IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェニックス電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ランプの点灯方法 図1
  • 特許-ランプの点灯方法 図2
  • 特許-ランプの点灯方法 図3
  • 特許-ランプの点灯方法 図4
  • 特許-ランプの点灯方法 図5
  • 特許-ランプの点灯方法 図6
  • 特許-ランプの点灯方法 図7
  • 特許-ランプの点灯方法 図8
  • 特許-ランプの点灯方法 図9
  • 特許-ランプの点灯方法 図10
  • 特許-ランプの点灯方法 図11
  • 特許-ランプの点灯方法 図12
  • 特許-ランプの点灯方法 図13
  • 特許-ランプの点灯方法 図14
  • 特許-ランプの点灯方法 図15
  • 特許-ランプの点灯方法 図16
  • 特許-ランプの点灯方法 図17
  • 特許-ランプの点灯方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】ランプの点灯方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/88 20060101AFI20230515BHJP
   H01J 61/54 20060101ALI20230515BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01J61/88 C
H01J61/54 B
G03F7/20 501
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019558157
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2018043624
(87)【国際公開番号】W WO2019111769
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2017236525
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】池田 富彦
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-003846(JP,A)
【文献】特開2010-056219(JP,A)
【文献】特開2010-123804(JP,A)
【文献】特開2011-014766(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090489(WO,A1)
【文献】特開2012-212836(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光対象物を露光する露光時間には、ランプに対して露光用電力を供給し、
前記露光時間以外には、前記ランプに対して、前記露光用電力よりも低く、かつ、前記ランプの点灯状態を維持できる待機電力を供給するランプの点灯方法であって、
前記ランプはLEDであり、前記露光用電力を供給する時間は、
前記LEDのジャンクション温度が前記露光用電力を前記LEDに供給し続けた場合における前記LEDの定常ジャンクション温度に到達する時間よりも短く
前記LEDに供給する前記露光用電力を上昇させた直後に生じる前記LEDからの光の照射強度のピークが生じるまでの時間よりも長く、かつ、
露光するフォトレジストの受光感度に合わせてひとつの前記露光時間を少なくとも第1露光時間と第2露光時間とに分けるとともに、前記第1露光時間および前記第2露光時間における光の照射強度をそれぞれ設定し、前記露光時間の間に前記ランプからの照射強度を設定した前記照射強度に変化させることを特徴とする
ランプの点灯方法。
【請求項2】
前記露光時間以外には、前記ランプに対して供給する電力を停止して消灯させることを特徴とする請求項1に記載の点灯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プリント配線基板等の露光に用いる光を発するランプの点灯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に部品を実装するために樹脂やガラスエポキシ材の基板上に銅等の金属で配線パターンを形成したプリント配線基板が用いられている。これらのプリント配線基板上への配線パターンの形成にはフォトエッチング技術が用いられている。フォトエッチングは、配線となる金属層が全面に形成された基板上全面に、感光性の薬剤であるフォトレジストを塗布し、これに配線パターンと同一のフォトマスクを通して露光装置からの照射光を照射することによって行う。
【0003】
フォトレジストには、照射光によりフォトレジストの溶解性が低下するネガ型フォトレジストと、逆に照射光によりフォトレジストの溶解性が増大するポジ型フォトレジストがある。照射光により溶解性が相対的に増大したフォトレジスト部分を化学処理して取り除き、露出した金属層をエッチングにより除去するとフォトレジストが残った部分の下にある金属層だけが残り、フォトレジストを除去することで配線パターンが基板上に形成される。ポジ型、ネガ型いずれのフォトレジストに照射光を照射する場合でも、照射面全面に亘って均一な露光量を確保するために、光源として、1灯当りの発光量が多い放電灯が使用されている。
【0004】
放電灯は、発光管における気密された内部空間において互いに離間対向して配置された一対の電極同士の間でアーク放電を生じさせることにより、当該内部空間に封入された水銀を励起させて紫外光を発光させるようになっている。
【0005】
フォトレジストの種類によって、最適な露光時間、つまり、放電灯からの光をフォトレジストに照射する時間長さが決まっている。このため、放電灯と露光対象物(フォトレジストなど)との間にシャッターを配置し、必要な時間だけシャッターを開けることによって露光対象物を最適な露光時間で露光し、それ以外の間(例えば、露光対象物を取り替えている間など)はシャッターを閉じておくことが一般的に実施されている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-373840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の露光方法には問題があった。露光時間をシャッターで制御することにより、ランプは露光を実施していないときでも発光を続けておく必要があることから、電力の無駄が生じるとともに、常に定格電力で発光しているランプの長寿命化を図ることができなかった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、露光対象物の露光に寄与しない無駄な電力を低減できるとともに、ランプの長寿命化を図ることのできる放電灯の点灯方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面によれば、
露光対象物を露光する露光時間には、ランプに対して露光用電力を供給し、
前記露光時間以外には、前記ランプに対して、前記露光用電力よりも低く、かつ、前記ランプの点灯状態を維持できる待機電力を供給するランプの点灯方法であって、
前記ランプはLEDであり、前記露光用電力を供給する時間は、
前記LEDのジャンクション温度が前記露光用電力を前記LEDに供給し続けた場合における前記LEDの定常ジャンクション温度に到達する時間よりも短く
前記LEDに供給する前記露光用電力を上昇させた直後に生じる前記LEDからの光の照射強度のピークが生じるまでの時間よりも長く、かつ、
露光するフォトレジストの受光感度に合わせてひとつの前記露光時間を少なくとも第1露光時間と第2露光時間とに分けるとともに、前記第1露光時間および前記第2露光時間における光の照射強度をそれぞれ設定し、前記露光時間の間に前記ランプからの照射強度を設定した前記照射強度に変化させることを特徴とする
ランプの点灯方法が提供される。
【0012】
好適には、前記ランプがLEDの場合において、前記露光時間以外には、前記ランプに対して供給する電力を停止して消灯させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、露光対象物の露光に寄与しない無駄な電力を低減できるとともに、ランプの長寿命化を図ることのできるランプの点灯方法を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が適用された露光機10の一例を示す図である。
図2】本発明が適用された露光装置50の一例を示す図である。
図3】本発明が適用された露光装置50の一例を示す平面図である。
図4】本発明が適用された光源装置100の一例を示す断面図である。
図5】放電灯110の一例を示す断面図である。
図6】本発明に係る点灯方法による、放電灯110に供給する電力の一例を示すグラフである。
図7】本発明に係る点灯方法による、放電灯110に供給する電力の他の一例を示すグラフである。
図8】本発明に係る点灯方法による、放電灯110に供給する電力の他の一例を示すグラフである。
図9】本発明に係る点灯方法による、放電灯110に供給する電力の他の一例を示すグラフである。
図10】本発明に係る点灯方法による、放電灯110に供給する電力の他の一例を示すグラフである。
図11】従来の点灯方法による、放電灯に給電する電力、および、発光管部の内部空間の圧力の一例を示すグラフである。
図12】本発明に係る点灯方法による、放電灯110に供給する電力、および、発光管部112の内部空間116の圧力の一例を示すグラフである。
図13】変形例1に係る点灯方法による、LEDに電力の供給を開始してからの経過時間と、当該LEDから照射される光の照射強度との関係の一例を示すグラフである。
図14】変形例2に係る点灯方法による、露光時間内における光の照射強度の一例を示す図である。
図15】変形例2に係る点灯方法による、露光時間内における光の照射強度の一例を示す図である。
図16】変形例2に係る点灯方法による、露光時間内における光の照射強度の一例を示す図である。
図17】変形例2に係る点灯方法による、露光時間内における光の照射強度の一例を示す図である。
図18】変形例2に係る点灯方法による、露光時間内における光の照射強度の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
(露光機10の構成)
図1は、本発明が適用された実施例1に係る露光機10を示す。露光機10は、大略、露光装置50と、インテグレータ12と、凹面鏡14と、照射面16と、シャッター24とで構成されている。
【0017】
露光装置50は、露光対象物Xの露光に適した波長を含む光を放射する。露光装置50の詳細については、露光機10の構成を説明した後で説明する。
【0018】
インテグレータ12は、露光装置50からの光を受け入れる入射面18、および、受け入れた光の均一性を高めたうえで当該光を出射する出射面20を有している。入射面18および出射面20には、それぞれ、複数のフライアイレンズ21が形成されている。
【0019】
凹面鏡14は、その内側に反射凹面22を有している。この凹面鏡14は、インテグレータ12から出射された光を反射凹面22で反射させて平行光にする。
【0020】
照射面16は、凹面鏡14からの平行光を受ける光であり、当該平行光に対して略直交する向きに配置されている。この照射面16には、露光対象物Xが載置される。露光対象物Xの表面には、例えば感光剤やフォトレジストが塗布されている。凹面鏡14からの平行光が露光対象物Xにおける所望の領域を照射することにより、露光対象物Xの表面に所望の回路パターン等が形成される。
【0021】
シャッター24は、インテグレータ12の出射面20側に配置された、放電灯110からの光の路(光路)を開閉する装置である。露光対象物Xの露光時間に合わせてシャッター24が開けられることにより、放電灯110からの光が露光対象物Xに到達し、露光時間以外の時間はシャッター24が閉じられることにより、放電灯110からの光が不所望に照射面16に到達しないようになっている。なお、シャッター24を配設する位置は、本実施例に限定されるものではなく、放電灯110から露光対象物Xまでの間の光路上における他の位置に配設してもよい。
【0022】
(露光装置50の構成)
図2は、本発明が適用された実施例1に係る露光装置50を示す図である。また、図3は、露光装置50の平面図である。露光装置50は、複数の光源装置100と、フレーム52と、放電灯用スイッチ53と、放電灯用電源54と、制御部60とを備えている。
【0023】
光源装置100は、露光対象物Xの露光に適した波長を含む光を放射する。光源装置100は、図4に示すように、大略、放電灯110と、リフレクタ150と、絶縁ベース170とで構成されている。なお、リフレクタ150と絶縁ベース170とをまとめてリフレクタ容器151と記載することがある。
【0024】
放電灯110は、図5に示すように、発光管部112と、当該発光管部112から延出する一対のシール部114とを有している。発光管部112および一対のシール部114は、石英ガラスで一体的に形成されている。さらに、発光管部112内にはシール部114によって密閉された内部空間116が形成されている。
【0025】
放電灯110の各シール部114内には、埋設されたモリブデン製の箔118と、一端が箔118の一方端部に接続されているとともに他端が内部空間116内に配置されたタングステン製の一対の電極120と、一端が箔118の他方端部に接続されているとともに他端がシール部114から外部へ延出する一対のリード棒122とがそれぞれ設けられている。また、内部空間116には、所定量の水銀124およびハロゲン(例えば臭素)が封入されている。
【0026】
放電灯110に設けられた一対のリード棒122に所定の高電圧を印加すると、発光管部112の内部空間116に設けられた一対の電極120間で開始したグロー放電がアーク放電に移行し、このアークによって蒸発および励起された水銀124によって光(主に紫外線)が放射される。
【0027】
図4に戻って、本実施例にかかる光源装置100では、一方のシール部114がリフレクタ150のシール部挿設孔156に挿設されている。なお、放電灯110は、交流点灯用でも直流点灯用でもよい。
【0028】
リフレクタ150は、椀状の反射面152をその内側表面に有している。この反射面152は、リフレクタ150の内側に発光管部112が位置するように配置された放電灯110からの光の一部を反射させる。本実施例では、この反射面152は回転放物面で規定されている。また、放電灯110における発光点(概略、内部空間116における一対の電極120間に形成されたアークの中央位置)は当該回転放物面の焦点に一致している。これにより、放電灯110の発光点から放射され、反射面152で反射した後、リフレクタ150の開口154から出た光は、ほぼ平行光となる。もちろん、反射面152の形状はこれに限定されるものではなく、回転楕円面やその他の回転面、あるいは回転面以外の形状であってもよい。また、発光点を焦点に一致させることは必須ではなく、必要に応じて、発光点を焦点からずらしてもよい。
【0029】
また、リフレクタ150における開口154とは反対側からは、底頸部155が突設されている。さらに、リフレクタ150の反射面152には、放電灯110にける一方のシール部114が挿設されるシール部挿設孔156が形成されている。このシール部挿設孔156は、反射面152の底から底頸部155の先端にかけて形成されている。
【0030】
図1に示すように、放電灯110にリフレクタ150を組み合わせることにより、放電灯110から放射された光は、反射面152の中心軸CLに沿って進む光を中心として所定の角度(開き角)をもった範囲でリフレクタ150の前方に進むようになる。
【0031】
図4に戻り、絶縁ベース170は、セラミック等の電気的絶縁体で形成されており、リフレクタ150の底頸部155およびシール部挿設孔156に挿設された放電灯110における一方のシール部114が挿入されるリフレクタ挿入穴172が形成されている。底頸部155およびシール部114がリフレクタ挿入穴172に挿入されることにより、絶縁ベース170がシール部挿設孔156を外側から覆うことになる。
【0032】
また、絶縁ベース170には、上述したリフレクタ挿入穴172に連通する内側空間174が形成されており、さらに当該内側空間174と外側とを互いに連通して電源ケーブルAが挿通される電源ケーブル挿通穴176が形成されている。
【0033】
さらに、絶縁ベース170および放電灯110は、電気絶縁性および高い熱伝導性を有する無機接着剤Cによって互いに固定されている。具体的に説明すると、絶縁ベース170のリフレクタ挿入穴172にリフレクタ150の底頸部155の端部、および、放電灯110の一方のシール部114を挿入し、さらに、絶縁ベース170の内側空間174に電源ケーブルAを配置した状態で、当該内側空間174に無機接着剤Cが充填されている。
【0034】
図3に戻り、フレーム52は、複数の光源装置100が装着される複数の凹所58が形成された略直方体状の部材である。
【0035】
図2に戻り、放電灯用電源54は、フレーム52に取り付けられた各光源装置100の放電灯110に必要な電力を供給する。また、放電灯用スイッチ53は、放電灯110に供給する電流をオン・オフする。
【0036】
制御部60は、放電灯用電源54を操作して、放電灯用電源54から放電灯110に供給される電力を制御する機能を有する。具体的には、図6に示すように、制御部60は、放電灯用電源54が露光対象物Xを露光する際には、その露光に必要な時間(露光時間)だけ露光用電力H(例えば、放電灯110の定格電力)を供給する。また、上記露光時間以外には、放電灯110に対して露光用電力Hよりも低く、かつ、放電灯110の点灯状態を維持できる待機電力Lを供給するように制御を行う。
【0037】
なお、図6では、放電灯用電源54がパルス波形状の露光用電力Hを供給する例を示しているが、放電灯用電源54を供給する露光用電力Hの波形はこれに限定されるものではなく、図7に示すように、待機電力Lから露光用電力Hまで、一次関数的(直線的)に増加および減少させてもよいし、図示しないが、二次関数的(放物線的)に増加および減少させてもよい。さらに言えば、例えば図8に示すように、露光時間における露光用電力Hの値は一定でなくてもよい。図8のように、露光時間の前半で比較的高い露光用電力が供給され、露光時間の後半では比較的低い露光用電力が供給されている場合でも、露光時間内に供給される電力量(電力を時間積分した値)が図6図7のパターンと同等であればよい。また、露光対象物X(例えばレジスト)の特性に応じて、図9および図10に示すように、露光時間中に放電灯110に供給する電力を変化させて放電灯110の発光強度を変化させてもよい。
【0038】
このように、露光時間中に放電灯110に供給する電力を変化させることにより、フォトレジストの反応度合いに応じて短時間の電力調整が可能となり、フォトレジストの光反応に適した光量を供給することができる。
【0039】
(露光装置50の動作)
露光装置50の電源スイッチ(図示せず)が投入されると、放電灯用スイッチ53がオンになり、放電灯用電源54から光源装置100の放電灯110に対する給電が開始される。給電が開始されると、放電灯110が点灯する。なお、この段階で放電灯用電源54から放電灯110に供給される電力は待機電力Lである。
【0040】
然る後、露光対象物Xに対する露光作業が開始されて、露光機10の照射面16に露光対象物Xが配置されると、放電灯用電源54は所定の時間(つまり、所定の露光時間)、放電灯110に対して開始電力より高い露光用電力Hを供給する。また、これと同時に露光機10のシャッター24が開き、放電灯110からの露光用の光が露光対象物Xに照射されて、露光作業が実施される。
【0041】
所定の露光時間に到達すると、シャッター24が閉じられるとともに、放電灯用電源54から放電灯110に供給される電力が露光用電力Hから待機電力Lに戻る。その後、露光が終わった露光対象物Xが未露光の露光対象物Xに取り替えられて、再び、上述した露光作業が行われる。以降、この露光作業が繰り返される。
【0042】
(露光装置50の特徴)
本実施例によれば、シャッター24が閉じられており、露光対象物Xの露光を実施しないときには、放電灯用電源54から放電灯110に対して待機電力Lが供給されており、シャッター24が開けられ、露光対象物Xの露光が実施される際には、放電灯用電源54から放電灯110に対して、待機電力Lよりも高い露光用電力Hが供給される。
【0043】
これにより、シャッター24が閉じられていることから放電灯110からの光が露光対象物Xの露光に寄与しない時には比較的低い待機電力Lが放電灯110に供給されるので無駄な電力を低減することができる。
【0044】
また、放電灯110を常に定格電力で点灯させ続ける従来の方法に比べて、定格電力よりも低い待機電力Lで放電灯110を点灯させる時間が長くなることから、放電灯110の長寿命化を図ることができる。
【0045】
さらに、点灯中の放電灯110における発光管部112の内部空間116の圧力に着目すると、放電灯110を常に定格電力で点灯させ続ける従来の方法の場合、図11に示すように、放電灯110に供給される電力、および、内部空間116の圧力は、ほぼ一定である。これに対し、本実施例による放電灯110の点灯方法の場合、図12に示すように、待機電力Lを供給しているときにおける内部空間116の圧力は比較的低く、露光用電力Hの供給を開始すると、当該圧力が上昇し始める。上昇をはじめた圧力は、露光用電力Hから待機電力Lに戻したときに最大となり、低下し始める。以後、このような挙動が繰り返される。
【0046】
本実施例による放電灯110の点灯方法によれば、露光用電力Hを供給する時間は、放電灯110の内圧(発光管部112における内部空間116の圧力)が当該露光用電力Hを放電灯110に供給し続けた場合における放電灯110の定常内圧(つまり、図8に例示するような圧力状態)に到達する時間よりも短い。このため、露光対象物Xの露光作業を実施しているときの露光用電力Hを従来の方法における定格電力と一致させて同量の光を放射させたとしても、放電灯110の発光管部112における内部空間116のピーク圧力は従来の方法を採用した場合と比べて低く抑えることができる。
【0047】
このように発光管部112における内部空間116の圧力を低く抑えると、放電灯110から放射される光に含まれている、可視光の中でも比較的波長の短い光(短波長光)、および紫外光の割合が増加する。短波長光の割合が増加すると、露光対象物Xに設けられたレジストの露光効率が向上する。以上のことから、本実施例による放電灯110の点灯方法によれば、露光対象物Xの露光効率の向上にも寄与することができる。
【0048】
(変形例1)
上述した実施例では、ランプとして放電灯110を使用する場合の点灯方法について説明したが、放電灯110に代えて、LED(発光ダイオード)やレーザーをランプとして使用してもよい。
【0049】
とりわけ、LEDをランプとして使用する場合、当該LEDのジャンクション温度(LEDを発光させたときに発熱する、P型半導体とN型半導体とが互いに接合する接合部の温度)が露光用電力をLEDに供給し続けた場合におけるLEDの定常ジャンクション温度に到達するまでの時間よりも短い時間で露光用電力を供給する。
【0050】
これにより、毎回の露光時間において、LEDに供給する電力を上昇させた直後に生じる、LEDからの光(紫外線)の照射強度のピーク(図13参照)を使用できるので、より効率よく露光対象物を露光できる。
【0051】
さらに言えば、上述した実施形態では、露光時間以外には露光用電力Hよりも低い待機電力Lが供給されていたが、ランプとしてLEDやレーザーを使用する場合は、露光時間以外には供給する電力を停止して当該LEDやレーザーを消灯させるようにしてもよい。
【0052】
(変形例2)
ランプとしてLEDやレーザを使用する場合も、もちろん放電灯110を使用する場合も、露光時間内における光源装置100から照射される光の照射強度を一定にしてもよいし、これに代えて、図14に示すように、連続露光時間を例えば2つ(「第1露光時間」と「第2露光時間」)に分けて、これら第1露光時間と第2露光時間とで、光源装置100から照射される光の照射強度を変化させるようにしてもよい。
【0053】
上述した図14では、第1露光時間では照射強度を強く、第2露光時間ではこれに比べて照射強度を弱くする例を示しているが、もちろん、図15に示すように、第1露光時間では照射強度を弱く、第2露光時間ではこれに比べて照射強度を強くしてもよい。また、図16に示すように、第1露光時間では照射強度を漸増していき、第2露光時間では照射強度を一定にしてもよい。さらに言えば、連続露光時間を3つ以上に分けてもよく、例えば、図17に示すように、第1露光時間では照射強度を漸増していき、第2露光時間では照射強度を一定にし、第3露光時間では照射強度を漸減してもよい。また、図18に示すように、第1露光時間では照射強度を急激に漸増していき、第2露光時間では照射強度を最初に急落させた後に一定とし、第3露光時間では照射強度を最初に急増させた後に二次関数的に漸減させてもよい。このように照射強度を変化させることは、ランプとしてLEDやレーザを使用する場合も、もちろん放電灯110を使用する場合も可能である。
【0054】
このように、露光時間中にランプに供給する電力を変化させることにより、フォトレジストの反応度合いに応じて短時間の電力調整が可能となり、フォトレジストの光反応に適した光量を供給することができる。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
10…露光機、12…インテグレータ、14…凹面鏡、16…照射面、18…入射面、20…出射面、21…フライアイレンズ、22…反射凹面、24…シャッター
50…露光装置、52…フレーム、53…放電灯用スイッチ、54…放電灯用電源、58…凹所、60…制御部
100…光源装置
110…放電灯、112…発光管部、114…シール部、116…内部空間、118…箔、120…電極、122…リード棒、124…水銀
150…リフレクタ、151…リフレクタ容器、152…反射面、154…開口、155…底頸部、156…シール部挿設孔
170…絶縁ベース、172…リフレクタ挿入穴、174…内側空間、176…電源ケーブル挿通穴
X…露光対象物、H…露光用電力、L…待機電力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18