付勢手段23は、図3の様にシリンダー26の一端からピストンロッド27が突出している。
付勢手段23は、内部のガスによって、ピストンロッド27が常時伸長する方向に付勢されている。
【0028】
付勢手段23は、一端が固定フレーム28に揺動可能に取り付けられている。また付勢手段23の他端側は、跳ね上げ側搬送路20の長手方向の中間部分に揺動可能に固定されている。
本実施形態では、付勢手段23を2本有し、これらはいずれも固定側搬送路10と跳ね上げ側搬送路20の両脇寄りに部位に取り付けられている。
【0029】
回動機構25は、2個の円弧状歯車(受動部材)30と、モータ内蔵ローラ31によって構成されている。
円弧状歯車(受動部材)30は、扇型の基材に歯が形成されてものであり、歯は、約120度の範囲に設けられている。
歯が形成される角度範囲は、跳ね上げ側搬送路20の揺動角度に関係する。跳ね上げ側搬送路20の揺動角度は、60度以上であることが望ましいから、歯が形成される角度範囲は、60度以上であることが推奨される。
一方、歯が形成される角度範囲が180度を越えると、円弧状歯車30を跳ね上げ側搬送路20の下部に収容することが困難になるので推奨できない。
【0030】
モータ内蔵ローラ31は、図4の様に、ローラ本体32内にモータ33と、減速機35が内蔵されたものであり、モータ33に通電してモータ33が回転することにより、外側のローラ本体32が回転する。
本実施形態で採用するモータ内蔵ローラ31は、ローラ本体32の外周に歯車(駆動部材)36が2個取り付けられている。
【0031】
本実施形態では、2個の円弧状歯車(受動部材)30は、いずれも跳ね上げ側搬送路20の下面に設けられている。
またモータ内蔵ローラ31は固定フレーム28に取り付けられている。そしてモータ内蔵ローラ31の歯車(駆動部材)36は、跳ね上げ側搬送路20側の円弧状歯車30と常時係合している。
【0032】
本実施形態では、跳ね上げコンベヤ装置1は、図1図2の様に、基端側搬送路200と前方側搬送路201の間に設置されている。
前方側搬送路201の後端部には、図1(b)、図2の様にストッパー40がある。
跳ね上げコンベヤ装置1は、図1の様な搬送姿勢と、図2の様な跳ね上げ姿勢をとることができる。
搬送姿勢は、図1に示す姿勢であり、跳ね上げ側搬送路20が水平姿勢となっており、跳ね上げ側搬送路20の先端の高さが、前方側搬送路201の高さと一致し、跳ね上げ側搬送路20の先端の一部が、ストッパー40と当接している。
搬送姿勢の状態では、基端側搬送路200、固定側搬送路10、跳ね上げ側搬送路20及び前方側搬送路201の搬送面が同じ高さに揃い、これらが一連の搬送路を形成する。
【0033】
跳ね上げ姿勢は、図2に示す姿勢であり、跳ね上げ側搬送路20が垂直に近い角度で傾斜姿勢となり、跳ね上げ側搬送路20の先端が前方側搬送路201から離れる。その結果、跳ね上げコンベヤ装置1の固定側搬送路10と、前方側搬送路201の間に大きな隙間が生じ、通路が開く。
【0034】
本実施形態の跳ね上げコンベヤ装置1は、付勢手段23を有し、当該付勢手段23によって跳ね上げ側搬送路20は常時跳ね上げ方向に付勢されている。
即ち付勢手段23は、ピストンロッド27が常時伸長する方向に付勢されており、且つ付勢手段23は、固定フレーム28と跳ね上げ側搬送路20の間に設けられているから、跳ね上げ側搬送路20は常時跳ね上げ姿勢となる様に付勢されている。
そして本実施形態で採用する付勢手段23は、相当に強力であり、付勢手段23だけの力によって、搬送姿勢から跳ね上げ姿勢に変化させることができる。
【0035】
即ち搬送姿勢の跳ね上げコンベヤ装置1を跳ね上げ姿勢に変化させるには、跳ね上げ側搬送路20の重量および、モータ内蔵ローラ31の抵抗に抗するだけのモーメントを与える必要があるが、付勢手段23は、その力を発生することができる。
従って、搬送姿勢の状態でモータ内蔵ローラ31のモータ33に対する給電が停止すると、付勢手段23が発現する付勢力によって跳ね上げ側搬送路20が揺動中心21を中心として揺動し、跳ね上げ姿勢に変化する。
例えば、火災や地震で、停電が発生すると、付勢手段23が発現する付勢力によって跳ね上げ側搬送路20が揺動中心21を中心として揺動し、跳ね上げ姿勢に変化する。
【0036】
跳ね上げ姿勢から搬送姿勢に変化させる場合には、モータ33に給電してモータ内蔵ローラ31を回転し、ローラ本体32に設けられた歯車(駆動部材)36を回転し、当該回転力を係合する円弧状歯車(受動部材)30に伝動して、円弧状歯車30と一体となっている跳ね上げ側搬送路20を降下方向に揺動させる。
【0037】
この時の跳ね上げ側搬送路20の揺動角度とモータ33に供給される電流の関係は、図5の通りである。
即ち図示しないスイッチをオンすることによってモータ33に通電すると、モータ33に突入電流が流れて、一時的に高い電流が供給される。
モータ33が回転すると、電流値が安定し、一定の電流がモータ33に供給される。跳ね上げ側搬送路20の揺動角度は、当初、90度前後であって、垂直に立ち上がっているが、モータ内蔵ローラ31の回転によって次第に水平姿勢に近づいてゆく。
【0038】
そして水平姿勢に至ると、跳ね上げ側搬送路20の先端が、前方側搬送路201のストッパー40と当接し、これ以上の揺動が阻止される。
跳ね上げ側搬送路20の揺動が阻止されることによって、モータ33は強制的に回転が停止されるので、モータ33に流れる電流は急上昇する。
本実施形態では、図示しない制御装置が、モータ33に流れる電流値を監視しており、急激に電流値が上昇すると、供給電流の上限が制限される。
そのためモータ33に流れる電流値が低く押さえられる。ただし、モータ33は、回転はしないものの、通電によってトルクを発生させている。
そしてモータ33が発生する動力が、付勢手段23が発現する付勢力に抗し、跳ね上げ側搬送路20は水平姿勢を維持する。
跳ね上げコンベヤ装置1が搬送姿勢を取る間、モータ33に通電され続けるが、モータ33に流れる電流は僅かであるから、モータ33が焼損することはない。
【0039】
停電が発生すると、図5の様に、モータ33に供給される電流が無くなる。その場合には、モータ33が発生する動力が消失し、力のバランスとして付勢手段23が発現する付勢力が勝り、跳ね上げ側搬送路20は立ち姿勢に変化して跳ね上げ姿勢となる。
その結果、固定側搬送路10と、前方側搬送路201の間に大きな隙間が生じ、通路が開く。
【0040】
上記した実施形態の跳ね上げコンベヤ装置1は、モータ33の回転力と、付勢手段23の付勢力とのバランスによって、跳ね上げ側搬送路20の姿勢を変化させるものであるが、これにバランス錘50を加え、バランス錘50が発生するモーメントによってモータ33の回転力と、付勢手段23の付勢力を補助してもよい。
図6図7図8に示す跳ね上げコンベヤ装置51は、前記した図1の跳ね上げコンベヤ装置1にバランス錘50とストッパ52を追加したものである。
他の構成については、図1に示す跳ね上げコンベヤ装置51と同一であるから、重複した説明を省略する。
【0041】
跳ね上げコンベヤ装置51では、跳ね上げ側搬送路20の左右のフレーム53にそれぞれアーム55が取り付けられている。アーム55は、主アーム部56と、主アーム部56の先端側にあって主アーム部56に対して垂直方向に伸びる副アーム部57によって構成されている。そして当該副アーム部57の先端側にバランス錘50が取り付けられている。
アーム55は、跳ね上げ側搬送路20のフレーム53に対して、主アーム部56が傾斜する姿勢で固定されている。
【0042】
主アーム部56はフレーム53の長手方向の中間部に固定されており、主アーム部56の自由端側は、揺動中心21側に向かってのびている。
また副アーム部57は、搬送姿勢を基準として、跳ね上げ側搬送路20に対して上方にのびている。
従ってバランス錘50は、搬送姿勢を基準として、水平方向には揺動中心21よりも跳ね上げ側搬送路20の自由端側の位置にある。また高さ方向には、跳ね上げ側搬送路20よりも上の位置にある。
【0043】
この様にバランス錘50は、揺動中心21を通過する垂線60に対して、水平方向にも高さ方向にもオフセットした位置にある。そのため、バランス錘50が発生させるモーメントは、跳ね上げ側搬送路20の姿勢によって方向が変わる。
例えば図6の様に、跳ね上げ側搬送路20が搬送姿勢である場合には、バランス錘50は、揺動中心21を通過する垂線60に対して跳ね上げ側搬送路20の自由端側にある。そのためバランス錘50は、跳ね上げ側搬送路20が時計回りに揺動する方向のモーメントを生じさせる。即ちバランス錘50は、跳ね上げ側搬送路20が搬送姿勢を維持する方向のモーメントを発生する。
【0044】
一方、跳ね上げ側搬送路20が図8の様な跳ね上げ姿勢をとる場合は、バランス錘50は、揺動中心21を通過する垂線60に対して跳ね上げ側搬送路20の自由端に対して反対側にある。そのためバランス錘50は、跳ね上げ側搬送路20が反時計回りに揺動する方向のモーメントを生じさせる。なお跳ね上げ姿勢においては、跳ね上げ側搬送路20のフレーム53がストッパ52と当接している。
そのためバランス錘50は、跳ね上げ側搬送路20が跳ね上げ姿勢を維持する方向のモーメントを発生する。
【0045】
跳ね上げ姿勢から搬送姿勢に至る間の状態、及び搬送姿勢から跳ね上げ姿勢に至る間の状態を観察すると、その途中でモーメントの方向が変化する。
即ち図7に示す様に、跳ね上げ側搬送路20が傾斜姿勢となったとき、バランス錘50は、揺動中心21を通過する垂線60の位置となり、中立状態となる。
従って跳ね上げ側搬送路20が図7に示す傾斜角度よりも緩傾斜となって、跳ね上げ側搬送路(搬送路成形部)20が搬送姿勢に近い姿勢となれば、バランス錘50が跳ね上げ側搬送路20を搬送姿勢に近づける方向にモーメントを発生させる。その結果、モータ33の回転力に加えてバランス錘50のモーメントにより、跳ね上げ側搬送路20を搬送姿勢に近づけ、さらに搬送姿勢に維持する。
【0046】
逆に、跳ね上げ側搬送路20が図7に示す傾斜角度よりも急傾斜となって、跳ね上げ側搬送路(搬送路成形部)20が搬送姿勢から遠ざかると、バランス錘50が跳ね上げ側搬送路20を跳ね上げ姿勢に近づける方向にモーメントを発生させる。
その結果、付勢手段23が発現する付勢力にに加えてバランス錘50のモーメントにより、跳ね上げ側搬送路20を跳ね上げ姿勢に近づけ、さらに跳ね上げ姿勢に維持する。
【0047】
跳ね上げコンベヤ装置1、51は、一連の搬送ラインの一部を構成するものであるが、その要所要所に設けられることが望ましい。
図9は、跳ね上げコンベヤ装置1を要所に設置した搬送ライン300のレイアウトの一例である。
搬送ライン300を設置する建屋310には、図9の様に非常口出入口A、B、Cがある。
搬送ライン300は、複雑なループを構成しており、搬送ライン300に囲まれた島状部301、302、303がある。
本実施形態では、島状部301、302、303から非常口出入口A、Bに至るまでに、複数の搬送路を越える必要がある箇所がある。
本実施形態では、この様な場合には、跳ね上げコンベヤ装置1を非常口出入口A、Bに向かって直線的に配置している。また非常口出入口A、Cの正面に面する場所には、跳ね上げコンベヤ装置1が設置されている。
この様なレイアウトによると、停電によって通常の照明が消灯しても、非常口出入口を示す非常灯に向かって進めば、避難経路が繋がることとなる。
【0048】
以上説明した実施形態では、制御装置で、モータ33に流れる電流値を監視し、電流値の上昇によって跳ね上げ側搬送路20が水平姿勢に至ったことを検知したが、本発明は、この構成に限定されるものではなく、例えば、リミットスイッチや光電センサ等のセンサによって、跳ね上げ側搬送路20が水平姿勢に至ったことを検知してもよい。
またモータの回転数を監視し、回転数の積算値によって跳ね上げ側搬送路20の角度を検知してもよい。
【0049】
以上説明した実施形態では、一台の跳ね上げコンベヤ装置1等によって、搬送ラインを横切る通路を形成させたが、2台の跳ね上げコンベヤ装置1を対向して設置し、各跳ね上げコンベヤ装置1の跳ね上げ側搬送路20を揺動して、広い通路を確保してもよい。
【0050】
以上説明した実施形態では、跳ね上げコンベヤ装置1、51によって横切る通路を確保したが、例えば、防火シャッタの下に跳ね上げコンベヤ装置1等を設置し、シャッタが降下する領域を確保してもよい。
即ち防火シャッタの真下に跳ね上げ側搬送路20を配置する。防火シャッタは常時開いているが、火災が発生すると、類焼を防ぐために降下される。
この構成によると、火災が発生して停電になると、跳ね上げ側搬送路20が上昇して隙間が生じ、当該隙間に防火シャッタを降ろすことができる。
【0051】
跳ね上げ側搬送路20の長さは任意であり、必要に応じた長さに設計される。また跳ね上げ側搬送路20の長さを変更できるような構成としてもよい。
また跳ね上げ側搬送路20の昇降速度を変更できる構成とすることも推奨される。
【0052】
上記した実施形態では、付勢手段としてガススプリングを採用したが、コイルスプリングやゼンマイの様な他のスプリングを付勢手段として活用することもできる。
【0053】
上記した実施形態では、跳ね上げコンベヤ装置1の固定側搬送路10及び跳ね上げ側搬送路20の例として、ローラコンベヤをあげたが、ベルトコンベヤやチェーンコンベヤ等の他のコンベヤ装置であってもよい。また例えば跳ね上げ側搬送路20は、単に空転ローラ等が並べられたものであって動力を有しないものであってもよい。
【0054】
上記した実施形態の跳ね上げコンベヤ装置1では、駆動部材36と受動部材30は、一対の歯車であり、両者は滑ることなく係合するものである。
しかしながら、本発明の跳ね上げコンベヤ装置は、搬送姿勢の際にモータに通電するものであるから、駆動部材36と受動部材30の間で滑りがあるものであってもよい。
例えば、摩擦車を駆動部材36として採用してもよい。跳ね上げ側搬送路20が何らかの理由によって傾斜方向に移動しても、搬送姿勢の際にモータに通電されているから、駆動部材36が回転して跳ね上げ側搬送路20を水平姿勢に戻すこととなる。
【0055】
上記した実施形態の跳ね上げコンベヤ装置1では、モータ33に対する給電が停止すると、跳ね上げ姿勢に変化する。また前記した様に図示しないスイッチを操作してモータ33に通電し、跳ね上げ姿勢から搬送姿勢に変化させることができる。勿論、スイッチを操作することによってモータ33を逆回転し、搬送姿勢から跳ね上げ姿勢に変化させることもできる。
さらに火災や地震の発生に連動して跳ね上げ姿勢に変化させてもよい。
例えば、火災報知機が火災を検知すれば、停電に至る前に、モータ33を跳ね上げ姿勢に変化する方向に回転し、搬送姿勢から跳ね上げ姿勢に変化させることが推奨される。同様に地震検知機が地震を検知した場合に、停電に至る前に、モータ33を跳ね上げ姿勢に変化する方向に回転し、跳ね上げ姿勢に変化させてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、51 跳ね上げコンベヤ装置
10 固定側搬送路
20 跳ね上げ側搬送路(搬送路成形部)
22 揺動機構
23 付勢手段
25 回動機構
30 円弧状歯車(受動部材)
31 モータ内蔵ローラ
33 モータ
36 歯車(駆動部材)
100 搬送ライン
200 基端側搬送路
201 前方側搬送路
310 建屋
A、B、C 非常口出入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9