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特許7278646コラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物および新しい皮革製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】コラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物および新しい皮革製品
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20230515BHJP
   D01C 3/00 20060101ALI20230515BHJP
   D03D 15/233 20210101ALI20230515BHJP
   D03D 15/37 20210101ALI20230515BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20230515BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20230515BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B32B5/26
D01C3/00 C
D03D15/233
D03D15/37
D04B1/14
D04B21/00 B
D06N3/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021519125
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2019078252
(87)【国際公開番号】W WO2020073602
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】201811175017.5
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521101631
【氏名又は名称】広東五源新材料科技集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG WUYUAN NEW MATERIAL TECHNOLOGY GROUP CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.22,Xianke Second Road,Huadu District Guangzhou,Guangdong 510800 CN
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 立文
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-030979(JP,A)
【文献】特開平02-033367(JP,A)
【文献】特表2007-532786(JP,A)
【文献】特開平06-293116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D01B1/00-9/00
D01C1/00-5/00
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
D03D1/00-27/18
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
D06M13/00-15/715
D06N1/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニットまたは梭織の織層を含む新規な織物であって、コラーゲン繊維束をさらに含み、コラーゲン繊維束がニットまたは梭織の織層中の下糸に差し込まれてニットまたは梭織の織層の表面に突出し、突出したコラーゲン繊維束とその分岐がニットまたは梭織の織層の表面に互いに織り込まれて網状構造を形成し、ここで、コラーゲン繊維束の一部の分岐は、この一部の分岐の少なくとも一端をニットまたは梭織の織層から突出させるように下糸に差し込まれ、ニットまたは梭織の織層と網状構造で形成された新規な織物は、後仕上げ工程を経て、コラーゲン繊維束とその分岐が下糸と繰り返して絡み合い、織り込まれ、複数の連続したVまたはW字形の組織構造を形成し、当該新規な織物を水洗いすると、線維間物質の存在によって織物が硬くなるという現象が現れにくくなることを特徴とする、コラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物。
【請求項2】
コラーゲン繊維束がニットまたは梭織の織層の一面に網状構造を形成し、またはコラーゲン繊維束がニットまたは梭織の織層の両面にそれぞれ網状構造を形成することを特徴とする、請求項1に記載のコラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物。
【請求項3】
コラーゲン繊維束は、1つ以上の連続して接続された「V」字形の組織からなる1つ以上の構造をニットまたは梭織の織層に形成することを特徴とする、請求項1に記載のコラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物。
【請求項4】
ニットまたは梭織の織層と網状構造で形成された新規な織物であって、該新規な織物は、後仕上げ工程を経て、コラーゲン繊維束とその分岐が下糸と繰り返して絡み合い、織り込まれ、複数の連続したVまたはW字形の組織構造を形成し、ニットまたは梭織の織層の下糸にはコラーゲン繊維束糸が差し込まれており、ニットまたは梭織の織層の表面から突出したコラーゲン繊維束糸は、散りばめられた網状構造を呈し、当該新規な織物を水洗いすると、線維間物質の存在によって織物が硬くなるという現象が現れにくくなることを特徴とする、コラーゲン繊維束糸で形成された新規な織物。
【請求項5】
ニットまたは梭織の織層の表面から突出したコラーゲン繊維束糸は、コラーゲン繊維束とその分岐がニットまたは梭織の織層の表面に互いに織り込まれている網状構造を呈することを特徴とする、請求項4に記載のコラーゲン繊維束糸で形成された新規な織物。
【請求項6】
新規な織物の一面に皮革表面層が設けられることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物を用いて製造された新しい皮革製品。
【請求項7】
新規な織物の一面に皮革表面層が設けられることを特徴とする、請求項4または5に記載のコラーゲン繊維束糸で形成された新規な織物を用いて製造された新しい皮革製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物および新しい皮革製品に関する。
【背景技術】
【0002】
製革は主に動物皮を使用し、動物皮の縦断面は、表皮層、真皮層および皮下組織の3層に分けられ、真皮は、表皮層と皮下組織の間にあり、乳頭層と網状層に分けられている。乳頭層は、表皮層に近い疎性結合組織の薄層で、表皮層に向かって突出して真皮乳頭を形成し、革が形成された後、乳頭層の表面は革のグレイン面とも呼ばれるため、この層は製革業界ではグレイン面層と呼ばれる。網状層は、乳頭層の下にある厚い緻密結合組織で、中には太いコラーゲン繊維束が網状に織り込まれており、皮革に大きな弾性と靭性を与えている。
【0003】
製革とは、生皮をなめして革にする過程である。毛髪と非コラーゲン繊維などを取り除き、真皮層のコラーゲン繊維を適切にほぐし、固定して強化した後、仕上げなどの化学的・機械的な一連の処理を施すことで、皮を皮革にする。
【0004】
動物の皮革は、主に繊維成分と非繊維成分で構成されており、繊維成分は、主にコラーゲン繊維、弾性繊維および網状繊維で構成され、非繊維成分は、血管、汗腺、脂質腺、毛包、筋肉、リンパ管、神経、線維間物質や脂肪細胞などで構成される。
【0005】
網状層中のコラーゲン繊維束の織り方は、菱形形状、曲げ形状および波形状の3種類に分割され得る。菱形形状の織り方は、コラーゲン繊維束が太くて真っ直ぐで、大きな角度で交差して菱形形状を形成するという特徴を有し、網状層が発達すればするほど、この特徴が顕著になる。曲げ形状の織り方は、コラーゲン繊維束が細くて湾曲し、動物皮革の表面に平行であるように互いに織り込まれており、ループ、分岐など様々な形状を形成するという特徴を有する。波形状の織り方は、コラーゲン繊維束が細くて緩く、動物皮革の表面に平行であるように交差織りされているという特徴を有する。
【0006】
動物皮革の弾性繊維は、建築物で言えば鉄筋のようなもので、動物皮革中の他の組織(毛包、汗腺、脂質腺、血管など)を一定の位置に固定するため、動物皮革の支持体や骨格の役割を果たしている。
【0007】
網状繊維は、レティキュリンで構成され、形態的には、コラーゲン繊維のように束ねられておらず、分岐して一体化され、性質的には、コラーゲン繊維と類似し、緻密な網膜を形成してコラーゲン繊維束の表面を取り囲み、緩いネッティングを形成して繊維束を束ねて保護し、製革加工では、網状繊維がコラーゲン繊維束の緩みを抑える役割をある程度果たしている。
【0008】
動物皮革の繊維構造と細胞組織の間には、主にアルブミン、グロブリン、ムチン、ムチン様タンパク質および糖類物質で構成されるゼラチン状物質が充填されている。このようなゼラチン状物質は、線維間物質と呼ばれる。それらはコラーゲン繊維の間に浸透して潤滑効果を果たし、動物皮革が徐々に水分を失っていくと、線維間物質が固化して硬くなり、動物皮革中の繊維構造がしっかりと密着して、動物皮革が非常に硬くなる。製革の準備段階では、繊維構造をほぐして化学薬品を浸透させるために、皮から線維間物質を取り除くことが非常に重要である。しかし、実際の加工では、動物皮革の特殊な構造のため、線維間物質を完全に取り除くことは困難である。
【0009】
上記動物皮革の構造に基づいて、(1)動物皮革では、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれて網状構造を形成しているだけでなく、コラーゲン繊維束間、およびコラーゲン繊維束と他の弾性繊維、網状繊維、非繊維成分などが共同で特殊な立体網状構造を形成しており、その中で弾性繊維が動物皮革の支持体や骨格の役割を果たしている。(2)コラーゲン繊維束は、動物皮革において粗さの異なる構造が存在することで、動物皮革の中で、菱形形状の網状層、曲げ形状の網状層や波形状の網状層などの異なる網状構造形態が形成され、かつ動物皮革の中で異なる層に形成される。(3)製革加工工程では線維間物質を完全に除去することが難しいため、動物皮革が徐々に水分を失っていくと、線維間物質が固化して硬くなり、そこで、生皮の硬化を避けるために、通常は動物皮革に潤滑の役割を果たす加脂剤を添加し、しかし、加脂剤を添加した動物皮革を水洗いすると、加脂剤が失われ、生皮が硬くなり、従って、動物皮革は水洗いに適していない。
【0010】
毛皮とは、毛皮を持つ動物皮をなめし、染色し、仕上げることによって得られる利用価値のある製品を指す。ファーとも呼ばれる。毛皮は毛皮層と皮膚層の2つの部分で構成され、その価値は主に毛皮層によって決定される。毛皮は皮膚層がしなやかで、毛皮層が緩やかで、光沢があり、美しく、暖かく、耐久性に優れており、衣類、ショール、帽子、襟、手袋、クッション、タペストリーや玩具などの製品の製造に使用されている。毛皮の毛は、毛包から生え、毛と動物皮革の間には「V」や「W」の構造がなく、製革が完了した後、動物皮革の構造によって毛と動物皮革との接続強度が変わる。
【0011】
人工毛皮は、動物毛皮に似たシャギーパイル織物の外観を持っている。人工毛皮は、コート、衣類の裏地、帽子、襟、玩具、マットレス、室内装飾物やカーペットなどによく使われている。
【0012】
人工毛皮の製造方法には、ニットや機織などがあり、ニット横編み法が最も急速に成長し、最も広く使用されている。ニットで編む時には、カーディング機構がスライバーを単繊維状に分散させ、編み針がその繊維を掴んで下糸に編み上げ、綿毛は、編目の中で「V」字形または「W」字形を呈するため、編んだ基布の形を整え、毛が抜けないという特徴がある。綿毛が形成され、その綿毛組織の織物が厚く、柔らかく、保温性に優れているため、冬の防寒着に適している。
【0013】
現在、新世代の人工毛皮の表面層には、羊毛または羊毛とポリエステル繊維、ビスコース繊維などの混紡糸が使用されているが、通常の燃焼法では、燃焼後にいずれも焼結現象が起こらず、焦げた羊毛の匂いがする粉末となるため、人工毛皮か天然毛皮かを区別することが困難である。
【0014】
2006年第10号の『毛紡科学技術』では、「人工毛皮の製織とその応用」が開示され、具体的には、下糸が天然繊維および/または合成繊維を使用し、綿毛が合成繊維を使用し、中ではアクリロニトリル系および変性アクリロニトリル系繊維が主流であるが、綿毛として羊毛、モヘア、アルパカなどの動物毛を使用することもできることが開示されている。その構造としては、合成繊維または動物毛を下糸に差し込んで下糸と共にループ状にし、仕上げ工程で合成繊維または動物毛の先端をニット織物の表面から突出させて綿毛状を形成する。
【0015】
『2017年全国編み物技術交流会論文集』では、「編み物の人工毛皮の製造と後仕上げ」が開示され、具体的には、当該人工毛皮織物、すなわちシャギーパイル織物の編み物は、繊維束またはパイル糸をまとめて差し込んでループ状に織り、同時に、繊維束またはパイル糸の先端を織物の表面に露出させて綿毛状に形成することが開示されている。シャギーパイル織物の表面のパイルは、比較的きちんとした別珍であってもよく、動物毛皮の「剛毛」や「綿毛」のように長さが異なってもよく、その外観は天然の毛皮に非常に近い。綿毛は、編目で「V」または「W」字形を呈する。
【0016】
中国特許出願第201720073980.7には、離脱防止および帯電防止人工毛皮が開示されており、それは、基布、人工毛、接着層および防水層を含み、前記基布は、経糸および緯糸を上下に織り込んで形成された平織組織構造であり、経糸は、導電性繊維を介して他の経糸と間隔を置いて配列され、人工毛の両端は、隣接する経糸の間の緯糸をそれぞれ通過して基布の前面から突出し、基布の裏面には接着層が設けられ、基布の裏面にある人工毛の部分は、接着層内で接着層により固定され、接着層の下には防水層が設けられる。隣接する経糸の挟み込みと接着層の固定により、基布への人工毛の接着力を強化し、人工毛の抜けを軽減することができる。導電性繊維は、発生した静電荷の分散・伝達、および、コロナ放電による電荷の中和・除去に寄与することで、静電気現象の発生を効果的に抑制することができ、帯電防止効果に優れている。
【0017】
中国特中国特許出願第201720074297.5には、両面人工毛皮が開示されており、それは、基布1、基布2、人工毛、接着層1、接着層2、接着層3、接着層4、抗菌層1、抗菌層2および防水層を含み、基布1と基布2は、経糸と緯糸を上下に織り込んで形成された平織組織構造であり、経糸は、導電性繊維を介して他の経糸と間隔を置いて配列され、人工毛の両端は、隣接する経糸の間の緯糸をそれぞれ通過して、基布1および基布2の前面から突出し、基布1および基布2の裏面には、それぞれ接着層1および接着層2が設けられ、基布1および基布2の裏面にある人工毛の部分は、それぞれ接着層1および接着層2内で接着層1および接着層2によって固定され、接着層1の他面は抗菌層1であり、接着層2の他面は抗菌層2であり、抗菌層1の他面は接着層3であり、抗菌層2の他面は接着層4であり、接着層3の他面、接着層4の他面はそれぞれ防水層である。両面で使用でき、抗菌と防水効果に優れている。
【0018】
上記のどの人工毛皮であっても、綿毛を形成する素材は一般的に合成繊維や動物毛などであり、これらの素材はすべてモノフィラメントの未分岐構造であり、合成繊維や動物毛を下糸に差し込む際には、合成繊維または動物毛の一端を、下から下糸に通し、次に下糸の他側から上に通すことで、合成繊維または動物毛は、下糸から突出して綿毛になり、かつ、隣接する下糸で挟み込んで固定され、このようにして、挟み込み力が不十分になると、脱毛現象が起こりやすく、また、各綿毛が一本の織り点で下糸と接続され、接続強度が低いため、人工毛皮の力学的特性が低下し、さらに、厚い綿毛を形成しようとする場合には、多くの合成繊維または動物毛が必要となる。
【0019】
既存の毛皮の綿毛は、モノフィラメント繊維または動物毛を使用するため、下糸織層の外側に網状構造を形成することができない。
【0020】
現在の実際の製革製造過程では、大量の皮革切れ端が発生しているが、現状では皮革切れ端を有効に利用することができず、多くの廃棄物や環境汚染が発生してしまう。
【発明の概要】
【0021】
本発明の第1の目的は、コラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物を提供することであり、本発明の構造によれば、コラーゲン繊維束とその分岐が下糸に差し込まれ、かつコラーゲン繊維束とその分岐が下糸織層の表面に互いに織り込まれて網状構造が形成され、新規な織物は、力学的特性に優れ、広く応用されている。
【0022】
本発明の第2の目的は、コラーゲン繊維束糸で形成された新規な織物を提供することであり、本発明の構造によれば、新規な織物は、力学的特性に優れ、製品の種類が多く、応用領域が広い。
【0023】
本発明の第3の目的は、コラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物を用いて製造された新しい皮革製品を提供することである。当該構造の皮革製品は、力学的特性に優れ、水洗いが可能で、本革のような衛生的な特性を有し、コラーゲン繊維の優れた特性を十分に発揮する。
【0024】
本発明の第4の目的は、コラーゲン繊維束糸で形成された新規な織物を用いて製造された新しい皮革製品を提供することである。当該構造の皮革製品は、力学的特性に優れ、水洗いが可能で、本革のような衛生的な特性を有し、コラーゲン繊維の優れた特性を十分に発揮する。
【0025】
上記第1の目的を達成するためのコラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物であって、下糸織層を含み、コラーゲン繊維束をさらに含み、コラーゲン繊維束が下糸織層中の下糸に差し込まれて下糸織層の表面に突出し、突出したコラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれて網状構造を形成し、ここで、コラーゲン繊維束の一部の分岐は、この一部の分岐の少なくとも一端を下糸織層から突出させるように、下糸に差し込まれる。
【0026】
コラーゲン繊維束は動物皮革から採取され、皮革は、動物の皮膚から表皮層と皮下組織層を除去して残された真皮層に対して、物理的、機械的および化学的な処理を施してなめすことで製造され、コラーゲン繊維は、真皮の本体を構成する主な繊維であり、真皮の全繊維の95%~98%を占め、束になっている。皮革でのコラーゲン繊維の状態としては、コラーゲン繊維束が時にいくつかの細いコラーゲン繊維束に分割され、これらの細いコラーゲン繊維束が他のコラーゲン繊維束と結合して太い繊維束を形成することができ、このように、分割と結合、交差と織り込みを重ねて、特殊な立体網状の織り構造を形成している。新規な織物を製造する際には、まずコラーゲン繊維束を動物皮革から離解し、次に、コラーゲン繊維束をカーディングして下糸に差し込む必要があり、コラーゲン繊維束をカーディングする際には、コラーゲン繊維束が分裂し続け、より細いコラーゲン繊維束になったり、または/およびコラーゲン繊維束の中でカスケード状の分岐を形成したりし、繊維束の本体が細いほど、分岐が細くて多くなる。このようにして、コラーゲン繊維束を下糸織層に差し込んで下糸と織り込んだ後、コラーゲン繊維束の本体が下糸に差し込まれるだけでなく、一部の分岐も下糸に差し込むことができるので、各コラーゲン繊維束と下糸織層との交絡点が大幅に増加し、コラーゲン繊維束と下糸織層との接続強度が高くなり、毛が抜けにくくなる。また、コラーゲン繊維は分岐を持っているので、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれて、下糸織層から突出する網状構造を形成する。この網状構造と下糸織層で形成される構造により、新規な織物の強度などの力学的特性が大幅に向上する。
【0027】
要約すると、動物皮革の構造に対して、(1)本発明の新規な織物は、コラーゲン繊維束とその分岐で形成された網状構造が構造的に強い下糸織層に差し込まれて、コラーゲン繊維束に根元を与えるものであるが、動物皮革の場合、単に網状構造を形成しており、そのコラーゲン繊維束が根元を持たない;(2)本発明の新規な織物のコラーゲン繊維束は、下糸織層から放出されて形成された互いに織り込まれた網状構造であって、この網状構造は制御可能であるのに対し、動物皮革の網状構造は、動物皮革によって構造や階層が異なり、両者の網状構造は異なるものである;(3)本発明で新規な織物を形成する際には、動物皮革の離解やカーディングなどの一連の工程を行う必要があるため、主にコラーゲン繊維束を抽出して動物皮革中の他の繊維成分や非繊維成分を除去し、また、当該新規な織物ではコラーゲン繊維束と下糸を主成分とし、線維間物質などの非繊維成分を全く含まない、またはほとんど含まないため、線維間物質の存在によって織物が硬くなるという現象が現れにくくなり、よって、完成品を水洗いすることができ、動物皮革の場合、線維間物質などの非繊維成分が含まれ、動物皮革が徐々に水分を失っていくと、線維間物質が固化して硬くなり、生皮の硬化を避けるために、通常は動物皮革に潤滑の役割を果たす加脂剤を添加し、しかし、加脂剤を添加した動物皮革を水洗いすると、加脂剤が失われ、生皮が硬くなり、従って、水洗いに適していない;(4)本発明の新規な織物は、力学や構造などの面で動物皮革よりも優れた特性を持っている。
【0028】
毛皮との比較では、本発明の新規な織物は、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれた網状構造を下糸の外側に形成しているのに対し、既存の毛皮では毛層が網状構造を形成しておらず、さらに、既存の人工毛皮ではモノフィラメント繊維のみが下糸に差し込まれているのに対し、本発明ではコラーゲン繊維束とその分岐が下糸に差し込まれているため、本発明の新規な織物は強度が高く、力学的特性に優れている。
【0029】
さらに、コラーゲン繊維束が下糸織層の一面に網状構造を形成し、またはコラーゲン繊維束が下糸織層の両面にそれぞれ網状構造を形成する。
【0030】
さらに、コラーゲン繊維束は、1つ以上の連続して接続された「V」字形の組織からなる1つ以上の構造を下糸織層に形成する。これにより、コラーゲン繊維束と下糸との接続強度を向上させることができる。
【0031】
さらに、コラーゲン繊維束に他の織物繊維が混ぜられ、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれ、さらにコラーゲン繊維束とその分岐が他の織物繊維と互いに織り込まれて網状構造を形成する。
【0032】
さらに、下糸織層は、ニットまたは梭織の織層である。
【0033】
さらに、下糸織層と網状構造で形成された新規な織物は、後仕上げ工程を経て、コラーゲン繊維束とその分岐が下糸と繰り返して織り込まれるようになる。これにより、コラーゲン繊維束と下糸との交絡点が多くなる。
【0034】
上記第2の目的を達成するためのコラーゲン繊維束糸で形成された新規な織物であって、下糸織層を含み、下糸織層中の下糸にはコラーゲン繊維束糸が差し込まれ、下糸織層の表面から突出したコラーゲン繊維束糸は、散りばめられた網状構造を呈する。
【0035】
コラーゲン繊維束は、上記のように特殊な立体網状の織り構造を形成する。当該構造の新規な織物を製造する際には、コラーゲン繊維束で形成された糸を下糸織層に差し込んで下糸とループ状に織ることで、下糸に差し込まれたコラーゲン繊維束糸は常に糸であり、下糸織層から突出したコラーゲン繊維束糸は散りばめられた網状構造を呈し、これにより、散りばめられた網状構造では、根元のコラーゲン繊維束糸が下糸織層に差し込まれて、高い接続強度が得られ、毛が抜けにくくなり、しかも散りばめられた網状構造中のコラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれている。当該コラーゲン繊維束糸と下糸織層で形成された構造により、新規な織物の強度などの力学的特性が大幅に向上する。当該散りばめられた網状構造は、ふわふわで保温効果も抜群である。
【0036】
さらに、下糸織層の表面から突出したコラーゲン繊維束糸は、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれている網状構造を呈する。新規な織物全体の力学的特性がさらに向上する。
【0037】
さらに、コラーゲン繊維束糸に他の織物繊維が混ぜられ、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれ、さらにコラーゲン繊維束とその分岐が他の織物繊維と互いに織り込まれて網状構造を形成する。
【0038】
さらに、下糸織層と網状構造で形成された新規な織物は、後仕上げ工程を経て、コラーゲン繊維束とその分岐が下糸と繰り返して織り込まれるようになる。これにより、コラーゲン繊維束糸と下糸との交絡点が多くなる。
【0039】
上記第3の目的を達成するための上述したコラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物を用いて製造された新しい皮革製品であって、それは新規な織物の一面に皮革表面層が設けられる。当該構造の新しい皮革製品は、新規な織物の存在により、良好な力学的特性も備えている。当該新しい皮革製品は、線維間物質を含まない、またはほとんど含まないため、水洗いが可能である。さらに、本革のような衛生的な特性を有し、コラーゲン繊維の優れた特性を十分に発揮する。
【0040】
上記第4の目的を達成するための上述したコラーゲン繊維束糸で形成された新規な織物を用いて製造された新しい皮革製品であって、それは新規な織物の一面に皮革表面層が設けられる。当該構造の新しい皮革製品は、当該新規な織物の存在により、良好な力学的特性も備えている。当該新しい皮革製品は、線維間物質を含まない、またはほとんど含まないため、水洗いが可能である。さらに、本革のような衛生的な特性を有し、コラーゲン繊維の優れた特性を十分に発揮する。
【0041】
上記の新規な織物は、様々な製品に加工できるため、大幅に応用されている。
【0042】
現在の製革業界では、大量の皮革切れ端が発生し、中国だけで年間約140万トンもの切れ端が発生してしまい、これらの切れ端は、自然に恵まれた貴重なタンパク質繊維資源であるだけでなく、製革加工工程では多くの化学物質、電気、熱、人工物などが含まれているため、この資源の開発と再利用が非常に重要である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施例1に係るコラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物を示す図である。
図2】ニットの下糸織層を示す図である。
図3】梭織の下糸織層を示す図である。
図4】コラーゲン繊維束を示す図である。
図5】コラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物の別の構造を示す図である。
図6】実施例2に係る新規な織物を示す図である。
図7】実施例3に係る新規な織物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面と具体的な実施形態と併せて、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0045】
図1に示すように、コラーゲン繊維束が網状構造を形成する新規な織物は、下糸織層1およびコラーゲン繊維束2を含む。
【0046】
下糸織層1は、図2に示すようなニット織層であってよく、図3に示すような梭織織層であってもよい。下糸織層は、フィラメント、短繊維糸、またはフィラメントと短繊維糸の混合糸で織ることができる。
【0047】
図4に示すように、コラーゲン繊維束2は、コラーゲン繊維束の本体21および分岐22で構成される。分岐22は、コラーゲン繊維束の本体に形成されたカスケード状の分岐であり、カスケード状の分岐とは、主分岐から副分岐があり、副分岐の上にサブ分岐が形成されているということである。
【0048】
図1および図5に示すように、コラーゲン繊維束2が下糸織層1に差し込まれた下糸は、下糸織層の表面から突出し、突出したコラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれて網状構造10を形成し、コラーゲン繊維束の一部の分岐は、この一部の分岐の少なくとも一端を突出させるように下糸に差し込まれ、コラーゲン繊維束は、1つ以上の連続して接続された「V」字形の組織からなる1つ以上の構造を下糸織層に形成する。もちろん、網状構造を形成するコラーゲン繊維束にも化学繊維や天然繊維などの他の織物繊維を混合することができ、この構造を採用した場合、混合された他の織物繊維も下糸に差し込まれ、かつ他の織物繊維がコラーゲン繊維束やその分岐と織り込まれて網状構造を形成し、他の織物繊維を添加する場合、網状構造における他の織物繊維の重量パーセントを60%以下にする。
【0049】
コラーゲン繊維束を下糸に差し込む過程では、コラーゲン繊維束はさらに、逆送風装置の逆送風作用により下糸と繰り返して絡み合い、織り込むことができ、その結果、コラーゲン繊維束とその分岐が新規な織物の中で複数の連続したVまたはW字形の組織構造を形成し、コラーゲン繊維束と下糸との結合をより強固にする。
【0050】
下糸織層と網状構造で形成された新規な織物は、ニードリングまたはスパンレースなどの後仕上げ工程により、コラーゲン繊維束とその分岐を下糸と繰り返して織り込むことで、より緻密になる。
【0051】
図1に示すように、下糸織層の一面には網状構造が形成される。図5に示すように、下糸織層の両面には網状構造が形成される。
【0052】
本発明では、網状構造は、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれて形成され、当該網状構造は、下糸織層に差し込まれて突出した分岐を含み、下糸に差し込まれていない分岐がコラーゲン繊維の本体と互いに織り込まれる。かつ当該網状構造は、下糸織層から突出しており、既存の真皮の特殊な立体網状構造とは異なる。
【0053】
コラーゲン繊維束は動物皮革から採取され、皮革は、動物の皮膚から表皮層と皮下組織層を除去して残された真皮層に対して、物理的、機械的および化学的な処理を施してなめすことで製造され、コラーゲン繊維は、真皮の本体を構成する主な繊維であり、真皮の全繊維の95%~98%を占め、束になっている。皮革でのコラーゲン繊維の状態としては、コラーゲン繊維束が時にいくつかの細いコラーゲン繊維束に分割され、これらの細いコラーゲン繊維束が他のコラーゲン繊維束と結合して太い繊維束を形成することができ、このように、分割と結合、交差と織り込みを重ねて、特殊な立体網状の織り構造を形成している。新規な織物を製造する際には、まずコラーゲン繊維束を動物皮革から離解し、次に、コラーゲン繊維束をカーディングして下糸に差し込む必要があり、コラーゲン繊維束をカーディングする際には、コラーゲン繊維束が分裂し続け、より細いコラーゲン繊維束になったり、または/およびコラーゲン繊維束の中でカスケード状の分岐を形成したりし、繊維束の本体が細いほど、分岐が細くて多くなる。このようにして、コラーゲン繊維束を下糸織層に差し込んで下糸と織り込んだ後、コラーゲン繊維束の本体が下糸に差し込まれるだけでなく、一部の分岐も下糸に差し込むことができるので、各コラーゲン繊維束と下糸織層との交絡点が大幅に増加し、コラーゲン繊維束と下糸織層との接続強度が高くなり、毛が抜けにくくなる。また、コラーゲン繊維は分岐を持っているので、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれて、下糸織層から突出する網状構造を形成する。この網状構造と下糸織層で形成される構造により、新規な織物の強度などの力学的特性が大幅に向上する。
【0054】
要約すると、動物皮革の構造に対して、(1)本発明の新規な織物は、コラーゲン繊維束とその分岐で形成された網状構造が構造的に強い下糸織層に差し込まれて、コラーゲン繊維束に根元を与えるものであるが、動物皮革の場合、単に網状構造を形成しており、そのコラーゲン繊維束が根元を持たない;(2)本発明の新規な織物のコラーゲン繊維束は、下糸織層から放出されて形成された互いに織り込まれた網状構造であって、この網状構造は制御可能であるのに対し、動物皮革の網状構造は、動物皮革によって構造や階層が異なり、両者の網状構造は異なるものである;(3)本発明で新規な織物を形成する際には、動物皮革の離解やカーディングなどの一連の工程を行う必要があるため、主にコラーゲン繊維束を抽出して動物皮革中の他の繊維成分や非繊維成分を除去し、また、当該新規な織物ではコラーゲン繊維束と下糸を主成分とし、線維間物質などの非繊維成分を全く含まない、またはほとんど含まないため、線維間物質の存在によって織物が硬くなるという現象が現れにくくなり、よって、完成品を水洗いすることができ、動物皮革の場合、線維間物質などの非繊維成分が含まれ、動物皮革が徐々に水分を失っていくと、線維間物質が固化して硬くなり、生皮の硬化を避けるために、通常は動物皮革に潤滑の役割を果たす加脂剤を添加し、しかし、加脂剤を添加した動物皮革を水洗いすると、加脂剤が失われ、生皮が硬くなり、従って、水洗いに適していない;(4)本発明の新規な織物は、力学や構造などの面で動物皮革よりも優れた特性を持っている。
【0055】
毛皮との比較では、本発明の新規な織物は、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれた網状構造を下糸の外側に形成しているのに対し、既存の毛皮では毛層が網状構造を形成しておらず、さらに、既存の人工毛皮ではモノフィラメント繊維のみが下糸に差し込まれているのに対し、本発明ではコラーゲン繊維束とその分岐が下糸に差し込まれているため、本発明の新規な織物は強度が高く、力学的特性に優れている。
【実施例2】
【0056】
図6に示すように、コラーゲン繊維束糸で形成された新規な織物は、下糸織層1を含む。図2に示すように、下糸織層1は実施例1と同様である。
【0057】
下糸織層1中の下糸にはコラーゲン繊維束糸20が差し込まれ、下糸織層1の表面から突出したコラーゲン繊維束糸は、散りばめられた網状構造10を呈する。
【0058】
コラーゲン繊維束糸は、コラーゲン繊維束を撚るなどの工程によって製造される。図4に示すように、コラーゲン繊維束2の構造は、実施例1と同様である。
【0059】
上記の新規な織物の製造方法は以下のとおりである。下糸織層を織りながらコラーゲン繊維束糸を送り、コラーゲン繊維束糸を下糸織層にループさせた後、カットやブラッシングなどの後仕上げ工程により、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれた散りばめられた網状構造を下糸織層の表面に形成する。
【0060】
上記散りばめられた網状構造は、下糸織層の一面に形成されてよく、下糸織層の両面に形成されてもよい。しかし、下糸織層に差し込まれたコラーゲン繊維束糸は、糸の形態で存在する。
【0061】
別の実施形態として、コラーゲン繊維束糸は、化学繊維や天然繊維などの他の織物繊維を含んでもよく、網状構造における他の織物繊維の重量パーセントは60%以下である。
【0062】
コラーゲン繊維束は、実施例1に示すように、特殊な立体網状織り構造を形成する。当該構造の新規な織物を製造する際には、コラーゲン繊維束で形成された糸を下糸織層に差し込んで下糸とループ状に織ることで、下糸に差し込まれたコラーゲン繊維束糸は常に糸であり、下糸織層から突出したコラーゲン繊維束糸は散りばめられた網状構造を呈し、これにより、散りばめられた網状構造では、根元のコラーゲン繊維束糸が下糸織層に差し込まれて、高い接続強度が得られ、毛が抜けにくくなり、しかも散りばめられた網状構造中のコラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれている。当該コラーゲン繊維束糸と下糸織層で形成された構造により、新規な織物の強度などの力学的特性が大幅に向上する。当該散りばめられた網状構造は、ふわふわで保温効果も抜群である。
【実施例3】
【0063】
図7に示すように、コラーゲン繊維束糸で形成された新規な織物は、下糸織層1を含む。図2に示すように、下糸織層1は実施例1と同様である。
【0064】
下糸織層1中の下糸にはコラーゲン繊維束糸20が差し込まれ、下糸織層1の表面から突出したコラーゲン繊維束糸は、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれた網状構造200を呈する。
コラーゲン繊維束糸は、コラーゲン繊維束を撚るなどの工程によって製造される。図4に示すように、コラーゲン繊維束2の構造は、実施例1と同様である。
【0065】
上記の新規な織物の製造方法は以下のとおりである。下糸織層を織りながらコラーゲン繊維束糸を送り、コラーゲン繊維束糸を下糸織層にループさせた後、カットやブラッシングなどの後仕上げ工程により、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれた散りばめられた網状構造を下糸織層の表面に形成し、最後に、ニードリングやスパンレースなどの後仕上げ工程により、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれた緻密な網状構造を下糸織層の表面に形成し、また、一部のコラーゲン繊維束とその分岐が下糸織層に差し込まれる。
【0066】
上記の新規な織物の別の製造方法は以下のとおりである。下糸織層を織りながらコラーゲン繊維束糸を送り、コラーゲン繊維束糸を下糸織層にループさせた後、ニードリングやスパンレースなどの後仕上げ工程により、下糸織層から突出したループ状のコラーゲン繊維束糸を解き、そして、ループ状のコラーゲン繊維束糸と隣接するループ状のコラーゲン繊維束糸を再び織り込み、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれた緻密な網状構造を再構築し、また、一部のコラーゲン繊維束とその分岐100が下糸織層に差し込まれる。
【0067】
上記網状構造は、下糸織層の一面に形成されてよく、下糸織層の両面に形成されてもよい。しかし、下糸織層に差し込まれたコラーゲン繊維束糸は、糸の形態で存在する。
【0068】
別の実施形態として、コラーゲン繊維束糸は、化学繊維や天然繊維などの他の織物繊維を含んでもよく、網状構造における他の織物繊維の重量パーセントは60%以下である。
【0069】
コラーゲン繊維束は、実施例1に示すように、特殊な立体網状織り構造を形成する。当該構造の新規な織物を製造する際には、コラーゲン繊維束で形成された糸を下糸織層に差し込んで下糸とループ状に織ることで、下糸に差し込まれたコラーゲン繊維束糸は常に糸であり、下糸織層から突出したコラーゲン繊維束糸は分散して、コラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれた網状構造を呈し、これにより、網状構造では、根元のコラーゲン繊維束糸が下糸織層に差し込まれて、高い接続強度が得られ、毛が抜けにくくなり、しかも網状構造中のコラーゲン繊維束とその分岐が互いに織り込まれ、一部のコラーゲン繊維束とその分岐も下糸に織り込むことができる。当該コラーゲン繊維束糸と下糸織層で形成された構造により、新規な織物の強度などの力学的特性が大幅に向上する。
【0070】
実施例に係る新規な織物は、様々な製品に加工できるため、大幅に応用されている。
【0071】
現在の製革業界では、大量の皮革切れ端が発生し、中国だけで年間約140万トンもの切れ端が発生してしまい、これらの切れ端は、自然に恵まれた貴重なタンパク質繊維資源であるだけでなく、製革加工工程では多くの化学物質、電気、熱、人工物などが含まれているため、この資源の開発と再利用が非常に重要である。
【0072】
上記の新規な織物は、実際の応用では、さらに、網状構造を持つ新しい皮革製品を形成するために皮革表面層と組み合わせることができ、皮革表面層はPUまたはPVCであり、皮革表面層はまた、他の材料をコーティングまたは積層して形成することができ、新規な織物と皮革表面層は既存の方法で製造される。当該新しい皮革製品は、線維間物質を含まない、またはほとんど含まないため、水洗いが可能である。さらに、本革のような衛生的な特性を有し、コラーゲン繊維の優れた特性を十分に発揮する。もちろん、新規な織物は、カーペットや布地などにすることもできる。上記の新規な織物は、様々な製品を作ることができるため、広く応用されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7