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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】超伝導ケーブル及びその敷設方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/34 20060101AFI20230515BHJP
   H01B 12/06 20060101ALI20230515BHJP
   H02G 3/36 20060101ALI20230515BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20230515BHJP
   H10N 60/81 20230101ALI20230515BHJP
【FI】
H02G15/34 ZAA
H01B12/06
H02G3/36
H02G1/06
H10N60/81
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019040589
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2019162022
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018041176
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(72)【発明者】
【氏名】山口 作太郎
(72)【発明者】
【氏名】神田 昌枝
(72)【発明者】
【氏名】小島 孝之
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157084(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/34
H01B 12/06
H02G 3/36
H02G 1/06
H10N 60/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ線材を複数段積み重ねた積層体構造の超伝導ケーブルを曲折する場合、前記曲折する箇所の直前で前記超伝導ケーブルに撚り加工を行う、超伝導ケーブル敷設方法。
【請求項2】
前記超伝導ケーブルは、テープ線材の積層面に平行な方向と他の方向で曲げ容易性に異方性を有し、曲げ難い向きに前記超伝導ケーブルを曲げる場合、その直前で、前記超伝導ケーブルに撚り加工を行い、次に撚る場合に、逆方向に撚る、請求項1記載の超伝導ケーブル敷設方法。
【請求項3】
前記超伝導ケーブルに直線部を、内管と前記内管を囲む外管を備え、その間を真空とする直管の断熱二重管で収容し、
前記断熱二重管の直管端部に接続するベローズ管にて、前記超伝導ケーブルの曲折部を収容する、請求項1又は2記載の超伝導ケーブル敷設方法。
【請求項4】
前記外管はリチウム・マグネシウム合金を含み、
前記内管は、ステンレス管又はリチウム・マグネシウム合金を含む、請求項3記載の超伝導ケーブル敷設方法。
【請求項5】
前記外管の外表面を、電気絶縁物で覆う、請求項4記載の超伝導ケーブル敷設方法。
【請求項6】
前記内管同士をステンレスのOリングで接続する、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の超伝導ケーブル敷設方法。
【請求項7】
燃料電池を電源として用い、常温側の電極とテープ線材を電流リードで接続し、
前記超伝導ケーブルを液体水素又は液体窒素で冷却する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超伝導ケーブル敷設方法。
【請求項8】
テープ線材を複数段積み重ねた積層導体を含む超伝導ケーブルであって、
前記超伝導ケーブルを曲折する場合、前記曲折する箇所の直前で前記超伝導ケーブルが撚られてなる超伝導ケーブル装置。
【請求項9】
前記超伝導ケーブルの直線部を、内管と前記内管を囲む外管を備え、その間を真空とする直管の断熱二重管で収容し、
前記断熱二重管の直管端部に接続するベローズ管にて、前記超伝導ケーブルの曲折部を収容する、請求項8記載の超伝導ケーブル装置。
【請求項10】
積層されたテープ線材に、常温部から低温部に接続する導体素線である電流リードを電気絶縁して、それぞれの前記テープ線材に接続し、
更に、前記テープ線材の電流が各層毎に逆向きになるように接続する、請求項8又は9記載の超伝導ケーブル装置。
【請求項11】
電流リードには常温側に熱電半導体が取り付けられていて、ペルチェ熱が常温側から低温側に運ぶように構成した、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の超伝導ケーブル装置。
【請求項12】
超伝導ケーブルを冷却する冷媒に熱が入ることによってガス化した低温ガスを利用して燃料電池の電力変換器等の発熱部の冷却や温度制御を行う、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の超伝導ケーブル装置。
【請求項13】
断熱二重管の内管を構成するステンレス管は部分的にベローズ管(部)を用いて、熱収縮を吸収するようにする、請求項8乃至12のいずれか1項に記載の超伝導ケーブル装置。
【請求項14】
常温の電源部に一端が接続される電流リードとテープ線材との接続部において、複数のテープ線材を互いに電気的に絶縁して並列に配置し多重化してなる超伝導ケーブル装置。
【請求項15】
テープ線材を複数段積み重ねた積層導体ケーブルの両側側面に前記積層導体ケーブルの長手方向に沿って強磁性体を備えた、超伝導ケーブル装置。
【請求項16】
少なくとも端部の電流リードは、前記電流リードの抵抗値が、他の電流リードの抵抗値から異なる値となるように設定されている、請求項14又は15に記載の超伝導ケーブル装置。
【請求項17】
テープ線材を複数段積み重ねた積層導体を含む超伝導ケーブルであって、前記超伝導ケーブルを曲折する場合、前記曲折する箇所の直前で前記超伝導ケーブルが撚られてなる超伝導ケーブルと、
外管と内管の間の空間が真空気密される構造の断熱二重管と、
を備え、
前記超伝導ケーブルは、前記断熱二重管の前記内管内に配設され、
前記断熱二重管の前記内管に供給する冷媒の量を調節する冷媒バッファタンクと、
常温の第1の電源端子に一端が接続され他端が前記冷媒バッファタンク内にまで延在された第1の電流リードと、をさらに備え、
前記冷媒バッファタンクは前記断熱二重管の前記内管と連通し、
前記超伝導ケーブルの一側端部は、前記断熱二重管の前記内管から前記冷媒バッファタンク内まで延在され、前記冷媒バッファタンク内において前記第1の電流リードの他端と接続され、
前記断熱二重管の前記内管内において前記超伝導ケーブルが前記冷媒に含侵された状態に保つように構成された、超伝導ケーブル装置。
【請求項18】
前記冷媒バッファタンク内での前記冷媒の液面の高さを検出し、前記冷媒の液面の高さを一定に保つように前記冷媒バッファタンク内の圧を制御する手段を備えた請求項17に記載の超伝導ケーブル装置。
【請求項19】
前記断熱二重管の前記内管内に、前記内管内での前記冷媒の流れや移動を抑制する少なくとも1つの部材を備えた請求項17又は18に記載の超伝導ケーブル装置。
【請求項20】
前記冷媒バッファタンク内に、前記冷媒バッファタンク内での前記冷媒の移動を抑制する少なくとも1つの部材を備えた請求項17乃至19のいずれか1項に記載の超伝導ケーブル装置。
【請求項21】
前記断熱二重管の前記内管と連通し前記内管に供給する前記冷媒の量を調節する第2の冷媒バッファタンクと、
常温の第2の電源端子に一端が接続され他端が前記第2の冷媒バッファタンク内にまで延在された第2の電流リードと、をさらに備え、
前記断熱二重管の前記内管に配設された前記超伝導ケーブルは、前記第2の冷媒バッファタンク内まで延在される接続部を有し、前記接続部は、前記第2の冷媒バッファタンク内において、前記第2の電流リードの他端と接続される、請求項17記載の超伝導ケーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超伝導ケーブル及びその敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1(A)に超伝導ケーブルの外観、図1(B)に断面を示す。例えば10-30本のテープ線材が断面を取り巻くように配置される。これによって、超伝導ケーブル1の電流容量を高くしている。超伝導ケーブルを用いた直流送電及び交流送電システムが開発されている。超伝導ケーブル1は、中心部に銅フォーマー11が利用されている。このため、重量が嵩む。また、高電圧での利用が想定されているので、電気絶縁層12が厚い。このため、重量が重くなる。また高電圧は、航空機用として高すぎる電圧である。なお、この構造は送電用としては、現状で交流ケーブル及び直流ケーブルで共通である。なお、図1(A)等複数の超伝導体層が同心上に複合され電流の往路と復路を同心上に有する積層型超伝導ケーブルについては、特許文献1、2等が参照される。
低電圧でケーブル長が長くない場合(例えば、200m以内)では、積層導体(Stack conductor)の利用が想定されている。図2(A)は、非特許文献1のFigure 2.1から引用したものである。積層導体では、図2(A)に断面を模式的に示すように、テープ線材(平板)を複数層積み重ね、半田接合したものである。また、複数のテープ線材に流れる電流の向きは同じであり、同一電極に接続される。このため、テープ間は電気絶縁が不要である。そして、非特許文献1に記載されるように、ケーブル長さ方向に一定のピッチで撚ってある。これによってどちらの方向にも曲げることができる。
【0003】
超伝導線材の時定数τは極めて長い。したがって、航空機が使うような時間(1時間から数時間)では、交流と同じ振る舞いをする。具体的には、導体が一つの金属ブロックで構成されている場合、複数の集合線材で導体を構成した場合において、表皮効果によって導体に流れる電流が同じ方向の時、断面には、電流は一様には流れない。図2(B)に、電流密度分布の等高線図を示す(図2(B)は、Heinz Knoepfel, "Pulsed High Magnetic Fields", North-Holland, 1970のFigure 3.7 を引用したものである。Figure 3.7 :Isomagnetic Jines H/ H0 = 0.1, 0.2, . . ., 0.9 at the time k0t2/(a2+4a2) = 0.08 for a rectangular conductor of sides 2a, a, during decay of an initial field H 0 (from ref. 3.1))。なお、図2(B)は、磁場分布の等高線図である。なお、この等高線図は、導体を、撚り線にしてもほぼ変わらない。ケーブル導体としては、超伝導状態で流せる電流が大きく減少する。更に、一定ピッチで撚ると、中心部のテープ線材長と端部のテープ線材長が異なる。製造時は揃えることになるが、低温に冷却すると収縮長が異なる。このため、端部で常温部と接続するための電流リードとの接続部に、熱収縮を吸収するための構造を実装する必要がある。その結果、構造が複雑となる。
【0004】
また、一本のテープ線材を撚ると、端部には、引っ張り応力が生じる。この引っ張り応力は、臨界電流を下げる。このため、可能なかぎり撚り構造は少ない方が良い。超伝導テープ線材に流れる電流を均一化するために、例えばAirbus社ではRoebel Conductorの開発を行っている。図3にその形状を示す(非特許文献2:https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1406/1406.4244.pdfのFigure.3(Figure 3. Schematic illustration of a Roebel bar made from coated conductor tapes.Two transversal cross-sections at different positions are also shown.)から引用)。この導体構造は、1914年に発明され、交流発電機の断面積が大きな導体に断面内に一様に電流を流すために行われた。原理は導体断面内をテープ線材が転置(Transpose)することによって均一化を図っている。転置とは、電流が流れる方向に沿って導体の断面位置を変えることであり、図3のように構成する。図3では、断面位置をテープ線材が変わっている様子が分かりやすくするため色を変えている。
【0005】
なお、この導体もケーブル導体として曲げることを考えると、撚る必要がある。ケーブル全体にわたり一定のピッチの撚り構造が想定されている超伝導テープ線材は幅が一定として製作される。これをRoebel Conductorにするには、半分程度の幅に切り出す。図4は、その状況を写真に示している(非特許文献2:https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1406/1406.4244.pdfのFigure .8(Figure 8. Multi-stacking of strands: a 3-fold stack of punched CC tapes and 3 different Roebel cables with 4 mm width are shown. The upper cable consists of 14 single tapes, whereas the middle and the lower cables consist of 13 3-fold stacks and 10 5-fold stacks, respectively.)から引用)。
【0006】
超伝導テープ線材の幅が狭まる。このため、元の超伝導テープ線材の臨界電流に対して切り出した後の臨界電流は低下する。その結果、ケーブルとしての定格電流も下がり、更に加工コストは上乗せされる問題がある。
【0007】
また、ケーブル長は線材を切り出したピッチに比べて十分長くする必要がある。
【0008】
さらに、現状では切り出す加工方法等によって、テープ線材中の超伝導層が基板から剥がれる問題が生じている。図4に見られるように、同じ電極に接続するため、また、構造が複雑になるため、層間で電気絶縁は行われていない。更に、この構造は、冶金的方向で作られるようなBi1123線材が利用できない。
【0009】
航空機等の制御系は、油圧、空気圧、電気の3系統を有する。近年、機体を中心に運航性能(燃費)、整備性、安全性の向上から航空機の電気化(MEA:More Electric Aircraft)が進んでいる。超伝導システムを航空機に搭載する計画もある。航空機ではアースが取れない、空気圧が低い、したがって高電圧が使えない。このため、大電流低電圧通電が必要となり、銅ケーブルに代わる軽量で大電流の新しいケーブルが求められ、超伝導技術の適用の検討が始まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2011/043376号
【文献】特開2001-35272号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】Berger, A.D., "Stability of Superconducting Cables with Twisted Stacked YBCO Coated Conductor", PSFC/RR-11-15, Feb. 2012, Plasma Science and Fusion Centet, MIT
【文献】Roebel cables from REBCO coated conductors: a one-century-old concept for the superconductivity of the future Wilfried Goldacker1, Francesco Grilli1, Enric Pardo2, Anna Kario1, Sonja I. Schlachter1, Michal Vojenciak2 <インターネット検索:2018年2月1日:URL:https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1406/1406.4244.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、テープ線材を複数段積み重ねた積層導体構造の超伝導ケーブル等の曲折設置を容易化する方法を提供することにある。また、本発明の目的は、テープ線材を転置(Transpose)することなく交流及び直流電流を複数のテープ線材に均一に流すような導体を提供し、更に冷媒が液体水素である場合には必要に応じて常温側に設置する電源から熱を低温側に電流リードを通じて供給し、水素ガス発生を促進する装置を提供することにある。
本発明の目的は、航空機等の移動体に搭載して好適な超伝導ケーブル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、テープ線材を複数段積み重ねた積層導体構造の超伝導ケーブルを曲げる場合、その直前で前記超伝導ケーブルに撚り加工を行う方法が提供される。また、線材を転置する事なく均一にテープ線材に流すために常温部と接続する電流リード素線をそれぞれの線材に電気的に絶縁して接続し、+、-の極性を相互に入れ子状に接続する構造によって実現し、電流リード部に熱電半導体を導入し、此に流れる電流によって常温部から低温部に熱を輸送するペルチェ効果を利用する方法が提供される。
【0014】
本発明によれば、テープ線材を複数段積み重ねた積層導体を含む超伝導ケーブルであって、前記超伝導ケーブルを曲折する場合、前記曲折箇所の直前で前記超伝導ケーブルが撚られてなる超伝導ケーブルが提供される。また、線材を転置する事なく均一にテープ線材に流すために常温部と接続する電流リード素線をそれぞれの線材に電気的に絶縁して接続し、+、-の極性を相互に入れ子状に接続する構造によって実現し、電流リード部に熱電半導体を導入し、此に流れる電流によって常温部から低温部に熱を輸送するペルチェ効果を利用する方法が提供される。
【0015】
本発明の別の形態によれば、常温の電源部に一端が接続される電流リードとテープ線材との接続部において、複数のテープ線材を互いに電気的に絶縁して並列に配置し多重化してなる超伝導ケーブル装置が提供される。テープ線材を複数段積み重ねた積層導体ケーブルの両側側面に前記積層導体ケーブルの長手方向に沿って強磁性体を備えた構成としてもよい。少なくとも端部の電流リードは、前記電流リードの抵抗値が、他の電流リードの抵抗値から異なる値となるように設定された構成としてもよい。
本発明の別の形態によれば、外管と内管の間の空間が真空気密される構造の断熱二重管と、前記断熱二重管の前記内管内に配設される超伝導ケーブルと、前記断熱二重管の前記内管に供給する冷媒量を調節する冷媒バッファタンクと、を備え、前記断熱二重管の前記内管内において前記超伝導ケーブルが前記冷媒に含侵された状態に保つ超伝導ケーブル装置が提供される。前記冷媒バッファタンク内での前記冷媒の液面の高さを一定に保つように、前記冷媒バッファタンク内での前記冷媒への加圧を制御する制御装置を備えた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、テープ線材を複数段積み重ねた積層導体構造の超伝導ケーブル等の曲折設置を容易化する。
また、本発明によれば、線材を転置する事なく均一にテープ線材に流すために常温部と接続する電流リード素線をそれぞれの線材に電気的に絶縁して接続し、+、-の極性を相互に入れ子状に接続する構造によって実現しているため、テープ線材を転置(Transpose)することなく交流及び直流電流を複数のテープ線材に均一に流す導体を提供することができる。また、本発明によれば、電流リード部に熱電半導体を導入し、此に流れる電流によって常温部から低温部に熱を輸送するペルチェ効果を利用可能としている。
本発明によれば、航空機等の移動体に搭載して好適な超伝導ケーブル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)、(B)は送配電に用いられる一般的な超伝導ケーブルの構成を説明する図である。
図2】(A)は積層体構成を説明する図であり、断面構造を示している。(B)は積層導体に同じ方向に電流を流したときの磁場分布の等高線を示す図である。
図3】超伝導テープ線材に流れる電流を説明する図である。
図4】積層導体超伝導テープ線材を説明する図である。
図5】実施形態を説明する図である。
図6】実施形態を説明する図である。冷媒に液体水素を利用して、蒸発した水素ガスを燃料電池の燃料にする構造を示している。
図7】実施形態を説明する図である。積層導体の構成によって、曲がりやすい方向と曲げにくい方向を示している。
図8】(A)、(B)、(C)は実施形態を説明する図である。
図9】(A)、(B)は実施形態を説明する図である。
図10】実施形態を説明する図である。断熱二重管構造を示している。
図11】実施形態を説明する図である。断熱二重管の模式構造図である。
図12】実施形態を説明する図である。断熱二重管の断面構成図の一例である。
図13】実施形態を説明する図である。
図14】実施形態(図5)の変形例を説明する図である。
図15】実施形態の変形例を説明する図である。
図16】実施形態(図5)の変形例を説明する図である。
図17】実施形態(図6)の変形例を説明する図である。
図18】実施形態(図6)の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について説明する。図5は、本発明の一実施形態を説明する図である。電気絶縁された超伝導テープ線材と電流リードの素線の接続方法が例示されている。積層した超伝導テープ線材(HTS(high-temperature superconductor)テープ線材)100にそれぞれ逆方向に電流を流すようにするために、電源102の二つの電極103、104には、電流リード105を介して、それぞれ交互に接続する。このため、超伝導テープ線材100と、超伝導テープ線材100に接続される電流リード105の素線は、それぞれ電気絶縁されている。図5では、電源102は直流出力であるが、交流電源でも同様に接続する(但し、この場合、電極103、104において、熱電半導体が除かれる場合もある)。図5には、電源102と超伝導ケーブルを構成する超伝導テープ線材100の接続が例示されているが、負荷に接続するときに、負荷が常温で運転される場合にも、電流リード105と負荷の電極との接続は、電源102と電流リード105と同様な接続構造としてもよい。このような構成によって、直流及び交流を流しても超伝導テープ線材には均一な電流が流れる。超伝導ケーブルは、超伝導テープ線材100を、複数段積層した積層導体超伝導ケーブルとして構成されてもよい。更に、電源は交流電源でもよい。実際、現在電力を多用する航空機の場合には商用周波数より高い周波数の電源が複数搭載されている。但し、交流電源では熱電半導体は必ずしも熱を低温側に運ばないので、外す場合がある。
【0019】
図5において、常温に設置される電源102の電極103、104には、熱電半導体(ペルチェ素子)が取り付けてあり、電流リード105の銅素線と接続されている。超伝導ケーブルを液体水素で冷却する場合には、電源102の正極側の電極103にはP型熱伝半導体が接続され、負極側の電極104にはN型の熱電半導体が取り付けてある。これによって、熱が常温側から低温側に輸送され、水素ガスの発生を多くすることができる。
【0020】
超伝導ケーブルを液体窒素で冷却する場合、液体水素で冷却する場合とは熱電半導体の極性は反転し、電源の正極側の電極103にN型熱電半導体を取り付け、負極側の電極104にはP型熱電半導体を取り付ける。これによって、低温側への熱が輸送(熱進入)を抑制し、液体窒素を長時間保持可能としている。
【0021】
燃料電池(FC(Fuel Cell))は、外部から空気を取り入れて、燃料電池の酸素を確保する。なお、燃料電池は直流出力であるが、電源電圧の変更や交流電源が必要な場合には、電力変換器を通じてターミナルに接続する。更に、出力を一定とする運転が多用される。このため、出力調整には二次電池を使うことが多い。したがって、電源102は、FC、電力変換器、二次電池などからなる。この時、電力変換器で利用される半導体素子は発熱するため、発生した冷媒ガスを利用して冷却を行うように構成する。
【0022】
図6は、液体水素を冷媒として超伝導(積層導体)ケーブル101を冷却する構成例を示す図である。超伝導(積層導体)ケーブル101は、図5の超伝導テープ線材100を、複数段積層した積層導体超伝導ケーブルとして構成される。超伝導(積層導体)ケーブル101は、端末クライオスタット110内に設置され、端末クライオスタット110内部には液体水素109(冷媒)が充填される。ケーブル用クライオスタット111の上部に液体水素リザーバ108を取り付けてある。超伝導(積層導体)ケーブル101は、液体水素(冷媒)109中に含浸される。但し、航空機の加速や減速時には、冷媒が片側に寄るため、液体水素リザーバ108からガス化した電流リード用配管107において、ガスが移る部分は、例えば、断面の狭い配管を複数並列に並べる構造とする。
【0023】
液体水素リザーバ108内には電気ヒータ(不図示)を取り付け、必要に応じて通電し水素ガス発生量を調節するようにしてもよい。また、液体水素リザーバ108には不図示の液体水素をタンクから供給できるような配管(不図示)と流量調整機器(不図示)が取り付けられる。
【0024】
超伝導(積層導体)ケーブル101を電源端子(電極)103/104に接続する経路には、電流リード105(銅部)と熱電半導体部106を備えている。電流リード105(銅部)は、液体水素リザーバ108を挿通している。電流リード105を介して熱が液体水素リザーバ108内に導入される。電流リード105の常温部から熱が入るため、液体水素リザーバ108で液体水素がガス化し、電流リード105の上部から水素ガスが抜ける。これによって、水素ガスの温度を、常温以上に上げた上で、水素ガスは最終的に燃料電池102に導かれる。
【0025】
燃料電池(燃料電池直流電源システム(電源))102からの電力は電源端子(電極)103/104を通じて電流リード105に接続される。電源端子(電極)103/104は、低温の水素ガスによって冷却されるため、燃料電池102からの熱で加熱する。図6の例では、燃料電池(燃料電池直流電源システム)102から温水を導いている。また、電源端子(電極)103/104の表面は電気絶縁と熱絶縁を外部に対してとる。なお、冷媒が液体窒素の場合には、窒素ガスは外に排出し、電源は燃料電池以外を利用する。また、この場合には熱が低温側に入ることを避けるため、ペルチェ熱は低温側から常温側に輸送するように設置する。
【0026】
超伝導(積層導体)ケーブル101では、ケーブルを曲げようとすると曲がりやすい方向と曲げにくい方向がある。図7に、例示する。超伝導テープ線材を複数段重ねた積層導体の超伝導(積層導体)ケーブル101では、曲げ容易性方向に異方性を有する。すなわち、曲げ応力(荷重方向)が、積層面に平行の場合、曲がり難い。曲げ応力(荷重方向)が、積層面に垂直の場合、曲がり易い。
【0027】
非特許文献1には、積層導体を常に同じピッチで撚ることによってどちらの方向にも曲げるようにしたものも提案されている。
【0028】
しかし、このような構造にすると、積層導体の中心部のテープ線材と端部のテープ線材の長さが異なる。
【0029】
テープ線材の長さを常温で揃えて作製しても、低温に冷却すると収縮長が異なるため、端部で長さが合わなくなる。
【0030】
更に、撚ることによってテープ線材の端部には引張応力が発生する。引張応力は臨界電流を下げることが多くの論文等で報告されている。
【0031】
このため、不要であればできるだけ、撚りは避けたい。
【0032】
そこで、上記に鑑み、実施形態では、超伝導(積層導体)ケーブルを曲げるときだけ、曲げやすくなる方向に、積層導体を曲げる前に撚るようにする。
【0033】
また、超伝導(積層導体)ケーブルを複数回曲げることがある。その時には、前回撚った方向とは反対方向に撚り、長さの違いが積み上がっていかないようにする。
【0034】
これは、一定ピッチで同じ方向に撚っている非特許文献1の構成とは、導体性能において、大きな相違(利点)をもたらす。また、同じ面内であれば、左右どちらの方向にも曲げやすいので、撚る必要はない。
【0035】
以下、構造と手順を説明する。断熱二重管の曲部には、ベローズ部(ベローズ管)を用い、直線部は直管を用いる。このため、曲部はどちらの方向にも曲がる。
【0036】
図8(A)に示すように、超伝導(積層導体)ケーブル101を必要長だけ製造する。航空機用では精々200m程度と考えられる。
【0037】
次に、図8(B)に示すように、超伝導(積層導体)ケーブル101を、該ケーブルが曲がり難い方向に曲げる場合、曲げる箇所の直前で、超伝導(積層導体)ケーブル101を90度撚る加工を行う。前述したように、撚る方向は、毎回同じ方向ではなくて、逆方向に撚る。これによって、超伝導(積層導体)ケーブル101を構成するテープ線材長をできるだけ揃える。この様にして超伝導(積層導体)ケーブル101を完成する。
【0038】
図8(B)において、超伝導(積層導体)ケーブル101は直線状である。但し、超伝導(積層導体)ケーブル101を同じ面内で配線する場合、同一面内で左右に曲げるために、撚る必要がないように、超伝導(積層導体)ケーブル101を端末クライオスタット110に接続する。すなわち、超伝導(積層導体)ケーブル101の超伝導テープ線材の積層面に垂直方向が、同一面の左右に対応するように、超伝導(積層導体)ケーブル101を配置して端末クライオスタット110に接続する。
【0039】
図8(C)に示すように、端末クライオスタット110に直線の超伝導(積層導体)ケーブル101を入れ、超伝導(積層導体)ケーブル101を固定する。必要に応じて、電流リード(銅部)105との接続を行う。
【0040】
図8(C)に示すように、直管断熱二重管1(120A)を端末クライオスタット110に溶接等で固定する。次に、ベローズ部(ベローズ管)124と直管断熱二重管2(120B)を接続した断熱二重管を挿入する。ベローズ部(ベローズ管)124は、曲げ部(曲がり難い部分)に配置される。直線状の超伝導(積層導体)ケーブル101は、曲げ部(曲がり難い部分)で曲げる方向に曲げ易いように、曲げ部の前の撚り部(例えば112-1)で撚られている。
【0041】
例えば、超伝導(積層導体)ケーブル101を撚り部112-1で90度撚ることで、曲がり易さの方向が、同一面内の左右であったものが、撚ったのちは、当該面に垂直方向(例えば上下)となる。
【0042】
図9(A)に示すように、直管断熱二重管1(120A)と次の直管断熱二重管2(120B)との間のベローズ部124を溶接等で接合する。断熱二重管120の内管(不図示)は外管と断熱材(不図示)を通じて固定される。断熱二重管120の内管(不図示)には超伝導(積層導体)ケーブル101を曲げ方向の力をサポートする治具が内部にある。
【0043】
図9(B)に示すように、断熱二重管120(直管断熱二重管1(120A)、ベローズ部124、直管断熱二重管2(120B))と超伝導(積層導体)ケーブル101を一緒に、固定した治具で曲げる。
【0044】
図8(C)から図9(B)を繰り返し、超伝導(積層導体)ケーブル101を断熱二重管120内に入れる。最後にもう一つの端末クライオスタット(不図示)を取り付ける。
【0045】
図10に模式的に示すように、断熱二重管120は、同軸状に配置された内管121、外管122を備えている。そして、外管122から内管121を支持する構造とされる。外管122と内管121間は真空排気される。
【0046】
外管122は、航空機用に軽量にするために、例えばマグネシウム・リチウム(Mg-Li)合金を利用してもよい。また内管121は、例えば、厚さ0.15mm以下のステンレス管か、リチウム・マグネシウム合金を利用するようにしてもよい。内管は膨脹力が働くため、薄いステンレス管が利用できる。また、外管は圧縮力が働くため、座屈を避けるために肉厚にならざるを得ないので、密度の低い材料を使う必要がある。
【0047】
外管122の径が50Φ以下の場合には、内管121の外側にはアルミメッキを施すようにしてもよい。
【0048】
また、外管122の内側にはアルミメッキか亜鉛メッキを施すようにしてもよい。このような構成によって、低温系への熱侵入量を低減する。断熱二重管120での熱侵入量が多くなると、外管122の外側に霜が付く。このため、安全性の対策を施す。
【0049】
例えば図11に示すように、外管122の外表面を、例えば熱伝導率の低い電気絶縁物123で覆うようにしてもよい。
【0050】
電気絶縁物123は、例えば、テフロン、エポキシ樹脂、ナイロン、アラミド樹脂などである。
【0051】
また、内管121をステンレス管とした場合、薄肉溶接を行うことは困難である。このため、ステンレス・リング125を介して、溶接を行う。外管122の接合は常温部のため、金属Oリングやバイトン(フッ素ゴムはフッ素化された炭化水素、ポリマー)などのOリング(バイトンOリング)を利用して接合するか、溶接を行う。
【0052】
図12は、断熱二重管120と超伝導(積層導体)ケーブル101の断面を模式的に説明する図である。内管121は、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)などの熱伝導率の低い材料で構成する。126、127は、内管121を外管122に固定するための支持部材(FRP等からなる)である。航空機では大きな力が加速や減速時に生じる。そこで、対策として、強度を考慮した支持が実装される。また、内管121の表面は、熱絶縁のため、アルミメッキ、多層断熱材(層)で覆う。超伝導(積層導体)ケーブル101は、冷媒109(液体窒素か液体水素)で冷却する。真空排気は端末クライオスタット110(図6等参照)から行う。
【0053】
図13は、様々な条件での断熱二重管の熱侵入量の中部大学での測定結果である。今までに中部大学で開発を行ってきた実験データを示すと同時に市販の断熱二重管の熱侵入量と内管径の関係を一緒に示している。横軸は内管121の径であり、縦軸は熱侵入量(1m当たりの熱量Watt)である。Nexans社のカタログからデータをプロットしている。
【0054】
内管121は低温になっているので、内管121径が大きいと、熱侵入量が増大する傾向がある。内管121がステンレス表面に比べて、アルミメッキ及び多層断熱材で覆うと、熱侵入量が著しく減少することが分かる。
【0055】
本発明の実施形態において、超伝導テープ線材100と電流リード105の接続部では、超伝導テープ線材100を多重化してもよい。図14は、本発明の実施形態を説明する図である。
【0056】
図14は、前述した図5の変形例である。超伝導テープ線材100と電流リード105の接続部201において超伝導テープ線材100を複数並列(且つ平行)に配設し多重化する。接続部201において超伝導テープ線材100は電気的絶縁部材202で互いに電気的に絶縁されている。なお、正電極103に電流リード105を介して接続する超電導テープ線材100と、負電極104に電流リード105を介して接続する超電導テープ線材100とが交互に配置される。図14において、複数の超伝導テープ線材100の並列多重化配置は、以下に説明するように、複数の超伝導テープ線材100を積層したものであってもよい。
【0057】
図15は、本発明の実施形態の別の変形例を説明するための図である。図15に模式的に示すように、積層導体ケーブルの両側側面に強磁性体210を配置し、両側側面を包み込むようにしてもよい。すなわち、超伝導テープ線材100が複数層に積層された積層導体ケーブル(超電導ケーブル101)の長手方向に沿って両側の側面を強磁性体210(例えばソフト強磁性体もしくは炭素鋼鈑等)が配設される。
【0058】
強磁性体210は断面が矩形中空の管構造としてもよい。この場合、積層体ケーブルの積層方向の上端、及び下端にそれぞれ対向する強磁性体210の上面、底面の中央部の長手方向に沿ってその一部に開口を設け、図15に断面形状として示すように、強磁性体210の断面形状が、積層導体ケーブルを挟んでギャップ(開口部)を有し、磁場の減少を抑制する構成としてもよい。あるいは、断面形状がコの字型とされ長手方向に延在される1対の強磁性体部材で、積層導体ケーブル(超電導ケーブル101)の側面を両側から包み込み、上面、底面が長手方向の一部で対向辺が凹部を有し、所定の間隔(ギャップ)が離間して対向配置される構成としてもよい。あるいは、断面形状はコの字型とされ長手方向に延在される1対の強磁性体部材を所定の間隔(ギャップ)離間して対向配置し不図示の支持部材で互いに固定される構成としてもよい。超伝導テープ線材100の積層体を、例えば図14の接続部201においても、図15の強磁性体210で囲繞する構成としてもよい。なお、積層される超伝導テープ線材100の電流の向きは交互に逆向きとされる。
【0059】
図16は、本発明の実施形態の別の変形例を説明する図である。図16は、図14に例示した構成の変形例である。図16に示すように、図15に例示した超伝導テープ線材100の積層導体の端部(図15の上端と下端)の超伝導テープ線材に接続される電流リードの電気抵抗を大きくする。例えば、図15の上端と下端の超伝導テープ線材100に接続する電流リード(銅素線)105の長さを長くするか、又は、銅素線の太さを細くする。これにより超電導テープ線材100の積層体における電流の偏流の抑制に寄与することができる。積層された超電導テープ線材100(積層導体ケーブル)を通電すると、積層された超電導テープ線材100間の磁気結合に不均衡が生じる場合があり、積層導体ケーブル中を均一に電流が流れずに、例えば、積層体構造の長手方向に直交する断面(図15)で端部(上端、下端)近傍の電流密度が高くなる(偏流が生じる)場合がある。
【0060】
そこで、図15の上端と下端の超伝導テープ線材100に接続する電流リード(銅素線)の長さを長くするか、もしくは銅素線の太さを細くすることで、端部(上端、下端)の超電導テープ線材100の電流密度が高くなることを抑制している。なお、端部の電流リード(銅素線)105の長さ等は、計算機シミュレーション及び超電導テープ線材100(積層導体ケーブル)設置後の校正手順等で調整するようにしてもよい。なお、抵抗値の調整が行われる電流リード(銅線)は、端部の電流リード(銅線)に制限されるものでなく、例えば端部近傍の電流リード(銅線)の抵抗値をさらに調整するようにしてもよい。
【0061】
図17は、本発明の実施形態のさらに別の変形例を説明する図である。図17は、図16に例示した構成の変形例である。図17において、電流リード105は、図14図16の電流リード部105の構成であってよい。超伝導ケーブル101は、前記した実施形態の積層導体ケーブルからなる。
【0062】
図17の例では、電流リード105の超電導ケーブル側付近に冷媒バッファタンク116を配設し、冷媒がケーブル用クライスタット111(図8(C)、図9(A)、(B)の断熱二重管120A、120Bの内管121)内に常に満たされている状態を保つように、ケーブル用クライスタット111に供給する冷媒109の量を調節する。端末クライオスタット110において、冷媒バッファタンク116には、冷媒液面制御装置115を備え、冷媒バッファタンク116内の冷媒の液面を制御する。
【0063】
冷媒液面制御装置115は、液面センサー(不図示)を備え、冷媒バッファタンク116への冷媒ガスの流入量を制御可能な第1バルブ(不図示)と冷媒バッファタンク116の出口側に設けられることにより、冷媒バッファタンク116からの冷媒ガス流出量を制御可能な第2バルブ(不図示)と、第1、第2のバルブの開度を制御する制御手段(不図示)を備えている。冷媒バッファタンク116内のヒータ113は冷媒バッファタンク116内の冷媒(例えば液体水素)を加熱して冷媒ガス(水素ガス)を発生させる。
【0064】
制御装置119は、PC(Personal Computer)130の設定に基づき、He圧力タンク118(アキュムレータ)からの冷媒の制御を行う。制御装置119はPC130からの設定に基づきHe圧力タンク118(アキュムレータ)からの加圧された冷媒(ガス)を冷媒液面制御装置115に供給する。He圧力タンク118(アキュムレータ)はタンク内部にダイアフラム(不図示)を有し、ダイアフラムはHeガス等を収容する。ポンプ(不図示)が作動し管内に作動液が入りダイアフラムを押し上げることで圧縮されたHeガスに貯圧され、ポンプ停止後、圧縮されたHeガスがダイアフラムにより管内の作動液等(冷媒)を押しだす。
【0065】
冷媒液面制御装置115では、液面センサー(不図示)で取得した冷媒バッファタンク116内の冷媒液面が予め定められた設定値よりも下がると、冷媒液面が上昇するように例えば第2バルブ(不図示)の開度を調節して圧を小とし、冷媒バッファタンク116内の冷媒液面が設定値よりも上がると、例えば第1バルブ(不図示)の開度を調節して圧を大とし冷媒液面を下げる。このため、例えば航空機の離陸・着陸時の加速度による冷媒液面の変動を抑制することができる。
【0066】
本発明の実施形態のさらに別の変形例について説明する。ケーブル用クライスタット111(図8(C)、図9(A)、(B)の断熱二重管120A、120Bの内管121)の中にある冷媒109が、例えば航空機の離陸・着陸時等の加速度によって冷媒液面が大きく変動することがないように、ケーブル用クライオスタット111(断熱二重管の内管121)内に冷媒109の流れを阻止するためのバッフル板(材)117が複数設置され、加速度(図17では、gで示す)の変動等による冷媒109の移動を抑制する。冷媒バッファタンク116内に、バッフル板(材)117を設置してもよいことは勿論である。ケーブル用クライオスタット111(図8(C)、図9(A)、(B)の断熱二重管120A、120Bの内管121)の中の冷媒109が前後左右に動き、超電導ケーブル101が冷媒109に常に含侵されているように、冷媒109の流れをバッフル板117で抑制している。バッフル板(材)117の形状は板に制限されず、スパイラル型等であってもよい。
【0067】
図18は、図17の変形例を例示する図である。He圧力タンク118は、複数の端末クライオスタット110A、110Bの冷媒液面制御装置115A、115Bに加圧された冷媒(ガス:例えば液体水素)を供給する。PC130、制御装置119の設定に基づき、冷媒液面制御装置115A、115Bの第1バルブ、第2バルブの開閉、開度を制御して、例えば、航空機の離陸・着陸時等の加速度によって、冷媒バッファタンク116の冷媒液面が大きく変動することがないようにする。例えば、冷媒液面制御装置115A、115Bの第1バルブ、第2バルブの開閉、開度を制御して、離発着時等には、冷媒バッファタンク116内を加圧し冷媒の液面の上昇を抑制する。航空機車載のPC130は、航空機の運航(動作)状態を管理するコントローラと通信接続し、航空機の動作状態に基づき、制御装置119を制御するようにしてもよい。
【0068】
なお、上記の特許文献1、2、非特許文献1、2の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ乃至選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
100 超伝導テープ線材
101 超伝導ケーブル
102 電源
103、104 電極(電源端子)
105 電流リード
106 熱電半導体
107 配管
108 液体水素リザーバ
109 冷媒
110、110A、110B 端末クライオスタット
111、111A、111B ケーブル用クライオスタット
112-1、112-2 撚り部
113 ヒータ
114 リード端末
115、115A、115B 冷媒液面制御装置
116 冷媒バッファタンク
117 バッフル板(材)
118 He圧力タンク
119 制御装置
120 断熱二重管
120A 直管断熱二重管1
120B 直管断熱二重管2
121 内管
122 外管
123 電気絶縁層/保護層
124 ベローズ部(ベローズ管)
125 Oリング
126、127 サポート
130 PC
201 接続部
210 強磁性体
211 電気的絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
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図18