(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 13/18 20060101AFI20230515BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230515BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20230515BHJP
G05D 1/10 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B64C13/18 Z
B64C39/02
B64D47/08
G05D1/10
(21)【出願番号】P 2019073124
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】717007295
【氏名又は名称】株式会社Liberaware
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐司
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144784(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034295(WO,A1)
【文献】特開平08-101714(JP,A)
【文献】特開2013-232405(JP,A)
【文献】特表2015-524762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0253808(US,A1)
【文献】特開昭59-068693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18
B64C 39/02
B64D 47/08
G05D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射装置から点検対象物に照射された
光を認識する認識部と、
前記認識された
光に応じて飛行制御するフライトコントローラと、
を備え、
前記認識部は、前記照射装置が前記点検対象物に照射した前記光による点検ルートを認識するとともに、前記光の色またはパルス数によって点検ルートの方向を認識し、
前記フライトコントローラは、前記認識された点検ルートに沿うように飛行制御し、前記認識部が前記点検ルートを認識していない場合に、直前まで認識していた前記点検ルートの方向に応じて、飛行体を回転または移動させる、飛行体。
【請求項2】
請求項
1に記載の飛行体であって、
前記点検対象物の点検映像を撮影する撮影部と、
を備える飛行体。
【請求項3】
請求項
2に記載の飛行体であって、
前記撮影部は、前記認識部が前記点検ルートを認識していない場合に、前記点検映像の撮影を停止する、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項4】
請求項
3に記載の飛行体であって、
前記フライトコントローラは、前記認識部が前記点検ルートを認識していない場合に、操縦者から前記点検ルートに沿って飛行体を移動させる指示の受け付けを停止する、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項5】
請求項
1に記載の飛行体であって、
前記フライトコントローラは、前記認識部が前記点検ルートを認識していない場合に、直前まで認識していた前記点検ルートに対して垂直な方向に飛行体を回転または移動させるための指示を操縦者から受け付ける、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項6】
請求項1に記載の飛行体であって、
前記認識部は、前記
照射装置が前記点検対象物に照射した前記
光による所定の格子状のパターンを認識することにより前記飛行体の現在位置を推定する、
ことを特徴とする飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飛行体からレーザー光を照射して、測距データを取得する技術が知られている。例えば、特許文献1では、飛行体から照射されるレーザー光の反射光に基づいて得られる測定値と、レーザー光の照射方向に関する情報により、測距データを取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、飛行体によって点検対象物(例えば構造物)の点検映像(例えば静止画や動画)を撮影する場合、点検対象に対して、飛行体が真っ直ぐ(水平)に飛行し、一定の距離を保ちながら一定の速度で安定して飛行することが求められる。しかしながら、飛行体を点検対象物の近くで飛行させる場合、風が発生するなどの影響により、熟練の操縦者でも飛行体を安定して飛行させることは難しい。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、飛行体によって、安定した点検映像を撮影することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、レーザー照射装置から点検対象物に照射されたレーザー光を認識する認識部と、前記認識されたレーザー光に応じて飛行制御するフライトコントローラと、を備えることとする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飛行体によって、安定した点検映像を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る飛行体1による飛行状態を説明する図である。
【
図2】本実施形態に係る飛行体1の機能ブロック図である。
【
図3】飛行体1が構造物2に投影された点検ルートに沿って飛行するように制御する処理の流れを説明する図である。
【
図4】飛行体1が上下方向のレーザー光4に対して水平方向に回転及び移動する例を示す図である。
【
図5】構造物2に補足情報Sが投影された例を示す図である。
【
図6】構造物2に格子状パターンが投影された例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による飛行体は、以下のような構成を備える。
【0011】
[項目1]
レーザー照射装置から点検対象物に照射されたレーザー光を認識する認識部と、
前記認識されたレーザー光に応じて飛行制御するフライトコントローラと、
を備える飛行体。
[項目2]
項目1に記載の飛行体であって、
前記認識部は、前記レーザー照射装置が前記点検対象物に照射した前記レーザー光による点検ルートを認識し、
前記フライトコントローラは、前記認識された点検ルートに沿うように飛行制御する、
ことを特徴とする飛行体。
[項目3]
項目2に記載の飛行体であって、
前記点検対象物の点検映像を撮影する撮影部と、
を備える飛行体。
[項目4]
項目3に記載の飛行体であって、
前記撮影部は、前記認識部が前記点検ルートを認識していない場合に、前記点検映像の撮影を停止する、
ことを特徴とする飛行体。
[項目5]
項目4に記載の飛行体であって、
前記フライトコントローラは、前記認識部が前記点検ルートを認識していない場合に、操縦者から前記点検ルートに沿って飛行体を移動させる指示の受け付けを停止する、
ことを特徴とする飛行体。
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態に係る飛行体1について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る飛行体1による飛行状態を説明する図である。
【0013】
本実施形態では、飛行体1は、柱や壁、天井などの点検対象物である構造物2の点検映像(例えば動画)を撮影することを想定している。構造物2の周囲にはレーザー照射装置3が配置され、構造物2の点検すべき箇所に向けてレーザー光4を照射する。飛行体1は、構造物2に照射されたレーザー光4を認識し続けるように飛行制御することで、構造物2の点検映像を安定して撮影することができる。
【0014】
レーザー照射装置3は、照射するレーザー光4によって、構造物2に点検ルートを投影する。ここで、レーザー照射装置3は、地面や三脚等に載置されるため、点検ルートを構造物2に固定して照射することができる。この点検ルートとしては、一又は複数の直線、曲線、これらの組み合わせが挙げられる。また、レーザー照射装置3は、この点検ルートを構成する線それぞれの色やパルス数を変更させてもよい。例えば、レーザー照射装置3は、上下方向に投影するレーザー光4の色と、水平方向に投影するレーザー光4の色を区別してもよい。また、レーザー照射装置3は、例えば上下方向に投影するレーザー光4のそれぞれの色を区別してもよい。これらにより、例えば飛行体1は、構造物2に照射されたレーザー光4を認識できなくなった場合でも、点検ルートを正確に把握することができる。
【0015】
図2は、本実施形態に係る飛行体1の機能ブロック図である。
【0016】
フライトコントローラ11は、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央演算処理装置(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。
【0017】
フライトコントローラ11は、メモリ12を有しており、当該メモリ12にアクセス可能である。メモリ12は、1つ以上のステップを行うためにフライトコントローラ11が実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。
【0018】
メモリ12は、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。
【0019】
撮影部13は、例えば、一般的なカメラや赤外線カメラなどにより構成される。撮影部13で取得したデータは、メモリ12に直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、撮影部13で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。撮影部13は、飛行体にジンバル14を介して設置される。
【0020】
フライトコントローラ11は、飛行体1の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する飛行体1の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために、ESC15を経由して飛行体1の推進機構(モータ16等)を制御する。モータ16によりプロペラ17が回転することで飛行体1の揚力を生じさせる。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0021】
フライトコントローラ11は、1つ以上の外部のデバイス(例えば、送受信機(プロポ)、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部18と通信可能である。送受信機18は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。
【0022】
送受信部18は、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。
【0023】
送受信部18は、センサ類19で取得したデータ、フライトコントローラ11が生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンド(操縦者からの移動指示および/または回転指示)などのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0024】
本実施形態におけるセンサ類19は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0025】
認識部20は、レーザー照射装置3から構造物2に照射されたレーザー光4を認識することができる。本実施形態における認識部20は、レーザー光4を認識できるセンサが搭載されていればよく、例えば、一般的なカメラであってもよい。認識部20は、照射されたレーザー光の色やパルス数を認識できるものとする。認識部20は、例えば飛行体1の側面に設けられ、柱や壁などの構造物2に照射されたレーザー光4により形成される点検ルートを認識する。
【0026】
図3は、飛行体1が構造物2に投影された点検ルートに沿って飛行するように制御する処理の流れを説明する図である。この処理は、例えば認識部20が点検ルートを認識した場合に開始される。
【0027】
(ステップS301)
撮影部13は、構造物2の点検映像を撮影する。すなわち、撮影部13は、認識部20が点検ルートを認識している場合に、点検映像を撮影する。具体的には、撮影部13は、認識部20が点検ルートを認識している場合に、構造物2の点検ルート又は点検ルートの周囲が撮影範囲に含まれる動画を撮影する。続いて、フライトコントローラ11は、操縦者からの移動指示を受け付けて、認識部20によって認識された点検ルートに沿うように飛行体1を移動させる(飛行制御する)。そして、処理は、ステップS302の処理に移行する。
【0028】
(ステップS302)
フライトコントローラ11は、操縦者からの点検を終了する指示を受け付けたか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には、処理は、
図3に示す一連の処理を終了する。一方、当該判定が否定判定された場合には、処理は、ステップS303の処理に移行する。
【0029】
(ステップS303)
フライトコントローラ11は、認識部20が構造物2に投影された点検ルートを認識しているか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には、処理は、ステップS301の処理に移行する。一方、当該判定が否定判定された場合には、処理は、ステップS304の処理に移行する。
【0030】
(ステップS304)
撮影部13は、点検映像の撮影を停止する。具体的には、撮影部13は、構造物2の点検ルート又は点検ルートの周囲が撮影範囲に含まれる動画の撮影を停止する。これにより、点検映像を編集する手間を軽減することができる。続いて、フライトコントローラ11は、操縦者からの飛行体1を点検ルートに沿って移動させる指示の受け付けを停止する。これにより、点検すべき部分が点検映像に残らないことを防止することができる。そして、処理は、ステップS305の処理に移行する。
【0031】
(ステップS305)
フライトコントローラ11は、飛行体1を所定の方向に回転および移動の少なくともいずれかを行う。例えば、フライトコントローラ11は、点検ルート(レーザー光4によって投影された線の方向)と垂直に飛行体1を回転及び移動させる。具体的には、フライトコントローラ11は、直前まで認識部20が認識していたレーザー光4の色が上下方向に伸びる線の色であると認識していた場合、飛行体1を水平方向に回転させる。
図4は、飛行体1が上下方向のレーザー光4に対して水平方向に回転及び移動する例を示す図である。そして、処理は、ステップS306の処理に移行する。
【0032】
(ステップS306)
フライトコントローラ11は、認識部20が構造物2に投影された点検ルートを認識しているか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には、処理は、ステップS301の処理に移行する。一方、当該判定が否定判定された場合には、処理は、ステップS305の処理に移行する。
【0033】
以上のようにして、フライトコントローラ11は、飛行体1が点検ルートに沿って安定した点検映像を撮影することができるように、飛行体1を制御する。
【0034】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0035】
例えば、本実施形態では、撮影部13と認識部20とを別々の機能部として説明したが、撮影部13と認識部20は、一つの装置(例えばカメラ)によって構成されてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、上記ステップS304において、操縦者からの飛行体1を点検ルートに沿って移動させる指示の受け付けを停止することを説明したが、フライトコントローラ11は、点検ルート(レーザー光4によって投影された線の方向)と垂直に飛行体1を回転及び移動させる指示は受け付けることとしてもよい。また、フライトコントローラ11は、飛行体1が構造物2に対して真っ直ぐ(水平)に飛行していない場合、真っ直ぐ(水平)に飛行するまで、撮影部13による撮影を停止したり、操縦者からの飛行体1を点検ルートに沿って移動させる指示の受け付けを停止したりしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、レーザー照射装置3は、複数パターンの点検ルートを投影することが可能であってもよい。これにより、レーザー照射装置3は、点検対象物である構造物2に応じたパターンの点検ルートを投影することができる。
【0038】
また、本実施形態では、レーザー照射装置3は、点検ルート以外の補足情報を点検対象物である構造物2に投影してもよい。補足情報としては、例えば、距離や高さの数値、標定点などが挙げられる。
図5は、構造物2に補足情報Sが投影された例を示す図である。
【0039】
また、例えば、
図6に示されるように、所定の格子状のパターンを点検対象面の所定の位置に照射し、当該格子パターンを画像認識することにより現在位置を推定することとしてもよい。すなわち、格子パターンを照射する絶対位置を取得することによって、任意の格子点からの距離や位置関係から自己の位置を推定することが可能となる。この場合、格子パターンの点検対象面上における位置は関連付けられる。
【0040】
また、本実施形態では、点検映像が動画である場合を説明したが、静止画であってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、レーザー光4は、認識部20によって認識が可能であればよく、撮影部13では撮影が不可能な光(例えば赤外線等)であってもよい。これにより、点検映像にレーザー光4が映り込むことがないため、点検すべき部分(例えば、コンクリートのひび割れ等)を容易に確認することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 飛行体
2 構造物
3 レーザー照射装置
4 レーザー光
11 フライトコントローラ
13 撮影部
20 認識部