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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】タイヤの電気抵抗測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20230515BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20230515BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
G01R27/02 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019070336
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020169847
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000208444
【氏名又は名称】大和製衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晋一
(72)【発明者】
【氏名】福島 雅司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 健文
(72)【発明者】
【氏名】井村 周作
(72)【発明者】
【氏名】日野浦 諒
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-089161(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110128(WO,A1)
【文献】特開2002-337246(JP,A)
【文献】特開2017-110958(JP,A)
【文献】特開2006-317380(JP,A)
【文献】特開2000-009771(JP,A)
【文献】特開昭61-122002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 -17/10
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの電気抵抗を測定する装置であって、
前記タイヤの内周側に出退して、前記タイヤのビード部に押圧接触される内周電極と、
前記タイヤの外周側から前記タイヤに接近離反移動して、前記タイヤのショルダー部に押圧接触されるショルダー部用外周電極とを備え、
前記ショルダー部用外周電極が、円錐台状のローラである、
ことを特徴とするタイヤの電気抵抗測定装置。
【請求項2】
タイヤの電気抵抗を測定する装置であって、
前記タイヤの内周側に出退して、前記タイヤのビード部に押圧接触される内周電極と、
前記タイヤの外周側から前記タイヤに接近離反移動して、前記タイヤのショルダー部に押圧接触されるショルダー部用外周電極とを備え、
前記ショルダー部用外周電極は、水平姿勢の前記タイヤを、その外周の両側から挟むように押圧して位置決めするセンタリング機構の押圧ローラと一体に前記接近離反移動するように設けられている、
ことを特徴とするタイヤの電気抵抗測定装置。
【請求項3】
前記タイヤのトレッド部に押圧接触されるトレッド部用外周電極を備え、
前記トレッド部用外周電極が、前記センタリング機構の前記押圧ローラである、
請求項に記載のタイヤの電気抵抗測定装置。
【請求項4】
前記タイヤのビード部とショルダー部との間の電気抵抗値、及び、前記タイヤのビード部とトレッド部との間の電気抵抗値を、個別にそれぞれ測定可能な電気抵抗測定部を備える、
請求項3に記載のタイヤの電気抵抗測定装置。
【請求項5】
前記ショルダー部用外周電極が、弾性変形可能なテンションアームの遊端部に設けられている、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のタイヤの電気抵抗測定装置。
【請求項6】
前記ショルダー部用外周電極は、その外周面に周方向に沿って複数の溝が形成されている、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のタイヤの電気抵抗測定装置。
【請求項7】
前記タイヤは、複数のステージを搬送されて移動するものであり、
前記内周電極及び前記ショルダー部用外周電極は、前記タイヤにマーキングするマーキングステージにおける前記タイヤに押圧接触される、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のタイヤの電気抵抗測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの電気抵抗を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの電気抵抗の測定は、自動車の車体に生ずる静電気を、タイヤを介して路面側に放電させる性能を検査するために行われるものであり、例えば、特許文献1に記載されているように、タイヤの外周であるトレッド部に接触させた複数の電極とタイヤのビード部に接触させた電極との間の電気抵抗値を測定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-317380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、低燃費タイヤ開発のために、タイヤのトレッド部にシリカを配合する場合があり、タイヤのトレッド部とビード部の間の電気抵抗が高くなる傾向にある。トレッド部の電気抵抗が高くなると、自動車の車体に生ずる静電気を路面側に安定して放電させにくくなり、車体に静電気が蓄積し、時々放電してラジオノイズを発生させるなどの悪影響を及ぼす。
【0005】
このため、タイヤのショルダー部に電気抵抗の低い素材を配合して、静電気を路面側に放電しやすくすることが行われつつあるが、タイヤのトレッド部とビード部との電気抵抗を測定する従来の電気抵抗測定装置では、このようなタイヤの電気抵抗を測定することは困難であった。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、タイヤにおけるショルダー部とビード部との間の電気抵抗を測定できるタイヤの電気抵抗測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0008】
(1)本発明に係るタイヤの電気抵抗測定装置は、タイヤの電気抵抗を測定する装置であって、前記タイヤの内周側に出退して、前記タイヤのビード部に押圧接触される内周電極と、前記タイヤの外周側から前記タイヤに接近離反移動して、前記タイヤのショルダー部に押圧接触されるショルダー部用外周電極とを備え、前記ショルダー部用外周電極が、円錐台状のローラである
【0009】
本発明によると、タイヤの内周側に進出した内周電極をタイヤのビード部に押圧接触させ、タイヤの外周側に接近移動させたショルダー部用外周電極をタイヤのショルダー部に的確に接触させることで、ビード部とショルダー部との間の電気抵抗を測定することができる。
【0011】
本発明によると、横に倒れた水平姿勢のタイヤに対して、ショルダー部用外周電極を水平方向から接近移動させることで、ショルダー部用外周電極の円錐台状の傾斜外周面を、タイヤのショルダー部の湾曲面に適切に接触させることができる。
【0012】
)本発明は、タイヤの電気抵抗を測定する装置であって、前記タイヤの内周側に出退して、前記タイヤのビード部に押圧接触される内周電極と、前記タイヤの外周側から前記タイヤに接近離反移動して、前記タイヤのショルダー部に押圧接触されるショルダー部用外周電極とを備え、前記ショルダー部用外周電極は、水平姿勢の前記タイヤを、その外周の両側から挟むように押圧して位置決めするセンタリング機構の押圧ローラと一体に前記接近離反移動するように設けられている。
【0013】
本発明によると、タイヤの内周側に進出した内周電極をタイヤのビード部に押圧接触させ、タイヤの外周側に接近移動させたショルダー部用外周電極をタイヤのショルダー部に的確に接触させることで、ビード部とショルダー部との間の電気抵抗を測定することができる。
また、本発明によると、センタリング機構の押圧ローラの移動構造を利用してショルダー部用外周電極をタイヤに対して接近離反移動させることができ、ショルダー部用外周電極を移動させるための専用の作動構造が不要となり、安価に実施することができる。
【0014】
)本発明の他の実施態様では、前記タイヤのトレッド部に押圧接触されるトレッド部用外周電極を備え、前記トレッド部用外周電極が、前記センタリング機構の前記押圧ローラである。
【0015】
この実施態様によると、タイヤのショルダー部での電気抵抗のみならずトレッド部での電気抵抗も測定することができ、トレッド部とショルダー部を含むタイヤ全体の電気抵抗を測定することが可能となる。これによって、タイヤのトレッド部の電気抵抗を測定すべき仕様のタイヤと、ショルダー部の電気抵抗を測定すべき仕様のタイヤとの異なる仕様のタイヤの電気抵抗を、当該電気抵抗測定装置によって測定することができる。
【0016】
)本発明の好ましい実施態様では、前記タイヤのビード部とショルダー部との間の電気抵抗値、及び、前記タイヤのビード部とトレッド部との間の電気抵抗値を、個別にそれぞれ測定可能な電気抵抗測定部を備える。
【0017】
この実施態様によると、タイヤのショルダー部での電気抵抗、及び、タイヤのトレッド部での電気抵抗を、それぞれ個別に測定することが可能となる。
【0018】
)本発明の他の実施態様では、前記ショルダー部用外周電極が、弾性変形可能なテンションアームの遊端部に設けられている。
【0019】
この実施態様によると、タイヤに対するショルダー部用外周電極の接近移動を厳密に位置制御しなくても、ショルダー部用外周電極を、タイヤのショルダー部に的確に押圧接触させることができる。
【0020】
特に、ショルダー部用外周電極をセンタリング機構の押圧ローラと一体に作動させる場合に有効である。この場合、押圧ローラがセンタリング作動した際の移動位置がタイヤのサイズによって決まってしまう。しかし、ショルダー部用外周電極を押圧ローラに先行してタイヤに接触するように、押圧ローラに対するショルダー部用外周電極の初期位置を設定しておくことによって、押圧ローラがセンタリング作動位置に至った状態では、ショルダー部用外周電極をタイヤによって弾性変形させてタイヤのショルダー部に的確に押圧接触させることができる。
【0021】
)本発明の更に他の実施態様では、前記ショルダー部用外周電極は、その外周面に周方向に沿って複数の溝が形成されている。
【0022】
この実施態様によると、ショルダー部用外周電極が、タイヤのショルダー部に押圧された際、タイヤのショルダー部が外周電極の溝に食い込むことになり、的確な接触状態で電気抵抗の測定を行うことができる。
【0023】
)本発明の他の実施態様では、前記タイヤは、複数のステージを搬送されて移動するものであり、前記内周電極及び前記ショルダー部用外周電極は、前記タイヤにマーキングするマーキングステージにおける前記タイヤに押圧接触される。
【0024】
この実施態様によると、マーキングステージにおけるマーキング処理に際して正しく位置決めされるタイヤに対して、内周電極及びショルダー部用外周電極を的確に接触させることができ、接触不良のない良好な電気抵抗測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明に係るタイヤの電気抵抗測定装置によれば、タイヤにおけるショルダー部とビード部との間の電気抵抗を的確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は本発明の一実施形態のタイヤの電気抵抗測定装置を備えるタイヤ検査システムの全体を示す概略側面図である。
図2図2はマーキングステージにおけるタイヤ搬送部の平面図である。
図3図3はマーキングステージにおけるタイヤ搬送部の側面図である。
図4図4は内周電極の支持構造を示す正面図である。
図5図5はショルダー部用外周電極の支持構造を示す側面図である。
図6図6はショルダー部用外周電極とタイヤとの接触状態を示す縦断面図である。
図7図7は電気抵抗測定の回路構成を示す図である。
図8図8はショルダー部用外周電極の支持構造を示す他の実施形態の斜視図である。
図9図9はショルダー部用外周電極の支持構造を示す更に他の実施形態の平面図である。
図10図10は電気抵抗測定の他の実施形態の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以降の説明において、タイヤWの搬送方向を前方、搬送方向と逆方向を後方、前後方向と直交する水平方向を左右方向と呼称する。
【0028】
図1は本発明の一実施形態のタイヤの電気抵抗測定装置を備えるタイヤ検査システムの全体を示す概略側面図である。
【0029】
このタイヤ検査システムは、後方から前方(図1の右方から左方)に向けて、搬入ステージ1、検査ステージ2、及び、マーキングステージ3がこの順に直列に配備されている。
【0030】
搬入ステージ1には、ローラ式の搬入コンベア4が備えられ、送られてきたタイヤWを、横に倒れた水平姿勢で載置してステージ上に搬入する。
【0031】
検査ステージ2は、搬入ステージ1から前方へ送り出されたタイヤWを載置して搬送するローラ式の搬送コンベア5と、タイヤWをステージ中心に位置合わせするセンタリング用の押圧ローラ6と、搬送コンベア5上で位置合わせしたタイヤWを、搬送径路上方に配備された上リムと搬送径路下方に配備された下リムの間に挟持して駆動回転させる検査装置7とが備えられており、タイヤWを回転させた時に発生する水平方向での遠心力を測定して、動的釣合いや軽点などを算出して検査を行う。
【0032】
マーキングステージ3には、検査ステージ2から搬出されてきた検査済みのタイヤWを水平姿勢で載置して搬送するローラ式の搬出コンベア10、タイヤWをステージ中心に位置決めするセンタリング機構11、及び、マーキング装置12が備えられている。マーキング装置12は、インクテープ式の押捺ヘッド13を下降させて、タイヤWの上面の所定位置にマークを押捺する。
【0033】
本実施形態では、マーキングステージ3に、以下のような構成の電気抵抗測定装置が備えられている。
【0034】
図2は、マーキングステージ3におけるタイヤ搬送部の平面図であり、図3はその側面図である。図4は、電気抵抗測定装置の内周電極の支持構造を示す正面図であり、図5は、電気抵抗測定装置のショルダー部用外周電極の支持構造を示す側面図であり、図6は、ショルダー部用外周電極とタイヤとの接触状態を示す縦断面図である。
【0035】
マーキングステージ3におけるローラ式の搬出コンベア10の中心部には、図2に示されるように、ローラの無い空間が設けられており、ここにエアー駆動式のスライド機構14が、図4に示されるように、横向きに配備されている。スライド機構14の上部には、所定のストロークで左右に水平移動するスライダ15が備えられている。このスライダ15に、タイヤWのビード部wbに接触する内周電極16が立設されている。なお、図7に示すように、内周電極16は電気抵抗測定部17に配線接続されている。
【0036】
スライド機構14自体は、エアーシリンダ18によって昇降可能に支持されており、スライド機構14が下降した状態では、内周電極16が搬出コンベア10の搬送面より下方に没入し、タイヤWの搬入搬出を妨げない状態となる。また、タイヤWが搬入されてセンタリングされた後、スライド機構14が上昇作動することで、内周電極16がタイヤWの中心孔に進出し、その後、スライダ15がタイヤ半径方向の外方に向けて移動することで、内周電極16がタイヤWのビード部wbに接触される。
【0037】
センタリング機構11は、図2図3に示すように、搬出コンベア10の左右両脇に縦支点a周りに水平揺動可能に前後一対ずつ配備された揺動アーム19と、各揺動アーム19の遊端部に回転可能に軸支された押圧ローラ20とを備えている。センタリング機構11は、エアーシリンダ21によって、全ての揺動アーム19をステージ中心側に向けて揺動させることで、4個の押圧ローラ20でタイヤWのトレッド部wtを押圧してステージ中心に位置決め押圧するように構成されている。
【0038】
なお、図3に示すように、搬出コンベア10に対して一側方(図2における下側)に位置する一対の揺動アーム19は、その基端部に備えたギヤ22によって互いに逆向きに揺動するように噛み合い連動されると共に、搬出コンベア10の左右両脇に位置する揺動アーム19同士が連係リンク23によって連動連結されている。このようにして、一つの揺動アーム19をエアーシリンダ21によって駆動揺動させることで、全部の揺動アーム19が同期して内外に揺動作動するようになっている。
【0039】
このように水平姿勢のタイヤWを、その外周側から搬出コンベア10の両側の2個ずつの押圧ローラ20によって挟むようにして押圧してセンタリングを行う。
【0040】
ここで、センタリング用の4個の押圧ローラ20は導電金属材で製作されて、タイヤWのトレッド部wtに接触するトレッド部用外周電極とされており、ローラ軸支部に接続された配線が、図7に示すように、電気抵抗測定部17に接続されている。
【0041】
押圧ローラ20の外周面には、周方向に小ピッチで多数の細溝24が形成されて、全体としてはローレット状の外周面となっている。トレッド部用外周電極である押圧ローラ20が、タイヤWに押圧された際に、タイヤWのトレッド部wtが細溝24に食い込むことで、押圧ローラ20とトレッド部wtとが電気的に確実に接触するようになっている。
【0042】
押圧ローラ20の支軸上端部には、上下一対のテンションアーム25が連結固定されて片持ち水平に延出されている。両テンションアーム25の遊端部を挿通した状態で連結固定された支軸26の下部には、円錐台状のローラ27が回転可能に装着されている。
【0043】
ローラ27は導電金属材で製作されており、タイヤWにおけるショルダー部wsに接触するショルダー部用外周電極とされている。このショルダー部用外周電極としてのローラ27は、支軸26、テンションアーム25を介して押圧ローラ20の軸支部と連結されているので、図7に示すように、ショルダー部用外周電極としてのローラ27は、押圧ローラ20と共に電気抵抗測定部17に接続されることになる。
【0044】
この実施形態では、トレッド部wtとショルダー部wsを含むタイヤ全体の電気抵抗を測定することが可能であるので、トレッド部wtの電気抵抗を測定すべき仕様のタイヤW、及び、ショルダー部wsの電気抵抗を測定すべき仕様のタイヤWのいずれの仕様のタイヤの電気抵抗も測定することが可能である。したがって、タイヤの仕様によって、測定用電極16,20,27を取り替える必要がない。
【0045】
このショルダー部用外周電極としてのローラ27の外周面にも周方向に複数の細溝28が形成されている。この細溝28は、例えば、幅2mm、深さ1mm程度のものであり、ローラ27がタイヤWのショルダー部wsに押圧された際、細溝28にタイヤWが食い込むことで、ショルダー部用外周電極としてのローラ27とタイヤWのショルダー部wsとが電気的に確実に接触する。
【0046】
図5に示すように、テンションアーム25は、押圧ローラ20の支軸上端に連結固定される基端ボス25aと、ショルダー部用外周電極としてのローラ27の支軸26を挿通連結する遊端ボス25bとを縦支点b周りに横方向にのみ屈折可能な屈折軸25cで連結している。更に、屈折軸25cに外嵌装着した圧縮コイルバネ25dを基端ボス25aと遊端ボス25bとの間に、適度の圧縮状態で介在させて構成されている。従って、外力が作用しない常態では、圧縮コイルバネ25dのバネ力によってテンションアーム25は直線状態に保持され、遊端側に側方からの外力が作用すると圧縮コイルバネ25dを変形させながら外側方に屈曲変形するようになっている。
【0047】
この場合、ショルダー部用外周電極としてのローラ27を、タイヤWのショルダー部wsに接近移動させる際に、ショルダー部wsにローラ27が接触を開始してから最終的な押圧状態に至る間に、ショルダー部wsとローラ27とが相対的に周方向に位置ずれしても、ローラ27が回動することで相対位置ずれを吸収することになり、ショルダー部ws表面が、ローラ27に擦られて傷つくようなことはない。
【0048】
マーキングステージ3に装備された電気抵抗測定装置は以上のように構成されており、その測定動作について説明する。
【0049】
先ず、センタリング機構11が搬送径路を開放した状態で、かつ、ステージ中心部において内周電極16が搬送径路より下方に没入した状態で、検査ステージ2から送出されてきたタイヤWがマーキングステージ3に搬入される。次に、センタリング機構11が作動して、前後左右の押圧ローラ20が同調してステージ中心に向けて移動し、これによって、タイヤWがその両側から挟まれるようにして、ステージ中心に位置決め(センタリング)される。
【0050】
この場合、押圧ローラ20がタイヤ外周面に接触するに先行してショルダー部用外周電極としてのローラ27がタイヤWのショルダー部wsに接触し、押圧ローラ20がタイヤ外周面に接近するのに伴ってテンションアーム25が外側方に弾性変形され、ショルダー部用外周電極としてのローラ27がショルダー部wsに弾性的に押圧される。
【0051】
また、タイヤWがステージ中心に位置決めされると、内周電極16が上昇されてタイヤWの中心孔に進出された後、外方に移動されてタイヤWのビード部wbに押圧接触される。ここで、ビード部wbとトレッド部wt及びショルダー部wsとの間での電気抵抗が測定される。
【0052】
また、タイヤWのセンタリングが完了すると、マーキング装置12が作動し、タイヤ上面の所定位置に所定のマークが押捺される。
【0053】
マーキングステージ3でのマーキング処理、及び、電気抵抗の測定処理が終了すると、押捺ヘッド13が待機位置まで復帰上昇されると共に、センタリング機構11が復帰作動して搬送径路を前後に開放する。また、内周電極16がステージ中心側に後退すると共に、搬送径路の下方に没入して原点位置に復帰する。次いで、搬出コンベア10が作動して処理の済んだタイヤWが前方に搬出されてゆく。
【0054】
以上で1回のタイヤ検査処理が完了し、以後、新たなタイヤ搬入に応じて上記作動を順次繰り返す。
【0055】
なお、ナット操作によって支軸26をテンションアーム25に対して上下に位置調節することで、ショルダー部用外周電極としてのローラ27の高さを任意に微調節することができる。また、タイヤWのショルダー部wsに作用するショルダー部用外周電極としての円錐台状のローラ27は、その外径や円錐角度、等が異なる複数種が予め用意されており、タイヤWのサイズや仕様、等に対応して最適のものに取り替える。例えば、ローラ27の外周傾斜角度θ(図5参照)が、50~70度に亘って異なるものを複数種用意しておくとよい。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、内周電極16とショルダー部用外周電極としてのローラ27とによって、タイヤWのビード部wbとショルダー部wsとの間の電気抵抗を測定することができる。
【0057】
ショルダー部用外周電極27、及び、トレッド部用外周電極20は、金属製のローラであるので、耐久性に優れている。
【0058】
また、ショルダー部用外周電極であるローラ27は、水平姿勢のタイヤWを位置決めするセンタリング機構11の押圧ローラ20と一体に設けられるので、センタリング機構11へ容易に取り付けることが可能である。センタリング機構11を構成する押圧ローラ20を、トレッド部用外周電極としているので、センタリング機構11の構成を利用して、電気抵抗測定装置を安価に構成することができる。
【0059】
[その他の実施形態]
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0060】
(1)ショルダー部用外周電極としてのローラ27を変位可能に弾性支持する構成としては上記実施形態の構造に限られるものではなく、例えば、図8に示すように、テンションアーム25を金属板バネ材で構成してもよい。あるいは、図9に示すように、遊端部にショルダー部用外周電極としてのローラ27を軸支したテンションアーム25を、支点c周りに水平揺動自在に揺動アーム19に枢支すると共に、ねじりバネ29でテンションアーム25を揺動付勢し、ストッパピン30に当接した状態で初期位置を保持する構成などを選択することができる。
【0061】
(2)上記実施形態では、トレッド部用外周電極としての押圧ローラ20とショルダー部用外周電極としてのローラ27とを一体に配線接続して、タイヤWにおけるトレッド部wtとショルダー部wsとの全体的な電気抵抗を測定するようにしているが、トレッド部用外周電極としての押圧ローラ20に対してショルダー部用外周電極としてのローラ27を電気的絶縁状態で配備すれば、図10に示すように、トレッド部wtでの電気抵抗とショルダー部wsでの電気抵抗を個別に計測する形態で実施することもできる。
【0062】
また、この場合、回路切換えによってトレッド部wtあるいはショルダー部wsいずれか一方での電気抵抗のみ、あるいは、トレッド部wtとショルダー部wsとを合わせた電気抵抗を選択して計測することも可能となる。
【0063】
(3)上記実施形態では、タイヤの電気抵抗測定装置を、マーキングステージ3に設けたが、他のステージに設けてもよく、あるいは、ステージとは、別にタイヤの電気抵抗を測定してもよい。
【符号の説明】
【0064】
2 検査ステージ
3 マーキングステージ
16 内周電極
20 押圧ローラ(トレッド部用外周電極)
25 テンションアーム
27 ローラ(ショルダー部用外周電極)
28 細溝
W タイヤ
wb ビード部
ws ショルダー部
wt トレッド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10