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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/047 20060101AFI20230515BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20230515BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20230515BHJP
   B24B 47/22 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B24B41/047
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B24B47/22
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019142511
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021024016
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000132954
【氏名又は名称】株式会社タカトリ
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寿
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-200545(JP,A)
【文献】特開2008-042081(JP,A)
【文献】特開2012-086351(JP,A)
【文献】特開2003-332410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0040202(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-7/30
B24B21/00-51/00
H01L21/304;21/463
H01L21/67-21/683
B23Q1/00-1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、
前記チャックテーブルの保持面に保持された前記被加工物を研削する研削部と、
前記研削部を前記保持面に対して研削送り可能に支持するコラムとを備える研削装置であって、
前記研削部は、
前記被加工物に研削を施すための砥石を有する研削ホイールと、
前記研削ホイールを回転及び着脱可能に保持するスピンドルと、
前記チャックテーブルに沿う方向に拡がるように形成され、前記スピンドルを支持する少なくとも一つの支持部とを有し、
当該支持部は、前記チャックテーブルに対して水平方向かつ接近離反する方向となる配置方向に沿った配置部が形成され、前記スピンドルの配置を前記配置部に沿って変更可能としたことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
前記配置部は、前記配置方向に沿った長孔又は開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
前記チャックテーブルの保持面は、
前記被加工物の複数種類の外形に合わせて区画された複数の領域と、
それぞれの領域毎に独立した保持力を発生する保持部とを備え、
前記保持部による保持力が前記領域毎に切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の研削装置。
【請求項4】
前記研削部を少なくとも1つ設けると共に前記チャックテーブルを複数設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の研削装置。
【請求項5】
同心円方向に複数のチャックテーブルが配置されたターンテーブルを有し、
前記研削部が、当該ターンテーブルに近接して少なくとも1つ配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の研削装置。
【請求項6】
前記研削部を構成する複数の研削ホイールのうち少なくとも1つが、他の一又は複数の研削ホイールと、砥石の形状及び材質のいずれか一方又は双方が異なるものであることを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載の研削装置。
【請求項7】
前記支持部が、
前記スピンドルを切り離し可能に自在に接続する接続部を有し、
前記配置部において前記接続部の位置を変更可能とされていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の研削装置。
【請求項8】
前記接続部が、
前記支持部に設けられる第一接続部と、
前記スピンドルに設けられる第二接続部とを有し、
前記第一接続部と前記第二接続部とを切り離し可能に接続するものであり、
前記支持部が、
前記第一接続部を前記支持部に対して固定する固定部を有し、
前記配置部が、
前記第一接続部を前記配置方向に配置変更可能としたことを特徴とする請求項7に記載の研削装置。
【請求項9】
前記接続部が、
前記支持部に設けられる第一接続部と、
前記スピンドルに設けられる第二接続部と、
前記支持部に対して固定され、前記第一接続部を支持するベース部とを有し、
前記ベース部が、
前記チャックテーブルに対して交差する所定の軸線を軸心位置として周方向に位置を変更して配置可能なものであると共に、前記軸心位置から外れた位置において前記第一接続部を支持するものであり、
前記配置部が、
前記軸心位置を中心とする前記ベース部の周方向への前記接続部の位置変化に応じて、 異なる位置に配置される前記第一接続部を、前記第二接続部と接続可能な状態で配置可能とされていることを特徴とする請求項7に記載の研削装置。
【請求項10】
前記ベース部が、前記配置方向に沿って形成されたベース部開口を有し、前記第一接続部を前記ベース部開口に沿って配置変更可能としたことを特徴とする請求項9に記載の研削装置。
【請求項11】
前記研削部及びチャックテーブルは、それぞれ独立に水平方向に対して傾斜可能に構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チャックテーブルがターンテーブル上の同心円方向の3箇所に配置されると共に2連の研削部を備えた研削装置が知られている(例えば、特許文献1)。当該研削装置は、前記ターンテーブルが回転しながら、それぞれの研削部に向けてチャックテーブル上に保持した板状ワークが順次送り込まれるように構成されている。それぞれの研削部の直下に送り込まれた前記板状ワークは、前記研削部によって研削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-86244
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の研削装置は、チャックテーブルを回転させながら、それぞれの研削部の直下にワークを送り込むものである。このため、前記研削部のスピンドルの軸心位置とチャックテーブルの軸心位置との関係は、一定に保たれている。すなわち、前記研削部が備える研削ホイールとワークとが接触する加工位置は、一定の位置関係が保たれている。
【0005】
ところで、前記特許文献1の研削装置は、ワークの径や研削ホイールの径を変更する場合、前記スピンドルの軸心位置とチャックテーブルの軸心位置を変更する必要がある。しかしながら、前記特許文献1の研削装置は、前記スピンドルの軸心位置とチャックテーブルの軸心位置とが固定されており、変更することができない。従って、ワークの径や研削手段に備える研削ホイールの径を変更する場合、前記ワークの径や前記研削ホイールの径に合わせた別途の研削装置を用意しなければならない問題がある。
【0006】
そこで本発明は、研削装置においてワークの径や研削ホイールの径を変更した場合であっても、別途の研削装置を用意することなく、各種の被加工物(ワークに相当)の研削が可能な研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、前記チャックテーブルの保持面に保持された前記被加工物を研削する研削部と、前記研削部を前記保持面に対して研削送り可能に支持するコラムとを備える研削装置であって、前記研削部は、前記被加工物に研削を施すための砥石を有する研削ホイールと、前記研削ホイールを回転及び着脱可能に保持するスピンドルと、前記チャックテーブルに沿う方向に拡がるように形成され、前記スピンドルを支持する少なくとも一つの支持部とを有し、当該支持部は、前記チャックテーブルに対して水平方向かつ接近離反する方向となる配置方向に沿った配置部が形成され、前記スピンドルの配置を前記配置部に沿って変更可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成によれば、スピンドルの軸心位置をチャックテーブルに対して水平方向かつ接近離反する方向に変更して配置することが可能であるので、研削ホイールの径が変わっても、当該研削ホイールと被加工物が接触する加工位置を所定の位置に位置付けることができる。これにより、1台の研削装置で、各種の被加工物に対応することができるので、汎用性の高い研削装置が提供できる。前記配置部は、前記配置方向に沿った長孔又は開口を形成しておけば良い。なお、前記配置部は、スピンドルの配置を変更できるものであれば、各種の機構を採用できる。例えば、スピンドルがレールや溝に沿って移動するものであっても良い。
【0009】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、前記配置部が、前記配置方向に沿った長孔又は開口が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成によれば、スピンドルの配置の変更が、前記配置方向に沿って容易に行うことができる。前記配置部としての長孔又は開口は、スピンドルの配置位置を変更できるものであれば各種の形状のものが採用できる。例えば、前記長孔は、矩形状、楕円形状のものであっても良い。また、前記開口は、無端状のものだけでなく、例えば、一端が開口したU字形状、コの字形状のものであっても良い。
【0011】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、前記チャックテーブルの保持面が、前記被加工物の複数種類の外形に合わせて区画された複数の領域と、それぞれの領域毎に独立した保持力を発生する保持部とを備え、前記保持部による保持力が前記領域毎に切り替え可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
かかる構成によれば、例えば円形状の外形を有する被加工物を研削する場合、被加工物の径が変わっても、チャックテーブルを交換することなく確実に保持できるので、前記研削装置の作業性と汎用性が向上する。また、チャックテーブルの交換に要する時間を廃することができるので、装置の稼働率を向上することが可能である。また、外形の形状が異なる被加工物を研削する場合であっても、確実に被加工物を保持することが可能である。前記複数の領域は、円形に限定されず、各種の形状を採用できる。例えば、領域は、矩形状、三角形状、楕円形状のものなどを採用できる。また、オリエンテーションフラット(オリフラとも称す)やノッチが形成されている被加工物を研削する場合は、前記オリフラやノッチの形状に合わせて領域を形成することが可能である。
【0013】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、前記研削部を少なくとも1つ設けると共に前記チャックテーブルを複数設けたことを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成によれば、前記研削部で被加工物の研削を行っている間に、研削に寄与していないチャックテーブルで、被加工物の供給、検査、排出等を並行作業で行うことができる。これにより、研削装置の作業効率を向上することができる。また、複数の研削部及び複数のチャックテーブルを設けることにより、同時に複数の被加工物を加工できるので、被加工物の研削の作業効率が向上する。また、上述した本発明の研削装置は、研削部毎に違う条件を設定することにより、被加工物の多様な加工を行うことができる。
【0015】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、同心円方向に複数のチャックテーブルが配置されたターンテーブルを有し、前記研削部が、当該ターンテーブルに近接して少なくとも1つ配置されることを特徴とするものである。
【0016】
かかる構成によれば、研削装置を複数台設置するよりも装置を小型化することができる。また、複数の研削部を配置することにより、前記ターンテーブル上に割り付けられた各ポジションで同時に被加工物の研削を行うことができるので作業効率が向上する。また、前記ターンテーブルの各ポジションを例えば粗研削ポジション、仕上げ研削ポジションのように割り付けることにより、1台の装置内で被加工物の一連の加工を行うことが可能となる。
【0017】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、前記研削部を構成する複数の研削ホイールのうち少なくとも1つが、他の一又は複数の研削ホイールと、砥石の形状及び材質のいずれか一方又は双方が異なるものであることを特徴とするものである。
【0018】
かかる構成によれば、前記研削部毎に異なる砥石を用いることができるので、被加工物の多様な加工を行うことができる。また、複数の研削部に異なる径の砥石を用いることにより、1台の装置で複数種類の被加工物の加工を行うことが可能である。
【0019】
かかる構成において、砥石の形状には、砥石自体の形状だけではなく、砥石の配置も含むものである。砥石自体の形状は、例えば、矩形状、円形状、円弧形状、楕円形状、三角形状など各種の形状のものを使用できる。また、砥石の形状は、ブロック形状のものだけでなく、例えば平板状に形成されていても良い。また、砥石の配置は、環状に配置したものだけでなく、各種の方向に配置することが可能である。例えば、砥石の配置は、同心円方向に複数列砥石を配置したものや中心方向に向けて角度を設けて複数の砥石を配置したものなど各種の砥石の配置を採用できる。また、砥石は、平板状の研磨用のものであっても良い。また、砥石の径も各種の径のものを用いることができる。砥石の材質も、例えば、砥粒にダイヤモンドやCBNなどを用いたもの、砥粒の結合にメタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンドを使用したものなど各種のものを採用できる。
【0020】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、前記支持部が、前記スピンドルを切り離し可能に自在に接続する接続部を有し、前記配置部において前記接続部の位置を変更可能とされていることを特徴とするものである。
【0021】
かかる構成によれば、前記スピンドルが前記接続部を介して支持されるので、当該スピンドル自体を前記支持部に装着することなく、前記接続部を前記配置部に沿って前記スピンドルの軸心位置を変更することが可能となる。すなわち、前記接続部の位置を変更するだけで、前記スピンドルの配置位置への位置決めを行うことが可能となる。
【0022】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、前記接続部が、前記支持部に設けられる第一接続部と、前記スピンドルに設けられる第二接続部とを有し、前記第一接続部と前記第二接続部とを切り離し可能に接続するものであり、前記支持部が、前記第一接続部を前記支持部に対して固定する固定部を有し、前記配置部が、前記第一接続部を前記配置方向に配置変更可能としたことを特徴とするものである。
【0023】
かかる構成によれば、前記配置部が前記第一接続部を前記配置方向に配置変更可能としたので、前記第一接続部をスピンドルの配置位置に位置させるだけで、前記スピンドルの配置する位置を容易に決定することができる。これにより、スピンドルを支持部に支持する前に、予めスピンドルを配置する位置が決定できる。前記第一接続部と前記第二接続部は、各種の機構を採用でき、例えばフランジを採用し、それぞれのフランジをボルトやピン等で締結するようにしても良い。また、前記第一接続部と前記第二接続部は、溝等で互いに係合するものであっても良い。
【0024】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、前記接続部が、前記支持部に設けられる第一接続部と、前記スピンドルに設けられる第二接続部と、前記支持部に対して固定され、前記第一接続部を支持するベース部とを有し、前記ベース部が、前記チャックテーブルに対して交差する所定の軸線を軸心位置として周方向に位置を変更して配置可能なものであると共に、前記軸心位置から外れた位置において前記第一接続部を支持するものであり、前記配置部が、前記軸心位置を中心とする前記ベース部の周方向への前記接続部の位置変化に応じて、異なる位置に配置される前記第一接続部を、前記第二接続部と接続可能な状態で配置可能とされていることを特徴とするものである。
【0025】
かかる構成によれば、複数の外径に対応したスピンドルの軸心位置が容易に変更できる。また、前記ベース部を前記チャックテーブルに対して交差する所定の軸線を軸心位置として周方向に位置を変更することにより、前記第一接続部の前記配置部への配置位置が変更可能である。
【0026】
例えば、点対称となるように第一接続部を前記ベース部の偏心位置に配置し、前記ベース部を180度回転させることにより、前記ベース部の第一接続部を2箇所の異なる位置に配置させることができる。これにより、スピンドルの軸心位置を2箇所において精度良く位置決めすることが可能となる。また、例えば、2種類の径の被加工物を切り替えて研削する場合に、前記接続部を180度回転させるだけで、容易にスピンドルの軸心位置を被加工物の径に対応した位置に位置決めすることが可能となる。また、前記スピンドルが前記接続部を介して支持されるので、当該スピンドル自体を装着することなく軸心位置が変更可能となる。また、前記スピンドルを前記支持部に装着することなく、前記スピンドルの軸心位置の位置決めを行うことができるので、作業性が向上する。なお、前記接続部が点対称とならないように前記第一接続部を前記ベース部に配置した場合は、前記接続部を適宜の角度で、前記ベース部の周方向に位置を変更させて前記配置部に配置すれば良い。
【0027】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、前記ベース部が、前記配置方向に沿って形成されたベース部開口を有し、前記第一接続部を前記ベース部開口に沿って配置変更可能としたことを特徴とするものである。
【0028】
かかる構成によれば、前記ベース部へ前記第一接続部を支持する支持位置を変更することができる。これにより、前記ベース部と前記支持部との固定位置を変更することなく、前記第一接続部の前記配置部における配置位置の変更が可能となり、スピンドルの軸心位置の変更が容易に行える。例えば、前記接続部を点対称となる形状に形成した場合、前記第一接続部の支持位置を前記接続部の対称軸から外れた偏心位置において調整することが可能となるので、スピンドル配置位置の変更の自由度が向上する。すなわち、前記接続部は、複数種類の被加工物の外形に対応したものを用意することなく、1種類用意すれば複数のスピンドルの配置位置に対応できる。
【0029】
また、上述した課題を解決すべく提供される本発明の研削装置は、前記研削部及びチャックテーブルが、それぞれ独立に水平方向に対して傾斜可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0030】
かかる構成によれば、使用する研削ホイールの径を変更した場合であっても、被加工物に合わせた加工条件となるように砥石と被加工物の接触状態を調整することが可能である。また、例えば、ターンテーブルを使用して複数の被加工物を複数の研削部でそれぞれ同時に加工する場合であっても、それぞれ同じ条件で研削したり、それぞれ異なる条件で研削したりすることが可能である。つまり、例えば1つの研削ホイールに粗研削用の砥石を装着し、他の研削ホイールに仕上げ研削用の砥石を装着した場合、前記研削部及びチャックテーブルにおいて傾斜を調整できるので、各砥石に合わせた最適な調整が可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の研削装置によれば、研削部におけるスピンドルの軸心位置を容易に変更できるので、複数の外径に対応した被加工物の加工を適正に行うことができる汎用性の高い研削装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】は、本発明の第一の実施形態に係る研削装置の一部省略正面図である。
図2】は、図1の右側面図である。
図3】は、図2のA-A方向断面矢視図である。
図4】(a)は、本発明の研削装置に用いられる接続部の一実施形態に係る平面図であり、(b)は、正面図である。
図5】は、本発明の研削装置に用いられるチャックテーブルの一実施形態に係る平面説明図である。
図6】(a)及び(b)は、本発明の研削装置に用いられる接続部を配置部に配置する状態を表す説明図である。
図7】(a)及び(b)は、本発明の研削装置に用いられる接続部を配置部に配置する状態を表す説明図である。
図8】(a)及び(b)は、本発明の第一の実施形態に係る研削装置の使用状態の説明図である。
図9】は、本発明の第二の実施形態に係る研削装置の平面図である。
図10】(a)及び(b)は、本発明の第二の実施形態に係る説明図である。
図11】は、本発明の第二の実施形態に係る研削状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の研削装置10の第一の実施形態について図1から図5に基づいて以下に詳細を説明する。図1から図3のように研削装置10は、機台11と、機台11に立設されたコラム12等を備えている。また、研削装置10は、研削部20と、チャックテーブル50等を備えている。
【0034】
機台11は、水平方向の床面等に適宜固定され、機台11の上面に被加工物Wを吸着等によって保持するチャックテーブル50が設けられている。また、機台11上のチャックテーブル50の周辺には、コラム12が立設されている。
【0035】
コラム12は、底部の3箇所にナット13が設けられている。ナット13は、機台11上にナット13と対向して立設された調整ボルト14に螺合している。これにより、コラム12は、機台11に対しての傾きを調整することが可能である。
【0036】
コラム12の前面側に、2本のレール12a、12aが上下方向に敷設されている。また、両レール12a、12a間に、ボールネジ15がレール12aに沿って回動可能に設けられている。ボールネジ15は、コラム12の底部に軸支されている。また、ボールネジ15の上部は、コラム12上に設けられた昇降モータ16に接続されている。従って、昇降モータ16を駆動するとボールネジ15が回転する。
【0037】
研削部20は、略L字形状の昇降枠21と、スピンドル35と、当該スピンドル35を回転駆動するモータ30と、研削ホイール45等を備えて構成されている。
【0038】
昇降枠21は、背面にスライダ23が設けられている。スライダ23は、レール12aに摺動可能に嵌合されている。また、昇降枠21の背面にナット39が設けられ、当該ナット39は、ボールネジ15に螺合している。従って、昇降枠21は、昇降モータ16を駆動することによりレール12aに沿って昇降可能である。
【0039】
昇降枠21は、当該昇降枠21の下部の水平方向に沿って支持部22aが形成されている。なお、本実施形態においては、支持部22aの上方に当該支持部22aと間隔を開けて支持部22bが設けられている。また、昇降枠21は、両側面に支持枠24、24が立設され、両支持枠24、24間の上方に支持板25が水平となるように配置されている。
【0040】
支持部22aは、前方(図2左方向)に向けて水平方向に延設されている。また、図3のように支持部22aは、略中央に本発明の配置部としての長孔26aが形成されている。長孔26aは、前方に向けて長手方向となるように開口されている。すなわち、支持部22aの下方に位置するチャックテーブル50に対して水平方向かつ接近離反する方向となる配置方向(以下、単に配置方向と称す)に向けて長手方向となるように長孔26aが形成されている。また、支持部22aは、長孔26aを介してスピンドル35を切り離し可能に支持する接続部27が設けられている。図3のように支持部22aの長孔26aの周囲に複数のネジ穴41が穿設され、当該ネジ穴41は、後述する接続部27の第一接続部36が支持部22aに固定される固定部を形成している。第一接続部36は、ネジ穴41にボルトが螺合されることで、支持部22aに固定される。また、支持部22bには、支持部22aと同様の長孔26bとが形成されている。
【0041】
図2のように接続部27は、第一接続部36と、スピンドル35に設けられる第二接続部37等を備えている。図4(a)及び(b)のように第一接続部36は、ベース部28と、フランジ部29とを備えている。ベース部28は、矩形状の板の対向する二辺が円形に面取りされた形状に形成されている。ベース部28は、当該ベース部28の中心から偏心位置に渡ってベース部開口28aが形成されている。また、ベース部28は、支持部22aの各ネジ穴41と対向する位置にネジ穴38が穿設されている。
【0042】
第一接続部36は、フランジ部29の内側に開口29aを備えている。フランジ部29は、開口29aがベース部開口28aと連通するようにベース部28の偏心位置に立設されている。なお、フランジ部29は、例えば、ベース部28に形成した凹部に嵌合させて立設固定するようにしても良い。このようにフランジ部29をベース部28の凹部に固定するようにすれば、フランジ部29の移動や位置決めが容易に行える。フランジ部29は、後述する前記スピンドル35に設けられた第二接続部37とボルト等で接続が可能である。
【0043】
第一接続部36は、支持部22aに装着する際に、フランジ部29が長孔26aに収容されることにより、フランジ部29の外周の一部が長孔26aに係合する。これにより、第一接続部36は、長孔26aに沿って移動が可能である。なお、第一接続部36は、長孔26a内の所定位置に位置した状態で、支持部22aの固定部としてのネジ穴41に固定される。第一接続部36の支持部22aへの固定は、ネジ穴41とネジ穴38に図示しないボルトを螺合させることにより可能である。なお、支持部22aに装着した第一接続部36の取り外しは、前記ボルトを取り外すことにより可能である。第一接続部36の支持部22aへの着脱は、これに限定されず、各種のものが採用でき、例えば、ボルトとナットの組み合わせや、ボルトに代えて係合ピンを用いるものであっても良い。
【0044】
図1から図3のようにスピンドル35は、下端付近に設けられる第二接続部37を備えている。第二接続部37は、例えばフランジであり、第一接続部36とボルト等で接続が可能である。なお、第一接続部36と第二接続部37は、フランジ以外のものであっても良い。また、スピンドル35は、下端に研削ホイール45を装着することが可能である。スピンドル35は、接続部27の第一接続部36と第二接続部37とを接続することで、支持部22a上に立設される。このとき、スピンドル35の上端は、長孔26bを介して支持部22bに固定される。これにより、スピンドル35は、昇降枠21に支持される。また、支持部22aの前端部に長孔26aと水平方向に連通するネジ穴40が設けられており、当該ネジ穴40にボルトを螺合することが可能である。当該ボルトをネジ穴40に螺合させることにより、当該ボルトで第一接続部36及び第二接続部37のいずれか一方又は両方を押圧することが可能である。従って、ボルトの押し引きにより、スピンドル35の配置位置を長孔26aの長手方向に沿って微調整することが可能である。
【0045】
また、図2のようにスピンドル35の軸上端には従動プーリ32が装着されている。また、モータ30が、昇降枠21に設けた支持板25上に支持されている。従動プーリ32は、モータ30に接続された駆動プーリ31にベルト33を介して接続されている。これにより、モータ30を駆動することで、スピンドル35が回転駆動される。支持板25は、モータ30が前後方向(図2左右方向)に移動することを許容するように長孔25aが形成されている。
【0046】
研削ホイール45は、本実施形態では、複数のブロック形状の砥石46が環状に配置されたものを用いている。なお、砥石46は、これに限定されるものではなく各種のものを用いることができる。研削ホイール45は、スピンドル35の回転により、回転が可能である。また、研削ホイール45は、昇降枠21の昇降に伴って、昇降することが可能である。研削時には、昇降枠21が下降することにより、研削ホイール45がチャックテーブル50に保持された被加工物Wに向けて研削送りされる。被加工物Wと砥石46との距離は、図示しない適宜のインプロセスゲージ等を用いて制御可能である。従って、被加工物Wの研削量を制御することが可能である。
【0047】
チャックテーブル50は、本実施形態においては、機台11上に1台設けられている。チャックテーブル50は、被加工物Wを吸着保持する保持面51が形成されており、図示しない回転機構により回転が可能である。また、チャックテーブル50は、傾斜調整機構57が設けられており、水平方向に対して傾斜させることが可能である。傾斜調整機構57は、例えばチャックテーブル50に設けられた3点の調整ネジで構成され、前記調整ネジで3点の高さを調整することにより水平方向の傾斜を調整するものである。これにより、チャックテーブル50に保持された被加工物Wと研削ホイール45における砥石46との加工角度を調整することが可能である。
【0048】
保持面51は、表面が多孔質に形成され全面で吸着保持できるものや、キリ穴が複数設けられたもの等、各種の材質(例えば、セラミックスや超硬等)や形状のものを採用できる。なお、吸着に代えて、被加工物Wが、保持面51にワックスや接着剤等で固定されるようにしても良い。図5のように保持面51は、被加工物Wの外径に応じて、吸着範囲を切り替え可能なものを好ましく採用できる。保持面51は、仕切壁52により、3つの領域53に区分けされている。
【0049】
領域53は、それぞれ保持面51の裏面側に保持部としての吸引口54が設けられている。それぞれの吸引口54には、開閉用のバルブ55を介してポンプ等の吸引源56が接続されている。従って、バルブ55の開閉により、各領域53に発生する吸引力を切り替えすることができ、保持する被加工物Wの外径に応じて吸着範囲を切り替えすることが可能である。これにより、被加工物Wの外形が変わった場合であっても、チャックテーブル50を交換することなく、保持面51に被加工物Wを保持することが可能である。
【0050】
図1及び図2のように保持面51は、中央部が例えば5~20μm程度盛り上がった円錐形状に形成されている。なお、理解が容易なように図1及び図2において、保持面51の中央部の盛り上がりは、実際よりも誇張して描いてあることに留意されたい。保持面51が円錐形状に形成されていることにより、保持面51に保持した被加工物Wの外周と内周との周速差による研削量のばらつきを低減することが可能である。
【0051】
以上が、本発明の第一の実施形態における構成であり、次に図6及び図7に基づいて、本発明の研削装置10の動作の詳細を説明する。
【0052】
図6(a)及び図7(a)のように、フランジ部29が後方側(チャックテーブル50に対して水平方向でかつ離反する方向)となるように第一接続部36が配置される。当該配置となるベース部28を回転させる前の位置が接続部27の第一位置47として設定される。続いて、第一接続部36を上昇させて、フランジ部29が長孔26aに収容された状態で、第一接続部36が支持部22aのネジ穴41に装着固定される。
【0053】
上述のように支持部22aに第一接続部36が固定されると、第一接続部36とスピンドル35の第二接続部37とがボルト等の適宜の固定方法で結合される。また、スピンドル35の位置に応じて、モータ30も移動させて、支持板25に固定する。これにより、図8(a)のようにスピンドル35の軸心35aは、チャックテーブル50の軸心50aから水平方向でかつ離反する方向に位置する。このようにスピンドル35の軸心35aがチャックテーブル50の軸心50aから離反する方向に移動することで、例えば、研削ホイール45の径を大口径化することが可能となる。すなわち、被加工物Wを大口径化した場合であっても、適正な径の研削ホイール45を用いることができるので、適正に被加工物Wを加工することが可能となる。
【0054】
図6(b)及び図7(b)のように、第一接続部36が前方側(チャックテーブル50に対して水平方向でかつ接近する方向)となるようにベース部28が対称点28b(図4(a)参照)を基点に回転(本実施形態においては180度)されて配置される。当該配置となるベース部28を回転させた位置が、第一接続部36の第二位置48として設定される。これにより、ベース部28は、チャックテーブル50に対して交差する軸線を通る対称点28bを軸心位置として、周方向に位置を変更して長孔26aに配置が可能となる。続いて、第一接続部36を上昇させて、フランジ部29が長孔26aに収容された状態で、第一接続部36が支持部22aに装着固定される。これにより、対称点28bを軸心位置としてベース部28が周方向へ位置変化する。また、ベース部28の周方向への位置変化に応じて、異なった第二位置48に配置される第一接続部36が、第二接続部37と接続可能な状態で長孔26aに配置可能とされる。
【0055】
このとき、上述のようにベース部28が対称点28bに対して点対称となる形状に形成されているので、支持部22aのネジ穴41の位置とベース部28のネジ穴38の位置は、第一位置47と第二位置48とで同一となる。従って、第一位置47と第二位置48の切り替えが容易に行えるので作業性が向上する。また、ベース部28の大きさを変更せずに第一位置47と第二位置48の切り替えを行うことができるので、研削装置10を大型化させることがない。
【0056】
上述のように支持部22aに第一接続部36が固定されると、第一接続部36のフランジ部29とスピンドル35の第二接続部37とがボルト等の適宜の固定方法により接続される。また、スピンドル35の位置に応じて、モータ30も前方に移動させて、支持板25に固定する。これにより、図8(b)のようにスピンドル35の軸心35aは、チャックテーブル50の軸心50aに接近する方向に位置する。このようにスピンドル35の軸心35aがチャックテーブル50の軸心50aに接近する方向に移動することで、例えば、研削ホイール45の径を小口径化することが可能となる。すなわち、被加工物Wを小口径化した場合であっても、適正に被加工物Wを加工することが可能となる。
【0057】
本実施形態においては、接続部27が対称点28bに対して点対称となるようにフランジ部29を偏心配置し、第一接続部36の形状も対称点28bに対して点対称となるように形成している。これにより、第一接続部36を180度回転させて、支持部22aに装着するだけで、容易にスピンドル35の軸心位置が変更できる。また、スピンドル35を研削部20に搭載していない状態において、スピンドル35の軸心35aの位置決めを行うことができるので、作業性が向上する。本実施形態は、特に2種類の被加工物Wの外径に対応する場合に有効であり、スピンドル35の軸心35aの配置位置を精度良く調整することが可能である。
【0058】
上述のようにスピンドル35の位置決めが完了し、研削装置10の稼働が可能となると、被加工物Wの研削を実施する。被加工物Wとして、例えば、サファイア、シリコンカーバイド、タンタル酸リチウム、シリコン等の各種の半導体材料や、セラミックス、石材、金属、ガラス、水晶、石英、樹脂等の各種材料が挙げられる。また、被加工物Wは、本実施形態においては、円形の薄板状のものであるが、矩形状、三角形状、楕円形状等の各種の形状のものを加工の対象とすることができる。また、被加工物Wの厚みも任意の厚さのものを加工することが可能である。
【0059】
被加工物Wの研削にあたり、被加工物Wがチャックテーブル50の保持面51に吸着保持される。このとき、被加工物Wの外径に合わせて予め保持面51の吸着する領域53が変更される。続いて、研削ホイール45とチャックテーブル50を回転させながら、研削部20を昇降モータ16の駆動により下降させて研削送りすることで、被加工物Wが研削加工される。なお、チャックテーブル50の回転は、条件に応じて回転させずに行ったり、回転方向を変更したりすることが可能である。
【0060】
以上が、本発明の第一の実施形態であり、次に第二の実施形態について図9及び図10に基づいて説明する。図9のように、第二の実施形態においては、ターンテーブル60と、上述の研削部20が2連設けられている。なお、第二の実施形態においては、ターンテーブル60以外は、第一の実施形態と同様の構成であるので、同様の構成部分の説明は省略する。
【0061】
ターンテーブル60は、機台11上に回転可能に設けられている。2連の研削部20は、それぞれターンテーブル60の中心から120度の方向に向けて、ターンテーブル60に近接して設けられている。また、ターンテーブル60は、本実施形態においては3つのチャックテーブル50が同心円方向に配置されている。ターンテーブル60には図示しない適宜の回転機構が設けられ、ターンテーブル60を120度毎に間欠回転させることが可能である。
【0062】
ターンテーブル60は、120度毎に被加工物Wの供給排出ポジション62と、第一研削ポジション63と、第二研削ポジション64とが設定されている。2連の研削部20は、第一研削ポジション63と、第二研削ポジション64とにそれぞれ配置されている。従って、ターンテーブル60が120度毎に間欠回転することでチャックテーブル50が被加工物Wの供給排出ポジション62、第一研削ポジション63、第二研削ポジション64に順次位置付けられる。
【0063】
なお、2連の研削部20は、同一条件としても良いし、それぞれ異なる条件、例えば粗加工用と仕上げ加工用の条件としても良い。また、チャックテーブル50と、研削部20とは、用途に応じて、必要数設ければ良い。
【0064】
次に、第二の実施形態における研削装置10の動作について図10(a)及び(b)に基づいて以下に説明する。
【0065】
図10(a)は、大口径の研削ホイール45を用いて被加工物Wを研削する様子を表した説明図である。この場合、第一実施形態における図6(a)及び図7(a)のようにスピンドル35の位置が、チャックテーブル50に対して水平方向でかつ離反する方向に位置(第一位置47とも称す)している。このとき研削ホイール45の砥石46の外周が被加工物Wの中心付近と接触しながら被加工物Wが研削される。
【0066】
図10(b)は、一方の研削部20に小口径の研削ホイール45を用い、他方の研削部20に大口径の研削ホイール45を用いて被加工物Wが研削される様子を表した説明図である。この場合、図示左側の研削部20は、図6(b)及び図7(b)のようにスピンドル35の位置が、チャックテーブル50に対して水平方向でかつ接近する方向(第二位置48とも称す)に位置している。このように、研削部20のスピンドル35の軸心位置を変更可能とすることにより、径の異なる研削ホイール45を用いて被加工物Wの加工を行うことが可能である。なお、研削ホイール45の径だけではなく、研削部20毎に砥石46がそれぞれ異なるものを用いることも可能である。
【0067】
なお、本発明の研削装置10は、第一及び第二の実施形態において、研削部20及びチャックテーブル50が、それぞれ独立に水平方向への傾斜が可能に構成されている。研削部20及びチャックテーブル50の水平方向への傾斜について、図11に基づいて詳細を説明する。
【0068】
図11は、第二の実施形態における研削部20及びチャックテーブル50のそれぞれの傾斜状態の説明図である。なお、図11において、理解が容易なように被加工物Wは実際より厚く描いている。また、図11において、理解が容易なように保持面51の中央部の盛り上がり並びに研削ホイール45及びチャックテーブル50の傾斜量も実際より誇張して描いてあることに留意されたい。
【0069】
上述のように、チャックテーブル50は、保持面51が円錐形状に形成されている。これは、保持面51が平坦であると、被加工物Wと砥石46の周速差により被加工物Wの中央部の研削量が増えて、被加工物Wを平坦に研削できないためである。なお、保持面51は、研削の条件に応じて、平坦なものや各種の形状のものを用いることが可能である。図示左側の研削部20は、研削ホイール45の軸心45a(スピンドル35の軸心35aと一致)が鉛直方向に設定されている。すなわち、砥石46の研削面が水平方向となるように設定されている。研削ホイール45の軸心45aの傾斜は、調整ボルト14とナット13の調整により、スピンドル35の軸心35aを傾斜させることで行うことができる。ここで、研削ホイール45の砥石46と被加工物Wとが、研削位置において平行に接触するようにチャックテーブル50の軸心50aが水平面に対して傾斜するように調整されている。
【0070】
一方、図示右側の研削部20は、研削ホイール45の軸心45aがチャックテーブル50の鉛直方向の軸心61に対して、図示右方向にθ度傾斜した状態に設定されている。これにより、被加工物Wと砥石46は、研削位置において、被加工物Wの外周側に多く接触する。従って、被加工物Wの中心部よりも外周側が多く研削される。なお、図示しないが、研削ホイール45の軸心45aを上述と反対側の図示左方向に傾斜した状態に設定することで、被加工物Wの中央部を外周側より多く研削することが可能である。上述の角度θは、研削条件に応じて任意に設定することが可能である。
【0071】
上述のように、本発明の研削装置10は、研削部20及びチャックテーブル50が、それぞれ独立に水平方向への傾斜が可能に構成されているので、被加工物Wを多様な形状に研削することが可能である。また、複数の研削部20を備える研削装置10において、研削部20毎に異なる研削ホイール45を用いる場合であっても、それぞれの研削部20に合った研削条件を設定することが可能である。
【0072】
図9のように、研削装置10は、2つの研削部20がそれぞれターンテーブル60の中心に対して120度方向となるように配置している。また、チャックテーブル50もターンテーブル60の中心に対して120度方向となるように配置している。上述のように研削部20及びチャックテーブル50を配置し、チャックテーブル50の傾斜方向を統一しておくことにより、それぞれの研削部20での研削条件の設定が容易になる。これは、ターンテーブル60の回転によりチャックテーブル50が、供給排出ポジション62、第一研削ポジション63及び第二研削ポジション64のそれぞれのポジションにおいて同一の軸心方向となって位置付けられることによる。
【0073】
以上が、本発明の実施形態であるが、上述の実施形態は、一実施形態を示したものに過ぎず、本発明は上述したものに限られない。
【0074】
上述の研削装置10の支持部22aにおける長孔26a又は開口の形状は、チャックテーブル50に対して水平方向かつ接近離反する方向に沿って開口しているものであれば各種のものが採用できる。例えば、支持部22aの前端側がU字形状やコの字形状に開口しているものであっても良い。すなわち、スピンドル35の軸心35aの位置が、チャックテーブル50に対して水平方向かつ接近離反する方向に移動可能となるような開口を設ければ良い。また、長孔26aや開口の形状もスピンドル35自体の形状やフランジの形状に合わせて、例えば、矩形状や楕円形状のものなど各種の形状のものが採用できる。
【0075】
上述の実施形態は、研削を主とした説明を行ったが、同様の機構を採用できる研磨分野においても使用できる。また、被加工物Wも円形のものを例として説明したが、四角形や三角形、楕円等の各種の形状の被加工物Wを研削することが可能である。なお、この場合、チャックテーブル50の形状も被加工物Wの外形に合わせて適宜変更すれば良い。
【0076】
また、チャックテーブル50の保持面51は、本実施形態においては、同心円状の仕切壁52で領域53を複数に区画したものであるが、保持する被加工物Wの形状に応じて、各種の形状に領域53を区画することが可能である。例えば、被加工物Wがオリフラを有する場合は、当該オリフラの部分を別途領域設定しても良い。領域53は、円形だけではなく、例えば、楕円、三角形、四角形等の各種の形状であっても良い。
【0077】
また、本発明の第二の実施形態は、ターンテーブル60に複数のチャックテーブル50を設け、研削部20を2連配したものであるが、ターンテーブル60に代えて、複数のテーブルを直列又は並列に配して被加工物Wを研削部20に送り込むものであっても良い。
【0078】
上述の実施形態においては、複数のブロック形状の砥石46を環状に配置したものを用いているが、本発明はこれに限定されず、各種の形状の砥石を用いることができる。例えば、円形状の全面が砥石で形成されているものや、適宜の角度を設けてブロック形状の砥石が複数配置されているものなどを採用することができる。
【0079】
上述の実施形態においては、第一接続部36のフランジ部29は、ベース部28上に立設して設けられているが、フランジ部29は、ベース部28に一体的に平坦に形成されていても良い。また、第一接続部36におけるフランジ部29の形状及び第二接続部37の形状は、円形だけではなく、例えば、楕円、四角形等、各種の形状のものを採用できる。また、第一接続部36におけるベース部28の形状も各種のものが採用できる。また、本実施形態においては、予め接続部27を移動させて支持部22aに固定してから、第一接続部36と第二接続部37が接続されるようにしたが、第一接続部36と第二接続部37を接続した後に、接続部27が移動されるものであっても良い。
【0080】
また、ベース部28におけるベース部開口28aは、各種の形状に形成することが可能である。例えば、ベース部開口28aは、長孔26a方向に沿った矩形状や楕円形状に形成されたものやフランジ部29の開口29aと連通する円状に形成されたものであっても良い。
【0081】
上述の実施形態においては、研削部20とチャックテーブル50の水平方向への傾斜は、3点の調整ボルト14で行うようにしたが、スペーサ、ジャッキ等で調整するようにしても良い。また、高さの調整は、適宜のゲージを設けて、条件に合わせてゲージの目盛で行うようにしても良い。
【0082】
本発明の研削装置10を用いると、1つの研削ホイール45に粗研削用の砥石46を装着し、他の研削ホイール45に仕上げ研削用の砥石46を装着することにより、一つの研削装置10内で連続的に粗研削及び仕上げ研削を行うことができる。この場合の研削方法は、例えば、研削ホイール45の回転を決めるステップと、チャックテーブル50の回転数を決めるステップと、チャックテーブル50の吸着する領域53を切り替えるステップと、研削ホイール45の傾斜を調整するステップと、チャックテーブル50の傾斜を調整するステップと、ターンテーブル60を回転させてターンテーブル60の粗研削ポジションから仕上げ研削ポジションに被加工物Wを移動させるステップ等からなる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、被加工物を研削する研削装置全般に適用が可能であり、特に半導体等のウエハを研削する用途に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
W 被加工物
10 研削装置
12 コラム
20 研削部
22 支持部
22a 支持部
22b 支持部
26a 長孔(配置部)
27 接続部
28 ベース部
28a ベース部開口
29 フランジ部
35 スピンドル
35a 軸心
36 第一接続部
37 第二接続部
41 ネジ穴(固定部)
45 研削ホイール
46 砥石
47 第一位置
48 第二位置
50 チャックテーブル
51 保持面
52 仕切壁
53 領域
57 傾斜調整機構
60 ターンテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11