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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】車載用発電装置及びこれを備えた冷凍車
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/02 20060101AFI20230515BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20230515BHJP
   B60P 3/20 20060101ALI20230515BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
F25B27/02 C
F25B27/02 L
B60H1/32 611A
B60P3/20 Z
B60P3/00 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021538523
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2019030463
(87)【国際公開番号】W WO2021024298
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】521504496
【氏名又は名称】モビリティエナジーサーキュレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 建治
(72)【発明者】
【氏名】前薗 真司
(72)【発明者】
【氏名】香山 哲
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0292784(US,A1)
【文献】国際公開第1999/022120(WO,A1)
【文献】特開2011-084102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0011007(US,A1)
【文献】特開2014-156795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0252310(US,A1)
【文献】国際公開第2009/051140(WO,A1)
【文献】特許第3919187(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 27/02
B60H 1/32
B60P 3/20
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用保冷庫内を冷却するための冷凍回路と、冷凍回路の圧縮機を駆動するモータと、モータを駆動するバッテリとを備えた冷凍装置に用いられ、バッテリに蓄電する電力を発電する車載用発電装置において、
作動流体を車両のエンジンの冷却水と熱交換して蒸発させる蒸発器と、
エンジンの冷却水を蒸発器に流通させる冷却水流通回路と、
蒸発器によって蒸発した作動流体の膨張により回転する膨張機と、
膨張機の回転によって発電する発電機と、
膨張機から流出した作動流体を外部空気と熱交換して凝縮させる凝縮器と、
凝縮器から流出した作動流体を吸入して蒸発器側に吐出するポンプとを備え
凝縮器を保冷庫が搭載される車両の車体下面側に配置するとともに、
凝縮器を車体の側面に対して外気流入面が斜め前方を向くように配置し
ことを特徴とする車載用発電装置。
【請求項2】
前記バッテリの蓄電量が所定の蓄電量以上の場合は圧縮機をモータによって駆動し、バッテリの蓄電量が所定の蓄電量よりも少ない場合は圧縮機をエンジンによって駆動するように構成した
ことを特徴とする請求項1記載の車載用発電装置。
【請求項3】
車両走行中の外部空気を凝縮器に向かって案内する外気案内部を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載の車載用発電装置。
【請求項4】
前記凝縮器に冷却用の液体を噴射する液体噴射手段を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項記載の車載用発電装置。
【請求項5】
前記凝縮器とポンプとの間に作動流体の逆方向への流通を規制する一方向弁を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項記載の車載用発電装置。
【請求項6】
前記ポンプと一方向弁との間に作動流体を貯溜する貯溜部を設けた
ことを特徴とする請求項記載の車載用発電装置。
【請求項7】
前記冷却水流通回路を、エンジンから流出する冷却水を蒸発器に流通した後、エンジンのラジエータに流入させるように構成した
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項記載の車載用発電装置。
【請求項8】
前記冷却水の温度に基づいてラジエータへの風量を制御する風量制御手段を備えた
ことを特徴とする請求項記載の車載用発電装置。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項記載の車載用発電装置を備えた
ことを特徴とする冷凍車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍車用冷凍装置の圧縮機を駆動するための電力を発電する車載用発電装置及びこれを備えた冷凍車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍食品等を輸送する冷凍車としては、トラック型の車両に断熱性の保冷庫を搭載し、冷凍装置によって保冷庫内を冷却するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この冷凍車では、冷凍装置の圧縮機をエンジンの動力によって駆動するようにしているが、エンジン停止時は圧縮機を駆動することができないため、長時間の停車時においては保冷庫内の温度が上昇し、保冷庫内の収納物を劣化させるおそれがある。そこで、エンジン停止時においても保冷庫内を冷却できるようにしたものとして、エンジンで駆動される発電機によってバッテリに蓄電し、圧縮機を回転させるモータをバッテリの電力によって駆動するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-20039号公報
【文献】特開2006-290116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の冷凍車のように、冷凍装置の圧縮機の動力源としてエンジンの動力を用いるようにしたものや、エンジンの動力によって発電した電力を用いるようにしたものでは、いずれも圧縮機を駆動するために車両の燃料を消費することから、燃料消費率の悪化や大気への放熱量の増加を来すという問題点があった。また、冷凍車のようなトラック型の車両は、乗用車に比べてエンジンも大型で発熱量も多いが、その廃熱は有効利用されずに大気に放出されており、これらをエネルギー資源として回収できれば、燃料コストの低減及び地球温暖化の抑制に貢献できると考えられる。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷凍装置の圧縮機を駆動するための電力を車両のエンジンの廃熱を利用して発電することのできる車載用発電装置及びこれを備えた冷凍車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、車載用保冷庫内を冷却するための冷凍回路と、冷凍回路の圧縮機を駆動するモータと、モータを駆動するバッテリとを備えた冷凍装置に用いられ、バッテリに蓄電する電力を発電する車載用発電装置において、作動流体を車両のエンジンの冷却水と熱交換して蒸発させる蒸発器と、エンジンの冷却水を蒸発器に流通させる冷却水流通回路と、蒸発器によって蒸発した作動流体の膨張により回転する膨張機と、膨張機の回転によって発電する発電機と、膨張機から流出した作動流体を外部空気と熱交換して凝縮させる凝縮器と、凝縮器から流出した作動流体を吸入して蒸発器側に吐出するポンプとを備え、凝縮器を保冷庫が搭載される車両の車体下面側に配置するとともに、凝縮器を車体の側面に対して外気流入面が斜め前方を向くように配置している。
【0008】
これにより、発電機によって発電した電力がバッテリに蓄電され、冷凍回路の圧縮機を駆動するモータがバッテリの電力によって駆動されることから、圧縮機を駆動するための電力がエンジンの廃熱(冷却水の熱)を利用して発電される。また、凝縮器が車体の側面に対して外気流入面が斜め前方を向くように配置されていることから、前進方向に走行する車両において外気が効率よく凝縮器に導入される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷凍回路の圧縮機を駆動するための電力をエンジンの廃熱を利用して発電することができるので、車両の燃料を消費することなく圧縮機を駆動するための電力を得ることができ、燃料消費率の悪化や大気への放熱量の増加を来すことがないという利点がある。特に、冷凍車のようなトラック型の車両は、乗用車に比べてエンジンも大型で発熱量も多いが、本発明ではその廃熱を冷凍車の冷凍装置に有効に利用することができ、燃料コストの低減及び地球温暖化の抑制に貢献することができる。また、前進方向に走行する車両において外気を効率よく凝縮器に導入することができるので、外気による凝縮器の空冷効果をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す車載用発電装置を備えた冷凍車の概略側面図
図2】車載用発電装置を備えた冷凍車の概略平面図
図3】冷凍装置の回路構成図
図4】発電装置の回路構成図
図5】発電装置のブロック図
図6】本発明の一実施形態を示す発電装置のブロック図
図7】制御部の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図5は本発明の一実施形態を示すもので、冷凍車用冷凍装置の圧縮機を駆動するための電力を発電する車載用発電装置を示すものである。
【0012】
同図に示す冷凍車1は、トラック型の車体2に断熱性の保冷庫3を搭載した周知の輸送車両からなり、エンジン4の冷却水(温水)を車体2の前部に配置されたラジエータ5によって冷却するようになっている。この場合、また、ラジエータ5の背面側にはファン5aが設けられ、ファン5aによりラジエータ5の前面側から吸入される外部空気によってラジエータ5内の冷却水が冷却されるようになっている。冷凍車1の床下には車両自体の電気系統に電力を供給する第1のバッテリ6が設けられ、第1のバッテリ6はエンジン4で駆動される発電機(図示せず)によって蓄電されるようになっている。
【0013】
また、冷凍車1は、保冷庫3内を冷却する冷凍装置10と、冷凍装置10に供給する電力を発電する発電装置20とを備えている。
【0014】
冷凍装置10は、圧縮機11から吐出した冷媒を凝縮器12、膨張弁13及び蒸発器14に順次流通して圧縮機11に吸入する冷凍回路10aを備え、凝縮器12を流通する冷媒を外部空気と熱交換し、蒸発器14を流通する冷媒を庫内空気と熱交換することにより保冷庫3内を冷却するようになっている。凝縮器12及び蒸発器14は保冷庫3の前面上部に取り付けられた冷凍ユニット10b内に収容され、冷凍ユニット10bは蒸発器14で冷却された庫内空気を図1の実線矢印に示すように保冷庫3内に循環させるようになっている。更に、保冷庫3内には庫内温度を検出する庫内温度センサ15が設けられている。
【0015】
また、冷凍装置10は、圧縮機11を駆動するモータ16と、モータ16を駆動する第2のバッテリ17とを備えている。モータ16はその回転軸16aを一対のプーリ16b及びベルト16cを介して圧縮機11の回転軸11aに連結され、圧縮機11の回転軸11aとプーリ16bは第1の電磁クラッチ18によって動力が伝達または遮断されるようになっている。また、圧縮機11の回転軸11aは他の一対のプーリ11b及びベルト11cを介してエンジン4に連結され、圧縮機11の回転軸11aとプーリ11bは第2の電磁クラッチ19によって動力が伝達または遮断されるようになっている。
【0016】
発電装置20は、作動流体(例えばフロン)を高温側熱媒体(エンジン4の冷却水)によって蒸発させる一対の蒸発器21と、各蒸発器21によって蒸発した作動流体によって回転する一対の膨張機22と、各膨張機22から流出する作動流体を外部空気によって凝縮させる凝縮器23と、凝縮器23から流出した作動流体を吸入して蒸発器21側に吐出するメインポンプ24と、エンジン4の冷却水を各蒸発器21と熱交換させるための冷却水流通回路25と、各膨張機22によって回転する発電機26と、凝縮器23に冷却用の液体を噴射する噴射器27とを備え、発電機26によって発電した電力を第2のバッテリ17に蓄電するようになっている。即ち、発電装置20は、各蒸発器21、各膨張機22、凝縮器23及びメインポンプ24によってランキンサイクルを構成している。
【0017】
各蒸発器21は、作動流体の流路に互いに並列に設けられ、それぞれの内部を流通する作動流体を冷却水流通回路25の冷却水との熱交換により加熱して蒸発させるようになっている。
【0018】
各膨張機22は、作動流体の流路に互いに並列に設けられ、それぞれ作動流体の流入側を各蒸発器21側に接続されている。各膨張機22は発電機26の回転軸に同軸状に連結され、互いに一体に回転するようになっている。膨張機22としては、例えば周知のスクロール型膨張機を用いることができる。
【0019】
凝縮器23は、内部を流通する作動流体を外部空気との熱交換により冷却して凝縮させるようになっており、作動流体の流入側には各膨張機22の流出側流路が互いに合流して接続されている。凝縮器23は、図1及び図2に示すように車両本体2の下面側に設けられ、車両本体2の幅方向一端側に配置されている。この場合、凝縮器23は車両本体2の側面に対して外気流入面が斜め前方を向くように配置されている。また、凝縮器23の背面側にはファン23aが設けられ、ファン23aによって凝縮器23の前面側から吸入した空気を背面側に流通させるようになっている。更に、車両本体2の下面側には、車両走行中の外部空気を凝縮器23に向かって案内する外気案内部としての第1の道風板23b及び一対の第2の道風板23cが設けられている。第1の道風板23bは凝縮器23の幅方向一端から車両本体2の前方に向かって延びるように形成され、その空気案内面が車両本体2の側方を望むように配置されている。各第2の道風板23cはそれぞれ凝縮器23の上端及び下端から車両本体2の前方に向かって延びるように形成され、互いに空気案内面が上下方向に間隔をおいて対向するように配置されている。
【0020】
第1の道風板23bの車体幅方向内側には、車体2の下面に取り付けられた発電ユニット20aが配置され、発電ユニット20aには、各蒸発器21、各膨張機22、凝縮器23、メインポンプ24及び発電機26が収容されている。また、車体2の下面には、第1のバッテリ6及び第2のバッテリ17が配置されている。
【0021】
メインポンプ24は、作動流体の吸入側を凝縮器23の流出側に接続され、作動流体の吐出側は各蒸発器21にそれぞれ流路が分岐して接続されている。メインポンプ24と凝縮器23との間の流路には一方向弁24aが設けられ、作動流体の逆方向への流通を一方向弁24aによって規制するようになっている。メインポンプ24と一方向弁24aとの間には作動流体を貯溜する貯溜部としてのコレクタータンク24bが設けられ、メインポンプ24が停止した後もメインポンプ24と一方向弁24aとの間の流路及びコレクタータンク24b内に作動流体が貯溜されるようになっている。
【0022】
冷却水流通回路25は、エンジン4の流出側流路が分岐して各蒸発器21に接続されるとともに、各蒸発器21の流出側の流路が互いに合流してラジエータ5の流入側に接続され、ラジエータ5の流出側はエンジン4の流入側に接続されている。冷却水流通回路25はエンジン4によって駆動される冷却水用ポンプ(図示せず)によって冷却水を循環するようになっており、冷却水用ポンプはエンジン4の回転数が高くなると冷却水の流量を増加させ、エンジン4の回転数が低くなると冷却水の流量を低下させるようになっている。また、冷却水流通回路25には、冷却水の流量を検出する流量センサ25aと、冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ25bが設けられ、冷却水温度センサ25bは各蒸発器21の流出側の流路を流通する冷却水の温度を検出するようになっている。
【0023】
発電機26は、その回転軸を各膨張機22に連結され、各膨張機22によって回転することにより発電するようになっている。また、発電機26は充電回路26aを介して第2のバッテリ17に接続されている。
【0024】
噴射器27は、冷却用の液体(例えば水)を収容する液体タンク27aと、凝縮器23の前面側に配置されたノズル27bと、液体タンク27a内の液体をノズル27b側に送り出す噴射ポンプ27cとからなり、ノズル27bから凝縮器23の前面に向かって液体を噴射するようになっている。ノズル27bは、例えば凝縮器23の前面に沿って配置されたパイプに液体噴出用の多数の孔を互いに間隔をおいて設けることにより構成することができる。
【0025】
また、発電装置20は、モータ16を作動及び停止するモータ駆動回路28と、第1の電磁クラッチ18を接続及び遮断する第1のクラッチ駆動回路29と、第2の電磁クラッチ19を接続及び遮断する第2のクラッチ駆動回路30と、凝縮器23のファン23a、メインポンプ24及び噴射ポンプ27cをそれぞれ作動及び停止するポンプ・ファン駆動回路31とを備えている。各駆動回路28,29,30はそれぞれ第2のバッテリ17に接続され、第2のバッテリ17の蓄電量が第1の蓄電量W1 (例えば5%以上95%未満)、第2の蓄電量W2 (例えば95%以上)、第3の蓄電量W3 (例えば5%未満)の何れの蓄電量であるかを判定するようになっている。
【0026】
モータ駆動回路28は、第2のバッテリ17の蓄電量が第1の蓄電量W1 または第2の蓄電量W2 の場合であって、庫内温度センサ15の検出温度が所定の庫内設定温度(例えばマイナス25℃)よりも高い場合、モータ16を作動するようになっている。また、第2のバッテリ17の蓄電量が第3の蓄電量W3 の場合はモータ16を停止するようになっている。
【0027】
第1のクラッチ駆動回路29は、第2のバッテリ17の蓄電量が第1の蓄電量W1 または第2の蓄電量W2 の場合であって、庫内温度センサ15の検出温度が前記庫内設定温度 以上の場合、第1の電磁クラッチ18を接続してモータ16の駆動力を圧縮機11に伝達するようになっている。また、第2のバッテリ17の蓄電量が第3の蓄電量W3 の場合は、第1の電磁クラッチ18の接続を遮断するようになっている。
【0028】
第2のクラッチ駆動回路30は、第2のバッテリ17の蓄電量が第3の蓄電量W3 の場合であって、庫内温度センサ15の検出温度がT1 以上の場合、第2の電磁クラッチ19を接続してエンジン4の駆動力を圧縮機11に伝達するようになっている。また、第2のバッテリ17の蓄電量が第1の蓄電量W1 または第2の蓄電量W2 の場合は、第2の電磁クラッチ19の接続を遮断するようになっている。
【0029】
ポンプ・ファン駆動回路31は、第2のバッテリ17の蓄電量が第1の蓄電量W1 または第3の蓄電量W3 の場合であって、冷却水温度センサ25bの検出温度が所定温度T1 (例えば80℃)以上、流量センサ25aによって検出される冷却水の流量が所定流量Q1 (例えば毎分10リットル)以上の場合、凝縮器23のファン23a、メインポンプ24及び噴射ポンプ27cをそれぞれ作動するようになっている。また、第2のバッテリ17の蓄電量が第2の蓄電量W2 の場合は、凝縮器23のファン23a、メインポンプ24及び噴射ポンプ27cをそれぞれ停止するようになっている。
【0030】
また、第2のバッテリ17は、その蓄電量が第3の蓄電量W3 になった場合は、第1のバッテリ6の電力によって蓄電するようになっている。
【0031】
以上のように構成された発電装置20においては、各蒸発器21で加熱されて蒸発した作動流体が各膨張機22に流入し、各膨張機22内で膨張する。これにより、各膨張機22が作動流体の膨張により回転し、各膨張機22によって発電機26が駆動される。次に、各膨張機22から流出した作動流体は凝縮器23に流入し、凝縮器23で外部空気と熱交換して凝縮する。そして、凝縮器23から流出した液体状態の作動流体はメインポンプ24に吸入されて各蒸発器21側に吐出され、各蒸発器21によって蒸発する。
【0032】
冷却水流通回路25においては、エンジン4の冷却水ポンプ(図示せず)によってエンジン4から流出した冷却水が各蒸発器21を流通し、各蒸発器21の作動流体と冷却水とが熱交換して作動流体が加熱される。各蒸発器21を流通した冷却水はエンジン4のラジエータ5に流入し、ラジエータ5によって外部空気と熱交換されて冷却される。
【0033】
凝縮器23においては、ファン23aによって外部空気が凝縮器23を流通し、凝縮器23内の作動流体と外部空気とが熱交換する。その際、車両走行時は第1及び第2の道風板23b,23cによって外部吸気が凝縮器23側に案内されるとともに、凝縮器23が車両本体2の側面に対して斜め前方を向くように配置されていることから、車両走行時における凝縮器23への外部空気の流通が促進される。更に、凝縮器23には噴射器27によって液体が噴射されることから、噴射された液体の蒸発潜熱によって凝縮器23による作動流体の冷却効果が向上する。
【0034】
また、発電装置20は、第2のバッテリ17の蓄電量に応じて以下のように動作する。
【0035】
まず、第2のバッテリ17の蓄電量が第1の蓄電量W1 のときは、圧縮機11を駆動するための十分な蓄電量(例えば5%以上)が蓄電されているため、モータ駆動回路28及び第1及び第2のクラッチ駆動回路29,30により、冷凍装置10の圧縮機11がモータ16によって駆動される。その際、ポンプ・ファン駆動回路31により、凝縮器23のファン23a、メインポンプ24及び噴射ポンプ27cが作動する。これにより、メインポンプ24が作動し、各膨張機22が回転して発電機26による発電が行われ、第2のバッテリ17が蓄電される。また、ファン23aによって凝縮器23に外部吸気が流通するとともに、噴射器27によって凝縮器23に液体が噴射され、凝縮器23が冷却される。この場合、冷却水流通回路25の冷却水の温度が所定温度T1 よりも低い場合、または冷却水の流量が所定流量Q1 よりも少ない場合は、各蒸発器21で作動流体を蒸発させるための十分な熱量が得られないため、凝縮器23のファン23a、メインポンプ24及び噴射ポンプ27cをそれぞれ停止し、発電機26による発電を停止する。メインポンプ24の停止により作動流体の流通が停止した場合でも、メインポンプ24の流入側流路の作動流体は、一方向弁24aによって逆流を阻止されるとともに、コレクタータンク24b内に貯溜されることから、メインポンプ24が作動を開始した際、一方向弁24a及びコレクタータンク24bによってメインポンプ24の流入側流路に貯溜されていた作動流体が速やかにメインポンプ24に吸入される。
【0036】
また、第2のバッテリ17の蓄電量が第2の蓄電量W2 (例えば95%以上)のときは、ほぼ満充電となり、発電機26の負荷(各膨張機22の負荷)が大幅に減少するため、ポンプ・ファン駆動回路31により、凝縮器23のファン23a、メインポンプ24及び噴射ポンプ27cを停止する。これにより、各膨張機22が停止し、負荷の減少による各膨張機22の空転が防止される。一方、モータ駆動回路28及び第1及び第2のクラッチ駆動回路29,30により、冷凍装置10の圧縮機11がモータ16によって駆動される。
【0037】
一方、第2のバッテリ17の蓄電量が第3の蓄電量W3 のときは、圧縮機11を駆動するための蓄電量が不足(例えば5%未満)しているため、モータ駆動回路28及び第1及び第2のクラッチ駆動回路29,30により、モータ16による圧縮機11の駆動がエンジン4による駆動に切り換えられ、圧縮機11がエンジン4によって駆動される。その際、第2のバッテリ17は蓄電量が第1の蓄電量W1 になるまで第1のバッテリ6の電力によって蓄電される。また、ポンプ・ファン駆動回路31により、凝縮器23のファン23a、メインポンプ24及び噴射ポンプ27cが作動し、発電機26による発電が行われて第2のバッテリ17が蓄電される。また、冷却水流通回路25の冷却水の温度が所定温度T1 よりも低い場合、または冷却水の流量が所定流量Q1 よりも少ない場合は、前述と同様、発電機26による発電を停止する。
【0038】
このように、本実施形態の発電装置20は、作動流体を車両のエンジン4の冷却水と熱交換して蒸発させる一対の蒸発器21と、エンジン4の冷却水を各蒸発器4に流通させる冷却水流通回路25と、各蒸発器21によって蒸発した作動流体の膨張により回転する一対の膨張機22と、各膨張機22の回転によって発電する発電機26と、各膨張機22から流出した作動流体を外気と熱交換して凝縮させる凝縮器23と、凝縮器23から流出した作動流体を吸入して各蒸発器21側に吐出するメインポンプ24とを備え、発電機26によって発電した電力を冷凍装置10の第2のバッテリ17に蓄電し、冷凍装置10の冷凍回路10aの圧縮機11を駆動するモータ16を第2のバッテリ17の電力によって駆動するようにしているので、圧縮機11を駆動するための電力をエンジン4の廃熱(冷却水の熱)を利用して発電することができる。これにより、車両の燃料を消費することなく圧縮機11を駆動するための電力を得ることができ、燃料消費率の悪化や大気への放熱量の増加を来すことがないという利点がある。特に、冷凍車のようなトラック型の車両は、乗用車に比べてエンジンも大型で発熱量も多いが、本発明ではその廃熱を冷凍車1の冷凍装置10に有効に利用することができ、燃料コストの低減及び地球温暖化の抑制に貢献することができる。
【0039】
また、第2のバッテリ17の蓄電量が所定の蓄電量(例えば5%)以上のときは圧縮機11をモータ16によって駆動し、第2のバッテリ17の蓄電量が所定の蓄電量よりも少ないときは圧縮機11をエンジン4の動力によって駆動するようにしたので、例えば冷凍装置10の熱負荷が大きい場合など、第2のバッテリ17の蓄電量が不足した場合でも冷凍装置10を運転することができ、保冷庫3内を常に冷却することができる。その際、第2のバッテリ17の蓄電量が所定の蓄電量よりも少ないときには、第1のバッテリ6の電力を第2のバッテリ17に供給するようにしたので、メインポンプ24を駆動するための電力を第1のバッテリ6から確保することができ、第2のバッテリ17の消耗による発電装置20の作動停止を回避することができる。
【0040】
更に、凝縮器23を車体2の下面側に配置したので、冷凍車1のように車体2の下面側に機器の設置スペースを確保しやすいトラック型の車両に極めて有利である。
【0041】
この場合、車体2の下面側に設けた第1及び第2の道風板23b,23cによって車両走行中の外部空気を凝縮器23に向かって案内するようにしたので、外気による凝縮器23の空冷効果を高めることができる。
【0042】
更に、凝縮器23を車体2の側面に対して外気流入面が斜め前方を向くように配置したので、前進方向に走行する車両において外気を効率よく凝縮器23に導入することができ、外気による凝縮器23の空冷効果をより一層高めることができる。
【0043】
また、凝縮器23に冷却用の液体を噴射する噴射器27を備えているので、凝縮器23に噴射された液体の蒸発潜熱によって凝縮器23を冷却することができ、外気温度が高い場合であっても凝縮器23の冷却効果を高めることができる。
【0044】
更に、凝縮器23とメインポンプ24との間に作動流体の逆方向への流通を規制する一方向弁24aを設けたので、メインポンプ24の停止により作動流体の流通が停止した場合でも、一方向弁24aによってメインポンプ24の流入側流路に作動流体を貯溜しておくことができる。これにより、メインポンプ24の作動開始時に作動流体を速やかにメインポンプ24に吸入させることができ、メインポンプ24の停止時間が長い場合でも確実に発電装置20を起動することができる。
【0045】
この場合、ポンプ24と一方向弁24aとの間に作動流体を貯溜するコレクタータンク24bを設けたので、より多くの作動流体をポンプ24と一方向弁24aとの間に貯溜しておくことができ、メインポンプ24の作動開始時における発電装置20の起動をより迅速に行うことができる。
【0046】
また、エンジン4から流出した冷却水を各蒸発器21に流通させた後、エンジン4のラジエータ5に流入させるようにしたので、ラジエータ5で冷却される前の高温の冷却水によって各蒸発器21内の作動流体を加熱することができ、エンジン4の廃熱を効率よく利用することができる。
【0047】
尚、前記実施形態では、冷却水流通回路25の冷却水の温度が所定温度T1 よりも低い場合、または冷却水の流量が所定流量Q1 よりも少ない場合は、凝縮器23のファン23a、メインポンプ24及び噴射ポンプ27cをそれぞれ停止するようにしたものを示したが、冷却水流通回路25の冷却水の温度が所定温度T1 よりも低い場合のみ、または冷却水の流量が所定流量Q1 よりも少ない場合のみ凝縮器23のファン23a、メインポンプ24及び噴射ポンプ27cをそれぞれ停止するようにしてもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、各膨張機22を発電機26の回転軸に同軸状に連結したものを示したが、ギヤによって互いに一体に回転させるようにしてもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、蒸発器21及び膨張機22をそれぞれ二つずつ備えたものを示したが、蒸発器21及び膨張機22の少なくとも一方を一つだけ備えたものであってもよい。
【0050】
更に、前記実施形態では、モータ16の動力をプーリ16b及びベルト16cを介して圧縮機11に伝達するようにしたものを示したが、圧縮機とモータとを同軸状に連結した一体型の電動圧縮機を用いるようにしてもよい。
【0051】
また、前記実施形態では、第2のバッテリ17の蓄電量に応じて圧縮機11の駆動をモータ16による駆動とエンジン4による駆動に切り換えるようにしたものを示したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、バッテリ及びモータのみで圧縮機を駆動するようにしたものにも適用することができる。
【0052】
図6及び図7は本発明の他の実施形態を示すもので、冷却水流通回路25の冷却水の温度に基づいてラジエータ5への風量を制御するようにしたものである。尚、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0053】
本実施形態の発電装置20は、ラジエータ5への風量を調整可能なダンパ32と、ダンパ32及びラジエータ5のファン5aを制御する制御部33とを備え、これらダンパ32及び制御部33によって風量制御手段を構成している。
【0054】
ダンパ32は、ラジエータ5の前面側に配置された複数の開閉板からなり、モータ32aによって回動することにより、ラジエータ5の前面側を開閉するようになっている。この場合、ダンパ32は、モータ32aの回動角度により開度を任意に変えられるようになっている。
【0055】
制御部33はマイクロコンピュータからなり、冷却水流通回路25の冷却水温度センサ25b、ラジエータ5のファンモータ5b及びダンパ32のモータ32aに接続されている。以下、制御部33の動作について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0056】
まず、冷却水温度センサ25bによって冷却水の温度Tを検出し(S1)、検出温度Tが所定の第1の温度Ts1 (例えば95℃)以上の場合は(S2)、ラジエータ5のファン5aを作動するとともに、ダンパ32の開度を全開にし(S3)、ステップS1に戻る。次に、ステップS2において検出温度Tが第1の温度Ts1 よりも低く、所定の第2の温度Ts2 (例えば90℃)以上の場合は(S4)、ラジエータ5のファン5aを停止するとともに、ダンパ32の開度を全開にし(S5)、ステップS1に戻る。また、ステップS4において検出温度Tが第2の温度Ts2 よりも低く、所定の第3の温度Ts3 (例えば85℃)以上の場合は(S6)、ラジエータ5のファン5aを停止するとともに、ダンパ32の開度を半開にし(S7)、ステップS1に戻る。更に、ステップS6において検出温度Tが第3の温度Ts3 よりも低い場合は、ラジエータ5のファン5aを停止するとともに、ダンパ32の開度を全閉にし(S8)、ステップS1に戻る。
【0057】
本実施形態によれば、冷却水流通回路25の冷却水の温度に基づいてラジエータ5のファン5a及びダンパ32を制御することにより、冷却水の温度が高いときはラジエータ5への風量を大きくし、冷却水の温度が低いときはラジエータ5への風量を小さくするようにしたので、発電装置20に用いられる冷却水の熱がラジエータ5から無用に放出されることがなく、発電装置20に必要な熱量を常に冷却水から得ることができる。
【0058】
尚、前記実施形態では、ダンパ32として複数の開閉板を回動させるように構成したものを示したが、風量を調整するものであれば、前記実施形態のダンパ32以外の構成を用いることも可能である。
【0059】
本明細書に記載した実施例は例示的なものであり限定的なものではない。発明の範囲は添付の請求の範囲によって示されており、それら請求の範囲の意味の中に入る全ての変形例は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1…冷凍車、2…車体、3…保冷庫、4…エンジン、5…ラジエータ、6…第1のバッテリ、10…冷凍装置、10a…冷凍回路、11…圧縮機、16…モータ、17…第2のバッテリ、20…発電装置、21…蒸発器、22…膨張機、23…凝縮器、23b…第1の道風板、23c…第2の道風板、24…メインポンプ、24a…一方向弁、24b…コレクタータンク、25冷却水流通回路、25b…冷却水温度センサ、27…噴射器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7