(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】カーテングラウチング後地下鉄の破砕帯の安全性判定方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230515BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
E02D3/12 101
E02D1/00
(21)【出願番号】P 2022549230
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2021109422
(87)【国際公開番号】W WO2021244674
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】202010780766.1
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521052838
【氏名又は名称】中▲鉄▼九局集▲団▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA RAILWAY NO.9 GROUP CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.3-1 Jingbin Street, Shenhe District, Shenyang city, Liaoning 11013 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】高岩
(72)【発明者】
【氏名】何▲長▼江
(72)【発明者】
【氏名】孟▲慶▼一
(72)【発明者】
【氏名】王君厚
(72)【発明者】
【氏名】▲銭▼坤
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲雲▼生
(72)【発明者】
【氏名】李▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】尹子涛
(72)【発明者】
【氏名】▲矯▼永岩
(72)【発明者】
【氏名】李▲徳▼柱
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-181484(JP,A)
【文献】特開平10-018281(JP,A)
【文献】特開2005-105740(JP,A)
【文献】中国実用新案第202954377(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第105966797(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテングラウチング処理後の地下鉄の破砕帯の安全性判定方法であって、
(1)平面上の破砕帯の等価半径d
pを決定するステップであって、
物理探査やボーリング調査などの手段を用いて
破砕帯を詳細に調査して、
破砕帯の水平面上の幾何学的境界を得え、作図ソフトウェアで幾何学的境界を描き、面積測定機能を使用して水平面上の面積Aを得、式(1)で平面上の
破砕帯の等価半径d
pを算出する、ステップと、
【数1】
(2)
破砕帯の計算された等価半径D
pを決定するステップであって、
平面上の破砕帯等価半径dpが地下鉄
のトンネルの幅Bよりも小さい場合、D
p=d
pとなり、d
p≧Bの場合、D
p=Bを取るステップと、
(3)
破砕帯の地下水位から地表面までの距離z
1及び地下水位から地下鉄
のトンネル頂部までの距離z
2を決定するステップであって、
破砕帯内のボーリング調査を介して、地下水位の位置を明確し、次に地面の標高、地下水位の標高及び地下鉄
のトンネル頂部の標高に基づいて、上記z
1及びz
2を計算するステップと、
(4)
破砕帯の地下水位より上の土の単位体積重量γ及び地下水位より下の土の飽和単位体積重量γ
satを決定するステップであって、
前記ステップ(3)におけるボーリング調査を介して、ボーリング孔から現状土試料を採取して、実験室に運び、自然密度ρ、土粒子の密度d
s及び含水比ωをテストし、ここで自然密度ρは、質量・体積測定法で測定され、土粒子の密度はピクノメーター法で測定され、含水比は乾燥法で測定され、土の単位体積重量γ及び地下水位より下の土の飽和単位体積重量γ
satは、それぞれ次の式で表され、
γ=ρg (2)
【数2】
[但し、式中、gは、重力加速度であり、]
(5)
破砕帯の重力による岩盤すべり力Gを次式により決定するステップと、
【数3】
(6)
破砕帯内の土の非排水せん断強度c
uを決定するステップであって、
前記ステップ(3)におけるボーリング調査を介して、ボーリング孔内で原位置ベーンせん断試験を実施する、又は現状土試料を採取して室内で非拘束圧縮強度を実施して、土の非排水せん断強度c
uを得るステップと、
(7)グラウチングゾーンの厚さd
zを決定するステップであって、
前記グラウチングゾーンの厚さd
zは、高圧グラウト注入の拡散直径で、前記直径が過去の工事経験又は現場でグラウチング後掘削によって測定されるステップと、
(8)グラウト体のせん断強度c
cを決定するステップであって、
過去の工事経験又は現場でグラウチング後グラウト体を採取して室内せん断強度試験を実施して、せん断強度c
cを決定するステップと、
(9)グラウト体が備える抵抗力Kを次式により決定するステップと、
K=πD
p[(z
1+z
2)c
u+d
zc
c] (5)
(10)グラウチング後に
破砕帯に岩盤すべりが発生しない安全率SFを次式により決定するステップと、
SF=K/G (6)
(SF≧1.0の場合、岩盤すべりが発生せず、SF<1.0の場合、岩盤すべりが発生する)
を有することを特徴とする、カーテングラウチング処理後の地下鉄の破砕帯の安全性判定方法。
【請求項2】
前記ステップ(3)に記載のz
1及びz
2は、事前ボーリング調査データからも得ることができることを特徴とする、請求項1に記載のカーテングラウチング処理後の地下鉄の破砕帯の安全性判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフラ建設の技術分野に関し、特に、カーテングラウチング後地下鉄の破砕帯の安全性を判定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下鉄の建設過程で、破砕帯に遭遇し、破砕帯内の岩体の性質が悪く、含水比が高く、直接掘削すると上被覆壁岩が崩壊し、工事の安全性を損なう可能性がある。このため、掘削前カーテングラウチング処理を施すことが一般的な方法で、処理後の安全性は、基本的に過去の施工経験に基づくものであり、現在指導用の理論式はなく、施工パラメータが妥当であれば、断層に隣接した岩石の安全性を保障でき、妥当ではない場合、処理後も崩落が発生する可能性がある。本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、プロセスが明瞭で、実施に便利及び結果が信頼できるといる利点を有するカーテングラウチング処理後の地下鉄の破砕帯の安全性判定方法を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、カーテングラウチング処理後の地下鉄の破砕帯の安全性判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明の技術的手段であるカーテングラウチング処理後の地下鉄の破砕帯の安全性判定方法は、以下のステップを有する。
【0005】
(1)平面上の破砕帯の等価半径dpを決定する。
物理探査やボーリング調査などの手段を用いて破砕帯を詳細に調査して、破砕帯の水平面上の幾何学的境界を得え、作図ソフトウェアで幾何学的境界を描き、面積測定機能を使用して水平面上の面積Aを得、式(1)で平面上の破砕帯の等価半径dpを算出し、
【0006】
【0007】
(2)破砕帯の計算された等価半径Dpを決定する。
平面上の破砕帯等価半径dpが地下鉄のトンネルの幅Bよりも小さい場合、Dp=dpとなり、dp≧Bの場合、Dp=Bを取る。
【0008】
(3)破砕帯の地下水位から地表面までの距離z1及び地下水位から地下鉄のトンネル頂部までの距離z2を決定する。
破砕帯内のボーリング調査を介して、地下水位の位置を明確し、次に地面の標高、地下水位の標高及び地下鉄のトンネル頂部の標高に基づいて、上記z1及びz2を計算する。
【0009】
(4)破砕帯の地下水位より上の土の単位体積重量γ及び地下水位より下の土の飽和単位体積重量γsatを決定する。
ステップ(3)におけるボーリング調査を介して、ボーリング孔から現状土試料を採取して、実験室に運び、自然密度ρ、土粒子の密度ds及び含水比ωをテストする。ここで自然密度ρは、質量・体積測定法で測定され、土粒子の密度はピクノメーター法で測定され、含水比は乾燥法で測定される。土の単位体積重量γ及び地下水位より下の土の飽和単位体積重量γsatは、それぞれ次の式で表される。
【0010】
γ=ρg (2)
【0011】
【0012】
(5)破砕帯の重力による岩盤すべり力Gを決定する。
【0013】
【0014】
(6)破砕帯内の土の非排水せん断強度cuを決定する。
ステップ(3)におけるボーリング調査を介して、ボーリング孔内で原位置ベーンせん断試験を実施する、又は現状土試料を採取して室内で非拘束圧縮強度を実施して、土の非排水せん断強度cuを得る。
【0015】
(7)グラウチングゾーンの厚さdzを決定する。
グラウチングゾーンの厚さdzは、高圧グラウト注入の拡散直径で、前記直径が過去の工事経験又は現場でグラウチング後掘削によって測定される。
【0016】
(8)グラウト体のせん断強度ccを決定する。
過去の工事経験又は現場でグラウチング後グラウト体を採取して室内せん断強度試験を実施して、せん断強度ccを決定する。
【0017】
(9)グラウト体が備える抵抗力Kを次式におり決定する。
【0018】
K=πDp[(z1+z2)cu+dzcc] (5)
【0019】
(10)グラウチング後に破砕帯に岩盤すべりが発生しない安全率SFを次式により決定する(SF≧1.0の場合、岩盤すべりが発生せず、SF<1.0の場合、岩盤すべりが発生する。)。
【0020】
SF=K/G (6)。
【0021】
上記カーテングラウチング後の地下鉄の破砕帯の安全性判定方法のステップ(3)に記載のz1及びz2は、事前ボーリング調査データからも得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法を利用して、カーテングラウチング後の地下鉄の破砕帯の安全性を判定するのは、簡単で、結果が信頼でき、破砕帯の安全性の判定が可能で、地下鉄の破砕帯の施工のために技術サポートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
福建省のある地下鉄が破砕帯を通過し、前方の破砕帯を安定させるため、カーテングラウチング処理を実施した。本発明の方法を用いて、処理後の地下鉄の安全性を判定した。
【0024】
事前の物理探査とボーリング調査を経た前記地下鉄の破砕帯の調査結果は、トンネル沿いの前記破砕帯の長さが170m程度、横幅が260m程度で、基本的に矩形を呈し、Auto-CADソフトウェアで幾何学的境界を描き、面積測定機能を利用して水平面上の面積Aを得、式(1)で水平面上の前記破砕帯の等価半径dpは237mと計算され、地下鉄のトンネルの幅6.0mをはるかに超えるため、接触帯の計算された等価半径Dpが6.0mを取った。事前ボーリング調査データによると、破砕帯の地下水位から地表面までの距離z1は、3.7mで、地下水位からトンネル頂部までの距離z2が173.4mであった。地下水位より上の位置に原状土壌サンプルを採取して実験室に運び、質量と体積法で自然密度ρが1.87g/cm3であると測定され、単位体積重量γが18.7kN/m3と計算され、またピクノメーター法で土粒子の密度dsが2.65g/cm3で、乾燥法で含水比ωが36.8%と測定され、式(3)で飽和単位体積重量が22.3kN/m3と計算された。さらに式(4)で破砕帯の重力による岩盤すべり力Gが111231.6kNと計算された。地質調査のボーリング孔から土試料を採取して、実験室に運んで非拘束圧縮強度試験を実施し、土の非排水せん断強度cuは19kPaと計算された。過去の工事施工経験によると、グラウチングゾーンの厚さdzは2.0mであった。同様に過去の工事施工経験によると、グラウト体のせん断強度ccは11MPaで、式(5)でグラウト体が備えた抵抗力Kが477874.7kNと計算され、最後に式(6)で岩盤すべりが発生しない安全率SFが4.3で、1.0より大きいと計算されたため、岩盤すべりが発生しないと判定し、すなわちカーテングラウチング処理を経た後、前記破砕帯は安全状態にある。